以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記述内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の微小構造体の一例について、図1を用いて説明する。本実施の形態で示す微小構造体は、いわゆる両持ち梁構造の微小構造体である。
本発明の微小構造体の斜視図を図1(A)に、断面図を図1(B)に示す。図1(B)は、図1(A)中の破線O−Pの断面図に相当する。
本発明の微小構造体100は、第1の構造層102と、第2の構造層104と、を有する。また、第1の構造層102と第2の構造層104との間に、空隙部106を有する。
第2の構造層104は、支持部108、支持部110と、可動部112とを含み、第1の構造層102に対して立体的な橋状構造をとる。具体的には、第2の構造層104は、第1の構造層102と接する支持部108、110と、第1の構造層102と接しない可動部112とを有する。言い換えると、可動部112の両端は、支持部108、110によって第1の構造層102に固定されている。なお、可動部112は、第2の構造層104において、変位可能な部位である。
空隙部106は、第1の構造層102と第2の構造層104の可動部112との間に位置する。第2の構造層104の可動部112は、空隙部106があるため、変位可能に可動することができる。
次に、図1(B)の点線で囲んだ部分の拡大図を図1(C)に示す。
図1(C)に示すように、第1の構造層102及び第2の構造層104は、両者が相対向する面が粗面となっている。そして、第1の構造層102と第2の構造層104とは、両者が対向する面の粗面の度合いが異なっている。すなわち、第2の構造層104と相対向する第1の構造層102の面を第1面114とし、第1の構造層102と相対向する第2の構造層104の面を第2面116とすると、第1面114と第2面116の粗さが異なることを特徴とする。
具体的には、第1面114及び第2面116は、それぞれ複数の凸部を設けることによって、粗面化されている。言い換えると、第1面114及び第2面116は、それぞれ複数の凹部を設けることによって、粗面化されているとも言える。
ここで、第1面114に設けられた凸部を凸部Aとし、隣接する凸部A同士の頂点と頂点との距離をαとする。同様に、第2面116に設けられた凸部を凸部Bとし、隣接する凸部B同士の頂点と頂点との距離をβとする。本発明は、αがβよりも大きいことが好ましい。また、αがβよりも1.5倍以上10倍以下であることが好ましい。このとき、αの範囲は0.2μm以上1μm以下が好ましい。また、βの範囲は0.02μm以上0.1μm以下が好ましい。
なお、上記で述べたように、第1面114及び第2面116は、それぞれ複数の凹部を設けることによって、粗面化されているとも言える。したがって、第1面に設けられた凹部を凹部Aとすると、隣接する凹部A同士の溝と溝との距離がαとなる。同様に、第2面に設けられた凹部を凹部Bとすると、隣接する凹部B同士の溝と溝との距離がβとなる。
なお、第1面114と第2面116において、必ずしも規則的な凸部が設けられている必要はなく、第1面114全体の粗さと第2面116全体の粗さの度合いが異なっていればよい。すなわち、第1面114又は第2面116において、全ての凸部同士の頂点と頂点との距離が一定である必要はない。つまり、第1面114全体において隣接する凸部A同士の頂点と頂点との距離αを平均化し、第2面116全体において隣接する凸部B同士の頂点と頂点との距離βを平均化したときに、αの平均化した値がβの平均化した値よりも大きいことを特徴とする。
なお、上記で示した微小構造体は、第1の構造層102と第2の構造層104との間に空隙部106を有し、第1の構造層102に第2の構造層104の両端部が固定されている両持ち梁構造(ビームともよばれる)である。しかし、本発明は上記構成に限らず、第1の構造層に第2の構造層の片端のみが固定されている片持ち梁構造(カンチレバーともよばれる)であってもよい。その他、第2の構造層が櫛歯型、歯車型等の形状を有してもよく、少なくとも、第2の構造層が変位可能な部位を有する構造であればよい。
本発明は、相対向する面が粗面となっている第1の構造層及び第2の構造層を有する。また、第1の構造層と第2の構造層は、粗面の度合いが異なっている。本発明の微小構造体を用いることで、第2の構造層を可動する際に、第1の構造層と接する部分を少なくすることができる。そのため、微小構造体の動作時の衝撃や静電気等により、第1の構造層と第2の構造層とが貼り付く、いわゆる座屈(スティッキングとも言われる)を防ぐことができる。
また、本発明の微小構造体は、可動部に凸部が設けられている。その結果、可動部の内部応力を分散させることができ、より可動しやすくすることができる。さらに、可動部の耐久性を向上させることもできる。
(実施の形態2)
本発明の微小構造体の作製方法の一例について、図2、図3を用いて説明する。
まず、絶縁性の表面を有する基板200を用意する。次いで、基板200上に下地絶縁膜202を形成する(図2(A))。絶縁性の表面を有する基板200としては、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等が挙げられる。プラスチック基板上に微小構造体を形成することによって、軽量且つ柔軟性に富んだ薄型の装置を得ることができる。また、ガラス基板を研磨等により薄くしても、薄型の装置を得ることができる。その他、金属等の導電性基板や、シリコン等の半導体性基板上に絶縁膜を形成した基板を用いてもよい。
下地絶縁膜202としては、酸化珪素、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素または微量の窒素を含む酸化珪素等の材料を用いる。これらの材料を用いた膜を、プラズマCVD法、減圧CVD法、スパッタリング法、PVD法等を用いて、単層又は複数層で形成すればよい。また、基板の凹凸や、基板からの不純物拡散が問題とならなければ、下地絶縁膜は形成しなくともよい。
次いで、下地絶縁膜202上に第1の構造層206を形成する。以下に、第1の構造層206の形成について、具体的に説明する。
まず、下地絶縁膜202上に非晶質半導体膜204を形成する。非晶質半導体膜204としては、珪素またはシリコンゲルマニウム(SiGe)等の材料を用いることができる。これらの材料を用いた膜を、プラズマCVD法、減圧CVD法、スパッタリング法、PVD法等を用いて形成する。また、下地絶縁膜202を形成した成膜装置を用いて、下地絶縁膜202と非晶質半導体膜204を連続的に形成してもよい。
次いで、非晶質半導体膜204にレーザビームを照射して結晶化する(図2(B))。非晶質半導体膜204の結晶化に用いるレーザは、連続発振型のレーザビーム(以下、CWレーザビームと記す)やパルス発振型のレーザビーム(以下、パルスレーザビームと記す)を得られるものを用いることができる。具体的なレーザビームとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち、一種または複数種から発振されるものを用いることができる。このようなレーザビームの基本波、及び第2高調波から第4高調波のレーザビームを照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。このとき、レーザビームのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度として照射する。
なお連続発振の基本波のレーザビームと連続発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。また、連続発振の基本波のレーザビームとパルス発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。複数のレーザビームを照射することにより、エネルギーを補うことができる。
また、半導体膜がレーザビームによって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザビームを照射できるような発振周波数でレーザビームを発振させるパルス発振型のレーザを用いることもできる。このような周波数でレーザビームを発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。具体的には、パルス発振型のレーザの発振周波数は10MHz以上を用いる。これは、通常用いられている数10Hz〜数100Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯である。
なお、成膜方法によっては、非晶質半導体膜204が水素を含む場合がある。その場合、レーザビームの照射により水素が噴出しないようにするため、熱処理を行い、半導体膜の水素出しを行うことが好ましい。
以上の工程で、第1の構造層206となる結晶質半導体膜が形成される(図2(C))。このとき、レーザ照射して形成された第1の構造層206(結晶質半導体膜)の表面はレーザビームの照射により粗面処理されて粗面化され、当該第1の構造層206の表面には、リッジと呼ばれる凹凸が形成されている。すなわち、レーザ照射による非晶質半導体膜の結晶化工程が、第1の構造層を粗面化する粗面処理となる。なお、リッジとは、結晶粒がぶつかり合う点に形成される膜の不規則な隆起点である。ここで形成される凸部を凸部Aとすると、例えば隣接する凸部A同士の頂点と頂点との距離が0.2μm以上1μm以下のものが形成される。なお、ここで形成されるリッジは必ずしも規則的である必要はない。第1の構造層206の表面に形成された複数の凸部Aにおいて、隣接する凸部A同士の頂点と頂点との距離を平均化したときに、0.2μm以上1μm以下であればよい。また、レーザ照射条件によっては、規則的なリッジを形成することも可能である。
