JP5188048B2 - 半導体素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機半導体化合物の前駆体を用いた半導体素子の製造方法に関する。
有機半導体を用いた薄膜トランジスタの開発は、1980年代後半から徐々に活発になってきている。そして、近年では、有機半導体を用いた薄膜トランジスタの基本性能は、アモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタの基本性能を越えるに至っている。有機半導体材料は、薄膜FET(Field Effect Transistor)等の半導体素子が形成されるプラスチック基板と親和性が高い場合が多い。したがって、有機半導体材料は、可撓性あるいは軽量性が要求される素子内の半導体層の材料として魅力的である。また、有機半導体材料には、溶液の塗布や印刷法を用いて成膜することが可能であるものもある。そのような材料を用いた場合、大面積の素子を簡単に低コストで作製することが可能である。
これまでに提案された有機半導体材料としては、以下のようなものが挙げられる。まず、特許文献1に開示されているペンタセンやテトラセンといったアセン類、特許文献2に開示されている鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物が挙げられる。また、特許文献3にはα−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、さらにはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった高分子化合物が提案されている。なお、これらの多くは非特許文献1に記載されている。
これらの化合物を半導体層として素子を製造する場合に要求される非線形光学特性、導電性、半導体特性などの特性は、材料の純度のみでなく、結晶性や配向性に大きく依存する。
ところで、π共役系が拡張された低分子化合物の多く(例えば、ペンタセン)は、結晶性が高く溶媒に不溶である。そのため、これらの化合物からなる薄膜は真空蒸着法を用いることにより形成される場合がほとんどである。ペンタセンは、高い電界効果移動度を示す事がしられているが、大気中において不安定で酸化されやすく、劣化しやすいという課題があった。また、真空蒸着法などの真空成膜を用いた場合には、低コストで製造可能という有機半導体材料のメリットが減少してしまう。
一方、π共役系高分子を用いた有機半導体は、溶液塗布法等で容易に薄膜を形成できる場合が多い。したがって、π共役系高分子を用いた有機半導体膜は、成形性に優れる場合が多いことから、応用開発が進められている(非特許文献2)。π共役系高分子は、分子鎖の配列状態が電気伝導性に大きな影響を及ぼすことが知られている。同様に、π共役系高分子電界効果型トランジスタの電界効果移動度が半導体層中における分子鎖の配列状態に大きく依存することが報告されている(非特許文献3)。しかし、π共役系高分子の分子鎖の配列は溶液を塗布して乾燥するまでの間に行われるため、環境の変化や塗布方法の違いによって分子鎖の配列状態が大きく変化する可能性がある。そのため、塗布条件によって電界効果移動度がばらつき、安定的な製造が困難であることが懸念される。
また、近年、ペンタセンの可溶性前駆体からなる薄膜を塗布で形成し、熱処理や光照射によりペンタセンに変換した膜を用いたFETも報告されている(非特許文献4、特許文献4、特許文献5)。熱処理によって前駆体をペンタセンへと変換する場合、ペンタセンへの変換に高温処理が必要であったり、質量が大きい脱離成分を減圧によって取り除いたりしなくてはならないという課題があった。一方、光処理によって前駆体をペンタセンへと変換する場合、高温処理の必要はないものの、得られたペンタセン膜の結晶化が不十分であることに起因し、十分な半導体特性が得られていなかった。
特開平5−55568号公報 特開平5−190877号公報 特開平8−264805号公報 特開2004−266157号公報 特開2004−221318号公報 アドバンスド・マテリアル(Advanced Material)誌、2002年、第2号、p.99から117 「Japanese Journal of Applied Physics」応用物理学会、1991年、第30巻、p.596から598 「Nature」Nature Publishing Group、1999年、第401巻、p.685から687 J.Appl.Phys.79巻 1996年 p.2136
以上述べたように、従来、有機半導体化合物を用いた電界効果型トランジスタなどの半導体素子を製造する際には、真空成膜などの工程を経ることで、良好な結晶性や配向性を有する半導体層を形成してきた。しかしながら、真空成膜は高コストであるとともに、有機半導体の代表例であるアセン類は酸化を受け劣化しやすいという課題があった。また、塗布法により簡便な方法がとられたものは、十分な半導体特性を得るために優れた配向性、結晶性を備えた膜を形成させるための手法が課題となっていた。
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、結晶性や配向性の高い有機半導体層を形成でき、かつ高い電界効果移動度を示す電界効果型トランジスタを提供することにある。
本発明は、有機半導体層を有する半導体素子の製造方法であって、基体上に結晶化促進層を設ける工程と、該結晶化促進層の上に有機半導体前駆体を付与する工程と、該有機半導体前駆体に光エネルギーと熱エネルギーとを同時に与えて有機半導体からなる層を形成する工程と、を少なくとも有することを特徴とする半導体素子の製造方法である。
また本発明は、前記基体を外部から加熱することにより前記熱エネルギーを付与することを特徴とする半導体素子の製造方法である。なお、ここで、「外部から加熱する」というのは、光エネルギーを受けて有機半導体前駆体や基体が発熱することによるエネルギーとは別に熱エネルギーを付与するという意味である。
また本発明は、前記結晶化促進層が結晶粒同士の接合を促進する機能を有することを特徴とする半導体素子の製造方法である。
また本発明は、前記有機半導体前駆体に光エネルギーと熱エネルギーとを同時に与えて有機半導体からなる層を形成する工程が、該有機半導体前駆体に脱離反応を生じさせる工程を含むことを特徴とする半導体素子の製造方法である。
また本発明は、前記脱離反応として逆ディールスアルダー反応を用いることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
また本発明は、前記結晶化促進層の上に有機半導体前駆体を付与する工程が、該有機半導体前駆体を含有する溶液を該結晶化促進層の上に塗布もしくは印刷する工程であることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
また本発明は、前記結晶化促進層として、ポリシロキサン化合物を含有する層を設けることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
また本発明は、前記ポリシロキサン化合物のうち少なくとも一種として、下記一般式(1)で示される構造を少なくとも有する化合物を用いることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
(式中、R1乃至R4は置換または非置換の炭素原子数1〜8のアルキル基、アルケニル基、置換または非置換のフェニル基またはシロキサンユニットのいずれかである。R1乃至R4の各々は同じでも異なっていてもよい。nは1以上の整数である。)
なお、本明細書及び特許請求の範囲の中で、「置換または非置換の」という場合、対象となる基中もしくはユニット中の水素原子、メチル基もしくはメチレン基が他の原子ないし基で置き換わっていてもよいということを示すものである。ここで、他の原子ないし基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、フェニル基、ニトロ基、メルカプト基、グリシジル基を挙げることができる。なお、メチル基もしくはメチレン基が置換された場合、炭素原子数は、置換後の(すなわち現実の)炭素原子数を意味する。
