ところで、前記サイプの深さを深く設定すると、前記ショルダーリブの剛性が低下して、前記タイヤ周方向へ変形し易くなる。そのため、前記空気入りタイヤの転動中に、前記ショルダーリブおいてヒールアンドトウ摩耗が生じ易くなって、耐偏摩耗性能が低下することになる。
一方、前記サイプの深さを浅く設定すると、トレッド摩耗初期においては、ウエット性能が高くても、トレッド摩耗中期以降において、前記サイプが消滅することによって、ウエット性能が急激に低下することになる。
つまり、前記ショルダーリブのヒールアンドトウ摩耗を抑えて耐偏摩耗性能を高めつつ、トレッド摩耗末期までウエット性能を十分に維持することは極めて困難であるという問題がある。
そこで、本発明は、前述の問題点を解決することができる、ショルダーリブのタイヤ周方向の変形を抑制することができる、新規な構成の空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の第1の特徴(請求項1に記載の発明の特徴)は、トレッドに設けられ、タイヤ周方向へそれぞれ延びた複数の周方向主溝と、トレッド端縁と最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝によって区画され、前記タイヤ周方向へ延びたショルダーリブと、を具備してあって、前記ショルダーリブは、前記タイヤ周方向へ沿って間隔を置いて設けられ、一端がトレッド端縁側にそれぞれ開口されると共に他端が最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝にそれぞれ連通され、前記タイヤ周方向の一方側へ突出した凸部と前記タイヤ周方向の他方側へ窪んだ凹部と連続して有するようにZ字状又はS字状にそれぞれ構成された複数のサイプによって複数の分割ショルダーリブに前記タイヤ周方向に沿って分割されていることである。
なお、「一端がトレッド端縁側にそれぞれ開口され」とは、一端がトレッド端縁に開口された場合の他に、前記ショルダーリブにおけるトレッド端縁付近に設けられた前記タイヤ周方向に延びた細溝に連通された場合も含む意であって、「トレッド端縁部」とは、トレッド端縁の他に、前記細溝を含む意である。また、「Z字状」とは、Z字状の他に、逆S字状を含む意であって、「S字状」とは、S字状の他に、逆Z字状を含む意である。なお、Z字状、逆Z字状とは直線的に2曲がりした形状であり、S字状、逆S字状はそれを曲線化した形状を意味する。
第1の特徴によると、各々の前記サイプは、前記タイヤ周方向の一方側へ突出した前記凸部と前記タイヤ周方向の他方側へ窪んだ前記凹部と連続して有するようにZ字状又はS字状にそれぞれ構成されているため、前記空気入りタイヤの転動中に、前記タイヤ周方向に隣接する前記分割ショルダーリブ間において、前記タイヤ周方向の接触力と前記タイヤ幅方向の接触力が作用する。これにより、前記空気入りタイヤの転動中に、前記タイヤ周方向に隣接する前記分割ショルダーリブが互いに拘束しあって、前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向の変形を抑制する(第1の分割ショルダーリブ変形抑制作用)。
また、同じ理由により、前記空気入りタイヤの転動中に、各々の前記分割ショルダーリブにおいて、トレッド端縁側部分における踏み込み及び蹴り出しのタイミングと、タイヤ赤道線側部分における踏み込み及び蹴り出しのタイミングをずらすことができる。つまり、各々の前記分割ショルダーリブにおいて、前記トレッド端縁側部分(又は前記タイヤ赤道線側部分)が接地した直後に、前記タイヤ赤道線側部分(又は前記トレッド端縁側部分)が路面から離脱することになる。これにより、前記空気入りタイヤの転動中に、各々の前記分割ショルダーリブにおいて、前記トレッド端縁側部分と前記タイヤ赤道線側部分が拘束しあって、前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向の変形を抑制する(第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用)。
本発明の第2の特徴(請求項2に記載の発明の特徴)は、トレッドに設けられ、タイヤ周方向へそれぞれ延びた複数の周方向主溝と、トレッド端縁と最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝によって区画され、前記タイヤ周方向へ延びたショルダーリブと、を具備してあって、前記ショルダーリブは、前記タイヤ周方向へ沿って間隔を置いて設けられ、一端がトレッド端縁側にそれぞれ開口され、前記タイヤ周方向の一方側へ突出した凸部と前記タイヤ周方向の他方側へ窪んだ凹部と連続して有するようにZ字状又はS字状にそれぞれ構成された複数のサイプと、前記ショルダーリブに前記タイヤ周方向に沿って間隔を置いて設けられ、一端が対応する前記サイプの他端にそれぞれ連通され、他端が最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝にそれぞれ連通された複数のラグ溝とによって複数の分割ショルダーリブに前記タイヤ周方向に沿って分割されていることである。
