JP4896413B2 - ポリトリメチレンテレフタレート組成物からなる微細な粉体 - Google Patents
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Description
これに対してPTTは繊維や成形体の特性より、優れた耐候性、耐薬品性、耐熱性、適度な硬度・柔軟性、融点の粉体となることが期待できる。このような特徴を活かすことにより、粉体塗料を始めとしたや各種塗料の原料や研磨材の原料、各種コンパウンドを行う際の微分散剤、滑剤などの用途への展開が考えられる。
PTTの粉体を得る技術としては、重合ペレットをサンプルミルにて粉砕した大きさ1mmのPTT粒子の提案がある(例えば、特許文献1参照。)。該提案では、エステル交換反応物を窒素にて霧状に噴霧して粒子化した後に真空中で固体状態とし、その後、加熱して重合させて大きさ0.3mmのPTT粒子を得ている。
しかしながら、本発明者らの検討によると、これらのいずれの技術においても、平均粒径が300μm以上と大きい粉体しか得ることができない。更に粒径を小さくする方法についても、何ら記載も示唆さえもされていない。このため、該技術用いて工業的に製造可能な微細な粉体を得ることはできない。
飽和ポリエステルなどのガラス転移点の低い樹脂を微細な粉末に粉砕する技術として、液体窒素などで冷却しながら機械粉砕したり、樹脂を良溶媒に溶解した溶液に、貧溶媒を添加して樹脂を析出させて粉末を製造する、いわゆる化学粉砕を行ったりする技術も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。該技術を用いることによりPETの粉体を製造することが可能になるものの、平均粒径が200μm以下といった微細な粉体を製造することは、依然として困難である。また、液体窒素や溶媒を用いるための複雑な設備が必要になったり、工程が追加されるために作業時間が大幅に長くなったりしてしまい、生産性が極度に悪化してしまう。該提案では、PETを主体とした樹脂を170℃にて6〜17時間熱処理した結晶化度35%以上の粗大ペレットを粉砕する技術も提案されている。
しかしながら、本発明者らの検討によると、粉砕性を高めることのできる結晶化度や、該結晶化度を達成させるための条件、及び粉砕に適した温度は樹脂の成分によって異なるため、PET及び共重合PETの技術をそのままPTTに応用しても目的とする工業的に製造可能な微細な粉体を得ることはできない。
このように、これまでの技術では、工業的に製造可能な、微細なPTT組成物から成る粉体を得ることはできない。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)平均粒径が、0.1〜250μmである、PTT組成物からなる粉体。
(2)PTTの割合が、30重量%以上である、(1)に記載の粉体。
(3)結晶化度Xcが10〜100%である、(1)または(2)に記載の粉体。
ここで結晶化度Xcは下記である。
Xc = {ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
ρa : 非晶密度 = 1.305g/cm3
ρc : 結晶密度 = 1.431g/cm3
ρs : ペレットの密度( g/cm3)
(4)微結晶サイズが1〜17.5nmである、(1)〜(3)のいずれかに記載の粉体。
ここで微結晶サイズは広角X線回折にてペレットを評価した際に、2θ=15.5°付近に観察される(010)面に由来する回折ピークより計算した値である。
(5)PTTの固有粘度が0.5〜4dl/gである、(1)〜(4)のいずれかに記載の粉体。
(6)予め60〜230℃の温度にて0.01〜300時間熱処理したPTT組成物を粉砕する、(1)〜(5)のいずれかに記載の粉体の製造方法。
(7)−40〜100℃の温度にて、機械粉砕する、(6)に記載の粉体の製造方法。
(8)熱処理温度が180〜225℃、熱処理時間が0.1〜100時間である、(6)又は(7)に記載の粉体の製造方法。
(9)粉砕するPTT組成物の結晶化度が10〜100%である、(6)〜(8)のいずれかに記載の粉体の製造方法。
(10)固有粘度が0.5〜4.0dl/gのPTT組成物を粉砕する(6)〜(9)のいずれかに記載の粉体の製造方法。
(11)(1)〜(5)に記載の粉体を含む研磨材
(12)(1)〜(5)に記載の粉体を10〜100重量%含む研磨材
(13)(1)〜(5)に記載の粉体を50〜100重量%含む研磨材
(14)(1)〜(5)に記載の粉体を含む塗料
(15)(1)〜(5)に記載の粉体を含む粉体塗料
