本発明のセラミック構造体およびその製造方法について以下に詳細に説明する。
先ず、セラミック構造体を作製するためのグリーンシートを以下のようにして作製する。グリーンシートの原料粉末、例えば、セラミック粉末およびガラス粉末の少なくとも一方に対し、所望により焼結助剤となるセラミック粉末を添加、混合した混合物に、樹脂バインダー、可塑剤等の添加剤、有機溶剤等を加えてスラリーを調製する。その後、このスラリーを用いてドクターブレード法、圧延法、プレス法等の成形法により所定の厚みのグリーンシートを成形する。
次に、電気配線等を形成する場合、上記のグリーンシートに打ち抜き加工を施すことにより、上下の配線導体層を接続するビアホールとなる貫通孔を形成し、この貫通孔内に導体ペーストを充填する。
なお、セラミック粉末としては、金属もしくは非金属の酸化物または非酸化物の粉末が挙げられる。また、これらの粉末の組成は単一組成、化合物の状態のものを単独または混合して使用してもよい。具体的には、Li,K,Mg,B,Al,Si,Cu,Ca,Br,Ba,Zn,Cd,Ga,In,ランタノイド,アクチノイド,Ti,Zr,Hf,Bi,V,Nb,Ta,W,Mn,Fe,Co,Ni等の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。
さらに具体的には、SiO2,Al2O3,ZrO2,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、ZnO,MgO,MgAl2O4,ZnAl2O4,MgSiO3,Mg2SiO4,Zn2SiO4,Zn2TiO4,SrTiO3,CaTiO3,MgTiO3,BaTiO3,CaMgSi2O6,SrAl2Si2O8,BaAl2Si2O8,CaAl2Si2O8,Mg2Al4Si5O18,Zn2Al4Si5O18,AlN,Si3N4,SiC、更には、Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられ、用途に合わせて選択することができる。
また、ガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnである),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1,M2は同じかまたは異なるものであり、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnである),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1,M2は上記と同じ),SiO2−B2O3−M3O系(但し、M3はLi,NaまたはKである),SiO2−B2O3−Al2O3−M3O系(但し、M3は上記と同じ),Pb系ガラス,Bi系ガラス,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,希土類酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を含有するガラスが好ましい。これらのガラスは焼成処理することによって非晶質ガラスとなるもの、また焼成処理によって、リチウムシリケート,クォーツ,クリストバライト,コージェライト,ムライト,アノーサイト,セルジアン,スピネル,ガーナイト,ウイレマイト,ドロマイト,ペタライトやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種を析出する結晶化ガラスが用いられる。
セラミック粉末とガラス粉末の混合割合は通常のガラスセラミック構造体材料に用いられる割合であり、重量比で60:40〜1:99であるのが好ましい。
また、助剤成分としては、B2O3,ZnO,MnO2,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,希土類金属酸化物等が挙げられ、用途に合わせて選択することができる。
また、本発明のセラミック構造体を圧電素子として使用する場合の材料としては、チタン酸バリウムやジルコン酸鉛−チタン酸鉛系固溶体などの灰チタン石型構造の結晶などが挙げられ、具体的にはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)およびチタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)などのチタン酸ジルコン酸塩、またはチタン酸鉛などが挙げられる。
一方、グリーンシートの樹脂バインダーとしては、例えば、アクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)、ポリビニルアセタール系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンカーボネート系等の単独重合体または共重合体が挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有させておくことが好ましい。
