JP4895683B2 - ビニルエーテル誘導体ポリマー並びにその製造方法及び用途 - Google Patents

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本発明は、新規なビニルエーテル誘導体ホモポリマー並びにその製造方法及び用途に関し、更に詳しくは例えばインク、塗料、レジスト、カラーフィルタ等の用途並びに接着剤、製版材、封止剤、画像形成剤、界面活性剤の原料等に用いられる低臭気、低揮発性且つ低皮膚刺激性であって、毒性が低く、また、高機能性であって、硬化性、密着性、透明性、剛直性に優れたカチオン重合性組成物として有用な2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー及び1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマーに関する。
本発明に係る2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー及び1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマーに関しては、ケミカルアブストラクト(Chemical Abstract)には記載がなく、また、本発明者等の知るかぎりでは、その他の文献にも記載が見当たらない新規化合物(ポリマー)であると考えられる。
通常、この骨格を持った化合物を合成しようとする場合、相当するモノビニル体を原料とし、直接重合する方法が考えられる。しかしながら、まず、下記反応式で示されるように、この化合物(E)を定法(レッペ法)に従って、トリメチロールプロパン(D)を出発物質として調製しようとしても、そのままではアセチレンが次々と反応し、ジビニル体(F)を経て、トリビニルエーテル(G)が生成してしまう。
Figure 0004895683
更に、仮に化合物(E)が得られたとしても、下記反応式に示すようにしてポリマー(I)(式中、nは平均5〜600の数である)を製造しようとしても重合時に水酸基の存在が影響し、直接目的とするホモポリマーは得られない。
Figure 0004895683
ただし、この段階で条件を調節さえすれば、2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサン(A)を選択的に製造することが可能である(特許文献1参照)。
Figure 0004895683
しかしながら、この化合物を重合させようとすると、一般的にビニルエーテルモノマーのホモ重合はカチオン触媒でしか進まないことが知られているが、酸触媒によりジオキサン環が開環して水酸基が生成し、上記と同様目的とするポリマーが得られないおそれがある。
特開平6−206877号公報
従って、本発明の目的は前記2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー及び1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマー並びにそれらの製造方法及び用途を提供することにある。
本発明に従えば、式(I):
Figure 0004895683
(式中、nは平均5〜600の数である)
で表わされるビニルエーテル誘導体ホモポリマーが提供される。
本発明に従えば、更に式(II):
Figure 0004895683
(式中、nは平均5〜600の数である)
で表わされるビニルエーテル誘導体ホモポリマーが提供される。
本発明に係る2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー及び1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマーは、低臭気、低揮発性、且つ、低皮膚刺激性であって、毒性が低く、また、硬化性、密着性に優れたカチオン重合性組成物として極めて有用であると共に、これらのポリマーは加水分解によりジオキサン環を開環させて2つの水酸基を生じさせることができ、次いでこの水酸基をアセチル化、エステル化、ハロゲン化などすることができるなど、各種の樹脂の改質剤や架橋剤としても優れた特性を発揮しうる化合物である。
本発明に係る2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマーは、ポリアセタールと同様、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、耐疲労性、耐摩擦性、耐摩耗性、耐薬品性及び成形性等において優れた特性を有することが期待できる。一方、本発明に係る1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマーは、ポリエステルやポリビニルアルコール等と同様、親水性、密着性等が期待でき、更に、ノニオン性界面活性剤として、インクを被記録材としての紙面に浸透させる効果もあるので、印字物の耐擦過性、耐水性などが良好となることが期待できる。
本発明者らは前記課題を解決すべく研究を進めた結果、例えば紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などの活性放射線硬化型樹脂の反応性希釈剤として有用な架橋性単量体である2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンをルイス酸で重合させたところ、反応途中でジオキサン環は開かず、目的の2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー(I)が生成することを見出した。
