JP4870265B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート樹脂のもつ透明性、耐衝撃性などの機械的特性を保持しつつ、流動性および耐熱性に優れ、更には屈折数とアッベ数のバランスの良いという光学的特性も併せ持つ新規ポリカーボネート樹脂に関する。このポリカーボネート樹脂は各種分野、例えばレンズ、光ディスク基板などのプラスチック光学材料、殊にレンズに好適に利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、2価フェノールを炭酸エステルにより連結させたポリマーであり、その中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA、以下BPAと略す事がある。)より得られるポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性に優れ、また耐衝撃性等の機械特性に優れた性質を有することから多くの分野に用いられている。特に各種レンズ、光ディスク等の光学分野においては、その耐衝撃性、透明性、低吸水性等の特性が注目され、光学用途材料として重要な位置を占めている。
【0003】
しかしながら、BPAより得られるポリカーボネート樹脂は溶融流動性が比較的悪く、また光学用途、特に光学レンズ用途においては、屈折率は1.585と高いがアッベ数が30と低く、色収差の問題が出やすく、屈折率/アッベ数のバランスが悪いという欠点を有する。
【0004】
上記欠点を改良する方法として、脂肪族をポリマー中に導入する方法が検討されている。特開平2−214722号公報では、溶液法で2価フェノールとホスゲンを反応させてポリカーボネート樹脂を製造するにあたり、2価フェノールとして水添BPA骨格を有するビスフェノールを用いる方法が提案されている。この方法では上記光学特性について改善は見られるものの、その溶融流動性は未だ不充分であり改良の余地が残されている。
【0005】
流動性を更に向上させる方法としては、特公平5−14732号公報に示されている。具体的には、2価フェノールとして直鎖脂肪族炭化水素を有するビスフェノールを用いる方法が提案されている。この方法により、流動性は上記水添BPA骨格を有するビスフェノールに比べて改善されるが、直鎖脂肪族をポリマー中に含む場合は耐熱性が低下するという不利な点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、透明性、耐衝撃性を保持しつつ、屈折率とアッベ数のバランスが良好で、流動性および耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂を提供することにある。
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、脂環族と直鎖脂肪族の両方を併せ持つ、ある特定の構造を有するヒドロキシ安息香酸ジエステルを2価フェノールとして用いたポリカーボネート樹脂が、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、下記一般式[1]
【0009】
【化4】
【0010】
[式中、Rは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、Wは炭素数5〜12の脂環式炭化水素基、Xは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子を表し、それぞれ異なっていてもよく、k、lは0〜2の整数を表す。]
で表されるカーボネート構成単位を、全カーボネート構成単位を100モル%として、少なくとも10モル%含有するポリカーボネート樹脂が提供される。
【0011】
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記一般式[1]で表されるカーボネート構成単位を、全カーボネート構成単位を100モル%として、少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも20モル%、より好ましくは少なくとも30モル%含有している。この一般式[1]で表されるカーボネート構成単位の割合が10モル%未満の場合、屈折率とアッベ数のバランスや流動性が不満足となり好ましくない。
【0012】
前記一般式[1]中、Wで表される炭素数5〜12の脂環式炭化水素基としては、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ビシクロデカン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカンなどが挙げられ、なかでもシクロヘキサン、トリシクロデカンが好ましい。
【0013】
前記一般式[1]中、Rで表される炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンなどが挙げられ、なかでもメチレン、エチレン、プロピレンが好ましく、特にメチレンが好ましい。
【0014】
前記一般式[1]中、Xで表される炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。また、lおよびkはそれぞれ0〜2の整数を示し、0が好ましい。
【0015】
また、前記一般式[1]の構成単位を誘導する2価フェノールにおいて、2価フェノールのヒドロキシ基の位置は、カルボン酸エステルの炭素原子に対して、どの位置でもよいが、なかでもp(パラ)位置またはm(メタ)位置であるのが好ましい。
【0016】
前記一般式[1]で表される構成単位を誘導する2価フェノールは、例えばヒドロキシ安息香酸メチルエステルと脂肪族ジオール(HO−R−W−R−OH)とのエステル交換反応により製造することができる。
【0017】
