JP2006328127A - 潤滑剤組成物 - Google Patents

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憲 河田
Masayuki Negoro
雅之 根来
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Abstract

【課題】 弾性流体潤滑条件下での相対的な低粘性と、通常の流体潤滑条件下での低粘性とを両立し、なおかつ耐摩耗性に優れる潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】 分子の中心部分に剛直な構造と、そこから180度未満の固定された角度で伸びる二本の側鎖構造とを有するブーメラン構造の有機化合物の少なくとも一種を含有し、40℃における粘度圧力係数が20GPa-1以下である潤滑剤組成物である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、摩擦摺動する機械要素に用いられる潤滑剤組成物に関し、特に流体潤滑から弾性流体潤滑までの広い潤滑条件下での低トラクション性発現に優れる潤滑剤組成物に関する。
機械・装置類の相対運動を行う固体面間に介在させ、摩擦を低減したり表面損傷を防止ないしは軽減する目的で用いる物質を潤滑剤と呼ぶが、その中で最も広範囲に使用されているものが潤滑油である。潤滑油は、一般には石油の留分として得られる炭化水素を基油として、目的に応じて様々な添加剤を配合したものである。用途によって大幅に異なるが、典型的な基油の平均分子量は350程度といわれ、ディスプレーに用いられる液晶の平均分子量とあまり違わない。そこで液晶の潤滑油に用いる可能性が検討されてきたが、最近では非特許文献1のように、外部場による特性の変化を利用した摩擦の制御が注目されている。
しかし、これらの液晶はすべて棒状液晶であり、その対極にある円盤状液晶は一般的に粘性が高いか結晶であり、潤滑油として用いられる程度の低粘性化合物の入手は容易ではない。
研究報告例としては、R.Eidenschinkが、非特許文献2において、67℃〜293℃まで液晶相を呈するアルコキシトルキセンについて検討し、棒状液晶よりさらに大きな摩擦係数しか得られなかったと報告している。
また、Lauer等は、非特許文献3において、80℃〜120℃まで液晶相を呈するアルコキシトリフェニレンについて高圧剪断下でのIRスペクトルを測定し、この円盤状液晶が棒状液晶とは異なり、その液晶温度域での配向の可能性を示唆したが、摩擦係数の大小には言及していない。
また、R.Eidenschink等は、非特許文献4において、−10℃以下で液晶相を呈するアルキルチオベンゼンについて60℃〜120℃での摩擦係数を評価し、アルキル鎖の分岐の有無によって経時でその差異があるが、一時間前後では鉱油との大きな摩擦係数の差異は見られていないと報告している。
すなわち、これらの非特許文献は、円盤状液晶が潤滑剤としてより良好な摩擦係数を示すという報告ではない。
一方、円盤状液晶が好ましい潤滑性を与えることを開示している特許文献としては、特許文献1〜4が挙げられるが、特許文献1及び2では、標準的な評価系での摩擦係数が開示されていない。
特許文献3の実施例では、その摩擦係数が最低でも0.07であり、ステアリン酸などの一般的油性剤である長鎖アルキルカルボン酸での値と同等以上であり、特に好ましいとはいえない。
本発明者らは、放射状に長鎖アルキル基を複数有するトリアジン化合物が低い摩擦係数を示すことを特許文献4で開示しているが、これらはすべて円盤状の中心骨格を有する化合物であった。
また棒状液晶化合物では、高圧、高温域まで低摩擦係数を示す例はほとんど報告されていない。
トライボロジスト 41巻6号 506ページ(1996). LIQUID CRYSTALS,1989,Vol.5,pp1517 ACS Symp.Ser.(1990)441(Tribol.Liq−Cryst.State),61−82. Mol.Cryst.Liq.Cryst.,1999,Vol.330.pp327−334. 特公平2−21436号公報 特表平2−503326号公報 特開平10−279973号公報 特開2002−69472号公報
