JP4897229B2 - メイラード反応阻害剤 - Google Patents

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Description

本発明は、メイラード反応阻害剤に関する。詳細には、食品廃棄物のメイラード反応阻害剤としての利用に関する。
近年、生体内タンパク質の糖化反応(メイラード反応)により生成する終末糖化産物群(Advanced Glycation End Products、以下、「AGE」と称する)が、腎臓障害、神経障害、アテローム性動脈硬化症などの、主に血管障害に起因する疾患の直接的な原因であることが明らかにさらてきた。タンパク質の糖化は通常の老化により進行するが、特に糖尿病患者においては、血糖値が高いため、その進行が速く、糖尿病合併症の原因のひとつして、注目されている。(Singh,R.et al.,Diabetologia 44,129−146,2001)タンパク質の糖化は非酵素的な多段階反応で、反応機構上、可逆的な付加と転移反応を伴う前期段階と、不可逆的な酸化、脱離、加水分解、転移、縮合等を伴う後期段階に分けられる。このうち、後期段階で産生するAGEが上記疾患の原因物質として作用する。より具体的には、糖尿病性神経症はミエリンタンパク質の糖化が原因である(Clin.Endocrinol.Metab.,11,431,1982)と考えられており、糖尿病性白内障は、眼球水晶体のクリスタリンの糖化に伴うクリスタリンの重合、不溶化、蛍光発生及び着色によって起こる(J.Biol.Chem.,256,5176,1981)ことが認められている。また、老人性白内障は眼球水晶体のクリスタリンの糖化が関与しており、またアテローム性動脈硬化にもAGEの生成が関与している。更に、老化に伴う細い血管の基底膜の肥厚、腎臓の機能低下をもたらす腎糸球体基底膜の肥厚にもAGEが関与していることが知られている(Science,232,1629,1986)。
このAGEの産生抑制物質としてアミノグアニジンやALT−711などが知られている。(Science,232,1629,1986)これらの化合物は現在糖尿病合併症予防薬として臨床試験に供されている。その他にもメトフォルミン、OPB−9195、ALT−462、オルメサルタン、カモシン、テニルセタム、2,3−ジアミノフェナゾン、ピオグリタゾン、ALT−486、テモカプリラト、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサル、ピリドキサルホスフェート、チアミン、チアミンモノホスフェート、チアミンピロホスフェート、アデニン、キネチン等種々の塩基性化合物が同様の活性を有することが知られている。(特許文献1、特開2002−302472号公報、特開2001−64158号公報、特開2000−321273号公報、特開2000−256259号公報、特開平11−106371号公報、特開平11−49740号公報、特開平10−324629号公報、特開平10−182460号公報、特開平10−175954号公報、特開平10−167965号公報、特開平10−158244号公報、特開平9−221473号公報、特開平9−221427号公報、特開平9−124471号公報、特開平9−59258号公報、特開平9−59233号公報、特開平9−40626号公報、特開平7−133264号公報、特開平6−305964号公報、特開平6−298738号公報、特開平6−298737号公報、特開平6−287180号公報、特開平6−287179号公報、特開平6−192089号公報、特開平6−135968号公報、特開平5−255130号公報)
