しかし、上述した適切な過給が行われる状態を維持するには、上記制御装置は、排気切替弁が正常に作動しているか否かを判定するだけではなく、排気切替弁とは異なる他の制御弁が正常に作動しているか否かも判定することが望ましい。より具体的に述べると、上記制御装置は、「第1過給機のコンプレッサに供給される空気の流量を調整するためのバイパス通路に配設された制御弁(吸気切替弁)」が正常に作動しているか否かも判定することが望ましい。しかしながら、従来公報は、吸気切替弁が正常に作動しているか否かを如何に判定するかについて何ら開示していない。
更に、上記従来装置においては、排気切替弁が異常であっても、実際の過給圧が予め定められている過給圧の最大値よりも大きくなるまでその異常を発見することができない。加えて、実際の過給圧がこの最大値よりも大きくなるのは、一般に、機関が高負荷運転領域において運転されている場合である。そのため、上記従来装置においては、機関が高負荷運転領域以外の運転領域において運転されている場合、制御弁が異常であることを発見することができない。しかしながら、制御弁が異常である場合、その異常は出来る限り早期に発見することが望ましい。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、上述したような「複数の過給機と、複数のバイパス通路と、排気切替弁及び吸気切替弁を含む複数の制御弁と、を備えた内燃機関」に適用され、排気切替弁及び吸気切替弁が正常に作動しているか否かを、早期に発見することができる新規な制御弁異常判定装置を提供することにある。
上記課題を達成するための本発明による内燃機関の制御弁異常判定装置は、第1過給機、第2過給機、第1通路部、前記排気切替弁に相当する第1制御弁、第2通路部、及び、前記吸気切替弁に相当する第2制御弁、を備えた内燃機関に適用される。
前記第1過給機は、第1タービンと、第1コンプレッサと、を備える。
前記第1タービンは、排気通路に配設される。これにより、前記第1タービンは、その第1タービンに導入される排ガスのエネルギによって駆動される。前記第1コンプレッサは、前記機関の吸気通路に配設される。吸気通路は、前記機関の外部の空気を同外部から前記燃焼室へ導入する通路である。前記第1コンプレッサは、前記第1タービンが駆動されることによって駆動されるようになっている。これにより、第1コンプレッサは、第1コンプレッサに導入される空気を圧縮する。以下、機関の外部から燃焼室へ導入される空気を「新気」とも称呼する。
前記第2過給機は、第2タービンと、第2コンプレッサと、を備える。
前記第2タービンは、前記排気通路の前記第1タービンよりも下流側に配設される。これにより、第2タービンは、その第2タービンに導入される排ガスのエネルギによって駆動される。前記第2コンプレッサは、前記吸気通路の前記第1コンプレッサよりも上流側に配設される。前記第2コンプレッサは、前記第2タービンが駆動されることによって駆動されるようになっている。これにより、第2コンプレッサは、第2コンプレッサに導入される空気を圧縮する。即ち、前記第1過給機と前記第2過給機とは、直列に接続されている。
前記第1通路部は、その一端が前記第1タービンよりも上流側において前記排気通路に接続されるとともに、その他端が同第1タービンと前記第2タービンとの間において同排気通路に接続される通路である。即ち、この第1通路部は、第1タービンをバイパスする経路を構成している。
前記第1制御弁は、前記第1通路部に配設されている。この第1制御弁は、その開度に応じて前記第1通路部の流路面積を変更するようになっている。これにより、第1制御弁は、「前記第1タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさ」と「前記第2タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさ」との割合を変更する。
前記第2通路部は、その一端が前記第1コンプレッサと前記第2コンプレッサとの間において前記吸気通路に接続されるとともに、その他端が同第1コンプレッサよりも下流側において同吸気通路に接続される通路である。即ち、この第2通路部は、第1コンプレッサをバイパスする経路を構成している。
前記第2制御弁は、前記第2通路部に配設されている。この第2制御弁は、第2通路部の「第2制御弁よりも上流側の空気の圧力」が「第2制御弁よりも下流側の空気の圧力」よりも第1圧力以上大きいとき第2通路部を空気が通流可能となるように「開放」するようになっている。更に、この第2制御弁は、「第2通路部の第2制御弁よりも上流側の空気の圧力」が「第2制御弁よりも下流側の空気の圧力」よりも第1圧力以上大きくないとき第2通路部を空気が通流不能となるように「遮断」するようになっている。
このように構成された第2制御弁は、第2制御弁よりも下流側の空気の圧力が第2制御弁よりも上流側の空気の圧力よりも大きい場合(即ち、第1コンプレッサが新気を圧縮している場合)、第2通路部を遮断する。その結果、第1コンプレッサによって圧縮された新気は、前記燃焼室に導入される。
本発明の制御弁異常判定装置は、上述した内燃機関に適用される。この制御弁異常判定装置は、第1制御弁を作動させる制御弁作動手段、圧力取得手段、及び、異常判定手段、を備える。
前記制御弁作動手段は、前記機関の外部から前記燃焼室へ導入される空気の量である「新気量」に応じて第1制御弁を作動させるようになっている。具体的に述べると、制御弁作動手段は、新気量が「第1閾値新気量」以下である「第1運転領域」にて前記機関が運転されている場合、前記第1タービンを駆動させることによって前記第1コンプレッサが前記第1コンプレッサに導入される空気を圧縮して排出するように前記第1制御弁を作動させるようになっている。
上記「第1運転領域」は、第1過給機及び第2過給機のうちの「第1過給機のみ」が過給することができる運転領域と実質的に一致する領域である。即ち、機関がこの第1運転領域にて運転されているとき、第2過給機は過給することができない。従って、機関が第1運転領域にて運転されているとき、第1過給機の過給を制御する制御弁である「第1制御弁及び第2制御弁」が正常に作動していれば、新気は第1過給機によって適切に圧縮される。
前記圧力取得手段は、「前記第1コンプレッサと前記第2コンプレッサとの間」の吸気通路内の空気の圧力である「コンプレッサ間圧力」を取得するようになっている。
更に、前記圧力取得手段は、「前記第1コンプレッサよりも下流側であり、且つ、前記第1コンプレッサと前記燃焼室との間に存在する圧力損失発生部材よりも上流側」の吸気通路内の空気の圧力である「第1コンプレッサ下流圧」を取得するようになっている。即ち、この第1コンプレッサ下流圧は、前記第1コンプレッサを通過した直後の空気の圧力に実質的に一致する圧力である。
ここで、上記「圧力損失発生部材」は、第1コンプレッサよりも下流側に存在する部材であって、その圧力損失発生部材を通過する新気の圧力を減少させる部材である。例えば、圧力損失発生部材として、新気冷却装置(インタークーラ)、新気量調整装置(スロットル弁)、及び、吸気通路を構成する吸気管の内壁面等が挙げられる。
加えて、前記圧力取得手段は、「前記圧力損失発生部材よりも下流側」の吸気通路内の空気の圧力である「過給圧」を取得するようになっている。この過給圧は、前記第1コンプレッサ下流圧よりも上記圧力損失発生部材によって減少する圧力損失量だけ小さい圧力となる。
前記異常判定手段は、
前記機関が前記「第1運転領域」にて運転されている場合に、「前記機関の運転状態に基づいて定まる参照過給圧」よりも「前記取得される過給圧」が第2圧力以上小さい状態である「過給圧異常状態」が発生している場合、
(A)前記機関が前記第1運転領域にて運転されているときに前記第1コンプレッサ下流圧が前記コンプレッサ間圧力以上の第1閾値圧力よりも大きければ、「前記第1制御弁が異常であり且つ前記第2制御弁は正常である」旨の判定を行い、
(B)前記機関が前記第1運転領域にて運転されているときに同第1コンプレッサ下流圧が同第1閾値圧力以下であれば、「前記第1制御弁及び前記第2制御弁の何れか一方が異常である」旨の判定を行う、
ようになっている。
ここで、上記「参照過給圧」は、第1制御弁及び第2制御弁が異常であるか否かを判定する際の指標となる値であって、第1制御弁及び第2制御弁の双方が「正常」である場合に得られる過給圧と実質的に一致する値である。例えば、参照過給圧は、第1制御弁及び第2制御弁の双方が正常である場合における「所定の運転パラメータと過給圧との関係」を予め実験によって定めるとともに、機関が運転されている際に取得される「実際の運転パラメータ」をその定められた関係に適用することにより、定めることができる。更に、例えば、参照過給圧は、機関に要求される目標過給圧とすることもできる。
従って、第1制御弁及び第2制御弁の双方が正常であるとき、上記圧力取得手段によって取得される過給圧は、参照過給圧に実質的に一致する。一方、第1制御弁及び第2制御弁の少なくとも一方が異常であるとき、過給圧は参照過給圧よりも小さくなる。
そこで、上記異常判定手段は、過給圧が参照過給圧よりも第2圧力以上小さいとき(上記「過給圧異常状態」が発生しているとき)、どの制御弁が異常であるかを確認するようになっている。ここで、上記「第2圧力」は、過給圧が参照過給圧よりもその第2圧力以上小さいとき、第1制御弁及び第2制御弁の少なくとも一方が異常であると判断することができる適値とすることができる。なお、第2圧力はゼロであってもよい。
より具体的に述べると、本発明の制御弁異常判定装置においては、機関が「第1運転領域」にて運転されている場合に「過給圧異常状態」が発生すると、「コンプレッサ間圧力に応じて定まる第1閾値圧力」と「第1コンプレッサ下流圧」とが比較される。更に、その比較の結果に基づき、いずれの制御弁が異常であるのかを確認する(上記(A)及び(B)を参照。)。以下、前記異常判定手段によって採用された「第1制御弁及び第2制御弁の異常を判定するための原理」について説明する。以下、便宜上、本原理を単に「異常判定原理」とも称呼する。
上述したように、第1制御弁は、その開度に応じて第1通路部の流路面積を変更することによって第1タービンに導入される排ガスのエネルギを変更する。具体的に述べると、第1制御弁の開度が第1通路部を遮断する開度(全閉開度)であるとき、第1タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさは最大となる。このとき、第1タービンが駆動されることによって第1コンプレッサが駆動され、その第1コンプレッサは新気を圧縮する。
第1制御弁の開度が「全閉開度」よりも大きくなると、第1タービンに導入される排ガスのエネルギは減少する。このとき、第1タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさが「第1コンプレッサを駆動することができるエネルギの大きさの下限値」以上であれば、第1コンプレッサは新気を圧縮することができる。一方、第1タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさがこの「下限値」よりも小さくなると、第1コンプレッサは新気を圧縮することができない。例えば、第1制御弁の開度が第1通路部を完全に開放する開度(全開開度)であるとき、排ガスのエネルギは第1タービンに実質的に導入されないから、第1コンプレッサは新気を圧縮することができない。
以下、便宜上、第1制御弁の開度のうち、「全閉開度」から「第1タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさが上記下限値となる開度」までの開度範囲を「第1コンプレッサ駆動可能範囲」と称呼する。更に、便宜上、第1制御弁の開度のうち、「第1タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさが上記下限値となる開度」から「全開開度」までの開度範囲を「第1コンプレッサ駆動不能範囲」と称呼する。
(1)いま、第1制御弁が「正常」であると仮定する。上述したように、機関が「第1運転領域」にて運転されている場合、第1制御弁は「前記第1コンプレッサが前記第1コンプレッサに導入される空気を圧縮して排出する」ように作動させられる。即ち、第1制御弁は、その開度が上記第1コンプレッサ駆動可能範囲内の所定開度となるように作動させられる。従って、第1コンプレッサを通過した「後」の新気の圧力(上記第1コンプレッサ下流圧)は、第1コンプレッサを通過する「前」の新気の圧力(上記コンプレッサ間圧力)よりも大きくなる。なお、上記「所定開度」は、機関の運転状態等に基づいて決定される開度である。
ところで、上述したように、第2制御弁は、「第2通路部の第2制御弁よりも上流側の空気の圧力(コンプレッサ間圧力)」が「第2通路部の第2制御弁よりも下流側の空気の圧力(第1コンプレッサ下流圧)」よりも第1圧力以上大きいとき第2通路部を開放し、第1圧力以上大きくないとき第2通路部を遮断するようになっている。従って、第2制御弁が「正常」であれば、第1コンプレッサ下流圧がコンプレッサ間圧力よりも大きいとき、第2制御弁は第2通路部を必ず遮断する。その結果、第1コンプレッサによって圧縮された新気は、機関の燃焼室に導入される。このとき、新気は適切に圧縮されているから、過給圧と参照過給圧とは一致する。
一方、第2制御弁が「異常」であると、第1コンプレッサが新気を圧縮するように駆動されていても(即ち、第1コンプレッサ下流圧がコンプレッサ間圧力よりも大きくなるように第1過給機が作動させられていたとしても)、第2制御弁は第2通路部を遮断しない。第2通路部が遮断されないとき、第1コンプレッサの上流側と下流側とは導通された状態となっている。従って、このとき、新気は圧縮されない。よって、過給圧は参照過給圧よりも小さくなる。
(2)次に、第1制御弁が「異常」である(第1制御弁の開度は上記「所定開度」に一致していない)と仮定する。このとき、第1制御弁が異常であってその開度が第1コンプレッサ駆動可能範囲内の開度となる場合と、第1制御弁が異常であってその開度が第1コンプレッサ駆動不能範囲内の開度となる場合とにより、発生する現象が相違する。
(2−1)第1制御弁が異常であってその開度が第1コンプレッサ駆動可能範囲内の開度となる場合。
この場合、第2制御弁が「正常」であれば、第1コンプレッサは新気を圧縮することはできる。ただし、第1制御弁の開度が所定開度と異なっているから、過給圧は参照過給圧よりも小さくなる。
(2−2)第1制御弁が異常であってその開度が第1コンプレッサ駆動不能範囲内の開度となる場合。
この場合、第2制御弁が「正常」であるか否かに関わらず、第1コンプレッサは新気を圧縮することができない。従って、このとき、過給圧は参照過給圧よりも小さくなる。
このように、機関が第1運転領域にて運転されているとき、第1制御弁及び第2制御弁の何れかが異常であると、過給圧は参照過給圧よりも小さくなる。しかし、上記(2−1)のように、第1制御弁が「異常(ただし、第1制御弁の開度は第1コンプレッサ駆動可能範囲内の開度である。)」であり且つ第2制御弁が「正常」であれば、第1コンプレッサは新気を圧縮することができる。そこで、「過給圧が参照過給圧よりも小さく、且つ、第1コンプレッサが新気を圧縮しているとき(第1コンプレッサ下流圧が、第1閾値圧力よりも大きいとき)」、異常判定手段は、「第1制御弁が異常であり且つ第2制御弁は正常である」旨の判定を行う(上記(A)を参照。)。
それに対し、上記(1)のように第1制御弁が「正常」であり且つ第2制御弁が「異常」である場合、又は、上記(2−2)のように第1制御弁が「異常(ただし、第1制御弁の開度は第1コンプレッサ駆動不能範囲内の開度である。)」である場合、第1コンプレッサは新気を圧縮することができない。そこで、「過給圧が参照過給圧よりも小さく、且つ、第1コンプレッサが新気を圧縮していないとき(第1コンプレッサ下流圧が上記第1閾値圧力以下であるとき)」、異常判定手段は、「第1制御弁及び第2制御弁の何れか一方が異常である」旨の判定を行う(上記(B)を参照。)。以上が、異常判定手段によって採用された「異常判定原理」である。
ここで、上記第1閾値圧力は、一定値でもよく、前記コンプレッサ間圧力よりもゼロを含む第3圧力だけ大きい圧力(即ち、前記コンプレッサ間圧力以上の範囲において同コンプレッサ間圧力が大きいほど大きくなる圧力)に設定されてもよい。この第3圧力は、第1コンプレッサ下流圧が「コンプレッサ間圧力よりも第3圧力だけ大きい圧力」よりも大きい場合に第1コンプレッサが新気を圧縮していると判定することができる適値とすることができる。
このように、本発明の制御弁異常判定装置は、複数の過給機と、複数のバイパス通路と、排気切替弁及び吸気切替弁を含む複数の制御弁と、を備えた内燃機関おいて、排気切替弁である第1制御弁、及び、吸気切替弁である第2制御弁が正常に作動しているか否かを判定することができる。更に、本発明の制御弁異常判定装置は、機関が比較的低負荷運転領域(第1運転領域)において運転されていても、上記制御弁が正常に作動しているか否かを判定することができる。従って、制御弁の異常を早期に発見することができる。
更に、本発明の制御弁異常判定装置においては、前記圧力取得手段が第1コンプレッサ下流圧を取得する方法は特に制限されない。
