JP4876391B2 - プレコート液の濃度制御方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これら物理洗浄を実施していても次第にファウリングは進行する。ファウリングにより膜目詰まりした膜は薬品洗浄を実施することとなる。薬品洗浄は物理洗浄では除去しきれない物質を薬品によって分解または溶解させて除去する洗浄方法であり、膜のろ過能力をほぼ初期状態まで回復することができる。ところが、薬品洗浄はコストがかかることに加えて、その排水処理および膜の劣化の観点から、できるだけ回数を少なくすることが望まれている。
しかしながら、それらプレコート法には以下に示すような問題点があった。
例えば、特許文献1であれば、BWRプラントにてプレコート法を実施する場合は期待通りの効果が得られるが、河川水や下水などを被処理水とする場合は目的としている機能を十分に果たすことができないと予想される。それは、河川水や下水などの被処理水中には有機物主体のファウリング成分が含まれるためで、含水酸化鉄を含んだプリコート液とはいえ有機物も含まれているため、そのプリコート液をそのままコーティング液として使用すると、プリコート液内の有機物により膜ファウリングが発生することとなり、目的としている機能を十分に果たすことができないことになる。
また、特許文献2においては、プリコート剤である無機物粒子を再利用するためには、分離および次亜塩素酸ソーダ洗浄などの手間および時間がかかるといった問題点があった。
これらの問題点を解決するための手段として逆洗排水を用いたプレコート法が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この逆洗排水を用いたプレコート法は、従来から問題となっていたコーティング剤の回収・再利用処理を簡易としたプレコート方法であり、膜ファウリングを抑制することに加えて、さらに水回収率を向上したものである。
プレコート液が逆洗排水から生成されるため、ろ過時の原水濁度により逆洗排水プレコート液の濃度が変化することとなる。このため、原水の高濁度時においてはプレコート液の濃度までもが非常に高濃度となり、このような高濃度なプレコート液にてプレコートしようとすると、膜ろ過抵抗の増大に加えて、膜目詰まりの要因ともなっていた。
そのため、原水濁度の急変時などは手動でプレコート液の濃度調整を実施しなければならず、何らかの工夫によりこれらの問題点を改善することが求められていた。また、水処理プラント近傍に人が不在の時などに、前記のような手動での制御もできないため、膜目詰まりが進行し、膜差圧上昇が生じることが指摘され、その点を改善することが求められていた。
すなわち、本発明の請求項1の発明は、原水または膜供給水をろ過膜処理する手段と、ろ過膜を逆洗する手段と、逆洗排水を膜ろ過することによって前記ろ過膜をプレコート形成処理する手段を少なくとも有する膜ろ過システムを用いる水処理方法において、
前記原水または膜供給水の濁度とろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の濁度の両方を指標として、下記式の濃縮された逆洗排水プレコート液を捨水する時間に基づき前記濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水量を制御することを特徴とする水処理方法の発明である。
捨水時間=Cf× [(Ff×Tf)/(Cp×Fp)]+K
(式中、Cfはろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに、その逆洗処理されたろ過膜に供給される原水濁度または膜供給水の濁度であり、Cpはろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の濁度であり、Ffは前記原水または膜供給水のろ過流量であり、Tfは前記原水または膜供給水のろ過時間であり、Fpは前記捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水流量であり、Kは逆洗排水プレコート液の濁度により定められる定数である)
請求項2の発明は、請求項1の発明において、捨水する前記濃縮された逆洗排水プレコート液が、重力沈降により濃縮されたことを特徴とする発明である。
請求項3の発明において、ろ過膜に供給する逆洗排水プレコート液量を、前記逆洗排水量から前記濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水量を差し引いた水量となるように、逆洗排水プレコート液タンクに設置した水位計により制御することを特徴とする発明が請求項4の発明である。
本発明によれば、逆洗排水プレコート液の濁度を一定範囲内に制御することにより、逆洗排水プレコート本来の機能を常に発揮し、回収率を向上しつつ、膜ファウリングを抑制することにより安定運転可能な膜ろ過システム、もしくは膜ろ過流束を向上した膜ろ過システムを構築することができる。