アクリル系の具体例としては、メチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−プロピルアクリレート,n−プロピルメタアクリレート,イソプロピルアクリレート,イソプロピルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,tert−ブチルアクリレート,tert−ブチルメタクリレート,シクロヘキシルアクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート,イソノニルアクリレート,イソノニルメタクリレート,イソデシルアクリレート,イソデシルメタクリレート等が挙げられ、これらアクリル酸エステルやメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、カルボン酸基,アルキレンオキサイド基,水酸基,グリシジル基,アミノ基またはアミド基を含有するモノマーが共重合成分として含まれているものを好適に用いることができる。
カルボン酸基を有するものとしては、例えば、アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,フマル酸等が挙げられ、アルキレンオキサイドを有するものとしては、メチレンオキサイド,エチレンオキサイド,プロピレンオキサイド等があり、水酸基を有するものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,2−ヒドロキシブチルアクリレート,2−ヒドロキシブチルメタクリレート,ジエチレングリコールモノアクリレート,ジエチレングリコールモノメタクリレート,グリセリンモノアクリレート,グリセリンモノメタクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,トリメチロールプロパントリメタクリレート等があり、グリシジル基を有するものとしては、グリシジルアクリレート,グリシジルメタクリレート等があり、アミノ基またはアミド基を有するものとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート,ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジエチルアミノエチルアクリレート,ジエチルアミノエチルメタクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート,アクリルアミド,シクロヘキシルアクリルアミド,シクロヘキシルメタクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド等がある。
これらアクリル酸エステルやメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、他の共重合可能なアクリロニトリル,スチレン,エチレン,酢酸ビニル,n−ビニルピドリドン等を共重合させても良い。
ポリビニルアセタール系の具体例としては、ポリビニルブチラール,ポリビニルエチラール,ポリビニルプロピラール,ポリビニルオクチラール,ポリビニルフェニラール等やその誘導体等が挙げられる。
セルロース系の具体例としては、メチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ニトロセルロース,酢酸セルロース等が挙げられる。
次に、メタライズ配線やビア導体等の導体部を形成する場合の導体ペーストとしては、例えばAu,Cu,Ag,Pd,W,Mo,Ni,AlおよびPt等の金属粉末の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金等のいずれの形態であってもよい。これらの金属粉末を樹脂バインダー,溶剤,可塑剤,分散剤等を混合したものが好適に使用できる。
導体ペーストの樹脂バインダーとしては、アクリル系,ポリビニルアセタール系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有する。
アクリル系の具体例としては、アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、これらの共重合体には、水酸基,カルボン酸基,アルキレンオキサイド基,グリシジル基,アミノ基,アミド基等を適宜導入しても良い。これらを導入することで、セラミックスとの分散性を向上させる効果や、粘性やチキソ性を向上させる効果が期待できる。また、熱分解性や各種溶剤への溶解性等の性能を損なわない範囲内であれば、アクリル樹脂と共重合が可能である、スチレン,α−メチルスチレン,アクリロニトリル,エチレン,酢酸ビニル,ポリビニルアルコール,n−ビニルピロリドン等を適宜導入しても良い。これらのアクリル樹脂のうち、必要に応じて単独または2種以上を適宜選択して使用することができる。
導体ペーストの溶剤としては、テルピネオール,ジヒドロテルピネオール,エチルカルビトール,ブチルカルビトール,カルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート,ジイソプロピルケトン,メチルセルソルブアセテート,セルソルブアセテート,ブチルセルソルブ,ブチルセルソルブアセテート,シクロヘキサノン,シクロヘキサノール,イソホロン,シプロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,ブチルカルビトールメチル−3−ヒドロキシヘキサノエート,トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート,パイン油,ミネラルスピリット等の高沸点溶剤が好適に使用できる。