第2の特徴によると、複数の前記サイプは、前記タイヤ周方向の一方側へ突出した前記凸部と前記タイヤ周方向の他方側へ窪んだ前記凹部と連続して有するようにZ字状又はS字状にそれぞれ構成されているため、前述の第1の分割ショルダーリブ変形抑制作用及び第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用を奏する。
また、前記ショルダーリブに複数の前記ラグ溝が前記タイヤ周方向に沿って間隔を置いて設けられてあって、各々の前記ラグ溝の一端が対応する前記サイプの他端にそれぞれ連通され、各々の前記ラグ溝の他端が最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝にそれぞれ連通されているため、前記ラグ溝の排水性を確保してウエット性能を維持しつつ、前記空気入りタイヤが雪道を走行する際に、前記ラグ溝が雪を噛み込んで雪中剪断力を発生させることができる(雪中剪断力発生作用)。
本発明の第3の特徴(請求項3に記載の発明の特徴)は、第2の特徴に加えて、前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向における長さが前記ショルダーリブの最大幅の20%以上でかつ70%以下になっていることである。
ここで、前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向における長さを前記ショルダーリブの最大幅の20%以上としたのは、前記ショルダーリブの最大幅の20%に満たないと、前述の雪中剪断力発生作用を十分に発揮させることができないからである。一方、前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向における長さを前記ショルダーリブの最大幅の70%以下としたのは、前記ショルダーリブの最大幅の70%を越えると、前述の分割ショルダーリブ変形抑制作用(第1の分割ショルダーリブ変形抑制作用と第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用)を十分に発揮させることができないからである。
第3の特徴によると、前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向における長さが前記ショルダーリブの最大幅の20%以上でかつ70%以下になっているため、前述の雪中剪断力発生作用及び前述の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができる。
本発明の第4の特徴(請求項4に記載の発明の特徴)は、第2の特徴又は第3の特徴に加えて、前記ラグ溝の深さが最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの30%以上でかつ100%以下になっていることである。
ここで、前記ラグ溝の深さを最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの30%以上としたのは、最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの30%未満であると、前述の雪中剪断力発生作用を十分に発揮させることができないからである。なお、前記ラグ溝の深さを最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの100%以下としたは、最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの100%を越えてまで、換言すれば、前記空気入りタイヤの寿命を全うしてまで前記ラグ溝のエッジ成分を必要としないからである。
第4の特徴によると、前記ラグ溝の深さが最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの30%以上でかつ100%以下になっているため、前述の雪中剪断力発生作用を十分に発揮させることができる。
本発明の第5の特徴(請求項5に記載の発明の特徴)は、第1の特徴から第4の特徴のうちのいずれかの特徴に加えて、前記サイプ毎の前記凸部と前記凹部の前記タイヤ周方向における最大間隔が前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向における最大長さの25%以上でかつ60%以下になっていることである。
