JP4281324B2 - 有機薄膜トランジスタ素子、その製造方法及び有機薄膜トランジスタシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機薄膜トランジスタ素子に関し、詳しくは安定的な製造が可能で、動作性に優れた有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、低温プロセス、大気圧下での印刷や塗布により、低コストでの製造が可能な有機薄膜トランジスタ(以下、TFTと称す)の研究開発がおこなわれている。これは、TFT内の活性半導体層として、有機材料を使用するものである。この有機材料は加工が容易で、一般にTFTが形成される樹脂基盤と親和性が高く、薄膜デバイス内の活性半導体層としての利用が期待されている。
【0003】
例えばポリ(3ーアルキルチオフェン)溶液のキャスト膜を用いたTFTは、ウエットプロセスの可能な有機半導体材料を用いたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−190001号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記特許文献1に記載の方法では、移動度が低く、またキャスト条件により移動度がばらつき、安定的な製造が困難である。
【0006】
また、TFTが2次元的に配列されたTFTシートを製造する場合、同一のゲートバスライン上のTFTに、各々ソースバスラインから独立した信号を入力するために、活性層は各TFT素子ごとに独立するべくパターンニングされていなければならない。この活性層のパターンニングは製造プロセスの工程数を大幅に増加させ、低コスト化の障害となっている。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、移動度が高く、安定的な製造が可能なTFT及びその製造方法と、TFTを2次元的に配列したTFTシートにおけるパターンニング工程を削減し、簡便な方法で実質的なパターンニングを可能とし、低コストのTFTシートを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、
1) 有機半導体材料として3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリチオフェンであって、該アルキルが炭素原子数4〜15の直鎖アルキルであるポリチオフェンが加熱溶融される工程を経て、有機半導体層が形成される有機薄膜トランジスタ素子の製造方法であって、前記加熱溶融される工程の後、冷却される工程を有し、その冷却速度を1℃/秒以下としたことを特徴とする有機薄膜トランジスタ素子の製造方法、
2) 支持体、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体材料を有し、前記有機半導体材料として3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリチオフェンであって、該アルキルが炭素原子数4〜15の直鎖アルキルであるポリチオフェンが加熱溶融されることにより、有機半導体層が形成される有機薄膜トランジスタ素子であって、前記加熱溶融の後、冷却され、その冷却速度を1℃/秒以下としたことを特徴とする有機薄膜トランジスタ素子、
により達成され、移動度が高く、ばらつきが少なく、安定的な製造が可能な有機薄膜トランジスタ素子を得ることができる。
【0009】
さらに、上記のTFTを一単位とし、シート上に、このTFTを規則的に配列する場合には、
3) シート状の支持体上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体材料を有し、前記有機半導体材料として3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリチオフェンであって、該アルキルが炭素原子数4〜15の直鎖アルキルであるポリチオフェンが加熱溶融されることにより、有機半導体層が形成される有機薄膜トランジスタ素子が、複数個配列された有機薄膜トランジスタシートであって、前記加熱溶融の後、冷却され、その冷却速度を1℃/秒以下としたことを特徴とする有機薄膜トランジスタシート、
とすることで、TFTシートにおけるパターンニング工程を削減し、簡便な方法で実質的なパターンニングを可能とし、低コストのTFTシートを得ることを可能とできる。
【0010】
また、
4) 加熱溶融される工程は、光熱変換層を設け、光照射することで、おこなわれること、
5) 光照射はレーザーによりおこなわれること、
6) 有機半導体層に隣接した配向膜を有すること、
により、本発明の効果をより向上させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
本発明に係る有機半導体材料について説明する。
本発明において有機半導体材料としては、以下に記載の公知のπ共役系ポリマないしはオリゴマが好ましく用いられる。
【0013】
(π共役系ポリマ)