本発明の粉体はPTT組成物からなる微細な粉体である。PTT組成物からなることで本発明の目的である粒径が小さく、優れた耐候性、耐薬品性、耐熱性、適度な硬度・柔軟性、融点の粉体であり、且つ、高価で複雑な設備を用いずに生産性良く、低コストにて製造することができる粉体となることが容易になる。これは第一に、化学的な反応性の低い飽和ポリエステルの一種であるというPTTの分子構造からくる化学的な安定性や結晶性、ジグザグの分子骨格構造からくる衝撃吸収性に由来すると考えられる。第二に、特に高温で熱処理した際に顕著となるが、PTTが容易に結晶化し、結晶化させることによりある一定以上の変形を加えると容易に割れるようになるためと思われる。
本発明のPTT組成物とは、PTT以外に各種の有機物質や無機物質を含んでいる場合も含む。
また、本発明のPTTは、PTT成分に対してカルボキシル末端基濃度が0〜100eq/トン、環状二量体含有率が0〜3重量%、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル成分(構造式:−OCH2CH2CH2OCH2CH2CH2O−、以下「BPE」と略す)の含有率が0〜2重量%であることが好ましい。このようにすることにより粉体の耐候性、耐薬品性、耐加水分解性、及び、耐熱性を高めることができる。
ここで環状二量体とは、下記構造式で表される、2つのトリメチレンテレフタレート単位が環状につながった二量体である。
| |
OGOOC−◎−CO
ここで、 ◎ : ベンゼン環
G : −CH2CH2CH2−
PTT以外の有機物質としては、環状や線状のPTTオリゴマー、PTTを構成する酸成分やグリコール成分のモノマー、PTT以外の樹脂及び各種添加剤が挙げられる。PTT以外の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、熱硬化性のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などの熱可塑性ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ポリフェニレンサルファイト、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂など、及び、これらの共重合樹脂などが挙げられる。このような樹脂が、一度、繊維やフィルム、ボトルなどに成形された物を回収して得たものであることも、好ましい一つの例である。
また、その他の添加剤としては、有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤、不純物の捕捉剤、表面調整材などが挙げられる。
本発明の粉体は、粒径が小さく、優れた耐候性、耐薬品性、耐熱性、適度な硬度・柔軟性、融点の粉体とするために、PTTの割合が30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上が更に好ましい。なお、ここでのPTTの割合は、溶媒としてHFIP:CDCl3=1:1を用いた1Hの核磁気共鳴スペクトル(以下「NMR」と略す)を用いた分析により求めることができる。この際、環状二量体を始めとした各種のPTTオリゴマーやBPEはPTTの割合の中に含めて計算する。
また、取り扱いの容易さという観点からは粉体の安息角が50度以下であることが好ましく、42度以下がより好ましく、40度以下が更に好ましく、38度以下が特に好ましい。
本発明の粉体は、結晶化度(Xc)が10〜100%であることが好ましく、また、結晶サイズは1〜17.5nmであることが好ましい。
ここで結晶化度は、「PTTの結晶弾性率」:中前勝彦著、材料、第35巻、第396号、1067頁、1986年発行の論文に記載された式(1)、式(1)を変形した式(2)、結晶密度の値(1.431g/cm3)、及び、我々が実験で求めた非晶密度の値(1.305g/cm3)より求めることができる。
Xc = {ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
・・・ 式(2)
ρa : 非晶密度 = 1.305g/cm3
ρc : 結晶密度 = 1.431g/cm3
ρs : ペレットの密度( g/cm3)
なお、PTT以外の成分を含む場合は、該成分の密度と含有率、及び上記式よりPTTの結晶化度を求める。
結晶化度は好ましくは20〜70%がより好ましく、30〜60%が更に好ましい。一方微結晶サイズは3〜17nmがより好ましく、5〜16nmが特に好ましい。
このような結晶化度、及び、結晶サイズにすることで優れた耐候性、耐薬品性、耐熱性、適度な硬度・柔軟性とすることが容易になる。
次に本発明の粉体の製造方法について説明する。
本発明の粉体は、重合して得たPTT組成物、又は重合して得たPTT組成物に各種の添加剤を添加したPTT組成物を、ストランド状で水中に押出して冷却固化・カットしたペレット状等の固形物とした後、粉砕して得ることができる。