例えば、前記圧力取得手段は、前記圧力損失発生部材によって生じる圧力損失量を「推定」するとともに、前記過給圧を実際に検出することにより取得し、「同推定される圧力損失量と、前記取得される過給圧と、の和」を前記第1コンプレッサ下流圧として取得するように構成され得る。
ここで、上記圧力損失量を推定する方法は特に限定されない。例えば、この圧力損失量は、「新気の流量と、圧力損失発生部材において生じる圧力損失量と、の関係」を予め実験によって定めるとともに、実際の新気の流量をその定められた関係に適用することにより、推定することができる。
ところで、上述した複数の過給機を備えた内燃機関は、上述した構成に加え、「前記第2タービンをバイパスする第3通路部」及び「その第3通路部に配設される第3制御弁」を備えるように構成され得る。本発明の制御弁異常判定装置は、このように構成された内燃機関に対しても適用することができる。
より具体的に述べると、
前記第3通路部は、一端が前記第1タービンと前記第2タービンとの間において前記排気通路に接続されるとともに、他端が前記第2タービンの下流側において同排気通路に接続される通路である。このように、この第3通路部は、前記第2タービンをバイパスする経路を構成している。
前記第3通路部に配設される前記第3制御弁は、その開度に応じて同第3通路部の流路面積を変更するようになっている。これにより、第3制御弁は、「前記第2タービンに導入される排ガスのエネルギの大きさ」を変更する。
本発明の制御弁異常判定装置が上記機関に適用される場合、
前記制御弁作動手段は、
前記機関が前記「第1運転領域」にて運転されているか、又は、前記機関が「前記新気量が前記第1閾値新気量よりも大きく且つ同第1閾値新気量よりも大きい第2閾値新気量以下である第2運転領域」にて運転されているとき、前記第3通路部を排ガスが「通流不能」となるように前記第3制御弁を作動させるようになっている。
上記「第2運転領域」は、第1過給機及び第2過給機の「双方」が過給することができる運転領域と実質的に一致する領域である。即ち、機関がこの第2運転領域にて運転されているとき、第1制御弁及び第2制御弁の状態に関わらず、「第3制御弁」が正常に作動することによって排ガスが前記第3通路部を通過しないようになっていれば、第2過給機に十分な大きさの排ガスのエネルギが導入されるから、新気は第2過給機によって圧縮される。換言すると、新気が第2過給機によって圧縮されていれば、第3制御弁が正常に作動していると判断することができる。
そこで、前記異常判定手段は、
前記機関が前記「第2運転領域」にて運転されている場合に、前記「過給圧異常状態」が発生しているとき、
(C)前記コンプレッサ間圧力が所定の第2閾値圧力以上であれば「前記第3制御弁は正常である」旨の判定を行い、
(D)前記コンプレッサ間圧力が前記第2閾値圧力よりも小さければ「前記第3制御弁は異常である」旨の判定を行う、
ようになっている。
ここで、上記「第2閾値圧力」は、第3制御弁が異常であるか否かを判定する際の指標となる値であって、第3制御弁が「正常」である場合に得られるコンプレッサ間圧力の最小値に相当する値である。例えば、第2閾値圧力は、大気圧とすることができる。更に、第2閾値圧力は、大気圧に「機関の運転状態及び第2過給機に要求される性能等に基づいて定められる所定値」を加算した値とすることもできる。加えて、第2閾値圧力は、大気圧から「機関の外部から第2コンプレッサまでの経路において生じる圧力損失量」を減じた値とすることもできる。
このように、本発明の制御弁異常判定装置は、複数の過給機と、複数のバイパス通路と、排気切替弁、吸気切替弁、及び、他の制御弁(第3制御弁)を含む複数の制御弁と、を備えた内燃機関おいて、その「他の制御弁(第3制御弁)」が正常に作動しているか否かを判定することができる。
更に、本発明の制御弁異常判定装置は、「第1制御弁、第2制御弁、及び、第3制御弁のうちの2以上の制御弁に同時に異常が発生することはない」との前提に立って各制御弁の異常を判定するように構成され得る。実際、第1制御弁、第2制御弁、及び、第3制御弁のうちの2以上の制御弁に同時に異常が発生することは稀であり、この前提は現実的である。以下、この前提を「多重異常除外前提」と称呼する。この多重異常除外前提によれば、「第1制御弁、第2制御弁、及び、第3制御弁のうちの一の制御弁が異常である」と判定されたとき、「その一の制御弁とは異なる他の制御弁は正常である」と推定することができる。
そこで、上記制御弁異常判定装置において、
前記異常判定手段は、
「前記第3制御弁は異常である」旨の判定を行った場合、「前記第1制御弁及び前記第2制御弁は正常である」旨の推定を行う、
ように構成され得る。
更に、本発明の制御弁異常判定装置において、
前記制御弁作動手段は、
前記機関が前記「第2運転領域」にて運転されている場合、機関が「第1運転領域」にて運転されている場合と同様、前記第1コンプレッサが前記第1コンプレッサに導入される空気を圧縮して排出するように前記第1制御弁を作動させるように構成され得る。
上述した異常判定原理においては、機関が「第1運転領域」にて運転されている場合における第1制御弁及び第2制御弁の作動に基づき、第1制御弁及び第2制御弁の異常を判断している。しかし、上述したように制御弁作動手段が構成されると、第1制御弁は、機関が「第2運転領域」にて運転されている場合においても、機関が「第1運転領域」にて運転されている場合と同様に作動させられる。更に、第2制御弁は、機関が如何なる運転領域にて運転されているかに関わらず、第2制御弁の上流側の空気の圧力と下流側の空気の圧力とに基づいて作動する。従って、上記構成の機関が「第2運転領域」にて運転されている場合においても、異常判定原理を適用することができる。
そこで、前記異常判定手段は、
前記機関が前記「第2運転領域」にて運転されている場合、前記第3制御弁は正常である旨の判定を行ったとき、「異常判定原理」に基づいて、前記第1コンプレッサ下流圧が前記第1閾値圧力よりも大きければ「前記第1制御弁が異常であり且つ前記第2制御弁は正常である」旨の判定を行い、同第1コンプレッサ下流圧が同第1閾値圧力以下であれば「前記第1制御弁及び前記第2制御弁の何れか一方が異常である」旨の判定を行う、
ように構成され得る。
更に、本発明の制御弁異常判定装置は、前記機関が「第1運転領域」及び「第2運転領域」の何れかで運転されている場合において、前記過給圧異常状態が発生しており、且つ、前記第1コンプレッサ下流圧が前記第1閾値圧力以下であるとき(即ち、前記異常判定手段が「第1制御弁及び第2制御弁の何れか一方が異常である」旨の判定を行ったとき)、以下のように、第1及び第2制御弁の何れが異常であるかを特定するように構成され得る。
具体的に述べると、前記異常判定手段は、
「前記機関が前記第2運転領域にて運転されていること」を含む異常判定条件が成立している期間において、
先ず、前記取得される過給圧が大きくなるにつれて大きくなる過給圧相当値を「第1の値」として取得し、
次いで、同第1の値を取得した時点以降の「第1時点」にて前記第1制御弁の開度が「同第1の値を取得した時点における開度である第1開度とは異なる第2開度」に一致するように同第1制御弁を作動させ、
その後、同第1時点から所定時間が経過した後の「第2時点」における同取得される過給圧相当値を「第2の値」として取得する、
ようになっている。
上記異常判定条件が成立しているとき、機関は「第2運転領域」にて運転されているから、上述したように第1制御弁は「第1過給機及び第2過給機の双方が新気を圧縮する範囲」内にて作動させられる。このとき、排ガスのエネルギは、第1過給機と第2過給機とに分配されている。ここで、第1制御弁が「正常」であれば、第1制御弁の開度が第1開度から第2開度に変化するように作動させられたときに第1制御弁の実際の開度が第1開度から第2開度へと変化するので、第1過給機及び第2過給機にそれぞれ導入される排ガスのエネルギ量が変化する。
ここで、第2制御弁が「正常」であれば、第2制御弁は第2通路部を遮断するから、第1過給機及び第2過給機の双方が過給する(上記(1)を参照。)。更に、第1過給機に導入される排ガスのエネルギ量の変化に伴う第1過給機の過給効率の変化量と、第2過給機に導入される排ガスのエネルギ量の変化に伴う第2過給機の過給効率の変化量とは、互いに相違する。その結果、過給圧は変化する。
これに対し、第2制御弁が「異常」であれば、第2制御弁は第2通路部を遮断しないから、第2過給機のみが過給する(上記(1)を参照。)。更に、第2過給機に導入される排ガスのエネルギ量は変化する。その結果、過給圧は変化する。
つまり、第2制御弁の状態に関わらず、第1制御弁の開度が第1開度から第2開度へと変化するように第1制御弁を作動させたとき、第1制御弁の実際の開度が第1開度から第2開度へと変化しているのであれば、過給圧は必ず変化する。
従って、上述したように第1制御弁を作動させた場合に過給圧が変化すれば、第1制御弁は「正常」であると判定することができ、且つ、上記「多重異常除外前提」に従って第2制御弁は「異常」であると判定することができる。これに対し、上述したように第1制御弁を作動させた場合に過給圧が変化しなければ、第1制御弁が「異常」であると判定することができ、且つ、上記「多重異常除外前提」に従って第2制御弁は「正常」であると判定することができる。
そこで、前記異常判定手段は、
(E)前記第2の値と前記第1の値との差である「過給圧相当値変化量」の絶対値が所定の閾値変化量以上である場合、「前記第1制御弁が正常であり且つ前記第2制御弁が異常である」旨の判定を行い、
(F)同過給圧相当値変化量の絶対値が前記閾値変化量よりも小さい場合、「前記第1制御弁が異常であり且つ前記第2制御弁が正常である」旨の判定を行う、
ように構成され得る。
なお、上記「閾値変化量」は、第1制御弁が正常であるか否かを判定する際の指標となる値であって、第1制御弁が「正常」である場合に得られる「上記第1の値と上記第2の値との差(過給圧相当値変化量)の最小値」に相当する値である。
このように、本発明の制御弁異常判定装置は、前記異常判定手段が「第1制御弁及び第2制御弁の何れか一方が異常である」旨の判定を行った場合、第1制御弁を強制的に作動させ、その結果によって「第1制御弁及び第2制御弁の何れが異常であるか」を特定することができる。
更に、上記構成においては、過給圧相当値として「過給圧が大きくなるにつれて大きくなる量」が取得されている。この過給圧相当値として、例えば、過給圧そのもの又は新気量を挙げることができる。
そこで、前記異常判定手段は、過給圧相当値として前記「過給圧」を取得するように構成され得る。更に、前記異常判定手段は、前記過給圧相当値として前記「新気量」を取得するように構成され得る。
更に、本発明の制御弁異常判定装置においては、
前記制御弁作動手段は、
前記機関が前記「第1運転領域」にて運転されているとき、前記第1制御弁の開度が「全閉開度(第1通路部を遮断する開度)」となるように同第1制御弁を作動させるように構成されることが好適である。
第1制御弁をこのように作動させることにより、第1過給機(第1タービン)に導入される排ガスのエネルギの大きさを最大にすることができる。これにより、機関が第1運転領域にて運転されているとき、燃焼室から排出される排ガスのエネルギを「第1コンプレッサを駆動させる」ために最も効率良く活用することができる。
本発明の制御弁異常判定装置の一態様において、
前記第1制御弁は、指示信号に応答して前記第1通路部の流路面積を変更するように構成され、
前記制御弁作動手段又は前記異常判定手段は、前記第1制御弁駆動手段に前記指示信号を送出することにより前記第1制御弁の開度を変更するように構成される。
更に、上述したように、前記第2制御弁は、その上流側の空気の圧力と下流側の空気の圧力とに応じて第2通路部を遮断又は開放するようになっている。
このような第2制御弁は、一の態様として、
「弁体」と、前記弁体が着座する「着座部」と、前記弁体を前記着座部に向けて付勢する「付勢手段」と、を備えるように構成され得る。具体的に述べると、第2制御弁は、「前記第2通路部の同第2制御弁よりも上流側の空気の圧力が同第2制御弁よりも下流側の空気の圧力よりも前記第1圧力以上大きくない」とき、同弁体が同付勢手段の付勢力によって「同着座部に着座する第1位置」に移動せしめられることにより「同第2通路部を遮断する」ように構成され得る。更に、第2制御弁は、「同第2通路部の同第2制御弁よりも上流側の空気の圧力が同第2制御弁の下流側の空気の圧力よりも同第1圧力以上大きい」とき同弁体が同付勢手段の付勢力に抗して「前記第1位置と異なる第2位置」に移動せしめられることにより「同第2通路部を空気が通流可能となるように開放する」ように構成され得る。
上述した構成を有する第2制御弁においては、上記付勢手段の付勢力の大きさを変更することによって上記第1圧力を変更することができる。以下、このような構成を備えた制御弁を、便宜上、「自動開閉弁」と称呼する。
以下、本発明による内燃機関の制御弁異常判定装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
<装置の概要>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る制御弁異常判定装置(以下、「第1装置」とも称呼する。)を内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。機関10は、4気筒ディーゼル機関である。
この機関10は、燃料供給系統を含むエンジン本体20、エンジン本体20に空気を導入するための吸気系統30、エンジン本体20からの排ガスを外部に放出するための排気系統40、排ガスを吸気系統30側に還流させるためのEGR装置50、排ガスのエネルギによって駆動されてエンジン本体20に導入される空気を圧縮する過給装置60、を含んでいる。
エンジン本体20は、吸気系統30及び排気系統40が連結されたシリンダヘッド21を備えている。このシリンダヘッド21は、各気筒に対応するように各気筒の上部に設けられた複数の燃料噴射装置22を備えている。各燃料噴射装置22は、図示しない燃料タンクと接続されており、電気制御装置80からの指示信号に応じて各気筒の燃焼室内に燃料を直接噴射するようになっている。
吸気系統30は、シリンダヘッド21に形成された図示しない吸気ポートを介して各気筒に連通されたインテークマニホールド31、インテークマニホールド31の上流側集合部に接続された吸気管32、吸気管32内において吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁33、電気制御装置80からの指示信号に応じてスロットル弁33を回転駆動するスロットル弁アクチュエータ33a、スロットル弁33の上流において吸気管32に介装されたインタークーラ34、及び、インタークーラ34の上流に設けられた過給装置60の上流側であって吸気管32の端部に配設されたエアクリーナ35、を含んでいる。インテークマニホールド31及び吸気管32は、吸気通路を構成している。
排気系統40は、シリンダヘッド21に形成された図示しない排気ポートを介して各気筒に連通されたエキゾーストマニホールド41、エキゾーストマニホールド41の下流側集合部に接続された排気管42、及び、吸気管42に介装された過給装置60の下流側であって排気管42に介装された周知の排ガス浄化用触媒(DPNR)43、を備えている。エキゾーストマニホールド41及び排気管42は、排気通路を構成している。
EGR装置50は、排ガスをエキゾーストマニホールド41からインテークマニホールド31へと還流させる通路(EGR通路)を構成する排気還流管51、排気還流管51に介装されたEGRガス冷却装置(EGRクーラ)52、及び、排気還流管51に介装されたEGR制御弁53、を備えている。EGR制御弁53は、電気制御装置80からの指示信号に応じてエキゾーストマニホールド41からインテークマニホールド31へと還流させる排ガス量を変更し得るようになっている。
過給装置60は、第1過給機としての高圧段過給機61、及び、第2過給機としての低圧段過給機62、を有している。即ち、過給装置60は、複数(2つ)の過給機を備えている。
高圧段過給機61は、高圧段コンプレッサ61a及び高圧段タービン61bを有している。高圧段コンプレッサ61aは第1コンプレッサとも称呼される。高圧段コンプレッサ61aは吸気通路(吸気管32)に配設されている。高圧段タービン61bは第1タービンとも称呼される。高圧段タービン61bは排気通路(排気管42)に配設されている。高圧段コンプレッサ61aと高圧段タービン61bとは、ローターシャフト(図示省略。)によって同軸回転可能に連結されている。これにより、高圧段タービン61bが排ガスによって回転せしめられると、高圧段コンプレッサ61aは回転し、高圧段コンプレッサ61aに供給される空気を圧縮する(過給を行う)ようになっている。
