JP4885497B2 - 液晶バックライト反射板用白色塗装金属板 - Google Patents
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Description
代表的な高光反射材料に、基材表面に金属蒸着膜を堆積させて鏡面を形成したAg蒸着フィルム等の反射板がある。蒸着フィルムは、鏡面反射率が高いものの拡散反射が生じがたく、液晶等の画像面に向かう光量が却って少なくなる。しかも、反射板基材に蒸着フィルムを貼り付けて使用するため、作業性も悪い。
また、液晶画像面の背面に配置されている反射板は、冷陰極管やLEDからの照明光で照射されるので、照明光に微量ながらも含まれている紫外線で常時照射される。発泡樹脂で反射率を高めた反射板や反射フィルムでは、紫外線の遮蔽にも有効な酸化チタン顔料等の顔料添加がないため、樹脂自体が紫外線によって劣化し、時間が経過するに従い塗膜の変色が進行し、全反射率,拡散反射率が低下する。
本発明は、かかる知見をベースに完成されたものであり、特定の(メタ)アクリル系重合体と特定の(メタ)アクリル系単量体との(メタ)アクリル系混合物に,熱ラジカル重合開始剤,架橋剤,特定の可塑剤,及び酸化チタン顔料を所定の割合で配合した熱重合型アクリル塗料から作製された塗膜を表層塗膜とすることにより、塗膜の密着性、耐ベタツキ性、加工性及び耐紫外線性が良好であると共に、照明光の利用効率を高め、長期間使用後においても反射率が低下しない液晶バックライト反射板用の白色塗装金属板を提供することを目的とする。
上塗り塗膜の形成に使用される熱重合型アクリル塗料は、(メタ)アクリル系重合体:3〜21質量部,及び(メタ)アクリル系単量体:97〜79質量部の(メタ)アクリル系混合物に熱ラジカル重合開始剤:0.1〜5質量部,架橋剤:0.1〜20質量部,分子量500以上の可塑剤:1〜20質量部,酸化チタン顔料:40〜120質量部を配合し、粘度を1〜100Pa・sに調整している。(メタ)アクリル系重合体は、アクリル酸−2−エチルヘキシル:95質量部,アクリル酸−2−ヒドロキシエチル:5質量部からなる重量平均分子量:5×10 5 のコポリマーであり、(メタ)アクリル系単量体は、アクリル酸−2−エチルヘキシル:16.6〜46.5質量部,アクリル酸−2−ヒドロキシエチル:0.9〜2.5質量部,(メタ)アクリル酸イソボルニル:30〜75質量部を含む。熱ラジカル重合開始剤としては過酸化物系の重合開始剤があり、金属,金属酸化物等の不純物が0.1質量%以下に規制された酸化チタン顔料が好ましい。
熱重合型アクリル塗料は、アクリル酸−2−エチルヘキシル及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなるコポリマーである(メタ)アクリル系重合体と、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸イソボルニルを含む(メタ)アクリル系単量体とを混合した(メタ)アクリル系混合物をベース樹脂としている。(メタ)アクリル系重合体と(メタ)アクリル系単量体の配合比率は、3:97〜21:79(質量比)の範囲で選定される。(メタ)アクリル系重合体の配合量が少なすぎると、硬化時に揮発量が過剰になり、塗膜の平滑性が損なわれやすい。逆に(メタ)アクリル系重合体の配合量が多すぎると、塗料粘度が上昇し、塗工時に不具合が生じやすくなる。(メタ)アクリル系単量体は、アクリル酸−2−エチルヘキシルを16.6〜46.5質量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルを0.9〜2.5質量部、(メタ)アクリル酸イソボルニルを30〜75質量部含んでいる。特に、(メタ)アクリル酸イソボルニルの含有量が30質量部未満では、塗膜のベタツキ性が上昇し、塗装作業性が低下する。逆に75質量部を超える化合量の(メタ)アクリル酸イソボルニルが含まれると、塗膜のガラス転移温度Tgが上昇して加工性,耐衝撃性の低下が懸念される。
共重合可能な他の重合性不飽和基を有する化合物には、イタコン酸,クロトン酸,マレイン酸,フマル酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリルアミド,N-メチロール(メタ)アクリルアミド,N-メトキシ(メタ)アクリルアミド,N-ブトキシ(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体、ビニルトリメトキシシラン,γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機ケイ素基含有ビニル単量体、スチレン,メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリロニトリル等がある。
(メタ)アクリル系重合体は、塊状重合,溶液重合,乳化重合,懸濁重合等の重合法で調製できるが、(メタ)アクリル系単量体混合物成分との混合を考慮すると、塊状重合法,溶液重合法が好ましく、なかでも溶剤の揮散を必要としない塊状重合法が好適である。
