JP4890907B2 - 潤滑剤組成物 - Google Patents
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Description
前者の機能は低粘性潤滑油基油とその高温時のより低粘性化することによる膜破壊を押えるための粘度指数向上剤により改善されている。後者の機能の尺度として粘度指数(VI:viscosity index)が用いられ、粘度指数が大きいほど温度変化に対する安定性が高い。粘度指数は、ある種の重合体を基油及び/又は潤滑油に添加することにより向上できることが知られている。
粘度指数向上剤の添加により潤滑油の粘度の温度依存性が小さくなる理由は、以下のように考えられている。低温(通常40℃)では粘度指数向上剤が低粘性オイルに溶解し難くオイルの粘度は上昇しないが、高温(通常100℃)ではオイル自身の粘度低下より、温度上昇によって粘度指数向上剤のオイル溶解性が向上し、その増粘効果でオイル全体の粘度が上昇する。
また、特許文献13にはアルキルメタアクリレート組成の最適化によってシャダー防止能が、特許文献14にはアルキルフェノールを含有させて酸化防止能が、また特許文献15にはポリアルキレンチオエーテルを含有させて耐コーキング性が付与できることが開示されている。
すなわち剪断安定性を確保しつつ粘度指数向上性をいかに確保するか、素材的には紐のような重合体構造物を剪断場でいかに引きちぎられないようにするかという課題とみなすことができる。
この技術は現行の境界潤滑膜技術とは全く異なり、所定の円盤状化合物を用いることにより、低粘性潤滑油では発現し難い高圧力下の弾性流体潤滑過程の特性を、従来では境界潤滑過程に入る極めて厳しい条件においても発現させ、そのことにより、低摩擦と耐摩耗性を確保している。さらに、上記技術で用いられる素材は、環境有害物質を含まずに調製可能であり、現行の境界潤滑膜技術に替わる高性能かつ環境調和技術としての可能性をもっている。
[1] メソゲン構造を主鎖に含む重合体を含有する潤滑剤組成物。
[2] メソゲン構造が円盤状である[1]の潤滑剤組成物。
[3] 前記重合体が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体である[1]又は[2]の潤滑剤組成物:
[7] 前記重合体が、エステル結合で縮合された繰り返し単位を有するポリエステルである[1]〜[6]のいずれかの潤滑剤組成物。
[8] 前記重合体を、全質量中0.1〜30質量%含有する[1]〜[7]のいずれかの潤滑剤組成物。
[9] さらに潤滑油を含有し、該潤滑油を全質量中70〜99.9質量%含有する[1]〜[8]のいずれかの潤滑剤組成物。
[10] 前記重合体を、平均粒径10ナノメートル〜10ミクロンの分散粒子として含有する[1]〜[9]のいずれかの潤滑剤組成物。
[11] 前記重合体とは異なる重合体の少なくとも一種をさらに含有する[1]〜[10]のいずれかの潤滑剤組成物。
[14] [1]〜[12]のいずれかの潤滑剤組成物からなる摩擦調整剤。
[15] 前記重合体が、水あるいは有機溶剤中100質量部に対し2質量部以上溶解している[1]〜[7]のいずれかの潤滑剤組成物。
[16] 前記重合体が、10ナノメートル以上10ミクロン以下の平均粒径でポリマーコロイド状に分散されている重合体分散物からなる[1]〜[7]のいずれかの潤滑剤組成物。
[17] 前記重合体分散物が剪断による重合体の分散法を経由して得られる[16]の潤滑剤組成物。
[18] 前記重合体分散物が乳化分散法を経由して得られ、水性である[16]の潤滑剤組成物。
[19] 前記重合体分散物が分散重合法を経由して得られ、油性である[16]の潤滑剤組成物。
[20] 前記重合体分散物が、両親媒性グラフトポリマー又はブロックコポリマーの存在下で分散重合法を経由して得られ、油性である[16]の潤滑剤組成物。
[21] 前記重合体の少なくとも一種が、10ナノメートル以上10ミクロン以下の平均粒径でポリマーコロイド状に分散されており、同時にあるいは別の少なくとも一種が水あるいは有機溶剤中100質量部に対し2質量部以上溶解している[1]〜[7]のいずれかの潤滑剤組成物。
[22] [1]〜[21]のいずれかの潤滑剤組成物を表面に塗布して形成された膜。
[23] メソゲン構造を主鎖に有する重合体を含有する固体潤滑剤。
[24] さらに前記一般式(4)−a,b,c,d,e,f及びgのいずれかで表される少なくとも一種類の化合物を含有する[15]の潤滑剤組成物。
本発明の一態様によれば、前記重合体を基油に溶解させることにより、その側鎖の剛直性と側鎖表面の油溶性によって優れた粘度指数向上能を発揮する。さらに、メソゲン基に比較的極性の高い化学構造を導入することで、分散性、耐コーキング性、シャダー防止性などの機能を付与することもできる。即ち、本発明の一態様によれば、潤滑油の粘度指数向上に寄与するのみならず、低温流動性、剪断安定性、耐コーキング性及びシャダー防止性能の維持性の改善にも寄与する、新規な潤滑剤組成物を提供することができる。
また、本発明の他の態様によれば、前記重合体を基油へ分散することによって、低粘性基油の特性である低温流動性、駆動開始時、低負荷時の低摩擦性を維持しつつ、同時に極圧下での耐摩耗性の改善が改善され、且つ摩擦係数が低減された新規な潤滑剤組成物を提供することができる。
さらに、本発明の潤滑剤組成物は、リン、硫黄、塩素や重金属が必須元素ではなく、環境調和性にも優れている。
[メソゲン構造]