π共役系ポリマとしては、例えば、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)などのポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリイソチアナフテンなどのポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレンなどのポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−置換アニリン)などのポリアニリン類、ポリアセチレンなどのポリアセチレン類、ポリジアセチレンなどのポリジアセチレン類、ポリアズレンなどのポリアズレン類、ポリピレンなどのポリピレン類、ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)などのポリカルバゾール類、ポリセレノフェンなどのポリセレノフェン類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ポリ(p−フェニレン)などのポリ(p−フェニレン)類、ポリインドールなどのポリインドール類、ポリピリダジンなどのポリピリダジン類、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのポリアセン類およびポリアセン類の炭素の一部をN、S、Oなどの原子、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノンなど)、ポリビニルカルバゾール、ポリフエニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマや特開平11−195790に記載された多環縮合体などを用いることができる。
【0014】
(π共役系オリゴマ)
本発明では、上記のポリマと同じ繰返し単位を有する例えば、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、スチリルベンゼン誘導体などのオリゴマーも好適に用いることができる。さらに銅フタロシアニンや特開平11−251601号公報に記載のフッ素置換銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドとともに、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)及びN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、及びアントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNTなどのカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などがあげられる。その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体も用いることができる。さらにポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系ポリマや特開2000−260999号公報に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0015】
前記π共役系ポリマ、π共役系オリゴマの中でも、チオフェン、ビニレン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、これらの置換体又はこれらの2種以上を繰返し単位とし、かつ該繰返し単位の数(n)が2〜15であるオリゴマーもしくは該繰返し単位の数(n)が20以上であるポリマ、ペンタセンなどの縮合多環芳香族化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。また、繰り返し単位のうち少なくとも1箇所に、例えばC4〜C15のアルキル基などの置換基を付加し、立体的な規則構造を有する材料が好ましい。
【0016】
上記の立体的な規則構造をポリマやオリゴマに適切に付与する観点から、アルキル基などの置換基の付加は、有機半導体材料の有機溶媒への溶解性を高め、有機半導体層を形成したときのポリマの高次構造に規則性付与に効果がある。
【0017】
(チオフェン構造を有するπ共役系ポリマ、π共役系オリゴマ)
上記のπ共役系材料の中でも、最も好ましいものはチオフェン環の連鎖構造を有するポリマまたはオリゴマが好ましく、更に好ましく用いられるのは、3−置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリマまたはオリゴマであり、特に好ましいのは、3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリマまたはオリゴマである。
【0018】
(3−アルキル置換チオフェンのアルキル基)
本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法(薄膜の作製方法である)については、後述するが、有機半導体材料を含む塗布液を調製後、前記塗布液を塗布することにより作製される方法が生産性向上、薄膜作製を精密に制御可能であるとういう観点から好ましく用いられるが、その場合、塗布液の調製に用いる各種有機溶媒等への溶解性向上、且つ、製膜後の半導体材料のチオフェン環繰り返し単位が特定の位置規則性を示すように製膜する観点から、上記の3−アルキルチオフェン環のアルキル基としては、炭素原子数4〜15の直鎖のアルキル基が好ましく、更に、後述する有機半導体層中の有機半導体材料の液晶層への転移温度を240℃以下に調整し、汎用の樹脂を支持体に使用可能にするためには、炭素原子数が6以上の直鎖のアルキル基が好ましく、特に好ましくは、直鎖の炭素原子数8〜12のアルキル基である。
【0019】
(位置規則的ポリ(3−アルキルチオフェン))
本発明に係るポリチオフェンとしては、3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位(シークエンスともいう)を有するポリチオフェンが好ましく用いられるが、上記の3−アルキル置換ポリチオフェンの中でも特に好ましく用いられるのは、位置規則的(regio regular)ポリ(3−アルキルチオフェン)である。
