以下、適宜図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
図1は、本発明の実施形態に係る複合機1の外観を示す斜視図である。図2は、複合機1の断面構成を示す部分断面図である。図2では、本体ケーシング2及びスキャナユニット19が省略されている。図3は、給紙トレイ20及び給送ユニット50の構成を示す模式図であり、(A)に平面図が示されており、(B)に切断線IIIB−IIIBの断面図が示されている。図4は、給送ユニット50の拡大詳細図である。図5は、連結機構35を示す模式図であり、給紙ローラ60A側の第1連結部35Aが詳細に示されている。図6は、連結機構35を示す模式図であり、補助ローラ61A側の第2連結部35Bが詳細に示されている。図7は、複合機1の制御部84の構成を示すブロック図である。図8及び図9は、記録用紙が給送される際の連結機構35の動きを説明するための模式図である。なお、図8及び図9には、図4の切断線P−Pの断面図が示されている。図10は、本発明の連結機構の変形例を示す模式図である。
なお、以下の説明においては、複合機1の通常使用状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、操作パネル10が設けられている側を手前側(前)として前後方向8を定義し、複合機1を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
[複合機1の概略構成]
本実施形態の複合機1は、プリンタ機能の他、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有するいわゆる多機能装置である。図1に示されるように、複合機1は、上下方向7よりも左右方向9及び前後方向8が大きい幅広薄型の概ね直方体箱状の本体ケーシング2によってその外観が形成されている。なお、プリンタ機能以外の機能は任意であり、例えば、スキャナユニット19がなく、スキャン機能やコピー機能、ファクシミリ機能を有しない単機能のプリンタとして本発明にかかる画像記録装置が実施されてもよい。
本体ケーシング2の上面における前方側には、操作パネル10が設けられている。操作パネル10は、入力操作用の各種操作ボタンが配置された操作部11と、メッセージ等の画像を表示する表示部(例えば液晶ディスプレイ)12とを有する。また、操作パネル10の後方位置には、原稿から画像を読み取る読取手段としてのスキャナユニット19が設けられている。なお、スキャナユニット19は、スキャナ機能、コピー機能及びファクシミリ機能のために用いられる。
本体ケーシング2内における下部位置には、給紙トレイ20(本発明のシート保持部の一例)及び排紙トレイ21が上下二段に設けられている。給紙トレイ20は、シート状の記録用紙(本発明のシートに相当)をほぼ水平に複数枚重ねた状態(積載した状態)で保持可能である。なお、記録用紙としては、所謂普通紙やインクジェット記録用紙等のように比較的薄いもの、光沢紙のように記録面の摩擦係数が普通紙等に比べて高くて厚いもの、普通紙等に比べて重量の重い葉書などの厚いものなどが該当する。
給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、本体ケーシング2の前面に形成された開口13から前方へ水平に引き出すことができる。一方、開口13から本体ケーシング2の内部へ水平に給紙トレイ20を挿入することで本体ケーシング2内に装着することができる。言い換えると、給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、本体ケーシング2の前面に形成された開口13から本体ケーシング2内に挿抜可能に構成されている。
図3に示されるように、給紙トレイ20は、平面視が概ね皿形状に形成されている。給紙トレイ20の底面25に、一対のサイドガイド31,32と、リヤガイド17(本発明のシートガイドの一例)とが設けられている。