次いで、第1の構造層206上に犠牲層210を形成する。なお、犠牲層とは、後の工程で選択的に除去される層を指す。以下に、犠牲層210の作製について、具体的に説明する。
まず、第1の構造層206上に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等の金属材料、又は該金属材料を主成分とする合金等のいずれかの材料又は複数の材料からなる金属膜208を形成する。金属膜208は、スパッタリング法を用いて、単層又は複数層で形成する。
次いで、金属膜208にレーザビームを照射して(図2(D))、金属膜208に粗面処理を施す。この粗面処理により、金属膜208の表面が粗面化され、該金属膜208の表面に凹凸が形成される(図3(A))。金属膜208の凹凸の形成には、CWレーザビームやパルスレーザビームを用いることができる。レーザビームとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち、一種または複数種から発振されるものを用いることができる。
なお、基本波のCWレーザビームと高調波のCWレーザビームとを照射するようにしてもよい。また、基本波のCWレーザビームと高調波のパルスレーザビームとを照射するようにしてもよい。複数のレーザビームを照射することにより、エネルギーを補うことができる。
また、金属膜208がレーザビームによって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザビームを照射できるような発振周波数でレーザを発振させるパルス発振型のレーザを用いることもできる。具体的には、パルス発振型のレーザの発振周波数は10MHz以上を用いる。これは、通常用いられている数10Hz〜数100Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯である。なお、上記したレーザの種類は、照射する金属膜208の材質などによって適宜選択する。そのため、照射する金属膜208によって、適宜レーザ照射条件を考慮する必要がある。
なお、レーザ照射の代わりに、RTA(Rapid Thermal Annealing)法による加熱処理を行って、金属膜208の粗面処理を施してもよい。RTA法は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプ等のランプを用いることができる。これらのランプを用いて、急激に温度を上昇させ、数分〜数マイクロ秒の間で瞬間的に熱を加えることができる。
以上のように、金属膜208に対してレーザビーム又はランプから発する光を照射することで、金属膜208表面を粗面処理することができる。このような粗面処理により粗面化された金属膜208の表面には、複数の凹凸が形成される。ここで形成される凸部を凸部Bとすると、例えば隣接する凸部B同士の頂点と頂点との距離が0.02μm以上0.1μm以下のものが形成される。なお、隣接する凸部B同士の全ての頂点と頂点との距離が規則的である必要はなく、平均化したときに0.02μm以上0.1μm以下であればよい。
次いで、金属膜208をフォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて所望の形状に加工し、犠牲層210を形成する。以上の工程で、表面に凹凸が形成された犠牲層210が形成される(図3(B))。なお、本実施の形態では金属膜208を加工して所望の形状の犠牲層を形成する例を示したが、同様に第1の構造層もフォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて所望の形状に加工してもよい。第1の構造層は、少なくとも犠牲層の下に存在すればよい。
また、本実施の形態では、金属膜208の表面を粗面処理により粗面化した後に犠牲層210を形成したが、本発明はこの限りではなく、最終的に得られる犠牲層210の表面が粗面化されていればよい。例えば、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、先に金属膜208を加工し、該加工した膜にレーザビーム又はランプから発する光を照射して表面に凹凸が形成された犠牲層210を形成してもよい。
次いで、第1の構造層206及び犠牲層210上に、第2の構造層212を形成する。第2の構造層212は、後の犠牲層エッチングに用いるエッチング剤で、犠牲層210とエッチングの選択比が取れる材料であればよい。例えば、酸化珪素、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素または微量の窒素を含む酸化珪素等の材料を用いて形成された絶縁膜を用いることができる。また、タングステン、モリブデン等からなる犠牲層210とのエッチングの選択比を取ることができる金属、例えばタンタル(Ta)、アルミニウム(Al)等を用いることもできる。これら犠牲層210とエッチングの選択比が取れる材料を用いて形成した層を、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて所望の形状に加工して第2の構造層212を形成する。このとき、第2の構造層212が犠牲層210と接する面は、犠牲層210の粗面な表面に沿った面となる。すなわち、第2の構造層212が犠牲層210と接する面は、犠牲層210に形成された凸部Bにそって複数の凸部が形成され、粗面化される。
次いで、犠牲層210をエッチング除去する。エッチングは、第1の構造層206、犠牲層210、及び第2の構造層212の選択比が取れる方法で行う。例えば、犠牲層としてタングステンやモリブデンを用いる場合には、アンモニア、過酸化水素水及び純水を混合した液体を用いたウエットエッチング法で除去することができる。例えば、28wt%のアンモニア水と31wt%の過酸化水素水と純水とを3:5:2の比率で混合した液体(本明細書では、アンモニア過水と記す)を用いることができる。なお、本発明はこれに限らず、エッチング法及びエッチング剤は、実施者が適宜選択することができる。
上記のように犠牲層210を除去すると、犠牲層210が存在した場所に空隙部214が生じる。したがって、空隙部を有する微小構造体を得ることができる。
なお、上記で示した微小構造体は、第1の構造層206と第2の構造層212との間に空隙部214を有し、第1の構造層206に第2の構造層212の両端部が固定されている両持ち梁構造(ビームともよばれる)である。しかし、本発明は上記構成に限らず、第1の構造層に第2の構造層の片端のみが固定されている片持ち梁構造(カンチレバーともよばれる)としてもよい。その他、第2の構造層が櫛歯型、歯車型等の形状を有してもよい。少なくとも、第2の構造層が立体的な構造であればよい。
本発明は、相対向する面が粗面となっている第1の構造層及び第2の構造層を形成することを特徴としている。また、第1の構造層と第2の構造層は、粗面度合いが異なるように形成されている。したがって、犠牲層をウエットエッチング法にて除去する際に、毛細管現象によって可動部となる構造層が座屈するのを防止することができる。
また、本発明は、第1の構造層及び第2の構造層の対向する面に複数の凸部が設けられている。本実施の形態では、第2の構造層の一部が変位可能な可動部として機能する。よって、可動部に凸部が設けられているため応力を分散させることができ、より可動しやすくなり、可動部の耐久性を向上させることができる。
なお、本実施の形態は、上記実施の形態1と組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、犠牲層にアルミニウムを用いる場合について、図4を用いて説明する。なお、犠牲層以外の材料及び作製方法等は上記実施の形態2に準ずる。ただし、本実施の形態は、可動部を有する構造層(犠牲層上に形成される構造層)が片端のみ固定された片持ち梁構造(カンチレバー)とする。
まず、実施の形態2と同様に第1の構造層206まで形成する。次いで、第1の構造層206上に、スパッタリング法を用いてアルミニウム膜309を形成する(図4(A))。なお、他の金属とアルミニウム膜との積層構造としても良い。但し、積層構造とする場合は、アルミニウム膜を上層とする。
次いで、アルミニウム膜309の表面に粗面処理を行う。この粗面処理により、アルミニウム膜309の表面に凹凸が形成され、粗面化される(図4(B))。粗面処理の方法としては、例えば、250℃以上の加熱処理を行ってアルミニウム膜309にヒロックと呼ばれる微細な突起を生じさせ、凸部を形成することができる。または、アルミニウム膜309に電流を流して部分的に発熱させることにより、アルミニウム膜309の表面を部分的に加熱して、該アルミニウム膜309表面に選択的に凸部を形成し、表面を粗面化することもできる。
次いで、アルミニウム膜309をフォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて所望の形状に加工し、犠牲層310を形成する。なお、本実施の形態では、犠牲層310となるアルミニウム膜309下層にある第1の構造層206も、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて所望の形状に加工している例を示す。もちろん、実施の形態2と同様に、第1の構造層206は加工せずともよい。また、アルミニウム膜309に凹凸を形成して粗面化する工程と、アルミニウム膜309を加工する工程の順序は限定されない。したがって、先にアルミニウム膜を所定の形状に加工して犠牲層を形成し、当該犠牲層表面に凹凸を形成して粗面化することもできる。以上の工程で、表面に凹凸が形成され、粗面化された犠牲層310が形成される(図4(C))。
