本明細書において「フィルム」の用語は、シートをも含む用語として使用する。「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。
本発明のハードコート積層フィルムは、表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する。本発明のハードコート積層フィルムは、本発明のある態様においては、表面側から順に第2ハードコート、第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する。ここで「表面側」とは、ハードコート積層フィルムを用いて生産された物品が、現場での使用に供される際の外面(ディスプレイ面板の場合の視認面)により近いことを意味する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
第1ハードコート:
上記第1ハードコートは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び、(B)N−置換(メタ)アクリルアミド化合物 1〜100質量部;を含む塗料からなる。
(A)多官能(メタ)アクリレート:
上記成分(A)は、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。上記成分(A)は、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;トリペンタエリスリトールアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有8官能反応性モノマー及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができる。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
(B)N−置換(メタ)アクリルアミド化合物:
上記成分(B)は、N−置換(メタ)アクリルアミド化合物である。上記成分(B)は、第1ハードコート形成面がポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂である上記透明樹脂フィルムと第1ハードコートとの密着性を良好にする働きをする。そのため、本発明のハードコート積層フィルムは、上記透明樹脂フィルムの第1ハードコート形成面の上に直接第1ハードコートが形成されているものであってよい。上記透明樹脂フィルムの第1ハードコート形成面に、コロナ放電処理などの易接着化処理がされていないものであってよい。
上記成分(B)としてのN−置換(メタ)アクリルアミド化合物は、特に限定されないが、典型的には、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であってよい。式中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は水酸基若しくはアミノ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表すか、又はR2とR3が一緒になって、それらが結合する窒素原子と共に、酸素原子を環構成員として有してもよい5員環若しくは6員環を形成する。なお「N−置換(メタ)アクリルアミド化合物」とは、N−置換アクリルアミド化合物又はN−置換メタクリルアミド化合物の意味である。
上記成分(B)としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドブチルエーテル、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル,N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドメチルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミドエチルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミドプロピルエーテル、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、及び(メタ)アクリロイルモルホリンなどをあげることができる。これらの中で、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、及びN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、(メタ)アクリロイルモルホリンがより好ましく、アクリロイルモルホリンが更に好ましい。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記透明樹脂フィルムと第1ハードコートとの密着性の観点から、通常1質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。一方、耐擦傷性、及び硬度の低下を抑制する観点から、通常100質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、より更に好ましくは35質量部以下、最も好ましくは15質量部以下であってよい。
(C)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子:
上記成分(C)は、本発明のハードコート積層フィルムの表面硬度を飛躍的に高める働きをする。
無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;及び金属微粒子;などをあげることができる。
これらの中でより表面硬度の高いハードコートを得るためにシリカや酸化アルミニウムの微粒子が好ましく、シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
無機微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの表面硬度を高めたりする目的で、当該無機微粒子の表面をビニルシラン、及びアミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びアリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;及び脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを用いることは好ましい。
上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(C)の平均粒子径は、ハードコートの硬度改良効果を確実に得る観点から、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下である。一方、平均粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な無機微粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
なお本明細書において、無機微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
上記成分(C)の配合量は、上記第1ハードコートが本発明のハードコート積層フィルムの表面を形成する態様にあっては、上記成分(A)100質量部に対して、表面硬度の観点から、通常5質量部以上、好ましくは20質量部以上であってよい。一方、耐擦傷性の観点から、通常100質量部以下、好ましくは70質量部以下であってよい。
上記成分(C)の配合量は、上記第1ハードコートの表面側に、更に上記第2ハードコートを形成する態様にあっては、上記成分(A)100質量部に対して、表面硬度の観点から、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは80質量部以上であってよい。一方、透明性の観点から、通常、300質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは160質量部以下であってよい。
(D)レベリング剤:
上記第1ハードコート形成用塗料には、表面を良好(平滑)なものにする観点から、更に(D)レベリング剤を含ませることが好ましい。またこれにより、本発明の上記第2ハードコートを形成する態様において、上記第2ハードコートの形成が容易になる。
