JP4891130B2 - 画像処理装置および画像処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、詳しくは、画像に対する平滑化処理の適用ないし適用の仕方に関するものである。
最近では、インクジェットプリント方式の記録機構およびスキャナ機構を備えた複合機(以下、IJMFPとも言う)が広く提供されている。IJMFPは、パーソナルコンピュータ(PC)と接続してプリント、スキャンなどを実施する機能、機器単体でのコピー機能、デジタルカメラなどと接続してダイレクトプリントを行う機能など、種々の用途で使用可能なプリンタである。このような点から、例えば、家庭用の複写機としても用いられている。IJMFPにおけるコピー機能は、原稿画像をスキャナによって読取り、読取った画像を紙等の記録媒体上に記録するものである。
このようなコピーでは、一般に、コピー対象である原稿の種類によって色の再現範囲などが異なる。このため、原稿とコピーの出力物との間で視覚的に色が一致するものを得ることが難しい場合がある。また、原稿の種類の違いに応じて再現される階調性が異なることもある。
原稿種類の違いとしては、例えば、プリンタによって記録されたものをコピーする場合と、銀塩写真をコピーする場合の原稿の違いがある。すなわち、プリンタは量子化したデータを記録媒体に記録する面積階調による再現であり、その記録物は網点原稿のような面積階調で階調表現するものである。これに対し、銀塩写真は濃度そのものによって階調表現する濃度階調のものである。そして、このように原稿が面積階調によるものか濃度階調によるものかにかかわらず、読取った画像に対して一律な処理を施しそれに基づいた記録を行うと、下地の飛び方や色再現が原稿の種類に応じて異なるという問題がある。
これに対し、特許文献1には像域分離を用いた技術が提案されている。すなわち、同文献には、読取った画像を少なくとも網点と写真の領域に分離し、それぞれの領域に最適なγ変換を施し、総ての領域で良好な画像を得る方法が記載されている。また、特許文献2にも、同様に読取った画像を文字領域と写真領域に分離し、それぞれの領域に最適な色空間変換を施すことにより、総ての領域で良好な画像を得る方法が記載されている。
しかし、上述の特許文献1や特許文献2で提案されている方法は、像域分離された領域毎に最適な色変換処理を施すため、分離されたそれぞれの領域ごとにプリンタの出力特性に応じた色設計を行う必要がある。この場合、精度良く色再現を行うには、像域分離される領域の種類を増やす必要がある。例えば、網点領域であっても、線数やスクリーン角などによりプリンタの出力特性が異なるため、これらのプリンタ出力特性に応じた数の領域分割を行なう必要がある。このため、これら領域ごとの色変換処理によって処理量が多くなるとともに、そのためのメモリ量も多大なものとなる。
特開2001−251513号公報 特開2002−218271号公報
ところで、上述した原稿の種類に応じて再現色ないし階調再現が異なるという問題に対して、平滑化処理は基本的に有効な手段を提供し得るものである。すなわち、画像に対して平滑化処理を施すことにより、その後の色変換処理において原稿の種類にかかわらず、その読み取り結果に基づいて最終的に記録される画像の色ないし階調性を一定のものとすることが可能となる。以下、その理由について簡単に説明する。
図1は、原稿をスキャナで読み取り平滑化処理を行なわずに記録したものと、読み取り結果に平滑化を施した後に記録したものと間の色差を、原稿の種類ごとにそれぞれ最大色差および平均色差として示す図である。詳しくは、RGBの各色を9段階に設定し、これによる計729組の色のパッチを、オフセット印刷、銀塩写真、およびインクジェット写真記録(以下、IJ写真記録)の3種類のプリント方式で記録したものの結果を示している。図1から分るとおり、平滑化処理を施したものとそうでないものとでは、一定の色差を生じる。特に、オフセット印刷では、平滑化したものとしないものとの色差が大きく、銀塩写真やIJ写真の最大色差よりも、オフセット印刷の平均色差のほうが大きい。
図2(a)〜(d)は、以上のような色差が再現色ないし再現される階調性に対して及ぼす影響を平滑化処理によって緩和することを説明する図である。
図2(a)は、面積階調で表現される原稿画像を模式的に表したものであり、図2(b)は、濃度階調で表現される原稿画像を模式的に表している。面積階調の図2(a)に示す画像は、色21A、21B、21Cの3色の画素からなり、マクロ的には図2(b)に示す濃度階調画像の色と同じ色として認識されるものである。例えば、後述される出力デバイス色変換などのプリント出力用の色変換処理は、画素ごとに適用され、画素単位でその色変換が最適に制御されることになる。図2(c)、図2(d)は、それぞれ図2(a)、図2(b)に示す画像に対してプリント出力用の色変換処理を施した結果を表している。そして、図2(c)における色23A、23B、23Cはそれぞれ色21A、21B、21Cの3色の画素を色変換処理した結果を表している。ここで、色21A、21B、21Cの3色が相互に近い色であれば、プリント出力用の色変換後の図2(c)に示す画像と図2(d)に示す画像は、マクロ的に近い色になる。しかし、色21A、21B、21Cの3色が遠い色である場合には、色変換後の図2(c)に示す画像と図2(d)に示す画像は、マクロ的に遠い色となる。
そこで、図2(a)に示す画像に対して予め平滑化処理を行なうことにより、色21A、21B、21Cを近い色とし、それによって、プリント出力用の色変換後の図2(c)に示す画像と図2(d)に示す画像をマクロ的に近い色とすることができる。このように、平滑化処理は、原稿の種類が異なりそれに応じて色再現ないし階調性再現が異なることに起因した問題を緩和することができる。そして、このような、平滑化の効果は、オフセット印刷のような色差が大きくなる原稿の場合は、それだけ平滑化処理による色の平均化の効果が大きいということができる。
しかしながら、以上説明したような平滑化処理を一律に適用する場合には、その後のプリント出力用の色変換との関係で返って階調性を損なう場合がある。
例えば、特にコピー機能を考慮した記録では、プリント出力用の色変換であるガマットマッピングにおいて、プリンタ色域の白点の明度以上をプリンタ色域の白とし、また、プリンタ色域の黒点の明度以下をプリンタ色域の黒として再現させることがある。以下、これらの手法をそれぞれ白飛ばしおよび黒潰しとも言う。これによって、繰り返しコピーが行われる場合でも、良好な画像再現を実現することができる。しかし、画像データの色域について一律に平滑化処理を施すと、その後のガマットマッピングにおいて、ある領域の画素が全体的に黒潰しあるいは白飛ばしの対象画素になってしまうことがある。その結果、その領域が全体的に黒あるいは白で表されて、画像全体の階調性が損なわれたものとなる。