本発明は、液晶相を形成しうるメソゲン構造を含む少なくとも一種の繰り返し単位を有する重合体を含有する潤滑剤組成物に関する。前記重合体は、前記メソゲン構造を主鎖に有する。液晶性にとっては、立体的要因である直線性や平面性と剛直性、及び静電的要因である分極率の異方性が重要である。ほぼすべての液晶性化合物の構造は、模式的に、剛直なコア構造とフレキシブルな側鎖で表すことができる。メソゲン構造とは、中間相(メソフェーズ)が誘起(ジェネレート)される構造という造語であり、前者の剛直なコア構造部分を指す。液晶性化合物は、単独で、ある特定の温度、圧力範囲で熱力学的に安定な液晶相を呈するサーモトロピック液晶と、溶媒中である特定の温度、圧力、濃度範囲で液晶相を呈するリオトロピック液晶に分類される。しかし、メソゲン構造とフレキシブルな側鎖を有する化合物でも必ずしも液晶性を呈するわけではない。したがって、本発明で用いられる重合体は、繰り返し単位にメソゲン構造を有するが、液晶性ポリマー(高分子液晶)である必要はない。もしくは、用いられる温度域において液晶性を呈する必要はない。
前記環構造は、円盤状であることが好ましい。メソゲン構造が円盤状の環構造を有すると、粘度指数向上機能を維持するための剪断時の破断耐久性が低摩擦性の効果で向上し、同時に潤滑油の極圧下での耐摩耗性の改善と、摩擦係数の低減に寄与するので好ましい。
円盤状構造の形態的特徴は例えば、その原形化合物である水素置換体について、以下のように表現され得る。まず、分子の大きさを以下のようにして求める。
1)該分子につき、できる限り平面に近い、好ましくは平面分子構造を構築する。この場合、結合距離、結合角としては、軌道の混成に応じた標準値を用いる事が好ましく、例えば日本化学会編、化学便覧改訂4版基礎編、第II分冊15章(1993年刊 丸善)を参照することができる。
2)前記1)で得られた構造を初期値として、分子軌道法や分子力場法にて構造最適化する。方法としては例えば、Gaussian98、MOPAC2000、CHARMm/QUANTA、MM3が挙げられ、好ましくはGaussian98である。
3)構造最適化によって得られた構造の重心を原点に移動させ、座標軸を慣性主軸(慣性テンソル楕円体の主軸)にとる。
4)各原子にファンデルワールス半径で定義される球を付与し、これによって分子の形状を記述する。
5)ファンデルワールス表面上で各座標軸方向の長さを計測し、それらそれぞれをa、b、cとする。
以上の手順により求められたa、b、cを用いて円盤状の形態を定義すると、c≦b<aかつa/2≦b≦a、好ましくはc≦b<aかつ0.7a≦b≦aと表すことができる。また、b/2>cであることが好ましい。また具体的化合物として挙げると、例えば日本化学会編、季刊化学総説No.22「液晶の化学」第5章、第10章2節(1994年刊 学会出版センター)、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.Liq.Cryst.71巻、111頁(1981年)、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)、J.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhang、J.S.Mooreらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.,116巻、2655頁(1994年)に記載の母核化合物の誘導体が挙げられる。例えば、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、ヘキサエチニルベンゼン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、コロネン誘導体及びフェニルアセチレンマクロサイクルの誘導体がメソゲン構造として挙げられる。さらに、日本化学会編、“化学総説No.15 新しい芳香族の化学”(1977年東京大学出版会刊)に記載の環状化合物及びそれらの複素原子置換等電子構造体を挙げることができる。また、上記金属錯体の場合と同様に、水素結合、配位結合等により複数の分子の集合体を形成して円盤状の分子となるものでもよい。これらを分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された構造によりディスコティック液晶化合物が形成される。
後述する一般式(1)中のR0、一般式(2)中のR2及び一般式(3)中のR3に相当する、メソゲン基に置換する側鎖としては一般的に、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アシルオキシ基が挙げられ、側鎖中にアリール基、ヘテロ環基を含んでいてもよい。また、C.Hansch、A.Leo、R.W.Taft著、ケミカルレビュー誌(Chem.Rev.)1991年、91巻、165〜195ページ(アメリカ化学会)に記載されている置換基で置換されていてもよく、代表例としてアルコキシ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子が挙げられる。更に側鎖中に、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、シアノ基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基のような官能基を有していてもよい。
また、前述のもののうち、フェニル基は他のアリール基(例えば、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセン基)でもよいし、また前述の置換基に加えて更に置換されてもよい。また、該フェニル基はヘテロ芳香環(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアリル基、オキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基)であってもよい。