上記レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコン系レベリング剤、弗素系レベリング剤、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤、弗素変性アクリル系レベリング剤、弗素変性シリコン系レベリング剤、及びこれらに官能基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など。)を導入したレベリング剤などをあげることができる。これらの中で、上記成分(D)としては、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤が好ましい。上記成分(D)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記第1ハードコートの表面を良好なものにする観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であってよい。一方、本発明の上記第2ハードコートを形成する態様において、上記第1ハードコートの上に、上記第2ハードコート形成用塗料が弾かれることなく良好に塗工できるようにする観点から、通常1質量部以下、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下であってよい。
上記第1ハードコート形成用塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記第1ハードコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、有機微粒子、及び着色剤などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
上記第1ハードコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)〜(D)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記第1ハードコート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
上記第1ハードコート形成用塗料を用いて上記第1ハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
上記第1ハードコートの厚みは、特に制限されないが、表面硬度の観点から、通常1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であってよい。また本発明のハードコート積層フィルムの切削加工適性やウェブハンドリング性の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。
上記第1ハードコートの厚みは、本発明の上記第2ハードコートを形成する態様においては、表面硬度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは18μm以上であってよい。一方、耐衝撃性の観点から、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下であってよい。
第2ハードコート:
本発明のハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコートの表面側に更に第2ハードコートを有するものであってよい。即ち、本発明のハードコート積層フィルムは、ある態様においては、表面側から順に上記第2ハードコート、上記第1ハードコート、及び上記透明樹脂フィルムの層を有する。このような態様のハードコート積層フィルムが、タッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として用いられる場合には、通常、上記第2ハードコートが、上記画像表示装置のタッチ面を形成することになる。
上記第2ハードコートは、好ましくは、無機粒子を含まない塗料からなる。上記第2ハードコートは、より好ましくは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(E)撥水剤 0.01〜7質量部;及び(F)シランカップリング剤 0.01〜10質量部;を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる。上記第2ハードコート形成用塗料として、上述の塗料を用いることにより、上記第2ハードコートは、良好な耐擦傷性を発現し、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持する働きをすることができるようになる。
無機粒子(例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物粒子;金属硫化物粒子;金属窒化物粒子;及び金属粒子;など。)は、ハードコートの硬度を高めるのに効果が大きい。一方、上記成分(A)などの樹脂成分との相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで本発明の上記第2ハードコートを形成する態様においては、最表面を形成する上記第2ハードコートには無機粒子を含まないようにして耐擦傷性を保持し、一方、上記第1ハードコートには多量の特定の無機微粒子を含ませて硬度を高めることにより、この問題を解決したものである。
ここで無機粒子を「含まない」とは、有意な量の無機粒子を含んではいないという意味である。ハードコート形成用塗料の分野において、無機粒子の有意な量は、上記成分(A)100質量部に対して、通常1質量部程度以上である。従って、無機粒子を「含まない」とは、上記成分(A)100質量部に対して、無機粒子の量が通常1質量部未満、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下と言い換えることもできる。
上記(A)多官能(メタ)アクリレートについては、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
(E)撥水剤:
上記成分(E)は、指すべり性、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める働きをする。
上記撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、及びアクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコンオイル、シリコン樹脂、ポリジメチルシロキサン、及びアルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;フルオロポリエーテル系撥水剤、及びフルオロポリアルキル系撥水剤等の含弗素系撥水剤;などをあげることができる。上記成分(E)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
これらの中で、上記成分(E)としては、撥水性能の観点から、フルオロポリエーテル系撥水剤が好ましい。上記成分(A)と上記成分(E)とが化学結合ないしは強く相互作用し、上記成分(E)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、上記成分(E)としては、分子内に(メタ)アクリロイル基とフルオロポリエーテル基とを含有する化合物を含む撥水剤(以下、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤と略す。)がより好ましい。上記成分(E)として更に好ましいのは、上記成分(A)と上記成分(E)との化学結合ないしは相互作用を適宜調節し、透明性を高く保ちつつ良好な撥水性を発現させる観点から、アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤とメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤との混和物である。
(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤は、分子内にフルオロポリエーテル基を含有する点で上記成分(A)とは明確に区別される。1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつフルオロポリエーテル基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤であって、上記成分(E)である。