本発明は、弾性流体潤滑条件下での相対的な低粘性と、通常の流体潤滑条件下での低粘性とを両立し、なおかつ耐摩耗性に優れる潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 分子の中心部分に剛直な構造と、そこから180度未満の固定された角度で伸びる二本の側鎖構造とを有するブーメラン構造の有機化合物の少なくとも一種を含有し、40℃における粘度圧力係数が20GPa-1以下である潤滑剤組成物。
[2] 前記側鎖構造が、炭素、酸素、硫黄、窒素及び珪素からなる群から選ばれる原子を8個以上含む原子団からなる直鎖又は分岐鎖構造の基である[1]の潤滑剤組成物。
[3] 10MPa以上の圧力下の剪断場において最小のトラクション係数を発現する[1]又は[2]の潤滑剤組成物。
[4] 前記剛直な構造と前記二本の側鎖構造との間にカルボエステル基が介在する[1]〜[3]のいずれかの潤滑剤組成物。
本発明によれば、流体潤滑から弾性流体潤滑まで、幅広い潤滑条件に対応できる潤滑剤組成物を提供できる。本発明に用いる有機化合物は、合成が容易であり、安価に得られるという利点もある。また、従来、極圧下での摩擦低減のために必要であった、リン、ハロゲンや亜鉛、モリブデンなどの重金属など、環境的に好ましくない元素を全く使用しない分子設計が可能である。
発明の実施の形態
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明は、分子の中心部分に剛直な構造と、そこから180度未満の固定された角度で伸びる二本の側鎖構造とを有するブーメラン構造の有機化合物の少なくとも一種を含有する潤滑剤組成物に関する。なお、本発明において「有機化合物」の用語は、有機化合物を配位子とする金属錯体を含む意味で用いるものとする。ブーメラン構造分子の中心部分に位置する剛直な構造は、極性元素を含むπ共役系の骨格であるのが好ましい。但し、本発明では1,3,5−位三置換−2,4,6−トリアジン類は含まれない。具体的には、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、ヘキサエチニルベンゼン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、コロネン誘導体およびフェニルアセチレンマクロサイクルの誘導体が挙げられる。さらに、日本化学会編、"化学総説No.15 新しい芳香族の化学"(1977年東京大学出版会刊)に記載の環状化合物およびそれらの複素原子置換等電子構造体を挙げることができる。
また、ブーメラン構造を形成する分子は、元々、一分子である必要はなく、例えば、前記有機化合物が金属錯体である場合等、配位子である1種又は2種以上の分子と金属とが配位結合して複数の分子の集合体を形成してブーメラン構造を形成するものであってもよい。その他、水素結合等により複数の分子が集合してブーメラン構造を形成するものであってもよい。例えば、金属錯体では、配位中心が分子の中心の母核となり、配位子の置換基である直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖構造となって、ブーメラン構造の分子が形成される。
側鎖としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基が挙げられ、側鎖中にアリール基、複素環基を含んでいても良い。また、C.Hansch、A.Leo、R.W.Taft著、ケミカルレビュー誌(Chem.Rev.)1991年、91巻、165−195ページ(アメリカ化学会)に記載されている置換基で置換されていてもよく、代表例としてアルコキシ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子が挙げられる。
更に側鎖中に、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基のような官能基を有していても良い。以下、側鎖について詳細に説明する。
