JP3693602B2 - 結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ - Google Patents

結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートチップに関するものであり、更に詳しくは、適度な重合度、結晶化度、微結晶サイズを有しているために、乾燥や固相重合を行う際や、これらの設備にチップを移送する際に、熱融着や割れチップの発生を抑制できるポリトリメチレンテレフタレートチップ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す)は、繊維とした場合、低弾性率から由来する柔らかい風合、優れた弾性回復性、易染性といったナイロン繊維に類似した性質と、ウォッシュアンドウェアー性、寸法安定性、耐黄変性といったポリエチレンテレフタレート繊維に類似した性質を併せ持つ画期的な繊維となり、その特徴を活かして、カーペット等の資材用途や衣料用途へ応用できる素材として注目され始めている。
【0003】
PTTは、化学構造的に類似するポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略す)と同様に、溶融重合したポリマーをチップ(ペレットとも呼ぶ)状に成形して紡糸や押出成形等の溶融成形に用いる。このようなチップは乾燥してそのまま溶融成形に用いることもあるが、高い強度の成形体を得るために200℃程度の雰囲気にて固相重合をして重合度を高めて用いることもある。また、乾燥時間を短くするために、200℃近い高温で熱処理することもある。
しかしながら、PTTチップもPETチップも溶融重合して得たチップをいきなり高温で処理するとチップ同士が熱融着するために固まりができ、固相重合機や乾燥機の出口に詰まって排出できなくなったり、配管に詰まって輸送できなくなったりしやすい。
PETでは、高温に加熱した容器にチップを入れ、強いせん断力をかけながら長時間熱処理することにより結晶化させて熱融着を防いでいる。
【0004】
一方、PETチップ同様に、PTTチップにせん断力をかけながら長時間熱処理して結晶化すると、乾燥・固相重合装置にチップを移送する際や乾燥・固相重合を行う際に割れてしまい小粒径の「割れチップ」が大量に発生してしまう。この原因は、PETがまっすぐな分子構造を有しているために隣接分子との凝集力が大きいのに対して、PTTはジグザグ形の分子構造を有しているため隣接分子との凝集力が小さいためにだと考えられる。
割れチップは固相重合速度が速いために重合度が高くなってしまい、大量に発生すると紡糸時に糸切れや糸径ムラが起こったり、流動性が異なるために成型むらが起こったりすることがある。割れチップをふるい等により取り除くことも考えられるが、その分がポリマーロスとなるばかりか、通常チップは円筒状であるために割れチップと同時に正常なチップも取り除かれてしまうため大量にロスが発生してしまう。
【0005】
固相重合に適したPTTチップを得るための技術としては、特表2000−502392号公報に溶融したPTT塊を約60〜190℃にて固化させ、その温度に保持して結晶化させて微結晶サイズが18nm以上の塊を得る技術が開示されている。該公報記載の技術の目的は熱有着を防止するとともに、比表面積を大きくして固相重合速度を高めることである。しかしながら、本発明者らの検討によると、このように比表面積を大きくしたり、微結晶サイズを大きくしたりすると、かえって割れやすくなり、割れチップが大量に発生しやすくなってしまう。また、該公報の比較例として、固有粘度=0.7〜0.9のPTTポリマーを直径3.2mmのストランドとして水中に押し出し長さ3.2mmにカットして得たチップを破砕した後、流動層を用いて125℃にて6時間結晶化した後、190〜210℃で所定重合度まで固相重合して得た、IV=1.06〜1.39、微結晶サイズ=15.7〜16.9nmのPTTチップが開示されている。しかしながら、本発明者らの検討によると、該比較例のチップは、結晶化の温度が125℃と低いために、熱融着が発生しやすく、工業的に安定して固相重合を行うことはできない。また、破砕されているため小粒径のチップを含んでおり、次に行う固相重合により重合度が大きく異なってしまう。
【0006】
また、国際公開(WO)2000−68294号パンフレットには、PTTをストランド状に押出し、チップ状に切断した後に65〜100℃の温水と接触させて結晶化させた、雰囲気温度が高くなった時や乾燥時にチップ同士の熱融着を抑制できるチップの製造方法が示されている。該公開パンフレットの実施例には、固有粘度が0.898〜0.909dl/g、密度が1.3074〜1.3347g/cm3 のチップが示されている。しかしながら本発明者らの検討によると、該パンフレットの技術では、結晶化度が2.1〜25.3%(後述する本発明者らが採用した計算方法で求めた値)と低すぎるために、固相重合等の高温での熱処理時のチップ同士の熱融着を十分に抑制することはできない。
このように、PTTはPETと大きく特性が異なるためにPETの技術を応用しても、またこれまでのPTTの技術を応用しても、高温での乾燥や固相重合に適した融着しにくく、割れにくいPTTチップを得ることはできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らの検討の結果、従来技術により製造したPTTチップには、高温での乾燥や固相重合をする際に以下の問題があることが分かった。
(1)乾燥や固相重合工程等でチップ同士が熱融着して、装置内で詰まったり、チップの輸送ができなくなったりする。
(2)PET同様に高温に加熱した容器内にて強いせん断力をかけながら長時間熱処理したチップは、乾燥や固相重合を行う際や、これらの装置に移送する際に割れチップが多量発生する。
本発明の目的は、高温での乾燥や固相重合等の処理をしても、工業的に安定した溶融成形ができ、且つ、処理時や成型時のロスが少ないPTTチップを提供することにある。