また、本発明によれば、原水あるいは膜ろ過水の濃度が変動しても、逆洗排水プレコート液の濁度を一定範囲におさまるように濃縮された逆洗排水プレコート液を系外に排出する時間を制御することにより、安定運転可能な膜ろ過システム、もしくは膜ろ過流束を向上した膜ろ過システムを構築することができる。
本発明で処理する原水としては、具体的には河川水、湖沼水、下水、工場廃水などが好ましいが、これらに何ら限定されない。これら原水が適度に清浄であれば、そのまま使用してもよいが、通常は前処理を施すことが有利である。たとえば、あらかじめ原水を放置して沈降物を除去する処理、あるいは凝集剤を加え、攪拌処理して、汚濁物質をある程度除去する処理などをあげることができるが、これらの処理に限定されることはない。
本発明で使用できるろ過膜は一般的な膜であれば全て使用できるのであり、たとえば精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)などが使用可能である。これらの膜の中ではとくにMF膜あるいはUF膜が好適である。
また、上記膜を含む膜モジュールも特に制限されないのであるが、具体的には平膜型モジュール、中空糸型モジュール、スパイラル型モジュール、管型モジュールなどが使用可能である。
すなわち、ろ過膜処理する原水またはろ過膜供給水の濁度とろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の濁度の両方を測定し、その測定した濁度を指標とする。その測定した濁度に基づいて、濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水量を増減して、ろ過膜に供給される逆洗排水プレコート液の濁度を制御する。濃縮処理された逆洗排水プレコート液の濁度が所定範囲よりも低いときには、逆洗排水を捨水しない。濃縮処理および捨水が終わった逆洗排水プレコート液は、攪拌して均一化した後、膜ろ過し、ろ過膜の一次側表面をプレコートする。その後、原水を膜ろ過処理することとなる。
とくに、原水またはろ過膜供給水の濁度が所定範囲内であるか、所定範囲外であるかによって、さらに逆洗排水プレコート液の捨水時間を増減すると、より好ましい逆洗排水プレコート液に制御することが可能となる。
Cf× [(Ff×Tf)/(Cp×Fp)]+K ・・(1)
この式を満足するような時間に調整することが好ましい。この時間に調整することでプレコート層の形成および水処理を円滑に行うことが可能となる。前記式中、Cfはろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに、その逆洗処理されたろ過膜に供給される原水濁度または膜供給水の濁度であり、Cpはろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の濁度であり、Ffは前記原水または膜供給水のろ過流量であり、Tfは前記原水または膜供給水のろ過時間であり、Fpは前記捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水流量であり、Kは逆洗排水プレコート液の濁度により定められる定数である。
逆洗排水プレコート液を捨水する方法はとくに限定されないのであって、一般的な方法を用いることができる。
本発明では、プレコート形成のための逆洗排水プレコート液のろ過する水量を、逆洗水量から濃縮した逆洗排水プレコート液の捨水量を差し引いた水量となるようにすることも可能である。その際、逆洗排水プレコート液をろ過する水量をプレコートタンクに設置した水位計により制御することできる。
前記濁度を測定する方法などは一般的な方法を採用すればよいのであり、とくに限定されない。また、前記水位計も一般的な水位計を使用すればよい。
(実施の形態)
図1に本発明における実施の形態に係る構成図を示す。なお、図中ではプレコート層8を明記するため厚く記載されているが、実際には0.5mmにも満たない厚さである。以下に本発明における運転工程を記述する。実際の運転では次に示す運転工程を繰り返し実施するものである。図3は本発明の運転工程の流れを示す。図3から、本発明の運転工程は、濃縮された逆洗排水プレコート液を膜ろ過し、ろ過膜表面にプレコートを形成させ、引き続き、原水を膜ろ過して処理水を得、次いで逆洗する。これを1サイクルとする。
また、プレコートタンク攪拌機19を停止して逆洗排水プレコート液10の重力沈降による濃縮を開始する。
ろ過開始から所定時間が経過したところで、膜供給水濁度計16により膜供給水の濁度を測定し、プレコート濁度制御システム17にその値を取込む。ここで、膜供給水の濁度ではなく、別途原水濁度を測定しているのであれば原水濁度をプレコート濁度制御システム17に取込んでもよい。
膜面積20m2、分画分子量150,000〜200,000、内径1.5mmのポリエーテルスルホン/ポリビニルピロリドン混合製の内圧中空糸膜エレメント2
本を一つの圧力容器に充填した膜モジュール(膜面積40m2)を用いて水処理した。
膜供給水濁度から決定される濃縮した逆洗排水プレコート液の捨水時間は以下の計算式に従って求められる。
Cf× [(Ff×Tf)/(Cp×Fp)]+K ・・(1)