側鎖部分としては、例えばアルカノイルオキシ基(炭素数2〜40、好ましくは4〜30のアルカノイルオキシ基で、例えば、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ノナノイルオキシ、デカノイルオキシ、ウンデカノイルオキシ)、アルキルスルホニル基(炭素数1〜40、好ましくは4〜30のアルキルスルホニル基で、例えば、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、ノニルスルホニル、デシルスルホニル、ウンデシルスルホニル)、アルキルチオ基(炭素数1〜40、好ましくは4〜30のアルキルチオ基で、例えば、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、ドデシルチオ)、アルコキシ基(炭素数1〜40、好ましくは3〜30のアルコキシ基で、例えば、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ)、2−(4−アルキルフェニル)エチニル基(例えば、アルキル基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル)、末端ビニルオキシ基(炭素数3〜40、好ましくは4〜30の、末端ビニルオキシ基で、例えば、7−ビニルヘプチルオキシ、8−ビニルオクチルオキシ、9−ビニルノニルオキシ)、4−アルコキシフェニル基(炭素数7〜40、好ましくは8〜30の4−アルコキシフェニル基で、例えば、アルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシフェニル基)、アルコキシメチル基(炭素数2〜40、好ましくは3〜30のアルコキシメチル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有するアルコキシメチル基)、アルキルチオメチル基(炭素数2〜40、好ましくは3〜30のアルコキシチオメチル基で、例えばアルキルチオ基として、前述のアルキルチオ基で挙げたものを有するアルコキシチオメチル基)、2−アルキルチオエチル(炭素数3〜40、好ましくは4〜30の2−アルキルチオエチル基で、例えばアルキルチオ基として、前述のアルキルチオ基で挙げたものを有する2−アルキルチオエチル基)、2−アルキルチオエトキシメチル(炭素数4〜40、好ましくは5〜30の2−アルキルチオエトキシメチル基で、例えばアルキルチオ基として、前述のアルキルチオ基で挙げたものを有する2−アルキルチオエトキシメチル基)、2−アルコキシエトキシメチル基(炭素数4〜40、好ましくは5〜30の2−アルコキシエトキシメチル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する2−アルコキシエトキシメチル基)、2−アルコキシカルボニルエチル基(炭素数4〜40、好ましくは5〜30の2−アルコキシカルボニルエチル基、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する2−アルコキシカルボニルエチル基)、コレステリルオキシカルボニル基、β−シトステリルオキシカルボニル基、4−アルコキシフェノキシカルボニル基(炭素数8〜40、好ましくは9〜30の4−アルコキシフェノキシカルボニル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシフェノキシカルボニル基)、4−アルコキシベンゾイルオキシ基(炭素数7〜40、好ましくは8〜30の4−アルコキシベンゾイルオキシ基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシベンゾイルオキシ基)、4−アルキルベンゾイルオキシ基(炭素数8〜40、好ましくは9〜30の4−アルキルベンゾイルオキシ基で、例えばアルキル基として、前述のアルキル基で挙げたものを有する4−アルキルベンゾイルオキシ基)、4−アルコキシベンゾイル基(炭素数8〜40、好ましくは9〜30の4−アルコキシベンゾイル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシベンゾイル基)、また、シリル基や有機シロキサン基が挙げられる。
また、前述のもののうち、フェニル基は他のアリール基(例えば、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセン基)でもよいし、また前述の置換基に加えて更に置換されてもよい。また、該フェニル基は複素芳香環(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアリル基、オキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基)であってもよい。
前記剛直構造から伸びている二本の側鎖間の角度は60゜〜150゜が好ましく、90゜〜150゜であるのがさらに好ましい。