また、ガマットマッピングにおける色域圧縮では、圧縮の対象となる色にも平滑化処理が行われることによって、本来異なる階調値を有した色が同じ色に写像され、結果として階調性が損なわれることもある。
本発明の目的は、画像データの色域に関して平滑化処理を適切に適用することによって色再現および階調再現の良好な画像を記録することを可能とする画像処理装置および画像処理方法を提供することである。
そのために本発明では、画像データの平滑化および該平滑化された後の画像データの色域写像色変換を含む画像処理を実行する画像処理装置であって、前記平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色の、前記色域写像色変換に関わる空間における位置に応じて、前記平滑化の強度を設定する平滑化制御手段、を具えたことを特徴とする。
また、画像データの平滑化および該平滑化された後の画像データの色域写像色変換を含む画像処理を実行するための画像処理方法であって、前記平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色の、前記色域写像色変換に関わる空間における位置に応じて、前記平滑化の強度を設定する平滑化制御工程、を有したことを特徴とする。
以上の構成によれば、色域写像色変換で写像される色域における、平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色の位置に応じて、平滑化の強度が設定される。例えば、上記平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色が黒潰し明度以下の明度を示す色であるときは、平滑化を実施しないようにすることができる。これにより、画像データの色域に関して平滑化処理を適切に適用することができ、色再現および階調再現の良好な画像を記録することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
MFP装置
図3(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るマルチファンクションプリンタ装置(以下、MFP装置)1のそれぞれ外観斜視図およびオートドキュメントフィーダーを兼ねた原稿台蓋を開けた状態の斜視図である。このMFP装置1は、ホストコンピュータ(PC)からデータを受信して記録する通常のPCプリンタとしての機能、スキャナとしての機能を備えている。さらにはスキャナで読取った画像をプリンタで記録するコピー機能、メモリカードなどの記憶媒体に記憶されている画像データを直接読取って記録する機能、あるいはデジタルカメラからの画像データを受信して記録する機能を備えている。
MFP装置1は、CCDセンサを備えたスキャナによる読取装置34を備える。この読取装置は、原稿台に直接置かれた原稿またはオートドキュメントフィーダー(以下ADF)31によって供給される原稿の読み取りを行なう。記録装置33はインクジェット式による装置であり、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の4色のインクを用いて用紙などの記録媒体に記録を行なう。
MFP装置1は、さらに表示パネル39や各種キースイッチ等を備える操作パネル35を備える。また、MFP装置1の背面にはPCと通信するためのUSBポート(不図示)が設けられている。さらに、各種メモリカードからデータを読み出すためのカードスロット42やデジタルカメラとデータ通信を行うためのカメラポート43を備える。なお、記録装置の記録方式は、本発明を適用する上でインクジェット方式に限られない。例えば電子写真式など他の種類の方式によるものであってもよい。
図4は、図3(a)および(b)に示したMFP1の制御および画像処理などを実行する構成を示すブロック図である。
図4において、CPU11は、MFP1が備える様々な機能を制御し、操作パネル35を有した操作部15における所定の操作に従い、ROM16に記憶された画像処理のプログラムを実行する。読取装置34を有した読取部14は、原稿画像を読取り、赤(R)、緑(G)および青(B)色のアナログ輝度データを出力する。なお、読取部14は、CCDの代わりに密着型イメージセンサ(CIS)を備えてもよい。
カードスロット42を有したカードインターフェイス22は、例えばディジタルスチルカメラ(Digital Still Camere 以下DSC)で撮影され、メモリカードなどに記録された画像データを、操作部15の所定の操作に従って読み込む。カードインターフェイス22を介して読み込まれた画像データの色空間は、必要に応じ、画像処理部12によって、DSCの色空間(例えばYCbCr)から標準的なRGB色空間(例えばNTSC−RGBやsRGB)に変換される。また、読み込まれた画像データは、そのヘッダ情報に基づき、有効な画素数への解像度変換など、アプリケーションに必要な様々な処理が必要に応じて施される。また、カメラポート43を有したカメラインターフェイス23は、DSCに直接接続して画像データを読み込む。
画像処理部12は、図5にて後述する、入力デバイス色変換、画像補正・加工処理、出力デバイス色変換、色分解、量子化などの画像処理を行う。それによって得られる記録データは、RAM17に格納される。そして、RAM17に格納された記録データは、記録装置33を有した記録部13で記録するのに必要な所定量に達すると、記録部13による記録動作が実行される。
不揮発性RAM18は、バッテリバックアップされたSRAMなどによって構成され、画像処理装置に固有のデータなどを記憶する。また、操作部15には、記憶媒体に記憶された画像データを選択し、記録をスタートするためにフォトダイレクトプリントスタートキー、オーダーシートをプリントさせるキー、オーダーシートを読み込ますキーが設けられる。さらに、モノクロコピー時やカラーコピー時におけるコピースタートキー、コピー解像度や画質などのモードを指定するモードキー、コピー動作などを停止するためのストップキー、並びに、コピー数を入力するテンキーや登録キーなどが設けられる。CPU11は、これらキーの押下状態を検出し、その状態に応じて各部を制御する。
表示部19は表示パネル39(図3(a))を備える。すなわち、この表示部は、ドットマトリクスタイプの液晶表示部(LCD)およびLCDドライバを備え、CPU11の制御に基づき各種表示を行う。また、記憶媒体に記録されていた画像データのサムネイルを表示する。記録装置33を有した記録部13は、インクジェット方式の記録ヘッド、汎用ICなどによって構成され、CPU11の制御によってRAM17に格納されている記録データを読み出し、ハードコピーとして記録を行なう。
駆動部21は、上述した読取部14および記録部13それぞれの動作における、給排紙ローラを駆動するためのステッピングモータやDCモータ、ステッピングモータやDCモータの駆動力を伝達するギヤ、および、ステッピングモータやDCモータを制御するドライバ回路などから構成される。センサー部20は、記録紙幅センサー、記録紙有無センサー、原稿幅センサー、原稿有無センサーおよび記録媒体検知センサーなどから構成される。CPU11は、これらセンサーから得られる情報に基づき、原稿および記録紙の状態を検知する。
