以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るクラック検知支援装置100の概略構成を示す概略図である。図1に基づいて、クラック検知支援装置100の構成及び動作について説明する。このクラック検知支援装置100は、測定対象物50に対し高い音圧を有する超音波を照射し、照射した超音波の疎密にそって測定対象物50を浮遊、振動させることで、非接触で測定対象物50を加振して、測定対象物50のクラック検知を支援するようにしたものである。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1には、測定対象物50を併せて図示している。
[クラック検知支援装置100の構成]
クラック検知支援装置100は、図1に示すようにPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子10aが設けられた振動部10と、圧電素子10aにパルス電圧を供給する発振部30と、振動部10とホーン11を介して接続された振動板12と、超音波領域まで検出可能な音検出装置13とを備えている。圧電素子10a、振動部10、ホーン11、振動板12は概ね同様の周波数付近に共振周波数を有するように設計されており、その共振周波数に近いパルス電圧を圧電素子10aに印加することにより、測定対象物50を浮上させる為に必要な130dB以上の高い音圧の超音波を放射できるように構成されている。
なお、今回示しているクラック検知支援装置100ではホーン11を備えているが、たとえば、振動板12をアルミ等の軽量な素材(密度が小さく、弾性が高い素材)で構成したり、より高電圧なパルス電圧が入力できる構成にすることによって、ホーン11無しでも130dB以上の音圧を放射することは可能であり、ホーン11は必ずしも必要というわけではない。
次にクラック検知支援装置100の詳細な構造について説明する。
振動部10は、15kHz〜45kHz帯域内に共振周波数f0 を持つ圧電素子10aが設けられており、振動部10は、圧電素子10aを挟み込み、圧電素子10aで発生した振動を伝播する金属(剛体)で形成されている。また、振動部10には、ホーン11を介して振動板12がネジ止めや接着にて接続されており、振動板12は圧電素子10aと同様の共振周波数f0 を有するように構成されている。
圧電素子10aは正電極端子及び負電極端子を介して発振部30に接続され、発振部30から共振周波数f0 付近のパルス電圧が圧電素子10aに印加される。すると、圧電素子10aは、共振周波数f0 付近にピークを有する振動を発振し、その振動は振動部10、ホーン11を介して振動板12に伝播する。そして、振動板12は、共振周波数f0 付近にピークを有する音波(超音波)を放射する。
ここで、発振部30は、図1に示すように、特定の周波数finを有する電圧Vin、電流Iinを圧電素子10aへ入力するだけでなく、圧電素子10aから出力される電圧Vout 、電流Iout 、を検出する機能を有するとともに、電流と電圧との位相差φout 、インピーダンス値Zout を計算する機能を有する。なお、発振部30については、図16で詳細に説明する。
ホーン11は、振動部10から発生する振動の振幅を増幅する機能を有し、両端面が開口され、内部に音響通路(超音波帯域の音響信号を増幅する通路)が形成され、振動部10と振動板12との間に取り付けられている。また、ホーン11は、円錐台形状に構成され、振動部10側から振動板12側に向けて徐々に縮径されているのが好ましい。
振動板12は、金属板(剛体)で構成され、ホーン11の他端部(振動部10が配置されている一端部の反対側の端部)に固着されており、振動部10の発振(振動)と共振することによってより強力な共振波(130dB以上の音圧レベルの共振波)を発生するものである。つまり、振動板12は、振動部10からの振動エネルギーにより振動するのである。振動板12の振動に伴って発生する変位量をΔr1と称する。なお、振動板12のサイズを特に限定するものではないが、測定対象物50以上のサイズの方が測定対象物50全体に音波の影響を与えやすくなり、検知精度は高くなる。また、ホーン11を設けない場合には、振動板12は、振動部10の先端部に取り付けられる。
振動板12は、振動することによって振動板12の両面(ホーン11側の面(ホーン11を設けない場合には振動部10の設置面)及びその対向面)の全体から超音波として放射される。この振動板12は、振動部10から発信される超音波信号の「腹」の部分に固着するとよい。そうすれば、振動板12は、特定の振動モードで振動することになる。よって、振動板12と測定対象物50との間には、疎密を繰り返す定在波による音響波が発生していることになる。