そこで、前記ポリマー(I)について、その利用法につき検討を行ったところ、これらのポリマーは低臭気、低揮発性、且つ、低皮膚刺激性であって毒性が低い等の優れた性質を有しており、硬化性、密着性に優れた特性を発揮しうる化合物であることを見出した。
また、前記ホモポリマー(I)を加水分解することにより、ジオキサン環を開環させて2つの水酸基を生じさせることができる。加水分解の程度により、疎水性及び親水性を制御することができ、更にこの性質を利用し、一旦材料として用いた後に、加水分解して回収することもできる。
更に、本発明の2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー(I)及び1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマー(II)とのコポリマー(又はブレンド)は、それらポリマー各分子中の水酸基の存在比により、例えば硬化性、基材密着性、速硬化性、耐熱性、耐水性に優れた組成物が得られる。
次いで前記ホモポリマー(II)は、その水酸基を、アセチル化、エステル化、ハロゲン化などすることができ、各種の樹脂の改質剤としても、あるいは、イソシアネート等と反応させることで架橋剤としても優れた特性を発揮しうる化合物であることを見出した。
本発明の新規化合物2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー及び1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマーは、それぞれ、前記式(I)及び(II)で表されるものである。
本発明に係るポリマー(I)は、次のような反応式に従って重合することができる。
Figure 0004895683
即ち、本発明に係る式(I)のポリマーは前記式(A)の化合物2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンを、例えば次のような方法で重合させることができる。
即ち、化合物(A)の重合反応は、トルエン等の非極性溶媒中でポリマーの濃度として0.01〜1.0モル容量%で行うのが好ましく、0.1〜0.5モル容量%がより好ましい。重合条件としては、−10℃〜10℃の温度で0.1〜250時間であるのが好ましい。より好ましくは−5℃〜5℃で1〜50時間、最も好ましくは−1℃〜1℃で20〜30時間である。
前記重合に用いる重合触媒としては、ルイス酸(例えばBF3,BCl3,BBr3,AlCl3,SnBr4など)及びその錯体(例えばBF3OEt2,(CH3CH(Oi-Bu)OCOCH3/SnBr4,CH3CH(Oi-Bu)OCOCH3/Et1.5AlCl1.5/酢酸エチル)等を挙げることができ、分子量分布を制御する上では、これらの錯体を用いることが特に好ましい。触媒の使用量には特に制限はないが、0.1〜10ミリモル容量%であるのが好ましい。
得られるポリマーの数平均分子量Mnは、500〜200,000が好ましく、2,000〜50,000であるのが更に好ましく、5,000〜15,000であるのが特に好ましい。またポリマーの分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1〜5であるのが好ましく、1.1〜4.0であるのが更に好ましく、1.1〜1.4が特に好ましい。
次に得られたポリマー(I)は加水分解することにより、下記反応式で1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマー(II)を製造することができる。
Figure 0004895683
この加水分解反応は、ポリマーの濃度として0.01〜1.0モル容量%で行うのが好ましく、0.1〜0.5モル容量%が更に好ましい。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜50℃で、反応時間は最大100時間程度が好ましい。
本発明における加水分解ポリマー(II)の数平均分子量Mnは、塗布用組成物の保存安定性及び薄膜の均一性の観点から、500〜200,000であるのが好ましく、更に好ましくは2,000〜50,000、特に好ましくは5,000〜15,000である。本発明のポリマー(II)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1〜5が好ましく、1.1〜4.0であるのが更に好ましく、1.1〜1.4であるのが特に好ましい。
本発明で用いる加水分解触媒としては、無機酸、有機酸、無機の酸性化合物等のブレンステッド酸を使用することができる。無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等をあげることができ、有機酸としては、例えば酢酸を挙げることができ、そして触媒の使用量には特に制限はないが、0.1〜10ミリモル容量%であるのが好ましい。
前記加水分解反応は、無溶剤で行っても良いが、溶剤希釈下で行うことが好ましい。使用する溶剤としては、本発明のホモポリマー(I)、水、触媒などの反応に使用する化合物が溶解又は分散すれば制限は無く、芳香族炭化水素類、双極子非プロトン系溶剤類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
加水分解反応はアルカリの水溶液又はアミン類のアルコール溶液などで停止させ、その後は、添加した水、アルコール及び生成するアルデヒド類や塩類等を除去するため水洗、逆抽出することが好ましい。更に精製が必要な場合は、溶媒を留去、乾燥後、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテルで希釈し、アルコールで沈殿させることができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