また、前記一般式[1]の構成単位に対して、他の構成単位として好ましい構成単位としては、以下の一般式[2]で表される特定の構成単位が、本発明の目的である透明性、耐衝撃性を保持しつつ、屈折率とアッベ数のバランスが良好で、流動性および耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂を得ることができ好ましく用いられる。
【0018】
【化5】
【0019】
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基または炭素数7〜20のアラルキルオキシ基であって、m及びnはそれぞれ0〜4の整数であり、Yは、
【0020】
【化6】
【0021】
であり、R3、R4は同一又は異なり、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表わし、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、pは4〜7の整数、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。]
前記一般式[2]で表される構造単位を誘導する2価フェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3′−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましく用いられる。これらの化合物は1種類または2種類以上混合して用いることができる。
【0022】
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記一般式[1]で表される構成単位と前記一般式[2]で表される構成単位とからなり、式[1]と式[2]の構成単位の合計を100モルとして、式[1]と式[2]の構成単位の割合がモル比で100:0〜10:90が好ましく、100:0〜20:80がより好ましく、100:0〜30:70が特に好ましい。
【0023】
本発明のポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、例えば2価フェノールとホスゲンとを酸結合剤の存在下に反応させる方法(界面重合法または溶液法)、あるいはカーボネートエステルを用いる溶融法(エステル交換反応)を行う方法が好ましく採用される。
【0024】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0025】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて耐熱性に優れている。かかる単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができる。
【0026】
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少くとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
溶液法では、酸結合剤としてピリジン、キノリン、イソキノリン、ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミンがあげられ、殊に、ピリジンが好適なものとして用いられる。単独でまたは、有機溶媒を用い希釈して反応が行われる。該有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が好ましく、塩化メチレンが特に好ましい。該酸結合剤の使用量は、通常ホスゲンに対して、2〜100モル当量用いられ、好ましくは、2〜50モル当量用いられる。反応温度は好ましくは0〜40℃で行われる。反応時間は通常数分〜数日間、好ましくは10分間〜5時間行われる。また、末端停止剤として単官能フェノール類を使用する事ができる。かかる単官能フェノール類の具体例については前述した界面重合法の説明で示したものと同様なものが挙げられる。
【0028】
溶融重合法では、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1300〜10Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0029】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0030】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-9〜1×10-2当量、より好ましくは1×10-8〜5×10-3当量の範囲で選ばれる。
【0031】
かくして得られたポリカーボネート樹脂は、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂を0.7g溶解した溶液の20℃における比粘度が好ましくは0.2〜2.0の範囲であり、より好ましくは0.2〜0.7の範囲である。
【0032】
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、流動性(Q値)が、5×10-3cm3/s以上が好ましく、5〜600×10-3cm3/sがより好ましく、13〜600×10-3cm3/sが最も好ましい。アッベ数は31〜40が好ましく、31〜37がより好ましく、32〜37が特に好ましい。屈折率は1.54〜1.58が好ましく、1.55〜1.58がより好ましく、1.56〜1.58が特に好ましい。Tgは70℃以上が好ましく、70〜130℃がより好ましく、75〜130℃が特に好ましい。
【0033】
本発明のポリカーボネート樹脂は、射出成形、圧縮成形、押出成形、射出圧縮成形等各種の成形方法により成形され、レンズ、光ディスク基板、光学フィルム等の用途に好適に用いられる。特に、本発明のポリカーボネート樹脂は、アッベ数と屈折率とのバランスに優れ、流動性も良好であるためレンズ用の成形材料として好適である。