粉体として必要な添加物は、重合時に添加する方法、重合後に溶融混練などをして添加する方法、或いは、これらを組み合わせる方法などによって添加することができ、添加物の種類や量、要求される性能等により適宜選択することができる。添加剤としては、PTT以外の樹脂を始めとした熱により溶融する成分や、高融点あるいは溶融しない樹脂、無機や有機の充填材などの熱により溶融しない成分、顔料、熱安定剤などが挙げられる。
このようにして得られたPTT組成物は、ストランド状やシート状で水中に押出して冷却固化・カットした固形物、特にペレット状とすることが、輸送、保管などの組成物の取り扱いや、粉砕を容易にするために好ましい。ペレット状にする場合は一粒当たりの平均重量が1〜1000mgとすることが輸送、保管、粉砕等の取り扱い性が良好となるので好ましい。一粒の重量は5〜100mgがより好ましく、10〜70mgが更に好ましく、20〜40mgが特に好ましい。ペレットの形状は球形、直方体、円筒、円錐のいずれでも良いが、取り扱い性を考えた際は最長部の長さが15mm以下とすることが好ましく、10mm以下とすることがより好ましく、5mm以下とすることが更に好ましい。
PTT組成物を粉砕する方法としては、機械粉砕、化学粉砕が挙げられるが、特別な溶剤や設備が不要で、生産性が良好なことより、常温付近の温度にて機械粉砕する方法が好ましい。
ここで常温付近とは、粉砕機の温度を制御する設備を有さない場合、及び、−40〜20℃の冷風や冷媒を用いて設備や固形物を冷却する場合を意味するが、固形物を冷媒などに浸漬する、いわゆる冷凍粉砕のような場合は含まない。このような機械粉砕では摩擦熱により粉砕機の温度が上昇するが、150℃以下とすることが好ましく、120℃以下とすることがより好ましく、100℃以下とすることが更に好ましい。最初にも述べたが、一般的に用いられるPETやナイロンと異なって、上記したような常温の機械粉砕にて生産性良く粉砕できるのはPTTを用いたためであり、本発明の特徴の一つである。
ペレットなどのPTT固形物を機械粉砕する際は、結晶化度を10%以上にすることが好ましく、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上にしておくことが良い。このようにすることにより微細な粉体を高収率にて得ることが容易となるとともに、粉体粒子のヒゲを少なくすることも容易になる。
更に粉砕性を良くするためには熱処理の温度を150〜230℃とすることがより好ましく、180〜225℃とすることが更に好ましく、200〜220℃とすることが特に好ましい。熱処理時間は0.1〜100時間がより好ましく、0.2〜50時間が更に好ましく、0.3〜30時間とすることが特に好ましい。熱処理をする際は、酸素によるPTTの着色を抑制するために、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。
このようにして得られた粉体には、更にヘンシェルミキサー等を用いて他の粉体を混ぜることもできる。混ぜる粉体としては、異なった添加剤の入ったPTT粉体や、PTT以外の樹脂や有機物、無機物からなる粉体が挙げられる。この工程で粉体を混ぜる際には、比重差や量に応じて粉体の大きさを適宜調整することが好ましい。
粉体塗料及びその原料としては、顔料や熱安定剤を必要に応じて溶融混練したPTT組成物を粉砕して得た、平均粒径10〜500μmの粉体とすることが好ましい。このようにすることにより、流動浸漬法や静電塗装法等に適した熱可塑性の粉体塗料として用いることができ、表面保護性能、外観、塗膜の柔軟性に優れた塗装を行うことができる。本発明のPTT粉体は、粒径は流動浸漬法に用いる場合は平均粒径が50〜250μmとすることがより好ましく、80〜150μmとすることが更に好ましい。一方、静電塗装法に用いる場合は平均粒径が10〜150μmとすることがより好ましく、20〜80μmとすることが更に好ましい。
本発明のPTT粉体は研磨材及びその原料としても有用である。
研磨材としては、粉体をそのまま用いる乾式や、水などの液体と共にスラリー状にして用いる湿式、樹脂で固めたり繊維に付着させたりして用いる固体式などのいずれにも用いることができるが、本発明の粉体は乾式と湿式、特に乾式の研磨材に適している。
湿式では、水や各種有機溶剤、界面活性剤などと混ぜてスラリー状にして用いることが多いが、本発明のPTT粉体は耐薬品性が高く、且つ、吸湿性及び吸湿による特性変化が少ないので、様々な物質と混ぜて使用することができる。
このような研磨材及びその原料として用いる場合は、PTT粉体単独、あるいは有機や無機の充填剤を添加したり、他の粉体と混ぜたりすることで、目的に合った研磨力、耐久性などを有した研磨材とすることができる。
粉体の粒径も目的に応じて適宜選択するが、取り扱いの容易さより平均粒径は1〜500μmが好ましく、10〜250μmがより好ましく、30〜150μmが更に好ましい。形状は球あるいは立方体に近い形状で、ヒゲ、フィルム状の突起が少ないものが好ましい。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)PTT含有率、環状二量体含有率、BPE含有率