PCインターフェイス24は、PCと本MFP装置1とのインターフェイスであり、MFP装置はこのPCインターフェイス24を介してPCから記録動作や読み取りの指示を受ける。
以上の構成において、コピー動作時は、読取装置34で読取った画像データに対して画像処理部12で所定の画像処理を行い、その結果のデータに基づいて記録装置33で記録する。
画像処理
図5は、本実施形態のMFPにおいてコピー時に実行される画像処理を示すフローチャートである。
図5において、最初に、ステップ501で、読取部14で読取られAD変換されたデータに対してシェーディング補正が施され、これにより撮像素子のばらつきが補正される。次に、ステップ502で、入力デバイス色変換が行われる。これにより、デバイス固有の色空間の画像信号データがデバイスに依存しない標準色空間の信号データに変換される。この標準色空間としては、IEC(国際電気標準会議;International Electrotechnical Commission)により定められたsRGBやAdobeSystems社により提唱されているAdobeRGBなどが知られている。本実施形態では、ルックアップテーブルを用いてこの変換を行う。なお、変換方法としては、マトリクス演算方式を用いることもできる。
変換されたデータは、ステップ503で、補正・加工の処理が施される。処理内容としては、読取りに起因したいわゆる画像のボケを補正するエッジ強調処理や、文字の判読性を向上させる文字加工処理、光照射による読取りで発生した裏写りを除去する処理などが挙げられる。また、図9などで詳細に説明される、本発明を適用した平滑化処理も行われる。すなわち、ステップ505のガマットマッピングにおける、画像信号データが存在する色域における位置ないし領域に応じて平滑化処理の内容を異ならせる平滑化制御を行なう。なお、平滑化処理はステップ504の後に行っても良い。これにより、例えば、ステップ504で画像が縮小される際には、ステップ504の後に平滑化制御処理を行った方が処理画素数が少なくてすむ。
さらに、ステップ504では、画像の拡大縮小処理が実行される。ユーザーによって変倍指定がされている場合や、2枚の原稿を1枚の紙に割り当てる割付けコピーなどの場合に、その所望の倍率に変換される。変換方法は、バイキュービックやニアレストネイバーなどの方法が一般的である。
次に、ステップ505では、標準色空間の画像信号データを、出力デバイスである記録装置に固有の信号データに変換する。この変換では、後述されるように、色域写像(ガマットマッピング)による変換(色域写像色変換)である。
次に、ステップ506で、出力デバイス固有の信号データから、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のMFPで使用するインク色データへの変換処理が実行される。この変換もステップ502と同様の方式を用いることができる。さらに、ステップ507で、画像信号データについて記録装置33で記録可能なレベル数への変換が行われる。すなわち、本実施形態の記録装置33は、インクを吐出する/吐出しない、の2値で画像を表現する。従って、誤差拡散などの量子化方法によって2値のデータに変換する。
次に、ステップ505の出力デバイス色変換についてさらに詳細に説明する。本実施形態では、出力プロファイルとして出力デバイス色変換のルックアップテーブルを定義するものとし、これを以下では出力色変換テーブルとも言う。
出力色変換テーブルは、標準色空間であるsRGB色空間の色信号に対して、記録装置の色域(以下、単にプリンタ色域とも言う)の色信号を対応付けるものである。具体的には、このテーブルは、sRGB色空間の信号データによって離散的な格子点を規定し、各格子点に対してプリンタ色域の色信号を対応させたものである。
図6は、標準色空間とするsRGB色空間信号によるsRGB色域601とプリンタ色域602をCIE‐L***表色系で表した図である。以下、本実施形態の図で示す色空間は、総てCIE−L***表色系で示されるものとする。なお、この扱う表色系は特にCIE−L***表色系に限定されるものでなく、L***色空間等、それに類似する色空間であってもよい。
図6に示されるように、sRGB色域601とプリンタ色域602の形状、サイズなどは異なっている。そこで、色変換テーブルを作成する際に、標準色空間の色域をプリンタ色域に圧縮する「ガマット圧縮」の技術を用いる。本実施形態で用いるガマット圧縮は、プリンタ色域中に、標準色空間の色を測色的に一致した色再現をさせる非圧縮領域を設け、それ以外の標準色空間の色域の色を、非圧縮領域外のプリンタ色域に圧縮する方法を採る。以上のガマット圧縮の手法を用いることにより、非圧縮領域内は標準色空間の色域の色と測色的に一致した色再現を実現し、また、非圧縮領域外で階調を保持することが可能となる。例えば、コピーに用いる記録媒体が写真専用紙とマット紙のように、それらによる色域の形状が異なる場合に、両者間で同じような色再現を実現することが可能となる。
図7は、本実施形態で用いるガマット圧縮の一例を説明する図である。図7において、色域701および色域702は、sRGB色空間の色域およびプリンタ色域をL**平面に投影したものである。また、色域703は、sRGB色空間の色を測色的に一致した色再現をさせる非圧縮領域を表している。この例では、非圧縮領域はプリンタ色域に相似な形状で80%の大きさとしたものである。点Oは圧縮収束点を示している。また、点704、708は、sRGB色空間における格子点に対応する色である。
ガマット圧縮では、先ず、このようなsRGB色空間の格子点が非圧縮領域内に位置しているか否かを判定する。この色域内外判定処理は、以下の方法による。先ず、判定対象となる点と圧縮収束点を結ぶベクトル(ソースベクトルと称す)の長さを算出する。そして、圧縮収束点から判定対象の点に向かうベクトル(色域ベクトルと称す)と色域表面との交点までの距離を求め、ソースベクトルと色域ベクトルの長さを比較する。ソースベクトルの長さが色域ベクトルの長さよりも大きいときは、判定対象点は色域外、小さいときは色域内と判定する。
このような色域内外判定処理の結果、点708は非圧縮領域内に位置すると判定される。その場合は、圧縮処理を行わず、入力のsRGB値と同じ値を保持する。一方、点704は非圧縮領域内の色ではないと判定されるため、以下の方法でガマット圧縮を行う。すなわち、点704は非圧縮領域外のプリンタ色域にガマット圧縮される。具体的には、先ず、点704と点Oとの距離Xを算出する。さらに、点Oと点704を結ぶ直線と、それぞれsRGB色空間の色域701の外郭が交わる点705と、プリンタ色域702の最外郭が交わる点706と、非圧縮領域703の外郭が交わる点707を探し、それぞれの点との距離を算出する。図7では、それぞれの距離をT、D、Fで表している。これらの圧縮収束点Oと距離の関係を基に、点704をプリンタ色域に圧縮する。圧縮後の点は点Oと点704を結ぶ直線上で、以下の圧縮関数(1)により算出できる距離の場所に線形に圧縮される。
