JP3724131B2 - ガスクロマトグラフ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガスクロマトグラフ装置(以下「GC」と称す)に関し、更に詳しくは、GCにおいて試料気化室を介して目的成分を含む試料をカラムに導入するための試料導入装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスクロマトグラフ装置ではカラム入口に試料気化室を備え、試料気化室内で気化させた試料をキャリアガスに乗せてカラム内へ送り込む構成を有している。液体試料に含まれる目的成分が微量である場合、できる限り大量の試料をカラム内に送り込む必要がある。このような大量の試料導入に適した手法として、従来より、オンカラム法やPTV(Programmed Temperature Vaporizer)法が用いられている。
【0003】
図3は、従来利用されているオンカラム法を利用したGCの流路構成図である。頭部にセプタム13を備えた気化室10(但し、オンカラム法では実際には気化室のみで気化されるのではない)にはキャリアガス流路11が接続されており、セプタム13直下まで深く嵌挿されているプレカラム16に所定流量のキャリアガスが流されている。プレカラム16出口には三方ジョイント17を介して分離用のキャピラリカラム20が連結されており、キャピラリカラム20出口には検出器22が設けられている。三方ジョイント17の残りの開口には、バルブ19を設けた排出路18が連結されている。通常、プレカラム16はキャピラリカラム20よりも径が太く(例えばプレカラムは内径が0.5mm程度、キャピラリカラムは内径が0.2〜0.3mm程度)、プレカラム16及びキャピラリカラム20はカラムオーブン21に収納されている。
【0004】
試料注入時には、カラムオーブン21の温度は液体試料の溶媒の沸点近傍の温度に設定され、バルブ19は開放されている。シリンジ23先端のニードルはセプタム13に貫通されて、液体試料はプレカラム16内に直接導入される。大量に注入された液体試料は一旦広い範囲に広がってプレカラム16内壁に付着する。この液体試料中の溶媒は徐々に気化し、キャリアガス流に乗って排出路18を通って外部に排出される。目的成分の沸点は溶媒の沸点よりも高いので、溶媒が気化するに伴い濃縮されてプレカラム16の内壁に残留する。所定量の液体試料を注入し気化溶媒の大部分を排出した後にバルブ19を閉鎖する。そして、カラムオーブン21の温度を所定のプロファイルに従って昇温すると、プレカラム16内壁に付着している試料中の低沸点成分から順次気化し、キャリアガス流に乗ってキャピラリカラム20に送り込まれる。キャピラリカラム20を通過する際に各成分は明瞭に分離されて検出器22に到達する。
【0005】
図4は、PTV法を利用したGCの流路構成図である。キャピラリカラム20の入口に設けた気化室10内に充填剤31を充填した略円筒形状のガラスインサート30を配設する。気化室10には、キャリアガス流路11のほかにスプリットバルブ32を設けたスプリット流路33が接続されている。気化室10にはヒータ15が周設されており、カラムオーブン21とは独立に温度が制御できるようになっている。
【0006】
試料注入時には、気化室10は溶媒の沸点近傍に設定しておき、スプリットバルブ32は開放しておく。液体試料をシリンジ23から気化室10に注入すると、液体試料は充填剤31に一旦担持される。充填剤31に担持された液体試料中の溶媒は徐々に気化し、キャリアガス流に乗ってスプリット流路33を通って外部に排出される。液体試料中の目的成分はその沸点がより高いため、或いは充填剤の保持力により、気化せずに充填剤31に残る。その後、スプリットバルブ32を閉鎖して気化室10を昇温すると、充填剤31に担持されている低沸点成分から順に気化し、キャリアガス流に乗ってキャピラリカラム20内に送られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者のオンカラム法では、液体試料を直接プレカラム16に導入するため、難揮発性成分が含まれていると該成分がプレカラム16、特にその入口付近を汚染する。このため、頻繁にプレカラム16の汚染部分を切除したりプレカラム16自体を交換したりしなければならない。このような作業は大変面倒であり、分析効率の向上を阻む一因になっていた。
【0008】
一方、後者のPTV法では、難揮発性成分は充填剤31に残留するのでカラムの切除や交換等は不要であるが、付着した難揮発性成分により充填剤31の保持特性が変化することがあり、目的成分が充填剤31に吸着又は分解される恐れがある。このため、安定した分析を行なうためには、ガラスインサート30(又は充填剤31)の交換を頻繁に行なわなければならず、オンカラム法と同様に分析効率の向上が困難であった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、カラムの切除や交換、或いはガラスインサートの頻繁な交換等の面倒な作業を軽減することができるガスクロマトグラフ装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係るガスクロマトグラフ装置は、
a)キャリアガス導入口を有する気化室と、