本発明の目的を達成するために解決すべき課題は、上記(1)問題に対応して高温の熱処理にて熱融着しない程度に結晶化しており、上記(2)問題に対応して脆くないために割れチップが発生しにくいPTTチップとすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究した結果、驚くべきことに、溶融PTTをストランド状、あるいはシート状に押出し、急速に冷却固化させた後チップ状にカットし、その後適切な温度、時間にて熱処理して結晶化する特殊なチップの製造法により得た、適切な範囲の重合度、結晶化度、微結晶サイズを有した特殊なチップでは、高温での乾燥や固相重合等の熱処理にて熱融着しにくく、且つ、これらの熱処理時や熱処理装置への移送の際に割れチップが発生するのを抑制できるために、ロスが少なく、品質の良い成型品が工業的に得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち本願発明は以下のとおりのものである。
1.PTTチップ
(I)下記(A)〜(C)を満足することを特徴とする結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ。
(A) 固有粘度 : 0.4〜2.0dl/g
(B) 結晶化度(Xc) : 30〜80%
ここで結晶化度Xcは密度法にて下記式を用いて求めた値である。
Xc={ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
ρa : 非晶密度 = 1.305g/cm3
ρc : 結晶密度 = 1.431g/cm3
ρs : チップの密度(g/cm3
(C) 微結晶サイズ : 5〜16nm
ここで微結晶サイズは広角X線回析にてチップを評価した際に、2θ=15.5°付近に観察される(010)面に由来する回析ピークより計算した値である。
【0010】
(II)(I)において、下記(D)を満足することを特徴とする結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ。
(D)DSC(入力補償型示差熱量計)によるチップの熱分析にて、150℃以上の吸熱ピーク面積が70〜120J/g
測定条件:30℃より280℃までを昇温速度20℃/分で測定。
(III)(I)または(II)において、下記(E)、(F)をを満足することを特徴とする結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ。
(E)チップの平均重量 : 5〜100mg/個
(F)12メッシュのフィルターを通過し、30メッシュのフィルターを通過しない割れチップが0〜50g/kgチップ
【0011】
2.PTTチップの製造方法
(I)固有粘度が0.4〜2.0dl/gの溶融PTTをストランド状、あるいはシート状に押出してから120秒以内に55℃以下に冷却固化した後、チップ状にカットし、実質的に破砕させることなく、190〜215℃にて2〜40分間熱処理して結晶化することを特徴とする結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップの製造方法。
(II)(I)において、壁面を190〜215℃とした容器内にて、チップと容器内壁とを接触させることによりチップを熱処理して結晶化することを特徴とする結晶化ポリ
トリメチレンテレフタレートチップの製造方法。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)PTTチップ
(I)本発明のPTTチップとしては、下記(A)〜(C)を満足する必要がある。
(A)固有粘度 : 0.4〜2.0dl/g
(B)結晶化度(Xc) : 30〜80%
ここで結晶化度Xcは密度法にて下記式を用いて求めた値である。
Xc={ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
ρa : 非晶密度 = 1.305g/cm3
ρc : 結晶密度 = 1.431g/cm3
ρs : チップの密度(g/cm3
(C)微結晶サイズ : 5〜17.5nm
ここで微結晶サイズは広角X線回折にてチップを評価した際に、2θ=15.5°付近に観察される(010)面に由来する回折ピークより計算した値である。
【0013】
本発明の第一の目的である高温での熱処理時に熱融着しにくいチップとするためには、結晶化度を高める必要がある。また、第二の目的である、割れにくいチップとするためには、重合度を高めるとともに、結晶化度と微結晶サイズを小さくする必要がある。従って、固有粘度、結晶化度、微結晶サイズが前記した特定の範囲を満足することで、はじめて、高温での乾燥や固相重合時の熱融着や、これらの処理装置に移送する際や処理時のチップの割れを同時に抑制できるPTTチップとなる。
【0014】
(i)PTT
本発明のPTTチップを構成するPTTは、50モル%以上が、好ましくは70モル%以上が、更に好ましくは90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返し単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)である。
ここでPTTとは、テレフタル酸を酸成分としトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオールともいう、以下「TMG」と略す)をジオール成分としたポリエステルである。該PTTには、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、50モル%未満の他の共重合成分を含有してもよい。そのような共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、アジピン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーが挙げられる。
【0015】
(ii)固有粘度
本発明のチップの固有粘度は、0.4〜2.0dl/gの範囲である必要がある。固有粘度が0.4dl/g未満では、重合度が低すぎるためにチップがどのような結晶化度、微結晶サイズであるとしてもチップが割れてしまう。逆に固有粘度が2.0dl/gを越えると、溶融粘度が高くなりすぎるために、ギアポンプでの計量がスムーズに行われなくなったり、メルトフラクチャーが発生したりするために、安定して溶融成形を行うことができなくなる。固有粘度は0.45〜1.8dl/gの範囲が好ましく、0.5〜1.6dl/gの範囲が更に好ましい。