Figure 0004891130
なお、この圧縮関数は(1)式に示すように線形である必要はなく、例えば、色域の外に位置するほど、階調を潰すような多次関数やそれに類似する関数を用いてもよい。また、非圧縮領域の広さは、プリンタ色域の約80%の大きさとしたが、それに限定されない。例えば、100%の大きさに設定した場合は、プリンタ色域の色は、測色的一致を重視し、色域外の色を潰すようなガマット圧縮方法を実施することができる。
次に、本実施形態のガマットマッピングにおいて、上述したガマット圧縮の一部として行われるいわゆる白飛ばしおよび黒潰し処理を説明する。
コピー機能の使い方として、原稿を複写し、複写された記録物をさらに原稿として再び複写する場合が想定される。このような繰り返しコピーが行われる場合でも、良好な画像再現を実現すべく、特定の明度(例えば、プリンタ色域の白点の明度)以上の色をプリンタ色域の白(記録用紙の白)に写像することが行なわれる(白飛ばし)。また、同じく、特定の明度(例えば、プリンタ色域の黒点の明度)以下の色をプリンタ色域の黒に写像すること(黒潰し)が行われる。
図8は、白飛ばしおよび黒潰しの詳細を説明する図である。色域801および色域802は、図7にて説明したように、それぞれsRGB色空間の色域およびプリンタ色域をL**平面に投影したものである。
色域802は、コピー時に用いられる記録媒体で記録する際のプリンタ色域である。また、点803はプリンタ色域802の白点を示している。また、LWtは、プリンタ色域の白点の明度を示している。ここで、sRGB色空間の色域801のうち、明度がLWt以上の領域にある格子点は、総て点803にガマット圧縮される。このようにして白飛ばしが行なわれる。一方、点804はプリンタ色域の黒点を示し、また、LBkはプリンタ色域の黒点の明度を示している。黒潰し処理では、sRGB色空間の色域801のうち、LBk以下の明度を持つ格子点は、総て点804にガマット圧縮される。
図8に示すように、例えば、入力原稿が色域805を持っているとすると、白抜きの三角印で表した色はLWtより高い明度にあるため、総て用いる記録媒体の白で再現される。また、黒で塗りつぶした三角印の色は、LBkより明度が低いため、総てプリンタ色域の黒として再現される。以下、LBkを黒潰し明度、LWTを白飛ばし明度と称する。ここで、LBkをプリンタ色域の黒点としたが、それに限定されるものではない。例えば、原稿を読み込む際の誤差で、黒点が明るい色と認識される場合もある。それらを考慮して、プリンタ色域の黒点よりも明るい位置にLBkを設定しておいてもよい。LWtに関しても同様である。
次に、ステップ506の色分解処理で用いる色分解テーブルについて説明する。上述したステップ505の出力デバイス色変換(ガマットマッピング)で得られる画像信号がRGBの信号である場合、その色域内のRGB信号と測色空間で特定される色(例えば、CIE−L***値)とは1対1の関係で対応している。そこで、RGB信号による色空間で等間隔の、例えば729個の格子点を規定する。そして、これら729個の格子点に対応したカラーパッチデータを用意し記録装置で記録する。この記録後のカラーパッチを測色することにより、プリンタ固有のRGB値で表される格子点の色を、例えばCIE−L***表色系の色として特定することができる。次に、ステップ505の処理で圧縮されたsRGB色空間の格子点をCIE−L***表色系の色に変換し、上記の729個の測色値の中で、色差が最小な格子点を探す。そして、色差最小点の周囲の格子点で補間演算を行うことにより、sRGB色空間の格子点が対応するプリンタRGB値が得られる。以上のようにして、入力色空間の色を記録装置のどのインク色で出力するかを記載した色分解テーブルを作成することができる。
平滑化処理
図9(a)〜(c)は、図5に示す画像処理のうち、ステップ503で実施される平滑化処理を説明する図であり、具体的には、平滑化処理の処理単位を示している。
図9(a)は、処理単位が画素単位の場合を示している。平滑化処理では、同図の○印の画素を注目画素に設定する。次に、注目画素を中央に含み太線で囲まれた7×7画素で構成される領域(7×7領域)を設定する。そして、この設定した7×7領域内の画像信号を用いて注目画素に対する平滑化の強度を設定して注目画素を補正する。例えば、7×7領域内の総ての画素の画像信号値を平均した値を注目画素の画素値に置き換える補正を行う。この場合、平滑化強度は画素値の全割合を置き換える“1”となる。なお、この平滑化処理ないし平滑化強度の具体的態様は、後述する各実施形態でそれぞれの態様を説明する。
以上の処理の後、例えば、図9(b)の×印の画素のように、注目画素に隣接する画素を次の注目画素に設定する。そして、上記で説明したのと同じく、×印を注目画素として7×7領域を設定して平滑化処理を実行する。以降、同様に順次注目画素を1画素ずつ移動し、その都度7×7領域を設定することによって平滑化対象の画素総てを平滑化する。
処理単位が領域単位の場合は、図9(a)の○印の画素に対して7×7領域を設定するとともに、○印の画素に対して設定する平滑化強度を7×7領域内の複数画素、例えば全画素に適用する。そして、図9(c)に示す△印の画素に対して7×7領域を設定することにより、○印の画素に対する7×7領域と△印の画素に対する7×7領域とが隣接するように処理単位を移動する。なお、処理単位を画素単位とした方がより高い精度で平滑化強度を設定できる。
図10は、本実施形態の平滑化処理を示すフローチャートである。ステップ1001で処理対象の設定を行う。本処理開始直後は、最初の処理対象を設定する。ステップ1005からステップ1001に戻った場合は、次の処理対象を設定する。次に、ステップ1002で処理領域の設定を行う。処理領域は前記説明したように処理単位を含む複数画素(上記の例では7×7領域)で構成される領域である。
ステップ1003では像域分離を行う。処理単位に対する領域を判定し、領域情報を決定する。すなわち、この判定では、文字などのエッジ領域か、画像などの平坦領域かを判断する。次に、ステップ1004では、上記領域判断に基づいて平滑化による補正を実行する。すなわち、ステップ1003で決定した領域情報が平坦領域の場合は平滑化処理の対象として平滑化(補正)を実施し、エッジ領域の場合は平滑化処理の対象としないで本ステップを終了する。なお、平滑化処理の対象となる領域の画像であっても、図11にて後述するように、本発明を適用した実施形態に係る平滑化処理では、その処理が行われない画素も存在する。
そして、ステップ1005で、処理対象について総て補正が終了したか否かを判断し、終了していない場合はステップ1001からの処理を繰返す。