次いで、犠牲層310上に第2の構造層312を形成する。第2の構造層312は、後の犠牲層エッチングに用いるエッチング剤で、犠牲層310とエッチングの選択比が取れる材料であればよい。例えば、酸化珪素、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素または微量の窒素を含む酸化珪素等の材料を用いて形成された絶縁膜を用いることができる。また、アルミニウムからなる犠牲層310とのエッチングの選択比を取ることができる金属を用いることもできる。これら犠牲層310とエッチングの選択比が取れる材料を用いて形成した層を、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて所望の形状に加工して第2の構造層312を形成する。このとき、第2の構造層312が犠牲層310と接する面は、犠牲層310の粗面な表面に沿った面となる。すなわち、第2の構造層312が犠牲層310と接する面には犠牲層310に形成された凸部にそって複数の凸部が形成され、第2の構造層312が粗面化される。
なお、第2の構造層312として、CVD法を用いて酸化珪素、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素または微量の窒素を含む酸化珪素等の材料からなる絶縁膜を形成する場合は、アルミニウム膜309(犠牲層310)の表面に凹凸を形成する粗面処理を省略することが可能になる。これは、CVD法を用いて絶縁膜を形成する成膜時に掛かる温度で、下層のアルミニウム膜309(犠牲層310)にヒロックが生じ、該アルミニウム膜309表面が粗面化されるからである。
次いで、犠牲層310をエッチング除去する。エッチングは、第1の構造層206、犠牲層310、及び第2の構造層312の選択比が取れる方法で行う。例えば、本実施の形態では、犠牲層310としてアルミニウム膜を用いているため、リン酸、酢酸、硝酸、純水を混合した液体を用いたウエットエッチング法で除去することができる。例えば、リン酸、酢酸、硝酸、純水を体積%で、85:5:5:5の比率で混合した酸(本明細書では、前記比率でそれぞれの液体を混合した酸をアルミ混酸と記す)を用いることができる。なお、本発明はこれに限らず、エッチング法及びエッチング剤は、実施者が適宜選択することができる。
上記のように犠牲層310を除去すると、犠牲層310が存在した場所に空隙部314が生じる。したがって、空隙部を有する微小構造体を得ることができる。
なお、上記で示した微小構造体は、第1の構造層206と第2の構造層312との間に空隙部314を有し、第1の構造層206に第2の構造層312の片端部が固定されている片持ち梁構造(カンチレバーともよばれる)である。しかし、本発明は上記構成に限らず、第1の構造層に第2の構造層の両端部が固定されて両持ち梁構造(ビームともよばれる)いるとしてもよい。その他、第2の構造層が櫛歯型、歯車型等の形状を有してもよい。
本発明は、相対向する面が粗面となっている第1の構造層及び第2の構造層を形成することを特徴としている。また、第1の構造層と第2の構造層は、粗面度合いが異なるように形成されている。したがって、犠牲層をウエットエッチング法にて除去する際に、毛細管現象によって可動部となる構造層が座屈するのを防止することができる。
また、第2の構造層としてCVD法により形成された膜を用いる場合、犠牲層に凹凸を形成する工程が省略でき、作製時間の短縮を図ることができる。
また、一部又は全体が変位可能な可動部として機能する第2の構造層に凸部が設けられているため応力を分散させることができる。よって、微小構造体の可動部が可動しやすくなり、耐久性を向上させることができる。
なお、本実施の形態は、上記実施の形態1と組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、開口部を設けた構造体の作製方法の一例について、図5、図6を用いて説明する。なお、第2の構造層に開口部を設ける以外の構成及び作製方法は、上記実施の形態2又は実施の形態3に準ずるものとする。
まず、絶縁基板上に第1の構造層502を形成する。次いで、第1の構造層502上に犠牲層504を形成する(図5(A))。なお、図5では、基板は省略する。
第1の構造層502及び犠牲層504は、上記実施の形態2又は実施の形態3と同様に作製すればよい。具体的には、第1の構造層502は、表面が複数の凸部を有する結晶質半導体膜を形成する。また、犠牲層504はタングステン、モリブデン、又はアルミニウムを用いて形成し、その表面には複数の凸部を形成する。すなわち、第1の構造層と犠牲層は、それぞれ粗面になっている。また、第1の構造層と犠牲層との粗面度合いは異なっている。
次いで、犠牲層504上に第2の構造層506を形成する(図5(B))。第2の構造層506も、上記実施の形態2又は実施の形態3と同様に形成すればよい。
本実施の形態では、第2の構造層506を形成する際に開口部508を設けている。なお、第2の構造層506に設ける開口部508の形状、大きさ、及び個数は、特に限定されない。また、開口部を複数設ける場合は、各々の開口部形状、大きさ等は異なっていても構わない。図5(C)及び(D)には、犠牲層504、及び開口部508が設けられた第2の構造層506の上面図、及び線分OPにおける断面図を示す。なお、図5(C)、(D)では、第1の構造層502は省略している。
次いで、犠牲層504を除去する(図6(A))。図6(B)及び(C)には、犠牲層504除去後の第2の構造層506の上面図、及び線分OPにおける断面図を示す。犠牲層エッチングの方法は、上記実施の形態2、又は実施の形態3に準ずる。犠牲層エッチングによって、空隙部510が形成される。したがって、空隙を有する微小構造体を得ることができる。
本実施の形態のように、第2の構造層に開口部を設けることで、犠牲層エッチングの時間を短縮することができる。また、相対向する面が粗面となっている第1の構造層及び第2の構造層を形成するため、構造層の座屈を防止することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、犠牲層のウエットエッチング方法の例について、図7を用いて説明する。
本発明では、犠牲層にタングステンやモリブデンを用いた場合、エッチング剤にアンモニア過水を用いることができる。このように、犠牲層エッチングにアンモニア過水等のウエットエッチングを適用する場合、基板やエッチング用の容器を振動させたり、エッチング剤を流動させることで、犠牲層のエッチング時間を短縮することができる。以下、図7を用いて、ウエットエッチングの方法の例を説明する。
図7(A)〜(D)に示すように、ウエットエッチング装置420が有する容器421には、液体状のエッチング剤423、例えばアンモニア過水等が満たされている。容器421の中には、基板422が配置されている。すなわち、基板はエッチング剤423に浸された状態である。
エッチング剤423に浸される前の基板422には、少なくとも犠牲層と、犠牲層上に構造層(第2の構造層)とが形成されている。基板422は、容器421中では、基板支持体424によって保持されている。
図7(A)では、エッチング剤423を流動させるために、容器421を振動させている。一方、図7(B)では、エッチング剤423を流動させるために、容器421ではなく基板支持体424を振動させている。
また、図7(C)では、エッチング剤423を流動させるため、エッチング剤423を撹拌させている。さらに、図7(D)では、容器421にエッチング剤423の導入口425及び排出口426を設け、エッチング剤423を導入及び排出させることによって、エッチング剤423を流動させている。
このように、エッチング剤を流動させることにより、犠牲層のエッチング時間を短縮することが可能になる。また、エッチング剤と効率よく反応させることができ、犠牲層が残留することを防止できる。
なお、本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明に係る半導体装置を作製する方法の一例について説明する。本発明に係る半導体装置は、絶縁表面上に微小構造体および半導体素子を有することを特徴とする。ここでは、同一基板上に微小構造体および半導体素子を作製する方法について、図面を用いて説明する。図面において、上側には上面図を示し、下側には上面図O−P、O’−P、又はQ−Rにおける断面図を示す。また、半導体素子が形成される領域を素子領域800aとし、微小構造体が形成される領域を構造体領域800bとする。なお、上面図では基板や下地絶縁膜等の構成を一部省略する。
まず、絶縁性の表面を有する基板801を用意する。ここで絶縁性の表面を有する基板801とは、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等である。さらに、金属元素等の導電性基板や、シリコン等の半導体性基板上に絶縁性を有する材料を用いて層を形成した基板を用いることも可能である。微小構造体および半導体素子を、プラスチック基板に形成した場合は、柔軟性が高く、軽量で薄型な半導体装置を作製することができる。また、半導体装置をガラス基板上に作製した後、基板を裏面から研磨する等の手法によって薄くすることによって、軽量で薄型な半導体装置を形成することもできる。本実施の形態では、ガラス基板を用いるものとする。