【0020】
また、本発明に用いられるポリチオフェンとしては、特開平10−190001号公報、Nature、41巻、p685(1999)、Appl.Phys.Lett.69巻、p4108(1996)等に記載の化合物等を用いることも出来る。
【0021】
(ポリチオフェンの分子量)
本発明に係るポリチオフェンの重量平均分子量としては、500〜5000000の範囲にあるものが好ましく、更に好ましくは、1000〜100000の範囲である。
【0022】
本発明の有機薄膜トランジスタが、本発明に記載の効果、即ち、キャリア(電子または正孔)の移動度が高く、また、汎用のプラスチック、透明な樹脂等を支持体として利用可能な有機薄膜トランジスタを得るためには、上記の有機半導体材料の少なくとも1種の相転移温度(℃)が、後述する支持体を構成する少なくとも1種の樹脂のガラス転移点(℃)以下であることが必須要件である。
【0023】
本発明においては、有機半導体材料の相転移温度は、融点である。
中でも、有機半導体材料の融点が支持体を構成する少なくとも1つの樹脂のガラス転移点(℃)以下であることが好ましい。
【0024】
上記の融点の測定については、市販の自動融点測定装置、により相転移挙動について検討することが出来る。
【0025】
本発明に係る有機半導体層(有機薄膜)の作製方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、プラズマ重合法、電解重合法、化学重合法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法及びLB法等が挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0026】
ただし、上記の中で生産性向上の観点から、有機半導体材料を適当な有機溶媒に溶解し、調製した溶液をもちいて簡単かつ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法等が好ましい有機半導体層の作製方法としてあげられる。
【0027】
有機半導体層を形成した後、有機半導体材料の相転移温度、即ち融点以上に加熱し半導体材料を相転移させた後、冷却固化させることで、半導体層を形成する。冷却固化に際し、0.1℃/秒〜1.0℃/秒の速度で徐冷することが好ましい。徐冷により有機半導体層におけるキャリアの電界効果移動度が向上する効果が得られる。
【0028】
(有機半導体層の膜厚)
これら有機半導体からなる薄膜の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体からなる活性層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、有機半導体により異なるが、一般に1μm以下が好ましく、特に好ましくは10nm〜300nmの範囲である。
【0029】
有機薄膜トランジスタは、支持体上に有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にまずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。
【0030】
それに対して、光熱変換層を導入する位置の例を図1に示す。
図1(a)は支持体1上に光熱変換層7を形成し、その上に有機半導体チャネル2で連結されたソース電極3とドレイン電極4を設け、更にゲート絶縁層5を介してゲート電極6を設けたトップゲート型の例である。
【0031】
図1(b)は支持体1上に光熱変換層7を形成し、その上にゲート電極6を設け、ゲート絶縁層5を介して有機半導体チャネル2で連結されたソース電極3とドレイン電極4を設けたボトムゲート型の例であり、このボトムゲート型において、光熱変換層7を最上層に形成する例が図1(c)である。
【0032】
図1(d)は支持体1上に光熱変換層7を形成し、その上にゲート電極6を設け、更にゲート絶縁層5、有機半導体層(チャネル)2を形成し、その上にソース電極3とドレイン電極4を設けたボトムゲート型の例である。
【0033】
図1(e)は支持体1上にゲート電極6を設け、その上にゲート絶縁層5、有機半導体層(チャネル)2を形成してソース電極3とドレイン電極4を設け、ソース電極3とドレイン電極4を覆う光熱変換層7を形成した例である。なお図1(f)に示す様に、ソース電極3とドレイン電極4を保護層8で覆い、光熱変換層7を形成してもよい。
【0034】
なお、光熱変換層を有さず、加熱溶融するものについては、上記から光熱変換層を省略すればよい。
【0035】
本発明において、ソース電極3、ドレイン電極4及びゲート電極6を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0036】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0037】
ゲート絶縁層6としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0038】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0039】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
【0040】
これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