PTT含有率(重量%)は、塗料又は塗膜100mgをHFIP:CDCl3=1:1に溶解させ、不溶成分をMEMBRANE FILTER(1μm、PTFE)で濾過した後の溶液を用いて、1H−NMR測定により求めた。測定機はFT−NMR DPX−400(Bruker社製)を用いた。また、濾過して取り除いた不溶成分は真空乾燥後重量を測定し、PTT含有率を求める際に用いた。
固有粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
[η]=lim (ηsp/C)
C→0
(3)カルボキシル末端基濃度
PTT組成物1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後、クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定を行い、滴定値VA(ml)とPTT組成物が無い場合のブランク値V0より、以下の式に従って求めた。
カルボキシル末端基濃度(eq/トン)=(VA−V0)×20
水中に分散させた粉体の粒径(平均粒径、粒径分布)を、レーザー光回折/散乱法を用いた日機装(株)社製 マイクロトラックFRA粒度分析計を用いて測定した。
(5)形状
光学顕微鏡にて粉体粒子の形状を観察した。
(6)安息角
JISR9301に準じて測定を行った。
(7)結晶化度
JIS−L−1013に基づいて四塩化炭素およびn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて密度勾配管法にて求めた密度より、下記式に従って求めた。
Xc={ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
ρa : 非晶密度(g/cm3)=1.300g/cm3
ρc : 結晶密度(g/cm3)=1.431g/cm3
ρs : ペレットの密度(g/cm3)
結晶サイズは以下の条件にて広角X線回折にて行った。
測定装置 : ロータフレックス RU−200 理学社製
測定方法 : 反射法
X線強度 : 40kv、120mA
X線源 : CuKα線
スリット間隔 : DS=0.6、RS=0.3、SS=1
微結晶サイズ : ピーク分離法により求めた回折ピークの半値幅より下記式を用いて求めた。
微結晶サイズ(nm)=Kλ/(β×cosθ)
K : 定数(=1)
λ : X線の波長(=0.154nm)
β : ピークの半値幅(°)
θ : 回折が観察される角度(2θ)より求めた値(°)
固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%のPTT組成物からなる一粒の平均重量が25mg、最長部の長さが3mmの円柱状ペレットを箱型の熱風乾燥機中にて120℃で2時間熱処理を行って結晶化度が25%、結晶サイズが12nmの熱処理ペレットを得た。
得られた熱処理ペレットを、ターボ工業(株)社製の機械式粉砕機である「ターボミル」と100メッシュの振動ふるいを組み合わせて、粉砕・分級して粉体を得た。粉砕機では粉砕したペレットを100メッシュの振動ふるいによって分級し、ふるいを通過したものは製品とし、通過しなかったものは粉砕機に戻して再度粉砕するようにした。
主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。なお、ペレットと粉体の結晶化度、結晶サイズは同じであったので粉体に関してのみ記載することとする。他の実施例、比較例につていも同様とする。
得られた粉体を単独で用いて、エポキシ樹脂にてモールドされた半導体素子のリードフレームに付着したバリ取りに用いた。この際、粉体の投射は圧縮空気を用いるエアーブラスト方式にて行った。この結果、樹脂でモールドされた半導体素子自体は傷つけずに、リードフレームに付着していたバリのみをきれに除去することができた。また、粉塵がほとんど発生せず素子をほとんど汚すことがなかった。使用した粉体を5回繰り返し使用したが、バリ取り性能、素子の汚染状況に変化はほとんど見られず、優れた耐久性を示した。
表1に記載した条件を変えた以外は実施例1と同様にして紛体を得た。主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。
実施例2では50メッシュのふるいを用いたところ、粒径が大きくなったものの、1時間当たりの粉砕量が上がり、また安息角が低いことからわかるように流動性粉砕性の良い粉体が得られた。
実施例3では120℃にて2時間乾燥した後、内容積5リットルの回転式金属フラスコとオイルバスを用いて、窒素を1リットル/分流通させながら210℃にて0.5時間熱処理を行って得た、結晶化度が45%、結晶サイズが15nmの熱処理ペレットを用いたところ、粉砕性に優れ、平均粒径が小さく、且つ、流動性に優れた、良好な粉体が得られた。