次いで、基板801上に下地絶縁膜802を形成する(図8(A1)、(A2))。下地絶縁膜802は酸化珪素、窒化珪素、または酸化窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて、単層または積層構造で形成することができる。また、下地絶縁膜802は、プラズマCVD法、減圧CVD法、スパッタリング法、PVD法等を用いて形成すればよい。本実施の形態では、下地絶縁膜802として2層構造を用いる場合を説明する。
下地絶縁膜802の一層目として、膜厚10nm以上200nm以下(好ましくは50nm以上100nm以下)の酸化窒化珪素膜を形成する。当該酸化窒化珪素膜は、プラズマCVD法を用い、SiH4、NH3、N2O及びH2を反応ガスとして形成することができる。次いで、下地絶縁膜802の二層目として、膜厚50nm以上200nm以下(好ましくは100nm以上150nm以下)の酸化窒化珪素膜を形成する。当該酸化窒化珪素膜は、プラズマCVD法を用い、SiH4及びN2Oを反応ガスとして形成することができる。
次いで、半導体素子を構成する半導体層804、および微小構造体を構成する第1の構造層806となる半導体膜を形成する(図8(A1)、(A2))。当該半導体膜(後の半導体層804および第1の構造層806を併せて半導体膜と表記する)は、非晶質珪素膜を形成し、当該非晶質珪素膜を結晶化して得ることができる。以下、具体的に説明する。
まず、下地絶縁膜802上に、スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等を用いて、非晶質珪素膜を膜厚40nm〜60nmの範囲で形成する。
次いで、非晶質珪素膜にレーザビームを照射して結晶化する。また、レーザビームの照射と、加熱炉又はRTA(Rapid Thermal Annealing)によって加熱する加熱処理等とを組み合わせて結晶化することもできる。
レーザビームの照射は、CWレーザビームやパルスレーザビームを用いることができる。レーザビームとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。例えば、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。このとき、レーザビームのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度として照射する。
なお、連続発振の基本波のレーザビームと連続発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。或いは、連続発振の基本波のレーザビームとパルス発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。複数のレーザビームを照射することにより、広範囲のエネルギー領域を補うことができる。また、パルス発振型のレーザであって、非晶質珪素膜がレーザビームによって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザビームを照射できるような発振周波数でレーザビームを発振させるパルス発振型のレーザを用いることもできる。このような周波数でレーザビームを発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した半導体膜(結晶質珪素膜)を得ることができる。このようなレーザビームが得られるパルス発振型のレーザの発振周波数は10MHz以上であり、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い。このようなレーザビームを照射して得られる半導体膜(結晶質珪素膜)の表面には、リッジと呼ばれる凹凸が生じ、粗面化される。つまり、第1の構造層806となる半導体膜は、レーザビームの照射により粗面処理されて、表面が粗面化される。ここで形成される凸部を凸部Aとすると、例えば隣接する凸部A同士の頂点と頂点との距離が0.2μm以上1μm以下のものが形成される。
上記レーザ結晶化の工程において、非晶質珪素膜の結晶化を促進させる金属元素を用いることもできる。例えば、非晶質珪素膜にニッケル(Ni)を添加し、結晶化工程を行うことができる。このように、金属元素を用いて熱結晶化を行うことで、結晶化を行うための加熱温度を低減することができる。さらに、結晶粒界の連続した半導体膜を得ることができる。ここで、結晶化を促進するための金属元素としてはニッケルの他に、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)等を用いることもできる。これらの元素を、スピンコーティング法やディップコート法といった塗布法により、非晶質珪素膜に添加することができる。その他、プラズマCVD法、スパッタ法、および蒸着法等を用いることもできる。
また、結晶化を促進させる金属元素は半導体装置の汚染源となるため、非晶質珪素膜を結晶化した後に、金属元素を除去するゲッタリング工程を行うことが望ましい。ゲッタリング工程では、非晶質珪素膜を結晶化した後、珪素膜上にゲッタリングシンクとなる層を形成する。次いで、加熱処理を行い、金属元素をゲッタリングシンクへ移動させる。ゲッタリングシンクには、多結晶半導体層や不純物が添加された半導体層を用いることができる。例えば、珪素膜上にアルゴン等の不活性元素が添加された多結晶半導体層を形成し、これをゲッタリングシンクとして用いることができる。不活性元素を添加することによって、多結晶半導体層にひずみを生じさせ、より効率的に金属元素を捕獲することができる。また、リン等の元素を添加した半導体層を形成することによって、金属元素を捕獲することもできる。
また、成膜方法によっては、非晶質珪素膜が水素を含む場合がある。その場合、レーザビームの照射により水素が噴出しないようにするため、熱処理を行い、珪素膜の水素出しを行うことが好ましい。
本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、非晶質珪素膜をおよそ50nm成膜する。そして、スピンコート法を用いて、重量換算で1〜100ppm(好ましくは10ppm)のニッケルを含む酢酸ニッケル溶液を、非晶質珪素膜一面に塗布する。
次いで、RTA法を用いて、750℃、3minで加熱処理を行う。さらに、エキシマレーザ(λ=308nm)で、スキャン速度2.5mm/sec、60Hz、エネルギー密度310mJ/cm2になるように照射して、結晶質珪素膜を得ることができる。
次いで、結晶質珪素膜中のニッケルをゲッタリングする。まず、結晶質珪素膜上に、アルゴンを含むゲッタリング用非晶質半導体膜を20nm〜250nmの範囲で形成する。ここでは、プラズマCVD法を用いて形成する。本実施の形態ではゲッタリング用非晶質半導体膜にアルゴンを添加しているが、他の希ガス元素、例えばヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)といった元素を用いることもできる。
次いで、RTAを用いる熱結晶化法を用いて、750℃、3minの加熱処理を行う。この工程で、結晶質珪素膜中のニッケルがゲッタリング用非晶質半導体膜に移動する。なお、ゲッタリングの際の加熱処理は、その他、加熱炉、レーザ照射、ファーネスアニール炉等を用いることができる。
また、ゲッタリング用非晶質半導体膜を形成する前にも、加熱処理を行ってもよい。ゲッタリング用非晶質半導体膜を形成する前に加熱処理を行うことで、結晶質珪素膜の歪みを低減させることができる。その結果、ゲッタリング工程の際にニッケル(触媒元素)がゲッタリングされやすくなる。
次いで、ゲッタリング用非晶質半導体膜を選択的にエッチングして除去する。エッチングは、ClF3によるプラズマを用いないドライエッチング、又はフッ酸、ヒドラジン若しくはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド((CH3)4NOH)を含む水溶液などのアルカリ溶液によるウエットエッチング等で行なえばよい。以上の工程で、本実施の形態の半導体膜(結晶質珪素膜)を得ることができる。
次いで、後に第1の構造層806を形成する半導体膜上に、微小構造体を構成するための第1の犠牲層808を形成する(図8(A1)、(A2))。第1の犠牲層808は、微小構造体が有する空隙を形成するために設ける。すなわち犠牲層をエッチング等により除去することで、微小構造体に空隙が形成される。空隙は、可動部を有する構造層の下方又は上方に作製されるものであり、可動部を有する構造層と接する空隙部と表記することもできる。
第1の犠牲層808は、タングステンやモリブデン、チタンなどの元素や化合物を材料とし、スパッタリング法やCVD法等を用いて形成することができる。そして、当該材料を用いて形成した膜に対して、粗面処理を施して表面を粗面化する。ここでは、第1の犠牲層808となる膜に、レーザビームの照射により粗面処理を行い、表面に複数の凹凸を形成して粗面化する。ここで形成される凸部を凸部Bとすると、例えば隣接する凸部B同士の頂点と頂点との距離が0.02μm以上0.1μm以下のものを形成することができる。
本実施の形態では、第1の犠牲層808としてタングステン膜をおよそ400nm成膜し、YAGレーザ(λ=1064nm)を出力150W、スキャン速度100mm/secの条件で照射する。