大気圧下でのプラズマ製膜処理による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406、同11−133205、特開2000−121804、同2000−147209、同2000−185362等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0041】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
【0042】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0043】
また支持体1はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0044】
また図2(d’)、(e’)及び(f’)に示す様に、図1(d)、(e)及び(f)の構成において、配向膜9に隣接させて有機半導体層が形成されることも好ましい。配向膜9に隣接させることで、有機半導体層の光熱変換による加熱処理で分子整合が促進され、有機半導体チャネルの移動度がより向上して好ましい。
【0045】
配向膜としては、液晶ディスプレイなどに用いられる公知の技術、例えば特開平9−194725、同9−258229に記載される技術を用いることができる。配向膜の材料にはポリイミド、過フルオロポリマー、液晶ポリマー等が用いられ、膜形成後にラビング処理を行うことが好ましい。米国特許第5,468,519号等に記載された電磁場中で配向させる方法を利用してもよい。
【0046】
好ましくは、光配向させた配向膜であり、特開平8−286180、同8−313910、同9−80440等に記載された配向膜である。
【0047】
配向膜の厚みは1nm〜5μm程度、好ましくは5〜100nmである。
図3は他の好ましい例で、支持体1上にゲート電極6を設け、その上にゲート絶縁層5、光熱変換層7を形成してソース電極3とドレイン電極4を設け、ソース電極3とドレイン電極4を覆う有機半導体層(チャネル)2を形成した例である。こうすることで、光熱変換層7がゲート絶縁層の機能も担うことになる。
【0048】
光熱変換層7に用いられる光熱変換剤としては、従来公知の近赤外光吸収剤を用いることができ、例えば、シアニン系、ポリメチン系、アズレニウム系、スクワリウム系、チオピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン系色素等の有機化合物、フタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系の有機金属錯体などが好適に用いられ、具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号および同3−103476号に記載の化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。又、カーボンブラック等も好ましいものの一つである。これらの光熱変換剤を樹脂溶液中に分散或いは溶解し、塗布、乾燥して、或いは、光熱変換剤を樹脂中に混練し延伸してフィルムとし、光熱変換層を得ることができる。
【0049】
光熱変換層の塗布方法としては、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等の公知の塗布方法を用いることができ、連続塗布又は薄膜塗布が可能な塗布方法が好ましく用いられる。
【0050】
光熱変換法に用いる光源としては高照度光が用いられ、特に制限はなく、好ましくはレーザー光が用いられるが、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプなどによるフラッシュ露光を、マスクを介して行っても良い。レーザー光の場合は、ビーム状に絞り、目的に応じた走査露光を行うことが可能であり、さらに、露光面積を微小サイズに絞ることが容易で、安価に入手可能なことから、好適に用いることができる。
【0051】
なお、レーザー光による露光で、高解像度を得るためには、エネルギー印加面積が絞り込める電磁波、特に波長が1nm〜1mmの紫外線、可視光線、赤外線が好ましく、このようなレーザー光源としては、一般によく知られている、ルビーレーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー;He−Neレーザー、Arイオンレーザー、Krイオンレーザー、CO2レーザー、COレーザー、He−Cdレーザー、N2レーザー、エキシマーレーザー等の気体レーザー;InGaPレーザー、AlGaAsレーザー、GaAsPレーザー、InGaAsレーザー、InAsPレーザー、CdSnP2レーザー、GaSbレーザー等の半導体レーザー;化学レーザー、色素レーザー等を挙げることができ、これらの中でも波長が700〜1200nmの半導体レーザーが好ましい。
【0052】
レーザー1ビーム当たりの出力は20〜200mWである赤外線レーザーが最も好ましく用いられる。エネルギー密度をしては、好ましくは50〜500mJ/cm2、更に好ましくは100〜200mJ/cm2である。
【0053】
図4は、本発明の有機薄膜トランジスタシート10の概略の等価回路図である。
【0054】
有機薄膜トランジスタシート10はマトリクス配置された多数の有機薄膜トランジスタ素子14を有する。11は各有機薄膜トランジスタ素子14のゲート電極のゲートバスラインであり、12は各有機薄膜トランジスタ素子14のソース電極のソースバスラインである。各有機薄膜トランジスタ素子14のドレイン電極には、出力素子16が接続され、この出力素子16は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子16として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。15は蓄積コンデンサ、17は垂直駆動回路、18は水平駆動回路である。
