JP4900566B2 - ダイオキシン類の分析方法 - Google Patents
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通常、被検体中のダイオキシン類の濃度は低く、高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計で検出する際には、大量の試料が必要であった。特に、食品中のダイオキシン類を測定する場合、例えば、100g以上の食品を採取しなければならない。また、被検体中のダイオキシン類を有機溶媒に抽出する際には、分液漏斗による振とう抽出法では2時間、また、ソックスレー抽出法では16時間以上行わなければならなかった。更に、高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計において、分析カラムで各成分を効率よく分離するためには、高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計に注入するサンプル(濃縮液)の量を1〜2μL(マイクロリットル)程度と少量にしなければならず、ダイオキシン類を高感度で測定することができなかった。また、ダイオキシン類の抽出及び精製等の操作は、自動化されていないため、作業効率が悪く、時間(30日程度)とコスト(主に、人件費)がかかっていた。
前記自動クリーンアップ装置は、上流側に前記多層シリカゲルカラム及び下流側に前記活性炭カラムを有する前記連結カラムと、前記多層シリカゲルカラムの上流側及び下流側にそれぞれ設けられた第1、第2の三方コックを介して接続される迂回流路と、前記第1の三方コックの上流側にポンプを介して設けられた有機溶媒C、D、Eをそれぞれ貯留する溶媒用容器とを有し、
前記抽出液を前記連結カラムの上流側に供給した後、前記ポンプを駆動させて、前記有機溶媒Cを前記連結カラムに供給して前記抽出液中の夾雑物を前記多層シリカゲルカラムによって除去し、前記抽出液から前記夾雑物が除去された粗精製液を前記活性炭カラムに供給して、前記ダイオキン類を前記活性炭カラムで吸着し、そして、前記溶媒用容器から前記有機溶媒Dを前記連結カラムに供給し、前記活性炭カラムに吸着されているモノオルトコプラナーPCBを溶出させた精製液Sと、前記第1、第2の三方コックを操作して前記多層シリカゲルカラムの前記迂回流路を形成し、前記迂回流路を介して前記溶媒用容器から前記有機溶媒Eを供給し、前記活性炭カラムに吸着されているモノオルトコプラナーPCB以外のダイオキシン類を溶出させた精製液Tとから、前記第2工程の濃縮液を作製し、
しかも、前記溶媒除去大量試料注入装置は、前記濃縮液中の有機溶媒及びダイオキシン類を分離するプレカラムと、該プレカラムで分離された有機溶媒を除去する溶媒除去部と、前記プレカラムで分離され前記溶媒除去部を通過したダイオキシン類を捕集するコールドトラップと、該コールドトラップで捕集したダイオキシン類を各成分に分離する分析カラムとを備え、
前記分析カラムは、液相がビスシアノプロピルとフェニルシアノプロピルポリシロキサンからなるシアノプロピル基で形成された強極性のキャピラリーカラムであって、内径が0.15〜0.2mmかつ液相の厚みが0.05〜0.15μmである。
通常、高速溶媒抽出前の試料(被検体)又は高速溶媒抽出後の抽出液に、クリーンアップスパイク(内部標準物質)を添加する。
更に、高速溶媒抽出装置で得られた抽出液を自動クリーンアップ装置で精製した後、例えば、エバポレーター等で有機溶媒を除去して、例えば、1mL程度まで濃縮して濃縮液を作製する。なお、精製操作及び濃縮操作は、それぞれ1又は2回以上行ってもよい。
前記分析カラムは、液相が90%ビスシアノプロピル/10%フェニルシアノプロピルポリシロキサンからなるシアノプロピル基で形成された強極性のキャピラリーカラムであって、内径が0.15〜0.2mmかつ液相の厚みが0.05〜0.15μmであるのが好ましい。
多検体濃縮装置は、複数の溶液を同時に濃縮可能な装置であって、例えば、ビュッヒ社製の多検体高密度濃縮装置シンコア・アナリスト(商品名)が使用できる。また、多検体濃縮装置は、高速溶媒抽出装置で得られた抽出液を硫酸処理する前に濃縮する際に使用してもよい。
ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)は、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography)の1つであって、有機溶媒中の成分を分子の大きさによって分画するものである。
請求項4記載のダイオキシン類の分析方法においては、抽出液を自動クリーンアップ装置で精製した後、更にゲル浸透クロマトグラフィーを行うGPCクリーンアップシステムで精製を行って、濃縮を行うので、被検体の性質に合わせて精製方法を選択できる。
請求項5記載のダイオキシン類の分析方法においては、第1工程から第3工程をオンラインで行うので、より作業効率が向上する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係るダイオキシン類の分析方法を適用したダイオキシン類の分析システムの説明図、図2は同ダイオキシン類の分析システムの自動クリーンアップ装置の説明図、図3(A)、(B)はそれぞれ自動クリーンアップ装置に接続する多層シリカゲルカラム、活性炭カラムの説明図、図4は同ダイオキシン類の分析システムの多検体濃縮装置の要部説明図、図5は同ダイオキシン類の分析システムの溶媒除去大量試料注入装置の説明図、図6は本発明の第2の実施の形態に係るダイオキシン類の分析方法を適用したダイオキシン類の分析システムの説明図、図7は同ダイオキシン類の分析システムのGPCクリーンアップシステムの説明図である。
分析システム10は、環境試料、例えば、所定量の水道原水を通過させたフィルターを被検体11とし、被検体11中のダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)、及びコプラナーPCB(Co−PCB))を分析するものである。
また、分析システム10では、高速溶媒抽出装置12の貯留容器19内に貯留された抽出液Bを、更に濃縮した後、硫酸を加えて有機物を取り除く硫酸処理を行っている。ここで、濃縮には、多検体濃縮装置、エバポレーター等を使用することができる。
また、自動クリーンアップ装置13は、三方コック23の上流側に設けられるポンプ27と、ポンプ27の上流側に図示しない複数のバルブからなるバルブ機構28を介して設けられる3つの有機溶媒C(ヘキサン)、有機溶媒D(ジクロロメタン含有ヘキサン)、及び有機溶媒E(トルエン)をそれぞれ貯留する溶媒用容器29〜31とを有している。
なお、分析システム10では、自動クリーンアップ装置13として、4検体の精製を同時に行うことができるGLS社製のDAC695を使用しているが、説明を簡単にするために、図2においては1検体の流路についてのみ記載している。
なお、多検体濃縮装置14の代わりに、例えば、エバポレーター等を使用することができる。また、前記した精製及び濃縮の操作を、それぞれ1又は2回以上行ってもよい。
(第1工程)
高速溶媒抽出装置12によって、被検体11を高温かつ高圧力に保持して被検体11中のダイオキシン類を有機溶媒Aに抽出させて抽出液Bを作製する。
第1工程で得られた抽出液Bを多検体濃縮装置で濃縮した後、硫酸処理を行って抽出液B中の有機物を取り除く。次に、自動クリーンアップ装置13の多層シリカゲルカラム20の上流側に、硫酸処理を行った抽出液Bを供給した後、ポンプ27を駆動させると共に、バルブ機構28及び流路切換ユニット26を切り換えて、溶媒用容器29から有機溶媒Cを多層シリカゲルカラム20及び活性炭カラム21を通過させ、抽出液B中の夾雑物を多層シリカゲルカラム20に吸着させると共に、多層シリカゲルカラム20を通過して抽出液B中の夾雑物が除去された粗精製液R中のダイオキシン類を活性炭カラム21に吸着させる。この際に、多層シリカゲルカラム20及び活性炭カラム21に吸着されない抽出液B中の夾雑物及びCo−PCB以外のPCBを排出する。
更に、得られた精製液S、Tを多検体濃縮装置14でそれぞれ濃縮して濃縮液U、Vとした後、濃縮液U、Vにそれぞれ含まれる有機溶媒D、Eを有機溶媒Wに転溶する。
次に、4及び5塩化ジオキシン及び4〜6塩化ジベンゾフランを測定するために、プレカラム40をBPX−5に、分析カラム43をRtx−2330とした溶媒除去大量試料注入装置15を高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計16に取付ける。有機溶媒Wで転溶した濃縮液Vを注入口39から注入して、4及び5塩化ジオキシン及び4〜6塩化ジベンゾフランを測定する。