一つの側鎖に含まれる炭素原子の数は1以上30以下が好ましく、1以上20以下がさらに好ましい。
後述する一般式(1)〜一般式(3)中、連結基Lに相当する、メソゲンを連結する主鎖としては、一般的に、アルキレン基、パーフルオロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ポリシロキサン基及びそれらの組み合わせられた二価の連結基が挙げられる。それらはさらに、例えばオキシ基、カルボニル基、エチニレン基、アゾ基、イミノ基、チオエーテル基、スルホニル基及びそれらの組み合わせられたジスルフィド基やエステル基、アミド基、スルフォンアミド基などの二価の連結基によって連結されてもよい。また主鎖への置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基などの芳香族環、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、チオ基、スルホ基、カルボキシル基などが挙げられる。
上記のメソゲン間の主鎖を構成する最短の元素数は、特に円盤状メソゲンによる液晶相の形成には8以上15以下が好ましい。また、液晶相の発現には、さらに主鎖構造が比較的柔軟であるウンデシレン基などのアルキレン基やパーフルオロアルキレン基、トリエチレンオキシ基、ジプロピレンオキシ基などのオリゴアルキレンオキシレン基及びオリゴパーフルオロアルキレン基、オリゴシロキサン基などの二価の基が好ましい。
メソゲン基を有する繰り返し単位を少なくとも一種有する重合体は、従来公知の有機合成方法及び重合法を組み合わせることで製造することができる。前記メソゲン構造は、重合によりポリマーを得た後、ポリマー分子に導入してもよい。また、メソゲン構造を有するモノマーを重合して前記重合体を製造することもできる。例えば、(メタ)アクリレート類を重合した後、重合体のカルボン酸部分に前記メソゲン構造をエステル反応を利用して導入してもよい。また、(メタ)アクリレートのエステル類のエステル部分にメソゲン構造を導入し、該モノマーを重合してもよい。より具体的には、Macromol.Chem.,Rapid Commun.4,807−815(1983)、Macromol.Chem.,Rapid Commun.6,367−373(1985)、及びMacromol.Chem.,Rapid Commun.6,577(1985)、J.Chem.Soc. Perkin Trans.,I 1995 pp829.Liquid Crystals,1995,Vol.18,No.2,pp191.Liquid Crystals,1998,Vol.25,No.1,pp47.J.Mater.Chem.,1998,8(1),pp47.などに記載の合成方法が挙げられる。
また、前記重合体は、ポリエステルであってもよく、例えば、2つのエステル基で置換基されたメソゲン基を有するモノマーと、ジオールとを縮合反応することによって得られたポリエステルであってもよい。
本発明の潤滑剤組成物は、下記一般式(4)−a,b,c,d,e,f又はgで表される少なくとも一種類の化合物をさらに含有していてもよい。
粘度指数向上機能は、従来技術でも述べたように、温度上昇による粘度指数向上剤のオイル溶解性が向上し、低温で絡まりあっていたポリマー鎖がほどけて大きな拡散断面積を呈するようになることでその増粘効果が発現し、オイル全体の粘度を上昇させるものと考えられる。
フッ素系の基油の場合には、パーフルオロアルキル基やオリゴパーフルオロアルキレンオキシ基が好ましく用いられる。
水系基油の場合には、オリゴアルキレンオキシ基が好ましい。
この溶解性の観点での側鎖置換基の選択は、主鎖構造にも同様に適用することが好ましい。
本来の潤滑機能である低摩擦性、耐摩耗性の発現には、特に放射状に側鎖構造を有する円盤状又は平板状メソゲン構造が好ましい。しかし、これらの機能は、互いに摺動する界面の近傍により多く存在することが効果的であり、粘度指数向上機能の発現の条件とは異なり、溶解せず、かつ微粒子で基油中に均質に分散した状態のほうが、基油に対してより少量で効果的に機能する。従って、前記重合体を、例えば炭化水素系の基油に混合せず単独で用いることも可能である。かかる態様では、前記重合体が、潤滑剤組成物の主成分となり、例えば、本発明の潤滑剤組成物は、前記重合体のみからなっていてもよい。一方、以下に記載する通り、潤滑油等の基油を併用する態様では、前記重合体の含有量は、全質量中0.1〜30質量%であるのが好ましく、0.5〜15質量%であるのがより好ましく、1〜5質量%であるのがさらに好ましい。
[基油]
本発明の潤滑剤組成物の基油として用いられる油性物質(潤滑油)としては、従来、潤滑剤組成物の基油として用いられている一般的な鉱油及び合成油から選択される一種又は二種以上を用いることができる。例えば、鉱油、合成油、あるいはそれらの混合油のいずれも用いることができる。鉱油としては、例えば、パラフィン系、中間基系又はナフテン系原油の常圧又は減圧蒸留により誘導される潤滑油原料をフェノール、フルフラール、N−メチルピロリドンの如き芳香族抽出溶剤で処理して得られる溶剤精製ラフィネート、潤滑油原料をシリカーアルミナを担体とするコバルト、モリプデン等の水素化処理用触媒の存在下において水素化処理条件下で水素と接触させて得られる水素化処理油、水素化分解触媒の存在下において苛酷な分解反応条件下で水素と接触させて得られる水素化分解油、ワックスを異性化用触媒の存在下において異性化条件下で水素と接触させて得られる異性化油、あるいは溶剤精製工程と水素化処理工程、水素化分解工程及び異性化工程等を組み合わせて得られる潤滑油留分等を挙げることができる。