サイドガイド31,32は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の幅方向(左右方向9)の両端を揃えるとともに、給紙トレイ20における幅方向の位置を規制する(位置決めする)ものである。サイドガイド31,32は、給紙トレイ20の底面25において前後方向8の概ね中央付近に設けられている。サイドガイド31,32は、給紙トレイ20の底面25において、図示しない溝に沿って左右方向9へスライド可能に支持されている。サイドガイド31,32で挟まれた領域に記録用紙が載置される。本実施形態では、最大でA4サイズ(210×297mm)やレター(LTR)サイズ(216×279mm)の記録用紙を載置することができ、最小でL版サイズ(127×89mm)の記録用紙を載置することができるように、給紙トレイ20のサイズやサイドガイド31,32のスライド範囲などが設定されている。
一対のサイドガイド31,32は、周知の連動機構によって連結されている。例えば、ラック及びピニオンによる連動機構によって連結されている。これにより、いずれか一方のサイドガイド31をスライド移動させると、他方のサイドガイド31が連動して相反する方向へスライドする。
リヤガイド17は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の後端、つまり、給送向き43(本発明の第1搬送向きに相当)とは反対側の端部を揃えるとともに、上記後端の位置を規制する(位置決めする)ものである。リヤガイド17は、給紙トレイ20の底面25において、幅方向の中央に設けられている。リヤガイド17は、給紙トレイ20の底面25に形成された前後方向8に延びる溝26に係合して、当該溝26に沿って前後方向8へスライド可能に支持されている。リヤガイド17は、スライド範囲内で任意の位置に固定可能である。本実施形態では、底面25に対向するリヤガイド17の対向面に係合爪(不図示)が設けられており、また、底面25において溝26に平行な2本の係合部27が設けられており、上記係合爪が係合部27に設けられた複数の歯と係合することによって、前後方向8に対してリヤガイド17が固定される。
給紙トレイ20に記録用紙が載置された状態で、一対のサイドガイド31,32がスライドされて、記録用紙の幅方向の端部に当接すると、幅方向の両端が揃えられるとともに、給紙トレイ20に載置された記録用紙の幅方向の中央位置が給紙トレイ20の幅方向中央に位置決めされる。このように、記録用紙の幅方向の中央を給紙トレイ20の幅方向の中央に一致させることは、一般に、センターレジと呼ばれる。また、リヤガイド17がスライドされて、記録用紙の前方側の端部に当接すると、記録用紙の前方側の端部が揃えられるとともに、記録用紙が底面26において後方側に詰め寄せられた状態で前方側の端部が位置決めされる。
図2及び図3に示されるように、給紙トレイ20には、傾斜板22(本発明の傾斜板の一例)が設けられている。傾斜板22は、底面25の後方側の端部に立設されており、給送向き43側へ傾斜している。傾斜板22の内面24は、記録用紙を用紙搬送路5(図2参照)へ案内するガイド面の役割を担う。傾斜板22の内面24の中央には、内面24から突出された複数の分離歯23(本発明の分離部材の一例)が上下方向7に並んで配設されている。このような傾斜板22及び分離歯23が設けられているため、仮に、給紙トレイ20から複数の記録用紙が束となって給送されたとしても、記録用紙の端部が傾斜板22に当接すると、分離歯23によって各記録用紙が分離されて、最上位の記録用紙だけが上方の用紙搬送路5へ案内される。
図2に示されるように、本体ケーシング2内には、上面が開放された金属製のフレーム4が設けられている。フレーム4は、本体ケーシング2内における後方寄りの位置であって給紙トレイ20の上方位置に設けられている。フレーム4は、図2の紙面に垂直な方向(左右方向9)に延設されている。給紙トレイ20の後方寄りの上方位置に給送ユニット50(本発明のシート搬送装置の一例)が配置されている。給送ユニット50は、給紙トレイ20に収容されている記録用紙を後方の用紙搬送路5へ向けて1枚ずつ給送(搬送)するためのものである。この給送ユニット50は、記録用紙に当接しつつ回転する2つの給紙ローラ60A,60B(本発明の第1ローラの一例)と、2つの給紙ローラ60A,60Bそれぞれに連結された2つの補助ローラ61A,61B(本発明の第2ローラの一例)とを有する。給送ユニット50の構成については後述する。