上記成分(E)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記成分(E)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、通常7質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。一方、上記成分(E)の使用効果を得るという観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。
(F)シランカップリング剤:
上記成分(F)は、上記第1ハードコートと上記第2ハードコートとの密着性を向上させる働きをする。
シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基;など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。これらの中で上記成分(F)としては、密着性の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤(アミノ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、及びメルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプト基と加水分解性基を有するシラン化合物)が好ましい。密着性及び臭気の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
上記成分(F)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(F)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、密着性向上効果を確実に得る観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。一方、塗料のポットライフの観点から、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下であってよい。
上記第2ハードコート形成用塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記光重合開始剤については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記第2ハードコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、有機着色剤、及び有機微粒子などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
上記第2ハードコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)、上記成分(D)、上記成分(F)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記第2ハードコート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
上記第2ハードコート形成用塗料を用いて上記第2ハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
上記第2ハードコートの厚みは、耐擦傷性及び硬度の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であってよい。一方、硬度及び第1ハードコートとの密着性の観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下であってよい。
透明樹脂フィルム:
上記透明樹脂フィルムは、上記第1ハードコートをその上に形成するためのフィルム基材となる。上記透明樹脂フィルムは、本発明のある態様においては、上記第1ハードコート及び上記第2ハードコートをその上に形成するためのフィルム基材となる。上記透明樹脂フィルムは、少なくともその第1ハードコート形成面が、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、アクリル系樹脂にイミド構造が導入された重合体である。上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、アクリル系樹脂の高透明性、高表面硬度、高剛性という特徴はそのままにポリイミド系樹脂の耐熱性や寸法安定性に優れるという特徴を導入し、淡黄色から赤褐色に着色するという欠点を改良した熱可塑性樹脂である。上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を生産する方法としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂にイミド化剤を反応させてイミド構造を導入する方法をあげることができる。
上記アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む共重合体をあげることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。また(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、及び(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などをあげることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸・(メタ)アクリル酸メチル共重合、及びN−置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合などをあげることができる。
上記イミド化剤としては、例えば、メチルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアンモニアなどをあげることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、ハードコート積層フィルムのフィルム基材用樹脂として高いポテンシャルを有している。しかし、ハードコートとの密着強度は不十分であり、非常に強いコロナ放電処理や特殊なアンカーコートなどの易接着処理を必要としていた(特開2015−034285号公報。)。特に、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂がフィルム基材の両方の面を形成する場合、該フィルム基材の両方の面の上にハードコートを形成したとき、後から形成したハードコートの密着強度が不十分になり易いという問題があった。理論に拘束される意図はないが、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、活性エネルギー線の照射により、ハードコートとの密着性を低下させるものと考察される。
本発明のハードコート積層フィルムは、第1ハードコート形成用塗料が好ましい量の上記成分(B)を含む場合には、上記透明樹脂フィルムの第1ハードコート形成(ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂)面の上に直接第1ハードコートが形成されていても十分な密着力を発現する。上記透明樹脂フィルムの第1ハードコート形成(ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂)面に、コロナ放電処理などの易接着化処理がされていなくても十分な密着力を発現する。
上記透明樹脂フィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の透明単層フィルムであってよい。上記透明樹脂フィルムは、第1ハードコート形成面を形成する層がポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂であり、任意の樹脂からなる他の層を1層以上有する透明多層フィルムであってよい。上記透明樹脂フィルムは、好ましくは、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムであってよい。 なおハードコート積層フィルムがタッチパネル機能を有する画像表示装置の部材として用いられる場合、上記α1層側に上記画像表示装置のタッチ面が形成されるものとして本発明を説明する。
ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は耐熱性や表面硬度には優れているが、切削加工性が不十分になり易いのに対し、芳香族ポリカーボネート系樹脂は切削加工性には優れているが、耐熱性や表面硬度が不十分になり易い。そのため上記の層構成の透明多層フィルムを用いることにより、両者の弱点を補い合い、耐熱性、表面硬度、及び切削加工性の何れにも優れたハードコート積層フィルムを容易に得ることができるようになる。
上記α1層の層厚みは、特に制限されないが、本発明のハードコート積層フィルムの耐熱性や表面硬度の観点から、通常20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、更に好ましくは80μm以上であってよい。
上記α2層の層厚みは、特に制限されないが、本発明のハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、上記α1層と同じ層厚みであることが好ましい。
なおここで「同じ層厚み」とは、物理化学的に厳密な意味で同じ層厚みと解釈されるべきではない。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みと解釈されるべきである。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みであれば、多層フィルムの耐カール性を良好に保つことができるからである。Tダイ共押出法による無延伸多層フィルムの場合には、通常−5〜+5μm程度の幅で工程・品質管理されるものであるから、層厚み65μmと同75μmとは同一と解釈されるべきである。
上記β層の層厚みは、特に制限されないが、本発明のハードコート積層フィルムの耐切削性の観点から、通常20μm以上、好ましくは80μm以上であってよい。
上記α1層及び上記α2層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としては、ハードコート積層フィルムをタッチパネルなどの光学物品に用いる目的から、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の好ましいものとしては、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、3以下のものをあげることができる。黄色度指数は、より好ましくは2以下であり、更に好ましくは1以下である。また押出負荷や溶融フィルムの安定性の観点から、好ましいものとしてメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)が0.1〜20g/10分のものをあげることができる。メルトマスフローレートは0.5〜10g/10分がより好ましい。更にポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、150℃以上のものが好ましい。より好ましくは170℃以上である。
また上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の市販例としては、エボニック社の「PLEXIMID TT50(商品名)」、及び「PLEXIMID TT70(商品名)」などをあげることができる。
なお上記α1層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂と、上記α2層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂とは、異なる樹脂特性のもの、例えばメルトマスフローレートやガラス転移温度の異なるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いても良いが、本発明のハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、同じ樹脂特性のものを用いることが好ましい。例えば、同一グレードの同一ロットを用いるのは、好ましい実施態様の一つである。
上記β層に用いる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、耐切削加工性や耐衝撃性をより高めることができる。
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムをあげることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
上記透明樹脂フィルムの製造方法は特に制限されない。好ましい製造方法としては、例えば、特開2015−033844号公報や特開2015−034285号公報に記載された方法をあげることができる。
上記透明樹脂フィルムの厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。本発明のハードコート積層フィルムの取扱性の観点からは、通常20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上であってよい。本発明のハードコート積層フィルムを高い剛性を必要としない用途に用いる場合には、経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下であってよい。本発明のハードコート積層フィルムをディスプレイ面板などの高い剛性を必要とする用途に用いる場合には、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上であってよい。また装置の薄型化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは1200μm以下、より好ましくは1000μm以下であってよい。
なお本発明の好ましいハードコート積層フィルムは、上述のように、上記透明樹脂フィルムの上記第1ハードコート形成面又は両面に、上記第1ハードコートとの接着強度を高めるため、事前にコロナ放電処理やアンカーコート形成などの易接着処理を施すことを必要としないものであるが、易接着処理を施すことを排除する意図はない。即ち、本発明のハードコート積層フィルムは、上記透明樹脂フィルムの上記第1ハードコート形成面又は両面に、易接着処理が施されたものであってよい。上記透明樹脂フィルムの上記第1ハードコート形成面又は両面に易接着処理を施すことにより、上記透明樹脂フィルムと上記第1ハードコートとの密着性を更に向上させ、本発明のハードコート積層フィルムが、想定外の使用環境に曝された場合にも、密着性を保持することを期待できる。
本発明のハードコート積層フィルムは、上記透明樹脂フィルムの上記第1ハードコート形成面とは反対側の面の上に、更に第3ハードコートを有することが好ましい。上記第3ハードコートを形成することにより、ハードコート積層フィルムを一方へカールさせようとする力(以下、カール力と略すことがある。)と他方へカールさせようとする力とが両方働くことになる。そしてこの2つのカール力が相殺されてゼロになるようにすることにより、カールの発生を抑制することができる。上記第3ハードコートの形成用塗料、及び上記第3ハードコートの厚みは、2つのカール力を相殺することが可能である限りは特に限定されない。上記第3ハードコートの形成用塗料や厚みは、例えば、第2ハードコートが形成される態様において、第1ハードコートについて上述されたものであってよい。
また近年、画像表示装置の軽量化を目的に、ディスプレイ面板の裏側にタッチ・センサが直接形成された2層構造のタッチパネル(所謂ワン・ガラス・ソリューション)が提案されている。また更なる軽量化のため、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションも提案されている。本発明のハードコート積層フィルムを、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションに用いる場合には、上記第3ハードコートを形成することにより、印刷面として好適な特性を付与することが容易になる。