樹脂バインダーは金属粉末100重量部に対して0.5〜15.0重量部、有機溶剤は固形成分および樹脂バインダー100重量部に対して5〜100重量部の割合で混合されることが好ましい。なお、この導体ペースト中には若干のガラス粉末や酸化物粉末等の無機成分を添加してもよい。この導体ペーストを、上記グリーンシートにスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の公知の印刷手法を用いて、所定のパターンに印刷塗布する。
このようにして得られたグリーンシートに、樹脂バインダー,溶剤,可塑剤より成る適当な接着剤を塗布もしくは転写し、他のグリーンシートと加圧し積層することにより一体化し、グリーンシート積層体を作製する。得られたグリーンシート積層体を所定条件で焼成することにより、セラミック構造体が得られる。
次に、本発明のセラミック構造体の製造方法について図1及び図2を用いて説明する。
本発明においては、加圧積層前に焼成過程で熱分解する樹脂シート2の貫通孔3にグリーンシートを嵌め込む。これにより、加圧し積層する段階で樹脂シート2を通じて凸部の側壁や凸部が形成されていない部分の底部が加圧されるため、膨らみや変形が発生しない。また、グリーンシート積層体にデラミネーションが発生しないように高い積層圧力の加圧が可能となる。なお、本発明に適用可能な凸部の大きさに関しては、樹脂シート2に嵌め込めることができる大きさであれば、微細なものから比較的大きなものまで適用可能である。
次に、樹脂シート2の貫通孔3にグリーンシートを嵌め込む方法を述べる。貫通孔3は、打ち抜き金型の駆動部である上金型4と、打ち抜き金型の固定部である下金型6により主に構成される打ち抜き装置によって形成される。図1(a)に示すように、開口5が設けられた下金型6に樹脂シート2を載置し、図1(b)に示すように、上金型4を樹脂シート2の上方から下方に向けて駆動することにより打ち抜き加工を行い、図1(c)に示すように貫通孔3を形成し、貫通孔3が形成された樹脂シート2を得る。なお、打ち抜き装置は、上金型4を固定して下金型6を駆動可能としたものでもよい。
次に、図1(d)に示すように、同じ打ち抜き装置を用いて、グリーンシート1を貫通孔3が形成された樹脂シート2に重ね、図1(e)に示すように、上金型4を駆動することにより、グリーンシート1の打ち抜きと、打ち抜かれたグリーンシート1の貫通孔3への嵌め込みを同時的に行う。続いて、余分な部分のグリーンシート1を取り除いて、図1(f)に示すように貫通孔3にグリーンシートが嵌め込まれた樹脂シート−グリーンシート複合体Aを得る。
続いて、表面に凸部7を有するセラミック構造体の製造方法について、図2の工程図で説明する。最上層部の樹脂シート2aが嵌め込まれた樹脂シート−グリーンシート複合体A1と、最下層部の樹脂シート2bが嵌め込まれた樹脂シート−グリーンシート複合体A2と、メタライズ層から成る配線導体層8およびビア導体9が形成されたグリーンシートB1,B2,B3とを一括積層し、グリーンシート積層体Cを得る。次に、グリーンシート積層体Cに嵌め込まれた最上層部の樹脂シート2aを第一の脱バインダー工程で除去した(c)の状態を経て、さらに第二の脱バインダー工程によって樹脂シート2bを取り除く。最後に、グリーンシート積層体を第三の脱バインダー工程を経てから焼成してセラミック構造体Dを得る。
このような本発明の製造方法により、凸部の上面のみならず、凸部の側壁や凸部が形成されていない部分の底部に対しても加圧されて膨らみや変形が発生することがないので、高い積層圧力の加圧が可能となり、デラミネーションが生じない条件でセラミック構造体Dが作製できる。
また、本発明のセラミック構造体の製造方法は、まず、樹脂シートに打ち抜き型を用いて貫通孔を形成し、引き続いて貫通孔が形成された樹脂シート上にセラミックグリーンシートを載置して打ち抜き型を用いてセラミックグリーンシート側から押圧することによりセラミックグリーンシートの一部を樹脂シートの貫通孔に嵌め込んで樹脂シート−セラミックグリーンシート複合体を作製するため、セラミック構造体の凸部を形成するためのセラミックグリーンシートに加えられる、打ち抜き金型による剪断履歴は1回で済むため、セラミック構造体の凸部の変形をより抑えることが可能であり、特に優れた直角度を有する凸形状を実現する上で、有効な手段である。従って、凸部が薄くて弱い場合でも、直角度、平面度および寸法精度が高い焼結面から形成される表面の凸部を有するセラミック構造体を得ることができる。