本体ケーシング2内における後方部には、給紙トレイ20と画像記録ユニット70(本発明の画像記録部の一例)とを結ぶ用紙搬送路5が形成されている。用紙搬送路5は、給紙トレイ20から後方へ給送された記録用紙を上方へUターンさせて前方へ案内するべく、湾曲状に形成されている。したがって、用紙搬送路5を通る記録用紙は、その搬送向きが後方から前方へ反転される。
給送ユニット50の上方位置には、インクジェット記録方式の画像記録ユニット70が配置されている。画像記録ユニット70の下面に対向するようにプラテン44が設けられている。画像記録ユニット70は、図2の紙面に垂直な方向(左右方向9)へ往復移動するように構成されている。往復過程において、画像記録ユニット70は、図示しないインクカートリッジから供給されたインクを微小なインク滴としてプラテン44上を搬送される記録用紙に噴出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。この画像記録ユニット70によって画像が記録された記録用紙は、排紙トレイ21の上面48に排出される。なお、画像記録ユニット70は、インクジェット記録方式以外の記録方式、例えば電子写真方式や感熱記録方式のものであってもよい。
画像記録ユニット70の後方側には搬送ローラ対63が設けられており、前方側(搬送向き下流側)には排出ローラ対66が設けられている。搬送ローラ対63は、LFモータ82(図7参照)から回転駆動力を受けて回転する搬送ローラ64と、該駆動ローラ64に圧接されて従動する従動ローラ(不図示)とを有する。給送ユニット50によって給紙トレイ20から給送された記録用紙は、搬送ローラ対63によってプラテン44へ向けて搬送される。排出ローラ対66は、搬送ローラ64から周知の伝達ギヤを介して駆動力を受けて回転する排出ローラ67と、該駆動ローラ64に圧接されて従動する拍車(不図示)とを有する。排出ローラ対66は、画像記録ユニット70によって画像が記録された記録済みの記録用紙を狭持しつつ前方へ向けて搬送し、排紙トレイ21の上面48へ排出する。
なお、本実施形態では、搬送ローラ64と後述する給送ユニット50の給紙ローラ60A,60Bとの双方が記録用紙に当接している場合は、SFモータ81の回転が停止されて、搬送ローラ64のみで記録用紙が搬送されるように制御される。これは、搬送ローラ64と給紙ローラ60A,60Bとの回転速度差によって記録用紙が撓まないようにするためである。
搬送ローラ64には、ロータリーエンコーダ87(図7参照)が設けられている。このロータリーエンコーダ87は、搬送ローラ64と共に回転するエンコーダディスク(不図示)のパターンを光学センサで検知し、この光学センサが検知した信号に基づいて、後述する制御部84(図7参照)によって搬送ローラ64の回転が制御される。本実施形態では、画像記録時においては、搬送ローラ64の回転が間欠駆動される。これにより、記録用紙が所定の改行幅で送られながら画像記録がなされる。また、画像記録の前後においては、搬送ローラ64は連続駆動される。これにより、迅速な用紙搬送が実現されている。
以下、給送ユニット50の構成について詳細に説明する。
図2及び図3に示されるように、給送ユニット50は、アーム部材52(本発明のアーム部材の一例)を備えている。給紙トレイ20の上側には、フレーム4に架設された支軸51が設けられている。アーム部材52の一端部は、支軸51に軸支されている。図2に示されるように、アーム部材52は、支軸51よりも後方側であって、給紙トレイ20の底面25の幅方向中央付近へ向けて斜め下方に延出されている。したがって、アーム部材52は、支軸51を中心として回動可能であるとともに、給紙トレイ20に対して接離可能に上下動可能である。また、アーム部材52は、自重又はバネ等の付勢力によって下側へ回動付勢されている。このため、アーム部材52の延出端にある給紙ローラ60A,60B、及び補助ローラ61A,61Bは、給紙トレイ20の記録用紙の上面に所定の圧接力で当接している。なお、アーム部材52は、給紙トレイ20が本体ケーシング2に対して挿抜される際に上側へ退避するように構成されている。