また、第1の犠牲層808として、アルミニウムを用いることもできる。この場合は、アルミニウムを用いた膜に対して加熱処理することで粗面処理を行い、表面に凹凸を生じさせて粗面化する。また、粗面処理の方法としては、加熱処理の代わりにアルミニウムを用いた膜に選択的に電流を流し、凹凸を形成して粗面化することもできる。
次いで、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、第1の犠牲層808を任意の形状に加工する。なお、第1の犠牲層808に対するレーザ照射は、第1の犠牲層808を任意の形状に加工した後に行うことも可能である。
第1の犠牲層808の膜厚は、第1の犠牲層808の材料や、微小構造体の構造および動作方法、犠牲層エッチングの方法やエッチング剤等、様々な要因を考慮して決定することができる。例えば、犠牲層が薄すぎる場合は、エッチング剤が拡散せず、犠牲層が完全にエッチングされない恐れがある。また、犠牲層が厚すぎる場合は、犠牲層を除去した後に形成される空隙が大きくなる。そのため、微小構造体を静電力で動作させるときに、空隙が大きすぎて微小構造体を静電力で駆動させることができなくなる。これらの要素を考慮して、例えば、第1の犠牲層808下部に形成された第1の構造層806と、後に第1の犠牲層808上に形成される第2の構造層との間の静電力により駆動を行う微小構造体を形成する場合には、第1の犠牲層808は0.5μm以上3μm以下の厚さを有することが望ましい。好適には、第1の犠牲層808は1μm以上2μm以下の厚さを有することが望ましい。
また、第1の犠牲層808として、内部応力が大きい、又は密着性が悪く半導体膜(第1の構造層806)から剥がれやすい材料を用いると、一度に厚い層を形成することができない。このような材料を用いて第1の犠牲層808を形成する場合には、成膜と、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いたパターニングとを繰り返し、第1の犠牲層808を厚くすることも可能である。
次いで、半導体膜を任意の形状に加工し、半導体層804および第1の構造層806を形成する(図8(A1)、(A2))。なお、本実施の形態では、第1の犠牲層808を形成した後に、半導体膜をパターニングして半導体層804及び第1の構造層806を形成したが、本発明はこの限りではない。例えば、半導体膜をパターニングして半導体層804及び第1の構造層806を形成した後に、第1の犠牲層808を形成することもできる。
次いで、半導体層804、第1の構造層806及び第1の犠牲層808上に、第1の絶縁層809を形成する。なお、素子領域800aに形成される第1の絶縁層809をゲート絶縁層810とし、構造体領域800bに形成される第1の絶縁層809を第2の構造層A812とする(図8(B1)、(B2))。このとき、第2の構造層A812が下層の第1の犠牲層808と接する面は、該第1の犠牲層の粗面化された表面に沿った面となる。つまり、第2の構造層A812は、第1の犠牲層808に形成された凹凸にそって表面に凹凸が形成され、粗面化される。
第1の絶縁層809(ゲート絶縁層810および第2の構造層A812を併せて第1の絶縁層809と表記する)は、下地絶縁膜802と同様、酸化珪素、窒化珪素、または酸化窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて、プラズマCVD法またはスパッタリング法等で形成することができる。本実施の形態では、プラズマCVD法によりおよそ50nmの厚さで酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成する。勿論、第1の絶縁層809は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の絶縁性を有する層を単層または積層構造として形成してもよい。
また、第1の絶縁層809の材料として、高誘電率を有する金属元素酸化物、例えばハフニウム(Hf)酸化物を用いることもできる。このような高誘電率材料を用いて第1の絶縁層809を形成することで、半導体素子を低電圧で駆動することができ、低消費電力の半導体装置を提供することができる。
また、第1の絶縁層809は高密度プラズマ処理によって形成することもできる。高密度プラズマ処理とは、プラズマ密度が1×1011cm3以上、好ましくは1×1011cm3から9×1015cm3以下であり、マイクロ波(例えば周波数2.45GHz)といった高周波を用いたプラズマ処理である。このような条件でプラズマを発生させると、電子温度が0.2eVから2eVと低くなる。このように低電子温度が特徴である高密度プラズマは、活性種の運動エネルギーが低いため、プラズマダメージが少なく、欠陥の少ない膜を形成することができる。
このようなプラズマ処理を可能とする成膜室に、半導体層804、第1の構造層806、及び第1の犠牲層808が形成された基板(被形成体に相当する)を配置する。そして、プラズマ発生用の電極、所謂アンテナと被形成体との距離を20mmから80mm、好ましくは20mmから60mmとして成膜処理を行う。このような高密度プラズマ処理は、低温プロセス(基板温度400℃以下)の実現が可能となる。そのため、耐熱性の低いガラスやプラスチックを基板801として利用することができる。
このような第1の絶縁層809の成膜雰囲気は窒素雰囲気、又は酸素雰囲気とすることができる。窒素雰囲気とは、代表的には、窒素と希ガスとの混合雰囲気、又は窒素と水素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを用いることができる。また酸素雰囲気とは、代表的には、酸素と希ガスとの混合雰囲気、酸素と水素と希ガスとの混合雰囲気、又は一酸化二窒素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを用いることができる。
このような工程を用いることで、他の被膜に与えるダメージを少なくし、かつ緻密な第1の絶縁層809を形成することができる。また高密度プラズマ処理により形成された絶縁層は、当該絶縁層と接触する層との界面状態を改善することができる。すなわち、高密度プラズマ処理を用いることで、ゲート絶縁層810となる第1の絶縁層809と、半導体層804との界面状態を改善することができる。その結果、半導体素子の電気特性を向上させることができる。また、第2の構造層A812となる第1の絶縁層809と、第1の構造層806との界面状態も改善することができるので、強度の高い第2の構造層A812を有する微小構造体を作製することができる。
ここでは、第1の絶縁層809の形成に高密度プラズマ処理を用いる場合を説明したが、例えば、半導体層804および第1の構造層806に高密度プラズマ処理を施してもよい。高密度プラズマ処理によって、半導体層804および第1の構造層806表面の改質を行うことができる。その結果、半導体素子の電気特性、および微小構造体の耐久性を向上させることができる。さらに高密度プラズマ処理は、第1の絶縁層809の形成のみではなく、下地絶縁膜802や他の絶縁層を形成する場合にも用いることができる。
次いで、第1の絶縁層809上に半導体素子を構成するゲート電極層814を形成する。ゲート電極層814は、第1の導電層813及び第2の導電層815の積層構造とする。また、同時に、微小構造体を構成する第2の構造層B816、及び微小構造体を形成するための第2の犠牲層817も形成する。第2の構造層B816は第1の導電層813からなり、第2の犠牲層817は第2の導電層815からなる(図8(B1)、(B2))。ゲート電極層814等を構成する第1の導電層813及び第2の導電層815は、タングステン(W)、タンタル(Ta)等、導電性を有する金属元素や金属元素化合物を材料とし、スパッタリング法やCVD法等を用いて形成することができる。本実施の形態では、第1の導電層813としてタンタル(Ta)、第2の導電層815としてタングステン(W)を用いる。なお、ゲート電極層814は、単層構造とすることもできる。この場合は、第2の構造層B816を形成せず、第2の犠牲層817のみ形成する。
また、第2の構造層B816は、先に形成された第1の絶縁層809からなる第2の構造層A812と併せて、本発明の微小構造体の第2の構造層とする。しかし、ゲート電極層814を積層構造としない場合には、形成しなくともよい。この場合、第2の構造層は、第1の絶縁層809(第2の構造層A812)のみから形成される。
また、第2の犠牲層817を第1の犠牲層808と同時にエッチングする場合、第1の犠牲層808と同一の材料を用いて成膜することが望ましい。しかしながら、本発明はこれらの材料に限定されず、第1の犠牲層808および第2の犠牲層817は同一の材料を用いて作製してもよく、異なる材料を用いて作製してもよい。
ゲート電極層814、第2の構造層B816および第2の犠牲層817は、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、第1の導電層813及び第2の導電層815を任意の形状に加工することで得ることができる。なお、エッチングにドライエッチング法を用いる場合は、例えばICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。エッチング用ガスとしては、Cl2、BCl3、SiCl4もしくはCCl4などを代表とする塩素系ガス、CF4、SF6もしくはNF3などを代表とするフッ素系ガスまたはO2を適宜用いることができる。また、第1の導電層、又は第2の導電層を複数の導電性材料を用いて形成した場合、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板801側の電極に印加される電力量、基板801側の電極温度等)を適宜調節することで、第1の導電層又は第2の導電層をエッチングすることができる。