以上説明した画像処理構成における平滑化処理の適用の仕方のいくつかの実施形態を以下に説明する。具体的には、それぞれの実施形態は、図5に示すステップ503の補正・加工処理において行なう平滑化処理を、ステップ505の色域写像においてどの領域にある色かに応じて適用の仕方を異ならせるものである。
なお、以下の各実施形態では、平滑化で考慮する領域を7画素×7画素の領域とする。また、処理単位は画素単位とする。また、画像信号の取り得る範囲が0〜255を例に説明するが、画像信号の範囲はこれに限るものではなく、MFP装置、画像処理に適するよう設定できることはもちろんである。
さらに、以下の各実施形態では、平滑化処理の際には、図10にて説明したように予め文字領域とそれ以外の領域が分離されている。従って、以下で説明する各実施形態の処理における画像入力は、文字領域以外の画像データが入力する。文字領域に関しては、実施形態で説明する処理が終了した後に、エッジ強調等の処理を実施する。最後に、各実施形態で処理がなされた画像と、エッジ強調処理がなされた画像を合成して、図5に示す次のステップ504の処理にデータを渡す。なお、本実施形態では、以上のとおり、文字領域とそれ以外の領域に個別に処理を実施して最後に合成することにした。しかし、これに限られず、例えば、画素ごとに文字領域とそれ以外といったフラグをたて、文字領域画素にはエッジ強調処理、それ以外の領域には以下の実施形態で説明する平滑化処理を行うようにしてもよい。本発明を適用する上で、文字領域とそれ以外の領域に分けて別の補正処理を行うことが重要であり、実現する手法は、上記の二例に限定されない。
(実施形態1)
本発明の第一の実施形態は、前述した黒潰しおよび白飛ばし処理を行うことで生じる課題を解決する構成に関するものである。以下で説明する黒潰し明度は記録装置で用いる所定の記録媒体に記録する際のプリンタ色域の黒とする。また、白飛ばし明度は記録装置のプリンタ色域の白とする。以下、黒潰し明度をLBk *、白飛ばし明度をLWt *とする。
図11は、図5のステップ503で行なわれる本実施形態に係る平滑化処理の詳細を示すフローチャートである。
先ず、ステップ1101で、ステップ503(図5)に渡された画像データを入力する。ステップ1102では、入力画像のうち、注目画素を中心としてその周辺7画素×7画素それぞれの明度を取得し、それらの平均LAVE *(明度平均値)を求める。
この平均明度LAVE *は、次のステップ1103の明度判定処理で判定対象とする特徴量である。そして、入力画像がsRGB色空間の画像信号データとするとき、次のように求めることができる。すなわち、注目画素の周辺7画素×7画素領域の各画素の信号値をCIE−L***表色系の色に変換する。ここで、明度は、CIE−L***表色系のL*値で表される。なお、用いる表色系は、CIE−L***表色系に限定されるものでなく、L***表色系など、それに類似する表色系を用いることができることはもちろんである。平均明度LAVE *は、7画素×7画素それぞれのL*値を加算し、総画素数49で割ることによって求めることができる。
なお、上記の例では、平均明度を算出するとしたが、次に説明するような、注目画素との位置関係に応じて重み付けをした特徴量を用いることもできる。
図12は、判定対象の7画素×7画素領域を太線で囲んだ領域に分割しそれぞれの領域ごとに重み付けをすることを説明する図である。1201は、注目画素を示している。また、1202は、注目画素1201の周囲の8画素の領域を示している。領域1203、1204も、同様にそれぞれ外側の周囲に形成される領域を示している。このように領域の分割をし、注目画素1201には、1.0倍、領域1202の画素には0.8倍、領域1203の画素には0.5倍、領域1204の画素には0.2倍といった重み付けをし、これらの重み付けがされた明度について平均値を求めることもできる。あるいは、7画素×7画素領域における明度値分布における、例えば中央値を特徴量とすることもできる。
以上のように周辺画素の平均明度を求めると、次に、ステップ1103で、求めた平均明度LAVE *が、白飛ばし明度LWt *(図8)以下か否か、および黒潰し明度LBk *(図8)以上か否かを判定する。ここで、平均明度LAVE *が、黒潰し明度LBk *以下、また、白飛ばし明度LWt *以上と判断したときは、ステップ1104の平滑化処理およびそれに基づくステップ1105の置き換え処理を実行しない。すなわち、この場合は、平滑化強度を0とする。
このように、明度にかかわる特徴量が黒潰し明度LBk *以下(第2の明度以下)あるいは白飛ばし明度LWt *以上(第1の明度以上)のときは、平滑化処理を行なわないようにすることにより、平滑化処理を実施することによる階調のつぶれといった階調性の劣化を防止することができる。
図13(a)〜(e)はこの効果を説明する図である。なお、これらの図は、黒潰し処理についての効果を説明するものであるが、白飛ばし処理についても同じことが当てはまることは以下の説明からも明らかである。
図13(a)は、ステップ503の平滑化処理前の画像の一部である4画素×4画素の画像を示している。これらの画素のうち、画素1301は黒色の画素である。画素1301の信号値は、(R、G、B)=(0、0、0)である。また、画素1302は、黒潰し明度LBk *以下の明度を持つ画素とする。一方、画素1303、1304はそれぞれ黒潰し明度LBk *以上の明度を持つ画素である。
図13(b)は、黒潰し明度や白飛ばし明度に関係なく、注目画素を周辺7画素×7画素のRGB値を平均した値で置き換える平滑化を実行したときの画像データを示す図である。一方、図13(c)は、本実施形態による平滑化処理、黒潰し明度や白飛ばし明度を考慮した平滑化処理を実行したときの画像データである。図13(c)に示すように、本実施形態によれば、7画素×7画素の平均明度が黒潰し明度LBk *以下であるときは、平滑化処理を行わないため、画素データに平滑化が施されていない画素を残すことができる。一方、黒潰し明度や白飛ばし明度を考慮せずに平滑化処理を行う場合には、図13(b)に示すように、総ての画素について平滑化が行なわれ、それによって全体的に各画素が平均化された信号値を持つものとなる。
図13(d)は、図13(b)に示す画像に、図5に示すステップ505の出力デバイス色変換処理(ガマットマッピング)を実施した後の画像データを示している。ここで、ガマット圧縮における非圧縮領域は、写像後の色域であるプリンタ色域の100%とする。つまり、プリンタ色域以外の色は総てプリンタ色域の最外面の色に圧縮されて再現され、プリンタ色域内の色は、測色的に一致した色再現がなされる。
図13(b)において、画素1303、1304は、プリンタ色域内の色で、出力デバイス色変換処理によって色が変わらない。一方、画素1301、1302はプリンタ色域外の色であって、黒潰し明度LBk *以下の色である。この場合、画素1301、1302は、図13(d)に示すように総て黒点に変換される。このため、マクロ的に観察したときに、画像のその部分が黒く潰れるといった階調劣化を生じる。