ここで、前記サイプ毎の前記凸部と前記凹部の前記タイヤ周方向における最大間隔を前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向における最大長さの25%以上としたのは、前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向における最大長さの25%に満たないと、前記トレッド端縁側部分における踏み込み及び蹴り出しのタイミングと、前記タイヤ赤道線側部分における踏み込み及び蹴り出しのタイミングのずれが小さくなりすぎて、前述の第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができないからである。一方、前記サイプ毎の前記凸部と前記凹部の前記タイヤ周方向における最大間隔を前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向における最大長さの60%以下としたのは、前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向における最大長さの60%を越えると、前記トレッド端縁側部分における踏み込み及び蹴り出しのタイミングと、前記タイヤ赤道線側部分における踏み込み及び蹴り出しのタイミングのずれが大きくなりすぎて、前述の第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができないからである。
第5の特徴によると、前記サイプ毎の前記凸部と前記凹部の前記タイヤ周方向における最大間隔が前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向における最大長さの25%以上でかつ60%以下になっているため、前述の第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができる。
本発明の第6の特徴(請求項6に記載の発明の特徴)は、第1の特徴から第5の特徴のうちのいずれかの特徴に加えて、前記サイプの深さが最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの70%以上でかつ100%以下になっていることである。
ここで、前記サイプの深さを最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの70%以上としたのは、最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの70%未満であると、トレッド摩耗末期までウエット性能を十分に維持すること困難になるからである。なお、前記サイプの深さを最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの100%以下としたは、最もトレッド端縁寄りの前記周方向主溝の深さの100%を越えてまで、換言すれば、前記空気入りタイヤの寿命を全うしてまで前記サイプのエッジ成分を必要としないからである。
請求項1から請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記空気入りタイヤの転動中に、前記タイヤ周方向に隣接する前記分割ショルダーリブが互いに拘束しあうと共に、各々の前記分割ショルダーリブにおいて前記トレッド端縁側部分と前記タイヤ赤道線側部分が拘束しあって、前記分割ショルダーリブの前記タイヤ周方向の変形を抑制することができるため、前記サイプの深さを浅く設定することなく、前記分割ショルダーリブのヒールアンドトウ摩耗を十分に抑えることができる。よって、前記空気入りタイヤにおいて、耐偏摩耗性能を高めつつ、トレッド摩耗末期までウエット性能を十分に維持することができる。
請求項2から請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記ラグ溝の排水性を確保してウエット性能を維持しつつ、前記空気入りタイヤが雪道を走行する際に、前記ラグ溝が雪を噛み込んで雪中剪断力を発生させることができるため、ウエット性能を十分に維持しつつ、スノー性能を高めることができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1から図3を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施形態に係わる空気入りタイヤにおけるトレッドの一部の平面展開図であって、図2は、本発明の第1実施形態に係わる空気入りタイヤの要部の拡大図であって、図3は、本発明の第1実施形態に係わる別態様の空気入りタイヤにおけるトレッドの一部の平面展開図である。 