次いで、半導体素子を構成する半導体層804にN型の不純物元素を添加して、第1のN型不純物領域818を形成する。ここでは、ゲート電極層814をマスクとして、選択的に不純物元素を添加する。また、後にP型半導体素子となる領域上には、レジストマスク870を形成しておく。このように、N型不純物領域とP型不純物領域は、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成し、不純物元素を添加することで選択的に形成することができる。例えば、N型不純物領域を形成する場合は、P型不純物領域を形成する領域上をレジストマスク等で覆っておけばよい。同様に、P型不純物領域を形成する場合には、N型不純物領域を形成する領域上をレジストマスク等で覆っておけばよい。不純物元素を添加する方法は、イオンドープ法またはイオン注入法で行うことができる。N型を付与する不純物元素としては、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いることができる。P型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)を用いることができる。
次いで、プラズマCVD法等によって窒化珪素等の窒素化合物や酸化珪素等の酸化物からなる絶縁層を形成する。そして、当該絶縁層を垂直方向の異方性エッチングすることで、ゲート電極層814の側面に接する絶縁層(以下、サイドウォールと記載する)822を形成する。なお、この工程で同時に第2の構造層B816及び第2の犠牲層817の側面に接するサイドウォール824も形成される(図9(A1)、(A2))。
次いで、ゲート電極層814およびサイドウォール822をマスクとして、半導体層804にN型の不純物元素を添加し、第2のN型不純物領域826と、第3のN型不純物領域828を形成する。なお、ゲート電極層814下の半導体層804は、チャネル形成領域820となる。
次いで、N型半導体素子となる領域上にレジストマスクを形成し、半導体層804にP型の不純物元素を添加し、第1のP型不純物領域829を形成する。なお、ゲート電極層814及びサイドウォール822下の半導体層804は、チャネル形成領域821となる。N型不純物領域とP型不純物領域は、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成し、不純物元素を添加することで選択的に形成することができる。
また、第2のN型不純物領域826は低濃度不純物領域(LDD:Lightly Doped Drain)に相当し、サイドウォール822下方に位置する。
また、第3のN型不純物領域828は、第2のN型不純物領域826よりも高い濃度の不純物元素を有する高濃度不純物領域であり、ソース領域又はドレイン領域に相当する。第3のN型不純物領域は、ゲート絶縁層810を介して、ゲート電極層814及びサイドウォール822と重ならない領域である。
このように、サイドウォール822を利用して、半導体層804の不純物濃度に差を設けることにより、半導体素子のゲート長を短くするにつれて生じる短チャネル効果を防止することができる。
また、ゲート電極層814において、異なる導電性材料を積層させ、テーパー状に作製する場合、サイドウォール822を形成する必要はない。この場合は、一度の不純物元素の添加で低濃度不純物領域(LDD領域)及び高濃度不純物領域(ソース領域又はドレイン領域)を形成することができる。
次いで、不純物元素を活性化するために加熱処理、赤外光の照射、またはレーザビームの照射を行う。また、活性化と同時に第1の絶縁層809へのプラズマダメージや第1の絶縁層809と半導体層804との界面へのプラズマダメージを回復することができる。特に、室温から300℃の雰囲気中において、表面または裏面からエキシマレーザを用いて不純物元素を活性化させると、効果的な活性化を行うことができる。また、YAGレーザの第2高調波を照射して活性化させてもよい。YAGレーザはメンテナンスが少ないため好ましい活性化手段である。
また、第1の絶縁層809上に酸化窒化珪素、酸化珪素などの絶縁層からなるパッシベーション膜を形成した後、加熱処理、赤外光の照射、またはレーザビームの照射を行い、水素化を行うこともできる。例えば、プラズマCVD法を用いて、酸化窒化珪素膜を100nmの厚さに形成する。その後、クリーンオーブンを用いて、300〜550℃で1〜12時間加熱し、半導体層の水素化を行うことができる。例えば、クリーンオーブンを用い、窒素雰囲気中で410℃、1時間加熱する。この工程は、パッシベーション膜に含まれる水素により、不純物元素添加によって生じた半導体層804のダングリングボンドを終端することもできる。また同時に、上述の不純物領域の活性化処理を行うこともできる。
上記の工程により、N型半導体素子830と、P型半導体素子832とが形成される(図9(A1)、(A2))。なお、本実施の形態では、N型半導体素子及びP型半導体素子を作製したが、本発明はこれに限らず、目的に併せて適宜変更可能である。例えば、全てN型半導体素子としてもよいし、全てP型半導体素子としてもよい。
なお、本実施の形態では、N型半導体素子830のみ低濃度不純物領域を設けたが、P型半導体素子832にも低濃度不純物領域を設けることができる。
また、本実施の形態では、微小構造体を構成する第1の構造層806には、レジストマスク等を用いて、不純物元素を添加しないものとする。もちろん、第2の犠牲層817で覆われていない領域の第1の構造層806に不純物領域が形成されていてもよい。
続いて、全体を覆うように第2の絶縁層834を形成する(図9(B1)、(B2))。第2の絶縁層834は、絶縁性を有する無機材料や、有機材料等により形成することができる。無機材料は、酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。有機材料はポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。なお、シロキサン樹脂とは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。ポリシラザンは、シリコン(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を出発原料として形成される。
次いで、第2の絶縁層834および第1の絶縁層809(ゲート絶縁層810)を順次エッチングし、第1のコンタクトホール836を形成する(図9(B1)、(B2)参照)。エッチングは、ドライエッチング法またはウエットエッチング法を適用することができる。本実施の形態では、ドライエッチングにより第1のコンタクトホール836を形成する。
次いで、第2の絶縁層834上、および第1のコンタクトホール836に第2の導電層を形成する。そして、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、任意の形状に加工することで、ソース電極、ドレイン電極を構成する配線838を形成する。また、同時に微小構造体の上部電極839を形成する(図9(B1)、(B2)参照)。配線838、及び上部電極839となる第2の導電層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)もしくはシリコン(Si)の元素からなる膜又はこれらの元素を用いた合金膜を用いることができる。
次いで、第2の絶縁層834および第1の絶縁層809(第2の構造層A812)を順次エッチングし、第2のコンタクトホール840を形成することで、第1の犠牲層808、および第2の犠牲層817を露出させる(図10(A1)、(A2))。なお、図10(A1)〜図10(B2)では、微小構造体を有する構造体領域800bのみを示す。
エッチングは、ドライエッチング法またはウエットエッチング法を適用することができる。本実施の形態では、ドライエッチングにより第2のコンタクトホール840を形成する。第2のコンタクトホール840は、第1の犠牲層808および第2の犠牲層817をエッチング除去するために開口する。したがって、エッチング剤が流入するように、直径を決定する。例えば、第2のコンタクトホール840の直径を2μm以上とすることが好ましい。
また、第2のコンタクトホール840は、第1の犠牲層808および第2の犠牲層817をエッチングしやすいように、大きな径を有するコンタクトホールとして形成することも可能である。つまり、図10(A1)、(A2)に示すように小さな穴として形成する必要はなく、第2の絶縁層834が必要な部分(例えば半導体素子上の絶縁層等)を残して、第2の犠牲層817全体が露出するように第2のコンタクトホール840を形成してもよい。
次いで、第1の犠牲層808および第2の犠牲層817をエッチングにより除去する(図10(B1)、(B2)、(C))。第1の犠牲層808および第2の犠牲層817のエッチングは、犠牲層の材料によって適したウエットエッチング液を用いるか、または、ドライエッチングにより、第2のコンタクトホール840を利用して行うことができる。また、エッチング工程では、第1の構造層806、第2の構造層A812及び第2の構造層B816の材料、第1の犠牲層808、第2の犠牲層817の材料、および犠牲層を除去するエッチング剤の適当な組み合わせを選択する必要がある。