また、6〜8塩化ジオキシンと、7及び8塩化ジベンゾフランと、ノンオルトCo−PCBとを分析する場合には、溶媒除去大量試料注入装置15の分析カラムをSGE社製のBPX−5に換え、有機溶媒Wで転溶した濃縮液Vを注入口39から注入して測定する。
更に、モノオルトCo−PCBを測定する場合には、溶媒除去大量試料注入装置15を取り外し、高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計16に、HT8又はHT8−PCBを取付け、注入口39から濃縮液Uを供給して測定を行う。
ここで、分析システム50では、GPCクリーンアップシステム54として、GLS株式会社製のASC698(商品名)を使用し、GPCカラム57として、GLS株式会社製のMSpak GF−310 4Dを使用している。
(第1工程)
食品を、例えば、最大長さが0.01〜10mm程度に細かく粉砕して、20g程度を秤量した被検体51を、適量の珪藻土又は無水硫酸ナトリウムからなる分散剤(図示せず)と混合し、これらを抽出容器18内に入れ、被検体51中のダイオキシン類を高速溶媒抽出装置12を使用して有機溶媒Aに抽出させて抽出液Bを作製する。
高速溶媒抽出装置12で抽出した後、濃縮して硫酸処理を行った抽出液Bを自動クリーンアップ装置13の多層シリカゲルカラム20の上流側に供給した後、有機溶媒D(ジクロロメタン含有ヘキサン)を多層シリカゲルカラム20及び活性炭カラム52に供給する。これによって、多層シリカゲルカラム20に夾雑物を吸着させ、活性炭カラム52にモノオルトCo−PCB以外のダイオキシン類を吸着させることができ、多層シリカゲルカラム20及び活性炭カラム52に吸着しない夾雑物とモノオルトCo−PCBを含む粗精製液Xを連結カラム53から流出させ、貯留容器32に貯留する。
ここで、貯留容器32に貯留されている粗精製液Xは、モノオルトCo−PCBと夾雑物を含んでいるので、GPCクリーンアップシステム54で精製して精製液Sを得る。精製液S、Tをそれぞれ多検体濃縮装置14で濃縮して濃縮液U、Vを作製し、更に濃縮液U、Vを有機溶媒Wで転溶する。
プレカラム40をBPX−5とし、分析カラム43をRtx−2330とした溶媒除去大量試料注入装置15を高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計16に取付けた後、有機溶媒Wで転溶した濃縮液Vを注入口39から注入して、4及び5塩化ジオキシン及び4〜6塩化ジベンゾフランを測定する。また、溶媒除去大量試料注入装置15の分析カラムをSGE社製のBPX−5に換え、有機溶媒Wで転溶した濃縮液Vを注入口39から注入して、6〜8塩化ジオキシンと、7及び8塩化ジベンゾフランと、ノンオルトCo−PCBとを測定する。更に、溶媒除去大量試料注入装置15を取り外し、高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計16に、HT8又はHT8−PCBを取付け、注入口39から濃縮液Uを供給して、モノオルトCo−PCBの測定を行う。
実施例として、本発明のダイオキシン類の分析方法を適用したダイオキシン類の分析システム、すなわち、高速溶媒抽出装置、自動クリーンアップ装置、GPCクリーンアップシステム、多検体濃縮装置、及び溶媒除去大量試料注入装置を取付けた高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計を使用して、被検体である食品(例えば、20g)中のダイオキシン類の分析を行った。また、比較例として、公定法(非特許文献1参照)を用いて食品(例えば、100g)中のダイオキシン類を分析した。なお、比較例において、ダイオキシン類の抽出は振とう抽出法で行った。