なお、図面中、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指す。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係わる重荷重用空気入りタイヤ等の空気入りタイヤ1におけるトレッド3の中央部には、タイヤ周方向Cへ延びた一対の第1周方向主溝5がタイヤ赤道線Sを挟むように設けられており、トレッド3の左右の両ショルダー部には、タイヤ周方向Cへ延びた一対の第2周方向主溝(最もトレッド端縁寄りの周方向主溝)7が一対の第1周方向主溝5を挟むように設けられている。
そして、一対の第1周方向主溝5によって、タイヤ周方向Cへ延びたセンターリブ9が区画されている。また、一方の第2周方向主溝(左寄りの第2周方向主溝)と一方の第1周方向主溝(左寄りの第1周方向主溝)によって、他方の第2周方向主溝(右寄りの第2周方向主溝)と他方の第1周方向主溝(右寄りの第1周方向主溝)によって、タイヤ周方向Cへ延びたセカンドリブ(左寄りのセカンドリブと右寄りのセカンドリブ)11がそれぞれ区画されている。更に、一方のトレッド端縁(左寄りのトレッド端縁)と左寄りの第2周方向主溝によって、他方のトレッド端縁(右寄りのトレッド端縁)と右寄りの第2周方向主溝によって、タイヤ周方向Cへ延びたショルダーリブ(左寄りのショルダーリブと右寄りのショルダーリブ)13がそれぞれ区画されている。なお、各々のショルダーリブ13におけるトレッド端縁付近には、タイヤ周方向Cへ延びた細溝15がそれぞれ設けられており、各々の細溝15は、周方向主溝5,7の溝幅に比べて狭い溝幅をそれぞれ有している。
センターリブ9には、複数のサイプ17がタイヤ周方向Cに沿って間隔を置いて設けられている。また、各々のセカンドリブ(左寄りのセカンドリブ又は右寄りのセカンドリブ)11には、複数のサイプ(複数の左寄りのサイプ又は複数の左寄りのサイプ)23がタイヤ周方向Cに沿って間隔を置いてそれぞれ設けられている。なお、各々の第2周方向主溝7の底部には、タイヤ周方向Cへ延びたリブ状の偏摩耗抑制突起29が設けられている。
図1及び図2に示すように、各々のショルダーリブ(左寄りのショルダーリブ又は右寄りのショルダーリブ)13には、複数のサイプ(複数の左寄りのサイプ又は複数の右寄りのサイプ)33がタイヤ周方向Cに沿って間隔を置いてそれぞれ設けられており、各々のサイプ33は、タイヤ周方向Cの一方側C1へ突出した凸部33aとタイヤ周方向Cの他方側C2へ窪んだ凹部33bと連続して有するようにZ字状(逆Z字状を含む)にそれぞれ構成されている。なお、各々のサイプ33は、凸部33aと凹部33bと連続して有するように逆Z字状にそれぞれ構成される代わりに、図3に示すように、凸部33aと凹部33bと連続して有するようにZ字状にそれぞれ構成されるにしても差し支えない。
また、図1及び図2に示すように、各々の左寄りのサイプ33の一端は、左寄りの細溝15にそれぞれ連通されてあって、各々の左寄りのサイプ33の他端は、左寄りの第2周方向主溝7にそれぞれ連通されている。同様に、各々の右寄りのサイプ33の一端は、右寄りの細溝15にそれぞれ連通されてあって、各々の右寄りのサイプ33の他端は、右寄りの第2周方向主溝7にそれぞれ連通されている。なお、ショルダーリブ13のトレッド端縁付近に細溝15が設けられていない場合には、各々のサイプ33の一端は、トレッド端縁にそれぞれ開口されるようにする。
そして、各々のショルダーリブ13は、複数のサイプ33によって複数の分割ショルダーリブ35にタイヤ周方向Cに沿ってそれぞれ分割されている。ここで、各々の分割ショルダーリブ35は、トレッド端縁側部分35aとタイヤ赤道線側部分35bとからなっている。なお、各々の分割ショルダーリブ35には、複数の短サイプ37がそれぞれ設けられている。
次に、サイプ33と分割ショルダーリブ35との関係等について説明する。
サイプ33毎の凸部33aと凹部33bのタイヤ周方向Cにおける最大間隔tは、分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cにおける最大長さfの25%以上でかつ60%以下になっている。