【0016】
(iii)(A)結晶化度、(B)微結晶サイズ
本発明のチップは、結晶化度(Xc)が30〜80%とし、且つ、微結晶サイズを5〜17.5nmとする必要がある。
ここで結晶化度とは以下の式に従って、密度法にて求めた値である。
結晶化度は、「ポリトリメチレンテレフタレートの結晶弾性率」:中前勝彦著、材料、第35巻、第396号、1067頁、1986年発行の論文に記載された式(2)、式(2)を変形した式(3)、結晶密度の値(1.431g/cm3 )、及び、我々が実験で求めた非晶密度の値(1.305g/cm3 )より求めた。
Figure 0003693602
ρa : 非晶密度 = 1.305g/cm3
ρc : 結晶密度 = 1.431g/cm3
ρs : チップの密度(g/cm3
【0017】
微結晶サイズは、広角X線回折にてチップを評価した際に、2θ=15.5°付近に観察される(010)面に由来する回折ピークより計算した値である。
熱融着は、温度が高くなった際に液状になる非晶部や、分子が再配列してしまうようなサイズの小さい結晶部にて発生する。一方、チップの割れは、チップにかかる応力を吸収する非晶部が少ない、すなわち結晶化度の高い場合や、応力の集中しやすい界面を有するサイズの大きい微結晶が存在する場合に起こる。従って適度な結晶化度と微結晶サイズとを同時に満足することで、はじめて熱融着せず、且つ、割れにくいチップとなる。
【0018】
結晶化度が80%を越えたり、微結晶サイズが17.5nmを越えたりすると、チップが割れやすくなってしまうために、乾燥機や固相重合機内や、チップの輸送ラインにて割れチップが多量発生してしまう。一方、結晶化度が30%未満であったり、微結晶サイズが5nm未満であったりすると、150℃以上といった高温での熱処理時にチップ同士が熱融着してしまうために、乾燥機や固相重合より払出せなくなったり、輸送ラインが詰まってチップを輸送できなくなったりしてしまう。結晶化度は好ましくは35〜70%であり、より好ましくは、40〜60%である。一方微結晶サイズは8〜17nmがより好ましく、10〜16nmが特に好ましい。
【0019】
なお、ここで結晶化度は一粒のチップ中の平均値であるが、好ましくはチップを切断して表層と中心部に分けた場合、全ての部分において上記結晶化度の範囲となることが好ましい。また、表層と中心部の結晶化度の差は40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましくい。
また、2θに対して回折強度をプロットした広角X線回折チャートにおいて、2θ=23.4°付近に観察される(102)面のピークと24.7°付近に観察される
【数1】
Figure 0003693602
面のピークとの間に、両ピークより回折強度の低い部分があることが好ましい。
両ピークより回折強度の低い部分がない場合は、高温での熱処理により熱融着しやすい。
【0020】
(iv)吸熱ピーク
本発明のチップは、DSC(入力補償型示差熱量計)にて熱分析を行った際に、150℃以上の吸熱ピーク面積が70〜120J/gであることが好ましい。
吸熱ピークは一つの場合以外に、二つの場合、二つのピークが部分的に重なっている場合等あるが、これらの場合は150℃以上の吸熱ピーク面積を合計した値が上記範囲に入ることが好ましい。
ここで、DSCによる熱分析は、窒素雰囲気下にて、20℃/分の昇温速度にて、30℃〜280℃の温度範囲にて行った際の結果である。
【0021】
150℃以上の吸熱ピーク面積が70J/g未満のチップでは、熱融着してしまいやすい非晶部やサイズの小さい結晶を多量有しているため、高温での乾燥や固相重合時に熱融着が発生しやすくなる。一方、120J/gを越えるチップでは、結晶化度が高く、且つ、サイズの大きい微結晶が多量に存在しているため、応力がかかった際に割れやすくなってしまう。150℃以上での吸熱ピーク面積は75〜110J/gがより好ましくは、80〜100J/gが更に好ましい。
また、全ての吸熱ピークが180℃以上にあることがより好ましく、200℃以上にあることが更に好ましくは、220℃以上にあることが特に好ましい。
【0022】
(v)(E)チップ粒径と(F)割れチップ
本発明のチップは、ロスが少なく、且つ、押出成型機にて均一に押し出せることが望まれる。このためには適切な大きさのチップとするとともに、割れチップが少ないことが好ましい。好ましいチップの大きさは、一粒の平均重量が5〜100mg/個である。この大きさとすることで、成形機にて均一に押出し易くなるとともに、チップの輸送、乾燥、紡糸時の取り扱い性が良好となったり、乾燥速度や固相重合速度が早くなったりする。チップの大きさは、一粒の重量が10〜70mgであることがより好ましく、15〜50mgであることが特に好ましい。チップの形状は特に限定されるものではないが、球形、直方体、円筒、円錐およびこれらが押しつぶれたように変形したものが好ましい。いずれの場合も、取扱性を考えた際は最長部の長さが15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。
【0023】
一方、本発明のチップは、12メッシュのフィルターを通過し、30メッシュのフィルターを通過しない割れチップが0〜50g/kgチップであることが好ましい。割れチップが50g/kgチップを越えると、ロスが多くなったり、割れチップは固相重合行った場合、重合速度が速いために重合度が高くなってしまい、紡糸時に糸切れや糸径ムラが起こったり、流動性が異なるために成型むらが起こったりすることがある。割れチップは少なければ少ないほどよいが、0〜30g/kgチップがより好ましく、0〜10g/kgチップが特に好ましい。
【0024】
また、本発明のチップは、チップ表面に付着した30メッシュのフィルターを通過し300メッシュのフィルターを通過しない粉状ポリマーが、0〜1000mg/kgチップであることが好ましい。粉状ポリマーが1000mg/kgチップを越えると、チップを気体で搬送する、いわゆるニューマーラインや、乾燥機に設置してある排風機などのフィルターが詰まりやすくなってしまったり、また紡糸の際に押出機の圧力変動が大きくなって糸斑が発生し易くなったりする。