特に、水素化分解工程や異性化工程によって得られる高粘度指数鉱油が好適なものとして挙げることができる。いずれの製造法においても、脱蝋工程、水素化仕上げ工程、白土処理工程等の工程は、常法により、任意に採用することができる。鉱油の具体例としては、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油及びブライトストック等が挙げられ、要求性状を満たすように適宜混合することにより基油を調整することができる。合成油としては、例えば、ポリα−オレフィン、α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングルコールエーテル、シリコーン油等を挙げることができる。これらの基油は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油を組み合わせて使用してもよい。
通常基油は安価に入手できるため、また基油は低粘性であり摺動機械の駆動時のトルクはより小さく、また低負荷時の流体潤滑での摩擦係数は極めて低いので、基油に、前記重合体を少量用いることが好ましい。但し、摺動する界面に偏析させるために基油に溶解させない状態で用いると、一般的に摺動部位に偏析する効率が劣ることが多い。また近傍に存在しても、摺動する狭い間隙に重合体が入り込むためには、一般的に重合体の平均粒径は50ミクロン以下が好ましく、10ミクロン以下がさらに好ましい。従ってそのような平均粒径の重合体が基油中に均質に分散していることが好ましい。そうすれば、真実接触部位に限りなく近づき、そこで両面からの剪断力によって、薄膜状に展延され、摺動面を覆い、なおかつ界面粗さを低減する効果も発現することで、低摩擦、耐摩耗性を促進することが可能になる。
さらに好ましくは、それらの部分構造のオリゴマーあるいはポリマーがブロック共重合又はグラフト共重合体である。例えば、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート−g−ビニルアセテート)、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸−g−グリシジルメタアクリレート)、ポリ(ラウリル メタアクリレート−b−メタアクリル酸)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート−g−メチルメタアクリレート)、ポリ(スチレン−b−メタアクリル酸)、ポリ(ブタジエン−b−メタアクリル酸)、ポリ(スチレン−b−t−ブチルスチレン)、ポリ(ラウリル メタアクリレート−b−ヘキサエチレンオキシエチル−メタアクリレート)、ポリ(ラウリル メタアクリレート−b−ヘキサ(パーフルオロエチレンオキシ)エチル−メタアクリレート)、ポリ(3−ヘキシルデシル メタアクリレート−b−3−ウレイドプロピル−メタアクリレート)などがあげられる。
その他、本発明の潤滑剤組成物には、種々の用途に適応した実用性能を確保するため、さらに必要に応じて、潤滑剤、例えば軸受油、ギヤ油、動力伝達油などに用いられている各種添加剤、すなわち摩耗防止剤、極圧剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜添加することができる。
本発明の潤滑剤組成物を、表面に塗布して、潤滑膜として利用してもよい。その場合、その膜厚は、塗布する表面の表面粗さに影響されるが、0.5ミクロンの表面粗さの場合、5ミクロン程度の膜厚で良好な低摩擦性、耐摩耗性を発現し、0.02ミクロンの表面粗さの場合、0.03ミクロン程度の膜厚で同様に良好な性能を示す。
また、結合剤ポリマーに固体潤滑剤を添加して潤滑膜を形成させる技術と同様に、本発明の潤滑剤組成物に固体潤滑剤を添加して、前記潤滑膜を形成してもよい。
前記固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、有機モリブデン化合物、窒化ホウ素があげられる。
また、結合剤ポリマーを添加することも可能である。結合剤ポリマーとしては、有機樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、尿素(ウレア)樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂が、また無機高分子として、Ti−O,Si−O,Zr−O,Mn−O,Ce−O,Ba−Oといった、金属−酸素結合が三次元架橋した構造からなる被膜形成材料があげられる。
前記潤滑膜は、種々の基体の表面に形成することができる。前記基体の材質としては、炭化珪素・窒化珪素・アルミナ・ジルコニアなどのセラミックス、鋳鉄、銅・銅−鉛・アルミニウム合金とその鋳物、ホワイトメタル、高密度ポリエチレン(HDPE)・四フッ化エチレン樹脂(PFPE)・ポリアセタール(POM)・ポリフェニレンサルファイド(PPS)・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・ポリアミドイミド(PAI)・ポリイミド(PI)などの各種プラスチック、プラスチックにガラス・カーボン・アラミドなどの繊維を複合化した有機−無機複合材料、セラミックと金属の複合材料サーメットなどが挙げられる。
また、上記の樹脂やセラミック材料の他、機械構造用炭素鋼、ニッケルクロム鋼材・ニッケルクロムモリブデン鋼材・クロム鋼材・クロムモリブデン鋼材・アルミニウムクロムモリブデン鋼材などの構造機械用合金鋼、ステンレス鋼、マルチエージング鋼などの表面にダイヤモンドライクカーボンの薄膜が被覆されている材料も好ましく用いられる。