低圧段過給機62は、低圧段コンプレッサ62a及び低圧段タービン62bを有している。低圧段コンプレッサ62aは第2コンプレッサとも称呼される。低圧段コンプレッサ62aは、高圧段コンプレッサ61aよりも吸気通路(吸気管32)の上流側に配設されている。低圧段タービン62bは、高圧段タービン61bよりも排気通路(排気管42)の下流側に配設されている。低圧段コンプレッサ62aと低圧段タービン62bとは、ローターシャフト(図示省略。)によって同軸回転可能に連結されている。これにより、低圧段タービン62bが排ガスによって回転せしめられると、低圧段コンプレッサ62aは回転し、低圧段コンプレッサ62aに供給される空気を圧縮する(過給を行う)ようになっている。このように、高圧段過給機61と低圧段過給機62とは、直列に接続されている。
更に、低圧段過給機62の容量は、高圧段過給機61の容量よりも大きい。従って、低圧段過給機62のチョーク流量は高圧段過給機61のチョーク流量よりも大きく、且つ、低圧段過給機62のサージ流量は高圧段過給機61のサージ流量よりも大きい。換言すると、高圧段過給機61が過給を行うために必要な排ガスのエネルギの最小値は、低圧段過給機62が過給を行うために必要な排ガスのエネルギの最小値よりも小さい。
これにより、高圧段過給機61及び低圧段過給機62は、負荷が小さい運転領域においては主に高圧段過給機61により過給を行い、且つ、負荷が大きい運転領域においては主に低圧段過給機62により過給を行うことができる。従って、高圧段過給機61と低圧段過給機62とによって、より広い運転領域(負荷領域)において新気が適切に圧縮(過給)される。
更に、過給装置60は、高圧段コンプレッサバイパス通路部(バイパス管)63、吸気切替弁(ACV)64、高圧段タービンバイパス通路部(バイパス管)65、排気切替弁(ECV)66、低圧段タービンバイパス通路部(バイパス管)67、及び、排気バイパス弁(EBV)68を備えている。
高圧段コンプレッサバイパス通路部63の一端は、高圧段コンプレッサ61aと低圧段コンプレッサ62aとの間において吸気通路(吸気管32)に接続されている。高圧段コンプレッサバイパス通路部63の他端は、高圧段コンプレッサ61aよりも下流側において吸気通路(吸気管32)に接続されている。即ち、高圧段コンプレッサバイパス通路部63は、高圧段コンプレッサ61aをバイパスする経路を構成している。高圧段コンプレッサバイパス通路部63は、便宜上、「第2通路部」とも称呼される。
吸気切替弁64は、高圧段コンプレッサバイパス通路部63に配設された自動開閉弁である。吸気切替弁64は、図2に示すように、弁体64aと、その弁体64aが着座する着座部64bと、弁体64aを着座部64bに向けて付勢する付勢手段(ばね)64cと、を備えている。吸気切替弁64は、「高圧段コンプレッサバイパス通路部63の吸気切替弁64よりも上流側の空気の圧力が吸気切替弁64よりも下流側の空気の圧力よりも所定圧力(第1圧力)以上大きくない」とき、弁体64aが付勢手段(ばね)64cの付勢力によって「着座部64bに着座する第1位置」に移動せしめられることにより「高圧段コンプレッサバイパス通路部63を遮断する」ように構成されている。
更に、吸気切替弁64は、「高圧段コンプレッサバイパス通路部63の吸気切替弁64よりも上流側の空気の圧力が吸気切替弁64の下流側の圧力よりも上記所定圧力以上大きい」とき弁体64aが付勢手段(ばね)64cの付勢力に抗して「第1位置と異なる第2位置」に移動せしめられることにより「高圧段コンプレッサバイパス通路部63を空気が通流可能となるように開放する」ように構成されている。従って、この吸気切替弁64は、電気制御装置80による指示信号とは独立して作動させられる弁である。吸気切替弁64は、便宜上、「第2制御弁」とも称呼される。
再び図1を参照すると、高圧段タービンバイパス通路部65の一端は、高圧段タービン61bよりも上流側において排気通路(排気管42)に接続されている。高圧段タービンバイパス通路部65の他端は、高圧段タービン61bと低圧段タービン62bとの間において排気通路(排気管42)に接続されている。即ち、高圧段タービンバイパス通路部65は、高圧段タービン61bをバイパスする経路を構成している。高圧段タービンバイパス通路部65は、便宜上、「第1通路部」とも称呼される。
排気切替弁66は、高圧段タービンバイパス通路部65に配設されたバタフライ弁である。排気切替弁66は、電気制御装置80からの指示に応じて駆動される排気切替弁アクチュエータ66aによってその開度(作動量)が変更されるようになっている。排気切替弁66は、その開度の変更に伴って高圧段タービンバイパス通路部65の流路面積を変更し、それにより、高圧段タービン61bに導入される空気の量と、高圧段タービンバイパス通路部65を通過する空気の量と、の割合を変更するようになっている。排気切替弁66は、便宜上、「第1制御弁」とも称呼される。
低圧段タービンバイパス通路部67の一端は、低圧段タービン62bよりも上流側において排気通路(排気管42)に接続されている。低圧段タービンバイパス通路部67の他端は、低圧段タービン62bよりも下流側において排気通路(排気管42)に接続されている。即ち、低圧段タービンバイパス通路部67は、低圧段タービン62bをバイパスする経路を構成している。低圧段タービンバイパス通路部67は、便宜上、「第3通路部」とも称呼される。
排気バイパス弁68は、低圧段タービンバイパス通路部67に配設されたバタフライ弁である。排気バイパス弁68は、電気制御装置80からの指示に応じて駆動される排気バイパス弁アクチュエータ68aによってその開度(作動量)が変更されるようになっている。排気バイパス弁68は、その開度の変更に伴って低圧段タービンバイパス通路部67の流路面積を変更し、それにより、低圧段タービン62bに導入される空気の量と、低圧段タービンバイパス通路部67を通過する空気の量と、の割合を変更するようになっている。排気バイパス弁68は、便宜上、「第3制御弁」とも称呼される。
更に、この第1装置は、熱線式エアフローメータ71、コンプレッサ間圧力センサ72、吸気温度センサ73、過給圧センサ74、クランクポジションセンサ75、及び、アクセル開度センサ76を備えている。
エアフローメータ71は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量(機関10に単位時間あたりに吸入される空気の質量であり、単に「流量」とも称呼する。)Gaに応じた信号を出力するようになっている。
コンプレッサ間圧力センサ72は、高圧段コンプレッサ61aと低圧段コンプレッサ62aとの間の吸気管32内の圧力(コンプレッサ間圧力)Pcに応じた信号を出力するようになっている。なお、コンプレッサ間圧力センサ72は、高圧段コンプレッサバイパス通路部63であって吸気切替弁64よりも上流側に配設されていてもよい。
吸気温度センサ73は、吸気管32内を流れる吸入空気の温度に応じた信号を出力するようになっている。
過給圧センサ74は、吸気管32のスロットル弁33の下流側に配設される。過給圧センサ74は、それが配設されている部位の吸気管32内の空気の圧力、即ち、機関10の燃焼室に供給される空気の圧力(過給圧)Pimを表す信号を出力するようになっている。
クランクポジションセンサ75は、クランクシャフト(図示省略。)が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランクシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。
アクセル開度センサ76は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの開度Accpに応じた信号を出力するようになっている。
電気制御装置80は、互いにバスで接続されたCPU81、ROM82、RAM83、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM84、及び、ADコンバータを含むインターフェース85等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース85は、上記各センサ等と接続され、CPU81に上記各センサ等からの信号を供給するようになっている。更に、インターフェース85は、CPU81の指示に応じて燃料噴射装置22、及び、各アクチュエータ(スロットル弁アクチュエータ33a、排気切替弁アクチュエータ66a、及び、排気バイパス弁アクチュエータ68a)等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
<装置の作動の概要>
次いで、上述したように構成された第1装置の作動の概要について説明する。
第1装置は、機関10の運転状態に応じ、過給装置60(高圧段過給機61及び低圧段過給機62)の作動形態を表す「ターボモード」を決定する。更に、第1装置は、過給装置60が所定のターボモードにて作動しているとき、過給圧と所定の参照過給圧とを比較することにより、新気が正常に圧縮されているか否かを確認する。
そして、第1装置は、新気が正常に圧縮されていないとき(即ち、上述した過給圧異常状態が生じているとき)、第1コンプレッサ下流圧とコンプレッサ間圧力とを比較することにより、排気切替弁(第1制御弁)66及び吸気切替弁(第2制御弁)64が正常に作動しているか否かを判定する。更に、第1装置は、コンプレッサ間圧力と予め定められた所定圧力とを比較することにより、排気バイパス弁(第3制御弁)68が正常に機能しているか否かを判定する。
更に、第1装置は、何れかの制御弁が異常である場合、上記判定の結果を機関10の操作者に対して通知するとともに、機関10を構成する部材への負担が小さい「退避運転」を実行する。一方、第1装置は、全ての制御弁が正常であるとき、操作者に対して通知は行わず、「通常運転」を実行する。以上が第1装置の作動の概要である。
<ターボモードの決定方法>
次いで、本発明の具体的な作動についての説明を行う前に、第1装置に採用されているターボモード、及び、その決定方法について説明する。
上述したように、高圧段過給機61が作動することができる排ガスのエネルギ量は、低圧段過給機62が作動することができる排ガスのエネルギ量よりも小さい。そこで、第1装置は、排ガスのエネルギが小さいとき(即ち、機関の負荷が小さく流量Gaが小さいとき)、排ガスが高圧段過給機61に優先的に供給されるように排気切替弁66を制御する。一方、第1装置は、排ガスのエネルギが大きいとき(即ち、機関の負荷が大きく流量Gaが大きいとき)、排ガスが低圧段過給機62に優先的に供給されるように排気切替弁66を制御する。更に、第1装置は、低圧段過給機62に供給される排ガスのエネルギの大きさを調整するように排気バイパス弁68を制御する。
即ち、第1装置は、機関10の運転状態に応じて、適切な量の排ガスが高圧段過給機61及び低圧段過給機62に供給されるように、排気切替弁66及び排気バイパス弁68を制御する。なお、上述したように、吸気切替弁64は、第1装置の制御からは独立し、吸気切替弁64の上流側の空気の圧力と下流側の空気の圧力とに基づいて作動する。
このような制御を実行するために、第1装置は、機関10の運転状態を4つの領域(運転領域)に分け、その4つの運転領域のそれぞれに適した吸気切替弁64、排気切替弁66及び排気バイパス弁68(以下、「各制御弁」とも称呼する。)の作動状態を決定する。この「各制御弁の作動状態」が、ターボモードに基づいて決定される。
このターボモードは、以下のように決定される。
第1装置は、図3(A)に示すように、「機関回転速度NEと、燃料噴射量Qと、ターボモードと、の関係を予め定めたターボモードテーブルMapTurbo(NE,Q)」をROM82に格納している。図3(A)の図中に示される「1」乃至「4」の数字は、それぞれターボモードの番号を示す。また、図3(A)の図中に示される「HP+LP」は高圧段過給機61と低圧段過給機62との双方を作動させることを示し、「LP」は低圧段過給機62を優先的に作動させることを示す。
ここで、図3(B)は、各ターボモードにおける各制御弁の作動状態を示す。図3(B)において、「全閉」は、制御弁の開度がその制御弁が設けられている通路を閉鎖する開度に設定され、空気又は排ガスがその通路を通過することができない状態であることを示す。一方、「全開」は、制御弁の開度がその制御弁が設けられている通路を完全に(限界まで)開放する開度に設定され、空気又は排ガスがその通路を制御弁の影響を実質的に受けることなく通過することができる状態であることを示す。更に、「開」は、制御弁の開度が「全閉」から「全開」までの間の開度に設定され、その制御弁が設けられている通路を通過する空気又は排ガスの流量が制御弁の開度に応じて変更可能となっている状態であることを示す。
なお、図3(B)において、「ECV」は排気切替弁(第1制御弁)66の略称であり、「ACV」は吸気切替弁(第2制御弁)64の略称であり、「EBV」は排気バイパス弁(第3制御弁)68の略称である。
第1装置は、上記ターボモードテーブルMapTurbo(NE,Q)に実際の機関回転速度NE及び燃料噴射量Qを適用することにより、ターボモード(各制御弁の作動状態)を決定する。そして、第1装置は、決定されたターボモードに応じて各制御弁の開度を制御する。
<制御弁の異常判定>
次いで、第1装置における制御弁の異常判定方法について説明する。
第1装置は、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されているときに、制御弁の異常判定を行う。
先ず、第1装置は、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されているとき、過給圧Pimと所定の参照過給圧とが一致しているか否かを判定する。第1装置において、参照過給圧は機関10の運転状態に基づいて定まる目標過給圧Pimtgtに設定される。この判定の結果、過給圧Pimと目標過給圧Pimtgtとが一致していない場合(過給圧Pimが目標過給圧Pimtgtよりも所定値(第2圧力)以上小さい場合。即ち、過給圧異常状態が発生している場合)、第1装置は、制御弁の少なくとも一つが異常であると判断するとともに、後述する異常判定方法に基づいて何れの制御弁が異常であるかを判定する。
上述したように、ターボモード1及びターボモード2においては、図3(A)に示すように、高圧段過給機61及び低圧段過給機62の「双方」が作動するように各制御弁が作動させられている。ここで、図3(C)に、ターボモードと新気量Gaとの関係を示す。図3(C)においては、図3(A)のターボモードテーブルMapTurbo(NE,Q)とともに、「新気量Gaと、その新気量Gaに基づいて定まる第1運転領域AR1及び第2運転領域AR2と、の関係」が示されている。
図3(C)に示すように、ターボモード1が選択される運転領域のうちの所定の低負荷運転領域(新気量Gaが第1閾値新気量A以下である第1運転領域)AR1においては、機関10に導入される空気の流量Gaが小さいから、各制御弁が上述したように作動させられていても、低圧段過給機62は作動することができない。即ち、この第1運転領域においては、「高圧段過給機61のみ」が作動する。一方、ターボモード1が選択される運転領域のうちの上記第1運転領域を除く運転領域と、ターボモード2が選択される運転領域と、を合わせた運転領域(新気量Gaが第1閾値新気量Aから第2閾値新気量B(B>A)までの範囲内の量となる第2運転領域)AR2においては、「高圧段過給機61及び低圧段過給機62の双方」が作動する。なお、図3(C)において、第2運転領域の上限を表す境界線(Ga=Bの境界線)は、ターボモード2とターボモード3との間の境界線に一致している。
<異常判定方法1>
機関が「第1運転領域AR1」にて運転されているとき、上述したように、高圧段過給機(第1過給機)61のみが過給することができ、低圧段過給機(第2過給機)62は過給することができない。そのため、排気バイパス弁68の状態は過給圧に影響を与えない。従って、機関が「第1運転領域AR1」にて運転されているときに過給圧異常状態が発生している場合、吸気切替弁64及び排気切替弁66のうちの少なくとも一方が異常であると判定できる。
機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されているときに過給圧異常状態が発生した場合、第1装置は、高圧段コンプレッサ61aが新気を圧縮しているか否かを判定する。その判定の結果、高圧段コンプレッサ61aが新気を圧縮していれば、第1装置は、「排気切替弁66は異常であり且つ吸気切替弁64は正常である」旨の判定を行う。一方、高圧段コンプレッサ61aが新気を圧縮していなければ、第1装置は、「排気切替弁66及び吸気切替弁64の何れか一方が異常である」旨の判定を行う。以下、この判定方法を「異常判定方法1」と称呼する。
なお、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されているときに過給圧異常状態が発生した場合、排気バイパス弁68も異常となっている可能性もある。しかし、上述したように、2以上の制御弁に同時に異常が発生することは稀である。そこで、第1装置は、上述した多重異常除外前提に従い、吸気切替弁64及び排気切替弁66のうちの少なくとも一方が異常であると判定した場合、排気バイパス弁68は正常であると推定する。
<異常判定方法2>