なお、本発明のセラミック構造体の製造方法における、樹脂シート−セラミックグリーンシート複合体の打ち抜き・嵌め込み方法を、逆転させたものを併用してもよい。即ち、図1(b)の樹脂シート2の代わりに、まず、グリーンシート1を打ち抜き型で貫通してセラミック構造体の凸部以外の部分を形成し、続いて、得られたグリーンシート1の貫通孔に焼成過程で熱分解する樹脂シート2を嵌め込んだ樹脂シート−セラミックグリーンシート複合体を併用してもよい。この場合、セラミック構造体の凸部を形成するためのグリーンシート1に加えられる、打ち抜き金型による剪断履歴は、グリーンシート1を打ち抜いて貫通孔を形成する工程と形成された貫通孔に樹脂シートを嵌め込む工程の合計2回かかることになるため、セラミック構造体の凸部の角部となるグリーンシート1の貫通孔の壁部の強度が弱い場合は変形する恐れがある。そこで、良好な直角度を実現するために、図1の打ち抜き金型の駆動部である上金型4と打ち抜き金型の固定部である下金型6との隙間(クリアランス)を微調整することが好ましい。
次に、本発明のセラミック構造体を製造する際に用いる、樹脂シート2(2a,2b)の製造方法について述べる。樹脂シート2(2a,2b)は、樹脂ビーズと、樹脂バインダーと、可塑剤および滑剤の少なくとも一方とを含むことが好ましい。樹脂シート2(2a,2b)に求められる特性としては、打ち抜き加工性(剪断加工性)、焼成工程での熱分解性が重要であり、良好な打ち抜き加工性を得るためには粉末状の樹脂ビーズの添加が有効である。樹脂シートの打ち抜きや切断等の剪断加工の際に、樹脂ビーズ間に存在する樹脂層を介して剪断方向にクラックが生じやすいため剪断加工が容易にできる。また、剪断方向以外に生じたクラックの伝播が樹脂ビーズの存在で抑えられるため、剪断方向以外へのクラック伝播を抑制し、所望の形状に剪断加工できることより、貫通孔と略同形状の樹脂シートの嵌め込みが可能となるので、グリーンシートを加圧し積層した際にグリーンシートの変形を防止できる。さらに、可塑剤および滑剤の少なくとも一方を含むことで、加工性をより一層向上させることが可能となる。可塑剤を含むことで、樹脂シートに柔軟性や可撓性を付与することができる。また、滑剤を含むことで、樹脂シートの剪断加工時に樹脂同士もしくは樹脂ビーズ間の滑りが良くなることから、剪断加工性が向上するとともに、樹脂シートの伸度を抑えることができるので寸法精度の高い加工が可能となる。
樹脂ビーズは、焼成時に良好な熱分解挙動を示すものであれば特に制限されないが、アクリル系,α−メチルスチレン系等が好ましい。また、樹脂ビーズの平均粒径は1〜20μmが好ましい。平均粒径が1μm未満の場合、樹脂ビーズの凝集が問題となり、平均粒径が20μmを超える場合、樹脂シート2(2a,2b)の表面に突起が生じ易い。なお、樹脂ビーズとして中空構造のものを使用しても良い。この場合、脱脂の際に、樹脂ビーズの樹脂分が少なくて済むのでグリーンシートへのシートアタックが減少するという利点がある。
また、樹脂ビーズは、耐溶剤性の観点から架橋反応が生じたものが好ましい。但し、過度に架橋反応が進行している場合、熱分解性が劣化する傾向がある。
樹脂ビーズおよび樹脂バインダーを、トルエン,ベンゼン,キシレン等の芳香族炭化水素系、酢酸エチル,酢酸ブチル,酢酸イソブチル等のエステル系、メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトン,アセトン等のケトン系、ヘキサン,ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ジエチルエーテル,ジプロピルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,ブタノール等のアルコール系、エチルセルソルブ等のセルソルブ系等から選ばれる1種若しくは2種以上の有機溶剤中に分散させる。
樹脂シート2(2a,2b)に使用する樹脂バインダーとしては、熱分解性が優れるものであればよく、アクリル系,α−メチルスチレン系等が好ましい。アクリル樹脂としては、アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。このようなものとして,メチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−プロピルアクリレート,n−プロピルメタアクリレート,イソプロピルアクリレート,イソプロピルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,t−ブチルアクリレート,t−ブチルメタクリレート,シクロヘキシルアクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート等がある。これらのアクリル樹脂のうち、必要に応じて単独または2種以上を適宜選択して使用することができる。その中でも、イソブチルメタクリレート系(IBMA)やメチルメタクリレート系(MMA)樹脂バインダーの単体若しくは共重合体が特に好ましい。また、熱分解性を損なわない範囲内であれば、アクリル樹脂と共重合が可能である、スチレン,α−メチルスチレン,アクリロニトリル,エチレン等を適宜導入しても良い。これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有する。