粉状ポリマーは少なければ少ないほど良いが、実用上は0〜500mg/kgチップの範囲が好ましく、さらに好ましくは0〜300mg/kgチップの範囲である。
【0025】
(II)PTT特性
(i)色調
本発明のチップは、L*値が70〜110、b*値が−5〜15であることが好ましい。L*値が70未満またはb*値が−5未満では、得られる繊維が黒ずみやすく、該繊維を染色した際に希望の色に発色させることが容易でなくなる。一方、b*値が15を越えると、得られる繊維が黄色く着色してしまう。
L*値は75〜105がより好ましく、80〜100が更に好ましい。また、b*値は−3〜10がより好ましく、−2〜5が更に好ましい。
【0026】
(ii)添加剤
本発明のチップには、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤などを共重合または混合しても良い。
特に、本発明のチップには熱安定剤を添加することが白度の向上、溶融安定性の向上、アクロレイン、アリルアルコールといった分子量が300以下の有機物の生成を制御できる観点で好ましい。この場合の安定剤としては、5価及び/又は3価のリン化合物が好ましい。
【0027】
添加するリン化合物の量としては、PTTチップ中に含まれるリン元素の重量割合として2〜250ppmであることが好ましく、5〜150ppmが更に好ましく、10〜100ppmが特に好ましい。
添加するリン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、リン酸、亜リン酸等が挙げられ、特に、トリメチルホスファイトやリン酸が好ましい。
【0028】
本発明に用いるチップは、平均粒径0.01〜2μmの酸化チタンを0.01〜3重量%含有し、且つ酸化チタン粒子が集まった凝集体であってその最長部長さが5μmを越える凝集体が25個/mgポリマー(この単位は、1mgのポリマー中に含まれる凝集体の数を示す。)以下であることが好ましい。このようなチップとすることにより、紡糸時や後加工時の毛羽や糸切れを抑制することが容易となる。このようなPTTを得るためには、一度溶剤に酸化チタンを加えて攪拌した後、遠心分離機、フィルター等を用いて酸化チタンの凝集体を取り除いた酸化チタン分散溶液を、重合の任意の段階で反応物に添加し、重縮合反応を完結させて、得ることが好ましい。
【0029】
(iii)アリル基濃度
本発明のPTTチップは、アリル基濃度が0〜30meq/kgポリマーであることが好ましい。
優れた色調や強度の成型品を得るためにはチップの熱分解を抑制することが好ましい。
PTTの熱分解は、主として、まず、下記の反応で進行すると考えられる。
-φ-CO-O-G-O-CO-φ- → -φ-CO-OH + CH2=CH-CH2-O-CO- φ-
ここで、φ : ベンゼン環
G : −CH2CH2CH2
【0030】
次いで、上記の反応生成物であるカルボキシル基(-CO-OH)やアリル基(CH2=CH-CH2- )が熱により解離してラジカルを発生させ、更に熱分解を誘発する。分解反応生成物のうち、カルボキシル基は、末端の水酸基(−OH)と反応してエステル結合を作り、重合度の増加にも寄与するのに対して、アリル基はその構造からも分かるように不安定であり、熱分解を誘発しやすい。
これらの反応は重縮合中も進行している。従って溶融紡糸時の熱分解を抑制するためには、重縮合中の上記反応を抑制して、アリル基含有量の少ないPTTとすることが好ましい。
【0031】
ここで、PTT中のアリル基濃度は、NMR等を用いて直接測定する必要がある。上記反応では、アリル基とカルボキシル基は等量発生するが、カルボキシル基は末端の水酸基との重合反応で消費されたり、加水分解により生成したりするので、アリル基濃度の指標とはならない。
アリル基濃度が30meq/kgポリマーを越えると、紡糸の際に熱分解が起こりやすくなり、重合度が低下して、得られる繊維の強度が低下したり、着色したりする。また、有害なアクロレインやアリルアルコール等の副生成物が紡糸中に発生したり、得られるPTT中に該副生成物が残存し、乾燥や紡糸の際に放出されたりする。アリル基濃度は0〜25meq/kgポリマーが好ましく、0〜20meq/kgポリマーが更に好ましい。アリル基濃度は低ければ低いほど良く、もちろん0meq/kgポリマーとすることが最も好ましい。
【0032】
(iv)環状二量体
本発明のチップは、環状二量体を0.1〜3重量%含んでいることが好ましい。
ここで環状二量体とは、下記構造式で表される、2つのトリメチレンテレフタレート単位が環状につながった二量体である。
【式1】
Figure 0003693602
【0033】
チップは、上記範囲の環状二量体を含むことにより、紡糸時の毛羽や糸切れが大幅に減少する。この理由としては、環状二量体がPTTの可塑剤あるいは内部潤滑剤として作用して、紡口直下や延伸時のポリマー分子の変形を容易にしているためではないかと考えられる。
環状二量体は、重合中に添加しても良いが、重縮合反応の温度や熱処理条件を適切にすることにより、上記範囲に調整することができる。
環状二量体含有量が0.1重量%未満では、可塑作用や潤滑作用が不足するために、紡糸の際に糸切れや毛羽が多発しやすい。一方、3重量%を越えると、昇華性が高いために、固相重合機や乾燥機の内部、紡糸機の紡口の周り、油剤ノズルや糸道ガイド等に付着し、紡糸の糸切れや毛羽発生要因等の溶融成型ムラとなってしまう。環状二量体は0.2〜2.5重量%がより好ましく、0.3〜2重量%が更に好ましい。
【0034】
(2)チップの製造方法
本発明のPTTチップは、固有粘度が0.6〜2.0dl/gの溶融PTTをストランド状、あるいはシート状に押出してから120秒以内に55℃以下に冷却固化した後、チップ状にカットし、実質的に破砕させることなく、150〜225℃にて1〜60分間熱処理して結晶化することにより得ることができる。
1)冷却固化
本発明のPTTチップを製造するためには、固有粘度が0.6〜2.0dl/gの溶融PTTを、ストランド状、あるいはシート状に押出してから120秒以内に55℃以下に冷却固化する必要がある。120秒以内に55℃以下にできないと結晶化が進行してしまい、本発明の割れにくいチップを得ることが困難となる。