図4に示されるように、アーム部材52の延出端に2つの給紙ローラ60A,60Bが回転可能に設けられている。これらの給紙ローラ60A,60Bは、給送向き43に直交する方向、つまり、給紙トレイ20の幅方向(左右方向9)へ同軸上に隔てられている。具体的には、両端それぞれに給紙ローラ60A,60Bが固定された回転軸55が、アーム部材52の延出端に軸支されている。回転軸55には、伝達ギヤ78が固定されている。この伝達ギヤ78に、後述する駆動伝達機構34から給紙ローラ60A,60Bを回転させるための駆動力が入力される。本実施形態では、給紙ローラ60Aに補助ローラ61Aが連結されており、給紙ローラ60Bに補助ローラ61Bが連結されている。給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとの連結は、連結機構35(本発明の連結機構の一例)によって実現されており、給紙ローラ60Bと補助ローラ61Bとの連結は、連結機構36(本発明の連結機構の一例)によって実現されている。なお、連結機構35,36の構成については後述する。
給紙ローラ60A,60Bと補助ローラ61A,61Bとは、同径同幅に形成されている。給紙ローラ60A,60Bは、記録用紙に当接されたときに高い摩擦力を生じさせるため、そのローラ面がゴム部材97(図5(B)参照)で被覆されている。また、補助ローラ61A,61Bも同様に、記録用紙に当接されたときに高い摩擦力を生じさせるため、そのローラ面がゴム部材98(図6(C)参照)で被覆されている。本実施形態では、補助ローラ61A,61Bのローラ面の摩擦係数は、給紙ローラ60A,60Bのローラ面の摩擦係数よりも大きく設定されている。かかる作用効果については後述する。
アーム部材52の内部には、駆動伝達機構34が設けられている。駆動伝達機構34は、複数のギヤ73,74,75,76,77からなる歯車列である。各ギヤ73〜77は、アーム部材52に軸支されている。各ギヤ73〜77は、互いに噛み合っている。アーム部材52の延出端側のギヤ76は、回転軸55に固定された伝達ギヤ78に噛み合っている。アーム部材52の回動基端側のギヤ73は、支軸51に固定されている。
支軸51の一端には、伝達ギヤ72が固定されている。伝達ギヤ72は、SFモータ(Sheet Feed Motor)81に直結された伝達ギヤ71と噛み合わされている。したがって、SFモータ81が正転又は逆転されると、その回転駆動力(回転トルク)が伝達ギヤ71及び伝達ギヤ72を介して支軸51に伝達される。そして、更にその回転駆動力が駆動伝達機構35の各ギヤ73〜77、伝達ギヤ78、回転軸55を順次介して、給紙ローラ60A,60Bに伝達される。これにより、給紙ローラ60A,60Bが所定方向へ回転する。なお、このように、SFモータ81から給紙ローラ60A,60Bまでに渡って複数のギヤが直結されているため、本実施形態では、SFモータ81が停止している場合に、その停止トルクが給紙ローラ60A,60Bに作用することになる。
本実施形態では、SFモータ81が正転されると、給紙ローラ60A,60Bが図2において反時計回転方向(本発明の第1回転向きに相当)に回転して、記録用紙を搬送向き43へ向けて搬送させる。したがって、給紙トレイ20から記録用紙を給紙する場合には、アーム部材52が下側へ回動付勢され、給紙ローラ60A,60Bが給紙トレイ20上の記録用紙に圧接された状態で、SFモータ81が正転される。これにより、給紙ローラ60A,60Bのローラ面と記録用紙との間に摩擦力が発生して、この摩擦力によって、最上位置の記録用紙が用紙搬送路5側へ送り出される。なお、SFモータ81が逆転されると、給紙ローラ60A,60Bが図2において時計回転方向(本発明の第2回転向きに相当)に回転する。
なお、支軸51には、ロータリーエンコーダ86(図7参照)が設けられている。このロータリーエンコーダ86は、支軸51と共に回転するエンコーダディスク(不図示)のパターンを光学センサで検知する。この光学センサが検知した信号に基づいて、後述する制御部84(図7参照)によって、給紙ローラ60A,60Bの回転が制御される。
以下、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとを連結する連結機構35の構成について詳細に説明する。なお、給紙ローラ60Bと補助ローラ61Bとを連結する連結機構36については、連結機構35と同じ構成であるため、その説明を省略する。
連結機構35は、補助ローラ61Aが供給ローラ60Aに対して所定回転角の遊びを有した状態で、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとを連結するものである。この連結機構35は、図5に示される給紙ローラ60A側の第1連結部35Aと、図6に示される補助ローラ61A側の第2連結部35Bとによって実現される。