また、AGE産生後期過程では、多くの酸化反応が関与している。そこで、種々の抗酸化剤が後期過程の反応の進行を抑制し、メイラード反応阻害剤になることが知られている。これらの例としてはマンニトール、ジヒドロリポ酸、アルファ−リポ酸、N−アセチルシステイン、セモチアジル、グリクラジド、ペントキシフィリン、ニフェジピン、イスラジピン、ラシジピン、安息香酸、アルファ−ケトグルタル酸、ピルビン酸、(+)−ルチン、チロン、ニテカポン、ジオスミン、クルクミン、ビタミンE、トログリタゾン、17ベータ−エストラジオール、ブチレーテッドヒドロキシトルエン、イノシトール等がある。(特許文献2、特開平10−36257号公報、特開平9−315960号公報、特開平9−241165号公報、特開平9−221667号公報、特開平9−40519号公報、特開平8−59485号公報、特開平7−324025号公報、特開平7−109215号公報、特開平6−336430号公報)
さらに、植物抽出エキスに関しても、そのメイラード反応阻害活性が知られている。それらの例として、アスナロ、アセンヤク、イタドリ、イチヤクソウ、アンズ、ケイカンカ、ハクカユマトウ、シラカバ、セイヨウサンザシ、セイヨウノコギリソウ、タラヨウ、ドクダミ、トルメンチラ、バクモンドウ、ヒバ、ブドウ、ミチヤナギ、ムクロジ、モッカ、レイシ、ローマカミツレの抽出物(特許文献3)、アメリカマンサク、アンズ、イチヤクソウ、ウワウルシ、オウレン、オオバナサルスベリ、ガンビールノキ、ゲンノショウコ、コウホネ、ザクロ、シャクヤク、セイヨウナツユキソウ、ダイオウ、チャノキ、チョウジノキ、チンネベリーセンナ、テンチャ、トックリイチゴ、トルメンチラ、バラ、ボタン、ヤクヨウサルビア、ヤシャブシ、ヤマモモ、ユーカリノキ、ロッグウッド、ワレモコウの抽出物(特許文献4)、アケビ、アロエ、アンズ、カバ、キキョウ、ゴミシ、サンシチニンジン、タウコギ、ナルコユリ、ハコベ、ハマヂシャ、ブクリョウ、ユズの抽出物(特許文献5)、水溶性カシス抽出物(特許文献6)、黒砂糖エキス(特許文献7、特開2001−112439号公報)、乳酸菌培養物(特許文献8)、カルカデ、ハイビスカス、シャゼンシ、トウニン、マロニエ、ケイシ、ゴミシ、シコン、センナ、トシシ、ビャッキュウの抽出物(特許文献9)、白樺抽出物(特許文献10)、イチイヨウ、カイカ、カイトウヒ、キンオウシ、ゲッケイジュ、コウジョウボク、セキショウコン、ソウジシ、バイモ、モクテンリョウの抽出物(特許文献11)、大豆発酵産物(特許文献12)などがある。
しかしながら、食品廃棄物またはその抽出物のメイラード反応阻害効果については報告がない。
AGE化タンパク質の増加は健常者の老化によっても見られる現象であるが、糖尿病、アルツハイマー病、動脈硬化症患者等においては、その増加の度合いが高く、AGEがこれらの疾患や、これらの疾患に伴う合併症の、直接的な原因となることが明らかにされつつある。したがって、AGE生成阻害剤は、これらの疾患の治療薬や予防薬となる可能性が高く、これらの観点から既に、AGE生成阻害剤であるアミノグアニジンとALT−711が糖尿病合併症予防薬として臨床試験に供されている。対象となる疾病の性質上、長期間の薬剤投与による持続的なAGEの産生阻害が必要となる。そのためには、長期間にわたる、薬剤の有効血中濃度維持が必要となる。アミノグアニジンとALT−711 の有効血中濃度は比較的高いため、有効血中濃度を維持するためには多量の投与が必要となり、副作用の発生が心配される。また、長期投与が必要であるため、慢性毒性や遅延毒性の発現が懸念される。一方、天然の抗酸化物質や植物抽出エキスについても、その有効性が示されているが、有効成分の体内吸収性を考慮すると、これらについても多量で継続適な投与が必要となる。しかし、これらは、必ずしも継続的な多量投与での安全性が確立しているものばかりではない。このように、実用的に満足できる効果が得られるAGE生成阻害剤は未だ見出されていない。したがって、安全性が高く、長期投与が可能なAGE産生阻害剤の開発が求められている。