【0035】
冷却温度は、好ましくは50℃以下、更に好ましくは45℃以下にするのが良く、冷却時間は80秒以内が好ましく、40秒以内がより好ましく、20秒以内が特に好ましい。なお、ここで冷却とは溶融したPTT全体すなわち、表面だけではなく中心部までが55℃以下となるまで冷却させることを示す。中心部の温度は、冷却固化PTTを切断し、その断面温度を赤外線温度計で測定することにより知ることができる。
このような急速な冷却固化をさせるためには、溶融PTTを水等の冷媒中に速やかに入れて冷却することが好ましい。冷媒の温度は20℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましく、10℃以下が更に好ましい。冷媒としては経済性、取扱性を考えると水が好ましく、このため冷媒温度は0℃以上が好ましい。
【0036】
2)カット
冷却固化したPTTは、チップ状にカットする必要がある。カットは、溶融PTTを冷却固化させてから、加温処理するまでの間に行うことができる。
冷却固化PTTをカットする際はカット時の摩擦発熱を抑え、チップ断面の温度が180℃以下となるようにすることが好ましい。カット時のPTT温度が摩擦発熱等により180℃を越えると結晶化が進み、得られるチップが割れやすくなる。カット時のチップ温度を180℃以下にするためには切断中冷却することが好ましく、水などの冷却溶媒中で切断するか、あるいは冷却溶媒をかけながら切断することが好ましい。もちろん切断に冷却した刃物を用いてもよい。カット時のチップ断面の温度は、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
なお、冷却固化PTTはカット時に55℃以下となっていなくても良いが、この場合はカット後、引き続き冷却し、押出してから120秒以内に55℃以下とする必要がある。また、ストランドやシートを巻き取った後カットしてもよいが、工程を簡素化するためには巻き取らずに連続してカットすること望ましい。
【0037】
3)熱処理(結晶化処理)
本発明のチップは、冷却固化及びカットを行った後に実質的に破砕させることなく、150〜225℃にて1〜60分間熱処理して結晶化する必要がある。
ここで実質的に破砕させることなくとは、粉砕器等を用いてチップを意図的に破砕させないことを示す。チップを移送したり攪拌したりする際に衝撃、摩擦、せん断などの力によりチップが削れたり、割れたりすることは、ここで言う破砕にはあたらない。
カットを行った後にチップを破砕すると、チップ粒径が不均一になるため熱のかかり方が変わり、全てのチップを本発明の範囲の結晶化度、微結晶サイズとすることが困難となる。また、破砕の際にチップに大きいせん断力がかかると同時に、摩擦発熱により温度が高くなるため、結晶化度や微結晶サイズが大きくりやすい。
【0038】
本発明のチップは熱融着と割れを抑制するために結晶化度と微結晶サイズを適正な範囲とする必要がある。このために、前記したように溶融PTTを十分冷却して得た、低い結晶化度のチップを製造した後、150〜225℃にて1〜60分間熱処理して結晶化する必要がある。熱処理温度が150℃未満、あるいは熱処理時間が1分未満では、結晶化度または、微結晶サイズが本発明の範囲より小さくなってしまう。一方熱処理温度が225℃を越えると、チップが部分的に溶融してしまい、熱処理時に融着してしまう。熱処理時間が60分を越えると、結晶化が進みすぎてしまうため、本発明の範囲の結晶化度、微結晶サイズを超えてしまう。熱処理温度は180〜220℃が好ましく、190〜215℃がより好ましく、200〜210℃が更に好ましい。熱処理時間は2〜40分が好ましく、5〜30分がより好ましく、10〜20分が特に好ましい。
【0039】
熱処理はチップが融着しないように攪拌しながら行うことが望ましい。この際、チップに大きいせん断力がかからないようにすることが、割れチップや粉状ポリマーの発生を抑制するという観点より好ましい。
このような熱処理は、図1又は図2に示すような内面を加熱した円筒状の容器及びスクリューあるいはパドル状の攪拌翼を有した装置を用い、容器内にチップを連続的に入れ、攪拌翼を回転することにより容器内壁とチップを接触させて熱処理を行い、連続的に容器より取り出すことにより行うことが好ましい。この際、割れチップや粉状ポリマーの発生を抑制するためには、チップの量を容器容積の50%以下、より好ましくは20%以下として、チップに大きなせん断力が加わらないようにすることが好ましい。
もちろん上記と同様な装置を用いてバッチ式で熱処理を行ってもかまわないが、生産性を考慮すると連続式の方が好ましい。
【0040】
チップは上記したような熱処理を行う前に乾燥気体中あるいは真空中にて80〜150℃にて前熱処理を行い、乾燥と予備結晶化を行うことが好ましい。このような処理を行うことで、熱処理時の加水分解や熱融着を防ぐことが容易となる。前熱処理は100〜140℃がより好ましく、110〜130℃が更に好ましい。前熱処理時間はチップの水分率や大きさによっても異なるが、通常20分以上行うことが好ましく、60分以上行うことがより好ましい。前熱処理時間は、このような温度でも長時間チップを処理すると着色が見られることがあるため24時間以内とすることが好ましい。
【0041】
(3)PTTの製造方法
本発明のチップを作るために用いるPTTの製造方法は特に限定されるものではないが、以下に好ましい方法を示す。
本発明に用いるPTTを、工業的に製造する好ましい方法としては原料の違いにより大きく分けて、テレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGとをエステル交換反応させ、PTTの中間体であるビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタレート(以下「BHPT」と略す。)を得た後、該BHPTを重縮合反応させてPTTを製造する方法(以下「エステル交換法」と略す)と、テレフタル酸とTMGとをエステル化反応させ、BHPTを得た後、第一の方法と同様に、該BHPTを重縮合反応させてPTTを製造する方法(以下「直接エステル化法」と略す)がある。また、製造方式の違いより大きく分けて、原料等を反応装置に全て投入し、これら同時に反応させて組成物を得るバッチ重合法(回分法とも呼ぶ)と、原料を反応装置に連続して投入し、連続してPTTを得る連続重合法がある。