なお、側鎖は二本に限らず、三本以上有していてもよいが、ブーメラン構造を形成するためには、主要な側鎖、即ち長い側鎖は二本である必要がある。主要な二本の側鎖は、炭素、酸素、硫黄、窒素及び珪素からなる群から選ばれる原子を8個以上含む原子団からなる直鎖又は分岐鎖構造の基であるのが好ましく、側鎖中の炭素、酸素、硫黄、窒素及び珪素からなる群から選ばれる原子数は2〜50であるのが好ましく、5〜40であるのがより好ましく、8〜30であるのがさらに好ましい。
分子の中心に位置する剛直な構造と、前記二本の側鎖構造とは、種々の連結基を介して結合することができる。連結基としては、−O−、−S−、−N(R)−、−CO−、−SO2−、−[C(Ra)(Rb)]k−、およびこれら組み合わせて形成できる基が挙げられる。ここで、R、RaおよびRbは、それぞれ水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは1〜6の整数を表す。連結基として、カルボエステル基(*−C(=O)O−**及び*−O−C(=O)−**のいずれかを含むことが好ましい。但し、*が剛直構造と結合する部位、**が側鎖構造と結合する部位である)を介して双方が連結していると、合成が容易である等の利点があるので、好ましい。
以下に好ましい化合物例を挙げるが、これらに限定されない。
Figure 2006328127
Figure 2006328127
Figure 2006328127
Figure 2006328127
一般的に、流体潤滑作用では、すきまが小さくなるほど発生する圧力が大きくなるので、転がり軸受け、歯車、カムのように点接触や線接触といった集中接触の場合には発生圧力が数百MPaからGPaのオーダーになる。そのため、界面自体の弾性変形に加えて潤滑液体の粘度も圧力に対して指数関数的に大きくなる。その際の圧力と潤滑液体の粘度の関係は以下のBarusの式
η=η0 exp(αP) (1)
によって表され、両辺の対数をとると、
logη=logη0 + loge × αP (2)
と表され、ηの対数と圧力Pは傾きαの直線の関係にある。その粘度の圧力依存性の尺度αが粘度圧力係数である。
本発明の前記潤滑剤組成物は、40℃における粘度圧力係数が20GPa-1以下である。その40℃における粘度圧力係数が18GPa-1以下であることが好ましく、15GPa-1以下であることがより好ましい。ここで、粘度圧力係数はトライボロジスト 第38巻 第10号 pp927 (1993)に記載される方法によって、算出することができる。
但し、40℃で固体の化合物の場合は、測定条件で液体を呈する2以上の温度で粘度圧力係数を求め、それらの値を低温側に外挿して求めた40℃の値と定義する。
放射状に側鎖を複数本有する円盤状化合物は、たとえ自己組織的に集合構造をとっても、その側鎖の自由体積は確保されるため、大きな自由体積をもった化合物すなわち、高圧下では相対的に低粘性化合物であり、弾性流体潤滑条件下で低摩擦係数を示すことが予測される。実際に本発明者らは、常温、常圧で一般的潤滑油基油に比較してかなり粘性の大きな円盤状液晶がいずれも弾性流体潤滑下で極めて低い摩擦係数を示すことを確認し、さらに、Liquid Crystals,1997,Vol.22,No.4,427.に記載の公知の方法に準じて、トリアジン系の円盤状化合物の粘度圧力係数をもとめ、ほぼ油脂化合物に匹敵するほどの小さい値を呈することを確認した。したがって、放射状に側鎖を有する円盤状構造組織体の薄膜が、弾性流体潤滑下すなわち高圧、高剪断下、その化学構造に由来する大きな自由体積に起因する妥当な低摩擦係数を発現することがわかった。しかし、常圧に近い流体潤滑条件ではそのトラクション係数は、ほぼ直接的に標準状態での粘性係数に依存する。粘性係数はそれを構成する化合物の拡散断面積に依存することが知られており、その点で円盤状化合物は分子の直径すなわち中心核の直径と側鎖2本分の長さとさらにその厚みに相当する面積に依存するために、相対的に常圧粘度が大きい傾向がある。一方、本願発明では、非直線状に固定されて側鎖が伸びたブーメラン状の構造の化合物を用いている。該構造の分子では、その側鎖の自由体積は高圧力がかかった状態でも確保されるため、粘度圧力係数は相対的に小さく、また同時にその拡散断面積は、円盤状化合物に比較し、角度を持って伸びた分だけ相対的に短くなる上に側鎖が受ける分子間力も少ないために、相対的に常圧粘度が比較的小さいことが分かった。
