JP4670000B2 - 球の非破壊検査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非破壊検査に関するものであり、特に、球の非破壊検査に関するものである。
【0002】
【技術的背景】
例えば、回転機械において、転がり軸受の信頼性や品質保証が極めて重要である。これまでは組み上げた軸受の振動検査が行われていたが、最近の精密機器では検査の要求が厳しく、個々の軸受球の段階でも欠陥(5〜20μm)検査が必要とされる。内部と表面の効率よい検査には、超音波共振法が有用だが、球の保持方法によって境界条件が変化して、共振特性が影響を受ける問題がある。
超音波共振法において、精度を0.1%以上に高めるには、被検体と支持部の接触条件を厳密に制御する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、球の非破壊検査において、境界条件の影響を完全に解消して、球の計測精度を飛躍的に向上させることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、球の非破壊検査装置であって、球を浮上させて支持する浮上支持手段と、前記浮上させた球に、非接触で共振を起こす振動励起手段と、前記球の振動を非接触で測定する振動測定手段とを備えることを特徴とする。
球を浮上することにより、支持状態の変動による共振振動数の変動や共振ピーク間の振幅比の変動等を解消することができ、球の性状による変化を高感度に検出することができる。前記浮上支持手段は、浮上を空気の噴出で行うことができる。このとき、前記浮上するための空気の噴出は、支持している球の周辺部に強く行うことができる。これにより、球を安定的に浮上させることができる。
前記振動励起手段として、レーザにより球を加熱することで共振を起こすことや、前記振動測定手段として、レーザにより振動変位を測定することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
本発明の基本的アイディアは、球を空気圧で浮上させ、振動の励起、検出にレーザ超音波法を用いることで、バルク波および弾性表面波の共振特性を、完全に非接触で計測することである。
図1に空気圧による浮上装置を示す。図1(a)において、検査対象の例えば軸受に用いる鋼球150を、支持部140から空気を吹き上げることで浮上させている。吹き出す空気の制御は、例えばデジタル・マスフロー・コントローラ160で空気流量を制御することで行っている。鋼球150に対する振動励起には、レーザ110を用いて、鋼球150の表面に熱膨張を起こすことで行っている。振動変位検出にはレーザによるヘテロダイン干渉計130を用いている。
球を浮上することにより、例えば、支持状態の変動による共振振動数の変動や共振ピーク間の振幅比の変動等を解消し、球の性状による変化を高感度に検出することができる。
これにより、測定できる性状としては、内部欠陥の有無、球体の真球度、球体の径等がある。
上述では、鋼球を例にして説明しているが、検体は球体であればよく、材料はセラミックや他の金属等でもよい。
また、空気を用いて球を浮上させている例を示したが、球を浮上させるためには、ほかに例えば、鋼球には磁力を用いてもよい。磁力を用いる場合は、例えば、上下に電磁石を設置し、鋼球をその間で安定に浮上させるように制御する構成で行う。
上述の実施形態では、レーザを用いてヘテロダイン干渉計で計測しているが、電気的に静電容量やインダクタンスの変化を計測することにより、無接触で計測することもできる。
【0006】
【実施例】
以下に、軸受に使用している鋼球を空気で浮上させて測定した例を、詳しく説明する。図1の様に構成して、さらに、支持部140の上部に設けたすり鉢状の台座144に、検査対象の鋼球をおいている。空気は、空気噴出ノズル146から噴出して鋼球を浮上させる。この空気噴出ノズル146は、図1(b)に示すように、周辺部に穴を多くして、周辺部の噴出を強くすることにより鋼球を安定的に浮上させるように工夫している。8mm直径の鋼球に対して、空気噴出ノズル146は、直径5mmの円筒形の上面に直径0.9mmの穴を、中心に1つと周囲に8つの合計9個を設けている。デジタル・マスフロー・コントローラ160で空気流量を0.1L/minで精密制御することで、直径4〜8mmの高炭素クロム軸受鋼球150の浮上ができる。レーザ110としては、Nd−YAGレーザ(半値幅10ns)を用い、ヘテロダイン干渉計130(感度50nm/V)を用いる。