さらに、樹脂シート2(2a,2b)に柔軟性や可とう性を与えるために加えられる可塑剤としては、樹脂シートの熱分解性を損なわないものであればよく、例えば、ジメチルフタレート,ジブチルフタレート,ジ−2−エチルヘキシルフタレート,ジヘプチルフタレート,ジ−n−オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート,ジイソデシルフタレート,ブチルベンジルフタレート,エチルフタリルエチルグリコレート,ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル系や、ジ−2−エチルヘキシルアジペート,ジブチルジグリコールアジペート等の脂肪族エステル系があり、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有する。中でもジブチルフタレート(DBP),ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)等のフタル酸系エステル等の可塑剤が好ましい。
さらに、樹脂シート2(2a,2b)の剪断加工性を向上させるために加えられる滑剤としては、樹脂シート2(2a,2b)の熱分解性を損なわないものであればよく、例えば、ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール,ジエチレングリコールメチルエーテル,トリエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル,トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル,エチレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコール−n−アセテート,ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル,ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコール系、ジプロピレングリコール,トリプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール,ジプロピレングリコールメチルエーテル,トリプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコールベンジルエーテル,エチレングリコールイソアミルエーテル等のプロピレングリコール系、グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン等のグリセリン系等が挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有する。中でもポリエチレングリコール(PEG),グリセリンが好ましい。
これら可塑剤や滑剤は必要最小限の添加量に止めることが好ましい。例えば、樹脂シートが接触する部位に微細な配線導体等の導体部が形成されている製品の焼成時において、溶融した樹脂シート2(2a、2b)の組成物中に可塑剤や滑剤が多く残存している場合、それに接触する導体部中の樹脂バインダーを溶解させやすくなり、導体部の強度が低下することで導体部を変形させたり、断線させたりするなどの欠陥が生じるおそれがある。
上記有機溶剤中に、樹脂ビーズ100重量部に対し、樹脂バインダーを40〜80重量部添加し、分散させた後、可塑剤や滑剤を合計量で5〜40重量部添加して作成したスラリーを、従来周知のロールコーター,グラビアコーター,ブレードコーター等のコーティング方式により剥離剤処理を施したキャリアーシート上に塗布し、乾燥することにより樹脂シート2(2a,2b)を得る。
樹脂シート2(2a,2b)の熱分解性は、それが載置されるグリーンシートに含まれる樹脂バインダーおよび樹脂シートが接する導体部に含まれる樹脂バインダーよりも優れていることが好ましい。
具体的には、樹脂シート2(2a,2b)の熱分解性は、樹脂シート2(2a,2b)と接触するグリーンシートに含まれている樹脂バインダーよりも優れていることが好ましい。すなわち、グリーンシート中の樹脂バインダーが熱分解(脱脂)してグリーシート中の残存樹脂バインダー量が減少するに伴ってグリーンシートの強度が低下し、脆くなったグリーンシート上で遅れて樹脂シート2(2a,2b)が熱分解した場合、加熱によって液状になった高粘度の樹脂シート2(2a,2b)の溶融物が、脱脂後に脆くなったグリーンシートの表面で沸騰に伴う上下左右への振動運動を伴いながら熱分解するため、その熱分解部分に接するグリーンシートの表面が部分的にえぐり取られることでその表面が侵食破壊される現象を解消することができる。
一方、樹脂シートが接触する部位に配線導体等の導体部が形成されている場合、樹脂シート2(2a,2b)の熱分解性は、それと接する導体部に含まれる樹脂バインダーよりも優れていることが好ましい。より具体的には、樹脂シート2(2a,2b)と接する導体部に含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度を、樹脂シート2(2a,2b)が載置されるグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度以上になるように設定すれば良い。これによって、焼成の際に樹脂シート2(2a,2b)の大半が熱分解した後に、導体部に含まれる導体ペースト用の樹脂バインダーの熱分解が開始されるため、大量の溶融した樹脂シート2(2a,2b)の組成物が残存している段階では、それに接触する導体部中の樹脂バインダーは熱分解を開始していないことから、導体部の強度が十分維持される。従って、溶融した樹脂シート2(2a,2b)の組成物が導体部中の樹脂バインダーを溶解させることで導体部を変形させたり、断線させたりするなどの欠陥のない信頼性の高いセラミック構造体を作製することが可能となる。