例えば、犠牲層がタングステン(W)である場合、28wt%のアンモニア水と31wt%の過酸化水素水を1:2で混合した溶液に20分程度漬けることで行うことができる。本発明では、第1の構造層及び第2の構造層の相対向する面に複数の凹凸が形成され粗面化されているため、ウエットエッチング後の乾燥に際しての、毛細管現象による微小構造体の座屈を防ぐことができる。さらに微小構造体の座屈を防ぐため、粘性の低い有機溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いてリンスを行う、または低温低圧の条件で乾燥させるか、またはこの両者の組み合わせによって行うことが望ましい。さらには、氷結乾燥を行うことも効果的である。
また、毛細管現象による微小構造体の座屈を防ぐため、微小構造体表面に撥水性を持たせるプラズマ処理を行うこともできる。また、犠牲層は、大気圧などの条件において、F2やXeF2を用いてドライエッチングを行うことができる。ここで、第1の犠牲層808および第2の犠牲層817が異なる材料で形成されており、同一のエッチング剤でエッチングできない場合には、二度に分けて犠牲層をエッチングする必要がある。この場合には、除去しないがエッチング剤と接する層(例えば第1の構造層806や第2の絶縁層834等)との選択比を十分に考慮する必要がある。
このような工程を用いて第1の犠牲層808を除去して第1の空隙部842を形成し、第2の犠牲層817をエッチング除去して第2の空隙部844を形成することにより、微小構造体850を作製することができる(図10(B1)、(B2)、(C))。ここで、微小構造体850は第1の構造層806と第2の構造層A812との間に設けられた第1の空隙部842を有する。そして、第2の構造層B816とその上に形成された第2の絶縁層834との間に設けられた第2の空隙部844を有する。微小構造体850の第2の構造層A812及び第2の構造層B816は、第1の空隙部842及び第2の空隙部844を可動することができる。
以上の工程で、同一基板上に半導体素子852と、微小構造体850と、を有する半導体装置860を得ることができる。
上記工程のように、レーザ照射による結晶化、またはニッケル添加とレーザ照射の組み合わせによって結晶化する場合、熱処理のみによる結晶化に比べて低温で行うことができる。そのため、プロセスに使用できる材料の幅が広がる。例えば、半導体層を加熱のみで結晶化させる場合、1000℃程度の温度で1時間程度の加熱を行う必要があり、熱に被弱なガラス基板や、融点が1000℃以下の金属元素を用いることができない。しかしながら、上記工程を用いることによって、ゆがみ点が593℃であるガラス基板等を用いることが可能になる。
また、本発明は、同一基板上に微小構造体および半導体素子を作製することで、組み立てやパッケージが不要な、製造コストのかからない半導体装置を提供することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明に係る半導体装置から基板を剥離し、別の基板や物体に貼り付ける方法について、図13、図14を用いて説明する。
図13(A)に示すように、本発明に係る半導体装置960は、上記実施の形態6で説明したN型半導体素子830、P型半導体素子832、微小構造体850を有する。また、本発明は、剥離層902と、アンテナとして機能する導電層932、及び該導電層932を制御する半導体素子930を有する。その他の構成は、上記実施の形態6に準ずる。
半導体装置960を基板801から剥離する場合、下地絶縁膜802を作製する際に、剥離層902を形成する。剥離層902は積層された下地絶縁膜802の下方、又は間に成膜することができる。剥離層902としては、スパッタリング法やプラズマCVD法等により、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、鉛(Pb)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる層を、単層又は積層して形成する。珪素を含む層の構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれの場合でもよい。
剥離層902が単層構造の場合、例えば、タングステン層、モリブデン層またはタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成する。あるいは、タングステンの酸化物若しくは酸化窒化物を含む層、モリブデンの酸化物若しくは酸化窒化物を含む層またはタングステンとモリブデンの混合物の酸化物若しくは酸化窒化物を含む層を形成する。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。また、タングステンの酸化物は、酸化タングステンと表記することがある。
剥離層902が積層構造の場合、1層目としてタングステン層、モリブデン層またはタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成し、2層目として、タングステン、モリブデンまたはタングステンとモリブデンの混合物の酸化物、窒化物、酸化窒化物若しくは窒化酸化物を含む層を形成する。
なお、剥離層902として、タングステンを含む層とタングステンの酸化物を含む層の積層構造を形成する場合、タングステンを含む層を形成し、その上層に酸化珪素を含む層を形成することで、タングステン層と酸化珪素層との界面に、タングステンの酸化物を含む層が形成されることを活用してもよい。これは、タングステンの窒化物、酸化窒化物および窒化酸化物を含む層を形成する場合も同様であり、タングステンを含む層を形成後、その上層に窒化珪素層、酸化窒化珪素層、窒化酸化珪素層を形成するとよい。また、タングステンの酸化物は、WOxで表され、Xは2〜3であり、Xが2の場合(WO2)、Xが2.5の場合(W2O5)、Xが2.75の場合(W4O11)、Xが3の場合(WO3)などがある。タングステンの酸化物を形成するにあたり、上記に挙げたXの値に特に制約はなく、エッチングレート等を基に、どの酸化物を形成するかを決めるとよい。なお、エッチングレートとして最も良いものは、酸素雰囲気下で、スパッタリング法により形成するタングステンの酸化物を含む層(WOx、0<X<3)である。従って、作製時間の短縮のため、剥離層として、酸素雰囲気下でスパッタリング法によりタングステンの酸化物を含む層を形成するとよい。また、剥離層として金属層と金属酸化物を含む層の積層構造で設ける場合、金属層を形成後、当該金属層にプラズマ処理を行うことによって金属層上に金属酸化膜を形成してもよい。プラズマ処理を行う場合、酸素雰囲気下や窒素雰囲気下またはN2O雰囲気下等で行うことによって、金属膜上に金属酸化膜や金属酸窒化膜等を形成することができる。
導電層を制御する半導体素子930は、N型半導体素子830、又はP型半導体素子832と同様に作製することができる。ここでは、半導体素子930は、P型半導体素子832と同様のものとする。導電層932は、半導体素子930が有する配線に接するように形成する。導電層932は、プラズマCVD法、スパッタリング法、印刷法、液滴吐出法を用いて、導電性材料により形成する。好ましくは、導電層932は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。具体的には、導電層932は、スクリーン印刷法により、銀を含むペーストを用いて形成し、その後、50℃〜350℃の加熱処理を行って形成することができる。又は、スパッタリング法によりアルミニウム層を形成し、当該アルミニウム層をフォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いてパターニングすることにより形成することもできる。アルミニウム層を用いる場合は、ウエットエッチング法を用いるとよく、ウエットエッチング加工後は200℃〜300℃の加熱処理を行うとよい。
さらに、本実施の形態では、後の剥離工程等で半導体装置960を保護するため、半導体素子上に第3の絶縁層934を設ける。第3の絶縁層934は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの炭素を含む層、窒化珪素を含む層、窒化酸化珪素を含む層、有機材料により形成し、好ましくはエポキシ樹脂により形成する。
次いで、半導体装置960を基板801から剥離する方法について説明する(図13(A)、(B))。剥離には様々な方法があるが、ここでは一例を示す。まず、レーザビーム(例えばUV光)を照射することによって、第3の絶縁層934、第2の絶縁層834、第1の絶縁層809及び下地絶縁膜802に開口部904を形成する。そして、物理的な力を用いて、半導体装置960から基板801を剥離することができる。また、半導体装置960から基板801を剥離する前に、開口部904にエッチング剤を導入して、剥離層902を除去してもよい。エッチング剤は、フッ化ハロゲンまたはハロゲン間化合物を含む気体又は液体を使用する。例えば、フッ化ハロゲンを含む気体として三フッ化塩素(ClF3)を使用する。なお、剥離層902は、全て除去せず、一部分を残存させてもよい。こうすることによって、エッチング剤の消費量を抑え剥離層902の除去に要する処理時間を短縮することが可能となる。また、剥離層902の除去を行った後にも、基板801上に半導体装置960を保持しておくことが可能となる。また、半導体装置960から剥離した基板801は、コストの削減のために、再利用することが好ましい。