一方、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されているときに過給圧異常状態が発生した場合、第1装置は、先ず、低圧段コンプレッサ62aが新気を適切に圧縮しているか否かを判定する。その判定の結果、低圧段コンプレッサ62aが新気を圧縮していれば、第1装置は、「排気バイパス弁68は正常である」旨の判定を行う。一方、低圧段コンプレッサ62aが新気を圧縮していなければ、第1装置は、「排気バイパス弁68は異常である」旨の判定を行う。
更に、第1装置は、「排気バイパス弁68は正常である」旨の判定を行った場合、上述した「異常判定方法1」によって排気切替弁66及び吸気切替弁64の異常を判定する。これに対し、第1装置は、「排気バイパス弁68は異常である」旨の判定を行った場合、多重異常除外前提に従い、「排気切替弁66及び吸気切替弁64は正常である」旨の推定を行う。以下、この判定方法を「異常判定方法2」と称呼する。
以下、上述した「異常判定方法1及び異常判定方法2」によって制御弁の異常を判定することができる理由につき、以下に示した順序に従って説明する。
<説明順序>
(場合1−1)吸気切替弁64、排気切替弁66及び排気バイパス弁68の全てが正常である場合
(場合1−2)吸気切替弁64が異常であり、排気切替弁66及び排気バイパス弁68は正常である場合
(場合1−3)排気切替弁66が異常であり、吸気切替弁64及び排気バイパス弁68は正常である場合
(場合1−4)排気バイパス弁68が異常であり、吸気切替弁64及び排気切替弁66は正常である場合
<説明>
(場合1−1)吸気切替弁64、排気切替弁66及び排気バイパス弁68の全てが正常である場合
先ず、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されている場合について説明する。機関10が第1運転領域AR1(ターボモード1の低負荷運転領域)にて運転されているとき、図3(B)に示したように、吸気切替弁64、排気切替弁66及び排気バイパス弁68の全てが「全閉」状態となるように制御されている。
従って、図4に示すように、吸気通路32a(上記吸気通路32の一部)に導入された新気Inは、先ず、低圧段コンプレッサ62a、低圧段コンプレッサ62aと高圧段コンプレッサ61aとの間の吸気通路32b(上記吸気通路32の一部)、高圧段コンプレッサ61a、及び、吸気通路32c(上記吸気通路32の一部)を経て、機関10の燃焼室CCに導入される。
更に、燃焼室CCから排出された排ガスExは、排気通路42a(上記排気通路42の一部)、高圧段タービン61b、高圧段タービン61bと低圧段タービン62bとの間の排気通路42b(上記排気通路42の一部)、排気通路42c(上記排気通路42の一部)、低圧段タービン62b、及び、排気通路42d(上記排気通路42の一部)を経て、機関10の外部へ放出される。
この結果、高圧段タービン61bが「高圧段コンプレッサ61aに導入される新気In」を圧縮する。これに対し、第1運転領域AR1においては、排ガスExが低圧段タービン62bに導入されても、低圧段コンプレッサ62aは駆動されない。従って、機関10が第1運転領域AR1にて運転されている場合、全ての制御弁が正常であれば、高圧段コンプレッサ61aのみが新気Inを圧縮する。これにより、過給圧Pimと目標過給圧Pimtgtとが実質的に一致する。即ち、過給圧異常状態は発生しない。
次いで、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されている場合について説明する。機関10が第2運転領域AR2にて運転されているとき、図3(B)に示したように、吸気切替弁64及び排気バイパス弁68は「全閉」状態となり、排気切替弁66は「全閉」又は「開」状態となるように制御されることにより、高圧段コンプレッサ61a及び低圧段コンプレッサ62aの双方が新気Inを圧縮する。
なお、このとき、第1装置は、機関10の運転状態に応じて定まる目標過給圧Pimtgtと、過給圧センサ74から取得される過給圧Pimと、が一致するように、排気切替弁66の開度をフィードバック制御している。これにより、過給圧Pimと目標過給圧Pimtgtとが実質的に一致する。即ち、過給圧異常状態は発生しない。
(場合1−2)吸気切替弁64が異常であり、排気切替弁66及び排気バイパス弁68は正常である場合
機関10が第1運転領域AR1又は第2運転領域AR2にて運転されている場合、吸気切替弁64は「全閉」状態となるはずである。従って、これらの運転領域において吸気切替弁64が異常であると、吸気切替弁64は開いた状態となる。以下、この状態を「吸気切替弁開異常状態」と称呼する。
この場合、図5に示したように、燃焼室CCから排出された排ガスExは、上記「場合1−1」と同様、高圧段タービン61b及び低圧段タービン62bを経て機関10の外部へ放出される。
従って、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されていれば、高圧段コンプレッサ61aのみが新気Inを圧縮するように駆動される。一方、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されていれば、高圧段コンプレッサ61a及び低圧段コンプレッサ62aの双方が新気Inを圧縮するように駆動される。
しかし、この場合、吸気切替弁64が「吸気切替弁開異常状態」となっている。そのため、機関10が「第1運転領域AR1」及び「第2運転領域AR2」の何れの運転領域にて運転されている場合であっても、低圧段コンプレッサ62aを通過した後の新気Inは、高圧段コンプレッサ61aには向かわず、高圧段コンプレッサバイパス通路部63を通過して機関10の燃焼室CCに導入される。従って、高圧段コンプレッサ61aが上述したように駆動されていても、高圧段コンプレッサ61aは新気Inを圧縮することができない。
この結果、コンプレッサ間圧力Pcと、高圧段コンプレッサ61aを通過した後の新気Inの圧力と、は実質的に同一となる。更に、過給することが期待されている高圧段過給機61が過給を行うことができないから、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。即ち、過給圧異常状態が発生する。
以上から明らかなように、機関10が少なくとも「第1運転領域AR1」にて運転されているときに過給圧異常状態が発生した場合、高圧段コンプレッサ61aが新気を圧縮していなければ、「本来閉じているべき吸気切替弁64」が開いていると判定することができる。但し、「本来閉じているべき吸気切替弁64」が開く場合には、吸気切替弁64自体が異常であること(吸気切替弁開異常状態)に起因して吸気切替弁64が開く場合と、以下に述べるように、排気切替弁66が異常であることに起因して吸気切替弁64が開く場合と、の二つの場合が含まれている。
(場合1−3)排気切替弁66が異常であり、吸気切替弁64及び排気バイパス弁68は正常である場合
機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されている場合、上述したように、排気切替弁66は「全閉」状態となるように制御されている。従って、機関10が第1運転領域AR1にて運転されている場合、排気切替弁66が異常であると、排気切替弁66は開いた状態となる(即ち、排気切替弁66の開度が全閉状態における開度よりも大きくなる。)。
この場合、図6に示したように、「排ガスExの一部」は高圧段タービン61bを通過してから低圧段タービン62bに導入され、「排ガスExの他の一部」は高圧段タービンバイパス通路部65を経由して低圧段タービン62bに直接導入される。従って、高圧段タービン61bに導入される排ガスのエネルギは、上記「場合1−1」に比べ、低圧段タービン62bに直接導入される分だけ減少する。
このとき、高圧段タービン61bに導入される排ガスExのエネルギの大きさが「高圧段コンプレッサ61aを駆動することができるエネルギの大きさの下限値」以上であれば(即ち、排気切替弁66の開度が所定の閾値開度以下であれば)、高圧段コンプレッサ61aは新気Inを圧縮することができる。従って、高圧段コンプレッサ61aを通過した後の新気Inの圧力は、コンプレッサ間圧力Pcよりも大きくなる。但し、高圧段コンプレッサ61aの駆動に供される排ガスExのエネルギが減少しているから、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。即ち、過給圧異常状態が発生する。なお、このような排気切替弁66の異常を「小開度の開異常状態」と称呼する。
従って、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されている場合、過給圧異常状態が発生し、且つ、高圧段コンプレッサ61aが新気Inを圧縮していれば、排気切替弁66は異常である(小開度の開異常状態にある)と判定することができる(上記異常判定方法1を参照。)。
これに対し、高圧段タービン61bに導入される排ガスExのエネルギの大きさが「高圧段コンプレッサ61aを駆動することができるエネルギの大きさの下限値」よりも小さいと(即ち、排気切替弁66の開度が上記閾値開度よりも大きいと)、高圧段コンプレッサ61aは新気Inを圧縮することができない。そのため、高圧段コンプレッサ61aを通過した後の新気Inの圧力は、コンプレッサ間圧力Pcよりも「高圧段コンプレッサ61aを通過する際の圧力損失分」だけ小さくなる。以下、このような排気切替弁66の異常を「大開度の開異常状態」と称呼する。
このとき、吸気切替弁64の弁体64aは、「高圧段コンプレッサバイパス通路部63を開放する」方向の力を受ける(以下、この力を、便宜上、「圧力差に起因する力」と称呼する。)。一方、弁体64aが付勢手段(ばね)から受ける付勢力は、この「圧力差に起因する力」以下となるように設定されている。従って、排気切替弁66の状態が「大開度の開異常状態」となると、吸気切替弁64も開く。
この結果、図7に示したように、新気Inは上記「場合1−2」と同様の経路を経て燃焼室CCへ導入されるようになる。従って、コンプレッサ間圧力Pcと、高圧段コンプレッサ61aを通過した後の圧力と、は実質的に同一となる。更に、過給することが期待されている高圧段過給機61が過給を行うことができないから、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。即ち、過給圧異常状態が発生する。
以上、説明したように、機関10が少なくとも「第1運転領域AR1」にて運転されているときに過給圧異常状態が発生し、且つ、その場合に高圧段コンプレッサ61aが新気を圧縮していない状態は、上記「場合1−2」のように吸気切替弁64が「吸気切替弁開異常状態」になっている場合と、排気切替弁66の状態が「大開度の開異常状態」となっている場合と、の二つの場合において発生する。
従って、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されている場合、過給圧異常状態が発生し、且つ、高圧段コンプレッサ61aが新気Inを圧縮していなければ、「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れか一方が異常である」と判定することができる。
以上、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されている場合における排気切替弁66の異常について説明した。ところで、上述したように、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されている場合、排気切替弁66の開度は、目標過給圧Pimtgtと過給圧Pimとが一致するようにフィードバック制御されている。ここで、排気切替弁66の開度がこのフィードバック制御によって定まる開度よりも大きくなると、上記同様、高圧段タービン61bに導入される排ガスのエネルギが減少する。そして、排気切替弁66の開度が上記閾値開度以上であるか否かにより、上記同様の現象が生じる。
即ち、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されている場合であっても、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されている場合と同様、排気切替弁66が「小開度の開異常状態」であるか「大開度の開異常状態」であるかにより、コンプレッサ間圧力Pcと、高圧段コンプレッサ61aを通過した後の圧力と、の関係が異なる。更に、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。
(場合1−4)排気バイパス弁68が異常であり、吸気切替弁64及び排気切替弁66は正常である場合
上述したように、機関10が第1運転領域AR1又は第2運転領域AR2にて運転されている場合、排気バイパス弁68は「全閉」状態となるように制御されている。従って、これらの運転領域において排気バイパス弁68が異常であると、排気バイパス弁68は開いた状態となる(排気切替弁66の開度が全閉状態における開度よりも大きくなる)。
この場合、図8に示したように、高圧段タービン61bを通過した排ガスExの一部は低圧段タービン62bを通過し、排ガスExの他の一部は低圧段タービンバイパス通路部67を通過する。従って、低圧段タービン62bに導入される排ガスのエネルギは、上記「場合1−1」に比べて減少する。そのため、機関10が少なくとも第2運転領域AR2にて運転されている場合、コンプレッサ間圧力Pcは、排気バイパス弁68が正常である場合におけるコンプレッサ間圧力Pc(例えば、大気圧Paに所定値を加えた値)よりも小さくなる。更に、過給圧Pimは、コンプレッサ間圧力Pcが小さくなる分だけ、目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。
従って、機関10が第2運転領域AR2にて運転されている場合、過給圧異常状態が発生し、且つ、低圧段コンプレッサ62aが新気Inを圧縮していれば、「排気バイパス弁68は正常である(従って、吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れかが異常である)」旨の判定を行うことができる。一方、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されている場合、過給圧異常状態が発生し、且つ、低圧段コンプレッサ62aが新気を圧縮していなければ、「排気バイパス弁68は異常である(従って、吸気切替弁64及び排気切替弁66の双方は正常である)」旨の判定を行うことができる(上記異常判定方法2を参照。)。
<実際の作動>
次いで、第1装置の実際の作動について説明する。
CPU81は、所定時間が経過する毎に図9にフローチャートによって示した「圧力損失量推定ルーチン」を実行するようになっている。従って、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進み、インタークーラ圧力損失量テーブルMapPDic(Ga)に、エアフローメータ71の出力値に基づいて得られる実際の空気の流量Gaを適用することにより、インタークーラ圧力損失量PDicを推定する。インタークーラ圧力損失量テーブルMapPDic(Ga)は、予め実験によって定めた「流量Gaと、インタークーラ圧力損失量PDicと、の関係」に基づくテーブルである。このテーブルによれば、流量Gaが大きいほどインタークーラ圧力損失量PDicは大きくなるように求められる。
次いで、CPU81は、ステップ920に進み、「流量Gaと、スロットル弁開度Otvと、スロットル弁圧力損失量PDtvと、の関係」を予め定めたスロットル弁圧力損失量テーブルMapPDtv(Ga,Otv)に、実際の「流量Ga及びスロットル弁開度Otv」を適用することにより、スロットル弁圧力損失量PDtvを推定する。実際のスロットル弁開度Otvは、スロットル弁アクチュエータ33aへの指示信号に基づいて求められる。このテーブルによれば、スロットル弁圧力損失量PDtvは、流量Gaが大きいほど大きくなるように求められる。更に、スロットル弁圧力損失量PDtvはスロットル弁開度Otvが小さいほど大きくなるように求められる。
次いで、CPU81は、ステップ930に進み、インタークーラ圧力損失量PDicとスロットル弁圧力損失量PDtvとの和を圧力損失量PDに格納する。その後、CPU81は、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU81は、所定時間が経過する毎に図10にフローチャートによって示した「異常判定ルーチン」を実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、排気切替弁66、吸気切替弁64、及び、排気バイパス弁68の異常を判定する。