ここで、サイプ33毎の凸部33aと凹部33bのタイヤ周方向Cにおける最大間隔tを分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cにおける最大長さfの25%以上としたのは、分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cにおける最大長さfの25%に満たないと、トレッド端縁側部分35aにおける踏み込み及び蹴り出しのタイミングと、タイヤ赤道線側部分35bにおける踏み込み及び蹴り出しのタイミングのずれが小さくなりすぎて、後述の第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができないからである。一方、サイプ33毎の凸部33aと凹部33bのタイヤ周方向Cにおける最大間隔tを分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cにおける最大長さfの60%以下としたのは、分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cにおける最大長さfの60%を越えると、トレッド端縁側部分35aにおける踏み込み及び蹴り出しのタイミングと、タイヤ赤道線側部分35bにおける踏み込み及び蹴り出しのタイミングのずれが大きくなりすぎて、後述の第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができないからである。
また、サイプ33の深さは、第2周方向主溝7の深さの70%以上でかつ100%以下になっている。
ここで、サイプ33の深さを第2周方向主溝7の深さの70%以上としたのは、第2周方向主溝7の深さの70%未満であると、トレッド摩耗末期までウエット性能を十分に維持すること困難になるからである。なお、サイプ33の深さを第2周方向主溝7の深さの100%以下としたは、第2周方向主溝7の深さの100%を越えてまで、換言すれば、空気入りタイヤ1の寿命を全うしてまでサイプ33のエッジ成分を必要としないからである。
続いて、第1実施形態の作用・効果について説明する。
各々のサイプ33は、タイヤ周方向Cの一方側C1へ突出した凸部33aとタイヤ周方向Cの他方側C2へ窪んだ凹部33bと連続して有するように逆Z字状又はS字状にそれぞれ構成されているため、空気入りタイヤ1の転動中に、タイヤ周方向Cに隣接する分割ショルダーリブ35間において、タイヤ周方向Cの接触力とタイヤ幅方向Wの接触力が作用する。これにより、空気入りタイヤ1の転動中に、タイヤ周方向Cに隣接する分割ショルダーリブ35が互いに拘束しあって、分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cの変形を抑制する(第1の分割ショルダーリブ変形抑制作用)。
また、同じ理由により、空気入りタイヤ1の転動中に、各々の分割ショルダーリブ35において、トレッド端縁側部分35aにおける踏み込み及び蹴り出しのタイミングと、タイヤ赤道線側部分35bにおける踏み込み及び蹴り出しのタイミングをずらすことができる。つまり、各々の分割ショルダーリブ35において、トレッド端縁側部分35a(又はタイヤ赤道線側部分35b)が接地した直後に、タイヤ赤道線側部分35b(又はトレッド端縁側部分35a)が路面から離脱することになる。これにより、空気入りタイヤ1の転動中に、各々の分割ショルダーリブ35において、トレッド端縁側部分35aとタイヤ赤道線側部分35bが拘束しあって、分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cの変形を抑制する(前述の第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用)。
特に、サイプ33毎の凸部33aと凹部33bのタイヤ周方向Cにおける最大間隔tが分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cにおける最大長さfの25%以上でかつ60%以下になっているため、前述の第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができる。
以上如き、第1実施形態によれば、空気入りタイヤ1の転動中に、タイヤ周方向Cに隣接する分割ショルダーリブ35が互いに拘束しあうと共に、各々の分割ショルダーリブ35においてトレッド端縁側部分35aとタイヤ赤道線側部分35bが拘束しあって、分割ショルダーリブ35のタイヤ周方向Cの変形を抑制することができるため、サイプ33の深さを浅く設定することなく、分割ショルダーリブ35のヒールアンドトウ摩耗を十分に抑えることができる。よって、空気入りタイヤ1において、耐偏摩耗性能を高めつつ、トレッド摩耗末期までウエット性能を十分に維持することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図4及び図5を参照して説明する。