【0007】
図2に、8mm直径の鋼球を浮上させる場合(図2(a))と、支持部で保持する場合(図2(b))の共振スペクトルを示す。図において、s22,s03等は球体の半径方向や円周方向の節の数で分類した振動モードを示しており、詳細は、例えば "Free Oscillations of the earth"(地球の自由振動)E.R. Lapwood and T. Usami 著(Cambridge University Press,New York 1981)pp.38-47等を参照されたい。また、横の1st等は、測定の回数を示す。
図2から分かるように、浮上状態では、約300kHz以上の共振スペクトルはよく再現するが、保持状態では変動が大きい。
【0008】
図3は、8つの振動モードに対する共振周波数の標準偏差を示す。図3に示すように、共振周波数は、浮上と比べて保持の場合は、平均値で、14.96Hz〜130.35Hz低下している。標準偏差は、保持で0.0153%あったが、浮上により、0.0051%以下に低下し、再現性は大きく向上する。図4は、例えばs12に対する振動周波数のスペクトル図を示す。これで分かるように、共振周波数は、浮上して測定する場合は、保持する場合と比較すると振動数が高い方にずれている。
【0009】
軸受球に微小人工欠陥を導入し、浮上と保持の場合で、欠陥検出能力を比較する。軸受球に付け加えた人工欠陥としては、軸受球に、パルス幅10ns、繰り返し周波数10HzのNd−YAGレーザを照射して加工した穴を用いた。欠陥導入前後で、浮上および保持状態でそれぞれ交互に6回測定し、共振周波数を比較した。直径100μm、深さ11μmの欠陥導入前後での各モードにおける浮上時の共振周波数の平均値と標準偏差の変化を図5に示す。
図5において、共振周波数の欠陥による低下は小さく、保持状態では欠陥検出は困難であるが、浮上により、欠陥による周波数の低下が明確に検出できることが分かる。共振周波数は球の直径に反比例するので、より微小な直径2mmの球では、径25μm深さ3μm程度の微小欠陥の検出が可能である。
【0010】
上述の球を浮上することによる検査を用いることにより、例えば、軸受球の表面の傷や内部欠陥等に対して、全数検査を精度よく行うことが可能となる。
【0011】
【発明の効果】
上述するように、球を浮上させる本発明の構成により、球にある微小欠陥の非接触検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】非破壊検査装置の構成を示す図である。
【図2】浮上と保持の場合の振動の比較を示す図である。
【図3】浮上と保持の場合の振動の分布を示す図である。
【図4】浮上と保持の場合の振動数の相違を示す図である。
【図5】傷を付けた場合の周波数の変化を示す図である。
【符号の説明】
110 レーザ
120 レンズ
130 ヘテロダイン干渉計
140 支持部
144 台座
146 空気噴出ノズル
150 鋼球
160 デジタル・マスフロー・コントローラ

Claims (5)

  1. 球の非破壊検査装置であって、
    球を浮上させて支持する浮上支持手段と、
    前記浮上させた球に、非接触で共振を起こす振動励起手段と、
    前記球の振動を非接触で測定する振動測定手段と
    を備えることを特徴とする球の非破壊検査装置。
  2. 請求項1記載の球の非破壊検査装置において、
    前記浮上支持手段は、浮上を空気の噴出で行うことを特徴とする非破壊検査装置。
  3. 請求項2記載の球の非破壊検査装置において、
    前記浮上するための空気の噴出は、支持する球の周辺部に強く行うことを特徴とする非破壊検査装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の球の非破壊検査装置において、
    前記振動励起手段は、レーザにより球を加熱することで共振を起こすことを特徴とする非破壊検査装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の球の非破壊検査装置において、
    前記振動測定手段は、レーザにより振動変位を測定することを特徴とする非破壊検査装置。
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