また本発明は、前記ポリシロキサン化合物のうち少なくとも一種として、下記一般式(2)または下記一般式(3)で示される構造を有するポリシロキサン化合物を用いることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
(式中、R5乃至R8は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基、アルケニル基、置換または非置換のフェニル基のいずれかである。R5乃至R8の各々は同じでも異なっていてもよい。mおよびnは0以上の整数であり、mとnの和は1以上の整数である。)
(式中、R9乃至R12は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基、アルケニル基、または置換または非置換のフェニル基のいずれかである。R9乃至R12の各々は同じでも異なっていてもよい。rおよびpは0以上の整数であり、rとpの和は1以上の整数である。)
なお、「または」は「及び」をも含む概念である。したがって、前記ポリシロキサン化合物のうち少なくとも一種が、上記一般式(2)で示される構造と上記一般式(3)で示される構造の両方を有している場合も本発明に包含されるのは当然である。
また本発明は、前記有機半導体前駆体として、下記一般式(4)及び(5)で示されるビシクロ構造の中から選ばれる少なくとも1種を部分構造として分子内に1つ以上有することを特徴とする半導体素子の製造方法である。
(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NR15のいずれかを示す。ここでR15は炭素数1以上12以下の直鎖または分岐アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルエステル基、アリール基、水酸基より選ばれる1種を示す。)
(式中、R16は酸素原子または硫黄原子を示す。)
また本発明は、前記有機半導体前駆体として、下記一般式(6)で示される化合物を用いることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
(式中、A環は一般式(4)または(5)で示されるビシクロ環のいずれかを示す。R17、R18は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、エステル基またはフェニル基を示す。R19からR26は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アラルキル基、フェノキシ基、シアノ基、ニトロ基、エステル基、カルボキシル基またはハロゲン原子を示す。R17、R18、R19からR26は互いに同一であっても異なっていても良い。R20とR21、R24とR25は互いに連結し、A環あるいは5員または6員複素環を形成していても良い。t、uおよびvは0以上の整数である。tからvの和は1以上の整数である。)
また本発明は、前記一般式(6)で示される化合物として、A環が前記一般式(4)で示され、且つR13及びR14が酸素原子であることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
また、本発明は、有機半導体層を有する電界効果型トランジスタの製造方法において、基体上に、ポリシロキサン化合物を含有する層を設ける工程と、該ポリシロキサン化合物を含有する層の上に有機半導体前駆体を付与する工程と、該有機半導体前駆体に光エネルギーと熱エネルギーとを同時に与えて有機半導体からなる層を形成する工程と、を少なくとも有することを特徴とする半導体素子の製造方法である。かかる製造方法は、「結晶化促進層」を「ポリシロキサン化合物を含有する層」と読み替えることにより、ここまでに記載した発明と組み合わせることができる。
また、本発明は、有機半導体層を有する半導体素子の製造方法において、基体上に下記一般式(1)で示される構造を少なくとも有するポリシロキサン化合物を含有する層を設ける工程と、該層の上に下記一般式(4)及び(5)で示されるビシクロ構造の中から選ばれる少なくとも1種を部分構造として分子内に1つ以上有する有機半導体前駆体を付与する工程と、前記有機半導体前駆体に光エネルギーと該光エネルギーを発生する発生源とは異なる発生源から発生した熱エネルギーとを同時に与えて有機半導体からなる層を形成する工程と、を少なくとも有し、前記有機半導体前駆体に前記光エネルギーと前記熱エネルギーとを同時に与える時間を1分以上15分以下とすることを特徴とする半導体素子の製造方法である。
一般式(1)

(式中、R 乃至R は置換または非置換の炭素原子数1〜8のアルキル基、アルケニル基、置換または非置換のフェニル基またはシロキサンユニットのいずれかである。R 乃至R の各々は同じでも異なっていてもよい。nは1以上の整数である。)
一般式(4)

(式中、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NR 15 のいずれかを示す。ここでR 15 は炭素数1以上12以下の直鎖または分岐アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルエステル基、アリール基、水酸基より選ばれる1種を示す。)
一般式(5)

(式中、R 16 は酸素原子または硫黄原子を示す。)
前記有機半導体前駆体が、前記一般式(4)で示されるビシクロ構造の中から選ばれる少なくとも1種を部分構造として分子内に1つ以上有する有機半導体前駆体であり、前記一般式(4)におけるR 13 及びR 14 が酸素原子であることが好ましい。
前記有機半導体前駆体が、6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneであることが好ましい。
前記光エネルギーを前記有機半導体前駆体に直接与え、前記熱エネルギーを前記有機半導体前駆体に前記一般式(1)で示される構造を少なくとも有するポリシロキサン化合物を含有する層を介して与えることが好ましい。
前記基体がゲート絶縁層を有することが好ましい。
前記ゲート絶縁層が酸化シリコン膜であることが好ましい。
また、本発明は、前記半導体素子として電界効果型トランジスタを製造することを特徴とする半導体素子の製造方法である。
以上の特徴を適宜組み合わせることも本発明の範囲内である。
本発明によれば、優れた配向性、結晶性を備えた半導体素子を得ることができる。
また、本発明によれば、半導体素子を簡便な方法で得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、ポリシロキサン化合物を含有する層の上に有機半導体前駆体を付与した後、該有機半導体前駆体に光エネルギーと熱エネルギーとを同時に与える方法が、良質な有機半導体層を形成するために有効であることを見出した。なお、以下、ポリシロキサン化合物を含有する層のことを、単に「ポリシロキサン化合物層」という場合がある。有機半導体層の形成方法において、有機半導体前駆体と結晶化を促進する層(結晶化促進層)ないしポリシロキサン化合物を含有する層とを積層し薄膜を形成した後、光エネルギー及び熱エネルギーを同時に与える。このような方法によれば、その界面で連続的に均一で欠陥の少ない有機半導体結晶が基体全体に形成可能になり、高い電界効果移動度を示す有機半導体素子を作製することが可能であると考えられる。かかる方法は、有機半導体素子の一例である有機電界効果型トランジスタを作製するために、とりわけ有効であると考えられる。
本発明者らの検討の範囲内では、ポリシロキサン化合物は、有機半導体の結晶化を促進する作用を有すると考えられる。したがって、本発明は、ポリシロキサン化合物のみならず、広く有機半導体の結晶化を促進する層(結晶化促進層)を用いた場合に妥当すると考えられる。ここで、本発明者らの観察及び考察によれば、結晶化促進層は、以下に記述するような結晶化促進機能を有する。すなわち、結晶化促進機能とは、結粒の安定化(移動や回転を伴う場合もある)及び/又は結晶粒同士の接合を促進する機能を言う。したがって、結晶化促進層とは、結晶粒の安定化(移動や回転を伴う場合もある)及び/又は結晶粒同士の接合を促進する層である。