本発明の組成物は、50MPa以上の圧力下の剪断場において最小のトラクション係数を発現することが好ましく、100MPa以上の圧力下の剪断場において最小のトラクション係数を発現することが特に好ましい。
ここで、トラクション係数とは、転がりにすべりが入るときに生じる接線力を法線力(垂直荷重)で割った無次元量、すなわち、滑り摩擦係数のことである。「トライボロジー」山本・兼田共著 理工学社発行(1998)p.129.図5.18に記載されているように、トラクション係数は滑り率が小さいときには、それに比例して増加し、その後一定値になり、さらに滑り率が増加すると摩擦熱の影響で徐々に減少傾向を示すことが分かっている。したがって、トラクション係数を比較するには、温度を一定にし、最大トラクション係数が得られる比較的大きな滑り率の領域で比較すべきである。
本発明の潤滑剤組成物は、種々の用途に適応した実用性能を確保するため、さらに必要に応じて、潤滑剤、たとえば軸受油、ギヤ油、動力伝達油などに用いられている各種添加剤、すなわち摩耗防止剤、極圧剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤等を本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。また、本発明の潤滑剤組成物は、前記有機化合物の媒質を含有していてもよい。媒質は、自発的に形成される自己組織体の形成を阻害しない限り、あらゆる素材から選択することができる。例えば、従来、潤滑剤の基油として用いられる、一般的な鉱油及び合成油から選択される一種又は二種以上を用いることができる。但し、他の成分を含有する場合も、1種又は2種以上の前記有機化合物が、全組成物中50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以上であるのがより好ましい。
本発明の潤滑剤組成物は、種々の摩擦摺動部に用いることができる。特に、本発明の潤滑剤組成物は、弾性流体潤滑条件下での相対的な低粘性と、通常の流体潤滑条件下での低粘性とを両立しうるので、その用途は広く、ピストン、軸受け、カム、ギヤ、トランスミッションや生体系の骨のジョイントなど種々の摩擦摺動部に用いることができる。本発明の潤滑剤組成物は、例えば、異なる周速で運動する二面の間に配置してもよい。異なる周速で運動する二面は、曲面であっても、平面であってもよいし、また面の全部または一部に凹凸部を有していてもよい。例えば、すべり軸受けや、転がり軸受けの摩擦摺動部分などが挙げられる。本発明の機械要素は、さらに、伝動要素として、歯車、カム、ねじ、トラクションドライブを備えていてもよい。また、前記潤滑剤組成物を密封するための密封要素として、オイルシール、メカニカルシール、ピストンリングなどの接触式シールを備えていてもよい。
運動する二面の材質としては、機械構造用炭素鋼、ニッケルクロム鋼材・ニッケルクロムモリブデン鋼材・クロム鋼材・クロムモリブデン鋼材・アルミニウムクロムモリブデン鋼材などの構造機械用合金鋼、ステンレス鋼、マルチエージング鋼、炭化珪素・窒化珪素・アルミナ・ジルコニアなどのセラミックス、鋳鉄、銅・銅−鉛・アルミニウム合金とその鋳物、ホワイトメタル、高密度ポリエチレン(HDPE)・四フッ化エチレン樹脂(PFPE)・ポリアセタール(POM)・ポリフェニレンサルファイド(PPS)・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・ポリアミドイミド(PAI)・ポリイミド(PI)などの各種プラスチック、プラスチックにガラス・カーボン・アラミドなどの繊維を複合化した有機−無機複合材料、セラミックと金属の複合材料サーメットなどが挙げられる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の潤滑剤組成物の評価は、下記の方法で行った。
1.往復動型(SRV)摩擦摩耗試験による評価及び測定法
摩擦係数及び耐摩耗性は、往復動型(SRV)摩擦摩耗試験機を用いて評価し、以下に示す試験条件で摩擦摩耗試験を行った。
試験条件
・試験片(摩擦材):SUJ−2
・表面粗さ :0.45〜0.65μm
・プレート :24mm径×7mm
・シリンダー :15mm径×22mm
・温度 :0〜150℃
・荷重 100N(149MPa)
・振幅 :1.5mm
・振動数 :50Hz
・予備摺動時間 :2分間
[実施例1]
