JP4878105B2 - 電界効果型トランジスタの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は電界効果型トランジスタおよびその製造方法に関し、特に有機溶媒可溶性のポルフィリン化合物の塗膜から加熱により得られるナフトポルフィリン化合物の結晶化膜を活性層に用いることで、容易に作製可能で電界効果移動度の高い電界効果型トランジスタおよびその製造方法に関する。
有機半導体化合物の非線形光学特性、導電性、半導電性が有機エレクトロニクス、光エレクトロニクス分野において注目され、各種デバイス開発が盛んに行われてきた。有機半導体化合物の代表例がフタロシアニン系化合物、ポルフィリン化合物やポリアセン類である。それらの化合物を有機材料としてデバイス化する場合に必要となる非線形光学特性、導電性、半導電性などの特性は材料の純度のみでなく結晶性や配向性に大きく依存する。しかしながらπ共役系が拡張された多くの化合物が溶媒不溶、大気中で酸化を受けやすいなどの理由で高純度化が困難であった。また高い配向性を有する結晶化膜を得るために真空蒸着を行うなど製膜に大規模な装置を必要とした。
近年になって半導体層に有機半導体化合物を用いた電界効果型トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)素子が注目されるようになると、有機半導体化合物がシリコンなどの無機系の材料に比較して柔軟な膜性を示すためプラスチックを基材としたフレキシブルな素子作製に適していると考えられるようになった。
しかしながら前述の通り、有機半導体化合物の代表例であるペンタセンなどは結晶性が高く溶媒に不溶なため、真空蒸着によってのみ基板上に膜作成が可能であった。一方、有機溶媒に可溶な有機半導体の溶液からスピンなどの塗布で薄膜を形成することでより簡便にFETが作製されている。このような例としては、π−共役系高分子を半導体層に使用されたものがある(非特許文献1参照)。π−共役系高分子の場合、分子鎖の配列状態が電気伝導特性に大きな影響を及ぼすことが知られているが、同様にπ−共役系高分子電界効果型トランジスタの電界効果移動度が半導体層中における分子鎖の配列状態に大きく依存することが報告されている(非特許文献2参照)。
しかしながら、π−共役系高分子の分子鎖の配列は溶液を塗布して乾燥するまでの間に行われるため、環境の変化や塗布方法の違いによって分子鎖の配列状態が大きく変化する可能性があった。ペンタセンの可溶性前駆体薄膜を塗布で形成し、熱処理によってペンタセンに変換した膜を用いたFETも報告されている(非特許文献3参照)。この場合、ペンタセンへの変換に高温処理が必要であったり、質量が大きい脱離成分を減圧によって取り除かなければならなかった。
「Japanese Journal of Applied Physics」応用物理学会、1991年、第30巻、p.596−598 「Nature」Nature Publishing Group、1999年、第401巻、p.685−687 「Advanced Materials」WILLEY−VCH Verlag GmbH、1999年、第11巻、p.480−483
以上述べたように、従来、有機半導体を用いたFET素子は真空製膜などの煩雑な工程が必要であるか、もしくは環境の影響を受け易いなどの問題があった。
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、電界効果移動度が大きく、簡便な方法で形成された有機半導体層を有する電界効果型トランジスタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、下記の一般式(1)で表されるポルフィリン化合物の塗膜から、熱処理により容易に結晶化膜を得ることができ、さらにこの結晶化膜を有機半導体層に用いた電界効果型トランジスタが、従来の蒸着により膜作成した有機半導体層と同等もしくはそれよりも大きい電界効果移動度を示すことを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
ゲート電極と、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ゲート絶縁層と前記ソース電極と前記ドレイン電極を覆う連続膜である有機半導体層とを有する電界効果型トランジスタの製造方法であって、
前記電界効果型トランジスタの製造方法は前記有機半導体層を形成する工程を有し、
前記有機半導体層を形成する工程は、下記一般式(3)
Figure 0004878105

で表されるポルフィリン化合物からなる塗膜を前記ゲート絶縁層と前記ソース電極と前記ドレイン電極を覆う連続膜として配置し加熱することで、
下記一般式(5)
Figure 0004878105

で表されるナフトポルフィリン化合物の結晶化膜を形成する工程であることを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法を提供する。