一方、図13(e)は、図13(c)に示す画像に同じくステップ505の出力デバイス色変換処理を実施した後の画像データである。図13(c)に示すように、平均明度が黒潰し明度LBk *以下のときはその注目画素については平滑化処理を行わないため、その注目画素の信号値が黒潰し明度以上であった場合に、保存される。その結果、もともと平均明度が黒潰し明度LBk *以上の明度となる信号値を持つ画素が、ガマット圧縮によって黒点に変換されることを防ぐことができる。このように、本実施形態によれば、本来的に黒潰し明度以下の画素は黒く潰れているが、もともと黒潰し明度以上の画素は黒点に圧縮されず、マクロ的に観察するとき、階調性が損なわれないものとなる。
再び図11を参照すると、ステップ1103で、平均明度LAVE *が、黒潰し明度LBk *以上で、かつ白飛ばし明度LWt *以下と判断されたときは、ステップ1104に進み、注目画素に平滑化処理を施す。すなわち、この場合は、平滑化強度を1とする。平滑化処理は、本実施形態では、注目画素とその周辺7画素×7画素の信号RGBそれぞれの値の平均値(平均画像信号値)を算出し、その平均値を注目画素の平滑化後の値(RSMG,GSMG,BSMG)とする。なお、平滑化の方法はこれに限定されるものではない。例えば、7画素×7画素の周辺画素をCIE−L***値に変換し、平均値を算出する。そして、sRGB値に戻して平滑化後の値としてもよい。また、例えば、注目画素に重みを置くために、周辺画素の注目画素からの距離に応じて最も近い画素には0.8倍、次に近い画素には0.5倍、最も遠い画素には0.2倍の重み付けをし、重み付け後の値の平均値を算出して、平滑化後の値としても良い。加えて、注目画素の求めた平均明度LAVE *に応じて、例えば、黒潰し明度LBk *、白飛ばし明度LWt *に近いほど平滑化の強度を強くなるような平滑化処理を実施してもよい。
平滑化後の値を求めると、次に、ステップ1105で、注目画素の信号値(R,G,B)を上記のように求めた平滑化後の値(RSMG,GSMG,BSMG)に置き換える。
ステップ1106では、全画素に対してステップ1102からステップ1105までの処理を終えたか否かを判定する。終了していない場合は、ステップ1107で次の注目画素に進み、全画素の処理を終えるまで上述の処理を繰り返す。全画素について処理を終了すると、ステップ1108で、次工程の拡大・縮小処理(図5のステップ504)に補正・加工がなされた画像データを出力する。
以上のように、本実施形態によれば、黒潰し明度と白潰し明度を考慮した平滑化がなされることから、その後の出力プロファイルによるガマット圧縮における黒潰しや白飛ばしによって平滑化に起因した階調性の劣化を防止することができる。一方、平滑化処理が実施された画素では、原稿種別に依存せずに同じ色の画像データとして再現することができる。
なお、本実施形態の説明では、黒潰し処理と白飛ばし処理が同時に行われる形態について説明したが、どちらか一方の処理のみを行われる形態でもよい。例えば、黒潰し処理を実施して平滑化処理を施した後の画像に、さらに白飛ばし処理を実施して、再度平滑化処理を施すなどと言うように処理を分離しても良い。
(実施形態2)
上述した第一の実施形態では、注目画素の周辺画素による平均明度を算出し、これが黒潰し明度、白飛ばし明度という基準値を越えているか否かの判断を行ない、この判断に基づいて平滑化処理を実施するものである。しかし、判断処理を画素ごとに行うと、その分処理時間が長くなることがある。そこで、本発明の第二の実施形態では、予め明度に応じた平滑化の程度である平滑化強度と明度の関係を設定しておくことにより、判断処理を回避して第1実施形態と同様の効果を得るものである。
図14は、本実施形態に係る平滑化処理示すフローチャートである。図14に示すステップ1401、1402は、上記第一実施形態に係る図11に示すそれぞれステップ1101、1102と同じ処理である。
ステップ1403では、平滑化処理を実施する。本実施形態は、明度に応じて予め定めた平滑化強度を用いて平滑化処理を行なう。
図15(a)、(b)および(c)は、平滑化強度の3つの例を示す図である。これらの図において、縦軸は平滑化強度Iを表し、横軸は注目画素の周辺画素の平均明度L*を表している。平滑化強度Iは0から1の範囲とする。
図15(a)に示す例は、ステップ1402で得た平均明度LAVE *が、黒潰し明度LBk *以下の場合、および白飛ばし明度LWt *以上の場合は、平滑化強度を総て0とする。また、平均明度LAVE *が、黒潰し明度LBk *と白飛ばし明度LWt *との間の場合は、平滑化強度を1とする。この平滑化強度を適応することにより、第一の実施形態と同じく、平均明度が黒潰し明度LBk *以下(白飛ばし明度LWt *以上)のときはその注目画素については平滑化処理を行わない。これにより、その注目画素の信号値が黒潰し明度以上であった場合に、保存される。その結果、もともと平均明度が黒潰し明度LBk *以上(白飛ばし明度LWt *以下)の明度となる信号値を持つ画素が、ガマット圧縮によって黒点に変換されることを防ぐことができる。
図15(b)に示す例は、平均明度LAVE *が黒潰し明度LBk *以下で、かつ白飛ばし明度LWt *以上の場合は、図15(a)に示す例と同じである。一方、暗部に、黒潰し明度LBk *から明度LBkBuf*の緩衝領域を設ける。これは、平滑化強度が急激に変化することを緩和すべく、この領域で平滑化強度を連続的に変化させるものである。明度LBkBuf*は、以下の式(2)のようにして設定する。下式のRATEBkは、暗部の緩衝領域の割合を表しており、1から0までの割合を設定する。
BkBuf*=(LWT *−LBk *)×RATEBk+LBk *…(2)
また、暗部緩衝領域間での平滑化強度は、0から1に比例して増加させる。
一方、明部での緩衝領域を、白飛ばし明度LWt *と明度LWtBuf*との間に設ける。明度LWtBuf*は、下式(3)を使って算出することができる。ここで、RATEWtは、明部の緩衝領域の割合を表しており、1から0までの割合を設定する。
WtBuf*=LWt *−(LWt *−LBk *)×RATEWt…(3)
この明部緩衝領域では、平滑化強度を1から0に比例して減少させることで、急激な変化を緩衝している。
なお、緩衝領域での平滑化強度のつなぎ方は、この方法だけでなく、図15(c)に示すように、二次関数等を用いて滑らかな曲線でつなぐこともできる。
以上のような方式を用いて、平滑化強度Iを得た後、下式(4)に基づいた平滑化を実行する。先ず、注目画素の周辺画素での平均RGB値を算出する。この平均RGB値を、(RAVE,GAVE,BAVE)とする。注目画素の色信号(R,G,B)とし、平滑化後の注目画素の値を(RSMG,GSMG,BSMG)とするとき、