ここで、図4は、本発明の第2実施形態に係わる空気入りタイヤにおけるトレッドの一部の平面展開図であって、図5は、本発明の第2実施形態に係わる空気入りタイヤの要部の拡大図である。 なお、図面中、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指す。
図4及び図5に示すように、第2実施形態に係わる空気入りタイヤ39は、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1と略同じ構成を有しており、第2実施形態に係わる空気入りタイヤ39の具体的な構成のうち、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1の具体的な構成と異なる部分についてのみ説明する。なお、第2実施形態に係わる空気入りタイヤ39における複数の構成要素のうち、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付して、説明を省略する。
即ち、各々のショルダーリブ13には、複数のサイプ(複数の左寄りのサイプ又は複数の右寄りのサイプ)41がタイヤ周方向Cに沿って等間隔にそれぞれ設けられており、各々のサイプ41は、タイヤ周方向Cの一方側C1へ突出した凸部41aとタイヤ周方向Cの他方側C2へ窪んだ凹部41bと連続して有するように逆Z字状(S字状を含む)にそれぞれ構成されている。なお、各々のサイプ41は、凸部41aと凹部41bと連続して有するようにZ字状にそれぞれ構成される代わりに、凸部41aと凹部41bと連続して有するようにZ字状(逆S字状を含む)にそれぞれ構成されるにしても差し支えない。
また、各々の左寄りのサイプ41の一端は、左寄りの細溝15にそれぞれ連通されてあって、同様に、各々の右寄りのサイプ41の一端は、右寄りの細溝15にそれぞれ連通されている。なお、ショルダーリブ13のトレッド端縁付近に細溝15が設けられていない場合には、各々のサイプ41の一端は、トレッド端縁にそれぞれ開口されるようにする。
各々のショルダーリブ13には、複数のラグ溝(複数の左寄りのラグ溝又は複数の右寄りのラグ溝)43がタイヤ周方向Cに沿って等間隔にそれぞれ設けられている。また、各々の左寄りのラグ溝43の一端は、対応する左寄りのサイプ41の他端にそれぞれ連通されてあって、各々の左寄りのラグ溝43の他端は、左寄りの第2周方向主溝7にそれぞれ連通されている。同様に、各々の右寄りのラグ溝43の一端は、対応する右寄りのサイプ41の他端にそれぞれ連通されてあって、各々の右寄りのラグ溝43の他端は、右寄りの第2周方向主溝7にそれぞれ連通されている。
そして、各々のショルダーリブ13は、複数のサイプ(複数の左寄りのサイプ又は複数の右寄りのサイプ)41及び複数のラグ溝(複数の左寄りのラグ溝又は複数の右寄りのラグ溝)43によって複数の分割ショルダーリブ45にタイヤ周方向Cに沿ってそれぞれ分割されている。同様に、右寄りのショルダーリブは、複数の右寄りのサイプ41及び複数の右寄りのラグ溝43によって複数の右寄りの分割ショルダーリブにタイヤ周方向Cに沿ってそれぞれ分割されている。ここで、各々の分割ショルダーリブ45は、トレッド端縁側部分45aとタイヤ赤道線側部分45bとからなっている。なお、各々の分割ショルダーリブ45には、複数の短サイプ47がそれぞれ設けられている。
次に、サイプ41と分割ショルダーリブ45との関係、ラグ溝43とショルダーリブ13との関係、及びラグ溝43と第2周方向主溝7との関係等について説明する。
第1実施形態と同様に、サイプ41毎の凸部41aと凹部41bのタイヤ周方向Cにおける最大間隔tは、分割ショルダーリブのタイヤ周方向Cにおける最大長さfの25%以上でかつ60%以下になっており、サイプ41の深さは、第2周方向主溝7の深さの70%以上でかつ100%以下になっている。
また、ラグ溝43のタイヤ幅方向Wにおける長さjは、ショルダーリブ13の最大幅sの20%以上でかつ70%以下になっている。
ここで、ラグ溝43のタイヤ幅方向Wにおける長さjをショルダーリブ13の最大幅sの20%以上としたのは、ショルダーリブ13の最大幅sの20%に満たないと、後述の雪中剪断力発生作用を十分に発揮させることができないからである。一方、ラグ溝43のタイヤ幅方向Wにおける長さjをショルダーリブ13の最大幅sさの70%以下としたのは、ショルダーリブ13の最大幅sの70%を越えると、前述の第1実施形態の分割ショルダーリブ変形抑制作用(第1の分割ショルダーリブ変形抑制作用と第2の分割ショルダーリブ変形抑制作用)と同じ作用を十分に発揮させることができないからである。
更に、ラグ溝43の深さは、第2周方向主溝7の深さの30%以上でかつ100%以下になっている。