図1は、本発明のハードコート積層フィルムの一例を示す断面の概念図である。表面側から順に第2ハードコート1、第1ハードコート2、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)3、芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β)4、第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の層(α2)5、及び第3ハードコート6を有している。
本発明のハードコート積層フィルムは、所望により、上記第1ハードコート、上記第2ハードコート、上記透明樹脂フィルムの層、及び上記第3ハードコート以外の任意の層を有していてもよい。任意の層としては、例えば、上記第1〜3のハードコート以外のハードコート、アンカーコート、粘着剤層、透明導電層、高屈折率層、低屈折率層、及び反射防止機能層などをあげることができる。
本発明のハードコート積層フィルムは、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率が85%以上であることにより、本発明のハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。全光線透過率は高いほど好ましい。
本発明のハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコート側の表面の鉛筆硬度(JIS K 5600−5−4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは4H以上、より好ましくは5H以上、更に好ましくは6H以上、最も好ましくは7H以上である。鉛筆硬度が4H以上であることにより、本発明のハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。鉛筆硬度は高いほど好ましい。
本発明のハードコート積層フィルムは、JIS K 5600−5−6:1999に従い、ハードコート積層フィルムに第1ハードコート側の表面から碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がしたとき、上記JIS規格の表1に記載された判定基準において、通常、分類3、2、1又は0、好ましくは分類2、1又は0、より好ましくは分類1又は0、更に好ましくは分類0(最高ランク)の密着性を有する。
本発明のハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコート側の表面の水接触角が好ましくは100度以上、より好ましくは105度以上である。本発明のハードコート積層フィルムをタッチパネルのディスプレイ面板として用いる場合、上記第1ハードコート側の表面はタッチ面を形成することになる。上記第1ハードコート側の表面の水接触角が100度以上であることにより、タッチ面上において、指やペンを思い通りに滑らし、タッチパネルを操作することができるようになる。水接触角の上限は特にないが、指やペンを思い通りに滑らせるという観点からは、通常120度程度で十分である。ここで水接触角は、下記実施例の試験(ト)に従い測定した値である。
本発明のハードコート積層フィルムは、好ましくは上記第1ハードコート側の表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上である。より好ましくは往復2万5千回綿拭後の水接触角が100度以上である。往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上であることにより、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持することができる。水接触角100度以上を維持できる綿拭回数は多いほど好ましい。ここで綿拭後の水接触角は、下記実施例の試験(チ)に従い測定した値である。
製造方法:
本発明のハードコート積層フィルムの製造方法は、特に制限されず、任意の方法で製造することができる。本発明のハードコート積層フィルムが、表面側から順に第2ハードコート、第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する態様である場合の好ましい製造方法としては、上記第1ハードコートと上記第2ハードコートとの密着性の観点から、例えば、
(1)上記透明樹脂フィルムの上に、上記第1ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する工程;
(2)上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜に、活性エネルギー線を積算光量が1〜230mJ/cm2、好ましくは5〜200mJ/cm2、より好ましくは10〜160mJ/cm2、更に好ましくは20〜120mJ/cm2、最も好ましくは30〜100mJ/cm2 となるように照射し、上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を、指触乾燥状態の塗膜にする工程;
(3)上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記指触乾燥状態の塗膜の上に、上記第2ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する工程;及び
(4)上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を温度30〜100℃、好ましくは温度40〜85℃、より好ましくは温度50〜75℃に予熱し、活性エネルギー線を積算光量が240〜10000mJ/cm2、好ましくは320〜5000mJ/cm2、より好ましくは360〜2000mJ/cm2 となるように照射する工程;を含む方法をあげることができる。
上記工程(1)において、上記第1ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
上記工程(1)において形成された上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜は、上記工程(2)において指触乾燥状態、ないしはタック性のない状態になり、ウェブ装置に直接触れても貼り付いたりするなどのハンドリング上の問題を起こすことはなくなる。そのため、次の上記工程(3)において、上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記指触乾燥状態の塗膜の上に、上記第2ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成することができるようになる。
なお本明細書において、「塗膜が指触乾燥状態(タック性のない状態)にある」とは、塗膜がウェブ装置に直接触れてもハンドリング上の問題はない状態にあるという意味である。
上記工程(2)における活性エネルギー線の照射は、上記第1ハードコート形成用塗料として用いる塗料の特性にもよるが、塗膜を確実に指触乾燥状態にする観点から、積算光量が通常1J/cm2以上、好ましくは5mJ/cm2以上、より好ましくは10mJ/cm2以上、更に好ましくは20mJ/cm2以上、最も好ましくは30mJ/cm2以上となるように行う。一方、上記第1ハードコートと上記第2ハードコートとの密着性の観点から、積算光量が通常230mJ/cm2以下、好ましくは200mJ/cm2以下、より好ましくは160mJ/cm2以下、更に好ましくは120mJ/cm2以下、最も好ましくは100mJ/cm2以下となるように行う。
上記工程(2)において活性エネルギー線を照射する前に、上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を予備乾燥することは好ましい。上記予備乾燥は、例えば、ウェブを温度23〜150℃程度、好ましくは温度50〜120℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5〜10分程度、好ましくは1〜5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
上記工程(2)において活性エネルギー線を照射する際に、上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を温度40〜120℃、好ましくは温度70〜100℃に予熱してもよい。塗膜を確実に指触乾燥状態にすることができる。上記予熱の方法は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。具体的方法の例については、下記工程(4)の説明において後述する。