【0042】
いずれの方法においてもBHPTを重縮合させる工程は基本的に同じである。
ここでBHPTとは、未反応のテレフタル酸、テレフタル酸の低級アルコールエステル、TMG及びPTTオリゴマーが含まれていてもよいが、全反応物の70重量%以上がBHPTであることが好ましい。
重縮合反応に用いるBHPTは以下に述べる方法により得ることができる。
まず、エステル交換法にてBHPTを得る方法について述べる。
エステル交換法ではテレフタル酸ジメチルをエステル交換触媒の存在下150〜240℃の温度でエステル交換させてBHPTを得ることができる。
テレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGの仕込み時のモル比は1:1.1〜1:4が好ましく、1:1.2〜1:2.5がより好ましい。1:1.1よりもTMGが少なければ、反応時間が長くなることがある。また、1:4よりもTMGの量が多くなっても、反応時間が長くなったり、PTT中にTMGの二量体が多量生成して融点が低下したりすることがある。
【0043】
エステル交換法ではエステル交換触媒は必ず用いる必要があり、好ましい例としては、例えば、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等が挙げられ。なかでもチタンテトラブトキシドが続いて行う重縮合反応触媒としても働くので好ましい。エステル交換触媒量はテレフタル酸ジエステルに対して0.02〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましく、0.08〜0.2重量%が更に好ましい。
【0044】
次に、直接エステル化法にてBHPTを得る方法について述べる。
直接エステル化法ではテレフタル酸とTMGを150〜240℃の温度でエステル化反応させてBHPTを得ることができる。
テレフタル酸とTMGの仕込み時のモル比は1:1.05〜1:3が好ましく、1:1.1〜1:2がより好ましい。1:1.05よりTMGが少なくなると反応時間が著しく長くなってしまったり、着色したりしてしまうことがある。また、1:3よりもTMGの量が多くなっても、反応時間が長くなったり、PTT中にTMGの二量体が多量生成するために融点が低下したりすることがある。
【0045】
直接エステル化法ではテレフタル酸から遊離するプロトンが触媒として働くためにエステル化触媒は必ずしも必要ないが、反応速度を高めるためにはエステル化触媒を用いることが好ましい。好ましい例としては、例えば、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド等が挙げられる。添加量は用いるテレフタル酸に対して0.02〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましく、0.08〜0.2重量%が更に好ましい。
【0046】
エステル化反応を円滑に進めるためには反応の開始段階でBHPTを5〜80重量%添加して反応させることも好ましい。バッチ法ではBHPTと原料であるテレフタル酸、TMGを同時に仕込み反応を開始させることができる。連続重合法では直接エステル化反応を行う反応槽に一定量のテレフタル酸とTMGの混合物を投入しつつ、一定量の反応生成物(BHPT)を払い出すことで反応を行うことができる。
上記した方法で得られたBHPTは続いて重縮合される。
【0047】
重縮合反応では、重縮合触媒を用いて、BHPTを減圧下あるいは不活性気体雰囲気下にて所定温度で反応させ、副生するTMGを除去しながら重合度を高めて行く。得られるPTTの色調を良好にするためには、重縮合反応物温度が275℃以下とすることが好ましい。275℃を越えると熱分解が激しくなり、色調の良好なPTTを得ることが困難となる。また、反応物と接触している反応装置が部分的にでも290℃を越えないようにすることが好ましく、280℃を越えないようにすることが更に好ましい。また、反応物の温度が均一になるように攪拌することが好ましい。
色調の良好なPTTを得るためには、前記したリン系の熱安定剤を用いることも好ましい。
【0048】
BHPTを重縮合反応させるためには重縮合触媒を用いる必要がある。重縮合触媒の好ましい例としては、例えば、チタンテトラブトキシドやチタンテトラプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、二酸化チタン等が挙げられる。
反応速度が速く、アリル基濃度を下げ、色調を良好にできる点でチタンテトラブトキシドが特に好ましい。重縮合触媒量としては、好ましくは得られるPTT重量に対して0.03〜1重量%となるように添加することが好ましい。BHPTを得る過程で重縮合触媒としても作用する化合物を用いた場合は、該化合物の量を含めて0.03〜1重量%となるようにすれば良い。
【0049】
重縮合反応装置は、バッチ重合法ではBHPTの重縮合を開始するときから最終PTTを得るまで同一の装置を用いることができるが、もちろん2つ以上の反応槽に分けても良い。一方、連続重合法では反応を効率的に進めるために2つ以上、できれば3つ以上の反応槽に分け、温度、減圧度等を変えることが好ましい。
重縮合反応は、減圧下あるいは不活性気体雰囲気下で行うことができるが、減圧とする場合はバッチ重合法では最終的に2torr以下とすることが好ましく、1torr以下とすることが更に好ましい。また、連続重合法の場合は各反応槽毎にBHPTやオリゴマーの昇華状態により適宜調節することが好ましい、最終反応槽は10torr以下とすることが好ましく、5torr以下とすることが更に好ましく、2torr以下とすることが特に好ましい。不活性気体雰囲気下で行う場合は、副生するTMGが効率的に除去できるように不活性気体を随時十分置換させることが重要である。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、実施例などを用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)固有粘度[η]