実施例1
まず、開始剤にBF3OEt2を用いて重合を行った。モノマー濃度0.3mol/L開始剤濃度5.0mmol/Lで、シュレンク管にモノマー溶液4.5mLと開始剤溶液0.5mLを順に注射器で注入して重合を開始した。トルエン中、0℃で重合を行ったところ、20分で重合率100%に達し、数平均分子量Mn=83,500、分子量分布(多分散度)Mw/Mn=4.38の比較的高分子量のポリマーを得た。
実施例2
次に、リビング重合開始剤である二成分系開始剤(CH3CH(Oi−Bu)OCOCH3/SnBr4)を用いた重合では、シュレンク管にモノマー溶液4.0mL、開始剤溶液0.5mL、活性化溶液0.5mLをこの順で注射器を用いて注入し重合を開始した。トルエン中、2,6−di−tert−ブチルピリジン(DTBP)存在下、0℃、モノマー濃度0.3mol/L,CH3CH(Oi−Bu)OCOCH35.0mmol/L,SnBr42.0mmol/L,DTBP0.2mmol/Lで行った。重合は、48時間で重合率99%に達し、重合系にアンモニア水を少量加えたメタノールを2.0ml加えて停止した。
生成ポリマーは、重合を停止した溶液を分液ロートに移し、イオン交換水で三回洗浄し、次いで有機層からエバポレーターにより溶媒を除去し、減圧乾燥して回収した。更に精製が必要な時は、得られたポリマーのテトラヒドロフラン溶液をメタノール中に沈殿させ精製した。Mnは重合率に比例して増加し、分子量分布の比較的狭いポリマーが合成できた(数平均分子量Mn=12,600、分子量分布Mw/Mn=1.32)。
実施例3
実施例1と同様な条件で重合したポリマー(数平均分子量Mn110,000、分子量分布Mw/Mn3.41)のガラス転移温度Tg(DSCにより測定)は室温より高く35℃であった。生成ポリマーの構造をスペクトルにより検討した。ビニル基のピークは完全に消失し、環状アセタール基の存在を示すピークはそのまま観測された。各ピークの、積分強度比の検討により、ポリビニルエーテルの全ての繰り返し単位に環状アセタールが存在することがわかった。また、このポリマーの熱分解温度は305℃であった。得られたポリマー(I)のH1−NMRチャート(測定条件:溶媒にCDCl3を用い室温で測定)を図1にしめす。
ポリマー(I)0.2508gを1mol/Lに調整した塩化水素溶液20mL(THF/1,4−ジオキサン=15mL/5mL)に溶解し、そのまま室温で24時間反応させた。なお、その間、水を数滴加える作業を行った。その後、エバポレーターにより溶媒を除去しポリマー(II)を得、NMRを測定したところ、開環率は12%であった。
得られたポリマー(II)のH1−NMR分析を上と同様にして行なって得られたH1−NMRチャートを図2に示す。
実施例4
実施例1と同様にして得られたポリアセタールビニルエーテルを以下のようにして脱保護した。即ち、ポリアセタールビニルエーテル0.2538gを、1mol/Lに調整した塩化水素溶液20mL(THF/1,4−ジオキサン=15mL/5mL)に溶解し、そのまま室温で7日間反応させた。なお7日間に水を4〜5滴加える作業を4回行なった。その後、エバポレーターにより溶媒を除去しNMRを測定したところ、開環率は37%であった。
本発明に係る2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー(I)は、ポリアセタールと同様、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、耐疲労性、耐摩擦性、耐摩耗性、耐薬品性及び成形性等において優れた特性を有することが期待できる。また本発明に係る1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマー(II)は、ポリエステルやポリビニルアルコール等と同様、親水性、密着性等が期待でき、更に、ノニオン性界面活性剤として、インクを被記録材としての紙面に浸透させる効果もあるので、印字物の耐擦過性、耐水性などが良好となることが期待できる。
本発明の2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンホモポリマー(I)のH1−NMRチャートである。 本発明の1,1−ジメチロール−1−ビニロキシメチルプロパンホモポリマー(II)のH1−NMRチャートである。

Claims (5)

  1. 式(I):
    Figure 0004895683
    (式中、nは平均5〜600の数である)
    で表わされるビニルエーテル誘導体ホモポリマー。
  2. 数平均分子量Mnが500〜200,000の請求項1に記載のビニルエーテル誘導体ホモポリマー。
  3. 分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1〜5の請求項1又は2に記載のビニルエーテル誘導体ホモポリマー。
  4. 2−メチル−5−エチル−5−ビニロキシメチル−1,3−ジオキサンをルイス酸の存在下に重合させることを特徴とする請求項1に記載の1,3−ジオキサン誘導体ホモポリマーの製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のビニルエーテル誘導体ホモポリマー(I)をブレンステッド酸の存在下に水と反応させることを特徴とするコポリマーの製造方法。
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