次に、樹脂シート2(2a,2b)の熱分解性について詳細に説明する。樹脂シート2(2a,2b)の熱分解は、最上層部2aから順に下層部に向けて熱分解を開始し、最終的に最下層部2bで熱分解が完了することが好ましい。即ち、樹脂シート2の最上層部2aは、最下層部2bよりも熱分解性の点で優れていることが好ましい。
樹脂シート2の最上層部2aと最下層部2bの熱分解性に差を持たせることによる効果について説明する。
図2の工程図(c)に示すように、グリーンシート積層体Cに嵌め込まれた最上層部の樹脂シート2aが第一の脱バインダー工程で除去される工程では、最下層部の樹脂シート2bに隣接するグリーンシートおよび導体部は樹脂シート2bで保護されているため、樹脂シート2aの熱分解過程で生じる溶融物によるダメージを受けることなく樹脂シート2aを熱分解させることが可能となる。続く第二の脱バインダー工程によって最下層部の樹脂シート2bを取り除くことで、樹脂シート2bに隣接するグリーンシートおよび導体部は樹脂シート2の溶融物によるダメージを最小限に抑えることが可能となる。これらの効果は、グリーンシートの凸部7が形成されていない部分に嵌め込まれる樹脂シート2の量が多い場合に特に顕著である。
このように樹脂シート2の熱分解性に差を持たせる手段として、最上層部2aと最下層部2bを構成する樹脂ビーズおよび樹脂バインダーの組み合わせの種類を変えることがある。即ち、最上層部の樹脂シート2aの材料は最下層部の樹脂シート2bよりも熱分解性に優れたものを選定する。また、上述したように熱分解性に差を持たせるように樹脂シート2a,2bを個別に作製して組み合わせる方法に加えて、最下層部の樹脂シート2bの上部にテープ成形やコーティング等の手法によって最上層部の樹脂シート2aを形成することで、樹脂シート2内部において熱分解性を傾斜的に変化させた樹脂シート2を用いても構わない。
なお、樹脂シート2a,2bの厚みについては、樹脂シート2aが樹脂シート2bよりも厚いことが好ましい。つまり、最下層部の樹脂シート2bは、最上層部の樹脂シート2aが第一の脱バインダー工程で熱分解している段階では、最下層部の樹脂シート2bの直下に存在するグリーンシートおよび導体部を保護するために、ある程度シート状態を保持していることが好ましいが、より好ましくは、第一の脱バインダー工程において、シート状態を最低限維持できる最小厚みの樹脂シート2b上で、樹脂シート2aを含む樹脂シート2の大部分を熱分解除去することである。これにより、第二の脱バインダー工程の際、樹脂シート2bの溶融物量を抑えることによって、その直下にあるグリーンシートや導体部への種々の不具合を防ぐことができる。
また、樹脂シート2a,2bを合わせた樹脂シート2の厚みt2は、表面の凸部7を形成するグリーンシートの厚みt1と同程度に設定することで均圧積層することができ、好ましい。実際は、積層圧力,積層温度等の積層条件によって、樹脂シート厚みt2とグリーンシート厚みt1との厚みバランスの最適比は若干異なるが、t2が0.3t1〜1.1t1であることが好ましく、均圧積層の観点からは、より好ましくはt2が0.9t1〜1.0t1である。
さらに、樹脂シート2は、グリーンシートの凸部7が形成されていない部分の底部に載置されるが、少なくとも底面全面に樹脂シート2下面が接するように載置または設置されるのがよい。この場合、底面全面に積層圧力を加えることができ、その底面の変形を防止することができる。また、上記凸部7が形成されていない部分の少なくとも底面全面および内側面の下側全周に、樹脂シート2の下面および側面が接するように、樹脂シート2が載置または設置されるのがよい。この場合、上記凸部7が弱くても、積層圧力による凸部7の変形や破壊を防ぐことができる。さらには、上記凸部7が形成されていない部分の底面全面および内側面全周に、樹脂シート2の下面および側面が接するように、樹脂シート2が載置または設置されるのがよい。この場合、上記凸部7の全面の変形を防ぐことができる。
一方、図2の実施の形態では、樹脂シート2が最上層部の樹脂シート2aと最下層部の樹脂シート2bとから成る場合について説明したが、最上層部の樹脂シート2aと最下層部の樹脂シート2bとの間に、他の樹脂シートが設けられていてもよい。その場合、他の樹脂シートは、熱分解性が樹脂シート2a,2bのいずれか一方と同じであるか、樹脂シート2a,2bの中間的な熱分解性を有するものであることが好ましい。
以上のことから、本発明において、グリーンシート積層体を形成する各材料の熱分解性は、N2雰囲気中、昇温速度10℃/分で600℃まで熱重量示差熱分析(TG/DTA)を差動型高温熱天秤(理学電機(株)製「TG8120」)で行った場合、樹脂シート2の最上層部の80%重量減少温度をTa℃、最下層部の80%重量減少温度をTb℃、樹脂シート2が載置されるグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度をTc℃としたときに、Ta<Tb≦Tcの関係を満たすことが好ましい。また、樹脂シート2(2a,2b)が600℃以下において99重量%以上熱分解することが好ましい。