固有粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
Figure 0003693602
【0051】
(2)結晶化度
JIS−L−1013に基づいて四塩化炭素およびn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて密度勾配管法にて求めた密度より、下記式に従って求めた。
Xc={ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
ρa : 非晶密度(g/cm3 )=1.305g/cm3
Figure 0003693602
【0052】
(3)結晶性評価(広角X線回折)
チップの結晶性評価は以下の条件にて広角X線回折にて行った。
測定装置 : ロータフレックス RU−200 理学社製
試料形態 : チップ
測定方法 : 反射法
X線強度 : 40kv、120mA
X線源 : CuKα線
スリット間隔 : DS=0.6、RS=0.3、SS=1
微結晶サイズ : ピーク分離法により求めた回折ピークn半値幅より下記式を用いて求めた。
微結晶サイズ(nm)=Kλ/(β×cosθ)
K : 定数(=1)
λ : X線の波長(=0.154nm)
β : ピークの半値幅(°)
θ : 回折が観察される角度(2θ)より求めた値(°)
【0053】
(4)吸熱ピーク面積
DSC(入力補償型示差熱量計)を用いて下記の条件にて測定した結果より、150℃以上の吸熱ピーク面積を求めた。
装置 : Perkin Elmer社製Pyris 1
測定温度 : 30〜280℃
昇温速度 : 20℃/分
(5)チップサイズ
約2gのチップをサンプリングし、正確な重量とチップ数を数え、チップ1個当たりの重量を求めた。
【0054】
(6)割れチップ、粉状ポリマー
チップ表面に付着した粉状ポリマーの量の測定は次の手順に従って行った。
1、水の入ったビーカーにチップ1kgを入れる。
2、5分間攪拌し表面に付着した粉状ポリマーを洗い落とす。
3、2を12メッシュのフィルターで濾過し、フィルター上のチップに割れチップや粉状ポリマーが残らないよう繰り返し水で洗浄する。
4、3の濾液を30メッシュのフィルターでもう一度濾過する。フィルター上の濾過残を80℃にて減圧乾燥し、重量を測定し割れチップ重量とする。
5、4の濾過を300メッシュのフィルターでもう一度濾過する。フィルター上の濾過残を80℃にて減圧乾燥し、重量を測定し粉状ポリマー重量とする。
(7)色調(L*値、b*値)
スガ試験機(株)のカラーコンピューターを用いて測定した。
【0055】
(8)アリル基濃度
PTTペレットを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール/重水素化クロロホルム=1/1(体積比)に溶解し、核磁気共鳴スペクトル法により下記条件にて測定を行い、ケミカルシフト5.9〜6.2ppm付近に観測される二重結合基由来の 1H1個分の多重線の積分値SAと7.7〜8.4ppm付近に観測される芳香環由来の 1H4個分の多重線の積分値S0より以下の式に従って求めた。
アリル基濃度(meq/kg)=SA/S0×4000
装置 :FT−NMR DPX−400
観測核 :1H
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:テトラメチルシランを0ppmとした
積算回数 :256回
待ち時間 :3秒
溶媒 :重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール/重水素化クロロホルム=1/1(体積比)
試料濃度 :5wt%
測定温度 :室温
【0056】
(9)環状二量体
ヘキサイソプロパノール5ミリリットルとクロロホルム5ミリリットルの混合液にPTT0.3gを加え室温で溶解した。完全に溶解した後、クロロホルム5ミリリットルを加え、更に約80ミリリットルのアセトニトリルを加えた。この時、不溶物が析出するが、これをろ別し、そのろ液を全て300ミリリットルのフラスコに移してアセトニトリルを追加し、総量200ミリリットルの透明な溶液を得た。
この溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、環状二量体を測定した。カラムはμBondas phere 15μ C−18−100A 3.9×190mm(ウォーターズ社製を用い、移動相としては、水/アセトニトリル(容量比30/70)を用い、検出には紫外線242nmの波長を用いた。温度は45℃、流量は1.5ミリリットル/分であった。
【0057】
(10)熱融着テスト
直径5cmの円筒形容器内にチップを500g入れ、190℃の温度にてチップに0.5kg/cm2 の圧力が加わるように上部より直径4.8cmの円形の金属板で力を加えたまま保持した。2時間後チップを取り出し融着の有無を目視にて判断した。
(11)割れチップ発生テスト
直径5cmの円筒形容器内にチップを500g入れ、直径4.8cm、重さ2.5kgの円筒状の金属片を最上部チップより10cmの高さより落下させてチップに衝撃を与えた。この操作を50回繰り返した後、全てのチップを取り出し、前期した(6)割れチップ測定法と同様にして割れチップの発生割合を求めた。
【0058】
【実施例1】
図3に示した装置を用いて重合を行った。まず、縦型攪拌反応装置にテレフタル酸ジメチル(以下「DMT」と略す)25000g、TMG21500g、チタンテトラブトキシド0.05重量%/DMTを仕込み、常圧下、ヒーター温度240℃の加熱下、4時間のエステル交換反応を行い、BHPTを得た。ここで重量%/DMTとは、DMT重量に対する重量%を示した単位である。
次に得られたBHPTにチタンテトラブトキシド0.05重量%/DMT、次いでトリメチルフォスフェート100ppm/ポリマー、酸化チタン0.05重量%/DMTを添加し、縦型攪拌反応装置を用いて260℃にて減圧下で3時間重縮合反応を行い固有粘度が0.60dl/gのPTTを得た。減圧度は時間とともに下げていき、重縮合反応開始より1.5時間以降は0.5torr以下とした。
【0059】