特に、本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、塊状重合法で部分重合させることが好ましい。部分重合としては、特許文献4記載の方法を採用できる。部分重合を利用する場合、部分重合物に重合開始剤成分,架橋剤成分等を混合すればよい。この(メタ)アクリル系単量体は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体を重合させた化合物である。なお、本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミューエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した値のことを意味する。
架橋剤には、イソシアネート系,エポキシ系,アジリジン系,金属キレート系,メラミン樹脂系,シランカップリング剤系等があり、単独で或いは2種類以上を組み合わせて(メタ)アクリル系混合物に添加される。
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウムイソプロピレート,ジイソプロポキシビスアセチルアセトンチタネート,アルミニウムトリエチルアセトアセテート等が挙げられる。
メラミン樹脂系架橋剤としては、メチル化メラミン樹脂,ブチル化メラミン樹脂,ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
シランカップリング剤系架橋剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリメトキシシラン,クロロプロピルトリメトキシシラン等がある。
各成分を配合した熱重合型アクリル塗料は、1〜100Pa・s(好ましくは、2〜50Pa・s)の範囲に粘度が調整される。粘度が低すぎる塗料では塗布後硬化までに流動して均一な塗膜が得られず、粘度が高すぎる塗料では塗布時に塗りすじ等が生じ、塗膜から気泡が抜け難くなる。
熱重合型アクリル塗料を塗布して白色塗膜(上塗り塗膜)を形成する前に、反射率や塗膜密着性を向上させるために下塗り塗膜を形成する。下塗り用の塗料樹脂にはアクリル系,ポリエステル系,フッ素系,ポリウレタン系又はこれらの変性樹脂等が挙げられるが、上塗り塗膜との関係からアクリル変性エポキシ樹脂又はアクリル変性ポリエステル樹脂をベースとする塗料が好ましい。
下塗り塗料にも酸化チタン顔料を配合して反射率を高めることができる。酸化チタン顔料は、上塗り塗膜用と同様に塩素法で精製されたルチル型酸化チタンをアルミナ,シリカ,ジルコニア,チタニア,有機物等で表面処理した顔料が好ましく、配合量は樹脂100質量部に対して10〜100質量部の範囲で選定される。反射率,加工性等の塗膜物性を低下させない程度であれば、ストロンチウムクロメート等の防錆顔料やクロムフリー防錆顔料を下塗り塗料に配合しても良い。
塗装原板には、Znめっき鋼板,Zn-Alめっき鋼板,Zn-Al-Mgめっき鋼板,Alめっき鋼板,Al-Siめっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板,アルミニウム合金板,銅板,銅合金板等を使用できる。塗装原板は、下地金属に対する防食作用や塗膜密着性を向上させるため、適宜化成処理される。
ロールコート,カーテンコート,ダイコート,ナイフコート等で下塗り塗料を塗装原板に塗布し、乾燥・焼付けによって下塗り塗膜を形成する。下塗り塗料は乾燥膜厚:3〜7μmの下塗り塗膜が形成される塗布量に調節され、加熱温度:120〜250℃,加熱時間:30〜600秒の範囲で焼付け条件が設定される。
下塗り塗装した金属板に熱重合型アクリル塗料を塗布し、乾燥・焼付けすることにより熱重合型アクリル樹脂塗膜(上塗り塗膜)が形成される。
塗料塗布には、ロールコート,カーテンコート,ダイコート,ナイフコート等を採用でき、塩化ビニル塗膜の作製と同様な条件下で厚膜塗装が可能である。このため、プレコート金属板の製造ラインで新たな設備を必要とせず、経済的である。金属板に対する塗布量は、好ましくは乾燥膜厚:100μm以上の塗膜が形成されるように設定される。100μm未満の膜厚では、重合開始剤の分解により発生したラジカルが空気中の酸素と結合して消失し、重合硬化不足になりやすい。反射率を高める上でも、100μm以上の膜厚が望まれる。
焼付け処理条件は、加熱温度:120〜250℃,加熱時間:30〜600秒の範囲で選定されるが、加熱温度,焼付け時間共に塩化ビニル樹脂塗膜の成膜条件とほぼ同等であり、塗装条件の大幅な変更を必要としない。
アクリル酸-2-エチルヘキシル(2-EHA):95質量部,アクリル酸-2-ヒドロキシエチル(2-HEA):5質量部からなる重量平均分子量:5×105のコポリマーをアクリル重合体Aとした。
アクリル重合体A,2-EHA,2-HEA,アクリル酸イソボルニル(大阪有機化学工業製)を配合してアクリル系混合物とし、更にヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(TPA100:旭化成ケミカルズ製),有機過酸化物(パーオクタO:日本油脂製),可塑剤,酸化チタン顔料を種々の割合で添加することにより複数の塗料組成物を用意した。