ここで、ラグ溝43の深さを第2周方向主溝7の深さの30%以上としたのは、第2周方向主溝7の深さの30%未満であると、後述の雪中剪断力発生作用を十分に発揮させることができないからである。なお、ラグ溝43の深さを第2周方向主溝7の深さの100%以下としたは、第2周方向主溝7の深さの100%を越えてまで、換言すれば、空気入りタイヤ39の寿命を全うしてまでラグ溝43のエッジ成分を必要としないからである。
続いて、第2実施形態の作用・効果について説明する。
各々のサイプ41は、タイヤ周方向Cの一方側C1へ突出した凸部41aとタイヤ周方向Cの他方側C2へ窪んだ凹部41bと連続して有するようにZ字状又はS字状にそれぞれ構成されているため、前述の第1実施形態の分割ショルダーリブ変形抑制作用と同じ作用を奏する。
また、各々のショルダーリブ13に複数のラグ溝43がタイヤ周方向Cに沿って等間隔に設けられてあって、各々のラグ溝43の一端が対応するサイプ41の他端にそれぞれ連通され、各々のラグ溝43の他端が第2周方向主溝7にそれぞれ連通されているため、ラグ溝43の排水性を確保してウエット性能を維持しつつ、空気入りタイヤ39が雪道を走行する際に、ラグ溝43が雪を噛み込んで雪中剪断力を発生させることができる(前述の雪中剪断力発生作用)。
更に、ラグ溝43のタイヤ幅方向Wにおける長さjがショルダーリブ13の最大幅sの20%以上でかつ70%以下になっているため、前述の雪中剪断力発生作用及び前述の分割ショルダーリブ変形抑制作用を十分に発揮させることができる。特に、ラグ溝43の深さが第2周方向主溝7の深さの30%以上でかつ100%以下になっているため、前述の雪中剪断力発生作用をより十分に発揮させることができる。
以上如き、第2実施形態によれば、前述の第1実施形態の分割ショルダーリブ変形抑制作用と同じ作用を奏するため、サイプ41の深さを浅く設定することなく、分割ショルダーリブ45のヒールアンドトウ摩耗を十分に抑えることができる。よって、空気入りタイヤ39において、耐偏摩耗性能を高めつつ、トレッド摩耗末期までウエット性能を十分に維持することができる。
また、ラグ溝43の排水性を確保してウエット性能を維持しつつ、空気入りタイヤ39が雪道を走行する際に、ラグ溝43が雪を噛み込んで雪中剪断力を発生させることができるため、ウエット性能を十分に維持しつつ、スノー性能を高めることができる。
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
本発明の実施例について説明する。
発明品1として図1に示す第1実施形態に係わる空気入りタイヤの製品を、発明品2として図3に示す第1実施形態に係わる空気入りタイヤの製品を、発明品3として図4に示す第2実施形態に係わる空気入りタイヤの製品を、比較品1として図6に示す第1比較例に係わる空気入りタイヤの製品を、比較品2として図7に示す第2比較例に係わる空気入りタイヤの製品を、比較品3として図8に示す第3比較例に係わる空気入りタイヤの製品をそれぞれ用いる。そして、発明品1〜発明品3,比較品2,比較品3について耐偏摩耗性能評価試験を、発明品1〜発明品3,比較品1〜比較品3についてウエット性能評価試験を、発明品1,発明品2,比較品1についてスノー性能評価試験をそれぞれ行い、それらの試験結果に基づいて耐偏摩耗性能、ウエット性能、及びスノー性能をそれぞれ評価することにした。
[比較例]
まず、第1比較例、第2比較例、及び第3比較例に係わる空気入りタイヤについて図6から図7を参照して簡単に説明する。
ここで、図6は、第1比較例に係わる空気入りタイヤにおけるトレッドの一部の平面展開図であって、図7は、第2比較例に係わる空気入りタイヤにおけるトレッドの一部の平面展開図であって、図8は、第3比較例に係わる空気入りタイヤにおけるトレッドの一部の平面展開図である。なお、図面中、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指す。
図6に示すように、第1比較例に係わる空気入りタイヤ49は、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1の要部を除いて、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1と略同じ構成を有しており、第1比較例に係わる空気入りタイヤ49の具体的な構成のうち、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1の具体的な構成と異なる部分についてのみ説明する。
即ち、第1変形例に係わる空気入りタイヤ49における各々のショルダーリブ13には、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1におけるサイプ33に相当するサイプが設けられていない。換言すれば、第1変形例に係わる空気入りタイヤ49にあっては、各々のショルダーリブ13は、複数の分割ショルダーリブにタイヤ周方向Cに沿ってそれぞれ分割されていない。