図5に示されるように、第1連結部35Aは、給紙ローラ60Aの一側面101から軸方向に延出された支軸103と、支軸103に設けられた2つの突起片105とにより構成されている。支軸103は、給紙ローラ60Aと一体に形成されている。したがって、給紙ローラ60Aが回転すると、支軸103も同方向へ回転する。支軸103は、補助ローラ61Aを支持するものであり、補助ローラ61Aの軸受け孔121(図6参照)に挿通される。突起片105は、支軸103の表面から垂直に突出している。各突起片105は、それぞれ、支軸103の軸線に垂直な方向へ沿うように相対する向きに突出している。突起片105は、補助ローラ61Aに形成された凹部123に没入されて、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとの間に遊びを形成する役割と、給紙ローラ60Aから補助ローラ61Aに駆動力を伝達する役割とを担う。
図6に示されるように、第2連結部35Bは、補助ローラ61Aの中心軸に形成された軸受け孔121と、補助ローラ61Aの一側面125に形成された2つの凹部123とにより構成されている。軸受け孔121は、支軸103(図5参照)が挿通可能なサイズに形成されている。各凹部123は、それぞれ、中心角がθの扇状に形成されている。凹部123の中心角θは、任意に設定可能な要素である。
このように連結機構35が構成されているため、給紙ローラ60Aの支軸103に補助ローラ61Aの軸受け孔121を挿通させて、突起片105が凹部123に没入するまで補助ローラ61Aを押し込むことにより、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとを同じ回転軸上で回転方向に連結させることができる。換言すれば、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとが連結機構35によって同軸上に配置される。
連結状態において、補助ローラ61Aと給紙ローラ60Aとの間に、所定回転角α(中心角θから突起片105の厚み分の角度βを差し引いた回転角、図5(C)参照)の遊びが生じる。具体的には、凹部123に没入した突起片105が凹部123の回転方向の一方側の側面128に当接した状態(本発明の第2連結姿勢に相当)で補助ローラ61Aに対して給紙ローラ60Aを回転させたときに、突起片105が他方側の側面127に当接した状態(本発明の第1連結姿勢に相当)となるまでの範囲の遊びが生じる。なお、突起片105が側面127に当接した状態でSFモータ81が正転されると、給紙ローラ60Aの回転力が補助ローラ61Aに伝達されて、記録用紙が給送向き43(図3参照)へ給送可能となる。また、突起片105が側面128に当接した状態でSFモータ81が逆転されると、給紙ローラ60Aの回転力が補助ローラ61Aに伝達されて、記録用紙が給送向き43とは反対の方向(本発明の第2搬送向きに相当)へ給送可能となる。
上述した遊びの大きさは、中心角θによって決定される。本実施形態では、上記遊びは、上記所定回転角αに対応する給紙ローラ60Aの弧が、上述した傾斜板22の上下方向7の長さL(図3参照)よりも長くなるように設定されている。このように遊びが設けられたことによる作用効果については後述する。
次に、図7を参照して、複合機1の制御部84の構成について説明する。制御部84は、複合機1の全体動作を制御するものであるが、スキャナユニット19によるスキャナ処理及び画像記録ユニット70による画像記録の制御についての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態では、制御部84によって、本発明の駆動制御手段が具現化される。
制御部84は、CPU88、ROM89、RAM90、EEPROM91を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス92を介して各部に接続されている。
ROM89には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM90は、CPU88が上記プログラムを実行する際に用いられる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。EEPROM91には、電源オフ後も保持すべきデータや設定、フラグ等が格納される。