【0055】
図5は、種々の電極配置に対する光照射部位を示したものである。図5(a)、(b)、(c)は各種のゲート、ソース、ドレイン電極のパターン形状に対し、光照射する部位を示したものである。21はゲート電極を、22はソース電極、23はドレイン電極(表示電極を兼ねる)のパターンであり、24のハッチング部が光照射するエリアを示している。上述のゲート絶縁層、有機半導体層、光熱変換層等の各層は、説明の簡略化のため図では省略してある。
【0056】
図5(a)は、ドレイン電極に突出部23aを設け、ゲート電極21、ソース電極22の3つが重複するようハッチング部24のエリアを光照射して光熱変換するものである。図5(b)は、ソース電極に突出部22aを設け、ゲート電極21、ドレイン電極23の3つが重複するようハッチング部24のエリアを光照射して光熱変換するものである。図5(c)は、ゲート電極に突出部21aを設け、ソース電極22、ドレイン電極23の3つが重複するようハッチング部24のエリアを光照射して光熱変換するものである。
【0057】
図6は、マトリクス状に配列された場合の光照射エリアの例を示したものである。ここでは例えば図5(b)のパターン形状を多数マトリクス状に配列し、その中から6個を抜き出したものであり、図5と同様にハッチング部を光照射するものである。このように規則正しく配列されている場合、光走査装置とX−Yステージ等を使用して、連続的に照射をおこなう方法や、光照射部位が開口したマスクを通し高照度光で1回の露光でおこなう方法等により、マトリクス状に薄膜トランジスタの配列されたシートを簡単に製造することができる。
【0058】
また、光熱変換層を設けない場合は、全体を加熱溶融して有機TFTシートとし、各素子間での影響が問題となる場合は、各素子間をレーザー光で分断することで、影響を実使用上問題なくすることも可能である。
【0059】
即ち上述のように、TFTを2次元的に配列したTFTシートにおけるパターンニング工程を削減し、簡便な方法で実質的なパターンニングを可能とし、低コストのTFTシートを提供することができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
〈実施例1〉
比抵抗0.01Ω・cmのSiウェハーに厚さ200nmの熱酸化膜を形成した後、よく精製されたregioregular型ポリ−(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液を、アプリケーターを用いて塗布し自然乾燥し、キャスト膜(厚さ50nm)を形成した。窒素置換雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。さらに、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)膜の表面に、マスクを用いて金を蒸着し、ソース、ドレイン電極を形成した。この幅100μm、厚さ100nmのソース、ドレイン電極は、先のゲート電極に直交するよう配置されチャネル幅W=0.3mm、チャネル長L=20μmの有機薄膜トランジスタ素子が形成された。この素子を窒素雰囲気下で250℃まで加熱し溶融させた後、−0.1℃/secの速度で150℃まで冷却し、窒素ガス流中で室温まで冷却した。
【0062】
この有機薄膜トランジスタ素子は、pチャネルエンハンスメント型FETの良好な動作特性を示した。
【0063】
この素子を10個作製し、飽和領域における移動度を測定した。比較例として溶融しない素子も作製し同様に評価し、それぞれの平均値、最大値、最小値を図7に示す。
【0064】
また、150℃までの冷却速度と移動度の関係を測定し、その結果を、図8に示す。
【0065】
上記の結果より、加熱溶融し冷却した有機薄膜トランジスタの方が移動度に優れその製造ばらつきも少ないことが確認された。また、冷却速度についても、−1℃/sec以下の速度なら、良好な動作特性を維持できることが確認された。
【0066】
〈実施例2〉
図9に製膜順序を示し、この順に従い説明する。
【0067】
厚さ200μmのポリエーテルスルホン(PES)フィルム支持体1上に、フォトリソグラフ用の感光性レジストを塗設した後、リフトオフ法により幅20μmのゲートバスライン(電極)31を形成した。なおゲートバスライン(電極)31はAlをスパッタリングで200nmの厚さに成膜した(図9(a))。
【0068】
次いで大気圧プラズマ法により厚さ200nmの酸化ケイ素膜をゲート絶縁層32として全面に設け(図9(b))、よく精製されたregioregular型ポリ−(3−ヘキシルチオフェン)のキシレン分散液を有機半導体層33として塗布した(図9(c))。この時の乾燥膜厚は、20nmである。
【0069】
次に、マスクを介し厚さ500nmの金34を図9(d)に示す形状に蒸着した。さらに、重量平均分子量3万のポリエチレングリコールのMEK溶液を厚さ300nm塗設し、この上に、PVAとカーボンブラック(質量比5:1)の分散液を調製し塗布乾燥することで厚さ500nmの光熱変換層を形成した。
【0070】
以上のように作製されたTFTは動作しなかったが、表面側(紙面表側)より図9(d)の35に示す破線で囲まれた矩形の部位に10mWのレーザーダイオードを用い、200mJ/cm2のエネルギー密度で波長830nmの赤外光を照射したところ、pチャネルエンハンストメント型FET(電界効果型トランジスタ)の良好な動作特性を示すことが確認された。