実施例4では固有粘度が0.6dl/gと重合度の低いPTT組成物からなるペレットを粉砕に用いたところ、粉砕性が更に優れ、平均粒径が小さく、且つ、流動性に優れた、良好な粉体が得られた。
200℃にて20時間の熱処理を固相重合と兼ねて行って得た固有粘度[η]が1.15dl/g、のPTT組成物からなる一粒の平均重量が25mg、最長部の長さが3mmの円柱状で結晶化度が48%と高いペレットを粉砕に用いた以外は実施例1と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。
得られた粉体は粉砕性が非常に優れ、また、平均粒径が80μmと細かく、ヒゲが無く、安息角も37度と流動性の良い、優れた粉体であった。
得られた粉体を単独で用いて、ポリブチレンテレフタレート樹脂の射出成形に用いた金型表面のクリーニングを行った。この際、粉体の投射は圧縮空気を用いるエアーブラスト方式にて行った。この結果、金型本体は傷つけずに、表面に付着していた樹脂汚れのみをきれに除去することができた。また、粉塵がほとんど発生せず金型をほとんど汚すことがなかった。使用した粉体を3回繰り返し使用したが、クリーニング性能、金型の汚染状況に変化はほとんど見られず、優れた耐久性を示した。
粉砕機として日清エンジニアリング(株)製のブレードミルを用いた以外は実施例5と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。
得られた粉体は平均粒径が20μmと非常に細かく、且つ、ヒゲが無い粉体であった。
得られた粉体を塗料用シンナーで希釈されたアクリル系塗料に、塗料成分に対して5重量%となるように添加したところ、大きな凸凹が無く均一な艶消し塗装のできる塗料が得られた。
固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.6重量%のPTT組成物70重量部と大成化光(株)社製の加工チタンI−131Eを30重量部とを2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)に投入して、スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度240℃、押出速度150Kg/hr(滞留時間1分)、減圧度0.04MPaにて溶融混練を行った。混練したポリマーはストランド状にして水中に押出した後に冷却固化、カッティングを行い、一粒の平均重量が30mg、最長部の長さが3mmの円柱状ペレットを得た。
得られたペレットを実施例3と同様にして熱処理、粉砕して粉体を得た。主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。
得られた粉体は粉砕性に優れ、平均粒径が小さく、且つ、流動性に優れた、良好な粉体であった。
加工チタンの代わりに、NICO(株)社製のワラストナイトNYGLOSS8を70重量部溶融混練した以外は実施例7と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。
得られた粉体は粉砕性に優れ、平均粒径が小さく、且つ、流動性に優れた、良好な粉体であった。
PTT100重量部の代わりに、実施例9では実施例2で用いたPTT90重量部と固有粘度[η]が0.6dl/g、カルボキシル末端基濃度が40eq/トンのPET10重量部を、実施例10では実施例2で用いたPTT80重量部と三菱エンジニアリングプラスチック(株)製のポリカーボネートであるユーピロンS2000 20重量部をそれぞれ用いて、表1に示した条件以外は、実施例2と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。
得られた粉体はいずれの場合も、粒径が細かく、且つ、ヒゲが少なく、流動性の悪くない粉体であった。
1,4−ブタンジオールを10重量%共重合した固有粘度0.9dl/g、カルボキシル末端基濃度が20eq/トンの共重合PTTをPTTの代わりに用いて、表1に示した条件以外は実施例2と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び紛体特性を表1に示す。得られた粉体は、ヒゲが多少見られたものの、粒径が細かく、流動性の良い粉体であった。