(式中、Cf、Ff、Tf、Cp、Fp、Kはすでに説明したとおりである)
上記式1にFf、Tf、およびFpそれぞれの数値を代入すると、捨水時間は次の式2のようになる。
捨水時間[sec]=Cf×(1/Cp])×[(5[m3/Hr]×17.9[min])/18[L/min]] + K・・(2)
上記式2において、単位を揃えて計算すると、捨水時間は次の式3のようになる。
捨水時間[sec]=Cf ×(1/Cp])×4972 +K・・(3)
上記式3において、Cfは膜供給水濃度であり、濃縮した捨水プレコート液濃度(Cp)の実測値が4070度であるときには、上記式3は
捨水時間[sec]= 膜供給水濃度[度] ×(1/4070[度])×4972+K・・(4)
と表される。この式4において、膜供給水濃度の実測値が5度のときには、
捨水時間[sec]= 5×1.22+K ・・(5)
と表される。
この捨水時間を求める式のKの数値としては、例えば表1に示す。これは逆洗排水プレコート液のろ過時に計測される逆洗排水プレコート液の濁度に対して、予め試験して得た数字である。
このK値を設定した逆洗排水プレコート液の捨水時間を増減して実際の制御を実施した。例えば、逆洗排水プレコート液のろ過時に計測された逆洗排水プレコート液の濁度が205度で、原水ろ過時に測定される膜供給水濁度が5度の場合、その捨水時間は以下のとおりである。
捨水時間 =5×1.22±0=6.1秒
また逆洗排水プレコート液のろ過時に計測された逆洗排水プレコート液の濁度が250度で、原水ろ過時に測定される膜供給水濁度が10度の場合、その捨水時間は以下のとおりである。
捨水時間 =10×1.22+15=27.2秒
なお、この計算式に基づいて算出された値がマイナスのときは、プレコート液の捨水を中止する。また、この計算式はろ過水量、逆洗水量、逆洗排水プレコート液の濃度、濃縮した逆洗排水プレコート液の捨水流量などにより変化するもことは言うまでもない。
プレコート濁度 増減捨水時間
200度未満 −20秒
200度以上220度未満 ±0
220度以上240度未満 +7秒
240度以上 +15秒
本発明の制御を実施することにより自動で所定範囲内に制御することが可能であることが明らかとなった。
2:PAC、
3:原水タンク、
4:原水タンク攪拌機、
5:原水供給バルブ、
6:運転ポンプ、
7:ろ過膜、
8:プレコート層、
9:プレコートタンク、
10:逆洗排水プレコート液、
11:プレコートバルブ、
12:逆洗排水、
13:逆洗ポンプ、
14:処理水タンク、
15:水位計、
16:膜供給水濁度計、
17:プレコート濁度制御システム、
18:捨水バルブ、
19:プレコートタンク攪拌機
Claims (4)
- 原水または膜供給水をろ過膜処理する手段と、ろ過膜を逆洗する手段と、逆洗排水を膜ろ過することによって前記ろ過膜をプレコート形成処理する手段を少なくとも有する膜ろ過システムを用いる水処理方法において、
前記原水または膜供給水の濁度とろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の濁度の両方を指標として、下記式の濃縮された逆洗排水プレコート液を捨水する時間に基づき前記濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水量を制御することを特徴とする水処理方法。
捨水時間=Cf× [(Ff×Tf)/(Cp×Fp)]+K
(式中、Cfはろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに、その逆洗処理されたろ過膜に供給される原水濁度または膜供給水の濁度であり、Cpはろ過膜の逆洗処理後から次のろ過膜の逆洗処理される間までに捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の濁度であり、Ffは前記原水または膜供給水のろ過流量であり、Tfは前記原水または膜供給水のろ過時間であり、Fpは前記捨水される濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水流量であり、Kは逆洗排水プレコート液の濁度により定められる定数である)。 - 捨水する前記濃縮された逆洗排水プレコート液が、重力沈降により濃縮されたことを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
- 膜ろ過する逆洗排水プレコート液量が、前記逆洗排水量から前記濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水量を差し引いた水量である請求項1又は2に記載の水処理方法。
- ろ過膜に供給する逆洗排水プレコート液量を、前記逆洗排水量から前記濃縮された逆洗排水プレコート液の捨水量を差し引いた水量となるように、逆洗排水プレコート液タンクに設置した水位計により制御することを特徴とする請求項3に記載の水処理方法。
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