特開2003−300961号公報 特開2003−212774号公報 特開2003−212770号公報 特開2002−241299号公報 特開2002−241293号公報 特開2002−205916号公報 特開2001−114635号公報 特開2000−264811号公報 特開平11−106336号公報 特開平10−152444号公報 特開平8−259431号公報 特開2003−300894号公報
上記事情に鑑みると、本発明が解決すべき課題は、安全性が高く、長期投与が可能なメイラード反応阻害剤を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、食品廃棄物およびその抽出物がメイラード反応抑制剤として使用可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)食品廃棄物またはその抽出物を含むメイラード反応阻害剤;
(2)糖尿病合併症および/または加齢性疾患の治療および/または予防薬である(1)記載のメイラード反応阻害剤;
(3)飲食物である(1)記載のメイラード反応阻害剤;
(4)機能性食品である(3)記載の飲食物;
(5)化粧品である(1)記載のメイラード反応阻害剤;
(6)皮膚外用剤である(1)記載のメイラード反応阻害剤;
(7)食品変性防止剤である(1)記載のメイラード反応阻害剤;
(8)発癌物質産生抑制剤である(1)記載のメイラード反応阻害剤;
(9)食品廃棄物が、そばがら、あんかす、および食品発酵かすからなる群より選択されるものである(1)記載のメイラード反応阻害剤;
(10)食品廃棄物の抽出物が、そばがら水抽出物、あんかす水抽出物、ワインかすエタノール抽出物、および醤油かす水抽出物からなる群より選択されるものである(1)記載のメイラード反応阻害剤
を提供するものである。
本発明によれば、安全性が高く、長期投与が可能な、食品廃棄物またはその抽出物を含むメイラード反応阻害剤、飲食物、化粧品等が提供される。本発明は食品廃棄物を用いるので、大量に生じている食品廃棄物の有効利用につながるものである。したがって、本発明は、経済的観点から、また、地球環境保全の観点からも有益な効果を奏すると考えられる。また本発明は食品廃棄物の処理方法に関する新技術開発の展開にも結びつくとも考えられる。
メイラード反応は、アミノ酸、ペプチド、蛋白のアミノ基とケトン、アルデヒド、特に還元糖が多段階反応して終末糖化産物(AGE)を生成する反応である。生体内においてメイラード反応によりAGEが生じた場合、それに起因して種々の疾患が発症する。そのような疾患の例としては、例えば、糖尿病合併症、神経障害、網膜症、腎症、白内障、冠動脈性心疾患、末梢循環障害、脳血管障害、動脈硬化症、関節硬化症、癌、アルツハイマー病等が挙げられる。したがって、生体内でのメイラード反応を阻害してAGEの生成を抑制することにより、上記疾患を予防・治療することができる。本発明のメイラード反応阻害剤による治療に適した病気の例は糖尿病合併症および加齢性疾患(例えば、加齢に伴う脳血管障害、動脈硬化症、関節硬化症、癌、アルツハイマー病等)である。
したがって、本発明は1の態様において、食品廃棄物またはその抽出物を含むメイラード反応阻害剤を提供するものである。食品廃棄物とは我々が通常食料として用いる原料を加工する過程で生じる不要物のことである。通常我々が摂取する、食品およびその加工品は歴史的、経験的に長期投与に対する安全性が確立されている。したがって、食品およびその加工品の製造過程で生じる食品廃棄物もその安全性が極めて高いといえる。食品廃棄物の例としては、そばがら、あんかす、米ぬか、カカオハスク、食品発酵かす等が挙げられるが、これらに限らない。食品発酵かすの例としては、ワインかす、醤油かす、清酒かす、みりんかす等が挙げられるが、これらに限らない。本発明に用いる好ましい食品廃棄物の例としては、そばがら、あんかす、および食品発酵かすが挙げられるが、これらに限らない。本発明に用いる好ましい食品発酵かすとしてはワインかす、醤油かすが挙げられるが、これらに限らない。本発明に用いる好ましい食品廃棄物の抽出物の例としては、そばがら水抽出物、あんかす水抽出物、ワインかすエタノール抽出物、および醤油かす水抽出物が挙げられる。