ブーメラン構造化合物として以下に示す構造のLUB−1を用い、単独で潤滑剤とし、往復動型(SRV)摩擦摩耗試験による評価を実施した。この結果を図1に示す。
Figure 2006328127
LUB−1は常圧で非液晶性の化合物であるが、加圧条件では若干高めの温度域で液晶相を呈することが期待される。
100N(149MPa)の高荷重(高圧力)で評価した結果を、図1中、実線で示す。例示化合物LUB−1は非液晶性化合物であり、高圧力下で100℃付近から低温域で、低トラクション係数を示す傾向が明瞭に見られ、配向性の寄与が示唆される。0.04〜0.03という低いトラクション係数を示していることがグラフからわかる。
[比較例1]
比較例用の円盤状構造化合物として下記構造のLUB−Aを用い、単独で潤滑剤とし、往復動型(SRV)摩擦摩耗試験による評価を実施した。
Figure 2006328127
LUB−1は常圧で液晶性の化合物であるが、加圧条件では若干高めの温度域で液晶相を呈することが期待される。
100N(149MPa)の高荷重(高圧力)で評価した結果を、図1中、点線で示す。比較化合物LUB−Aも高圧力下で100℃付近から低温域で、低トラクション係数を示す傾向が明瞭に見られ、配向性の寄与が示唆される。LUB−1と同様に0.04〜0.03という低いトラクション係数を示していることがグラフから理解できる。
また、上記の摺動試験を40分間行ったが、LUB−1と同様にLUB−Aの試験片には摩耗痕は見られなかった。
2.ブーメラン構造化合物の粘性評価
[実施例2]
粘弾性測定装置を用いて、LUB−1の絶対粘度の温度依存性を下記の条件で測定した。その結果を図2中に実線で示す。
<試験条件>
回転粘度計 :Haake Rheostress600
ジオメトリー :コーン&プレート
回転数 :300rpm
測定温度範囲 :140℃〜20℃
[比較例2]
実施例2と同様に、粘弾性測定装置を用いて、LUB−Aの絶対粘度の温度依存性を同様の条件で測定した。その結果を図2中に点線で示す。
ブーメラン化合物LUB−1と円盤状化合物LUB−Aとを比較すると、構成要素の点では後者の方が側鎖の柔らかい部分が占める割合が大きく、相対的に低粘性であるようにも考えられるが、図2のグラフから理解できるように、実際には、ブーメラン化合物LUB−1は、常圧において円盤状化合物LUB−Aより低粘性であることが分かる。一方、極圧高剪断条件ではどちらも同じように低いトラクション係数を与えている。しかも、摩耗痕がほとんどみられない状況からどちらも弾性流体潤滑条件で摺動が行われたと考えられる。したがって、そのような状態で同じトラクション係数を示すということは、同じ高圧粘度を示していると理解できる。したがって、ブーメラン化合物LUB−1は、高圧条件のみならず常圧でも円盤状化合物LUB−Aより低粘性であり、LUB−1が弾性流体潤滑条件のみならず流体潤滑条件でも低トラクション係数を与える好ましい化合物であることが理解できる。
ピストン、軸受け、カム、ギヤ、トランスミッションや生体系の骨のジョイントなど流体潤滑及び弾性流体潤滑下に摩擦摺動する際に低トラクション性能が得られる機械要素に利用可能な潤滑剤組成物である。
LUB−1及びLUB−Aの摩擦係数の温度依存性を示すグラフである。 LUB−1及びLUB−Aの粘度の温度依存性を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 分子の中心部分に剛直な構造と、そこから180度未満の固定された角度で伸びる二本の側鎖構造とを有するブーメラン構造の有機化合物の少なくとも一種を含有し、40℃における粘度圧力係数が20GPa-1以下である潤滑剤組成物。
  2. 前記側鎖構造が、炭素、酸素、硫黄、窒素及び珪素からなる群から選ばれる原子を8個以上含む原子団からなる直鎖又は分岐鎖構造の基である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
  3. 10MPa以上の圧力下の剪断場において最小のトラクション係数を発現する請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
  4. 前記剛直な構造と前記二本の側鎖構造との間にカルボエステル基が介在する請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
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