上記工程(3)において、上記第2ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
上記工程(3)において形成された上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜は、上記工程(4)において完全に硬化される。同時に上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記塗膜も完全に硬化される。
理論に拘束される意図はないが、上記方法により、上記第1ハードコートと上記第2ハードコートとの密着性を向上させることができるのは、活性エネルギー線の照射を、上記工程(2)では塗膜を指触乾燥状態にするには十分であるが、完全硬化するには不十分な積算光量に抑制し、上記工程(4)において初めて塗膜を完全硬化するのに十分な積算光量にすることにより、両ハードコートの完全硬化が同時に達成されるためと推測される。
上記工程(4)における活性エネルギー線の照射は、塗膜を完全硬化させる観点、及び第1ハードコートと第2ハードコートの密着性の観点から、積算光量が240mJ/cm2以上、好ましくは320mJ/cm2以上、より好ましくは360mJ/cm2以上となるように行う。一方、得られるハードコート積層フィルムが黄変したものにならないようにする観点、及びコストの観点から、積算光量が10000mJ/cm2以下、好ましくは5000mJ/cm2以下、より好ましくは2000mJ/cm2以下となるように行う。
上記工程(4)において活性エネルギー線を照射する前に、上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を予備乾燥することは好ましい。上記予備乾燥は、例えば、ウェブを温度23〜150℃程度、好ましくは温度50〜120℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5〜10分程度、好ましくは1〜5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
上記工程(4)において活性エネルギー線を照射する際には、上記第2ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜は、上記第1ハードコート形成用塗料と上記第2ハードコート形成用塗料の特性が大きく異なる場合であっても良好な層間密着強度を得る観点から、温度30〜100℃、好ましくは温度40〜85℃、より好ましくは温度50〜75℃に予熱されている。上記予熱の方法については、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。例えば、図3のように活性エネルギー線照射装置と対置したロールにウェブを抱かせて、ロールの表面温度を所定温度に制御する方法;活性エネルギー線照射装置周辺を照射炉として囲い、照射炉内の温度を所定温度に制御する方法;及びこれらの組み合わせなどをあげることができる。
上記工程(4)の後、エージング処理を行ってもよい。ハードコート積層フィルムの特性を安定化することができる。
本発明のハードコート積層フィルムを含む物品:
本発明のハードコート積層フィルムを含む物品としては、特に制限されないが、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)、特にタッチパネル機能を有する画像表示装置をあげることができる。
本発明のハードコート積層フィルムを含む物品としては、特に制限されないが、例えば、建築物の窓や扉など;テレビ、パソコン、タブレット型情報機器、スマートフォン、及びこれらの筐体やディスプレイ面板;冷蔵庫、洗濯機、食器棚、衣装棚、及びこれらを構成するパネル;車両、車両の窓、風防、ルーフウインドウ、及びインストルメントパネルなど;電子看板、及びこれの保護板;及びショーウインドウなどをあげることができる。
本発明のハードコート積層フィルムを用いて物品を生産するに際し、得られる物品に高い意匠性を付与するため、上記透明樹脂フィルムの上記第1ハードコート形成側の面とは反対側の面の上に、化粧シートを積層してもよい。このような実施態様は、本発明のハードコート積層フィルムを、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の、本体正面の開口を開閉する扉体の正面を構成するパネルや、本体平面の開口を開閉する蓋体の平面を構成するパネルとして用いる場合に、特に有効である。上記化粧シートとしては、制限されず、任意の化粧シートを用いることができる。上記化粧シートとしては、例えば、任意の着色樹脂シートを用いることができる。
上記着色樹脂シートとしては、特に制限されないが、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの着色樹脂シートをあげることができる。これらのシートは、無延伸シート、一軸延伸シート、二軸延伸シートを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層シートを包含する。
上記着色樹脂シートの厚みは、特に制限されないが、通常20μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上であってよい。また物品の薄肉化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは800μm以下、より好ましくは400μm以下であってよい。
上記着色樹脂シートの正面側の面の上には、所望により、意匠感を高めるため、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、高い意匠性を付与するために設けるものであり、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。
印刷は、直接又はアンカーコートを介して、上記透明樹脂フィルムの上記第1ハードコート形成側の面とは反対側の面の上に又は/及び上記着色樹脂シートの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、施すことができる。模様としては、ヘアライン等の金属調模様、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、及びパッチワークなどをあげることができる。印刷インキとしては、バインダーに顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂などの樹脂、及びこれらの樹脂組成物を使用することができる。また金属調の意匠を施すため、アルミニウム、錫、チタン、インジウム及びこれらの酸化物などを、直接又はアンカーコートを介して、上記透明樹脂フィルムの上記第1ハードコート形成側面とは反対側の面の上に又は/及び上記着色樹脂シートの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、公知の方法により蒸着してもよい。
上記透明樹脂フィルムと上記化粧シートとの積層は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。上記方法としては、例えば、公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法;及び公知の粘着剤からなる層を形成した後、両者を重ね合せ押圧する方法;などをあげることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
測定方法
(イ)全光線透過率:
JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
(ロ)ヘーズ:
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
(ニ)鉛筆硬度:
JIS K 5600−5−4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用い、ハードコート積層フィルムの第1ハードコート側の表面について測定した。
(ホ)黄色度指数;
JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定した。