音検出装置13は、振動板12の全面から放射される超音波によって空中に浮上及び振動する測定対象物50から発生する音を検出するものである。音検出装置13で検出された音は、音響エネルギー解析部16に送られる。音検出装置13としては、たとえばマイクロホンや音センサー、超音波センサー等、又はこれらを組み合わせて構成したものを用いるとよい。この音検出装置13は、振動板12の近接位置(たとえば、10cm以下)に設けるようにする。測定対象物50は、たとえばシリコン基板や太陽電池用セル等の半導体用ウェハ基板、あるいは、金属材料等の薄い板状のものであればよい。この測定対象物50は、振動板12から放射される超音波によって浮上する。加えて圧電素子10aや振動板12の共振周波数f0 と少しずれた入力をすることにより、振動板12から放射される超音波にアンバランスができ、これによって浮上している測定対象物50は振動する。測定対象物50の振動に伴って発生する変位量をΔr2と称する。
図1では、音検出装置13が1個だけ設けられている場合を例に示しているが、音検出装置13の個数を複数にしてもよい。音検出装置13を複数個設けることにより、音検出装置13を1個設ける場合よりもクラックの検知範囲が広範囲となり、また、測定対象物50に発生したクラックの位置を決定できるなど、クラック検知精度が向上することになる。また、感度の異なる音検出装置13を複数個設けて、測定対象物50で発生したクラックの大きさをある程度把握できるようにしてもよい。さらに、クラックの有無を自動で判定する場合には、判定結果を報知できるようにしておくとよい。
音検出装置13を複数個設ける場合は、音検出装置13と測定対象物50との距離が全て等しくなるように設けるとよい。また、複数個の音検出装置13の感度をすべて同等にしたい場合は、それぞれの音検出装置13の出力を同等となるように調整するとよい。とくに特定の位置での判定精度を向上させたい場合など、測定位置による重み付けをしたい場合は、重み付けに応じて、音検出装置13からの出力をソフト上で変更してもよいし、対象箇所の音検出装置13の感度を上げてもよい。音響エネルギー解析部16は、測定対象物50から発生する音の音響エネルギーを解析するものである。音響エネルギー解析部16は、たとえば検出音をFFT処理して周波数の関数に変換することで検出音の音響エネルギーを解析可能となっている。
また、振動部10、ホーン11、及び、振動板12で超音波発生部20を構成している。ただし、ホーン11を設けない場合には、振動部10及び振動板12で超音波発生部20を構成する。つまり、超音波発生部20は、発振部30によって供給された電圧よって超音波を発生する機能を有しているのである。さらに、音検出装置13及び音響エネルギー解析部16でクラック有無判断部21を構成している。つまり、クラック有無判断部21は、クラックが無い測定対象物50を浮遊・振動させたときに発生する音響エネルギーを基準とし(事前に測定しておく)、基準の音響エネルギーと、その後にクラックの有無を診断された測定対象物50の発する音響エネルギーと、を比較する機能を有しているのである(図17で詳細に説明する)。
[クラック検知支援装置100の動作]
まず、発振部30から圧電素子10aに圧電素子10aや振動板12の共振周波数f0 付近のパルス電圧が印加される。そうすると、圧電素子10aは、圧電素子10aに印加されたパルス電圧の周波数に応じた特定の周波数で振動し、その振動が振動部10に伝搬する。さらに振動部10の振動は、ホーン11を介して振動板12に伝搬する。伝搬した振動により振動板12の全体が変位量Δr1にて共振し、共振に伴った強力な音圧レベルを有する超音波が振動板12の表面全体から放射される。放射された超音波は、空気中に音圧の疎密を作り出す。特に一定の音圧レベルを超えると、測定対象物50が音圧の疎密に伴い浮遊することになる。加えて、測定対象物50は、音響波により加振されて振動(変位量Δr2)することになる。ここで、振動している測定対象物50がクラックを有している場合、測定対象物50から音が発生することになる。
ここで、圧電素子10aや振動板12の共振周波数f0 は、以下の理由により15kHz〜45kHz帯域内になるように構成すると良い。(1)15kHz以下だと人間の可聴領域に含まれるため、人間の聴覚で感じ取ることが可能となり、使用者に不快感を与える可能性がある。(2)45kHz以上であると周波数が小さすぎ、十分な振幅が得られないため、音圧レベルが低下することになる。
測定対象物50から発生する音は、音検出装置13で検出される。測定対象物50にクラックが発生している場合、クラック部分で割れ面同士の擦れにより「ビビリ音」が発生する(図3で詳細に説明する)。この音により、測定対象物50のクラックの有無を判定できる。たとえば、音検出装置13で検出した音の信号を増幅することで人間の聴覚で測定対象物50のクラックの有無を判定できる。また、音検出装置13で検出された音の信号を表示装置に表示し、人間の視覚で測定対象物50のクラックの有無を判定可能にしてもよい。音の信号を目視可能にすることにより、人間の聴覚では聞き取ることができない超音波領域の「ビビリ音」も検知できるようになり、クラックの検知精度が向上する。なお、クラック検知支援装置100は、測定対象物50を浮上させることによって、僅かなクラックであっても「ビビリ音」を発生させることができ、これにより僅かなクラックであっても判定することができるようになっている。