試験No.7の可塑剤には数平均分子量:943のジペンタエリスリトール系可塑剤(D-600:三菱化学製)を使用したが、それ以外の塗料組成物では、可塑剤の配合を省略した試験No.23を除き、数平均分子量:2000のポリエステル系可塑剤(W-2050:大日本インキ化学工業製)を使用した。酸化チタン顔料は、硫酸法で製造した不純物:約0.15質量%の酸化チタンを用いた試験No.24を除き、塩素法で製造した不純物0.001質量%以下の酸化チタン顔料(CR58:石原産業製)を使用した。
片面当りめっき付着量:45g/m2,板厚:0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板を塗装原板に用い、Ni置換処理後にクロムフリーの化成皮膜を形成した。化成処理後の塗装原板に2コート2ベーク方式で下塗り塗膜,上塗り塗膜を設けた。下塗り塗装では塩素法酸化チタンを配合したアクリル変性エポキシ樹脂を塗布し、230℃×40秒の加熱で乾燥膜厚:5μmの下塗り塗膜を形成した。上塗り塗装では、表1の塗料組成物を塗布した後、200℃×90秒の加熱で乾燥膜厚:160μmの上塗り塗膜を形成した。なお、試験No.25では、下塗り塗膜を設けることなく塗装原板に塗料組成物を直接塗布し焼き付けることによりアクリル塗膜を形成した。
各塗装金属板から試験片を切り出し、反射率を測定すると共に塗膜密着性,塗膜のベタツキ性,加工性,耐紫外線性を調査した。
〔反射率の測定〕
JIS Z8722に準拠した物体色の測定に使用される分光測色計(CM3700d,光源C)を用い、波長:650nmの反射率を全反射率として測定した。また、正反射光を除去した波長:650nmでの反射率を拡散反射率として測定した。
〔塗膜密着試験〕
JIS K5600-5-6に規定されている碁盤目試験を実施し、セロハンテープの引剥し後にも剥離していない塗膜を○,剥離した塗膜を×として塗膜密着性を評価した。
塗膜表面を指で触り、タックがある塗膜を×,タックのない塗膜を○として耐ベタツキ性を評価した。
〔加工試験〕
JIS K5600-5-6に準拠し直径2mmのマンドレルで試験片をT曲げした後、板厚と同じ厚さの板4枚を曲げ部内側に挟んで万力で試験片を折り曲げた(4t曲げ)。そして、曲げ部外側の塗膜を観察し、クラックのなかった塗膜を○,クラックが発生した塗膜を×として加工性を評価した。
〔紫外線照射試験〕
紫外線強度:100mW/cm2のUVランプを用い温度:63℃,湿度:50%の環境下で24時間紫外線照射した後、試験片表面の塗膜を目視観察し、黄変していない塗膜を○,黄変した塗膜を×として耐紫外線性を評価した。
これに対し、ガラス転移温度Tg:−20〜60℃を満足しない試験No.17〜22、可塑剤を含まない塗料組成物を用いた試験No.23,下塗り塗膜を省略し塗装原板に白色塗膜を直接設けた試験No.25では、加工性,塗膜密着性に劣っていた。
ラミネート鋼板を同様な試験にかけ、反射率,加工性,耐紫外線性等を調査した。表3の調査結果にみられるように、ラミネート鋼板は、全反射率,拡散反射率共に高い値を示したが耐紫外線性が劣るため、液晶バックライト反射板に用いた場合、時間経過に従って塗膜の変色が進行し、全反射率,拡散反射率が低下した。
Claims (6)
- 下地金属板の表面に下塗り塗膜,上塗り塗膜が設けられており、
上塗り塗膜は、(メタ)アクリル系重合体:3〜21質量部,及び(メタ)アクリル系単量体:97〜79質量部の(メタ)アクリル系混合物に熱ラジカル重合開始剤:0.1〜5質量部,架橋剤:0.1〜20質量部,分子量500以上の可塑剤:1〜20質量部,酸化チタン顔料:40〜120質量部が配合され、粘度:1〜100Pa・sに調整された熱重合型アクリル塗料から成膜された塗膜であり、
(メタ)アクリル系重合体は、アクリル酸−2−エチルヘキシル:95質量部,アクリル酸−2−ヒドロキシエチル:5質量部からなる重量平均分子量:5×10 5 のコポリマーであり、
(メタ)アクリル系単量体は、アクリル酸−2−エチルヘキシル:16.6〜46.5質量部,アクリル酸−2−ヒドロキシエチル:0.9〜2.5質量部,(メタ)アクリル酸イソボルニル:30〜75質量部を含む
ことを特徴とする液晶バックライト反射板用白色塗装金属板。 - 酸化チタン顔料に不純物として含まれる金属及び金属酸化物が0.1質量%以下に規制されている請求項1記載の液晶バックライト反射板用白色塗装金属板。
- 熱ラジカル重合開始剤が過酸化物系重合開始剤である請求項1記載の液晶バックライト反射板用白色塗装金属板。
- 上塗り塗膜のガラス転移温度Tgが−20〜60℃である請求項1記載の液晶バックライト反射板用白色塗装金属板。
- 上塗り塗膜の膜厚が100μm以上である請求項1記載の液晶バックライト反射板用白色塗装金属板。
- 下塗り塗膜が酸化チタンを含んでいる請求項1記載の液晶バックライト反射板用白色塗装金属板。
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