また、銅系の金属粉を焼結することにより多孔質層を表面に形成させ潤滑剤組成物を含浸させた焼結金属やジルコン酸カルシウム(CaZrO3)とマグネシア(MgO)の微粒子が互いに強く結合して形成されるような多孔質セラミックス、シリカとホウ酸系成分を熱的に相分離させることにより得られる多孔質ガラス、超高分子量ポリエチレン粉末の焼結多孔質成形体、四フッ化エチレン等フッ素樹脂系多孔質膜、ミクロフィルターなどに用いられるポリスルホン系多孔質膜、予め成形体の貧溶媒とその成形体形成モノマーを重合時相分離を起こさせて形成される多孔質膜などが挙げられる。
前記重合体のうち、ガラス転移点の高い重合体については、粉末状に成形して固体潤滑剤として使用できる。単独で使用することも可能であるし、結合剤に分散あるいは溶解させて用いることも可能である。
さらに重合体100質量部に対して基油を20〜40質量部添加し、両者が溶解した状態で使用しても低摩擦性、耐摩耗性が発現する。
本発明の潤滑剤組成物は、種々の用途に利用できる。例えば、自動車等の車両のエンジン油、ギヤ油、自動車用作動油、船舶・航空機用潤滑油、マシン油,タービン油、軸受油、油圧作動油、圧縮機・真空ポンプ油、冷凍機油及び金属加工用潤滑油剤、また磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤や人工骨用潤滑剤等に利用することができる。
メソゲン構造としての一般的なトリフェニレン環(例示化合物DMP−1〜13)の合成方法は、Liquid Crystals.,第31巻8号,1037頁(2004年)及びその引用文献に詳細に記述されているが、ポリマー主鎖の連結様式でその合成方法は様々である。
例えば、例示化合物DMP−1〜8、及びDMP−52〜58については、メソゲン環の連結方法として、Makromol.Chem.Rapid Commun.,第6巻,577頁(1985年))に記載の方法に準じて合成した。
例示化合物DMP−9〜18、DMP−21〜25、DMP−35〜44、及びDMP−49〜51については、メソゲン環の連結方法として、Macromolecules,第23巻,4061頁(1990年))に記載の方法に準じて合成した。
例示化合物DMP−26、27、30、及びDMP−45〜48については、メソゲン環の連結方法として、J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,829頁(1995年))に記載の方法に準じて合成した。
六置換ベンゼン環(例示化合物DMP−55)の合成方法は、Makromol.Chem.Rapid Commun.,第6巻,367頁(1985年))に記載の方法に準じて合成した。三置換ベンゼン環(例示化合物DMP−56及び57)の合成方法は、Liquid Crystals.,第26巻10号,1501頁(1999年))に記載の方法に準じて合成した。
トリアリールメラミン環(例示化合物DMP−31〜48)の合成方法は、Liquid Crystals.,第24巻3号,407頁(1998年)に記載の方法に準じて合成した。
ヘキサエチニルベンゼン環(例示化合物DMP−49〜51)の合成方法は、Angew.Chem.Int.Ed.,第39巻17号,3140頁(2000年)記載の方法に準じて合成した。
フタロシアニン環(例示化合物DMP−52〜54)の合成方法は、特開2000−119652号公報明細書記載の方法に準じて合成した。
〔実施例2〜16、比較例1〜3、参考例1及び2:潤滑油の調製と高溶解性円盤状ポリマーの粘度指数向上機能評価〕
実施例1で得られたメソゲン構造を有する重合体について、その5質量部と潤滑油基油スーパーオイルN−32(新日鐵化学製)95質量部を400倍で拡大した顕微鏡下(メトラー社製顕微加熱装置FP−80HTホットステージ及びニコン社製OPTIPHOT−POL)で100℃に加熱した際、40℃では極く少量見られた微細固体が完全に溶解した潤滑剤組成物を形成することを確認した重合体(DMP−3,10,15,21,30,31,35,44,51,52,55,56,59,60,61)について、その15質量部とN−32の85質量部を混合した潤滑剤組成物を調製した。
また、比較例として、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤(CP−1)及びエチレン無水マレイン酸グラフトアミン変性物粘度指数向上剤(CP−2)を用いて、同様の方法で潤滑剤組成物それぞれ調製した。
(粘度指数向上機能)
JIS K2283に基づいて、実施例2〜16、比較例1〜3、参考例1及び2の潤滑剤組成物の動粘度(100℃と40℃)をウベローデ粘度計を用いて測定し、粘度指数を算出した。なお、潤滑剤組成物を調製するために用いたスーパーオイルN−32(新日鐵化学製)(すなわち、円盤状ポリマー添加前の潤滑油)の粘度は、40℃で30.6mm2/s、100℃で5.31mm2/s、粘度指数は106であった。
社団法人自動車技術会による自動車規格JASO M347−95に基づいて、実施例2〜16、比較例1〜3、参考例1及び2の潤滑剤組成物に、100℃において規定時間超音波を照射した。照射後の粘度を測定し、照射前後の粘度から、潤滑剤組成物の粘度低下率を算出した。潤滑剤組成物の粘度低下率の値が小さいほど粘度指数向上剤のせん断安定性は高い。
剪断安定性についても、前記円盤状ポリマーは粘度低下率が小さく、粘度指数向上剤として好ましい性質を有していることが理解できる。
〔実施例17及び18、比較例6及び7:高溶解性試料の粘度指数向上機能に付随する諸性能評価〕
円盤状ポリマーDMP−15、DMP−35及び比較としてCP−1,CP−2について、各々その15質量部とN−32の85質量部を混合した潤滑剤組成物を調製した。