駆動回路94は、搬送ローラ64などに接続されたLFモータ82や、給紙ローラ60A,60Bに接続されたSFモータ81を駆動させるものである。駆動回路94には、LFモータ82及びSFモータ81を駆動するためのドライバがそれぞれ設けられており、LFモータ82及びSFモータ81が独立して制御される。駆動回路94は、CPU88から出力された相励磁信号を受けて、LFモータ82及びSFモータ81を回転させるための電気信号を生成する。該電気信号を受けてLFモータ82及びSFモータ81が回転し、その回転力がギヤや駆動軸等を介して、搬送ローラ64や給紙ローラ60A,60Bへ伝達される。
バス92には、LFモータ82により駆動される搬送ローラ64等の回転量を検知するロータリーエンコーダ87、SFモータ81により駆動される給紙ローラ60A,60Bの回転量を検知するためのロータリーエンコーダ86などが接続されている。その他に、記録用紙の搬送位置を検知するための図示しないセンサなどが接続されている。このセンサの出力信号やロータリーエンコーダ86,87が検知するエンコーダ量などに基づいて、CPU88は、記録用紙の搬送位置、並びに記録用紙の搬送量を把握する。
次に、上述の如く構成された給送ユニット50によって記録用紙が給送される動作とともに、連結機構35の動きについて説明する。以下においては、説明の便宜上、記録用紙の給送動作開始前に、突起片105が凹部123の側面128に当接した状態で給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとが連結機構35で連結されているものとする。また、給紙ローラ60Aがスリップしたときは給紙ローラ60Bもスリップするものとして説明する。なお、連結機構36は連結機構35と概ね同様の動きをするため、ここでは連結機構36の動きの詳細な説明を省略する。
記録用紙を給送するためにSFモータ81が正転されると、図8(A)に示されるように、給紙ローラ60A,60Bが反時計方向へ回転し始める。これにより、給紙ローラ60A,60Bによって記録用紙が給送向き43(図3参照)へ給送し始める。記録用紙が給送されると、記録用紙と補助ローラ61A,61Bとの間に生じる摩擦力によって、補助ローラ61A,61Bが給紙ローラ60A,60Bと同じ回転方向へ連れ回る(従動する)。
一方、記録用紙に対する給紙ローラ60Aの搬送力が不足している場合は、給紙ローラ60Aは記録用紙上でスリップして、記録用紙が搬送されないまま空転する。連結機構35において、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとの間には遊びが設けられている。そのため、給紙ローラ60Aが空転しても、その回転力はすぐさま補助ローラ61Aに伝達されない。このとき、記録用紙が給送されないため、補助ローラ61Aの回転も停止する。つまり、記録用紙が給送されない状態で給紙ローラ60Aだけが回転し続ける。なお、給紙ローラ60Bがスリップした場合も、連結機構36は同様の動きをする。
給紙ローラ60Aがスリップすると、図8(B)に示されるように、連結機構35では、補助ローラ61Aに対して給紙ローラ60A(の支軸103)が反時計方向へ回転する。これにより、凹部123の側面128に当接した状態(図8(A)参照)にあった突起片105は、側面128から離れる(図8(B)参照)。その後、給紙ローラ60Aが更に回転(空転)すると、突起片105が側面127側へと移動(姿勢変化)して、側面127に到達する(図8(C)参照)。この状態で給紙ローラ60Aが回転すると、突起片105が側面127を反時計方向(白抜き矢印参照)へ押し付ける。したがって、給紙ローラ60Aの回転力が補助ローラ61Aに伝達されて、給紙ローラ60A及び補助ローラ61Aの双方が回転する。これにより、給紙ローラ60A及び補助ローラ61Aの双方によって十分な搬送力が記録用紙に伝達されるため、再び記録用紙の給送が開始される。特に、上述したように、給紙ローラ60Aよりも補助ローラ61Aのほうがローラ面の摩擦係数が高いため、給紙ローラ60Aよりも大きな搬送力を記録用紙に付与することができ、より確実に記録用紙を給送させることができる。