SMG=RAVE×I+R×(1−I)
SMG=GAVE×I+G×(1−I)…(4)
SMG=BAVE×I+B×(1−I)
再び図14を参照すると、以上の平均化処理の後ステップ1404に進み、注目画素を、平滑化後の画素値(RSMG,GSMG,BSMG)に置き換える。なお、本処理では、全画素に対して置換え処理を実行しているが、入力画素値と平滑化後の画素値で変化がない場合は、置換え処理を実施しなくてもよい。次にステップ1405に進み、全画素に対してステップ1402からステップ1404までの処理が施されたか否かを判定する。処理が施されていない場合は、全画素にステップ1402からステップ1404までの処理が施されるまで上述の処理を繰り返す。
以上説明したように、本発明の第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様に、平滑化が実施された画素は、原稿種によらず同じ色で画像再現させることができる。また、平滑化が実施しない画素が存在することで、マクロ的な階調を保持することが可能となる。これらに加え、予め設定しておいた、注目画素の周辺画素での平均明度と平滑化強度の関係を用いることにより、効率的な処理を実施できる。
(実施形態3)
本発明の第三の実施形態は、上述の黒潰しなどを行なう領域以外のガマット圧縮を考慮した平滑化処理に関するものである。本実施形態のガマット圧縮における非圧縮領域を100%に設定する。
図16は、非圧縮領域を100%とする場合のガマット圧縮を説明する図である。色域1601および1602は、それぞれ標準色空間であるsRGB色空間の色域およびプリンタ色域をL**平面に投影したものである。非圧縮領域を100%に設定したことから、プリンタ色域1602と非圧縮領域1603は同じ領域となる。従って、圧縮のライン(図のOとTを結ぶライン)が、それぞれプリンタ色域1602の最外郭と交わる点と非圧縮領域の外郭と交わる点は、同じ点の1604となる。すなわち、距離DとFは等しくなる。点1605は、上記圧縮ラインと標準色空間の色域1601の最外殻とが交わる点である。その距離はTとなる。
例えば、標準色空間に規定される格子点が点Oと点1605を結ぶ直線(上記圧縮ライン)上に位置しており、その格子点と圧縮収束点Oまでの距離が、距離F(D=F)以下であるときは、その格子点はそのままの点に写像される。これにより、測色的に一致した色再現が可能となる。また、距離D以上T以下の格子点は、総て距離Fの点に写像(圧縮)される。図17は、この写像(圧縮)における標準色空間の格子点のガマット圧縮前の距離と圧縮後の距離との関係を示している。
図18(a)〜(e)は、本実施形態による平滑化処理およびその効果を説明する図である。
図18(a)は、図5のステップ503の処理に渡される画像データの一部である4画素×4画素を示している。この画像データは、図16に示す色1606〜1609の画素で構成される。図16の右上に各色を模式的に表している。
この画像に対して、平滑化処理を一律に施すと、図16(b)に示す平滑化処理後の画像が得られる。すなわち、色1610、1611の画素で構成される画像が得られる。そして、この平滑化後のデータに対して図16にて説明したガマット圧縮方法を用いて出力デバイス色変換処理(ステップ505)を施すと、点1610、1611は圧縮収束点から一直線上に並んでいるため、いずれの点(色)も点1604の位置に圧縮される。すなわち、いずれの点(色)もプリンタ色域1602の最外面にある同じ色で再現される。図18(d)は、この出力デバイス色変換処理後の画像データを示している。同図に示すように、総ての画素が同じ色に変換されて階調性が損なわれる。
これに対し、本実施形態では、注目画素の周辺画素の平均の色と圧縮収束点までの距離に応じた平滑化方法を実施する。まず、出力プロファイル作成時に、標準色空間の格子点のRGB値に対する平滑化強度Iの関係を算出し、ルックアップテーブル形式で保存しておく。平滑化強度Iの算出方法は以下のとおりである。
標準色空間の色域1601の外郭と圧縮収束点Oとの距離T’を求める。次に、プリンタ色域1602の外郭と圧縮収束点Oの距離D’を求める。さらに、圧縮収束点Oから格子点までの距離X’を求める。そして、この距離に応じて平滑化強度を設定する。
図19(a)は、この平滑化強度の一例を示す図である。同図に示すように平滑化強度Iは0から1の範囲に設定する。この例では、距離X’が距離D’以上、距離T’以下の場合は、平滑化強度を0とする。また、図19(b)に示すように、距離D’の8割の距離をBufとし、平滑化強度の連続性を高めるべく、距離Bufと距離D’の間を線形につなぐようにしてもよい。格子点の距離が、距離Bufと距離D’の間にあるときは、下式(5)によって平滑化強度を求めることができる。
I=(1/Buf−D’)×X’―(D’/Buf−D’)…(5)
なお、図19(b)の距離Bufと距離Dをつなぐ関数は、式(5)に限定されず、例えば、二次元関数などでつないでもよい。
図20は、本実施形態に係る平滑化処理を示すフローチャートである。ステップ2001は、上述の実施形態1、2と同じ処理である。ステップ2002では、注目画素の周辺画素の平均RGB値を算出する。この平均RGB値を、(RAVE,GAVE,BAVE)とする。
次に、ステップ2003で、注目画素の周辺画素での平均RGB値に対する平滑化強度を算出する。すなわち、注目画素およびその周囲の7画素×7画素それぞれのRGB値の平均値に対応する、図16に示すL***表色系の色域の点の位置に応じて、図19(a)または(b)の関係に従い平滑化強度を求める。具体的には、平滑化強度は、ガマット圧縮時に保存しておいた、標準色空間の格子点のRGB値に対する平滑化強度Iの関係を表すルックアップテーブルを用いて算出する。このテーブルは、図19(a)または(b)に示すL***表色系の平滑化強度の関係に基づき、例えば、特開2000−022973号公報に示される補間処理を用いて求めることができる。次に、実施形態2のステップ1403で示した式(4)に、平滑化強度、注目画素のRGB値および平均RGB値を代入し、平滑化を実行する。その後、ステップ2004以降に進む。ステップ2004以降の処理は、実施形態2と同じである。