上記実施例と同様にこれらの粘度指数向上能に付随する諸性能を評価した。結果を表2及び表3に示す。
(低温粘度特性)
調製した潤滑剤組成物について、MRV(ミニ・ロータリー・ビスコメーター)、CCS(コールド・クランキング・シュミュレーター)及びTP−1をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。なお、上記MRV、CCS及びTP−1は、組成物の低温粘度特性を表示するものである。
MRV(ミニ・ロータリー・ビスコメーター)は、ASTM−D3829に記載の方法を使用して測定され、粘度をセンチポイズ単位で測定するものである。測定温度は−25℃である。
CCS(コールド・クランキング・シュミュレーター)は、SAE J300Appendixに記載の方法を使用して測定され、高せん断粘度値をセンチポイズ単位で測定するものである。この試験は、冷間のエンジン始動に対する潤滑油の抵抗性に関係する。CCSが高くなる程、冷間のエンジン始動に対する油の抵抗性が大きくなる。
さらに、TP−1は、ASTM−D4684に記載の方法を使用して測定される。これはMRVと本質上同じであるが、但し、徐冷却サイクルが使用される。このサイクルは、SAE Paper No.85 0443(ケイ・オー・ヘンダーソン)に規定されている。
調製した潤滑油について、スラッジの分散性を試験した。判定基準を以下に示す。
○…スラッジの沈積が認められない
△…スラッジの沈積がやや認められる
×…スラッジの沈積が認められる
上記試験結果を表2に示す。
さらに、スラッジの分散性についても、実施例17及び18の潤滑剤組成物が、比較例6及び7の潤滑剤組成物に比べいずれも優れていることが理解できる。
(抗酸化性試験の方法)
100ニュートラルの鉱物油90重量部に、DP−15及びDP−35を各々10重量部均一に溶解させて潤滑剤組成物をそれぞれ調製した。CP−1及びCP−2を用いて、同一の方法で潤滑剤組成物をそれぞれ調製した。
調製した潤滑剤組成物について、JIS−K2514に従い、165.5℃で98時間抗酸化性試験を行ない、B法によるスラッジ発生量をそれぞれ測定した。ここでB法とは、試験後の潤滑油にスラッジ凝集剤を加え遠心分離し沈降するスラッジ量を測定したものであり、B法によるスラッジ量が抗酸化性を示す。
抗乳化性試験用試料容器(JISK2839)にカーボンブラック0.3gを入れ、60ニュートラルの鉱物油に実施例1で合成したDMP−15及びDMP−35、並びに比較例6及び7の添加剤(CP−1)及び(CP−2)を各々3重量%添加した溶液を加え、全液量80mlになるようにそれぞれ調製した。抗乳化性試験器(JISK2520)で30℃、1500rpmで5分間攪拌後、75mlを100mlの遠心沈降管に取り2000rpmで20分間遠心分離した後、上澄みを60ニュートラルの鉱物油で1/60に希釈し750nmの波長の吸光度を測定した。吸光度が大きい程、分散性が良好であることを示し、酸化により発生するスラッジ量が少なく、且つ清浄分散性と相関する。結果を表3に示す。
DMP−15及びDMP−35を各々8.3%、これにエンジン油用パッケージ(SH規格油用)11%、通常の100ニュートラル鉱物油を各々80.7%配合し、エンジン油に必要な100℃粘度を10.0〜10.4cStに合わせてそれぞれ潤滑剤組成物を調製した。比較例として前記粘度指数向上剤CP−1を各々4.3%、モリブデンジチオカーバメート系FM剤(モリバンA、バンダービルト社製)を1%添加したものと、添加しないものをそれぞれ調製し、これにエンジン油用パッケージ(SH規格油用)11%、通常の100ニュートラル鉱物油を配合し、各々エンジン油に必要な100℃粘度を10.0〜10.4cStに合わせて潤滑剤組成物をそれぞれ調製した。これらのサンプルをSRV社の摩擦摩耗試験機で、温度80℃、荷重50ニュートン、周波数50Hzの条件で摩擦係数を測定し、表4の結果を得た。
エチレン・プロピレン共重合体からなるOCP系粘度指数向上剤(三井石油化学工業製、オルフュースM−1210)をCP−3として用いた。
円盤状ポリマーDMP−15及びDMP−35、粘度指数向上剤CP−3をそれぞれ5%、及びCDグレードディーゼルエンジンオイル用DIパッケージ5%を、溶剤精製油A(粘度指数100の150ニュートラル油)及び溶剤精製油B(粘度指数100の200ニュートラル油)に加え、下表5に示す実施例23、実施例24及び比較例12に相当するエンジン油(潤滑剤組成物)を調製した。その際、100℃動粘度を10.0〜10.4cStにして、且つ−20℃のCCS粘度を3000cPになるよう溶剤精製油AとBの配合量を調整した。これらのエンジン油を以下の方法でパネルコーキング試験及び酸化安定試験を実施した。その結果を表5に示した。また、省燃費性に関係するTBS粘度(150℃、せん断速度106/秒)及び粘度指数を表5に示した。
上記三種類のエンジン油をパネルコーキング試験法Fed−791Bに従い、パネル温度300℃、エンジン油温度100℃で4時間パネルコーキング試験を実施した。試験後、パネルをペンタンで洗浄後、コーキング量を重量法で測定した。
上記三種類のエンジン油をJIS−K2514に従い、165.5℃で96時間酸化安定性試験を実施した。試験前後でのエンジン油の全酸価の増加量を測定した。
[実施例25〜42及び比較例13〜16:基油への微粒子分散化された円盤状ポリマーの低摩擦と耐摩耗機能]