(へ)碁盤目試験(密着性):
JIS K 5600−5−6:1999に従い、ハードコート積層フィルムに第1ハードコート側の表面から碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
(ト)水接触角(初期水接触角):
ハードコート積層フィルムの第1ハードコート側の表面を、KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JIS R 3257:1999を参照。)で測定した。
(チ)耐擦傷性1(綿拭後の水接触角):
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコート側の面が表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、このガーゼで覆ったステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート側の表面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復1万回擦った後、上記(ト)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定した。水接触角が100度以上であるときは、更に往復5千回擦った後、上記(ト)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復2万5千回後でも水接触角100度以上。
B:往復2万回後では水接触角100度以上だが、2万5千回後は100度未満。
C:往復1万5千回後では水接触角100度以上だが、2万回後は100度未満。
D:往復1万回後では水接触角100度以上だが、1万5千回後は100度未満。
E:往復1万回後で水接触角100度未満。
(リ)耐擦傷性2(耐スチールウール性):
ハードコート積層フィルムを、第1ハードコート側の面が表面になるようにJIS L 0849:2013の学振試験機に置いた。続いて、学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、試験片の表面を往復100回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察した。傷が認められない場合には、更に往復100回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復500回後でも傷は認められない。
B:往復400回後では傷は認められないが、往復500回後には傷を認めることができる。
C:往復300回後では傷は認められないが、往復400回後には傷を認めることができる。
D:往復200回後では傷は認められないが、往復300回後には傷を認めることができる。
E:往復100回後では傷は認められないが、往復200回後には傷を認めることができる。
F:往復100回後で傷を認めることができる。
(ヌ)表面平滑性(表面外観):
ハードコート積層フィルムの表面(両方の面)を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にうねりや傷がない。間近に光を透かし見ても、曇感がない。
○:間近に光を透かし見ると、僅かな曇感のある箇所がある。
△:間近に見ると、表面にうねりや傷を僅かに認める。また曇感がある。
×:表面にうねりや傷を多数認めることができる。また明らかな曇感がある。
(ル)最小曲げ半径:
JIS−K6902:2007の曲げ成形性(B法)を参考とし、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%にて24時間状態調節した試験片について、曲げ温度23℃±2℃、折り曲げ線はハードコート積層フィルムのマシン方向と直角となる方向とし、ハードコート積層フィルムの第1ハードコート側の面が外側となるように折り曲げて曲面が形成されるようにして行った。クラックが発生しなかった成形ジグのうち正面部分の半径の最も小さいものの正面部分の半径を最小曲げ半径とした。この「正面部分」は、JIS K6902:2007の18.2項に規定されたB法における成形ジグに関する同用語を意味する。
(ヌ)切削加工性(曲線状切削加工線の状態):
コンピュータにより自動制御を行うルーター加工機を使用し、ハードコート積層フィルムに、直径2mmの真円形の切削孔と直径0.5mmの真円形の切削孔を設けた。このとき使用したミルは刃先の先端形状が円筒丸型の超硬合金製4枚刃、ニック付きのものであり、刃径は加工箇所に合わせて適宜選択した。続いて直径2mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。同様に直径0.5mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。表には前者の結果−後者の結果の順に記載した。
◎:顕微鏡観察でもクラック、ヒゲは認められない
○:顕微鏡観察でもクラックは認められない。しかしヒゲは認められる。
△:目視でクラックは認められない。しかし顕微鏡観察ではクラックが認められる。
×:目視でもクラックが認められる。
使用した原材料
(A)多官能(メタ)アクリレート:
(A−1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。6官能。
(A−2)ペンタエリスリトールトリアクリレート。3官能。
(B)N−置換(メタ)アクリルアミド化合物:
(B−1)アクリロイルモルホリン。
(B−2)N,N−ジエチルアクリルアミド。
(B−3)N−ヒドロキシエチルアクリルアミド。
(C)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子:
(C−1)ビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径20nmのシリカ微粒子。
(D)レベリング剤:
(D−1)楠本化成株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「ディスパロンNSH−8430HF(商品名)」。固形分10質量%。
(D−2)ビックケミー・ジャパン株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「BYK−3550(商品名)」。固形分52質量%。
(D−3)ビックケミー・ジャパン株式会社のアクリル重合体系レベリング剤「BYK−399(商品名)」。固形分100質量%。
(D−4)楠本化成株式会社のシリコン系レベリング剤「ディスパロンLS−480(商品名)」。固形分100質量%。
(E)撥水剤:
(E−1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「KY−1203(商品名)」。固形分20質量%。
(E−2)ソルベイ(Solvay)社のメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「FOMBLIN MT70(商品名)」。固形分70質量%。
(F)シランカップリング剤:
(F−1)信越化学工業株式会社のN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン「KBM−602(商品名)」。
(F−2)信越化学工業株式会社のN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM−603(商品名)」。
(F−3)信越化学工業株式会社の3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM−903(商品名)」。
(F−4)信越化学工業株式会社の3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン「KBM−802(商品名)」。
(F−5)信越化学工業株式会社の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403(商品名)」。
(G)任意成分:
(G−1)双邦實業股分有限公司のフェニルケトン系光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)「SB−PI714(商品名)」。
(G−2)1−メトキシ−2−プロパノール。
(P)透明樹脂フィルム:
(P−1)2種3層マルチマニホールド方式の共押出Tダイ、及び第一鏡面ロール(溶融フィルムを抱いて次の移送ロールへと送り出す側のロール。)と第二鏡面ロールとで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機を備えた装置(図2参照)を使用し、2種3層多層樹脂フィルムの両外層((α1)層と(α2)層)としてエボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂「PLEXIMID TT50(商品名)」を、中間層(β層)として住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート系樹脂「カリバー302−4(商品名)」を、共押出Tダイから連続的に共押出し、上記(α1)層が第一鏡面ロール側となるように、回転する第一鏡面ロールと第二鏡面ロールとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μm、上記(α1)層の層厚み80μm、上記(β)層の層厚み90μm、上記(α2)層の層厚み80μmの透明樹脂フィルムを得た。このとき設定条件は、Tダイの設定温度300℃、第一鏡面ロールの設定温度130℃;第二鏡面ロールの設定温度120℃、引取速度6.5m/分であった。
例1
上記成分(A−1)100質量部、上記成分(B−1)3質量部、上記成分(E−1)2質量部(固形分換算0.40質量部)、上記成分(E−2)0.06質量部(固形分換算0.042質量部)、及び上記成分(G−1)4質量部、及び上記成分(G−2)100質量部を混合攪拌して、塗料を得た。表1に配合を示す。なお上記(E−1)と上記成分(E−2)については、表に固形分換算の値を記載している。次に、上記(P−1)の上記(α2)層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記で得た塗料をウェット厚み21μm(硬化後厚み11μm)となるように塗布した。次に炉内温度90℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置(図3参照)を使用し、鏡面金属ロールの温度60℃、積算光量480mJ/cm2の条件で処理し、ハードコートを形成した。同様にして、上記(P−1)の上記(α1)層側の面の上にもハードコートを形成し、ハードコート積層フィルムを得た。後から形成したハードコート(上記(P−1)の上記(α1)層側の面の上に形成したハードコート)を第1ハードコートとして、上記試験(イ)〜(ヌ)を行った。結果を表1に示す。
例2〜8
用いる塗料の配合を表1に示すように変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1に示す。
本発明のハードコート積層フィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の面の上に何ら易接着処理を行うことなくハードコートを形成しているが、ハードコートと透明樹脂フィルムとの密着性は良好である。また透明性、表面硬度、色調、耐擦傷性、及び表面平滑性にも優れている。
表面側から順に第2ハードコート、第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する態様:
以下、本発明のハードコート積層フィルムが、表面側から順に第2ハードコート、第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する場合について、実施例により説明する。
(H1)第1ハードコート形成用塗料:
(H1−1)上記(A−2)100質量部、上記(B−1)12質量部、上記(C−1)140質量部、上記(D−1)2質量部(固形分換算0.2質量部)、上記(G−1)17質量部、及び上記(G−2)200質量部を混合攪拌して得た塗料。表2に配合を示す。なお上記(D−1)については、表に固形分換算の値を記載している。
(H1−2〜15)配合を表2又は表3に示すように変更したこと以外は、上記(H1−1)と同様にして塗料を得た。なお上記(D−1)、及び上記(D−2)については、表に固形分換算の値を記載している。
(H2)第2ハードコート形成用塗料:
(H2−1)上記(A−1)100質量部、上記(E−1)2質量部(固形分換算0.40質量部)、上記(E−2)0.06質量部(固形分換算0.042質量部)、上記(F−1)0.5質量部、上記(G−1)4質量部、及び上記(G−2)100質量部を混合攪拌して得た塗料。表1に配合を示す。なお上記(E−1)と上記(E−2)については、表に固形分換算の値を記載している。
(H2−2〜16)配合を表4又は表5に示すように変更したこと以外は、上記(H2−1)と同様にして塗料を得た。なお上記(E−1)と上記(E−2)については、表に固形分換算の値を記載している。
例9
上記(P−1)の上記(α2)層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H1−1)をウェット厚み40μm(硬化後厚み22μm)となるように塗布した。次に炉内温度90℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置を使用し(図3参照)、鏡面金属ロールの温度60℃、積算光量480mJ/cm2の条件で処理し、第3ハードコートを形成した。次に、上記(P−1)の上記(α1)層側の面の上にダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H1−1)をウェット厚み40μm(硬化後厚み22μm)となるように塗布した。次に炉内温度90℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置を使用し(図3参照)、鏡面金属ロールの温度90℃、積算光量80mJ/cm2の条件で処理した。上記(H1−1)のウェット塗膜は、指触乾燥状態の塗膜になった。次に上記(H1−1)の指触乾燥状態の塗膜の上にダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H2−1)をウェット厚み4μm(硬化後厚み2μm)となるように塗布した。次に炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置を使用し(図3参照)、鏡面金属ロールの温度60℃、積算光量480mJ/cm2の条件で処理して、第2ハードコート、及び第1ハードコートを形成し、ハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表6に示す。なお表中、第1HCとは第1ハードコートの意味である。第2HCとは第2ハードコートの意味である。第3HCとは第3ハードコートの意味である。
例10〜23
第1ハードコート及び第3ハードコート形成用塗料として、表6〜8の何れか1に示すものを用いたこと以外は、例9と同様にしてハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表6〜8の何れか1に示す。
例24〜38
第2ハードコート形成用塗料として、表8又は表9に示すものを用いたこと以外は、例9と同様にしてハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表8又は表9に示す。
例39〜42
第1ハードコート及び第3ハードコートの厚みを、表10に示すように変更したこと以外は、例9と同様にしてハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表10に示す。
例43〜46
第2ハードコートの厚みを、表10に示すように変更したこと以外は、例9と同様にしてハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表10に示す。
本発明の好ましいハードコート積層フィルムは、ハードコートとフィルム基材との密着性に優れ、透明性、表面硬度、色調、耐擦傷性、表面平滑性、耐曲げ性、及び切削加工性にも優れている。そのため液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置の部材(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)、特にタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として好適に用いることができる。