【0034】
レンズとしては、眼鏡レンズ、カメラレンズ、顕微鏡レンズ、プロジェクターレンズ、フレネルレンズ、ピックアップレンズ等の各種レンズに用いることができる。その内特に、屈折率とアッベ数のバランスの良い点から眼鏡レンズが最も好ましい。
【0035】
レンズの成形においては、射出圧縮成形が光学歪みの少ないレンズを成形でき最も好ましい方法である。射出圧縮成形において、シリンダー温度は200〜300℃、金型温度は40〜90℃が好ましい。成形に当たって、必要に応じて離型剤等を配合する事ができる。
【0036】
離型剤としては飽和脂肪酸の部分エステルやフルエステルが一般的であり、例えばステアリン酸モノグリセライド等のモノグリセライド類、ステアリン酸ステアレート等の低級脂肪酸エステル類、ステアリン酸トリグリセライド等のグリセリン類のフルエステル類、セバシン酸ベヘネート等の高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のエリスリトールエステル類が使用される。
【0037】
また、必要に応じて亜リン酸エステル系の熱安定剤を配合してもよい。亜リン酸エステル系の熱安定剤としてはトリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4‘−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイト及びトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト等が好ましい。
【0038】
耐候性の向上及び有害な紫外線をカットする目的で、本発明のポリカーボネート樹脂には更に紫外線吸収剤を配合する事ができる。かかる紫外線吸収剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤;例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2‘−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール及び2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールが例示され、これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0039】
また、本発明のポリカーボネート樹脂には更にポリカーボネート樹脂や紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としてはポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。また、各種染料等を添加することにより、各種着色レンズを成形することもできる。
【0040】
また、前記レンズはその表面にハードコート、反射防止コート、防曇コート等の後加工処理をして用いる事ができる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明する。なお、実施例中の部及び%は重量部及び重量%である。また、比粘度、屈折率、アッベ数、耐熱性および流動性は下記の方法で測定した。
比粘度
塩化メチレンを溶媒として、ポリカーボネート樹脂0.7g/100mlの濃度で測定した。なお、測定温度を20℃とした。
屈折率およびアッベ数
ポリカーボネート樹脂のキャスティングフィルム(厚み100μm)を作成し、アタゴ(株)製アッベ屈折計によりジヨードメタンを接触液として25℃で測定した。
耐熱性(ガラス転移温度;Tg)
デュポン社製910型DSCを用いて測定した。
流動性(Q値)
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500Cにより直径10mm、長さ20mmのシリンダーを用いて温度240℃、荷重100kgで直径1.0mmのノズルから1秒間に流出する体積を測定した。
【0042】
[実施例1]
温度計、撹拌機、還流冷却器およびホスゲン吹き込み管を備えた反応器にイオン交換水174重量部、水酸化ナトリウム15重量部を入れ、1,4−ビス[(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)メチル]シクロヘキサン(以下「p−CHDM」と略すことがある)37重量部およびハイドロサルファイト7.6×10-2重量部を溶解した後、塩化メチレン164重量部を加え、撹拌下15〜20℃でホスゲン13.4重量部を60分かけて吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール1.45×10-1重量部と水酸化ナトリウム1.9重量部を加え、さらにトリエチルアミン7.7×10-2重量部を加えて30℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗し、次いで塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで繰り返し水洗し、その後塩化メチレンを蒸発して無色のパウダー32重量部を得た(収率84%)。このパウダーを用いて各種評価を行い、その結果を表1に示した。また、このパウダーを押出機を用いペレット化した。得られたペレットを眼鏡用凹凸レンズ金型を使用し、射出圧縮成形によりレンズを作成した。このレンズは透明性に優れ外観も良好であった。
【0043】
[実施例2]