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて、図10のステップ1000から処理を開始してステップ1002に進み、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されているか否かを判定する。機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されていなければ、CPU81は、ステップ1002にて「No」と判定してステップ1098に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、このとき、制御弁の異常判定は実行されない。それに対し、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されていれば、CPU81は、ステップ1002にて「Yes」と判定してステップ1004に進む。以下、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されていると仮定して説明を続ける。
CPU81は、ステップ1004にて、過給圧センサ74の出力値に基づいて取得される過給圧Pimと、機関10の運転状態に基づいて決定される目標過給圧Pimtgtと、が一致しているか否かを判定する。具体的に述べると、CPU81は、目標過給圧Pimtgtと過給圧Pimとの差が所定値Kよりも大きいか否かを判定する。ここで、所定値Kは、排気切替弁66、吸気切替弁64、及び、排気バイパス弁68の何れかが異常であるときに生じる過給圧Pimの低下量の大きさの最小値に相当する値に設定されている。即ち、目標過給圧Pimtgtと過給圧Pimとの差が所定値Kよりも大きいとき、排気切替弁66、吸気切替弁64、及び、排気バイパス弁68の何れかが異常である。
(仮定A)吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の全てが正常である場合
いま、吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の全てが正常であると仮定する。この場合、上述したように、過給圧Pimと目標過給圧Pimtgtとは一致する。
従って、CPU81は、ステップ1004にて「No」と判定してステップ1006に進み、吸気切替弁開放フラグXACVOPの値に「0」を設定する。吸気切替弁開放フラグXACVOPは、その値が「0」であるとき、吸気切替弁64が高圧段コンプレッサバイパス通路部63を遮断していることを表す。一方、吸気切替弁開放フラグXACVOPはその値が「1」であるとき、吸気切替弁64が高圧段コンプレッサバイパス通路部63を開放していることを表す。
ここで、吸気切替弁開放フラグXACVOPを含む第1装置が用いる各フラグの値は全て、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときに実行されるイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。更に、吸気切替弁開放フラグXACVOPを含む第1装置が用いる各フラグの値は全てバックアップRAM84に格納される。
次いで、CPU81は、ステップ1008に進み、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値に「0」を設定する。排気切替弁大開度異常フラグXECVFOは、その値が「0」であるとき、排気切替弁66が正常であることを表す。一方、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOはその値が「1」であるとき、排気切替弁66が異常(大開度の開異常状態)であることを表す。
次いで、CPU81は、ステップ1010に進み、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値に「0」を設定する。排気切替弁小開度異常フラグXECVIOは、その値が「0」であるとき、排気切替弁66が正常であることを表す。一方、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOはその値が「1」であるとき、排気切替弁66が異常(小開度の開異常状態)であることを表す。
次いで、CPU81は、ステップ1012に進み、排気バイパス弁異常フラグXEBVの値に「0」を設定する。排気バイパス弁異常フラグXEBVは、その値が「0」であるとき、排気バイパス弁68が正常であることを表す。一方、排気バイパス弁異常フラグXEBVはその値が「1」であるとき、排気バイパス弁68が異常であることを表す。
次いで、CPU81は、ステップ1014に進み、吸気切替弁異常フラグXACVの値に「0」を設定する。吸気切替弁異常フラグXACVは、その値が「0」であるとき、吸気切替弁64が正常であることを表す。一方、吸気切替弁異常フラグXACVはその値が「1」であるとき、吸気切替弁64が異常であることを表す。その後、CPU81は、ステップ1098に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU81は、所定時間が経過する毎に図11にフローチャートによって示した「異常通知ルーチン」を実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の何れかが異常である場合、機関10の操作者にその旨を通知する。
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始してステップ1105に進み、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値が「0」であるか否かを判定する。現時点における排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進む。
次いで、CPU81は、ステップ1110にて、吸気切替弁異常フラグXACVの値が「0」であるか否かを判定する。現時点における吸気切替弁異常フラグXACVの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1115に進む。
次いで、CPU81は、ステップ1115にて、排気バイパス弁異常フラグXEBVの値が「0」であるか否かを判定する。現時点における排気バイパス弁異常フラグXEBVの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1115にて「Yes」と判定してステップ1120に進む。
CPU81は、ステップ1120にて、異常発生フラグXEMGの値に「0」を設定する。異常発生フラグXEMGは、その値が「0」であるとき、吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の全てが正常に作動していることを表す。また、異常発生フラグXEMGは、その値が「1」であるとき、吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の何れかが異常であることを表す。
その後、CPU81は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の全てが正常であるとき(或いは、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値、吸気切替弁開放フラグXACVOPの値、及び、排気バイパス弁異常フラグXEBVの値、の全てが「0」であるとき)、操作者に対して通知はなされない。
更に、CPU81は、図12にフローチャートによって示した「燃料供給制御ルーチン」を、任意の気筒のクランク角が圧縮上死点前の所定クランク角度(例えば、圧縮上死点前90度クランク角)θgに一致する毎に繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、燃料噴射量Qの算出及び燃料噴射の指示を行う。このクランク角が圧縮上死点前の所定クランク角θgに一致して圧縮行程を終える気筒は、以下「燃料噴射気筒」とも称呼される。
具体的に述べると、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が上記クランク角度θgになると、図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進み、異常発生フラグXEMGの値が「0」であるか否かを判定する。現時点における異常発生フラグXEMGの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1210にて「Yes」と判定してステップ1220に進む。
CPU81は、ステップ1220にて、アクセルペダル開度センサ76の出力値に基づいてアクセルペダル開度Accpを取得し、クランクポジションセンサ75の出力値に基づいて機関回転速度NEを取得する。そして、CPU81は、全ての制御弁が正常である場合における「アクセルペダル開度Accpと、機関回転速度NEと、燃料噴射量Qと、の関係」を予め定めた通常時燃料噴射量テーブルMapMain(Accp,NE)に、現時点におけるアクセルペダル開度Accpと機関回転速度NEとを適用することにより、燃料噴射量Qを取得する。この通常時の燃料噴射量Qは要求トルクに対応する。以下、通常時燃料噴射量テーブルMapMain(Accp,NE)によって定まる燃料噴射量を採用する運転を「通常運転」と称呼する。
次いで、CPU81は、ステップ1230に進み、燃料噴射量Qの燃料を燃料噴射気筒に対応して設けられているインジェクタ22から噴射するように、そのインジェクタ22に指示を与える。即ち、このとき、燃料噴射量Qの燃料が燃料噴射気筒に供給される。その後、CPU81は、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の全てが正常に作動しているとき、上記通常時燃料噴射量テーブルMapMain(Accp,NE)によって定められる燃料噴射量Qの燃料が燃料噴射気筒に供給される「通常運転」が実行される。
(仮定B)吸気切替弁64が異常であり、排気切替弁66及び排気バイパス弁68は正常である場合
この場合、機関10が第1運転領域AR1及び第2運転領域AR2の何れの運転領域にて運転されていても、高圧段コンプレッサ61aは新気を圧縮することができない。従って、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始すると、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されていれば、ステップ1002を経てステップ1004に進む。ここで、上記仮定Bに従えば、吸気切替弁64は異常であるから、目標過給圧Pimtgtと過給圧Pimとの差は所定値Kよりも大きい。そのため、CPU81は、ステップ1004にて「Yes」と判定してステップ1016に進み、新気の流量Gaが所定値Aよりも大きいか否かを判定する。ここで、所定値Aは、「新気の流量Gaがその所定値Aよりも大きいとき、機関10が上記「第2運転領域AR2」にて運転されていると判定することができる値」に設定されている。
このとき、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されていれば、CPU81は、ステップ1016にて「No」と判定してステップ1018に進む。
それに対し、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されていれば、CPU81は、ステップ1016にて「Yes」と判定してステップ1020に進む。CPU81は、ステップ1020にて、低圧段コンプレッサ62aが過給しているか否かを判定する。
具体的に述べると、CPU81は、低圧段コンプレッサ62aに導入される「前」の新気の圧力として「大気圧Pa」を、低圧段コンプレッサ62aを通過した「後」の新気の圧力として「コンプレッサ間圧力Pc」を、採用する。そして、CPU81は、ステップ1020にて、「コンプレッサ間圧力Pc」よりも「大気圧Paと所定値Jとの和(以下、「第2コンプレッサ上流圧Pscup」と称呼する。)」が大きいか否かを判定する。
ここで、所定値Jは、「大気圧Paと所定値Jとの和」が「低圧段コンプレッサ62aが新気Inを圧縮している場合におけるコンプレッサ間圧力Pcの最小値」となるように設定されている。従って、低圧段コンプレッサ62aが新気Inを圧縮していれば、コンプレッサ間圧力Pcは第2コンプレッサ上流圧Pscup以上となる。
上記仮定Bに従えば、排気バイパス弁68は正常であるから、低圧段コンプレッサ62aは新気を圧縮している。即ち、コンプレッサ間圧力Pcは第2コンプレッサ上流圧Pscup以上である。従って、CPU81は、ステップ1020にて「No」と判定してステップ1018に進む。
このように、機関10が第1運転領域AR1及び第2運転領域AR2の何れの運転領域にて運転されていても、上記仮定Bに従えば、CPU81はステップ1018に進む。CPU81は、ステップ1018にて、高圧段コンプレッサ61aが過給しているか否かを判定する。
具体的に述べると、CPU81は、高圧段コンプレッサ61aに導入される「前」の新気の圧力として「コンプレッサ間圧力Pc」を、高圧段コンプレッサ61aを通過した「後」の新気の圧力として「過給圧Pimと圧力損失量PDとの和」を、採用する。過給圧センサ74は、図1に示すように、高圧段コンプレッサ61aを通過した新気がインタークーラ34及びスロットル弁33を通過した後の新気の圧力を取得するようになっている。従って、「過給圧Pimと圧力損失量PDとの和」は、高圧段コンプレッサ61aを通過した直後の新気の圧力に実質的に一致する。そして、CPU81は、ステップ1018にて、「コンプレッサ間圧力Pc」よりも「過給圧Pimと圧力損失量PDとの和(以下、「第1コンプレッサ下流圧Pfcdown」と称呼する。)に所定値MGを加算した値」が大きいか否かを判定する。ここで、所定値MGは、誤判定を防ぐために採用される値であって、ゼロ以下の所定値(ゼロ又は負の数)である。換言すると、「コンプレッサ間圧力Pc」よりも「第1コンプレッサ下流圧Pfcdownに所定値MGを加算した値」が大きければ「高圧段コンプレッサ61aが新気Aを圧縮している」と確実に判断することができるように、所定値MGは設定される。
上記仮定Bに従えば、吸気切替弁64は異常であるから、高圧段コンプレッサ61aは新気を圧縮しない。即ち、コンプレッサ間圧力Pcと第1コンプレッサ下流圧Pfcdownとは実質的に一致する。従って、CPU81は、ステップ1018にて「No」と判定してステップ1022に進み、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値に「0」を設定する。
次いで、CPU81は、ステップ1024に進んで排気バイパス弁異常フラグXEBVの値に「0」を設定し、続くステップ1026にて吸気切替弁開放フラグXACVOPの値に「1」を設定する。その後、CPU81は、ステップ1098に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105に進む。現時点における吸気切替弁開放フラグXACVOPの値は「1」であるから、CPU81は、ステップ1105にて「No」と判定してステップ1125に進み、「排吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れか一方が異常である」旨を機関10の操作者に通知する。この通知は、図示しない警報ランプを点等すること等によって実行される。その後、CPU81は、ステップ1130に進んで異常発生フラグXEMGの値に「1」を設定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、吸気切替弁64が異常である場合、機関10の操作者に対して「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れか一方が異常である」旨の警報が発せられる。
更に、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が上記クランク角度θgに一致すると、図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進む。現時点における異常発生フラグXEMGの値は「1」であるから、CPU81は、ステップ1210にて「No」と判定してステップ1240に進む。
CPU81は、ステップ1240にて、アクセルペダル開度センサ76の出力値に基づいてアクセルペダル開度Accpを取得し、クランクポジションセンサ75の出力値に基づいて機関回転速度NEを取得する。そして、CPU81は、「吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の何れかが異常である場合」に適用される「アクセルペダル開度Accpと、機関回転速度NEと、燃料噴射量Qと、の関係」を予め定めた異常発生時燃料噴射量テーブルMapEmg(Accp,NE)に、現時点におけるアクセルペダル開度Accpと機関回転速度NEとを適用することにより、異常発生時の燃料噴射量Qを取得する。以下、異常発生時燃料噴射量テーブルMapEmg(Accp,NE)によって定まる燃料噴射量を採用する運転を「退避運転」とも称呼する。