また、本発明において、結晶化促進層が形成される下地の構造体(電界効果型トランジスタの場合、一般的には、基材、ゲート電極、ゲート絶縁層からなる構造体。ただし、ゲート絶縁層は省略可能な場合もあるし、積層順によっては、基材のみの場合もある。その他の層が形成されている場合もある。)を基体と呼ぶ。
本発明の結晶化促進層は、ポリシロキサン化合物からなることが好ましい。
結晶化促進層であるかどうかは問わず、本発明で用いられるポリシロキサン化合物とは、シロキサン構造(−Si−O−)と有機シラン構造を有する重合体である。すなわちこれらの構造を有してさえいれば、ポリシロキサン化合物は、その他の有機高分子や無機高分子との共重合体であっても構わない。他の高分子との共重合体の場合、シロキサン構造や有機シラン構造が主鎖中に存在していてもよいし、グラフト重合などにより側鎖に存在していても構わない。なお、有機シラン構造とは、SiとCとが直接結合した構造である。
本発明で用いられるポリシロキサン化合物としては、直鎖状や環状などの種々の構造のものが考えられる。本発明のポリシロキサン化合物は、高次に架橋もしくは分岐した構造を持つことがより好ましい。ここで述べる、高次に架橋もしくは分岐した構造とは、網状、梯子状、籠状、星状、樹状構造も含む。また、架橋もしくは分岐した構造は、必ずしもシロキサン構造を介して形成されなければならないわけではない。ビニル基、アクリロイル基、エポキシ基、シンナモイル基などの有機基同士が架橋した構造や、3官能以上の有機基を介して分岐した構造を含んでも構わない。
本発明で用いられるポリシロキサン化合物は、例えば、下記一般式(1)に示される構造を有する。かかる構造においては、主鎖がシロキサンユニット、側鎖(R1乃至R4)が水素原子又は炭素原子等の有機基を有する置換基である。
式中、R1乃至R4は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基、置換または非置換のフェニル基またはシロキサンユニットのいずれかである。R1乃至R4の各々は同じでも異なっていてもよい。
置換のアルキル基としては、例えば、水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、フェニル基、ニトロ基、メルカプト基、グリシジル基で置換されたアルキル基が挙げられる。また、メチル基やメチレン基がアミノ基などで置換されていてもかまわない。さらに、置換のフェニル基としては、例えば、水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、グリシジル基で置換されたフェニル基が挙げられる。もちろん、置換基はこれらに限られるものではない。なお、これらの例示は、論理的にありえないといった例外的な場合を除き、以下に記載するシロキサン化合物中のR及びRn(nは自然数)のすべてに妥当する。
置換基R1乃至R4は、下記に示すようなシロキサンユニットでも良い。
(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基、または置換または非置換のフェニル基または上記に表されているシロキサンユニットのいずれかであり、各々のRは同じ官能基であっても違う官能基であっても良い。)
一般式(1)中の置換基の種類によってポリシロキサンの形状には直鎖状、環状、網状、梯子状、籠状構造等が存在するが、本発明に用いるポリシロキサンはそのいずれでも構わない。
本発明で用いられるポリシロキサン化合物の別の例としては、下記一般式(3)に示すような構造を有するものも挙げられる。
式中、R9乃至R12は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基、アルケニル基、または置換または非置換のフェニル基のいずれかである。R9乃至R12の各々は同じでも異なっていてもよい。rおよびpは0以上の整数であり、rとpの和は1以上の整数である。
本発明で用いられるポリシロキサン化合物は、少なくとも下記の一般式(2)に示すような特定のシルセスキオキサン骨格を有すると特に好ましい。
式中、R5乃至R8は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基または置換または非置換のフェニル基のいずれかである。R5乃至R8の各々は同じでも異なっていてもよい。mおよびnは0以上の整数であり、mとnの和は1以上の整数である。共重合の形態はランダム共重合であってもブロック共重合であっても良い。
極めて具体的にR5乃至R8の例を挙げるとすれば、メチル基、エチル基のような非置換アルキル基/非置換のフェニル基/ジメチルフェニル基やナフチル基といった置換フェニル基などが挙げられる。また、置換基R5乃至R8には炭素原子、水素原子の他に酸素原子や窒素原子や金属原子など各種の原子が含まれていても良い。
一般式(2)で示される構造と一般式(3)で示される構造の両方を有するシロキサン化合物も、本発明には用いられ得る。
本発明におけるシルセスキオキサン骨格を説明する。一般式(2)では、置換基R5、R6を有するシスセスキオキサンユニット(以後、第一ユニット)がm個繰り返したものと、置換基R7、R8を有するシスセスキオキサンユニット(以後、第二ユニット)がn個繰り返したものが接続した構造を示す。なお、mおよびnは0以上の整数であり、m+nは1以上の整数である。しかしながら、これは第一ユニットの繰り返しと、第二ユニットの繰り返しが分離していることを意味するのではない。両ユニットは、分離して接続していてもランダムに入り交じって接続していても良い。
一般式(2)に示すような特定のシルセスキオキサン骨格を有する化合物を主体として、本発明における結晶化促進層を基体に形成するための方法の例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、下記の一般式(7)および一般式(8)もしくはいずれか一方に示すポリオルガノシルセスキオキサン化合物を含む溶液を基板上に塗布して、加熱、乾燥させれば良い。
その際の、好ましい加熱処理温度は140℃以上、さらに好ましくは150℃以上230℃以下である。140℃未満で加熱すると加水分解反応が不十分となるおそれがある。
式中、R5、R6は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基または置換または非置換のフェニル基のいずれかであり、R5とR6は同じ官能基であっても良い。R27乃至R30は炭素原子数1以上4以下のアルキル基または水素原子であり、zは1以上の整数である。
式中、R7、R8は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基または置換または非置換のフェニル基のいずれかであり、R7とR8は同じ官能基であっても良い。R31乃至R34は炭素原子数1以上4以下のアルキル基または水素原子であり、yは1以上の整数である。
このような加熱、乾燥により化合物の末端で加水分解反応が誘起され、原料であるシルセスキオキサン化合物はラダー状に接続され、緻密化する。ただしこの時、加熱、乾燥温度は有機物が完全に消失するほど高くないので原料化合物は完全なシリカ構造にまでにはならずに大部分の置換基が残存しているシルセスキオキサン骨格となる。完全なシリカ構造にしないことは、良好な半導体層を得るための1つのポイントであるともいえる。
また、乾燥工程に際してオリゴマーであるシルセスキオキサン化合物が互いに架橋しあう反応を補助する目的で、塗布溶液にはギ酸などの酸を少量添加してもよい。
酸の添加量は特に限定されるものではない。酸としてギ酸を用いる場合は、塗布溶液に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン化合物の固形分重量に対して1重量%から30重量%の範囲で添加すると架橋反応が促進されるので好ましい。添加量が1重量%より少ないと架橋反応の促進効果が十分でなくなる恐れがあり、逆に添加量が30重量%より多いと乾燥後の膜性を阻害するおそれがある。
架橋反応、溶剤除去の過程において、系内にはその温度領域で蒸発、揮発、焼失しない安定剤は溶液系から極力除去する。