一般に、ポリフェノール類の含量の高い食品廃棄物またはその抽出物が好ましいと考えられる。本発明のメイラード反応阻害剤として、食品廃棄物やその抽出物をそのまま用いてもよく、適当な担体または賦形剤等と混合して用いてもよい。食品廃棄物の抽出法は様々なものが知られているが、溶媒を用いる方法が一般的である。溶媒は毒性が低いか無いものが好ましく、例えば、水、エタノール、酢酸エチル等が好ましい。例えば、温度、時間、撹拌等の抽出条件は適宜定めうる。必要に応じて抽出前にカッター、ミル、破砕機等で食品廃棄物を細分あるいは粉砕してから抽出を行ってもよい。
本発明のメイラード反応阻害剤の剤形は特に限定はなく、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、パスタ、クリーム、軟膏、溶液、懸濁液、エマルジョン等が例示される。担体または賦形剤は毒性が低いもの、あるいは無いものが好ましく、医薬上許容されるものが特に好ましい。本発明のメイラード反応阻害剤に使用可能な担体または賦形剤の例としては、精製水、エタノール、食用油、デンプン、セルロース、糖蜜、砂糖、乳糖、タルク等が挙げられるがこれらに限らない。さらに着色料、香料等を添加してもよい。本発明のメイラード反応阻害剤の製造には、当業者に公知の製造方法を適宜選択して用いることができる。
本発明のメイラード反応阻害剤は、上記効果のほか、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制して、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示し、化粧品、皮膚外用剤、飲食物、嗜好物、機能性食品用としても有用である。
したがって、本発明のメイラード反応阻害剤は飲食物であってもよい。飲食物の種類は特に限定されない。食品廃棄物やその抽出物をそのまま飲食物として用いてもよく、適当な形状に成形して用いてもよい。本発明の飲食物は、例えば、調味料、ふりかけ等の形状にすることもできる。また、本発明の飲食物は食品添加物として使用することもできる。食品の製造あるいは処理工程において本発明の飲食物を添加してもよく、最終製品に添加してもよい。その添加量や添加時期は、製造される飲食物により適宜変更されうる。本発明の飲食物は上記効果を有するものであるので、健康食品や機能性食品とすることもできる。
本発明のメイラード反応阻害剤は化粧品であってもよい。その形状はローション、クリーム、パスタ、軟膏等の形状であってもよい。かかる化粧品の製造方法は当該分野において公知である。化粧品を製造する際、適宜濾過を行って、沈殿やかすを除去してもよい。さらに嗜好に応じて香料、着色料等を本発明の化粧品に添加してもよい。また本発明のメイラード反応阻害剤は皮膚外用剤であってもよい。皮膚外用剤は、例えばローション、クリーム、パスタ、軟膏等の形状であってもよい。本発明の皮膚外用剤に公知の皮膚透過促進剤、着色料や香料糖を適宜添加してもよい。これらの製造方法や使用する担体は当業者に公知のものを適宜選択して用いることができる。上述のごとく、これらの化粧品および皮膚外用剤は、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制して、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示す。
食品の褐変現象はメイラード反応と同じ機構で進行し、好ましい色や風味を食品に付与するという利点もあるが、逆に、褐変現象による食品の変性(変色も含む)が食品にとり好ましくない場合も多々ある。そのような場合に、本発明のメイラード反応阻害剤を食品変性防止剤として用いることができる。例えば、食品の製造過程において、あるいは最終製品に本発明のメイラード反応阻害剤を添加して変性を防止することができる。添加量や添加時期は当業者が適宜定めうるものである。