図2は、測定対象物50の浮遊の原理を説明するための説明図である。図2に基づいて、クラック検知支援装置100による測定対象物50の浮遊の原理について詳細に説明する。測定対象物50により必要なエネルギーは異なるが、半導体ウェハや太陽電池セルの浮遊には130dB以上の音圧レベルが必要であることが分かっている。そこで、クラック検知支援装置100では、130dB以上の音圧レベルの強力な超音波を発生できるようにしている。
クラック検知支援装置100は、上述したように、振動部10から強力な振動を発生させ、その振動を振動板12に伝達させることにより、振動板12を特定の振動モードで共振させる。これにより、振動板12の全体から強力な超音波(130dB以上の音圧レベルの超音波)が放射されることになる。振動板12から放射された超音波は、空気中にゆらぎを発生させ、超音波の波長に伴い、気圧の疎(減圧される場所)、密(加圧される場所)を生み出す。つまり、「疎」の部分から「密」の部分に向かい、空気の移動が起きる。そうすると、振動板12上に置かれた測定対象物50は、放射される超音波の音圧により浮上し、さらに空中の「密」付近で、且つ測定対象物50の重力と超音波の音圧がつりあう位置で浮遊する。
図3は、振動により測定対象物50から異音が発生する原理を説明するための説明図である。図3に基づいて、測定対象物50から異音(「ビビリ音」)が発生する原理について説明する。なお、図3(a)が測定対象物50の平面図を、図3(b)が測定対象物50の縦断面の一部を拡大した拡大断面図を、それぞれ示している。なお、図3では、測定対象物50にクラックが発生している状態を示している。また、図3に示すa及びbはクラックと測定対象物50の端部との距離(b>a)を、A及びBはクラックで分けられた測定対象物50のエリアを、fa及びfbはA及びBでの振動周波数(fa>fb)を、それぞれ表している。
図3(b)に示すように、クラックがある測定対象物50が振動すると、基本的にAもBも両側振動するが振動モードが異なるため、その振動によりクラック部分が擦れ、異音が発生することになる。図3(a)に示すように、クラックと、クラックと平行方向に位置する端部(図面左右側の端部)との距離が短い方(A側)が振動が細かい(fa>fb)。また、端部との距離に係らず、クラックを境にfaとfbに位相差φA-B が生じる。つまり、A側とB側の位相差によって、AとBとの間で擦れが発生し、異音を発生させるのである。サンプル(測定対象物50)全体が大きく振動すればするほど、faとfbの差は大きくなり、それに伴いφA-B も大きくなる。
図4は、測定対象物50から発生する音のFFT処理後の波形例を示すグラフである。図4に基づいて、測定対象物50にクラックが発生しているかどうかの判定方法について詳細に説明する。この図4では、クラック有無の判定に用いる音響エネルギーをFFTにて解析した際の波形データを示している。なお、レスポンスは、音響エネルギーをFFT解析し導出したものである。また、図4(a)が測定対象物50にクラックが発生していない場合の波形データを、図4(b)が測定対象物50にクラックが発生している場合の波形データを、それぞれ示している。この図4では、横軸が発振周波数(Fs)[f]を、縦軸がレスポンス(音圧レベル)[dB]を、それぞれ示している。なお、音響エネルギー解析部16が、検出音をFFT処理して周波数の関数に変換している。
測定対象物50を空中に浮上させるためには、130dB以上、好ましくは145dB以上の音圧レベルが要求される。そこで、クラック検知支援装置100では、特定の振動モードを起こす振動板12を装着し、この振動板12によって振動部10から発振される特定の振動を強力な超音波として振動板12の全面から放射させるようになっている。したがって、測定対象物50の浮上に必要な130dB以上の音圧レベルの超音波が振動板12の近接位置(たとえば、10cm程度)に振動板12の全面から放射されることになる。
そうすると、振動板12と測定対象物50との間に定在波である音響波が発生し、測定対象物50を空中に浮上させることができる。測定対象物50は、浮上すると同時に振動し、音を発生する。浮上及び振動している測定対象物50から発生した音は、音検出装置13で検出される。この検出音は、FFT処理されて周波数の関数に変換される。FFT処理された周波数の測定帯域を特に限定するものではないが、音検出装置13の測定可能なたとえば5kHz〜80kHzの帯域とすることが好ましい。そして、測定対象物50にクラックが発生しているかどうかは、FFT処理された周波数応答として分析することで判定することができる。
図4(a)に示すように、測定対象物50にクラックが発生していない場合には、振動板12の共振周波数によるピーク周波数(矢印(ア):振動板12が発する主波長)が表れるものの、それ以外の周波数に変動は表れない(矢印(イ):クラックが発生していないときのベースレスポンス)。つまり、振動板12のピーク周波数以外の周波数は、発振時の下限音圧レベル(図4に示す線A(クラックが発生していないときの平均ベースレスポンス))を超えないのである。一方、図4(b)に示すように、測定対象物50にクラックが発生している場合には、振動板12のピーク周波数(矢印(ア))が表れる他、それ以外にも複数のピーク周波数成分が表れる(矢印(ウ):クラックが発生しているときのベースレスポンス)。