塗布溶液の溶媒にはアルコール類やエステル類など任意のものを使用できる。基板への濡れ性などを考慮して溶媒を選択すればよい。
ポリシロキサン化合物層ないし結晶化促進層の原料溶液の塗布方法は特に限定されるものではない。塗布方法としては、慣用のコーティング方法、例えばスピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法、滴下法等を採用することができる。なお、印刷法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクトプリンティングなどが挙げられる。これらの塗布方法のうち、塗布量を制御して所望の膜厚の成膜ができるという点で好ましい方法は、スピンコーティング法、ディッピング法、スプレー塗布法、インクジェット法である。また、得られた膜の絶縁性を保つためには塗布溶液に極力ゴミなどを混入させないことが重要であり、事前に原料溶液をメンブランフィルタで濾過することが望ましい。
ポリシロキサン化合物層ないし結晶化促進層の膜厚は10nm以上、好ましくは15nm以上500nm以下になるように液濃度を調整することが好ましい。10nm未満になると、均一な膜が得られにくくなる場合があるからである。
ポリシロキサン化合物層ないし結晶化促進層を塗布する前に、基体表面の濡れ性向上のため、アルカリ液による超音波処理やUV照射等で基体の表面改質を行ってもよい。
次に本発明で用いられる有機半導体前駆体について説明する。有機半導体前駆体は、下記一般式(4)及び(5)で示されるビシクロ構造の中から選ばれる少なくとも1種を部分構造として分子内に1つ以上有するものであることが好ましい。
式中、R13及びR14は酸素原子、硫黄原子、NR15のいずれかである。ここでR15は炭素数1以上12以下の直鎖または分岐アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルエステル基、アリール基、水酸基より選ばれる少なくとも1種を示す。
(式中、R16は酸素原子または硫黄原子を示す。)
さらに、一般式(4)及び一般式(5)で示されるビシクロ構造を有する有機半導体前駆体は光によりアセン系化合物に変換するものが好ましく、中でも一般式(6)で示される構造であることがより好ましい。
式中、A環は前記一般式(4)または(5)で示されるビシクロ環のいずれかを示す。R17、R18は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、エステル基またはフェニル基を示す。R19からR26は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アラルキル基、フェノキシ基、シアノ基、ニトロ基、エステル基、カルボキシル基またはハロゲン原子を示す。
ここで言うアリール基とは、1価の単環および多環芳香族炭化水素基のことであり、多環芳香族炭化水素とは、例えば、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フェナンスレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ルビセン、コロネン、ピランスレン、オバレンのような芳香族炭化水素環が2から15個縮環したものが挙げられる。2から15個の環の縮合位置は例に挙げたもの以外でもどこで縮環していても良い。また、複素環基とは、1価のピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、フラザン環、セレノフェン環のような単環の複素環基や単環の複素環や芳香族炭化水素環が任意に組み合わされて縮合した形の縮合複素環基が挙げられる。なお、アリール基、複素環基は置換基を有していても良く、置換可能な位置であればどの位置で置換していても良い。さらに、アリール基同士、複素基同士、アリール基と複素環基が組み合わされオリゴマーの形体を取っても良い。
17、R18、R19からR26は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。R20とR21、R24とR25は互いに連結し、A環あるいは5員または6員複素環を形成していても良い。ここで、5員または6員複素環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、フラザン環、セレノフェン環が挙げられる。t、uおよびvは0以上の整数である。tからvの和は1以上の整数である。
中でも、アセン系化合物へと光によって変換される構造、同種または異種の前記アセン系化合物が2から6個連結されたオリゴマーへと光によって変換される構造、前記アセン系化合物に複素環が連結された構造へと光によって変換されるものがより好ましい。なお、アセン系化合物とは、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、アクリジン、チアンスレンのように芳香族炭化水素環または複素環から選ばれる3つ以上の環が直線状に縮環した化合物である。
ここで、一般式(4)及び一般式(5)に示されるビシクロ骨格を部分構造として有する有機半導体前駆体にエネルギーを付与した場合、該ビシクロ骨格は付与されたエネルギーを受けて逆ディールス−アルダー反応を起こす。具体的には、反応式(1)、反応式(2)に示されるように、ビシクロ骨格は芳香環へと変換される。それにともなって、有機半導体前駆体は有機半導体に変化する。
ここで、ディールスアルダー反応とは、共役ジエンにジエノフィルと呼ばれる二重結合が付加して環状構造を生じる有機化学反応である。逆ディールスアルダー反応とはディールスアルダー反応の逆反応で、形成された環状構造が共役ジエンとジエノフィルに変換される反応である。
一般式(4)で示されるビシクロ骨格は反応式(1)に示すように、R13=C=C=R14のユニットがが光によって脱離し、ビシクロ骨格から芳香環へと変化する。なお、R13=C=C=R14のユニットが不安定な構造体の場合は、R13=C=C=R14がさらに安定な構造体へと変換されることもある。そのため、R13及びR14は、光によってR13=C=C=R14が脱離可能であるかどうかという観点から選ばれる。R13及びR14は好ましくは酸素原子、硫黄原子、NR15のいずれかである。ここでR15は炭素数1以上12以下の直鎖または分岐アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルエステル基、アリール基、水酸基より選ばれる少なくとも1種を示す。R15の炭素数が12を越えると脱離成分の分子量が増し、生成した有機半導体中に残存してしまう場合がある。かかる場合、十分な半導体特性が得られない。また、より好ましくはR15の炭素数は6以下である。さらに好ましくはR13、R14は共に酸素原子である。
一般式(5)で示すビシクロ骨格は反応式(2)に示すように、CH2=C=R16のユニットが光によって脱離し、ビシクロ骨格から芳香環へと変化する。なお、CH2=C=R16のユニットが不安定な構造体の場合は、CH2=C=R16がさらに安定な構造体へと変換されることもある。そのため、R16は、光によってCH2=C=R16が脱離可能であるかどうかという観点から選ばれる。R16は、好ましくは酸素原子または硫黄原子である。
本発明で用いられる有機半導体前駆体として好ましい例を以下に示す。
なお、例ではビシクロ構造としてα−ジケトン構造を示しているが、これに限られるわけではなく、また、無置換体の構造を主体に示しているが、可能であれば置換基を有していてもよい。ここで示している化合物はあくまで一例であり、本発明の化合物はこれらに限定されない。
これらの有機半導体前駆体は、結晶化促進層が形成されている基板上に付与される。それにより、有機半導体前駆体層が形成される。このときポリシロキサン化合物層ないし結晶化促進層と有機半導体前駆体層が密着して積層されていることが望ましい。密着とは、ポリシロキサン化合物層ないし結晶化促進層の少なくとも一部と有機半導体前駆体層の少なくとも一部とが他の層を介さずに接している状態を指す。