また、実施例では、分析カラムとして、液相が90%ビスシアノプロピル/10%フェニルシアノプロピルポリシロキサンからなるシアノプロピル基で形成された強極性で、内径が0.15〜0.2mmかつ液相の厚みが0.05〜0.15μmであるキャピラリーカラム(例えば、Rtx−2330)を使用しているので、4及び5塩化ジオキシンと、4〜6塩化ジベンゾフランとが高感度で分析できた。なお、実施例では、2,3,7,8−4塩化ジオキシン(TeCDD)の標準品の注入量が0.8pg(ピコグラム)でS/N(signal-to-noise ratio、信号対雑音比)が650であり、比較例では、注入量が2pgでS/Nが250であり、感度が65倍程度向上した。
例えば、前記実施の形態のダイオキシン類の分析方法において、第1工程から第3工程をオンラインで行ってもよい。
Claims (5)
- 食品からなる被検体を高温かつ高圧力に保持する高速溶媒抽出装置によって該被検体中のポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン、及びコプラナーPCBからなるダイオキシン類を有機溶媒Aに抽出させて抽出液を作製する第1工程と、該抽出液中の夾雑物を多層シリカゲルカラム及び活性炭カラムを連結した連結カラムを備えた自動クリーンアップ装置によって除去して前記抽出液からダイオキシン類を精製した後、濃縮して濃縮液を作製する第2工程と、該濃縮液を溶媒除去大量試料注入装置を取付けた高分解能ガスクロマトグラフ/質量分析計に供給し、前記濃縮液中のダイオキシン類を分析する第3工程とを有するダイオキシン類の分析方法であって、
前記自動クリーンアップ装置は、上流側に前記多層シリカゲルカラム及び下流側に前記活性炭カラムを有する前記連結カラムと、前記多層シリカゲルカラムの上流側及び下流側にそれぞれ設けられた第1、第2の三方コックを介して接続される迂回流路と、前記第1の三方コックの上流側にポンプを介して設けられた有機溶媒C、D、Eをそれぞれ貯留する溶媒用容器とを有し、
前記抽出液を前記連結カラムの上流側に供給した後、前記ポンプを駆動させて、前記有機溶媒Cを前記連結カラムに供給して前記抽出液中の夾雑物を前記多層シリカゲルカラムによって除去し、前記抽出液から前記夾雑物が除去された粗精製液を前記活性炭カラムに供給して、前記ダイオキン類を前記活性炭カラムで吸着し、そして、前記溶媒用容器から前記有機溶媒Dを前記連結カラムに供給し、前記活性炭カラムに吸着されているモノオルトコプラナーPCBを溶出させた精製液Sと、前記第1、第2の三方コックを操作して前記多層シリカゲルカラムの前記迂回流路を形成し、前記迂回流路を介して前記溶媒用容器から前記有機溶媒Eを供給し、前記活性炭カラムに吸着されているモノオルトコプラナーPCB以外のダイオキシン類を溶出させた精製液Tとから、前記第2工程の濃縮液を作製し、
しかも、前記溶媒除去大量試料注入装置は、前記濃縮液中の有機溶媒及びダイオキシン類を分離するプレカラムと、該プレカラムで分離された有機溶媒を除去する溶媒除去部と、前記プレカラムで分離され前記溶媒除去部を通過したダイオキシン類を捕集するコールドトラップと、該コールドトラップで捕集したダイオキシン類を各成分に分離する分析カラムとを備え、
前記分析カラムは、液相がビスシアノプロピルとフェニルシアノプロピルポリシロキサンからなるシアノプロピル基で形成された強極性のキャピラリーカラムであって、内径が0.15〜0.2mmかつ液相の厚みが0.05〜0.15μmであることを特徴とするダイオキシン類の分析方法。 - 請求項1記載のダイオキシン類の分析方法において、前記有機溶媒Cはヘキサン、前記有機溶媒Dはジクロロメタン含有ヘキサン、前記有機溶媒Eはトルエンであることを特徴とするダイオキシン類の分析方法。
- 請求項1記載のダイオキシン類の分析方法において、前記第2工程では、前記抽出液を前記自動クリーンアップ装置で精製した後、多検体濃縮装置を用いて濃縮を行うことを特徴とするダイオキシン類の分析方法。
- 請求項1又は3記載のダイオキシン類の分析方法において、前記第2工程では、前記抽出液を前記自動クリーンアップ装置で精製した後、更にゲル浸透クロマトグラフィーを行うGPCクリーンアップシステムで精製を行って、濃縮を行うことを特徴とするダイオキシン類の分析方法。
- 請求項1、3、4のいずれか1項に記載のダイオキシン類の分析方法において、前記第1工程から前記第3工程をオンラインで行うことを特徴とするダイオキシン類の分析方法。
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