b)該気化室内に配設された、充填剤を有さないインサートと、
c)前記気化室に連結されたプレカラムと、
d)該プレカラムの出口に接続されたキャピラリカラムと、
e)プレカラムとキャピラリカラムとの連結部に接続され、開閉自在のバルブを具備した排出路と、
f)前記気化室の温度を制御する気化室温度制御手段と、
g)前記プレカラム及びキャピラリカラムの温度を制御するカラム温度制御手段と、
を備え、気化室に液体試料を注入する際に、前記気化室温度制御手段は溶媒の沸点以上の所定温度に気化室を加熱すると共に、前記カラム温度制御手段は溶媒の沸点近傍で且つ前記気化室の加熱温度よりも低い温度にプレカラムを加熱しておき、インサート内で気化した溶媒を前記排出路を通して排出した後に前記バルブを閉鎖して前記気化室及びプレカラムの温度を上昇させることで気化試料をキャピラリカラムに導入することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
試料注入時に気化室の温度は溶媒の沸点よりも高い温度に維持されているので、気化室に注入された試料中の溶媒(及び低沸点の目的成分)は気化し、一方高沸点の目的成分及び難揮発性成分はインサートの内壁に付着する。気化した溶媒がキャリアガス流に乗ってプレカラムを通過する間に、低沸点の目的成分はプレカラムの内壁に付着し、気化溶媒のみが排気管を通って外部へ排出される。液体試料の大部分は溶媒であり、この溶媒が迅速に気化室内から運び去られるので、気化室に大量の試料を注入することが可能である。気化溶媒の多くがプレカラムから抜けた後にバルブが閉鎖され、インサート及びプレカラムが昇温されると、インサート内壁及びプレカラム内壁に広く付着している目的成分は徐々に気化しキャリアガス流に乗ってキャピラリカラムに送り込まれる。そして、最終的に、難揮発性成分のみがインサートの内壁に残留する。
【0012】
なお、インサートはその内壁面が凹凸を有していることが好ましい。これによれば、試料注入時にインサートの内壁に付着した液体試料が流下しにくく溶媒の気化が促進されると共に、内壁の面積が広いので難揮発性成分をより多く捉えることができる。
【0013】
【発明の効果】
このように、本発明に係るガスクロマトグラフ装置によれば、液体試料の多くを占める溶媒は気化してプレカラムを通って排気され、目的成分はインサートやプレカラム内に残るので、液体試料を大量に注入することができる。また、液体試料に含まれる難揮発性成分はガラスインサートの内壁に残留するので、プレカラム自体を汚染する可能性は殆どない。このため、従来のオンカラム法のようにプレカラムの切除や交換を行なう必要がなく、大幅な省力化が図れると共にランニングコストも安価で済む。また、インサート内には充填剤をもたないので、残留した難揮発性成分の影響により保持特性が変化することもない。このため、目的成分が変性することなく確実にプレカラムからキャピラリカラムに送り込まれるので、正確なクロマトグラムを得ることができる。また、ガラスインサートを頻繁に交換する必要はなく、汚れが酷くなった適当な時期に洗浄又は交換すればよい。
【0014】
【実施例】
以下、本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施例を図1及び図2を参照して説明する。図1は本実施例のGCの流路を中心とする構成図、図2はこのGCに用いられるガラスインサートの一例の概略断面図である。
【0015】
本実施例のGCでは、プレカラム16とガラスインサート14とを併用し、気化室10は昇温制御する。すなわち、キャリアガス流路11が接続された気化室10内には略円筒形状のガラスインサート14が配設されており、ガラスインサート14の下端面より上方に突出するようにプレカラム16が挿入されている。また、気化室10には加熱用のヒータ15が周設されている。プレカラム16以降の流路構成は従来のオンカラム法によるGCと同一になっている。試料導入制御部26は、シリンジ23から気化室10への液体試料の注入、キャリアガス流路11に設けた流量制御バルブ12の開度、排出路18上のバルブ19の開閉と、気化室温度制御部24、オーブン温度制御部25とを連動して制御する。なお、セプタム13から発生される不所望のガスを気化室10から排出するために、気化室10のセプタム13近傍にセプタムパージ流路を接続してもよい。
【0016】
上述のPTV法とは異なり、ガラスインサート14には充填物を詰めずに、図2に示すような構造のものを使用する。すなわち、後記の理由により、ガラスインサート14の内壁面には、対向して交互に突出する凹凸141が形成されている。
【0017】
上記構成の本実施例のGCにおける試料導入時の動作を説明する。試料注入前に、試料導入制御部26は、流量制御バルブ12を制御することにより一定流量のキャリアガスをキャリアガス流路11から気化室10に流しておき、またバルブ19は開放しておく。また、気化室温度制御部24により、気化室10の温度を溶媒の沸点よりも所定温度だけ高い温度(例えば溶媒沸点+50℃)に設定しておく。また、オーブン温度制御部25により、カラムオーブン21の温度を溶媒の沸点近傍で該沸点よりもやや高い温度(例えば溶媒沸点+10℃)に設定しておく。
【0018】