以上の本実施形態によれば、注目画素の周辺画素の平均RGB値をもとに算出した平滑化強度Iを用いて平滑化処理を行う。すなわち、注目画素の周辺画素の平均RGB値がプリンタ色域外に存在して平滑化強度が0である場合は、平滑化処理を行わない。図18(c)は、この本実施形態による平滑化処理を施した後の画像データを示している。同図に示すように、平滑化処理が施されずに、入力画像の画素値がそのまま保存される画素が存在する。図18(e)は、この平滑化処理後の画像データに出力デバイス変換処理(図5のステップ505)を施した画像データである。同図に示すように、平均RGB値に応じた平滑化強度が0となる注目画素については平滑化処理を行わないため、その注目画素の信号値が保存される。これにより、周辺画素の平均RGB値がプリンタ色域外にある注目画素が平滑化処理によって、その後のガマット圧縮で同じ画素に変換されることを防ぐことができる。一方、注目画素がプリンタ色域内に存在する場合に、平滑化処理がなされなかった場合は、そのままの色として再現され、例えば点1608のように、注目画素がプリンタ色域外に存在する場合は、圧縮収束点Oとプリンタ色域の最外殻の交点の色として再現される。この結果、図18(d)に示すような階調性の劣化を防ぐことができる。また、プリンタ色域内の色は測色的に一致した色再現をさせるため、図16に示す点1606や1607の色は変化がない。つまり、平滑化を行い、測色的に一致した色再現をさせた画素データが存在し、この画像データをマクロ的に観察すると階調性が保存することになる。
(他の実施形態)
なお、本発明の適用は、以上説明した形態のガマット圧縮に限定されず、例えば、入力色空間の色域と出力色空間の色域形状が異なり、入力色空間の階調が圧縮されるような、他のあらゆる形態のガマットマッピングがなされる場合にも適用できる。
また、本発明を適用する上で、「平滑化」とは、画素値を平均化するあらゆる処理を含むものと解釈できることは、以上の説明からも明らかである。
さらに、上述の各実施形態はマルチファンクションプリンタが本発明の画像処理を実行する形態に関するものであるが、本発明の適用はこの形態に限られないことはもちろんである。例えば、PCが上述した各実施形態の画像処理を実行してもよく、あるいは、通常の記録機能のみのプリンタが上述した各実施形態の画像処理を実行してもよい。これらの画像処理を実行するそれぞれの装置は画像処理装置を構成することになる。
平滑化処理を行なわずに記録したものと、平滑化を施した後に記録したものと間の色差を、原稿の種類ごとにそれぞれ最大色差および平均色差として示す図である。 (a)〜(d)は、以上のような色差が再現色ないし再現される階調性に対して及ぼす影響を平滑化処理によって緩和することを説明する図である。 (a)および(b)は、本発明の実施形態に係るマルチファンクションプリンタ(MFP)のそれぞれ外観斜視図およびオートドキュメントフィーダーを兼ねた原稿台蓋を開けた状態の斜視図である。 図3(a)および(b)に示したMFPの制御および画像処理などを実行する構成を示すブロック図である。 上記MFPにおいてコピー時に実行される画像処理を示すフローチャートである。 標準色空間の色域とプリンタ色域をCIE‐L***表色系で表した図である。 本発明の一実施形態で用いるガマット圧縮の一例を説明する図である。 白飛ばしおよび黒潰しの詳細を説明する図である。 (a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る平滑化処理の処理単位を説明する図である。 本実施形態の平滑化処理を示すフローチャートである。 本発明の第一の実施形態に係る平滑化処理の詳細を示すフローチャートである。 上記第一の実施形態に係る平均明度の算出に関わる重み付けを説明する図である。 (a)〜(e)は上記第一の実施形態の効果を説明する図である。 本発明の第二の実施形態に係る平滑化処理示すフローチャートである。 (a)、(b)および(c)は、上記第二の実施形態に係る平滑化強度の3つの例を示す図である。 本発明の第三の実施形態で用いるガマット圧縮を説明する図である。 上記第三の実施形態のガマット圧縮における圧縮を説明する図である。 (a)〜(e)は、上記第三の実施形態による平滑化処理およびその効果を説明する図である。 (a)および(b)は、上記第三の実施形態による平滑化処理における平滑化強度のそれぞれ一例を示す図である。 上記第三の実施形態に係る平滑化処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1 MFP装置
11 CPU
12 画像処理部
13 記録部
14 読取部
15 操作部
16 ROM
17 RAM
18 不揮発性RAM
33 記録装置
34 読取装置

Claims (8)

  1. 画像データの平滑化および該平滑化された後の画像データの色域写像色変換を含む画像処理を実行する画像処理装置であって、
    前記平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色の、前記色域写像色変換に関わる空間における位置に応じて、前記平滑化の強度を設定する平滑化制御手段、
    を具えたことを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色の明度は、平滑化の対象となる画像データにおける注目画素を含む周辺画素それぞれの明度の平均値を示すことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  3. 前記平滑化強度は、前記明度平均値が、第1の明度以上のとき、または該第1の明度より低い第2の明度以下のとき、平滑化を実行しないものであることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
  4. 前記平滑化制御手段は、予め定められた、前記明度平均値に対する前記平滑化強度の関係に従って、前記平滑化強度を設定することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
  5. 前記平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色は、平滑化の対象となる画像データにおける注目画素を含む周辺画素それぞれの画像信号の平均値を示す色であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  6. 前記平滑化強度は、前記画像信号の平均値を示す色が、前記色域写像色変換における変換後の色域以外の色であるとき、平滑化を実行しないものであることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
  7. 前記平滑化制御手段は、予め定められた、前記画像信号の平均値に対する前記平滑化強度の関係に従って、前記平滑化強度を設定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
  8. 画像データの平滑化および該平滑化された後の画像データの色域写像色変換を含む画像処理を実行するための画像処理方法であって、
    前記平滑化の対象となる画像データに基づいて求められる色の、前記色域写像色変換に関わる空間における位置に応じて、前記平滑化の強度を設定する平滑化制御工程、
    を有したことを特徴とする画像処理方法。
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