【0071】
〈実施例3〉
また上記実施例2の工程のうち、有機半導体層としてregioregular型ポリ−(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液を塗布し、加熱溶融し、−10℃/secで冷却した。
【0072】
この状態では、図8でも述べたように冷却速度が速すぎ、動作しなかったが、実施例2と同様の部位に赤外光を照射したところ、pチャネルエンハンストメント型FETの良好な特性を示すことを確認した。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、移動度が高く、安定的な製造が可能なTFT及びその製造方法と、TFTを2次元的に配列したTFTシートにおけるパターンニング工程を削減し、簡便な方法で実質的なパターンニングを可能とし、低コストのTFTシートを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】光熱変換層を導入する位置の例を示す図である。
【図2】配向膜に隣接させて有機半導体層が形成される例を示す図である。
【図3】他の好ましい層構成例を示す図である。
【図4】トランジスタシートの概略の等価回路図である。
【図5】種々の電極配置に対する光照射部位を示した図である。
【図6】マトリクス状に配列された場合の光照射エリアの例を示した図である。
【図7】飽和領域における移動度を測定し、その平均値、最大値、最小値の図である。
【図8】冷却速度と移動度の関係を測定し、その結果を示す図である。
【図9】実施例2の製膜順序を示す図である。
【符号の説明】
1 支持体
2 有機半導体層(チャネル)
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート絶縁層
6 ゲート電極
7 光熱変換層
8 保護層
9 配向膜
Claims (12)
- 有機半導体材料として3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリチオフェンであって、該アルキルが炭素原子数4〜15の直鎖アルキルであるポリチオフェンが加熱溶融される工程を経て、有機半導体層が形成される有機薄膜トランジスタ素子の製造方法であって、前記加熱溶融される工程の後、冷却される工程を有し、その冷却速度を1℃/秒以下としたことを特徴とする有機薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記加熱溶融される工程は、光熱変換層を設け、光照射することで、おこなわれることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記光照射はレーザーによりおこなわれることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記有機半導体層に隣接した配向膜を有することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 支持体、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体材料を有し、
前記有機半導体材料として3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリチオフェンであって、該アルキルが炭素原子数4〜15の直鎖アルキルであるポリチオフェンが加熱溶融されることにより、有機半導体層が形成される有機薄膜トランジスタ素子であって、前記加熱溶融の後、冷却され、その冷却速度を1℃/秒以下としたことを特徴とする有機薄膜トランジスタ素子。 - 前記加熱溶融は、光熱変換層を設け、光照射することで、おこなわれることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
- 前記光照射はレーザーによりおこなわれることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
- 前記有機半導体層に隣接した配向膜を有することを特徴とする請求項5〜7のうちいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
- シート状の支持体上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体材料を有し、
前記有機半導体材料として3−アルキル置換チオフェン環を繰り返し単位として有するポリチオフェンであって、該アルキルが炭素原子数4〜15の直鎖アルキルであるポリチオフェンが加熱溶融されることにより、有機半導体層が形成される有機薄膜トランジスタ素子が、複数個配列された有機薄膜トランジスタシートであって、前記加熱溶融の後、冷却され、その冷却速度を1℃/秒以下としたことを特徴とする有機薄膜トランジスタシート。 - 前記加熱溶融は、光熱変換層を設け、光照射することで、おこなわれることを特徴とする請求項9に記載の有機薄膜トランジスタシート。
- 前記光照射はレーザーによりおこなわれることを特徴とする請求項10に記載の有機薄膜トランジスタ素子シート。
- 前記有機半導体層に隣接した配向膜を有することを特徴とする請求項9〜11のうちいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタシート。
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