本発明によれば、従来に比べてはるかに簡便な方法で、電界効果移動度が大きい電界効果型トランジスタを提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る電界効果型トランジスタ及びその製造方法は、下記一般式(1)
Figure 0004878105
(式中、R1 およびR2 はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1以上12以下のアルキル基、オキシアルキル基、チオアルキル基、アルキルエステル基より選ばれる少なくとも1種を示し、R3 は水素原子またはアリール基より選ばれる少なくとも1種を示し、Mは2個の水素原子もしくは金属原子あるいは金属酸化物を示す。)
で表されるポルフィリン化合物の塗膜を加熱により変換して得られる下記一般式(2)
Figure 0004878105
(式中、R2 、R3 、Mは前記と同じものを示す。)
で表されるナフトポルフィリン化合物の結晶化膜からなる有機半導体層を有する、もしくはその工程である。
本発明においては、前記一般式(1)で表されるポルフィリン化合物のジシクロオクタエン環に結合した置換基R1 は、熱処理によって一般式(2)で表されるナフトポルフィリン化合物に変換される時にR1 −CH=CH−R1 となって脱離する。そのためR1 はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1以上12以下のアルキル基、オキシアルキル基、チオアルキル基、アルキルエステル基より選ばれる少なくとも1種であれば良く、それらの2種以上が組み合わされていても良い。炭素数が12を越えると脱離成分の分子量が増して、ナフトポルフィリン化合物膜中に脱離成分が残存して十分な半導体特性が得られない。最も好ましくはR1 が水素原子である。
一般式(1)で表されるポルフィリン化合物の置換基R2 は熱処理後に得られるナフトポルフィリン化合物にも置換基として残る。そのため置換基R2 はナフトポルフィリンの配向に影響を与える。R2 はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1以上12以下のアルキル基、オキシアルキル基、チオアルキル基、アルキルエステル基より選ばれる少なくとも1種であれば良く、それらの2種以上が組み合わされていても良い。R2 の炭素数が12を越えると分子全体に対するポルフィリン環の存在率が下がるためポルフィリン環同士が配向し難くなり十分な半導体特性が得られない。最も好ましくはR2 が水素原子であり、ポルフィリン環同士のスタッキングがより起こりやすく膜の結晶性が向上する。
ポルフィリン化合物のMは2個の水素原子もしくは金属あるいは金属酸化物であれば特に限定されない。金属の例としては、銅、金、銀、亜鉛、ニッケル、クロム、マグネシウム、リチウム、コバルトなどが挙げられる。金属酸化物の例としては、鉄、チタン、アルミニウムの酸化物などが挙げられる。特に好ましくはMが2個の水素原子もしくは1個の銅原子である。
有機半導体層の作製法としては、一般式(1)で表されるポルフィリン化合物を溶媒に溶解させてから基材に塗布し、その後に加熱することで一般式(2)で表されるナフトポルフィリン化合物の結晶化膜を得る方法が好ましい。
ポルフィリン化合物を溶解するために用いられる溶媒はポルフィリン化合物が反応したり、析出しなければ特に限定されない。また、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。塗膜表面の平滑性や膜厚の均一性を考慮に入れるとハロゲン系有機溶媒を使用することが好ましい。ハロゲン系有機溶媒の例としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエチレンなどが挙げられる。溶液の濃度は所望の膜厚によって任意に調節されるが、好ましくは0.01〜5重量%である。
塗布方法としては、スピンキャスト法、ディッピング法、滴下法、オフセットあるいはスクリーンなどの印刷法、インクジェット法などが挙げられる。また、半導体層中に極力ゴミなどを混入させないために事前にメンブランフィルタで濾過することが望ましい。なぜならば、不溶分や外部からのゴミの混入は均一な配向を妨げ、Off電流の増加やOn/Off比の低下を引き起こすからである。前駆体ポルフィリンの塗膜は130℃以下で予備乾燥することもできる。
塗布形成されたポルフィリン化合物の膜は加熱によってレトロディールスアルダー反応を引き起こし、R1 −CH=CH−R1 の脱離を伴うナフトポルフィリン化合物への変換が起こる。ナフトポルフィリン化合物の生成と同時にポルフィリン環同士のスタッキングによる結晶生長を引き起こし、ナフトポルフィリン化合物の結晶化膜が得られる。また、脱離反応は200℃以上で起こるが、より高い電界効果移動度を得るための加熱温度としては200〜350℃、好ましくは250〜300℃の範囲が望ましい。200℃未満では結晶生長が十分な結晶化膜が得られず、350℃を越えると急激な膜収縮のためにクラックが発生する。