メイラード反応を阻害することによりアクリルアミド等の発癌物質の生成を抑制できることも知られている(Nature 419,448―449(2002))。したがって、本発明のメイラード反応阻害剤を発癌物質産生抑制剤として使用することができる。例えば、本発明のメイラード反応阻害剤を調理前の加工食品に発癌物質産生抑制剤として添加することができる。
上述のごとく、本発明のメイラード反応阻害剤は食品廃棄物またはその抽出物を含むものである。食品廃棄物またはその抽出物は元来成体に取り安全な食品の製造過程において生じるものであり、安全性が極めて高いものである。それゆえ、本発明の本発明のメイラード反応阻害剤は摂取量に上限はなく、長期にわたり投与、服用あるいは摂取することができる。
以下に、実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
A.実験方法
メイラード反応阻害活性の測定
下記の系で測定を行った。1当量のNα−t−ブチルオキシカルボニル−L−リジン(Boc−Lys)に対して、2当量のグルコースを加えた0.5Mりん酸緩衝液(pH7.4)溶液を作成し、これを50℃で15日間インキュベーションした。その間、1、3、5、10、15日目に反応液の一部を採取しAGEに相当する構造の化合物およびメイラード反応中間体の有無を調べた。その結果、1日目以降にメイラード反応中間体のひとつである、Nα−Boc−Nε−(1−デオキシ−D−フラクトシル)−L−リジン(Boc−FL)の生成が認められた。また、3日目以降からは主要AGEに相当するNα−Boc−Nε−(カルボキシメチル)−L−リジン(Boc−CML)の生成が認められた。本反応の阻害率を指標に食品廃棄物のメイラード反応阻害活性を評価した。メイラード反応関連物質の定量はAPI−3000質量分析装置(Applied Biosystems)を用いて行った。Boc−FLとBoc−CMLの標品は文献既知の方法により合成した。合成したBoc−CML(標品)はエレクトロスプレーイオン化マススペクトル(ESI−MS)において、分子イオンピークm/z 306(M+H)を与えた。このm/z 306イオンをプリカーサーとするMSMSスペクトルを測定するといくつかのプロダクトイオンピークが観測された。プロダクトイオンピーク中、最も強度の高いものはm/z 130のピークであった。これはBoc−CMLに特異的なフラグメントに由来するピークである。Boc−CMLの定量はこのMSMSのフラグメントイオンピークm/z 130のピーク面積を指標に行い、検量線を作成した。その結果、Boc−CMLの1.0−100μMの濃度範囲においてピーク面積と濃度との間に一次の相関(r=0.996)が認められた。Boc−FLに関しても同様に分子イオンピークm/z 409のMSMSスペクトル中最も強度の強かったプロダクトイオンm/z 225を指標に一次の相関性の高い検量線を得ることができた。これらの検量線を指標にメイラード反応生成物の定量を行った。
具体的には、上記反応系にメイラード反応阻害陽性標品としてアミノグアニジンを基質(Boc−Lys)に対して0.1当量加えたところ、メイラード反応最終生成物であるBoc−CMLの生成を40.5%に抑制した(10日目)。同様に食品廃棄物やその抽出物23.5mg(カテキン0.1当量相当)を本反応系に加え10日間インキュベートしたときのBoc−CML(AGE)の産生阻害率を求めた。
食品廃棄物抽出物の調製
食品廃棄物は、固液抽出法により抽出することができる。抽出方法としては、食品廃棄物をソックスレー抽出器を用いて、50〜100重量倍の溶媒で1〜12時間連続抽出した。抽出溶液から凍結乾燥や減圧濃縮により溶媒を除いた後、減圧乾燥により粉末または油状物質としてエキスを得ることができた。抽出溶媒は水、エタノール、水―エタノール混合液、酢酸エチル、ブタノール、メタノール等で、好ましくは、水、水―エタノール混合液、酢酸エチルである。必要に応じて本抽出物をクロマトグラフィー等によりさらに精製したものも調製した。