一方、樹脂シート2が接触する部位に配線導体等の導体部が形成されている場合、導体部に含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度をTc℃以上に設定することが好ましい。
なお、本発明のセラミック構造体の焼成時における脱バインダー工程の温度プロファイルは、大半の樹脂シート2aが熱分解する温度であるTa℃付近を所定時間、例えば1時間から6時間維持して十分に樹脂シート2aを熱分解除去する第一の脱バインダー工程と、続けてTb℃を所定時間、例えば1時間から6時間維持して十分に樹脂シート2bを熱分解除去する第二の脱バインダー工程と、続けてTc℃を超える温度を所定時間、例えば1時間から6時間維持して行う第三の脱バインダー工程に分けて行うことが好ましい。このような保持時間は、樹脂バインダーの量及び材料によって上記範囲内で変化するものである。
これにより、大部分の樹脂シート2(2a,2b)を熱分解させた後に、グリーンシートおよび導体部の樹脂バインダーが熱分解を開始することが可能となり、樹脂シート2(2a,2b)の溶融物が残存する段階では、グリーンシートおよび導体部中の樹脂バインダーは熱分解を開始していないことから、十分な強度を維持できる。そのため、樹脂シート2(2a、2b)の溶融物がそれに接触するグリーンシートおよび導体部を侵食破壊することを防ぐことができる。また、Tc℃を超える温度を所定時間維持することで、グリーンシートおよび導体部の樹脂バインダーも十分に熱分解させることができる。
このようにして得られた本発明によるセラミック構造体の凸部7は、その側面がセラミック構造体の表面に対して略垂直であって、凸部の表面が焼結されたままの焼結面からなる状態において上記凸部の側面と上記セラミック構造体の表面とのなす角度が90°±3°であり、上記凸部の側面の平面度が30μm以下、上記凸部の上面の平面度が30μm以下であり、上記凸部の側面と上記セラミック構造体の表面との間の角部の曲率半径が50μm以下、上記凸部の各面同士の間の角部の曲率半径が50μm以下である。ここで言う平面度とは、日本工業規格に定義されたものに基づいたものである(例えば、参考文献1:「JIS工業用語大辞典(第4版)」,p1747,1995年、参考文献2:「JIS B6191(工作機械―静的精度試験方法及び工作精度試験方法通則)」,p20〜26,1999年参照)。
このように本発明のセラミック構造体における凸部は、高い直角度、平面度および寸法精度を有する焼結面から成るため、切削や表面処理等の特別な平坦化処理を行なう必要が無い。従って、表面の凸部の上面や側面に電子部品等を搭載する場合、ボンディング不良等の不具合を防ぐことができるとともに、多機能・高機能化と小型・低背化を両立させるための、セラミック構造体の三次元構造化を実現することができる。
なお、本発明のセラミック構造体における凸部は、高い直角度、平面度および寸法精度を有する焼結面から成るため、切削や表面処理等の特別な平坦化処理を行なう必要が無いものであるが、さらに凸部の表面に軽く研磨処理や切削処理を施してもよい。その場合、さらに高い直角度、平面度および寸法精度が得られることとなる。
本発明のセラミック構造体およびその製造方法の実施例を以下に説明する。
(実施例1〜4)
表面に凸部7を有するセラミック構造体
[1.グリーンシートの準備]
SiO2,Al2O3,CaO,ZnO,B2O3からなるガラスセラミック原料粉末100重量部に対して、メチルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合組成物のバインダーを11重量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを5重量部添加し、トルエンを有機溶剤としてボールミルにより36時間混合しスラリーを調製した。得られたスラリーを用いてドクターブレード法により成形、乾燥して、厚さ0.2mm,0.3mm,0.8mmのグリーンシートを作製した。次に、このグリーンシートに直径200μmの貫通孔(スルーホール)をパンチングで形成した。
続いて、下記スルーホール充填用の導体ペーストを、グリーンシートに形成されたスルーホールにスクリーン印刷法によって充填した。次に、下記配線用の導体ペーストを用いてスクリーン印刷法によって、それぞれ膜厚15μmの配線パターンを印刷塗布し、続いて温風乾燥炉を用いて80℃で1時間乾燥させてメタライズ配線を形成した。
[2.導体ペーストの作製]
(2−1)スルーホール充填用の導体ペースト(ビア導体形成用の導体ペースト)
Cu粉体100重量部に対し、メチルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合組成物の樹脂バインダーを(グリーンシートと共通のものを使用)2重量部、テルピネオールおよびブチルカルビトールアセテートの混合溶剤を4重量部、フタル酸エステル系の可塑剤(DOP:ジ−2−エチルヘキシルフタレート,DBP:ジブチルフタレートの混合物)を2重量部添加し、これらを攪拌して混合した。その後、Cu粉体および樹脂バインダー等の凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合して導体ペーストを調製した。