また、搬送ローラ対63によって記録用紙が搬送され始めると、記録用紙が撓むのを防止するために、制御部84はSFモータ81の回転を停止させる。このとき、図9(A)に示されるように、記録用紙からの摩擦力を受けて補助ローラ61Aのみが反時計方向へ回転する。換言すると、給紙ローラ60A(の支軸103)が補助ローラ61Aに対して相対的に時計方向へ回転する。一方、給紙ローラ60Aは記録用紙上をスリップする。これにより、凹部123の側面127に当接した状態(図9(A)参照)にあった突起片105は、側面127から離れる(図9(B)参照)。
その後、記録用紙が更に搬送されて、補助ローラ61Aが反時計方向へ回転すると、突起片105が側面128側へと移動(姿勢変化)して、側面128に到達する(図9(C)参照)。この状態では、SFモータ81の停止トルクが突起片105から側面128に作用する(白抜き矢印参照)。したがって、上記停止トルクを受けて、補助ローラ61Aも停止する。このとき、給紙ローラ60A及び補助ローラ61Aの双方が、記録用紙上をスリップする。
そして更に記録用紙が搬送されて、記録用紙の後端が給紙ローラ60Aを通過すると、突起片105が側面128に当接した状態で、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとが次の記録用紙上に配置される。
このように、連結機構35,36が設けられているため、給紙ローラ60A,60Bがスリップしても、連結機構35,36の遊びがなくなるまで給紙ローラ60A,60Bが空転すると、補助ローラ61A,61Bが回転し始める。その結果、より大きな搬送力が記録用紙に加えられるため、各ローラが記録用紙に対してスリップしなくなり、記録用紙が確実に給送される。
なお、給紙ローラ60A,60Bと補助ローラ61A,61Bとにより記録用紙が給送されると、記録用紙に対する圧接力が増すため、重送される頻度が多くなり、重送時のシート数も多くなる。しかし、上述したように、連結機構35,36に設けられた遊びは、上述の所定回転角α(図6(C))に対応する給紙ローラ60Aの弧が、上述した傾斜板22の上下方向7の長さL(図3参照)よりも長くなるように設定されている。そのため、圧接力が増す前に、つまり、補助ローラ61A,61Bに回転力が加わる前に、記録用紙の先端が傾斜板22を通過することになる。記録用紙が傾斜板22を通過後は、記録用紙に対する圧接力が増しても重送が生じない。
ここで、上述の実施形態では、給紙ローラ60Aがスリップしたときは給紙ローラ60Bもスリップするものとして説明したが、仮に、給紙ローラ60Aのみがスリップした場合について考察する。この場合、給紙ローラ60Aによる記録用紙の給送はなされず、給紙ローラ60Bのみによって記録用紙が給送される。したがって、記録用紙が給紙ローラ60A側へ徐々に傾くことになる。しかしながら、給紙ローラ60Aのスリップによって突起片105が側面128から側面127まで移動すると、補助ローラ61Aに回転力が伝達されて補助ローラ61Aが回転し始める。そのため、記録用紙が大きく斜行することはない。
また、上述の実施形態では、給送ユニット50が2つの給紙ローラ60A,60Bを有するものとして説明したが、給送ユニット50が3つ以上の給紙ローラを有し、各給紙ローラそれぞれに補助ローラが設けられた構成としてもよい。もちろん、給送ユニット50が、1つの給紙ローラとそれに連結された1つ又は複数の補助ローラを有する構成としてもかまわない。
また、上述の実施形態では、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとが連結機構35によって同軸上に支持されて、左右方向9へ並列配置された構成について説明したが、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとの配置は上記並列配置に限定されない。例えば、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとが前後方向に隔てられた状態で、各ローラが連結機構35によって遊びを有した状態で連結されていてもよい。