有機半導体前駆体層の形成方法としては、有機半導体前駆体を有機溶媒に溶解させてから塗布する方法が好ましい。有機半導体前駆体を溶解するために用いられる有機溶媒は有機半導体材料が反応したり、析出したりしなければ特に限定されない。また、2種以上の有機溶媒を混合して用いても良い。ここで、塗膜表面の平滑性や膜厚の均一性を考慮に入れた溶媒を選択することが望ましい。
溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、トルエン、キシレン、1,2−ジメトキシエタン、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、などが挙げられる。溶液の濃度は所望の膜厚によって任意に調節されるが、好ましくは0.01重量%以上5重量%以下である。
塗布方法は、特に限定されるものではない。塗布方法としては、慣用のコーティング方法、例えばスピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法、滴下法等が挙げられる。なお、印刷法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクトプリンティングなどが挙げられる。これらの塗布方法のうち、塗布量を制御して所望の膜厚の成膜ができるという点で好ましい塗布方法は、スピンコーティング法、ディッピング法、スプレー塗布法、インクジェット法である。また、塗膜に極力ゴミなどを混入させないために事前にフィルタで濾過することが望ましい。なぜならば、不溶分や外部からのゴミは均一な配向を妨げ、オフ電流の増加やオン/オフ比の低下を引き起こす場合があるからである。有機半導体前駆体の塗膜は予備乾燥することもできる。
上述のようにポリシロキサン化合物層ないし結晶化促進層上に有機半導体前駆体層が形成される。その後、光エネルギー及び熱エネルギーを同時に与えることによって、ビシクロ骨格から芳香環(前駆体から有機半導体)に変換される。芳香環への変換と同時に有機半導体同士のスタッキングによる結晶成長が同時に起こり、有機半導体結晶化膜が形成される。これによって有機半導体からなる層が形成される。
光エネルギーは、有機半導体前駆体層に光照射することによって与えられる。照射する光の波長は有機半導体前駆体が有する吸収波長領域であればよいが、より好ましくは、300nm以上500nm以下の波長領域である。300nmより短い波長は、周辺部へのダメージや副反応が懸念され、500nm以上の波長は得られた有機半導体に対してのダメージが懸念されるからである。光源としては、タングステンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯および各種レーザー光等が選択される。光照射方法は有機半導体前駆体が有機半導体に変化すれば特に限定されないが、光反応をより効果的に行うことを考えると、有機半導体前駆体に直接照射する方法が望ましい。ただし、光照射によって発生する熱が有機半導体前駆体に加わる場合は熱吸収フィルタ等で熱をカットすることが好ましい。
光照射をマスクを介して行うことにより、パターニングを行うこともできる。
熱エネルギーは基体を外部から加熱することによって与えられる。加熱方法としては、如何なる方法を用いてもよいが、好ましい方法としては、ホットプレート上、熱風循環型オーブン又は真空オーブン中で加熱する方法が挙げられる。本発明でのより好ましい方法はホットプレート上で基体を加熱する方法である。加熱温度は、有機半導体前駆体によって最適な温度は異なるが、周辺部への影響等を考えると、50℃以上180℃以下の温度領域での加熱が好ましい。
光エネルギー及び熱エネルギーを同時に与える時間は、膜厚、材料等によって大きく異なるものであり、一概には決めることができない。一般的には、有機半導体結晶化膜が成長するに従い、膜の深部までの光透過が難しくなる。そのため、光エネルギー及び熱エネルギーを同時に与える時間を1秒〜30分とすることが好ましい。このようにすることにより、前駆体から有機半導体への変換に光を有効利用することができる。より好ましくは、光エネルギー及び熱エネルギーを同時に与える時間は、1分乃至15分である。
本発明者らの詳細な検討によれば、光エネルギーと熱エネルギーを同時に与えることが優れた結晶化膜を得るために重要である。有機半導体前駆体膜に光エネルギーのみを与えても脱離反応自体は進行する。しかしながら、有機半導体前駆体薄膜に光エネルギーのみを与えて脱離反応を行った有機半導体膜は、アモルファス膜であり、十分な半導体特性が得られない。また、光エネルギーのみを与えて脱離反応を行った後、熱エネルギーを与えた場合は半導体特性が得られるが、結晶化に時間がかかる又は結晶化が十分でないため、十分な半導体特性が得られない場合がある。このことは有機半導体前駆体薄膜に光エネルギーのみを与えて脱離反応を行ったサンプルは大気中に放置していると変換後の有機半導体特有の色が徐々に退色して劣化していくのが観察されたのに対して、光エネルギーと熱エネルギーを同時に与えて脱離反応を行ったサンプルは、大気中に10日以上放置していても有機半導体特有の色が退色しなかったことからも指示される。これは、熱エネルギーによる加熱が、脱離反応によって生じた結晶粒中の隙間を埋める働きをし、有機半導体層の結晶状態を、酸素や水分の侵入を受けにくいより安定な結晶状態へと導いたためであると考えられる。後述する実施例では、電界効果型トランジスタを例にとって本発明の効果を検証する。しかしながら、結晶状態の安定化に起因する耐久性の向上という本発明の効果は、電界効果型トランジスタに限らず、半導体素子一般について妥当すると考えられる。
これらの操作によって得られる有機半導体膜の膜厚は10nm以上500nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上300nm以下である。膜厚は表面粗さ計や段差計などで測定することができる。
さらに、本発明者らの詳細な検討によれば、結晶化促進層上で有機半導体前駆体に光エネルギー及び熱エネルギーを同時に付与し、有機半導体からなる層へと変換することが結晶化促進機能を最大限に引き出すために重要であると考えられる。一般に、有機半導体前駆体を光エネルギー及び熱エネルギーを同時に付与することにより脱離反応させ、有機半導体を生じさせた際に、得られた化合物からなる結晶粒間に隙間が生ずることが観察される。一方、結晶化促進層上でかかる反応を行った場合は、有機半導体層の結晶粒間の隙間が埋まり、基板全体に渡り均一な結晶が形成されることが確認された。
これは、結晶化促進層が有機半導体層の結晶粒の安定化(移動や回転を伴う場合もあり得る)や結晶粒同士の接合を促すからであると考えられる。
このような結晶化促進層の作用によって、有機半導体層の結晶性が向上することが結晶化促進層として機能する所以であると、本発明者は考えている。なお、結晶粒同士の接合が生じることが、特に好ましいと考えられる。
本発明の有機電界効果型トランジスタの模式的な断面図を図1に示す。本発明の電界効果型トランジスタは、ゲート電極1と絶縁層2とA層3(ポリシロキサン化合物層ないし結晶化促進層)、ソース電極4とドレイン電極5とB層6(有機半導体層)から構成される。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの合金や、インジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機および有機半導体、例えばシリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。電極の作製方法としてはスパッタ法、蒸着法、溶液やペーストからの印刷法、インクジェット法、ディップ法などが挙げられる。また、電極材料としては、上に挙げた中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
絶縁層としては、A層が均一に塗布できるものであれば何でもよいが、誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。例としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタルなどの無機酸化物や窒化物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテル、等が挙げられる。上記絶縁材料の中でも、表面の平滑性の高いものが好ましい。またA層自身が絶縁性に優れているので、A層の厚さを絶縁性が発現する厚さに調整することにより、A層自体をゲート絶縁層として用いてもよい。