異常発生時燃料噴射量テーブルMapEmg(Accp,NE)は、「吸気切替弁64、排気切替弁66、及び、排気バイパス弁68の何れかが異常である場合に機関10の運転を継続しても、機関10の他の部材又は機関10全体の破損等を引き起こすことのない程度の燃料噴射量Q」を決定するためのテーブルである。従って、当然、任意の「アクセルペダル開度Accp及び機関回転速度NE」に対して異常発生時燃料噴射量テーブルMapEmg(Accp,NE)によって決定される燃料噴射量は、その「アクセルペダル開度Accp及び機関回転速度NE」に対して上記通常時燃料噴射量テーブルMapMain(Accp,NE)によって決定される燃料噴射量よりも小さい。
次いで、CPU81は、ステップ1230に進み、燃料噴射量Qの燃料を燃料噴射気筒に対応して設けられているインジェクタ22から噴射させる。その後、CPU81は、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、吸気切替弁64が異常である場合、機関10の操作者に対して「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れか一方が異常である」旨が通知される。更に、「退避運転」が実行される。
(仮定C)排気切替弁66が異常(小開度の開異常状態)であり、吸気切替弁64及び排気バイパス弁68は正常である場合
この場合、上述したように、高圧段コンプレッサ61aは新気を圧縮することができる。しかし、排気切替弁66の開度は排気切替弁66が正常である場合の開度よりも大きくなっているから、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始すると、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されていれば、ステップ1002を経てステップ1004に進む。ここで、上記仮定Cに従えば、排気切替弁66は異常(小開度の開異常状態)であるから、目標過給圧Pimtgtと過給圧Pimとの差は所定値Kよりも大きい。そのため、CPU81は、ステップ1004にて「Yes」と判定してステップ1016に進む。
このとき、機関10が「第1運転領域AR1」にて運転されていれば、CPU81は、ステップ1016にて「No」と判定してステップ1018に進む。それに対し、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されていれば、CPU81は、ステップ1016にて「Yes」と判定してステップ1020に進む。上記仮定Cに従えば、排気バイパス弁68は正常であって低圧段過給機62は過給しているから、CPU81は、ステップ1020にて「No」と判定してステップ1018に進む。即ち、機関10が第1運転領域AR1及び第2運転領域AR2の何れの運転領域にて運転されていても、上記仮定Cに従えば、CPU81はステップ1018に進む。
更に、上記仮定Cに従えば、吸気切替弁64は正常であるから、高圧段コンプレッサ61aは新気を圧縮している。即ち、コンプレッサ間圧力Pcよりも第1コンプレッサ下流圧Pfcdownと所定値MGとの和が大きい。従って、CPU81は、ステップ1018にて「Yes」と判定してステップ1028に進み、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値に「1」を設定する。
次いで、CPU81は、ステップ1030に進んで排気バイパス弁異常フラグXEBVの値に「0」を設定し、続くステップ1032にて吸気切替弁異常フラグXACVの値に「0」を設定する。その後、CPU81は、ステップ1098に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105に進む。現時点における吸気切替弁開放フラグXACVOPの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進む。現時点における排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値は「1」であるから、CPU81は、ステップ1110にて「No」と判定してステップ1135に進み、「排気切替弁66が異常(小開度の開異常状態)である」旨を機関10の操作者に通知する。この通知は、上記同様、図示しない警報ランプを点等すること等によって実行される。その後、CPU81は、ステップ1140に進んで異常発生フラグXEMGの値に「1」を設定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、排気切替弁66に異常(小開度の開異常状態)が発生した場合(即ち、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値が「1」であるとき)、機関10の操作者に対して「排気切替弁66が異常(小開度の開異常状態)である」旨の警報が発せられる。
更に、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が上記クランク角度θgに一致すると、図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進む。現時点における異常発生フラグXEMGの値は「1」であるから、CPU81は、上述した仮定Bが成立する場合と同様、ステップ1210、ステップ1240、及び、ステップ1230をこの順に経由し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、退避運転が実行される。
このように、排気切替弁66が異常(小開度の開異常状態)である場合、機関10の操作者に対してその旨が通知される。更に、「退避運転」が実行される。
(仮定D)排気切替弁66が異常(大開度の開異常状態)であり、吸気切替弁64及び排気バイパス弁68は正常である場合
この場合、上述したように、高圧段コンプレッサ61aは新気を圧縮することができない。そのため、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始すると、機関10がターボモード1又はターボモード2にて運転されていれば、ステップ1002を経てステップ1004に進む。ここで、上記仮定Dに従えば、排気切替弁66は異常(大開度の開異常状態)であるから、目標過給圧Pimtgtと過給圧Pimとの差は所定値Kよりも大きい。そのため、CPU81は、ステップ1004にて「Yes」と判定してステップ1016に進む。
このとき、機関10が第1運転領域AR1にて運転されていれば、CPU81は、ステップ1016にて「No」と判定してステップ1018に進む。それに対し、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されていれば、CPU81は、ステップ1016にて「Yes」と判定してステップ1020に進む。上記仮定Dに従えば、排気バイパス弁68は正常であるから、低圧段過給機62は過給を行っている。従って、CPU81は、ステップ1020にて「No」と判定してステップ1018に進む。即ち、機関10が第1運転領域AR1及び第2運転領域AR2の何れの運転領域にて運転されていても、上記仮定Dに従えば、CPU81はステップ1018に進む。
更に、上記仮定Dに従えば、高圧段コンプレッサ61aは新気を圧縮していない。即ち、コンプレッサ間圧力Pcと第1コンプレッサ下流圧Pfcdownとは実質的に同一である。従って、CPU81は、上述した仮定Bが成立する場合と同様、ステップ1018、ステップ1022、ステップ1024、及び、ステップ1026をこの順に経由し、ステップ1098に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始すると、上述した仮定Bが成立する場合と同様、ステップ1105、ステップ1125、ステップ1130をこの順に経由し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、排気切替弁66に異常(大開度の開異常状態)である場合、機関10の操作者に対して「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れか一方が異常である」旨の警報が発せられる。
更に、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が上記クランク角度θgに一致すると、図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進む。現時点における異常発生フラグXEMGの値は「1」であるから、CPU81は、仮定Bが成立する場合と同様、ステップ1210、ステップ1240、及び、ステップ1230をこの順に経由し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、退避運転が実行される。
このように、排気切替弁66が異常(大開度の開異常状態)である場合、機関10の操作者に対して「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れか一方が異常である」旨が通知される。更に、「退避運転」が実行される。
(仮定E)排気バイパス弁68が異常であり、吸気切替弁64及び排気切替弁66が正常である場合
この場合、上述したように、低圧段コンプレッサ62aは新気を圧縮することができない。そのため、このとき、過給圧Pimは目標過給圧Pimtgtよりも小さくなる。但し、排気バイパス弁68が異常であるときに過給圧Pimが減少するのは、機関10が「第2運転領域AR2」にて運転されている場合のみである。そこで、以下、機関10は「第2運転領域AR2」にて運転されていると仮定する。
このとき、機関10はターボモード1又はターボモード2にて運転されていることになるので、CPU81は、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始すると、ステップ1002を経てステップ1004に進む。ここで、上記仮定Eに従えば、排気バイパス弁68は異常であるから、目標過給圧Pimtgtと過給圧Pimとの差は所定値Kよりも大きい。そのため、CPU81は、ステップ1004にて「Yes」と判定してステップ1016に進む。
いま、機関10は第2運転領域AR2にて運転されているから、CPU81は、ステップ1016にて「Yes」と判定してステップ1020に進む。ここで、上記仮定Eに従えば、コンプレッサ間圧力Pcは第2コンプレッサ上流圧Pscupよりもよりも小さい。そのため、CPU81は、ステップ1020にて「Yes」と判定して、ステップ1034に進む。
CPU81は、ステップ1034にて、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値に「0」を設定してステップ1036に進む。CPU81は、ステップ1036にて、排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値に「0」を設定してステップ1038に進む。
CPU81は、ステップ1038にて、排気バイパス弁異常フラグXEBVの値に「1」を設定し、続くステップ1040にて吸気切替弁異常フラグXACVの値に「0」を設定する。その後、CPU81は、ステップ1098に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105に進む。現時点における吸気切替弁開放フラグXACVOPの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進む。現時点における排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1115に進む。そして、現時点における排気バイパス弁異常フラグXEBVの値は「1」であるから、CPU81は、ステップ1115にて「No」と判定してステップ1145に進み、「排気バイパス弁68が異常である」旨を機関10の操作者に通知する。この通知は、上記同様、図示しない警報ランプを点等すること等により実行される。その後、CPU81は、ステップ1150に進んで異常発生フラグXEMGの値に「1」を設定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、このとき、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が上記クランク角度θgに一致すると、図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進む。現時点における異常発生フラグXEMGの値は「1」であるから、CPU81は、上述した仮定Bが成立する場合と同様、ステップ1210、ステップ1240、及び、ステップ1230をこの順に経由し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、退避運転が実行される。
このように、排気バイパス弁68が異常である場合、機関10の操作者に対してその旨が通知される。更に、「退避運転」が実行される。
以上、説明したように、第1装置は、
第1過給機61と、第2過給機62と、第1通路部65と、第1制御弁66と、第2通路部63と、
前記第2通路部63に配設される第2制御弁64であって、同第2通路部63の同第2制御弁64よりも上流側の空気の圧力(コンプレッサ間圧力Pc)が同第2制御弁64よりも下流側の空気の圧力(第1コンプレッサ下流圧Pfcdown)よりも第1圧力(上記付勢力に相当する値)以上大きいとき同第2通路部63を空気が通流可能となるように開放し、同第2通路部63の同第2制御弁64よりも上流側の空気の圧力Pcが同第2制御弁64よりも下流側の空気の圧力Pfcdownよりも同第1圧力以上大きくないとき同第2通路部63を空気が通流不能となるように遮断する第2制御弁64と、
を備えた内燃機関10に適用される。
この第1装置は、上記異常判定方法1を用いて第1制御弁66及び第2制御弁64の異常判定を行う。
即ち、第1装置は、
新気量Gaが第1閾値新気量(所定値A)以下である第1運転領域AR1にて前記機関10が運転されている場合(ステップ1002にて「Yes」と判定され、且つ、ステップ1016にて「No」と判定される場合)、前記第1コンプレッサ61aが前記第1コンプレッサ61aに導入される空気を圧縮して排出するように前記第1制御弁66を作動させる制御弁作動手段と、
コンプレッサ間圧力Pc(コンプレッサ間圧力センサ72によって取得される。)と、第1コンプレッサ下流圧Pfcdown(図10のステップ1018を参照。)と、過給圧Pim(過給圧センサ74によって取得される。)と、を取得する圧力取得手段と、
前記機関10が前記第1運転領域AR1にて運転されている場合(上記参照。)に、前記機関10の運転状態に基づいて定まる参照過給圧Pimtgtよりも前記取得される過給圧Pimが第2圧力(所定値K)以上小さい状態である過給圧異常状態が発生しているとき(図10のステップ1004にて「Yes」と判定されるとき)、前記第1コンプレッサ下流圧Pfcdown(=Pim+PD)が前記コンプレッサ間圧力Pc以上の第1閾値圧力(=Pc−MG)よりも大きければ(図10のステップ1018にて「Yes」と判定されれば)前記第1制御弁66が異常であり且つ前記第2制御弁64は正常である旨の判定を行い(図10のステップ1028及びステップ1032)、同第1コンプレッサ下流圧Pfcdownが同第1閾値圧力(Pc−MG)以下であれば(図10のステップ1018にて「No」と判定されれば)前記第1制御弁66及び前記第2制御弁64の何れか一方が異常である旨の判定を行う(図10のステップ1026、並びに、図11のステップ1105及びステップ1125)異常判定手段と、
を備える。
このように、第1装置は、複数の過給機61,62と、排気切替弁66である第1制御弁、及び、吸気切替弁64である第2制御弁が正常に作動しているか否かを判定することができる。更に、第1装置は、機関が比較的低負荷運転領域(第1運転領域AR1)において運転されていても、上記制御弁が正常に作動しているか否かを判定することができる。従って、制御弁の異常を早期に発見することができる。
ここで、上述したように、前記異常判定手段が「第1制御弁66が異常であり且つ第2制御弁64は正常である」旨の判定を行っているとき、第1制御弁66の開度は、「第1制御弁66が正常であるときの開度とは異なる開度であり、且つ、第1通路部65を遮断する開度である全閉開度から所定の閾値開度までの開度範囲内の開度(即ち、小開度の開異常状態となる開度)」となっていると判定することもできる(図10のステップ1028)。
更に、第1装置において、
前記圧力取得手段は、前記圧力損失発生部材33,34によって生じる圧力損失量PDを推定する(図9のステップ910乃至ステップ930を参照。)とともに、前記過給圧Pimを実際に検出することにより取得し、同推定される圧力損失量PDと前記取得される過給圧Pimとの和(Pim+PD)を前記第1コンプレッサ下流圧Pfcdownとして取得するように構成されている(図10のステップ1018を参照。)。
更に、第1装置が適用される機関10は、
第3通路部67と、第3制御弁68と、を備えている。
この第1装置において、