加熱はホットプレート上、熱風循環型オーブンや真空オーブン中で行われるが、均一配向を得るためにはホットプレート上で瞬時に加熱する方法が好ましい。
また、より高い結晶性を得るためには加熱前の塗膜を布などで軽く擦るラビング処理を行うことが好ましい。ラビング処理に使用する布はレーヨン、木綿、絹などが挙げられるが、これらに限定されない。
これらの操作によって得られるナフトポルフィリン化合物の配向膜を用いた有機半導体層の膜厚は30〜150nm、好ましくは50〜100nmの範囲が望ましい。膜厚が30nm未満であると膜厚の均一性が損なわれ、一方150nmを越えると膜表面の平滑性が損なわれることで移動度が低下する。
結晶の生長はX線回折や光学顕微鏡、レーザー顕微鏡などを用いた膜表面観察、膜の紫外−可視吸収スペクトルで確認することができる。有機半導体層中の結晶粒の最大径は1μm以上、好ましくは2μm以上の範囲が望ましい。1μm未満であると十分な電界効果移動度が得られない。
また、有機半導体層の紫外−可視吸収スペクトル観察において650nm以上に強い吸収を示すことが好ましい。650nm以上に吸収を持たないもしくは弱い吸収しか示さない場合、ポルフィリン環同士のスタッキングが弱く、十分に配向しないため電界効果移動度が低下する。
本発明において得られる有機半導体層の電界効果移動度は1×10-3cm2 /V・s以上である。それより低いとゲート電圧の印加によって得られるソース−ドレイン間の電流値が小さすぎるため、液晶素子などの駆動に適さない。また、前記有機半導体層のOn/Off比は100以上であることが好ましい。
図1は本発明の電界効果型トランジスタの一部を拡大して示す模式図である。本発明の電界効果型トランジスタは、ゲート電極1とゲート絶縁層2とソース電極3とドレイン電極4と有機半導体層5から構成される。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの合金や、インジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機および有機半導体、例えばシリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。電極の作製方法としてはスパッタ法、蒸着法、溶液やペーストからの印刷法、インクジェット法などが挙げられる。また、電極材料としては、上に挙げた中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
ゲート絶縁層としては、前記一般式(1)で表されるポルフィリン化合物溶液が均一に塗布できるものであれば何でもよいが、誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。例としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタルなどの無機酸化物や窒化物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテル等の有機高分子が挙げられる。また、上記絶縁材料の中でも、表面の平滑性の高いものが好ましい。
一般式(1)で表されるポルフィリン化合物溶液の絶縁層上での塗膜均一性を向上させたり、加熱により一般式(2)で表されるナフトポルフィリン化合物の膜の配向を均一にするために、絶縁層表面のみを改質することもできる。その方法としてはオゾン、プラズマ、ヘキサメチルジシラザンガスを用いた乾式処理や、溶剤にテトラアルコキシシラン、トリクロロシラン、界面活性剤などを溶解した溶液を用いた湿式処理などが挙げられる。
本発明における電界効果型トランジスタの構造は薄膜型に限定されるものではなく、立体型でもよい。
以下に合成例および実施例を示すが、本発明はそれらの実施例に限られるものではない。
合成例1
ビシクロポルフィリンの合成
工程(1)
1,3−シクロヘキサジエン0.77ml(8.0mmol)、亜硝酸イソアミル1.1ml、テトラヒドロフラン50mlの混合液を還流させながら、アントラニル酸1g(7.3mmol)のTHF溶液を滴下する。その後、2時間加熱還流させ、THFを除去してからクロロホルムで抽出、蒸留水と飽和食塩水とで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製して1,4−ジヒドロ−1,4−エタノナフタレンを得た(0.89g,5.7mmol,収率78%)。
工程(2)
アルゴン雰囲気下中、得られた1,4−ジヒドロ−1,4−エタノナフタレン0.156g(1mmol)、クロロホルム30ml、スルフェニルクロライド0.12ml(1.0mmol)の混合液を−78℃に冷却後、1時間攪拌する。その後、溶媒を除いた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し2−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−3−フェニルチオ−1,4−エタノナフタレンを得た(0.286g,0.96mmol,収率96%)。
工程(3)