このとき、音圧レベルにクラック発生時のピーク周波数の音響判定用の閾値(図4(b)に示す線B(クラックが発生しているときの平均ベースレスポンス))を定めておけば、閾値を超えたピークが表れた場合に、測定対象物50にクラックが発生していると判定することができる。この判定は、人間が行なってもよく、自動判定装置等の機械が行なってもよい。つまり、クラック検知支援装置100は、クラックの発生の有無を容易に判定できるように支援するようになっている。したがって、FFT処理された周波数応答を分析することで、測定対象物50にクラックが発生しているかどうかの判定が容易に可能になる。加えて、FFT処理結果を表示すれば、その分析結果を人間の視覚により測定対象物50にクラックが発生しているかどうかの判定が可能になる。
すなわち、クラックが発生していない場合(図3(a))と比較し、図3(b)ではベースレスポンスの平均がAからBへと増加するのである。また、(ア)の値も増加の傾向となる。また、クラックが発生していない測定対象物50から予め閾値を定めておき、この閾値から突出したレスポンス量+周波数帯域でクラックの発生の有無の判定を自動判定装置等により機械的に実行するようにしてもよい。なお、測定対象物50から発生する音を音検出装置13で増幅させて、測定対象物50から発生する音を人間の聴覚により測定対象物50にクラックが発生しているかどうかを判定してもよい。また、視覚及び聴覚を組み合わせて測定対象物50にクラックが発生しているかどうかを判定してもよい。
図5は、測定対象物50の変位量Δr2と発生する音響エネルギーとの関係を示すグラフである。図5に基づいて、測定対象物50の振動(変位量Δr2)が発生する異音の音量に与える影響について説明する。この図5では、横軸が測定対象物50の変位量Δr2を、縦軸が発生する異音のレスポンス(音圧レベル)[dB]を、それぞれ示している。
図1で示した測定対象物50の変位量Δr2が大きい程、図3に示すAとBの振動振幅の差が大きくなる。また、振動振幅の差の大きさが擦れの強さとなり、1回の擦れによる異音の音量が増加する。つまり、検出される音響エネルギーが増加することになる。また、Δr2が大きくなるに従い、音響エネルギーの増加量は安定する傾向になる。なお、安定点は、測定対象物50及びクラックの大きさや形状、位置等により異なるが、レスポンス値100dB以下の範囲に収まる。
図6は、超音波発生部20への入力周波数(Hz)(ただし入力電圧Vinは一定)と測定対象物50の変位量Δr2との関係を示すグラフである。図6に基づいて、入力電圧Vinを一定としたときの、入力電圧の周波数finに対する測定対象物50の変位量Δr2の変化について説明する。この図6では、横軸が超音波発生部20への入力周波数(Hz)を、縦軸が測定対象物50の変位量(Δr2)を、それぞれ示している。なお、図6で示すf0 は振動板12の共振周波数を、αがf0 よりも小さい周波数域での「浮遊領域」と「不安定領域」の境までの周波数幅を、βがf0 よりも大きい周波数域での「浮遊領域」と「不安定領域」の境までの周波数幅を、それぞれ示している。また、入力電流Iinを一定としたときも同様の傾向となる。なお、図中ではαとβは同等の値を取るように表記しているが、必ずしもそうではなく、異なる値を有する場合もある。
図6で示している「無浮遊領域」とは、測定対象物50が浮遊しない領域のことを称している。図6で示している「不安定領域」とは、測定対象物50が浮遊するときと浮遊しないときとがある領域のことを称している。つまり、「不安定領域」とは、クラックの状態や周囲環境、デバイスの状態(動作時間等)等によって状態が異なる領域のことである。図6で示している「浮遊領域」とは、外部から力がかからない限り、如何なる状態でも測定対象物50が浮遊する領域のことを称している。
測定対象物50は、超音波にて発生する疎密の変動によって振動する。発振周波数が振動板12の共振周波数付近(f0 付近)では「浮遊領域」であるものの、疎密の分布が安定するので疎密の変動が小さくなり、測定対象物50のゆれ、つまり変位量Δr2が小さくなる。一方、「浮遊領域」内であって発振周波数と共振周波数とがずれていくと、超音波にて発生する疎密の変動が徐々に大きくなるので、疎密の変動に伴う測定対象物50の振動が大きくなる。
さらに、発振周波数が共振周波数からあるα又はβ以上にずれると、超音波にて発生する疎密の変動が大きくなりすぎて、様々な外来要因により浮遊したり浮遊しなかったりする周波数帯域(「不安定領域」)を経て、測定対象物50は浮遊しなくなる周波数帯域(「無浮遊領域」)へと至る。測定対象物50が浮遊しなくなる周波数は、環境により異なるが、α及びβは少なくとも100Hzより大きな値であることが分かっており、如何なる条件でも発振周波数を共振周波数±100Hz以内の範囲にすれば測定対象物50を確実に浮遊させることができるということが分かっている。