前記制御弁作動手段は、前記機関10が「前記第1運転領域AR1」にて運転されているか又は「前記新気量Gaが前記第1閾値新気量Aよりも大きく且つ同第1閾値新気量Aよりも大きい第2閾値新気量以下である第2運転領域AR2」にて運転されている場合、前記第3通路部67を排ガスExが通流不能となるように前記第3制御弁68を作動させ、「前記新気量Gaが前記第2閾値新気量よりも大きい第3運転領域」にて前記機関10が運転されている場合、前記第3通路部68を排ガスExが通流可能となるように前記第3制御弁68を作動させるように構成される(図3(A)乃至図3(C)を参照。)。
そして、第1装置は、上記異常判定方法2を用いて第1制御弁66、第2制御弁64及び第3制御弁68の異常判定を行う。
この第1装置において、
前記異常判定手段は、前記機関10が前記第2運転領域AR2にて運転されている場合(図10の1002にて「Yes」と判定され、且つ、ステップ1016にて「Yes」と判定されている場合)に、前記過給圧異常状態が発生しているとき(図10のステップ1004にて「Yes」と判定されているとき)、
前記コンプレッサ間圧力Pcが所定の第2閾値圧力(第2コンプレッサ上流圧Pscup=Pa+J)以上であれば(図10のステップ1020にて「No」と判定されれば)、前記第3制御弁68は正常である旨の判定を行い(図10のステップ1024又はステップ1030)、
前記コンプレッサ間圧力Pcが前記第2閾値圧力Pscupよりも小さければ(図10のステップ1020にて「Yes」と判定されれば)、前記第3制御弁68は異常である旨の判定を行う(図10のステップ1038)ように構成されている。
このように、第1装置は、複数の過給機61,62と、複数のバイパス通路63,65,67と、排気切替弁66、吸気切替弁64、及び、他の制御弁(第3制御弁68)を含む複数の制御弁と、を備えた内燃機関おいて、その「他の制御弁(第3制御弁68)」が正常に作動しているか否かを判定することができる。
更に、第1装置において、
前記異常判定手段は、前記第3制御弁68は異常である旨の判定を行った場合(図10のステップ1038)、前記第1制御弁66及び前記第2制御弁64は正常である旨の推定を行う(図10のステップ1034、ステップ1036及びステップ1040)ように構成されている。
更に、第1装置において、
前記制御弁作動手段は、前記機関10が前記第2運転領域AR2にて運転されている場合(図10のステップ1002にて「Yes」と判定され、且つ、ステップ1016にて「Yes」と判定された場合)、前記第1コンプレッサ61aが前記第1コンプレッサ61aに導入される空気を圧縮して排出するように前記第1制御弁を作動させるように構成され(図3(A)乃至図3(C)を参照。)、
前記異常判定手段は、
前記機関10が前記第2運転領域AR2にて運転されている場合(上記参照。)、前記第3制御弁68は正常である旨の判定を行ったとき(図10のステップ1020での「No」との判定、及び、ステップ1024又はステップ1030)、前記第1コンプレッサ下流圧Pfcdown(Pim+PD)が前記第1閾値圧力(Pc−MG)よりも大きければ(図10のステップ1018にて「Yes」と判定されれば)前記第1制御弁66が異常であり且つ前記第2制御弁64は正常である旨の判定を行い(図10のステップ1028及びステップ1032)、同第1コンプレッサ下流圧Pfcdownが同第1閾値圧力以下であれば(図10のステップ1018にて「No」と判定されれば)前記第1制御弁66及び前記第2制御弁64の何れか一方が異常である旨の判定を行う(図10のステップ1026、並びに、図11のステップ1105及びステップ1125)、
ように構成されている。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る制御弁異常判定装置(以下、「第2装置」とも称呼する。)について説明する。
<装置の概要>
第2装置は、第1装置が適用される内燃機関10と同様の内燃機関(図1を参照。)に適用される。
<装置の作動の概要>
第2装置は、以下の点のみにおいて第1装置と相違する。
即ち、第2装置は、第1装置において「排気切替弁66及び吸気切替弁64の何れかが異常である」旨の判定が行われたとき(図10のステップ1026、並びに、図11のステップ1105及びステップ1125を参照。)、所定の異常判定条件が成立すれば、排気切替弁66の開度を強制的に変更するための指示信号を排気切替弁アクチュエータ66aに送る。そして、第2装置は、この指示信号を排気切替弁アクチュエータ66aに送る前後における過給圧の変化が所定値以上であるか否かに基づき、「吸気切替弁64が異常であるか否か」及び「排気切替弁66が異常であるか否か」を判定する。更に、第2装置は、上記判定の結果を操作者に対して通知するとともに、退避運転を実行する。
<制御弁の異常判定>
次いで、第2装置における制御弁の異常判定方法について説明する。
第2装置は、「排気切替弁66及び吸気切替弁64の何れか一方が異常である」旨の判定がなされたとき、「機関10が第2運転領域AR2において運転されている」ことを含む異常判定条件が成立していれば、排気切替弁66(実際には、排気切替弁アクチュエータ66a)に対してその開度を変更させる指示(開度変更指示)を与える。そして、第2装置は、その開度変更指示が与えられる「前」の時点における過給圧Pim0と、その開度減少指示が与えられた「後」の時点における過給圧Pim1と、を取得する。
そして、第2装置は、その開度変更指示を与える前後の過給圧Pimの変化量(|Pim1−Pim0|)が所定値Pimth以上であると、「吸気切替弁64は異常である」旨の判定を行う。一方、第2装置は、変化量(|Pim1−Pim0|)が所定値Pimth未満であると、「排気切替弁66は異常である」旨の判定を行う。以下、この判定方法を「異常判定方法3」と称呼する。
上記「開度変更指示」には、排気切替弁66の開度を「増大」させる指示と、排気切替弁66の開度を「減少」させる指示と、が含まれる。しかし、何れの指示が排気切替弁66に与えられた場合であっても、異常判定方法の原理は同じである。従って、以下、排気切替弁66の開度を「増大」させる指示(開度増大指示)が排気切替弁66に与えられた場合を例にとりながら、上記異常判定方法3によって「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れが異常であるか」を判定できる理由について、以下に示した順序に従って説明する。
なお、第2装置は、上述した多重異常除外前提に従い、吸気切替弁64及び排気切替弁66の両者に同時に異常が発生することを想定していない。更に、この多重異常除外前提に従えば、「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れかが異常である」旨の判定がなされているとき、排気バイパス弁68は正常であると判断することができる。
<説明順序>
(場合2−1)吸気切替弁64が異常であり、排気切替弁66は正常である場合
(場合2−2)排気切替弁66が異常であり、吸気切替弁64は正常である場合
<説明>
(場合2−1)吸気切替弁64が異常であり、排気切替弁66は正常である場合
機関10が第2運転領域AR2にて運転されている場合、吸気切替弁64は「全閉」状態となるはずである(図3(B)を参照。)。従って、上述した場合1−2と同様、これらの運転領域において吸気切替弁64が異常であると、吸気切替弁64は開いた状態(即ち、吸気切替弁開異常状態)となる。
この場合、図5に示したように、吸気切替弁64が「吸気切替弁開異常状態」となっているから、高圧段コンプレッサ61aは新気Inを圧縮することができない。一方、排気バイパス弁68は正常であるから、吸気切替弁64の状態に関わらず低圧段コンプレッサ62aは新気Inを圧縮することができる。即ち、このとき、「低圧段過給機62のみ」が過給することができる。
以下、便宜上、「高圧段コンプレッサ61aに導入される直前の新気Inの圧力」に対する「高圧段コンプレッサ61aを通過した直後の新気Inの圧力」の比を、「高圧段過給機圧力比」と称呼する。更に、「低圧段コンプレッサ62aに導入される直前の新気Inの圧力」に対する「低圧段コンプレッサ62aを通過した直後の新気Inの圧力」の比を、「低圧段過給機圧力比」と称呼する。このとき、過給圧Pimは、「高圧段過給機圧力比と低圧段過給機圧力比との積」を「機関の外部から機関に流入する空気の圧力(一般に大気圧)」に乗算することによって得られる。
いま、排気切替弁66に対して開度増大指示が与えられる前の期間、排気切替弁66の開度は、所定の開度Oecv1に維持されていると仮定する。この場合、上述したように、新気Inは高圧段コンプレッサ61aによっては圧縮されないから、高圧段過給機圧力比は「1」である。従って、過給圧Pimは低圧段過給機圧力比に大気圧を乗じた値に略等しい。
ここで、第2装置が排気切替弁66に対してその開度を開度Oecv2に変更(増大)する指示を与えると、排気切替弁66は正常であるから、排気切替弁66の開度はこの指示に応じて変化する。即ち、排気切替弁66の開度は、開度Oecv1から開度Oecv2へと変化(増大)する。
排気切替弁66の開度が増大すると、図6を参照しながら説明したように(場合1−3を参照。)、高圧段タービン61bに供給される排ガスExのエネルギが減少する。しかし、本例においては高圧段コンプレッサ61aは新気Inを圧縮できないので、高圧段過給機圧力比は変化しない。即ち、高圧段過給機圧力比は「1」に維持される。
一方、排気切替弁66の開度が増大すると、低圧段タービン62bに直接導入される排ガスExの量が増大するから、低圧段タービン62bに供給される排ガスExのエネルギが増大する。そのため、低圧段過給機圧力比は増大する。
従って、排気切替弁66の開度が「増大」させられると、過給圧Pimは「増大」する。これに対し、上記説明から理解されるように、排気切替弁66の開度が「減少」させられると、過給圧Pimは「減少」する。
(場合2−2)排気切替弁66が異常であり、吸気切替弁64は正常である場合
上述したように、「排気切替弁66及び吸気切替弁64の何れか一方が異常である」旨の判定がなされるのは、吸気切替弁64が「吸気切替弁開異常状態」になっている場合と、排気切替弁66の状態が「大開度の開異常状態」となっている場合と、の二つの場合である。従って、「排気切替弁66及び吸気切替弁64の何れか一方が異常である」旨の判定がなされたとき、排気切替弁66が異常であれば、その排気切替弁66の状態は「大開度の開異常状態」となっている(上記場合1−2及び場合1−3を参照。)。なお、このとき、上述したように、排気切替弁66の開度は「第1コンプレッサ駆動不能範囲内の開度」となっている。
排気切替弁66が「大開度の開異常状態」となるとき、排気切替弁66は、第1コンプレッサ駆動不能範囲内の開度にて固着している可能性がある。或いは、このとき、排気切替弁66は、第1コンプレッサ駆動不能範囲内の開度においてのみ作動することができる(即ち、取り得る開度が第1コンプレッサ駆動不能範囲内の開度に制限される)状態となっている可能性もある。以下、この二つの可能性について、場合を分けて説明する。
先ず、排気切替弁66が固着している場合、排気切替弁66に開度増大指示が与えられても、排気切替弁66の開度は変化しない。そのため、高圧段過給機圧力比及び低圧段過給機圧力比の双方が変化しない。従って、過給圧Pimは変化しない。
次いで、排気切替弁66の開度が第1コンプレッサ駆動不能範囲内に制限されている場合、排気切替弁66に開度増大指示が与えられると、排気切替弁66の開度は変化し得る。しかし、このとき、排気切替弁66の開度は第1コンプレッサ駆動不能範囲内に制限されているから、排気切替弁66の開度が変化したとしても、低圧段コンプレッサ62aに導入される排ガスExの流量(排ガスExのエネルギ)の変化量は小さい。
一方、排気切替弁66の開度が変化すると、高圧段コンプレッサ61aに導入される排ガスExのエネルギも変化する。しかし、図7に示したように、排気切替弁66は大開度の開異常状態となっているから、高圧段コンプレッサ61aにおいて過給はなされない。換言すると、高圧段コンプレッサ61aに導入される排ガスExのエネルギは、新気Inを圧縮する仕事として消費されない。従って、高圧段コンプレッサ61aに導入された排ガスExは、そのエネルギを実質的に減ずることなく高圧段コンプレッサ61aを通過し、低圧段コンプレッサ62aに向かう。
これらの結果、排気切替弁66の開度が第1コンプレッサ駆動不能範囲内にて変化しても、低圧段コンプレッサ62aに導入される排ガスExのエネルギは実質的に変化しない。従って、低圧段過給機圧力比は実質的に変化しない。
更に、このとき、高圧段コンプレッサ61aは新気Inを圧縮することができないから、排気切替弁66に対して開度増大指示が与えられる前後において、高圧段過給機圧力比は「1」に維持される。
従って、排気切替弁66の開度が第1コンプレッサ駆動不能範囲内に制限されている場合、排気切替弁66の開度が変化しても、過給圧Pimは変化しない。
このように、排気切替弁66が異常である場合に排気切替弁66に開度増大指示が与えられたとき、排気切替弁66が作動可能であるか否かに関わらず、過給圧Pimは実質的に変化しない。これに対し、上記説明から理解されるように、排気切替弁66に対して開度を「減少」する指示が与えられても、過給圧Pimは実質的に変化しない。
従って、排気切替弁66に対してその開度を変更させる指示が与えられたときに過給圧Pimが変化すれば(過給圧Pim0と過給圧Pim1との差の絶対値が所定値以上であれば)、「吸気切替弁64は異常である」旨の判定を行うことができる。一方、このときに過給圧Pimが変化しなければ(過給圧Pim0と過給圧Pim1との差の絶対値が所定値より小さければ)、「排気切替弁66は異常である」旨の判定を行うことができる(上記異常判定方法3を参照。)。
<実際の作動>
次いで、第2装置の実際の作動について説明する。
第2装置は、上述した図9乃至図12にフローチャートによって示した処理に加えて図13及び図14にフローチャートによって示す処理を実行する点においてのみ、上記第1装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第2装置は、第1装置と同様、図9乃至図11に示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行し、図12に示したルーチンを任意の気筒のクランク角が圧縮上死点前の所定クランク角度θgに一致する毎に繰り返し実行するようになっている。ここで、図10に示したルーチンにおいて、吸気切替弁開放フラグXACVOPの値が「1」に設定された(図10のステップ1018にて「No」と判定されることにより、続くステップ1022及びステップ1024を経てステップ1026の処理が実行された)と仮定する。
なお、このとき、CPU81が所定のタイミングにて図11のルーチンを実行すると、機関10の操作者に対して「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れか一方が異常である」旨の警報が発せられる(図11のステップ1105及びステップ1125を参照。)。
CPU81は、所定時間が経過する毎に図13にフローチャートによって示した「追加異常判定ルーチン」を実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れが異常であるかを特定する。
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図13のステップ1300から処理を開始してステップ1305に進み、吸気切替弁開放フラグXACVOPの値が「1」であるか否かを判定する。上記仮定に従えば、現時点の吸気切替弁開放フラグXACVOPの値は「1」であるから、CPU81は、ステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進む。
CPU81は、ステップ1310にて、「吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れが異常であるかを特定するための異常判定条件」が成立したか否かを判定する。この異常判定条件は、「機関10が第2運転領域AR2にて運転されている」ときに成立する条件である。即ち、この異常判定条件は、機関10が「高圧段過給機61(第1過給機)及び低圧段過給機62(第2過給機)」の双方が過給することができる運転領域にて運転されているとき、成立する。
この異常判定条件は、「今回の運転開始後(イグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更された後)において一度も制御弁の異常判定がなされていない」ことを条件の一つとして含んでもよい。
現時点において上記異常判定条件が成立していなければ、CPU81はステップ1310にて「No」と判定し、ステップ1395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、現時点において異常判定条件が成立していると、CPU81はステップ1310にて「Yes」と判定して、ステップ1315に進む。以下、現時点において上記異常判定条件が成立していると仮定して、説明を続ける。