本発明における電界効果型トランジスタ構造はトップコンタクト電極型、ボトムコンタクト電極型、トップゲート電極型のいずれでも良い。また横型に限定されるものではなく、縦型でもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
合成例1
まず、本発明で用いるビシクロ化合物の合成例を6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneを例にとって示す。
(工程1)
反応容器に5,6,7,8−テトラメチリデンビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン(12mmo1,1.91g)と亜硝酸イソアミル(75mmo1,10.0m1)をTHF(テトラヒドロフラン)80mlに溶解させ加熱還流した。滴下漏斗にアントラニル酸(91mmo1,12.5g)をTHF100m1に溶かした溶液を入れゆっくりと滴下していった。滴下後原料がなくなるまで加熱撹拌を続けた。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を加え撹拌し続け、反応溶液をヘキサンで抽出した。得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し下記一般式(9)で示される化合物を得た。収量2.66g、収率72%であった。
分子式:C2420(308.42)
形状:白色結晶
1H NMR(CDC13)δ=7.l0(4H,s),6.85(4H,〜J=3.41),4.29(2H,t,J=3.41),3.60(8H,s)[270MHz]
13C NMR(CDC13)δ=140.179,139.254,134.241,128.715,125.858,54.197,33.164
[67.8MHz]
マススペクトル(FAB)m/z:308(M+:22)
元素分析:Calcd(%)C=93.46,H=6.54
Found(%) C=93.54,H=6.68,
(工程2)
反応容器に工程1で得られた化合物(4.02mmo1,1.24g)を入れクロロホルム50m1に溶解させた。この溶液にDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)(8.04mmo1,1.80g)を加え、2時間撹拌した。その後、飽和重曹水でよく振り、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し下記一般式(10)で示される化合物を得た。
収量1.20g、収率98%
分子式:C2416(304.38)
融点:277.2℃
形状:白色結晶
1H NMR(CDC13)δ=7.72(4H,s),7.69(4H,m),7.37(4H,m),7.04(2H,q,J=3.42,0.98),5.32(2H,m)
[270MHz]
13C NMR(CDC13)δ=142.13,138.24,131.68,127.42,125.52,121.23,50.15
[67.8MHz]
赤外吸収スペクトル(KBr)cm-1:3054,2973
マススペクトル(DIEI)m/z:304(M+:100),278(13)
元素分析:Calcd(%)C=94.70,H=5.30
Found(%) C=94.36,H=5.58
(工程3)
1Lナス型フラスコに、NMO(N−メチルモルホリン−N−オキシド)・H2O(5.60mmo1,0.78g,)、回転子を入れ、アルゴン置換した。さらに、アセトン500m1を加え、OsO4(0.10mmol,5m1)を加えた。工程2で得られた化合物(4.11mmo1,1.25g)を加え平栓し、室温に保ちながら激しく32時間攪拌した。Na224(0.6g)水を加えて10分聞攪拌した後、セライト濾過し母液を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮し6,13−Dihydro−15,16−dihydoxy−6,13−ethanopentaceneが白色結晶として得られた。
収量1.36g、収率98%
分子式:C24182(338.40)
融点:299.8℃
形状:白色結晶
1H NMR(CDC13)δ=7.85(2H,s),7.80(8H,m),7.43(4H,m),4.66(2H,s),4.22(2H,s)
[270MHz]
13C NMR(CDC13)δ=137.349,135,876,132,722,127.574,125.876,125.813,125.220,123.324,68.411,51.187
[100.4MHz]
赤外吸収スペクトル(KBr)cm-1:3432.67,370.68(OH)
マススペクトル(FAB)m/z:339(M+:4)
元素分析:Calcd(%)C=62.15,H=4.69
Found(%) C=62.01,H=4.75
(工程4)
不活性ガス雰囲気下三つ口反応容器にdry−DMSO(ジメチルスルフォキシド)(132mmo1,9.4m1)、dry−CH2C12 69m1を加え、アセトン/液体窒素バスで−60℃に冷却した。液温を−60℃に保ちながら無水トルフルオロ酢酸119mmo1(16.5m1)をゆっくり滴下し10分撹拌した。その後、最少量のdry‐DMSO(ジメチルスルフォキシド)に溶解させた6,13−Dihydro−15,16−dihydoxy−6,13−ethanopentacene(3.81mmo1,1.29g)をゆっくりと滴下し、15時間撹拌した。液温を−60℃に保ちながらトリエチルアミン(275mmo1,20.7m1)を滴下後1.5時間撹拌した。反応溶液を2MHC1(200m1)にゆっくり注ぎ、CH2C12で抽出した。得られた有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮し粗生成物を得た。これに酢酸エチルを加えて不溶物をろ取し、6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneを得た。
収量0.55g,収率43%
分子式:C24142(334.37)
融点:318℃乃至323℃
形状:黄色結晶
lH NMR(CDC13)δ=7.94(4H,s),7.84(4H,m),7.52(4H,m),5.31(2H,s)
[270MHz]
13C NMR(CDC13)δ=185.165,133.585,131.851,127.862,127.017,125.364,60.603
[67.8MHz]
赤外吸収スペクトル(KBr)cm-1:1754.90,1735.62(C=O)
マススペクトル(DIEI)m/z:335(M+:4)
元素分析:Calcd(%)C=86.21,H=4.22
Found(%) C=86.41,H=4.40
合成例2
合成例1で例示した6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneの合成法において、合成例1とは別の合成法を以下に示す。
(工程1)
ペンタセン(1.39g、5.0mmol)、ビニレンカーボネート(0.32g、5.0mmol)、キシレン(95ml)をオートクレーブに入れ、180℃で72時間撹拌させた。反応後、減圧下濃縮、乾燥させることで下記一般式(11)で示される化合物が得られた(1.78g、98%)。
工程(2)
工程(1)で得られた化合物(1g、2.7mmol)を反応容器に入れ、1,4−ジオキサン(30ml)に溶解させた。そこへ(4M)NaOH(11.3ml)を加え、1時間還流させた。反応終了後、反応物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後減圧下濃縮した。こうして、目的物である6,13−Dihydro−15,16−dihydoxy−6,13−ethanopentaceneを得た(0.91g、100%)。