この結果から、クラック検知支援装置100では、測定対象物50が浮遊する周波数の範囲を振動板12の共振周波数±100Hz以内の範囲とし、振動板12から発生する超音波の共振周波数からずらした周波数を圧電素子10aに入力する電圧の発振周波数にしている。したがって、クラック検知支援装置100は、測定対象物50を確実に浮遊させることができ、安定的なクラック検知支援が可能になっている。
図7は、発生する異音のレスポンス(dB)と測定対象物50の変位量Δr2との関係を示すグラフである。図7に基づいて、「浮遊領域」の所定の周波数において、音検出装置13で検出される音のレスポンスに対する測定対象物50の変位量Δr2の変化について説明する。この図7では、横軸がレスポンス(dB)を、縦軸が測定対象物50の変位量(Δr2)を、それぞれ示している。なお、図7で示すレスポンスは、図4の矢印(ア)で示したレスポンスを表している。
この図7では、図6で示した「浮遊領域」の所定の発振周波数において、Vinを変動させたときの、音検出装置13で検出される音のレスポンス(図4で示す矢印(ア))と測定対象物50の変位量Δr2を示している。上述したように、測定対象物50は、130dB以上のレスポンスを維持しなければ確実な浮遊を得られない(図7で示す「無浮遊領域」と「不安定領域」)。また、浮遊した状態(130dB以上)では、レスポンスが大きくなればなるほど(つまり、Vinを大きくすればするほど)、測定対象物50を揺らす力が大きくなり、測定対象物50の変位量Δr2が増加することがわかる。
図8は、振動板12の共振周波数f0 と超音波発生部20の連続動作時間との関係を示すグラフである。図8に基づいて、超音波発生部20を連続動作させたときにおける振動板12の共振周波数f0 の変動について説明する。この図8では、横軸が連続動作時間を、縦軸が振動板12の共振周波数f0 を、それぞれ示している。なお、図8では振動板12の共振周波数f0 を示しているが、超音波発生部20が有する他の共振周波数、例えば圧電素子10aの共振周波数も、同様の傾向を示す。
超音波発生部20を連続して動作させると、超音波発生部20が振動による空気摩擦や内部抵抗によって発熱する。その結果、超音波発生部20は、熱せられ柔らかくなる。そうすると、超音波発生部20から発生される共振周波数f0 は、徐々に低下することになる。つまり、図8から、超音波発生部20の連続動作時間が長くなるほど、超音波発生部20から発生される共振周波数f0 が低下していくことが分かる。
したがって、クラック検知支援装置100は、振動板12(又は超音波発生部20が有するいずれかの)の共振周波数を一定の時間毎に検出し、振動板12の共振周波数が変動した際には、その変動に合わせて圧電素子10aに印加する電圧の発振周波数を変化させるようになっている(図15参照)。これにより、クラック検知支援装置100は、測定対象物50の浮遊に必要な超音波の発生を維持することが可能になり、安定的なクラック検知支援ができる。
図9は、振動板12(又は超音波発生部20が有するいずれかの)の共振周波数f0 と測定対象物50から発生する異音のレスポンス(dB)との関係を示すグラフである。図9に基づいて、測定対象物50を介して発振される音響エネルギーをFFTにて解析し、導出した波形データの入力周波数finによる変化について説明する。この図9では、横軸が振動板12の共振周波数f0 を、縦軸がレスポンス(dB)を、それぞれ示している。
矢印(ア)が入力周波数fin=f0 +γ(ただし、−100≦γ≦100)のときの発振周波数を、矢印(イ)が入力周波数fin=f0 のときの発振周波数を、それぞれ示している。また、図中に示すDは、発振周波数のすその幅を示している。
図9から、測定対象物50を介して発振される振動板12(又は超音波発生部20が有するいずれかの)からの発振周波数の波形は、入力周波数によって異なることが分かる。特にD値においては大きく変動し、入力周波数fin=f0 のときよりも入力周波数fin=f0 +γのときの方が大きい値であることがわかる。そのため、fin=f0 とするとクラック判定に用いることが可能な領域は増えるが、fin=f0 +γとすると、D値は増加し、クラック判定に用いることが可能な領域は減少する。しかしながら、図6で説明したように、fin=f0 +γとしたほうが変位量Δr2は大きくなり、異音によるレスポンスは高くなるため検知精度は向上する方向となる。このことから、実際にクラック有無判断に用いる周波数領域は、Dを加味して決定する必要があるということが分かる。
図10は、測定対象物50の変位量Δr2と発振周波数Fsのすその幅D(Hz)との関係を示すグラフである。図10に基づいて、測定対象物50の変位量Δr2の変化に対するすその幅Dの値の変化について説明する。この図10では、横軸が測定対象物50の変位量Δr2を、縦軸が図9で示した発振周波数Fsのすその幅D(Hz)を、それぞれ示している。
図10から、図9で示される発振周波数のすその幅Dは、測定対象物50の変位量Δr2の増加に伴い増加する傾向にあることが分かる。ただし、Dの値は、ある一定の値(図10では8000Hz)以上にはならない。つまり、クラック検知支援装置100が測定の対象としている測定対象物50については、測定対象物50の変位量Δr2がある程度増加しても、すその幅Dは、最大8000Hz以下において安定する。