得られた2−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−3−フェニルチオ−1,4−エタノナフタレン0.286g(0.96mmol)、クロロホルム30mlの溶液を0℃に冷却した後、75%m−クロロ過安息香酸0.51gを加えた後、室温で2時間攪拌する。その後反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出する。蒸留水と飽和食塩水とで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製して2−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−3−フェニルスルフォニル−1,4−エタノナフタレンを得た(0.3g,0.91mmol,収率95%)。
工程(4)
得られた2−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−3−フェニルスルフォニル−1,4−エタノナフタレン0.3g(0.91mmol)、無水THF15mlの溶液を0℃に冷却した後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン2.5mlを加え、30分攪拌する。その後、希塩酸溶液を加えてからクロロホルムで抽出し、蒸留水と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水とで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製して1,4−ジヒドロ−2−フェニルスルフォニル1,4−エタノナフタレンを得た(0.264g,0.89mmol,収率98%)。
工程(5)
アルゴン雰囲気下、得られた1,4−ジヒドロ−2−フェニルスルフォニル1,4−エタノナフタレン0.296g(1.0mmol)、イソシアノ酢酸エチル0.13ml(1.15mmol)、無水THF30mlを入れ0℃まで冷却し、tert−BuOK1.7ml(1MTHF溶液)を2時間かけて滴下した後、室温で3時間攪拌した。反応終了後、希塩酸を加えてから反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水、飽和食塩水の順で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、エチル−4,9−ジヒドロ−4,9−エタノ−2H−ベンズ[f]イソインドール−1−カルボキシレートを得た(0.243g,収率91%)。
工程(6)
アルゴン雰囲気下、得られたエチル4,9−ジヒドロ−4,9−エタノ−2H−ベンズ[f]イソインドール−1−カルボキシレート0.243g(0.91mmol)、無水THF15mlの混合溶液を0℃まで冷却し、水素化リチウムアルミニウム粉0.10g(2.7mmol)を加え、2時間攪拌した。その後、THFを除去し、クロロホルムで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水、飽和食塩水の順で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この反応溶液を濾過、アルゴン置換、遮光し、p−トルエンスルホン酸10mgを加え16時間室温で攪拌した。さらにp−クロラニル0.11gを加え16時間室温で攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水、飽和食塩水の順で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濃縮後、アルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)と再結晶(クロロホルム/メタノール)により下記の式(3)で表わされるビシクロポルフィリンを得た(0.037g,0.045mmol,収率20%)。
Figure 0004878105
合成例2
ビシクロポルフィリン銅錯体の合成
前記ビシクロポルフィリン0.1g(0.12mmol)と酢酸銅二水和物0.065g(0.36mmol)のクロロホルム30ml−メタノール3ml溶液を室温で3時間攪拌した。反応溶液を蒸留水と飽和食塩水とで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濃縮後、クロロホルム/メタノールで再結晶し、下記の式(4)で表わされるビシクロポルフィリン銅錯体を得た(0.11g,0.12mmol,収率100%)。
Figure 0004878105
実施例1
図1に本実施例における電界効果型トランジスタの構造を示す。
まず、N型のシリコン基板をゲート電極1とした。シリコン基板表層を熱酸化して得られる5000Åの酸化シリコン膜をゲート絶縁層2とした。その上にクロム、金の順に蒸着を行い、通常の光リソグラフィー技術でソース電極3、ドレイン電極4を形成した。続いて、基板をオゾンで処理することにより表面処理をした後、この基板上に合成例1で合成したビシクロポルフィリン(式(3))の1重量%クロロホルム溶液をスピンキャストした。さらに基板を290℃で加熱して下記の式(5)からなる有機半導体層5を形成した。有機半導体層の膜厚は60nmで、光学顕微鏡を用いた観察の結果、結晶粒の最大径は2.5μmであった。