次いで、半導体装置960の一方の面を、第1の基体910に接着させて、基板801から完全に剥離する。続いて、半導体装置960の他方の面を、第2の基体912に接着させる。その後、加熱処理と加圧処理の一方又は両方を行って、半導体装置960を、第1の基体910と第2の基体912により封止する。第1の基体910と第2の基体912は、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなるフィルム、繊維質な材料からなる紙、基材フィルム(ポリエステル、ポリアミド、無機蒸着フィルム、紙類等)と接着性合成樹脂フィルム(アクリル系合成樹脂、エポキシ系合成樹脂等)との積層フィルムなどに相当する。
フィルムは、被処理体と熱圧着により処理が行われるものである。加熱処理と加圧処理を行う際には、フィルムの最表面に設けられた接着層か、又は最外層に設けられた層(接着層ではない)を加熱処理によって溶かし、加圧により接着する。また、第1の基体910と第2の基体912の表面には接着層が設けられていてもよいし、接着層が設けられていなくてもよい。接着層は、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂系接着剤、樹脂添加剤等の接着剤を含む層に相当する。
以上の工程により、可撓性を有する半導体装置を作製することができる。また、微小構造体を有する薄くて柔らかく小型な半導体装置を得ることができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態8)
本実施形態では、本発明に係る微小構造体を有し、無線通信を可能とする半導体装置の一例について説明する。
図11に、半導体装置601の詳細な構成を示す。まず、半導体装置601が有する電気回路604について説明する。電気回路604は、外部(ここではリーダライタに相当する)から放射される電磁波を受信して半導体装置601を駆動させる電力を生成する。さらに、電気回路604は、外部と無線で通信を行う機能を有する。そのため電気回路604は、電源回路611、クロック発生回路612、復調回路613、変調回路614、復号化回路615、符号化回路616、および情報判定回路617等、無線通信に必要な回路を有する。また、無線通信に使用する電磁波の周波数や通信方法によっては、異なる回路構成を有する場合があり、適宜変更可能である。
電気回路604は微小構造体603を制御する、又はリーダライタからの情報を処理する等の機能を有する。そのため電気回路604は、メモリ、メモリ制御回路、演算回路等を有する。図11に示した例では、メモリ621、メモリ制御回路622、演算回路623、構造体制御回路624、A/D変換回路625、信号増幅回路626を有する。
電源回路611はダイオードおよび容量を有し、アンテナ602に発生した交流電圧を整流して定電圧を保持し、当該定電圧を各回路に供給することができる。クロック発生回路612はフィルター素子や分周回路を有し、アンテナ602に発生した交流電圧をもとに必要な周波数のクロックを発生させ、当該クロックを各回路に供給することができる。
ここで、クロック発生回路612が生成するクロックの周波数は、基本的にリーダライタと半導体装置601とが通信に用いる電磁波の周波数以下である。また、クロック発生回路612はリングオシレータを有し、電源回路611から電圧を入力して任意の周波数のクロックを生成することも可能である。
復調回路613はフィルター素子や増幅回路を有し、アンテナ602に発生した交流電圧に含まれる信号を復調することができる。復調回路613は、無線通信に用いる変調方式によって異なる構成の回路を有する。復号化回路615は、復調回路613によって復調された信号を復号化する。この復号化された信号が、リーダライタより送信された信号である。情報判定回路617は比較回路等を有し、復号化された信号がリーダライタより送信された正しい信号であるか否かを判定することができる。正しい情報であると判断された場合、情報判定回路617は各回路(例えば、メモリ制御回路622や演算回路623、構造体制御回路624等)に正しいことを示す信号を送信し、その信号を受けた回路は所定の動作を行うことができる。
符号化回路616は、半導体装置601からリーダライタへ送信するデータを符号化する。変調回路614は、符号化されたデータを変調し、アンテナ602を介してリーダライタへ送信する。
リーダライタへ送信するデータは、メモリ621が記憶している半導体装置固有のデータや、半導体装置が有する機能により得られたデータである。半導体装置固有のデータとは、例えば、半導体装置が不揮発性のメモリを有し、当該不揮発性のメモリに記憶される個体識別情報等のデータである。半導体装置が有する機能により得られたデータとは、例えば、微小構造体によって得られたデータや、それらをもとに何らかの演算を行ったデータ等である。
メモリ621は、揮発性メモリ、および不揮発性メモリを有することができ、半導体装置601固有のデータや、微小構造体603から得られた情報等を記憶する。図11にはメモリ621が一つのみ記載されているが、記憶する情報の種類や、半導体装置601の機能に応じて複数種類のメモリを有することも可能である。メモリ制御回路622は、メモリ621に記憶されている情報を読み出す、およびメモリ621に情報を書き込む場合にメモリ621を制御する。具体的には、書き込み信号、読み出し信号、メモリ選択信号等を生成する、アドレスを指定する、等の動作を行うことができる。
構造体制御回路624は、微小構造体603を制御するための信号を生成することができる。例えば、リーダライタからの命令によって微小構造体603を制御する場合には、復号化回路615によって復号化された信号をもとに微小構造体603を制御する信号を生成する。また、メモリ621内に微小構造体603の動作を制御するプログラム等のデータが記憶されている場合、メモリ621から読み出したデータをもとに微小構造体603を制御する信号を生成する。そのほかにも、メモリ621内のデータ、リーダライタからのデータ、および微小構造体603から得られたデータをもとに微小構造体603を制御するための信号を生成するフィードバック機能を有することも可能である。
演算回路623は、例えば、微小構造体603から得られたデータの処理を行うことができる。また、上記の構造体制御回路624がフィードバック機能を有する場合の、情報処理等を行うことも可能である。A/D変換回路625は、アナログデータとデジタルデータとの変換を行う回路であり、微小構造体603へ制御信号を伝達する、または微小構造体603からのデータを変換して各回路に伝達することができる。信号増幅回路626は、微小構造体603から得られる微小な信号を増幅してA/D変換回路625へ伝達することができる。
微小構造体603は、電気回路604と電気的に接続されている。また、微小構造体603の具体的な構成は、本発明に係る微小構造体を適用することができる。例えば、上記実施の形態1乃至4に示すような、微小構造体を適用することができる。本発明に係る微小構造体は、可動部分の対向する表面が、互いに異なる粗さとなっているため、製造工程及び製造後の動作中に微小構造体に不良が生じるのを防止することができる。また、可動部分に凸部を設けることで、該可動部分を丈夫にして耐久性を向上させることができる。
また、本発明に係る微小構造体を復調回路613内に含まれるスイッチとして用いることもできる。復調回路613のスイッチに本発明の微小構造体を用いることにより、回路構成を縮小することができる。もちろん、他に示す回路のスイッチとして上記実施の形態に示す微小構造体を適宜用いることもできる。
このような半導体装置により、無線通信を可能とすることができる。半導体装置が有する微小構造体は、可動部分の対向する面に複数の凹凸が設けられているため、動作中に座屈する恐れが少ない。そのため、この微小構造体を有する半導体装置は信頼性に優れている。
(実施の形態9)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置の具体的な構成および使用の別の一例を、図16を用いて説明する。
図16に、本発明の半導体装置を圧力センサーとして用いる場合の具体例を示す。自動車のタイヤ1806の空気圧が低下すると、タイヤ1806の変形量が大きくなり、抵抗が増加し、結果として燃費が悪化する、或いは事故に繋がる可能性が生じる。本実施の形態の半導体装置では、比較的簡便にかつ日常的に、タイヤ1806の空気圧をモニターするシステムを提供することができる。
図16に示すように、半導体装置1807をタイヤ1806のホイール1808部分に設置する。そして、半導体装置1807にリーダライタ1809を近づけ、無線通信を行うことで、タイヤ1806の空気圧の情報を得ることができる。半導体装置1807としては、例えば上記実施の形態で示す微小構造体603を有する半導体装置601を適用することができる。また、無線通信技術等は、上記実施の形態8と同様である。
本実施の形態であれば、ガソリンスタンドや自動車整備工場へ行くことなく、比較的簡便にかつ日常的にタイヤの空気圧をモニターすることができる。
このように半導体装置1807をタイヤ1806に設けることにより、無線通信によりタイヤ1806の空気圧を日常的に点検することが可能となる。半導体装置が有する微小構造体は、可動部分の対向する面に複数の凹凸が設けられているため、動作中(空気圧のモニター中)に座屈する恐れが少ない。そのため、この微小構造体を有する半導体装置は信頼性に優れている。
なお、本実施形態は、上記実施形態と自由に組み合わせて行うことができる。