図11は、振動板12(又は超音波発生部20が有するいずれかの)の共振周波数f0 と測定対象物50から発生する異音のレスポンス(dB)との関係から、測定に用いる周波数領域について説明するグラフである。図8で説明したように、共振周波数は動作時間と共に低下する。つまり、図11から、f0 以下の周波数領域には可聴領域が含まれ、周囲環境による影響(雑音)が出るため、クラック有無の判定には適さないことが分かる。また、図10の説明から、すその幅Dは、最大8000Hz以下において安定することがわかっている。したがって、すその幅Dに影響されず、かつ雑音に影響されない、クラック有無の判定に適する周波数帯域は、測定対象物50から発生する音の信号をFFT処理した結果のうち、入力周波数f0 +4100Hz以上となり、f0 +4100Hz以上の周波数帯域を測定に用いる周波数領域を決定するとよいことになる。
図12は、圧電素子10aに印加する電圧の入力周波数finとインピーダンス、コンダクタンス、リアクタンスそれぞれとの関係を示すグラフである。図12に基づいて、入力周波数finに対するインピーダンス、コンダクタンス、リアクタンスの値の変化について説明する。図12(b)は、図12(a)のa部分を拡大したグラフである。この図12では、横軸が入力周波数fin(Hz)を、縦軸左側がインピーダンス(Ω)とリアクタンス(Ω)を、縦軸右側がコンダクタンス(F)を、それぞれ示している。図12で示す線(カ)がインピーダンスを、線(キ)がリアクタンスを、線(ク)がコンダクタンスを、それぞれ表している。
入力周波数finを変動させた場合、超音波発生部20のインピーダンス(Z)、コンダクタンス(Cs)、及び、リアクタンス(Rs)の値は、図12に示すように変化する。超音波発生部20への入力周波数finが共振周波数となったとき(たとえば、図12(a)に示すa部分)、インピーダンスは0に近い値となる。インピーダンス値が0に近ければ近いほど超音波発生部20の、電気から振動への変換効率が向上し、同印加電圧条件化(或いは電流)で発振される超音波のレスポンスは大きくなる。
したがって、振動板12(又は超音波発生部20が有するいずれかの)の共振周波数及びこの共振周波数の変動を検出するには、超音波発生部20のインピーダンスを用いればよいことが分かる。ただし、振動板12の共振周波数及びこの共振周波数の変動をインピーダンスによって検出することに限定するものではなく、電流値や電圧値等を用いることによっても振動板12の共振周波数及びこの共振周波数の変動を検出することは可能である。
なお、超音波発生部20を構成する部品の共振周波数がずれてしまった場合は、尖鋭度を見ることによって何れの部品の共振周波数か判断が可能である。例えば振動板12の尖鋭度は、他の部品と比較し最も大きな値であることが分かっており、インピーダンスの測定と同時に尖鋭度を測定することにより、検知に使用する共振周波数が振動板12の共振周波数かどうかを判断することが可能である。
図12(b)中で言うと、コンダクタンス値が突出して高くなっており、インピーダンスが突出して低くなっている点が共振周波数である。このとき、図12(b)から、リアクタンス値が小さい値を示し、コンダクタンス値が大きい値を示しており、インピーダンス値の整数部、虚数部は共に0に近い値となっていることがわかる。つまり、共振周波数においては電流と電圧の位相差が0となるのである。図12から、1つの超音波発生部20に対し、共振周波数は幾つか存在し、何れの点でも測定対象物50は浮遊するものの、インピーダンス値が低い方(図12(a)に示す(a)の部分)が浮遊に必要な入力が少なくて済む。
図13は、インピーダンス値を用いて超音波発生部20の共振周波数に合わせた発振を行なう際の処理の流れを示すフローチャートである。図13に基づいて、インピーダンス値を用いて共振周波数に合わせた発振を行なう際の処理の流れについて説明する。まず、発振部30は、入力周波数finを変動させ、共振時の出力電流Iout 、出力電圧Vout 、φout を測定する。そして、発振部30は、インピーダンス値Zout を計算し、振動板12(又は超音波発生部20が有するいずれかの)の共振周波数f0 を定める(ステップS11)。なお、この部分(α)については、図14で詳細に説明する。
発振部30は、共振周波数f0 から所定の周波数jだけずらした入力周波数fの電圧を超音波発生部20の圧電素子10aに印加する(ステップS12)。なお、jは定数であり、図6で説明した内容より、−100Hz≦j≦100Hz、j≠0であるものとする。次に、発振部30は、このときの出力電流Iout 、出力電圧Vout からインピーダンス値Zout を計算し、その値をZ1 として記憶する(ステップS13)。そして、発振部30は、インピーダンス値Zout がZ1 とずれている場合、Zout =Z1 となるように周波数finをスイープさせる(ステップS14)。なお、この部分(β)については、図15で詳細に説明する。