以上の手順でチャネル長50μm、チャネル幅10mm、の電界効果型トランジスタを作成した。作成したトランジスタのVd−Id、Vg −Id 曲線をAgilent社(製)のパラメーターアナライザー4156C(商品名)を用いて測定した(図2)。移動度μ(cm2 /Vs)は以下の式(1)に従って算出した。
Figure 0004878105
ここで、Ciはゲート絶縁膜の単位面積あたりの静電容量(F/cm2 )、W、Lはそれぞれ実施例で示したチャネル幅(mm)、チャネル長(μm)である。またId 、Vg 、Vthはそれぞれドレイン電流(A)、ゲート電圧(V)、しきい値電圧(V)である。また、Vd =−80VにおけるVg =−80Vと0VのId の比をOn/Off比とした。
得られた結果からこのトランジスタは電界効果移動度が1.4×10-3cm2 /V・sであり、On/Off比は600であった。
同様の製膜条件で石英基板上にナフトポルフィリン化合物からなる有機半導体層5を形成した。その膜の紫外−可視吸収スペクトルを日立製作所(製)のスペクトロフォトメーターU3310(商品名)を用いて観察すると700nm付近に吸収が観測された。
Figure 0004878105
実施例2
実施例1に記載のビシクロポルフィリンに代えて、合成例2で合成したビシクロポルフィリン銅錯体(式(4))を使用した以外は実施例1に準じて下記の式(6)からなる有機半導体層を形成した電界効果型トランジスタを作成した。このトランジスタの電界効果移動度は1.3×10-3cm2 /V・sであり、On/Off比は500であった。有機半導体層の膜厚は60nmで、結晶粒の最大径は2.1μmであった。
石英板上に作成した式(6)からなる有機半導体膜は700nm付近に吸収を示した。
Figure 0004878105
比較例1
実施例1に記載のビシクロポルフィリンに代えて、市販(アルドリッチ社製)の無金属フタロシアニンの蒸着膜を有機半導体層に使用した以外は実施例1に準じて電界効果型トランジスタを作成した。蒸着膜の作製条件は以下のとおりである。基板の温度は150℃、蒸着温度は約380℃、水晶振動子から算出される膜厚及び蒸着速度はそれぞれ100nm、0.5〜1.5Å/sであった。
このトランジスタの電界効果移動度は3.5×10-4cm2 /V・sであり、On/Off比は85であった。結晶粒の最大径は0.6μm以下であった。
本発明の電界効果型トランジスタは、従来に比べてはるかに簡便な方法で製造することができ、かつ電界効果移動度が大きいので、ICタグ、電子ペーパー、不揮発性メモリ、センサー等に利用することができる。
本発明の電界効果型トランジスタの一部を拡大して示す模式図である。 本発明の実施例1における電界効果型トランジスタの電気特性を示す図である。
符号の説明
1 ゲート電極
2 ゲート絶縁膜
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 有機半導体層

Claims (4)

  1. ゲート電極と、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ゲート絶縁層と前記ソース電極と前記ドレイン電極を覆う連続膜である有機半導体層とを有する電界効果型トランジスタの製造方法であって、
    前記電界効果型トランジスタの製造方法は前記有機半導体層を形成する工程を有し、
    前記有機半導体層を形成する工程は、下記一般式(3)
    Figure 0004878105

    表されるポルフィリン化合物からなる塗膜を前記ゲート絶縁層と前記ソース電極と前記ドレイン電極を覆う連続膜として配置し加熱することで、
    記一般式(5)
    Figure 0004878105

    表されるナフトポルフィリン化合物の結晶化膜を形成する工程であることを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
  2. 前記有機半導体層を形成する工程において、前記塗膜が配置される前に、前記ゲート絶縁層と前記ソース電極と前記ドレイン電極をオゾンで処理することを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
  3. 前記塗膜は250〜350℃の範囲で前記加熱されることを特徴とする請求項2に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
  4. 前記結晶化膜は結晶粒の最大径が1μm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
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