工程(3)
反応容器を窒素置換し、ジメチルスルホキシド(8.6ml、93.5mmol)、塩化メチレン(48ml)を加えた。反応容器を−60℃に冷却してからトリフルオロ酢酸無水物(11.7ml、84.3mmol)を加え、10分間撹拌した。撹拌後、工程(2)で得られた6,13−Dihydro−15,16−dihydoxy−6,13−ethanopentacene(0.96g、2.7mmol)をジメチルスルホキシド(4ml)に溶解させたものを反応溶液中へゆっくりと滴下した。滴下後、−60℃のまま1.5時間撹拌してからトリエチルアミン(27.5ml)を加えた。その後さらに1.5時間撹拌してから室温に戻し、反応溶液を10%塩酸150ml中へ注ぎ、塩化メチレンで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮した。得られた粗生成物を酢酸エチルで洗浄することで目的物である6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dione(0.45g、50%)。
合成例3
次に、dibromo−6,13−dihydro−6,13−ethenopentacene−15,16−dioneを例にとって示す。
(工程1)
2,6−Dibromoanthracene(2.41mmol,0.67g)、vinylene carbonate(3.80mmol,0.21ml)、無水キシレン(10ml)をオートクレーブに入れ、180℃で3日間反応させた。その後、室温に戻し、減圧下濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。それにより2,6−dibromo−9,10−dihydro−9,10−ethanoanthracene−cis−11,12−diyl carbonateを得た(0.73g,72%)。
(工程2)
工程1で得られた2,6−dibromo−9,10−dihydro−9,10−ethanoanthracene−cis−11,12−diyl carbonate(0.58mmol,0.24g)、文献(K.Ito, T.Suzuki, Y.Sakamoto, D.Kubota, Y.Inoue, F.Sato, S.Tokito, Angew.Chem.Int.Ed. 2003,42,1159から1162.)に記載の方法によって得られたBoronic ester(1.33mmol,0.40g)、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)(0.066mmol,0.077g)、トルエン(202ml)、1N Na2CO3(8.5ml)をフラスコに入れ、窒素置換し、18時間還流した。その後、室温に戻してからセライトろ過をし、ろ物をトルエンで洗浄した。その後、ろ液を減圧下濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。それにより、目的物である2,6−(2’−Anthryl)−9,10−dihydro−9,10−ethanoanthracene−cis−11,12−diyl carbonateが得られた(0.089g,25%)。
(工程3)
工程4で得られた2,6−(2’−Anthryl)−9,10−dihydro−9,10−ethanoanthracene−cis−11,12−diyl carbonate(0.11mmol,0.067g)を4N NaOH(2ml)、1,4−dioxane(4ml)の混合溶液中に入れ、窒素置換した。その後、1時間還流し、室温に戻した。そこへ水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮することでジオール体が得られた。得られたジオール体を合成例1(工程4)と同様の方法でSwern酸化した。それにより、目的物である2,6−Dianthryl−9,10−dihydro−9,10−ethanoanthracene−11,12−dioneが得られた(0.046g,69%)。
樹脂溶液aの調製
エタノール49.5g、1−ブタノール49.5gよりなる混合溶媒に市販のフレーク状のメチルシルセスキオキサン(MSQ)(昭和電工製、商品名GR650)1.0gを溶解させることで、樹脂溶液aを調製した。
樹脂溶液bの調製
エタノール49.5g、1−ブタノール49.5gよりなる混合溶媒にメチルトリメトキシシラン1.0gを完全に溶解させた。この溶液に蒸留水0.83gと蟻酸0.05gを加え、室温で48時間攪拌し、シリカゾルbを調製した。
(実施例1)
図1に本実施例におけるトップ電極型電界効果型トランジスタの構造を示す。
まず、ハイドープN型のシリコン基板をゲート電極1とした。このシリコン基板表層を熱酸化して得られた5000Åの酸化シリコン膜をゲート絶縁層2とした。次に絶縁層の表面に樹脂溶液aをスピンコート法(回転数5000rpm)で塗布した。次にこの塗膜をホットプレートに移して100℃で5分、220℃で30分間加熱した。このようにしてA層3(ポリシロキサン層)を形成した。
次にこのようにしてA層3を形成した基板上に、合成例1で合成した6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneの1.0重量%クロロホルム溶液をスピンコート法により塗布した。回転数は1000rpmとした。それにより、塗膜を形成した。さらに、このようにして塗膜を形成した基板を120℃に設定したホットプレート上に載せ、熱吸収フィルターとブルーフィルターを通し、日本ピー・アイ株式会社製メタルハライドランプ(PCS−UMX250)の光を5分間照射した。それによってB層6(有機半導体層)を形成した。
B層6の上に、マスクを用いてAuを蒸着し、ソース電極4、ドレイン電極5を形成した。電極作製時の条件は、蒸着装置チャンバー内の真空度は1×10-6torr、基板の温度は室温とした。また、得られた電極の膜厚は100nmであった。
以上の手順でチャネル長L=50μm、チャネル幅W=3mmの電界効果型トランジスタを作成した。作成したトランジスタのVd−Id、Vg−Id曲線をAgilent社(製)のパラメーターアナライザー4156C(商品名)を用いて測定した。
移動度μ(cm2/Vs)は以下の式(1)に従って算出した。
ここで、Ciはゲート絶縁膜の単位面積あたりの静電容量(F/cm2)、W、Lはそれぞれ実施例で示したチャネル幅(mm)、チャネル長(μm)である。またId、Vg、Vthはそれぞれドレイン電流(A)、ゲート電圧(V)、しきい値電圧(V)である。また、Vd=−80VにおけるVg=−80Vと0VのIdの比をon/off比とした。得られた結果から算出した電界効果移動度は、0.18cm2/Vsであった。また、on/off比は1.5×105であった。
(実施例2)
実施例1で用いた樹脂溶液aを樹脂溶液bに変えた以外は実施例1と同様の操作で4つの素子を作製し、実施例1と同様の電気特性評価を行った。得られた結果から算出した電界効果移動度は0.34cm2/Vsであった。また、on/off比は2.0×106であった。
(実施例3及び比較例1)
2枚の石英ガラス上に6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneの1.5重量%クロロホルム溶液を展開し成膜した。そのうちの1枚は、120℃に設定したホットプレート上で熱吸収フィルターとブルーフィルターを通し、日本ピー・アイ株式会社製メタルハライドランプ(PCS−UMX250)の光を5分間照射した。もう1枚は室温で熱吸収フィルターとブルーフィルターを通し、日本ピー・アイ株式会社製メタルハライドランプ(PCS−UMX250)の光を5分間照射した。このとき、2つのサンプルは共にペンタセン特有の青色に変化していた。このようにして、光と熱を同時に与えて形成した有機半導体膜と光のみを与えて形成した有機半導体膜が得られた。この2つのサンプルを大気中に10日間放置し、再び膜の色を確認したところ、光と熱を同時に与えて形成した有機半導体膜は青色が残っていた。一方、光のみを与えて形成した有機半導体膜は退色していた。
(比較例2)