また、上述の実施形態では、搬送ローラ対63によって記録用紙が搬送し始めると、SFモータ81を停止させて給紙ローラ61A,61Bの回転を停止させているが、必ずしも給紙ローラ61A,61Bの回転を停止させる必要はない。例えば、搬送ローラ64を給紙ローラ61A,61Bの回転速度よりも速い回転速度に設定されていれば、記録用紙の撓みは防止され、しかも、搬送ローラ対63による記録用紙の搬送中に、側面128に当接する位置まで突起片105を戻すことができる。
また、上述の実施形態において、連結機構35が、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとの間に、ネジリコイルバネなどの弾性部材を備えていてもよい。例えば、ネジリコイルバネを支軸103に挿通させた状態で、その一方端を支軸103に固定し、他方端を補助ローラ61Aの側面125に固定する構成が考えられる。このとき、突起片105がバネ力を受けて側面128に当接する位置に保持可能なように、給紙ローラ60Aに対して、所定のバネ力で補助ローラ61Aを付勢するように、ネジリコイルバネを設ける。このときのネジリコイルバネのバネ力は、記録用紙の給送によって補助ローラ61Aが連れ回ることが可能なように設定する必要がある。具体的には、上記バネ力は、搬送ローラ対63によって記録用紙が搬送されていない状態で、つまり、給紙ローラ60A及び補助ローラ61Aのみで記録用紙が搬送されている状態で、補助ローラ61Aと記録用紙との間に生じる接触摩擦よりも小さい力に設定される。このようなバネ力に設定されているため、記録用紙が給紙ローラ60A及び補助ローラ61Aのみで搬送されている場合は、補助ローラ61Aは、記録用紙から受ける摩擦力によって、上記バネ力に抗して連れ回る。一方、搬送ローラ対63の圧接力が給紙ローラ60Aと記録用紙との圧接力よりも大きい値に設定されている場合は、搬送ローラ対63によって記録用紙が搬送され始めると、給紙ローラ60Aは記録用紙から給送向き43(図3参照)の力を受けて、給送向き43へ引っ張られる。この引張力は、アーム部材52を記録用紙から離す向きへ作用する。給送向き43へアーム部材52が引っ張られることによって、補助ローラ61Aが記録用紙から離反するか、或いは、補助ローラ61Aと記録用紙との接触摩擦が上記バネ力よりも小さくなると、補助ローラ61Aは、上記ネジリコイルバネからのバネ力を受けて回転する。これにより、突起片105が側面128に当接する位置まで戻される。その結果、次の記録用紙を給送する場合は、再び、給紙ローラ60Aのみによって給送が開始される。
また、上述の実施形態では、本発明の連結機構として連結機構35,36を採用したが、連結機構の変形例として、例えば、図10に示されるように、2つの軸継手130Bの間にゴム或いはコイルバネなどの弾性部材130Aが設けられたカップリング130や、2つの軸継手131Bの間に樹脂或いは金属で形成されたベローズ131Aが設けられたカップリング131を採用することも可能である。これらのカップリング130,131を用いて給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとを連結することにより、給紙ローラ60Aと補助ローラ61Aとの間に、弾性部材の弾性に応じた回転方向の遊び、或いは、ベローズの変形許容量に応じた遊びを設けることができる。
また、上述の実施形態では、搬送ローラ64と給紙ローラ60A,60Bとの回転速度差を利用して、連結機構35の突起片105を側面128に当接する位置まで戻すようにしたが、例えば、SFモータ81の回転駆動を制御することによって、積極的に連結機構35の突起片105を側面128に当接する位置まで戻す手法を採用してもよい。具体的には、記録用紙の後端が給紙ローラ60A,60Bを通過したときに、停止中のSFモータ81を逆転させて、給紙ローラ60A,60Bを図2において時計方向へ回転させる。このときの回転量は、少なくとも、上述した所定回転角αあればよい。SFモータ81が逆転されると、記録用紙が給送向き43(図3参照)とは反対の向きへ移動しようとするが、その移動は、リヤガイド17によって阻止される。このとき、給紙ローラ60A,60Bは、記録用紙上でスリップする。一方、記録用紙は給送されないので、補助ローラ61A,61Bは回転せずに停止している。このため、給紙ローラ60A,60Bのみが回転することにより、突起片105が側面127に当接する状態にあったとしても、突起片105は、側面128に当接する位置まで戻される。