実施例1で得られた円盤状ポリマーについて、その5質量部と潤滑油基油スーパーオイルN−32(新日鐵化学製)95質量部を400倍で拡大した顕微鏡下(メトラー社製顕微加熱装置FP−80HTホットステージ及びニコン社製OPTIPHOT−POL)で100℃に加熱した際、40℃でも100℃でも微細固体の分散状態にほとんど変化の見られなかった基油に難溶性の化合物(DMP−8,39以外に、DMP−6,7,12,19,22,24,27,28,29,38,41,45,47,48,53,57)について、いずれかの5質量部とN−32の95質量部を混合した潤滑剤組成物を調製した。これに、0.5質量部のブロックコポリマーを添加し、超音波ホモジナイザーで平均粒径0.5ミクロンの微細分散状態で円盤状ポリマーが安定化された潤滑剤組成物を調製した。
オプチモール社製往復摺動摩擦摩耗試験機(SRV)を用い、シリンダー・オン・ディスク法により、周波数50Hz,振幅1.5mm幅、荷重400Nの条件でその摩擦係数を測定した。シリンダーは15mmΦ、長さ22mm、ディスクは25mmΦ、厚さ6.9mm、表面粗さは、0.45〜65ミクロンで、材質はいずれもSUJ−2鋼である。
ディスク上に前記の潤滑剤組成物120mgをのせ、シリンダーに荷重をかけ、上記条件での往復摺動下、40℃から110℃の摩擦係数を測定した。
比較として、N−32基油、N−32基油+BCP−1、N−32基油+CP−1+BCP−1について上記の同条件で摩擦係数を測定した。
分散剤ポリマーとして、
BCP−1:ポリ(ラウリル メタアクリレート−b−ヘキサエチレンオキシエチル−メタアクリレート)、
BCP−2:ポリ(ラウリル メタアクリレート−b−ヘキサ(パーフルオロエチレンオキシ)エチル−メタアクリレート)、
BCP−3:ポリ(ラウリル メタアクリレート−b−メタアクリル酸)、ポリ(3−ヘキシルデシル
BCP−4:メタアクリレート−b−3−ウレイドプロピル−メタアクリレート)
を用いた。
その結果を表6に示す。
○ ・・・・・ 摺動痕が見えない
△ ・・・・・ 摺動した痕は見えるが摩耗していない
× ・・・・・ 摺動痕と磨耗痕が明瞭に見える
結果を表6に合わせて示す。
また、表6に示す結果から、微粒子分散された円盤状ポリマーを含有する本発明の潤滑剤組成物は相対的に高い耐摩耗性を示すことが理解できる。すなわち、微粒子分散された円盤状ポリマーの潤滑剤組成物は好ましい低摩擦性と耐摩耗性を示す良好な潤滑油となりうる。
なお、基油に対して溶解する円盤状ポリマーDMP−3及び36を用いて同様に試験したところ、70〜100℃の平均摩擦係数は0.1前後であった。
[水系微分散及び乳化分散技術]
[実施例43〜46及び比較例18:水への微粒子分散化された円盤状ポリマーの低摩擦と耐摩耗機能の評価]
円盤状ポリマーDMP−14,37,55について、そのいずれかの5質量部とN−32の95質量部を混合した潤滑剤組成物を調製した。これに、0.5質量部のブロックコポリマーを添加し、超音波ホモジナイザーで平均粒径0.5ミクロンの微細分散状態で円盤状ポリマーが安定化された潤滑剤組成物を調製した。
オプチモール社製往復摺動摩擦摩耗試験機(SRV)を用い、シリンダー・オン・ディスク法により、周波数50Hz,振幅1.5mm幅、荷重400Nの条件でその摩擦係数を測定した。シリンダーは15mmΦ、長さ22mm、ディスクは25mmΦ、厚さ6.9mm、表面粗さは、0.9ミクロンで、材質はいずれもアルミナである。
ディスク上に前記の潤滑剤組成物120mgをのせ、シリンダーに荷重をかけ、上記条件での往復摺動下、40℃から110℃の摩擦係数を測定した。
分散剤ポリマーとして、
BCP−3:ポリ(ラウリル メタアクリレート−b−メタアクリル酸)、
を用いた。
また、乳化分散用の界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)を用いた。
その結果を表7に示す。
○ ・・・・・ 摺動痕が見えない
△ ・・・・・ 摺動した痕は見えるが摩耗していない
× ・・・・・ 摺動痕と磨耗痕が明瞭に見える
その結果を、表7に合わせて示す。
また、表7に示す結果から、微粒子分散された円盤状ポリマーを含有する潤滑剤組成物は相対的に高い耐摩耗性を示すことが理解できる。すなわち、水中に微粒子分散された円盤状ポリマーを含有する潤滑剤組成物は、セラミック上でも鋼鉄上と変わらない好ましい低摩擦性と耐摩耗性を示す良好な潤滑組成物となりうるので、人工骨の潤滑液など幅広い分野への応用が期待される。
[実施例47:円盤状ポリマーDMP−32の基油中の分散重合による微粒子分散化された潤滑剤組成物の調製]
下記に示す通り、DMP−39を、DMP−39のモノマーと、3,6−ジオキシオクタン−1,8−ジオールの縮合反応を基油N−32中で行うことにより得た。より具体的には、新日鐵化学製スーパーオイルN−32 100g中に4.94gのDMP−39モノマーと、0.68gの3,6−ジオキシオクタン−1,8−ジオールと、0.5gのテトラブトキシチタンと、0.1gのポリ(ヘキサデシル メタアクリレート−b−メタアクリル酸)を溶解分散させ、生成するメタノールを減圧下除去しながら60℃で14時間加熱し、DMP−39を分散粒子として得た。DMP−39の平均粒径は0.46μmであった。
より具体的には、新日鐵化学製スーパーオイルN−32 100g中に4.94gのDMP−7モノマーと、0.68gの3,6−ジオキシオクタン−1,8−ジオールと、0.1gのポリ(ヘキサデシル メタアクリレート−b−メタアクリル酸)とを溶解分散させ、乾燥窒素をバブリングしながら生成する塩酸を減圧下除去しながら40℃で10時間加熱した。これを3%重曹水100gと純水100gで洗い、DMP−7を分散粒子として得た。DMP−7の平均粒径は0.23ミクロンであった。