図14は、図13で示した(α)部分の処理の流れを詳細に示すフローチャートである。図14に基づいて、図13で示した(α)部分の処理の流れを詳細に説明する。発振部30は、入力周波数finの電圧を超音波発生部20の圧電素子10aに印加する(ステップS21)。次に、発振部30は、出力電圧Vout 、電流Iout の測定結果及び入力周波数finを記憶する(ステップS22)。そして、発振部30は、Vout とIout の特性から位相差φout を計算する(ステップS23)。発振部30は、計算した位相差φout が0であるかどうか判断する(ステップS24)。
位相差φout が0である場合(ステップS24;Yes)、発振部30は、入力周波数fin=fo とする(ステップS25)。位相差φout が0でない場合(ステップS24;No)、発振部30は、Vout とIout から電流の位相が電圧の位相に対して遅れているかどうか判断する(ステップS26)。電流の位相が電圧の位相に対して遅れていない場合(ステップS26;No)、発振部30は、周波数finを一定周波数k分減少して(ステップS27)、ステップS21の処理に戻る。電流の位相が電圧の位相に対して遅れている場合(ステップS26;Yes)、発振部30は、周波数finを一定周波数k分増加して(ステップS28)、ステップS21の処理に戻る。以上のように、発振部30は、図13で示した(α)の部分の処理を実行する。
図15は、図13で示した(β)部分の処理の流れを詳細に示すフローチャートである。図15に基づいて、図13で示した(β)部分の処理の流れを詳細に説明する。なお、図15では、n>0とした場合の処理の流れを例に示している。発振部30は、Vout またはIout の値を検出し、インピーダンス値Zout を計算する(ステップS31)。次に、発振部30は、計算したZout がZ1 であるかどうか判断する(ステップS32)。Zout がZ1 である場合(ステップS32;Yes)、発振部30は、入力周波数finの電圧を超音波発生部20の圧電素子10aに印加する(ステップS33)。
Zout がZ1 でない場合(ステップS32;No)、発振部30は、Zout =Z1 となるように周波数finをスイープさせる。具体的には、発振部30は、Zout よりZ1 大きいかどうか判断し(ステップS34)、Zout =Z1 となるように周波数finをスイープさせる。Zout がZ1 より大きい場合(ステップS34;Yes)、発振部30は、周波数finを一定周波数n分減少する(ステップS35)。そして、発振部30は、入力周波数finを超音波発生部20に発信し(ステップS37)、ステップS31の処理に戻る。一方、Zout がZ1 以下の場合(ステップS34;No)、発振部30は、周波数finを一定周波数n分増加する(ステップS36)。そして、発振部30は、入力周波数finを超音波発生部20に発信し(ステップS37)、ステップS31の処理に戻る。
図16は、発振部30の機能を詳細に説明するための説明図である。図16に基づいて、発振部30の機能について詳細に説明する。この図16には、発振部30がインピーダンスの計算により制御を行なう場合の機能ブロック図を併せて図示している。なお、発振部30は、一つの筐体にまとめられている必要はなく、発振部30の構成要素毎に別の筐体に設けられていてもよい。また、振動部10を安定に駆動させるには、安定した波形を入力する必要があるので、クラック検知支援装置100では、発振部30から発生される信号の波形を正弦波又は方形波としている。それは、発振部30からの信号の波形が定まっていない場合、放出される超音波の波形が乱れ、音検出装置13に雑音が入ってしまい、測定精度が下がるからである。
図16に示すように、発振部30は、入力値設定部31と、電流・電圧計測部32と、制御部33と、周波数発振部34と、増幅部35と、を備えている。入力値設定部31は、入力電圧Vin、入力電流Iinを設定する機能を有している。電流・電圧計測部32は、超音波発生部20から出力される電流・電圧を検知する機能を有している。周波数発振部34は、制御部33からの指示によって入力周波数finを増幅部35に発振する機能を有している。この周波数発振部34は、音検出装置13に雑音として検出されるのを抑制するためにスイッチング素子以外のものを用いるとよい。増幅部35は、周波数発振部34から発振された入力周波数finを設定値まで昇圧し、増幅して、超音波発生部20に出力する機能を有している。
制御部33は、マイクロコンピューター等で構成されており、発振部30としての作用を統括制御する機能を有している。具体的には、制御部33は、上述したフローチャートの動作主体となる機能を有している。また、制御部33に、計算したインピーダンス値Z1 や出力電圧Vout 、電流Iout の測定結果、入力周波数fin 等を記憶しておく図示省略の記憶手段が設けられている。なお、インピーダンス値以外にも、音検出装置13から検出される測定対象物50のクラックが無い場合の音響エネルギーの値や振動板12の変位量Δr1の値からも共振周波数は検出可能であるので、インピーダンス値の代わりにこれらの値を制御部33に導入し、用いるようにしてもよく、いずれか組み合わせて用いるようにしてもよい。