図7に示すように、第2比較例に係わる空気入りタイヤ51は、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1の要部を除いて、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1と略同じ構成を有しており、第2比較例に係わる空気入りタイヤ51の具体的な構成のうち、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1の具体的な構成と異なる部分についてのみ説明する。
即ち、第2変形例に係わる空気入りタイヤ51における各々のショルダーリブ13には、タイヤ幅方向Wに対して平行に延びた複数のサイプ(複数の左寄りのサイプ又は複数の右寄りのサイプ)53がタイヤ周方向Cに沿って等間隔にそれぞれ設けられている。そして、各々のショルダーリブ13は、複数のサイプ53によって分割ショルダーリブ55にタイヤ周方向Cに沿ってそれぞれ分割されている。
図8に示すように、第3比較例に係わる空気入りタイヤ57は、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1の要部を除いて、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1と略同じ構成を有しており、第3比較例に係わる空気入りタイヤ57の具体的な構成のうち、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1の具体的な構成と異なる部分についてのみ説明する。
即ち、第3変形例に係わる空気入りタイヤ57における各々のショルダーリブ13には、タイヤ幅方向Wに対して傾斜する方向へ延びた複数のサイプ(複数の左寄りのサイプ又は複数の右寄りのサイプ)59がタイヤ周方向Cに沿って等間隔にそれぞれ設けられている。そして、各々のショルダーリブ13は、複数のサイプ59によって複数の分割ショルダーリブ61にタイヤ周方向Cに沿ってそれぞれ分割されている。
なお、第1比較例、第2比較例、及び第3比較例に係わる空気入りタイヤ49,51,57における複数の構成要素のうち、第1実施形態に係わる空気入りタイヤ1における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付している。
ここで、発明品1〜発明品3におけるサイプ33の深さ、比較品2におけるサイプ53の深さ、比較品3におけるサイプ59の深さは、それぞれ周方向主溝7の深さの85%になっている。
[評価試験]
(i) 耐偏摩耗評価試験
耐偏摩耗評価試験においては、発明品1〜発明品3,比較品2,比較品3を車両(2−D・4形式)の前輪にそれぞれ装着した状態で、高速道路(平均速度80km/h)を80%、一般道路(平均速度30km/h)を20%の割合で、2万km、4万km走行させることにより行い、2万km走行時、4万km走行時の分割ショルダーリブ(発明品1〜発明品3にあっては分割ショルダーリブ35、比較品2にあっては分割ショルダーリブ55、比較品3にあっては分割ショルダーリブ61)における蹴り出し側(ヒール側)と踏み込み側(トウ側)の段差量(ヒールトウ段差量)の平均値を求める。そして、耐偏摩耗性能評価試験の結果をまとめると、後記の表1に示すようになる。
(ii) ウエット性能評価試験
ウエット性能評価試験においては、発明品1〜発明品3,比較品1〜比較品3を車両(2−D・4形式)の全輪にそれぞれ装着した状態で、水深2mmの鉄の試験路面上での制動距離を求める。そして、ウエット性能評価試験の結果をまとめると、後記の表1に示すようになる。なお、比較品1を全輪に装着した状態における制動距離を100として、数値が小さい方がウエット性能が高いことを示している。
(iii) スノー性能評価試験
スノー性能評価試験においては、発明品1,発明品3,比較品1を車両(2−D・4形式)の前輪にそれぞれ装着した状態で、圧雪の試験路面上で静止状態から加速して30mの距離を走行するのに要した到達タイムを求める。そして、スノー性能評価試験の結果をまとめると、後記の表1に示すようになる。なお、比較品1を全輪に装着した状態における到達タイムを100として、数値が小さい方がスノー性能が高いことを示している。
即ち、表1に示すように、発明品1から発明品3においては、比較品2及び比較品3と同程度のウエット性能を持ちつつ、比較品2及び比較品3に比べて、耐偏摩耗性能を十分に高めることができた。また、発明品2及び発明品3においては、比較品1に比べて、スノー性能を十分に高めることができた。