2,5−ビス[(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)メチル]トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカン(以下「p−TCDDM」と略すことがある)52重量部を温度計、撹拌機付き反応器に仕込み、窒素置換した後、あらかじめよく乾燥したピリジン99重量部、塩化メチレン372重量部を加え溶解した。撹拌下25℃でホスゲン14.3重量部を90分要して吹き込んだ。ホスゲン吹込み終了後、約20分間そのまま撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈し、ピリジンを塩酸で中和除去後、導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで繰り返し水洗し、その後塩化メチレンを蒸発して無色のパウダー50重量部を得た(収率91%)。このパウダーを用いて各種評価を行い、その結果を表1に示した。また、実施例1と同様にレンズを作成した。このレンズは透明性に優れ外観も良好であった。
【0044】
[実施例3]
1,4−ビス[(3−ヒドロキシベンゾイルオキシ)メチル]シクロヘキサン(以下「m−CHDM」と略すことがある)29重量部を用いた以外は、実施例2と同様な操作を行いポリカーボネート樹脂パウダーを得た。このパウダーを用いて各種評価を行い、その結果を表1に示した。また、実施例1と同様にレンズを作成した。このレンズは透明性に優れ外観も良好であった。
【0045】
[実施例4]
2,5−ビス[(3−ヒドロキシベンゾイルオキシ)メチル]トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカン(以下「m−TCDDM」と略すことがある)29重量部を用いた以外は、実施例2と同様な操作を行いポリカーボネート樹脂パウダーを得た。このパウダーを用いて各種評価を行い、その結果を表1に示した。また、実施例1と同様にレンズを作成した。このレンズは透明性に優れ外観も良好であった。
【0046】
[実施例5]
温度計、撹拌機、還流冷却器およびホスゲン吹き込み管を備えた反応器にイオン交換水176重量部、水酸化ナトリウム32重量部を入れ、BPA11重量部、p−CHDM18.5重量部およびハイドロサルファイト6.2×10-2重量部を溶解した後、塩化メチレン166重量部を加え、撹拌下15〜20℃でホスゲン13.5重量部を60分かけて吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール6.2×10-2重量部と水酸化ナトリウム4.0重量部を加え、さらにトリエチルアミン3.4×10-2重量部を加えて30℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗し、次いで塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで繰り返し水洗し、その後塩化メチレンを蒸発して無色のパウダー26重量部を得た(収率89%)。このパウダーを用いて各種評価を行い、その結果を表1に示した。また、実施例1と同様にレンズを作成した。このレンズは透明性に優れ外観も良好であった。
【0047】
[実施例6]
BPA13重量部、p−TCDDM25重量部を温度計、撹拌機付き反応器にし込み、窒素置換した後、あらかじめよく乾燥したピリジン94重量部、塩化メチレン260重量部を加え溶解した。撹拌下25℃でホスゲン13.8重量部を90分要して吹き込んだ。ホスゲン吹込み終了後、約20分間そのまま撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈し、ピリジンを塩酸で中和除去後、導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで繰り返し水洗し、その後塩化メチレンを蒸発して無色のパウダー35重量部を得た(収率92%)。このパウダーを用いて各種評価を行い、その結果を表1に示した。また、実施例1と同様にレンズを作成した。このレンズは透明性に優れ外観も良好であった。
【0048】
[比較例1]
界面重合法により得られたビスフェノール−A(BPA)タイプのポリカーボネート樹脂パウダーの各種評価結果を表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性を保持しつつ、屈折率とアッベ数のバランスが良好で、流動性および耐熱性に優れたものである。このポリカーボネート樹脂は光学材料として各種分野、特にレンズに好適に利用できうるものである。
Claims (7)
- 上記一般式[1]で表される構成単位および下記一般式[2]
- ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃において測定された比粘度が0.2〜2.0の範囲である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 上記式[1]中のRが、メチレンである請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 上記式[1]中のWが、シクロヘキサンまたはトリシクロデカンである請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 上記式[1]の構成単位を誘導する2価フェノールにおいて、2価フェノールのヒドロキシ基の位置が、カルボン酸エステルの炭素原子に対して、p−位置またはm−位置である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 請求項1に記載の上記一般式[1]で表されるカーボネート構成単位を、全カーボネート構成単位を100モル%として、少なくとも10モル%含有するレンズ用ポリカーボネート樹脂成形材料。
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