CPU81は、ステップ1315にて、スロットル弁33の開度を全開にするようにスロットル弁アクチュエータ33aに指示を与える。次いで、CPU81は、ステップ1320に進み、現時点における過給圧Pimを取得するとともに、取得した過給圧Pimを「第1の値としての基準過給圧Pim0」に格納して、ステップ1325に進む。ここで、便宜上、この時点は「第1時点」とも称呼され、この第1時点における排気切替弁66の開度は「第1開度Oecv1」とも称呼される。
次に、CPU81は、ステップ1325にて、排気切替弁66の開度を第2開度Oecv2へと変更させる指示を排気切替弁アクチュエータ66aに与える。CPU81は、その後、所定時間が経過するまで待機する。第2開度Oecv2は、実際の排気切替弁66の開度が第1開度Oecv1から第2開度Oecv2へと変化したとき、過給圧Pimが充分に大きい量だけ変化する値に選択される。例えば、CPU81は、第1開度Oecv1が「排気切替弁66の最大開度である全開開度」の1/2(半分)よりも小さければ、第2開度Oecv2として「第1開度Oecv1よりも大きい開度(例えば、全開開度)」を設定する。一方、CPU81は、第1開度Oecv1が排気切替弁66の全開開度の1/2以上であれば、第2開度Oecv2として「第1開度Oecv1よりも小さい開度(例えば、全閉開度)」を設定する。ここで、排気切替弁66に対してその開度を変更させる指示が与えられてから上記所定時間が経過した時点を、便宜上、「第2時点」とも称呼する。
第2時点が到来すると、CPU81はステップ1330に進み、その第2時点における過給圧Pimを取得するとともに、取得した過給圧Pimを「第2の値としての判定用過給圧Pim1」に格納する。次いで、CPU81は、ステップ1335に進み、判定用過給圧Pim1と基準過給圧Pim0との差の絶対値が閾値過給圧Pimth以上であるか否かを判定する。この閾値過給圧Pimthは、閾値変化量とも称呼される値であり、「排気切替弁66が正常である場合に得られる判定用過給圧Pim1と基準過給圧Pim0との差の絶対値の最小値」に設定されている。
(仮定F)吸気切替弁64が異常であり、排気切替弁64は正常である場合
この場合、上述したように、排気切替弁66の開度が増大させられると過給圧Pimは閾値過給圧Pimth以上増大し、排気切替弁66の開度が減少させられると過給圧Pimは閾値過給圧Pimth以上減少する。
従って、上記仮定Fに従えば、CPU81は、ステップ1335にて「Yes」と判定してステップ1340に進み、吸気切替弁異常フラグXACVの値に「1」を設定する。次いで、CPU81は、ステップ1345に進んで排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値に「0」を設定し、続くステップ1350にて排気切替弁小開度異常フラグXECVIOの値に「0」を設定する。その後、CPU81は、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU81は、所定時間が経過する毎に図14にフローチャートによって示した「追加異常通知ルーチン」を実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、吸気切替弁64及び排気切替弁66の何れが異常であるかを、機関10の操作者に通知する。
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図14のステップ1400から処理を開始してステップ1410に進み、吸気切替弁異常フラグXACVの値が「1」であること、及び、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値が「0」であることの双方が成立するか否かを判定する。現時点における吸気切替弁異常フラグXACVの値は「1」であり、且つ、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値は「0」であるから、CPU81は、ステップ1410にて「Yes」と判定してステップ1420に進み、「吸気切替弁64が異常である」旨を機関10の操作者に通知する。この通知は、第1装置と同様、図示しない警報ランプを点等すること等によって実行される。次いで、CPU81は、ステップ1430に進んで異常発生フラグXEMGの値に「1」を設定し、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、吸気切替弁64が異常である場合(即ち、吸気切替弁異常フラグXACVの値が「1」であるとき)、機関10の操作者に対して「吸気切替弁64が異常である」旨の警報が発せられる。
更に、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が上記クランク角度θgに一致すると、図12のステップ1200から処理を開始して、第1装置において仮定Bが成立する場合と同様、ステップ1210、ステップ1240、及び、ステップ1230をこの順に経由し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、退避運転が実行される。
このように、吸気切替弁64が異常であるとき、機関10の操作者に対して「吸気切替弁64が異常である旨」の警告が通知されるとともに、退避運転が実行される。
(仮定G)排気切替弁66が異常であり、吸気切替弁64は正常である場合
この場合、上述したように、排気切替弁66の開度を変更する指示を排気切替弁アクチュエータ66aに与えても過給圧Pimは実質的に変化しないから、判定用過給圧Pim1と基準過給圧Pim0との差の絶対値は閾値過給圧Pimthよりも小さくなる。
このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図13のステップ1300から処理を開始すると、上記異常判定条件が成立していれば、ステップ1305乃至1330を経てステップ1335に進む。ここで、上記仮定Gに従えば、CPU81は、ステップ1335にて「No」と判定してステップ1355に進み、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値に「1」を設定する。次いで、CPU81は、ステップ1360にて吸気切替弁異常フラグXACVの値に「0」を設定する。その後、CPU81は、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、このとき、CPU81は、所定のタイミングにて図14のステップ1400から処理を開始すると、ステップ1410に進む。現時点における吸気切替弁異常フラグXACVの値は「0」であり、且つ、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値は「1」であるから、CPU81は、ステップ1410にて「No」と判定してステップ1440に進み、吸気切替弁異常フラグXACVの値が「0」であること、及び、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値が「1」であることの双方が成立するか否かを判定する。
上述したように、現時点における吸気切替弁異常フラグXACVの値は「0」であり、且つ、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値は「1」であるから、CPU81は、ステップ1440にて「Yes」と判定してステップ1450に進み、「排気切替弁66が異常である」旨を機関10の操作者に通知する。この通知は、上記同様、図示しない警報ランプを点等すること等により実行される。次いで、CPU81は、ステップ1430に進んで異常発生フラグXEMGの値に「1」を設定し、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
なお、ステップ1440における判定がなされるときに上記条件が成立しない場合、CPU81は、ステップ1440にて「No」と判定する。その後、CPU81は、ステップ1495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、このとき、本ルーチンにおける操作者への警報は発せられない。このような状況は、例えば、図10のステップ1020にて「Yes」と判定された結果、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値が「0」に設定され(ステップ1034)、吸気切替弁異常フラグXACVの値が「0」に設定された(ステップ1040)場合等に生じ得る。
このように、排気切替弁66に異常(大開度の開異常状態)が発生した場合(即ち、排気切替弁大開度異常フラグXECVFOの値が「1」であるとき)、機関10の操作者に対して「排気切替弁66が異常(大開度の開異常状態)である」旨の警報が発せられる。
更に、このとき、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が上記クランク角度θgに一致すると、図12のステップ1200から処理を開始して、上述した仮定Fと同様、ステップ1210、ステップ1240、及び、ステップ1230をこの順に経由し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、退避運転が実行される。
このように、排気切替弁66が異常であるとき、機関10の操作者に対して「排気切替弁66が異常である」旨の警告が通知されるとともに、退避運転が実行される。
以上、説明したように、第2装置は、上記異常判定方法3を用いて第1制御弁66及び第2制御弁64の何れが異常であるかを特定する。
即ち、第2装置において、
前記異常判定手段は、
前記過給圧異常状態が発生しており(図10のステップ1004にて「Yes」と判定されており)、且つ、前記第1コンプレッサ下流圧Pfcdown(=Pim+PD)が前記第1閾値圧力(Pc−MG)以下である場合(図10のステップ1018にて「No」と判定されている場合)、前記機関10が前記第2運転領域AR2にて運転されていることを含む異常判定条件が成立している期間(図13のステップ1310にて「Yes」と判定されている期間)において、前記取得される過給圧Pimが大きくなるにつれて大きくなる過給圧相当値(本例においては過給圧Pim)を第1の値Pim0として取得し(図13のステップ1320)、「同第1の値Pim0を取得した時点以降の第1時点」にて前記第1制御弁66の開度が「同第1の値Pim0を取得した時点における開度である第1開度Oecv1とは異なる第2開度Oecv2」に一致するように同第1制御弁Pim0を作動させ(図13のステップ1325)、同第1時点から所定時間が経過した後の第2時点における同取得される過給圧相当値を第2の値Pim1として取得し(図13のステップ1330)、
前記第2の値Pim1と前記第1の値Pim0との差である過給圧相当値変化量の絶対値が所定の閾値変化量Pimth以上である場合(図13のステップ1335にて「Yes」と判定される場合)、「前記第1制御弁66が正常であり且つ前記第2制御弁64が異常である」旨の判定を行い(図13のステップ1340、ステップ1345及びステップ1350)、同過給圧相当値変化量の絶対値が前記閾値変化量Pimthよりも小さい場合(図13のステップ1335にて「No」と判定されるとき)、「前記第1制御弁66が異常であり且つ前記第2制御弁64が正常である」旨の判定を行う(図13のステップ1355及びステップ1360)、
ように構成される。
このように、第2装置は、「第1制御弁66及び第2制御弁64の何れかが異常である」旨の判定がなされたとき、第1制御弁66及び第2制御弁64の何れが異常であるかを特定することができる。
ここで、上述したように、前記異常判定手段が「第1制御弁66が正常であり且つ第2制御弁64が異常である」旨の判定を行っているとき、第2制御弁64の開度は、「第2制御弁64が第2通路部63を遮断することができない開度」となっていると判定することもできる(図13のステップ1340)。
更に、前記異常判定手段が「第1制御弁66が異常であり且つ第2制御弁64が正常である」旨の判定を行っているとき、第1制御弁66の開度は、「第1制御弁66が正常であるときの開度とは異なる開度であり、且つ、前記閾値開度から第1通路部65を完全に開放する開度である全開開度までの開度範囲内の開度(即ち、大開度の開異常状態)」となっていると判定することもできる(図13のステップ1360)。
更に、第2装置において、
前記異常判定手段は、前記過給圧相当値として前記過給圧Pimを取得するように構成されている(図13の1320及びステップ1330)。
ところで、上述した第1装置及び第2装置の「双方」において、
前記制御弁作動手段は、前記機関10が前記第1運転領域AR1にて運転されているとき、前記第1制御弁66の開度が前記全閉開度となるように前記第1制御弁66を作動させるように構成されている(図3(B)を参照。)。
更に、第1装置及び第2装置の双方において、
前記機関10が前記第2運転領域AR2にて運転されているとき、
前記第1制御弁66は、指示信号に応答して前記第1通路部65の流路面積を変更するように構成され、
前記制御弁作動手段又は前記異常判定手段は、前記第1制御弁駆動手段(排気切替弁アクチュエータ66a)に前記指示信号を送出することにより前記第1制御弁66の開度を変更するように構成されている(図3(B)を参照。)。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記第1実施形態及び上記第2実施形態においては、コンプレッサ間圧力センサ72は、第1コンプレッサと第2コンプレッサとの間の吸気通路上に設けられている。しかし、コンプレッサ間圧力センサ72は、第2通路部63であって第2制御弁64よりも上流側に設けられてもよい。
更に、上記第2実施形態においては、「前記過給圧相当値」として前記第1コンプレッサよりも下流側の吸気通路内の空気の圧力である「過給圧」が取得されている。しかし、第2装置は、前記過給圧相当値として前記機関に導入される空気の量である「新気量」を取得するように構成されてもよい。また、過給圧相当値として取得される過給圧は、インタークーラ34とスロットル弁33との間の吸気通路内の圧力であってもよい。
加えて、第2実施形態においては、第1制御弁(排気切替弁66)に対してその開度Oecvを変更させる指示を与えるとき(図13のステップ1325)、第1開度Oecv1が常に充分に小さければ(即ち、第1開度Oecv1が充分に小さくなるような運転条件であることが図13のステップ1310における異常判定条件に含まれていれば)、第2開度Oecv2が「現在の開度である第1開度Oecv1」よりも必ず大きくなる(例えば、全開開度に一致する)ように、第1制御弁に対して指示を与えてもよい。
同様に、第2実施形態において、第1開度Oecv1が常に充分に大きい場合(即ち、第1開度Oecv1が充分に大きくなるような運転条件であることが図13のステップ1310における異常判定条件に含まれているとき)、第2開度Oecv2が「現在の開度である第1開度Oecv1」よりも必ず小さくなる(例えば、全閉開度に一致する)ように、第1制御弁に対して指示を与えてもよい。
更に、第2実施形態において、図13のステップ1310にて成立しているか否かが判定される異常判定条件は、機関10の要求トルクが所定の閾値トルク以下である(即ち、機関10が減速運転されている。)ことを条件の一つとして含んでもよい。但し、この減速運転の際に、上述した「機関10が第2運転領域AR2(新気量Gaが第1過給機61及び第2過給機62の双方を駆動することができる量となる運転領域)にて運転されていること」との条件は成立している必要がある。
上記「減速状態」にて機関が運転されているときに第1制御弁64の開度を変更することにより、第1制御弁64の開度が変化することによる機関の出力トルクの変動を、操作者に「意図しないトルク変動」であると認識され難くすることができる。その結果、機関のドライバビリティを良好に維持しながら第1制御弁66及び第2制御弁64の何れが異常であるかを判定することができる。
更に、上記要求トルクは、「アクセルペダル開度Accp」、「機関回転速度NE」、及び、「燃料供給量Q」等に基づいて求めることができる。換言すると、上記条件は、アクセルペダル開度Accpが所定閾値開度Accpth以下であるときに成立する条件であってもよく、アクセルペダル開度Accp及び機関回転速度NEにより定まる運転状態が「アクセルペダル開度Accp及び機関回転速度NEにより表される所定の減速領域」の中にあるときに成立する条件であってもよく、アクセルペダル開度Accp及び機関回転速度NE等により定まる燃料供給量Qが「減速状態を表す所定の燃料供給量閾値」以下の場合に成立する条件であってもよい。
更に、第2実施形態においては、第1制御弁66の開度を変更する前の時点において、スロットル弁33が全開状態となるように構成されている(図13のステップ1315を参照。)。しかし、第2装置においては、第1制御弁66の開度を変更する際に必ずしもスロットル弁33を全開状態にしなくてもよい。