反応により得たPTTは、直ちに重合装置の下部に設けた直径10mmの吐出孔より5℃に温度調整した冷水中に直径3mmのストランド状に押出して冷却固化した後にチップ状に切断した。切断は溶融PTTを押し出してから30秒後に行い、この時の冷却固化PTTは40℃あり、切断によりPTT温度が50℃を越えることはなかった。次に切断したチップを低速で回転する棒状の攪拌羽根を有した縦型乾燥機に移送して、乾燥空気中130℃にて4時間加温処理して乾燥を行いチップを得た。
【0060】
次いで、図1に示した装置を用いて、チップを210℃とした内壁面と接触させることにより20分間熱処理して結晶化させた。この時円筒状容器は内径が0.5m、長さが2.5m、スクリュー軸径が0.25mであり、80kg/hrで装置にチップを投入−払出を行った。
得られたチップの平均重量は25mg/個であり、最長部の長さは5mm以下であった。表1にチップ物性を示す。得られたチップは本発明の範囲内の結晶化度、結晶サイズを有しており、割れチップ、粉状ポリマーの含有量も少なかった。また、熱融着及び、割れチップが発生しにくい、固相重合に適したチップであった。
【0061】
【実施例2〜4】
実施例1と同様にして、表1に示したポリマーの固有粘度、熱処理温度、熱処理時間にてチップを得た。チップ物性を表1に示す。得られたチップはいずれの場合も本発明の範囲内の結晶化度、結晶サイズを有しており、割れチップ、粉状ポリマーの含有量も少なかった。また、熱融着及び、割れチップが発生しにくい、固相重合に適したチップであった。
【実施例5】
図2に示した装置を用いて、実施例1と同様にしてチップを得た。表1に熱処理条件、チップ物性を示す。得られたチップは本発明の範囲内の結晶化度、結晶サイズを有しており、割れチップ、粉状ポリマーの含有量も少なかった。また、熱融着及び、割れチップが発生しにくい、固相重合に適したチップであった。
【0062】
【比較例1〜4】
実施例1と同様にして、表1に示したポリマーの固有粘度、熱処理温度、熱処理時間にてチップを得た。チップ物性を表1に示す。
比較例1、2は結晶化度が低すぎ、熱融着テストにて融着が見られた。
比較例3、4は固有粘度が低すぎるために、熱処理温度を変えても割れチップが多く且つ発生しやすいチップであった。
【比較例5】
熱処理温度を230℃とした以外は、実施例1と同様にしてチップを得ようとした。しかしながら、結晶化装置内でチップ同士やチップ内壁との融着が見られ、連続してチップを処理することができなかった。
【0063】
【比較例6】
固有粘度0.50dl/gの溶融PTTをストランド状にて押出し、100℃の金属板上に落として冷却固化させた後チップ状に切断する以外は比較例1と同様にしてチップを得た。チップ状にカットする際に割れチップが多量発生し、また、熱処理においても多量の割れチップや粉状ポリマーが発生した。得られたチップは微結晶サイズが大きく、割れチップの発生しやすいものであった。
【0064】
【表1】
Figure 0003693602
【0065】
【発明の効果】
本発明のチップは高温での熱処理を行っても熱融着しにくいので、高温での乾燥や固相重合が安定して行え、且つ、これらの熱処理時や熱処理装置への移送の際に割れチップが発生しにくいので、ポリマーのロスが少なく、品質の良い成型品を工業的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スクリュー状の攪拌翼を有したチップの熱処理を行う装置の概略を示す模式図である。
【図2】パドル状の攪拌翼を有したチップの熱処理を行う装置の概略を示す模式図である。
【図3】本発明をバッチ重合法にて実施する重合機の概略を示す模式図である。

Claims (6)

  1. 下記(A)〜(C)を満足することを特徴とする結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ。
    (A) 固有粘度 : 0.4〜2.0dl/g
    (B) 結晶化度(Xc) : 30〜80%
    ここで結晶化度Xcは密度法にて下記式を用いて求めた値である。
    Xc={ρc×(ρs−ρa)}/{ρs×(ρc−ρa)}×100(%)
    ρa : 非晶密度 = 1.305g/cm3
    ρc : 結晶密度 = 1.431g/cm3
    ρs : チップの密度(g/cm3
    (C) 微結晶サイズ : 5〜16nm
    ここで微結晶サイズは広角X線回析にてチップを評価した際に、2θ=15.5°付近に観察される(010)面に由来する回析ピークより計算した値である。
  2. 下記(D)を満足することを特徴とする請求項1記載の結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ。
    (D)DSC(入力補償型示差熱量計)によるチップの熱分析にて、150℃以上の吸熱ピーク面積が70〜120J/g
    測定条件:30℃より280℃までを昇温速度20℃/分で測定。
  3. 下記(E)、(F)をを満足することを特徴とする請求項1または2記載の結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップ。
    (E)チップの平均重量 : 5〜100mg/個
    (F)12メッシュのフィルターを通過し、30メッシュのフィルターを通過しない割れチップが0〜50g/kgチップ
  4. 固有粘度が0.4〜2.0dl/gの溶融ポリトリメチレンテレフタレートをストランド状、あるいはシート状に押出してから120秒以内に55℃以下に冷却固化した後、チップ状にカットし、実質的に破砕させることなく、190〜215℃にて2〜40分間熱処理して結晶化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップの製造方法。
  5. 壁面を190〜215℃とした容器内にて、チップと容器内壁とを接触させることによりチップを熱処理して結晶化することを特徴とする請求項4記載の結晶化ポリトリメチレンテレフタレートチップの製造方法。
  6. 請求項4又は5の製造方法で得られたことを特徴とするポリトリメチレンテレフタレートチップ。
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