固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.6重量%のPTT組成物100重量部に、(株)松村石油研究所製の流動パラフィン、スモイル P−260を添着剤として0.03重量%用いて、黒の顔料として三菱化学(株)社製の三菱カーボンブラックを0.1重量%、熱安定剤としてチバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1098を0.1重量部、紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のTINUVIN234を0.1重量部ドライブレンドした後、2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)に投入して、スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度240℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、260℃であった)、押出速度150Kg/hr(滞留時間1分)、減圧度0.04MPaにて溶融混練を行った。混練したポリマーはストランド状にして水中に押出した後に冷却固化、カッティングを行い固形物であるペレットを得た。
得られた粉体は塗料中のPTT含有率が99%以上、平均粒径は80μmと細かく、且つ、ヒゲが無く、流動性が良い優れた粉体であった。
次に得られた粉体を、流動浸漬法にて粉体塗料として用いた。流動浸漬法では、直径200mmの円筒状で、下部よりPE製不織布を張って断面内に均一に空気が流れるようにしたに円柱状容器に2kg入れ、下部より該粉体の体積が1.4倍になるように空気を導入して流動浸漬層を作成した。この流動浸漬層に310℃に加熱した厚さ3.2mm、長さ100mm、幅40mmの鋼製の平板を2秒間浸漬させて塗料を溶融付着させた後取り出して、30秒間空気中に放置した後水中に入れて急冷して塗装を行った。被塗物の表面はブラスト処理を行い、凹凸を付けた。得られた塗膜物性を表1に示す。
得られた粉体を塗料として用いる事により、ピンホールが無く、優れた密着性、耐衝撃性、硬度と、優れた外観を兼ね備えた塗膜が得られた。
PTTの代わりに、比較例1では実施例9で用いたPET100重量部を用い、比較例2では実施例10で用いたポリカーボネート100重量部をそれぞれ用いて、表1に示した条件以外は実施例1と同様にして粉体を得た。表1に示したように、いずれの場合も粉砕開始後、10〜30分程度で振動ふるいの目がつまってしまい連続して粉体を製造することができなかった。目がつまるまでに得られた粉体を調べたところ、いずれの場合も粒径が大きく、しかも、ヒゲ状の突起だらけの粉体で流動性が悪いものであった。
Claims (13)
- 平均粒径が0.1〜250μm、安息角が50度以下であり、かつ結晶化度Xcが43〜100%であることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート組成物からなる粉体。
ここで結晶化度Xcは下記である。
Xc = {ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
ρa : 非晶密度 = 1.305g/cm3
ρc : 結晶密度 = 1.431g/cm3
ρs : ペレットの密度(g/cm3) - ポリトリメチレンテレフタレートの割合が、30重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の粉体。
- 微結晶サイズが、1〜17.5nmであることを特徴とする請求項1または2記載の粉体。
(ここで微結晶サイズは広角X線回折にてペレットを評価した際に、2θ=15.5°付近に観察される(010)面に由来する回折ピークより計算した値である。) - ポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度が、0.5〜4dl/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉体。
- 予め60〜230℃の温度にて、0.01〜300時間熱処理したポリトリメチレンテレフタレート組成物を粉砕することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の粉体の製造方法。
- −40〜100℃の温度にて、機械粉砕することを特徴とする請求項5記載の粉体の製造方法。
- 熱処理温度が180〜225℃、かつ熱処理時間が0.1〜100時間であることを特徴とする請求項5または6記載の粉体の製造方法。
- 固有粘度が、0.5〜4.0dl/gのポリトリメチレンテレフタレート組成物を粉砕することを特徴とする請求項5〜7いずれかに記載の粉体の製造方法。
- 請求項1〜4いずれかに記載の粉体を含むことを特徴とする研磨材。
- 請求項1〜4いずれかに記載の粉体を10〜100重量%含むことを特徴とする研磨材。
- 請求項1〜4いずれかに記載の粉体を50〜100重量%含むことを特徴とする研磨材。
- 請求項1〜4いずれかに記載の粉体を含むことを特徴とする塗料。
- 請求項1〜4いずれかに記載の粉体を含むことを特徴とする粉体塗料。
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