実施例1と同様の酸化シリコン膜付きハイドープN型シリコン基板上に、合成例1で合成した6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneの1.0重量%クロロホルム溶液をスピンコート法により塗布した。回転数は1000rpmとした。それにより、塗膜を形成した。さらに、このようにして塗膜を形成した基板を120℃に設定したホットプレート上に載せ、熱吸収フィルターとブルーフィルターを通し、日本ピー・アイ株式会社製メタルハライドランプ(PCS−UMX250)の光を5分間照射した。それによってB層6(有機半導体層)を形成した。
B層6の上に、マスクを用いてAuを蒸着し、ソース電極4、ドレイン電極5を形成した。電極作製時の条件は、蒸着装置チャンバー内の真空度は1×10-6torr、基板の温度は室温とした。また、得られた電極の膜厚は100nmであった。光照射後、前駆体層である黄色い層からペンタセン層である青色の層へと変化していることを確認した。その上にマスクを用いて金の蒸着を行い、ソース電極4、ドレイン電極5を形成した。
以上の手順で同一基板にチャネル長L=50μm、チャネル幅W=3mmの電界効果型トランジスタを作成し、実施例1と同様の電気特性評価を行った。得られた結果から算出した電界効果移動度は0.098cm2/Vsであった。また、on/off比は1.3×104であった。
(比較例3)
A層を形成するまでは実施例1と同様の操作で行った。この基板上に6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneの1.0重量%クロロホルム溶液からスピンコート法により塗布した。回転数は1000rpmとした。それにより、塗膜を形成した。さらに、塗膜を形成した基板に、熱吸収フィルターとブルーフィルターを通し、日本ピー・アイ株式会社製メタルハライドランプ(PCS−UMX250)の光を室温で15分間照射した。ここで、前駆体層である黄色い層からペンタセン層である青色の層へと変化していることを確認した。その上にマスクを通して金の蒸着を行い、ソース電極4、ドレイン電極5を形成した。
以上の手順で同一基板にチャネル長L=50μm、チャネル幅W=3mmの電界効果型トランジスタを作成し、実施例1と同様の電気特性評価を行った。しかし、半導体特性は得られなかった。
(比較例4)
A層を形成するまでは実施例1と同様の操作で行った。この基板上に6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneの1.0重量%クロロホルム溶液からスピンコート法により塗布した。回転数は1000rpmとした。それにより、塗膜を形成した。さらに、塗膜を形成した基板に、熱吸収フィルターとブルーフィルターを通し、日本ピー・アイ株式会社製メタルハライドランプ(PCS−UMX250)の光を室温で15分間照射し、その後、120℃に設定したホットプレート上で15分間加熱した。ここで、前駆体層である黄色い層からペンタセン層である青色の層へと変化していることを確認した。その上にマスクを通して金の蒸着を行い、ソース電極4、ドレイン電極5を形成した。得られた結果から算出した電界効果移動度は3.4×10-4cm2/Vsであった。また、on/off比は5.0×102であった。
これらの結果から、本発明の実施例にかかる電界効果型トランジスタは、結晶性と配向性の優れた膜が形成されるため、移動度と膜の安定性が比較例にかかる電界効果型トランジスタと比べて優れていることがわかる。
本発明の製造方法により得られた半導体素子は、特性のばらつきが少なく、高い耐久性を備えているので、プラスチックICカード、情報タグ、ディスプレイなどの等に利用することができる。
本発明の電界効果型トランジスタの一実施態様の一部を示す模式的な概略断面図である。
符号の説明
1 ゲート電極
2 絶縁層
3 A層(ポリシロキサン化合物を含有する層ないし結晶化促進層)
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 B層(有機半導体層)

Claims (7)

  1. 有機半導体層を有する半導体素子の製造方法において、基体上に下記一般式(1)で示される構造を少なくとも有するポリシロキサン化合物を含有する層を設ける工程と、該一般式(1)で示される構造を少なくとも有するポリシロキサン化合物を含有する層の上に下記一般式(4)及び(5)で示されるビシクロ構造の中から選ばれる少なくとも1種を部分構造として分子内に1つ以上有する有機半導体前駆体を付与する工程と、前記有機半導体前駆体に光エネルギーと該光エネルギーを発生する発生源とは異なる発生源から発生した熱エネルギーとを同時に与えて有機半導体からなる層を形成する工程と、を少なくとも有し、前記有機半導体前駆体に前記光エネルギーと前記熱エネルギーとを同時に与える時間を1分以上15分以下とすることを特徴とする半導体素子の製造方法。
    一般式(1)

    (式中、R 乃至R は置換または非置換の炭素原子数1〜8のアルキル基、アルケニル基、置換または非置換のフェニル基またはシロキサンユニットのいずれかである。R 乃至R の各々は同じでも異なっていてもよい。nは1以上の整数である。)
    一般式(4)

    (式中、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NR 15 のいずれかを示す。ここでR 15 は炭素数1以上12以下の直鎖または分岐アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルエステル基、アリール基、水酸基より選ばれる1種を示す。)
    一般式(5)

    (式中、R 16 は酸素原子または硫黄原子を示す。)
  2. 前記有機半導体前駆体が、前記一般式(4)で示されるビシクロ構造の中から選ばれる少なくとも一種を部分構造として分子内に一つ以上有する有機半導体前駆体であり、前記一般式(4)におけるR 13 及びR 14 が酸素原子であることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
  3. 前記有機半導体前駆体が、6,13−Dihydro−6,13−ethanopentacene−15,16−dioneであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子の製造方法。
  4. 前記ポリシロキサン化合物のうちの少なくとも種として、下記一般式(2)または下記一般式(3)で示される構造を少なくとも有するポリシロキサン化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。
    一般式(2)

    (式中、R乃至Rは置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基、アルケニル基、置換または非置換のフェニル基のいずれかである。R乃至Rの各々は同じでも異なっていてもよい。mおよびnは0以上の整数であり、mとnの和は1以上の整数である。)
    一般式(3)

    (式中、R乃至R12は置換または非置換の炭素原子数1以上8以下のアルキル基、アルケニル基、または置換または非置換のフェニル基のいずれかである。R乃至R12の各々は同じでも異なっていてもよい。rおよびpは0以上の整数であり、rとpの和は1以上の整数である。)
  5. 前記光エネルギーを前記有機半導体前駆体に直接与え、前記熱エネルギーを前記有機半導体前駆体に前記一般式(1)で示される構造を少なくとも有するポリシロキサン化合物を含有する層を介して与えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。
  6. 前記基体がゲート絶縁層を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。
  7. 前記ゲート絶縁層が酸化シリコン膜であることを特徴とする請求項6に記載の半導体素子の製造方法。
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