(2−2)配線用の導体ペースト
Cu粉体100重量部に対し、メチルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合組成物の樹脂バインダーを(グリーンシートと共通のものを使用)3重量部、テルピネオールおよびブチルカルビトールアセテートの混合溶剤を10重量部、フタル酸エステル系の可塑剤(DOP,DBPの混合物)を10重量部添加し、これらを攪拌して混合した。その後、Cu粉体および樹脂バインダー等の凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合して導体ペーストを調製した。
[3.樹脂シートの作製]
架橋イソブチルメタクリレートの樹脂ビーズ100重量部に対して、樹脂バインダーとしてイソブチルメタクリレート55重量部、DOP5重量部、ポリエチレングリコール5重量部、メチルイソブチルケトン150重量部を加えた組成物を混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により成形し、乾燥して厚さ0.3mm,0.8mmの樹脂シート2aを作製した。
同様に、架橋n−ブチルメタクリレートの樹脂ビーズ100重量部に対して、樹脂バインダーとしてn−ブチルメタクリレート55重量部、DOP5重量部、ポリエチレングリコール5重量部、メチルイソブチルケトン150重量部を加えた組成物を混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により成形し、乾燥して厚さ0.2mmの樹脂シート2bを作製した。
[4.凸部7を有するセラミック構造体の作製]
樹脂シート2a,2bを用いて図2のグリーンシート積層体を形成した。即ち、図1の打ち抜き法によって、樹脂シート2a,2bにグリーンシートを嵌めこんで表1に示す形態の樹脂シート−グリーンシート複合体A1(縦50mm×横50mm×厚さ0.3mmもしくは0.8mm、凸部:奥行50mm×巾5mmもしくは10mm×高さ0.5mmもしくは0.8mm)および樹脂シート−グリーンシート複合体A2(縦50mm×横50mm×厚さ0.2mm、凸部:奥行50mm×巾5mmもしくは10mm×高さ0.2mm)を作製した。
続いて、アクリル樹脂,溶剤,フタル酸エステル系の可塑剤より成る接着剤を塗布した樹脂シート−グリーンシート複合体A1,A2および厚さ0.2mmであるグリーンシートB1,B2,B3を4.9MPaの圧力で積層することにより、5枚のグリーンシートを一体化し、内部配線を有するグリーンシート積層体を作製した。表1に得られたグリーンシート積層体の、凸部7の高さT1および巾W1を示した。
次に、このグリーンシート積層体を、Al2O3系セッターに載置して窒素,水素,水蒸気の混合雰囲気焼成炉内にて、樹脂シート2aの80%重量減少温度Ta℃付近である310℃で3時間保持して、十分に樹脂シート2aの除去を行った後、樹脂シート2bの80%重量減少温度Tb℃付近である330℃で3時間保持して、十分に樹脂シート2bの除去を行った。
その後、さらにグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度Tc℃を超える温度領域である850℃を3時間保持して、さらに脱バインダーを行い、続けて950〜1000℃で焼成することで、種々の大きさの凸部7を有するセラミック構造体を作製した。
(比較例1〜4)
樹脂シート2a,2bを用いない以外は実施例1〜4と同様にしてセラミック構造体を作製した。
得られたセラミック構造体の評価結果を表1に示す。まず、凸部7の側面の最大反り部分(凹凸が最大となる先端部分)とセラミック構造体の表面とのなす角度を測定顕微鏡(「MM−60」ニコン社製)に分度器表示目盛を装着して測定して結果を示した。また、凸部7を構成する面(上面および側面)の平面度は、日本工業規格に定義されたものに基づき、高速三次元形状測定システム(「EMS98AD−3D100XY」コムス社製)を用いて評価した。なお、側面の平面度は構成する4面の平面度を平均して示した。一方、凸部7を構成する面同士の間の角部の曲率半径を、測定顕微鏡(「MM−60」ニコン社製)で観察しながら測定した結果を平均値で示した。
表1より、実施例1〜4では、樹脂シート2を嵌め込んだ状態で加圧積層を行なったため変形が抑制されて、凸部7を形成する全ての面において、角度90°±3°以内、平面度30μm以内、曲率半径50μm以内である、優れた直角度、平面度および寸法精度のセラミック構造体を得ることができた。
一方、比較例1〜4では、樹脂シート2を充填しなかったため、加圧積層時に凸部7が押しつぶされて側面が膨らむことで変形したため平面度が大きくなった。それに伴い、凸部7を構成する面同士の曲率半径も大きくなった。変形の度合いは、凸部7の上面は凸部7の高さT1が高いほど大きく、また、凸部7上面の巾W1は広いほど大きくなり、凸部7の側面は凸部7の高さT1が高いほど大きく、また、凸部7上面の巾W1は狭いほど大きくなった。