オプチモール社製往復摺動摩擦摩耗試験機(SRV)を用い、シリンダー・オン・ディスク法により、周波数50Hz,振幅1.5mm幅、荷重400Nの条件でその摩擦係数を測定した。シリンダーは15mmΦ、長さ22mm、ディスクは25mmΦ、厚さ6.9mm、表面粗さは、0.45〜0.65ミクロンで、材質はいずれもSUJ−2鋼である。
ディスク上に前記の潤滑剤組成物120mgをのせ、シリンダーに荷重をかけ、上記条件での往復摺動下、40℃から110℃の摩擦係数を測定した。
その結果を表8に示す。
○ ・・・・・ 摺動痕が見えない
△ ・・・・・ 摺動した痕は見えるが摩耗していない
× ・・・・・ 摺動痕と磨耗痕が明瞭に見える
その結果を表8に合わせて示す。
また、表8に示す結果から、微粒子分散された円盤状ポリマーを含む潤滑剤組成物に、良好な耐摩耗性が認められる。
[基体と表面粗さの影響]
[実施例51〜68:基体に薄膜塗布された円盤状ポリマーの低摩擦機能の評価]
オプチモール社製往復摺動摩擦摩耗試験機(SRV)を用い、シリンダー・オン・ディスク法により、周波数50Hz,振幅1.5mm幅、荷重400Nの条件でその摩擦係数を測定した。シリンダーは15mmΦ、長さ22mm、ディスクは25mmΦ、厚さ6.9mm、基体の材質を表9に示す。
ディスク上に円盤状ポリマー 3.0mgをのせ、ジクロロメタンに溶解してディスク上に均一にのばし、約6ミクロンの薄膜を得た。シリンダーに荷重をかけ、上記条件での往復摺動下、40℃から110℃の摩擦係数を測定した。
その結果を表9に示す。
[実施例69及び比較例19:円盤状ポリマー粉末の結合剤への分散]
窒素気流下、コップ状のガラス容器に、ε−カプロラクタム 20.0gを150℃で融解させ、攪拌している融液に、予めε−カプロラクタム 10.0gとDMP−54 2.0gとを、ボールミルで微細粉末とした混合物を添加し、さらにトリレンジイトシアネート 0.51mLと添加した。一方、別途ε−カプロラクタム 20.0gを70℃で融解させ、これにNaH 0.10gを添加し攪拌した融液を、前記DMP−54の入った融液に添加、混合した。2分後攪拌を止め、そのまま、150℃で5分間放置後、室温まで冷却し、DMP−54の微粉末が分散された円柱状の6,6−ナイロン樹脂を得た。
比較例19として、DMP−54を入れないこと以外はすべて同様の操作を行い、円柱状の6,6−ナイロン樹脂を得た。
各々の試料から70mm×50mm×3mmの平板を切削により成形した。
それらの摺動特性をみるために、往復摺動摩擦摩耗試験機(東測精密製AFT−15MS型、荷重2kg、線速度30mm/sec、往復距離20mm、23℃、往復動30000回)で測定した。
摩耗性については、30000回後の最大摩耗深さを表面粗さ計(東京精密サーフコム570−A−3D)で測定した。
その結果を表10に示す。
[実施例70:円盤状ポリマーの錯形成化合物の潤滑能]
下記表に示す円盤状ポリマーDMP−35のメソゲンに対して0.5当モル量の一般式(4)で表される錯形成性化合物、又は比較化合物(XA−1)を下記表に示す組み合わせで、ジクロロメタン中で混合し、濃縮後、120℃で30分加熱し、空冷後24時間放置した。それらの試料 3.0mgをディスク上にのせ、ジクロロメタンに溶解してディスク上に均一にのばし、約6ミクロンの薄膜を得た。シリンダーに荷重をかけ、実施例51と同条件での往復摺動下、40℃から110℃の摩擦係数を測定した。40℃での摩擦係数と摺動痕の有無についての結果を表11に示す。
次に実施例2と同様の条件で、粘度指数を評価した。その結果を表11に示す。
Claims (11)
- メソゲン構造を主鎖に含む重合体を含有する潤滑剤組成物であって、前記重合体が、下記一般式(2)−a、(2)−b、(3)−a、(3)−b、(5)、(6)、(7)又は(8)で表される繰り返し単位を有する重合体である潤滑剤組成物:
- 前記重合体が、前記一般式(2)−a又は(2)−bで表される繰り返し単位を有する重合体である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
- 前記重合体が、前一般式(3)−a又は(3)−bで表される繰り返し単位を有する重合体である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
- 前記重合体の重量平均分子量が、5,000〜200,000である請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
- 前記重合体が、エステル結合で縮合された繰り返し単位を有するポリエステルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
- 前記重合体を、全質量中0.1〜30質量%含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
- さらに潤滑油を含有し、該潤滑油を全質量中70〜99.9質量%含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
- 前記重合体を、平均粒径10ナノメートル〜10ミクロンの分散粒子として含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
- 前記重合体とは異なる重合体の少なくとも一種をさらに含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物からなる粘度指数向上剤。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物からなる摩擦調整剤。
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