有効成分の定性と定量
各抽出物の成分の同定は、質量分析計の測定で行った。すなわち、質量分析により得られた含有成分の分子量と、分子衝突により得られたフラグメントイオンのパターンから、成分を推定した後、標品と一致させた。各成分の定量は質量分析計を用いたMRM法(Multiple Reaction Monitoring法)により行った。
実験結果
各種食品廃棄物由来の抽出物のメイラード反応抑制活性を調べた。阻害率はモデル反応10日目のBoc−CML(AGE)の生成量を基に下記の式により求めた。阻害剤の添加量は、対照のアミノグアニジンは基質(Boc−Lys)の0.1当量、抽出物はカテキン換算にして基質(Boc−Lys)の0.1当量分とした。阻害率は下式により算出した。


阻害率(%)={(A−B)/A}X100

式中、A=対照反応系におけるBoc−CMLの生成量
B=阻害剤を入れたときのBoc−CMLの生成量
結果を図1に示す。そばがら水抽出物、あんかす水抽出物、ワインかすエタノール抽出物、しょうゆかす水抽出物が、既存のAGE産生阻害剤であるアミノグアニジンよりも高い阻害率を示した。特に、そばがら水抽出物およびあんかす水抽出物が高い阻害率を示した。米ぬか酢酸エチル抽出物、しょう油かす酢酸エチル抽出物、ワインかす酢酸エチル抽出物もアミノグアニジンには劣るものの、比較的高いAGE産生阻害率を示した。カカオハスク、ワインかす水抽出物、あんかす酢酸エチル抽出物、そばがら酢酸エチル抽出物も中程度の阻害率を示した。
各抽出物中に含まれる成分を質量分析装置を用いた構造解析を行い決定した。それらの成分について、マルチプルリアクションモニタリング法(MRM法)による定量を行った。一例として、そばがら水抽出物についての結果を図2に示す。そばがら水抽出物にはルチン1.1%、イソケルセチン0.9%、アストラガリン0.5%、アフゼリン1.2%が含まれることが明らかになった。醤油かす水抽出物にはダイゼイン4.0%、ゲニステイン3.2%、トリプトファン1.7%、チロシン2.2%のほかにTrp−Tyrジペプチド、ゲニステイン3−フェニルプロパン酸エステルが含まれることがわかった。ワインかすエタノール抽出物にはカテキン0.9%、ケルセチン0.7%、プロシアニジンB0.5%のほかにプロシアニジンC、アフゼレキンが含まれることがわかった。このように、そばがら水抽出物、醤油かす水抽出物、およびワインかすエタノール抽出物にはポリフェノール類が豊富に含まれていることがわかった。他の抽出物中にも同様にポリフェノール類が含まれていることがわかった。したがって、ポリフェノール類が本発明の食品廃棄物またはその抽出物のメイラード反応阻害活性に大きく関与していると考えられた。
本発明は、安全性が高く、長期投与が可能な、食品廃棄物またはその抽出物を含むメイラード反応阻害剤、飲食物、化粧品等を提供するものである。したがって、本発明は、食品産業、医薬品産業、化粧品産業、食品廃棄物処理産業等に利用可能である。
食品廃棄物抽出物のAGE産生阻害(メイラード反応阻害)活性を示す図である。 そばがら水抽出物の質量分析(MS)スペクトルの結果を示す図である。含有成分はMSとMS/MS法を用いて同定した。各成分の定量はマルチプルリアクションモニタリング法(Anal.Chem. 50,2017−2021 (1978))により行った。

Claims (4)

  1. あんかす水抽出物、そばがら水抽出物または醤油かす水抽出物を含むメイラード反応阻害剤。
  2. 糖尿病合併症および/または加齢性疾患の治療および/または予防薬である請求項1記載のメイラード反応阻害剤。
  3. 食品変性防止剤である請求項1記載のメイラード反応阻害剤。
  4. 発癌物質産生抑制剤である請求項1記載のメイラード反応阻害剤。
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