試料導入制御部26の指令により、シリンジ23が降下しその先端のニードルがセプタム13を貫通して液体試料が気化室10内に注入されると、液体試料は微細液滴となってガラスインサート14内に入る。噴霧された液体試料はガラスインサート14の内壁面に付着し、集まって比較的大きな液滴を形成するが、内壁面は図2に示したように凹凸になっているので、その液滴は直下に滴り落ちずにゆっくりと流下する。もし、ガラスインサート14の内壁面に凹凸がないと、大量の液体試料が注入された場合、液滴中の溶媒が蒸発しない内に液滴はインサートから滴り落ちて気化室10の底部に溜まってしまう。これに対し、本実施例のGCでは、ガラスインサート14の内壁面が凹凸になっているので、液滴の流下速度が遅く内壁面に長く接しているので、溶媒の気化が促進され、ガラスインサート14の下端に達する迄に溶媒が気化する。
【0019】
溶媒のほかに、比較的沸点の低い目的成分も同時に気化し、キャリアガス流に乗ってプレカラム16に送り込まれる。一方、比較的沸点の高い目的成分や難揮発性成分はガラスインサート14の内壁面に付着して残留する。実際には、液体試料の大部分は溶媒が占めているので、ガラスインサート14に残る成分はごく僅かである。
【0020】
プレカラム16に送り込まれた気化溶媒と一部の低沸点成分はキャリアガス流に乗って進むが、プレカラム16の温度はその低沸点成分の沸点よりも低くなっているので、プレカラム16を通過する間に液化してプレカラム16の内壁に付着して保持される。一方、気化溶媒は、プレカラム16、三方ジョイント17、排出路18、バルブ19を通って外部に排出される。なお、キャリアガスの一部はキャピラリカラム20にも流れ込んでいるので気化溶媒はキャピラリカラム20にも送り込まれるが、排出路18側の流路抵抗のほうが遙かに小さいので、気化溶媒の殆どは排出路18から抜ける。
【0021】
所定量の液体試料が気化室10内に注入された後、所定時間が経過してプレカラム16中から気化溶媒の大部分を排出したならば、試料導入制御部26はバルブ19を閉鎖する。そして、気化室温度制御部24及びオーブン温度制御部25はそれぞれ所定の昇温プロファイルに従って昇温を開始する。すると、ガラスインサート14の内壁及びプレカラム16の内壁に広く付着していた目的成分のうち、低沸点のものから順次気化してキャリアガスに乗って運ばれる。そして、プレカラム16、三方ジョイント17を通ってキャピラリカラム20に送り込まれる。キャピラリカラム20を通過する間に、各目的成分は沸点に応じて明確に分離されて検出器22に到達する。
【0022】
元の液体試料に含まれていた難揮発性成分は昇温によっても気化しにくいので、最後までガラスインサート14の内壁に残留する。従って、プレカラム16を汚染することはなく、必要に応じてガラスインサート14を洗浄又は交換すればよい。
【0023】
なお、気化室温度制御部24及びオーブン温度制御部25により昇温プロファイルは、目的成分の種類等に応じて適宜変更することができる。
【0024】
また、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行なうことができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によるガスクロマトグラフ装置の構成図。
【図2】 本実施例に使用されるインサートの一例の概略断面図。
【図3】 従来のオンカラム法によるガスクロマトグラフ装置の構成図。
【図4】 従来のPTV法によるガスクロマトグラフ装置の構成図。
【符号の説明】
10…気化室 11…キャリアガス流路
14…ガラスインサート 15…ヒータ
16…プレカラム 17…三方ジョイント
18…排出路 19…バルブ
20…キャピラリカラム 21…カラムオーブン
23…シリンジ 24…気化室温度制御部
25…オーブン温度制御部 26…試料導入制御部
Claims (1)
- a)キャリアガス導入口を有する気化室と、
b)該気化室内に配設された、充填剤を有さないインサートと、
c)前記気化室に連結されたプレカラムと、
d)該プレカラムの出口に接続されたキャピラリカラムと、
e)プレカラムとキャピラリカラムとの連結部に接続され、開閉自在のバルブを具備した排出路と、
f)前記気化室の温度を制御する気化室温度制御手段と、
g)前記プレカラム及びキャピラリカラムの温度を制御するカラム温度制御手段と、
を備え、気化室に液体試料を注入する際に、前記気化室温度制御手段は溶媒の沸点以上の所定温度に気化室を加熱すると共に、前記カラム温度制御手段は溶媒の沸点近傍で且つ前記気化室の加熱温度よりも低い温度にプレカラムを加熱しておき、インサート内で気化した溶媒を前記排出路を通して排出した後に前記バルブを閉鎖して前記気化室及びプレカラムの温度を上昇させることで気化試料をキャピラリカラムに導入することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
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1997
- 1997-08-05 JP JP22440797A patent/JP3724131B2/ja not_active Expired - Fee Related
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