図17は、発振部30及びクラック有無判断部21の機能を詳細に説明するための説明図である。図17に基づいて、音響エネルギーのフィードバックにより、振動板12(又は超音波発生部20が有するいずれかの)の共振周波数に補正を加え、発信する場合における発振部30及びクラック有無判断部21の機能について詳細に説明する。上述したように、クラック有無判断部21は、音検出装置13及び音響エネルギー解析部16で構成されている。つまり、測定対象物50から発生する音響エネルギーを解析する音響エネルギー解析部16の解析結果に基づいて、クラックの有無を判断することができる。
音響エネルギー解析部16は、測定対象物50から発生する音響エネルギーを解析した後、測定対象物50にクラックが発生していない状態における音響エネルギーの最大値Qmax を制御部33に発信する。制御部33は、上述した動作に加え、音響エネルギー解析部16と連動し、音響エネルギー解析部16から発信された共振時のQmax を記憶し、このQmax を一定に保つように上記動作に補正を加える機能を有している。なお、音響エネルギー解析部16を発振部30内に設けるようにしてもよい。また、音検出装置13と音響エネルギー解析部16とを一体に設けるようにしてもよい。
図18は、発振部30及び変位検出部40の機能を詳細に説明するための説明図である。図18に基づいて、振動板12の変位量Δr1のフィードバックにより、共振周波数に調整する場合における発振部30及び変位検出部40の機能について詳細に説明する。変位検出部40は、変位計41で検出された振動板12の変位情報に基づいて振動板12の変位量Δr1を測定するものである。変位計41は、たとえば非接触の赤外線変位計等で構成するとよい。変位検出部40で測定された振動板12の変位量Δr1は、変位検出部40から制御部33に向けて発信される。制御部33は、上述した動作に加え、変位検出部40と連動し、共振時のΔr1記憶し、このΔr1を一定に保つように上記動作に補正を加える機能を有している。
このように、音響エネルギー解析部16による音響エネルギーの解析結果ではなく、変位検出部40による変位量の測定結果に基づいて、制御部33の動作に補正を加えるようにしてもよい。ただし、双方を用いて、制御部33の動作に補正を加えるようにしてもよい。なお、変位計41は、振動板12の振動を効率良く検出するために振動板12から放射される共振波の「腹」の位置に設けるとよい。また、変位検出部40を発振部30内に設けるようにしてもよい。さらに、変位計41と変位検出部40を一体的に設けるようにしてもよい。
以上のように、クラック検知支援装置100では、振動板12の全面から強力な音圧レベル(130dB以上)を有する超音波が空中放射でき、測定対象物50を空中に浮上及び振動させることができる。測定対象物50に対し強力な超音波を照射させると、照射域に超音波の疎密に伴う圧力差が生じ、音圧レベルに伴って測定対象物50が浮遊することになる。浮遊した測定対象物50は、超音波のゆらぎにより生じる照射音圧や発生周波数の微変動により、空中で振動を起こす。
浮遊した測定対象物50が振動を起こすと、測定対象物50にクラックが存在している場合、クラックの先端部分同士が擦れることによって異音が発生する。クラック検知支援装置100では、測定対象物50から発生した異音を検知することによって、クラックの有無を判断している。ただし、測定対象物50の浮遊は、特に超音波の共振周波数前後で起きるが、共振周波数では振動板12が安定し、超音波のゆらぎが弱く、浮遊が安定してしまい、異音が発生しづらい。そこで、クラック検知支援装置100では、少なくとも振動板12の共振周波数からずらした周波数にて測定対象物50を浮遊させることで、測定対象物50の振動を大きくし、より正確にクラックの有無を検知することを可能としている。よって、クラック検知支援装置100は、非常に小さなクラックの有無を検知することができる。
また、クラック検知支援装置100は、測定対象物50のクラックの有無を検知するために特別な設備等を必要としないため、非常に安価に測定対象物50のクラックの有無を検知することができる。加えて、クラック検知支援装置100は、半導体基板の製造ラインや半導体基板を組み込んだ何らかの装置の製造ラインのいずれにも備えることができ、測定対象物50のクラック検知を適宜実行することによって測定対象物50の歩留まりを大幅に向上することが可能になる。
なお、測定対象物50の少なくとも一辺のいずれかに緩衝材を設けてあるとよい。そうすれば、測定対象物50の位置決めが容易になる。図1では、振動部10が1個だけ設けられている場合を例に示しているが、振動部10の個数を特に限定するものではなく、測定対象物50の大きさや重量、形状によって振動部10の個数を決定するとよい。また、複数個の振動部10を設けて、振動板12の位相を制御することにより、測定対象物50を非接触で搬送させながら、クラックの有無を検知するようにしてもよい。