以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係わる定着装置は、現像剤像が形成された記録媒体を搬送すると共に加熱して現像剤像の定着を行うものである。
図1は、本発明の実施の形態1に係わる定着装置の概略構成を示す分解組立図であり、図2は、図1の定着装置の概略構成を示す断面図である。
図1および図2において、加熱ローラ1は、熱源を有して回転可能であり、接触ニップ域nで熱をトナーTに与え、トナーTを記録媒体Pに定着させる。駆動手段Mは、加熱ローラ1を回転駆動する。加熱ローラ1は、回転駆動されて記録用紙等の記録媒体を搬送すると共に例えばハロゲンランプ等の熱源を有して加熱する円筒形状の加熱部材である。
加熱ローラ1の構造としては、内側から順に、まずハロゲンランプ等の加熱源であるヒータHがあり、その外側にアルミニウム、鉄等の高い熱伝導性を有する金属層83があって、さらにその外側にシリコーンゴム等の弾性層82が形成され、最外層にはパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(以下、PFAと記載)等の離型性の高い樹脂のチューブ81が被せられる。加熱ローラ1の寸法としては、例えば、長手方向の寸法を350mmで外径を28mmとした場合で、金属層83の厚みは長手方向の中央部がほとんど撓まないように1.5mmとし、弾性層82の厚みは1.2mmとする。
弾性層82は、弾性変形することで、記録媒体Pの表面の凹凸による段差と、カラー画像であればトナーTが多層のため生じる段差に対し、ローラ表面を追従させて、定着ムラの無い良好な定着を行えるようにする。また、加熱ローラ1は、モータ等の駆動手段Mにより駆動され、無端状のベルト2を従動回転する。
ベルト2は、加熱ローラ1に圧接されて走行する。ベルト2は、剛性と耐熱性を要するため、材質はニッケル、ステンレス等の金属又は耐熱性樹脂であるポリイミド(以下、PIと記載)をベースとし、柔軟性を得るため薄く形成される。例えば金属の場合は、その厚みは30〜50μm程度であり、PIの場合は50〜100μm程度である。また、両面印刷時において記録媒体Pの定着後のトナー面がベルト2に圧接されたときの記録媒体Pとの分離性を高めるため、表面(加熱ローラ1側)にPFA等の離型性の高い樹脂がコーティングされている。ベルト2は、加熱ローラ1に圧接し、加熱ローラ1に従動して回転する。
ベルトガイド3Aの周囲長は、ベルト2の内側の周囲長よりも短く選定してある。したがって、ベルトガイド3Aは、ベルト2に張力をかけずに、ベルト2の内側でベルト2を緩やかに保持する。これにより、ベルト2の走行軌道が安定するようにガイドすると共に、ベルト2に張力をかけずに緩やかに保持できるように、加圧ローラ1と後述する圧力パッド6(加圧部材)を収容する。また、ベルトガイド3Aは、少なくとも圧力パッド6については支持する部材である。また、ベルトガイド3Aは、後述する圧力パッド6および加圧ローラ7を各々収容するために、溝31と溝32が設けられている。
ベルトガイド3Aは、熱に強い耐熱性、摩擦を抑制できる耐摩耗性を要するため、ポリフェニルサルファイド(以下、PPSと記載)等の樹脂材料で形成され、ベルト2の形状を略円筒形に保つためのガイド部材であり、ベルト2と接する部分はあるが、密着はしない構造であり、摩擦が生じない程度のクリアランスを持たせることでベルト2を緩やかに保持している。
圧力パッドホルダ4は、ベルトガイド3Aに設けられた溝31に収容され、圧力パッド6と、圧力パッド6を加熱ローラ1側に押圧する付勢部材5を支持する。
付勢部材5は、例えばバネ(スプリング)等の弾性体である。図1、図2に示すように、加熱ローラ1の軸方向に一定の圧力を加えるため、圧力パッド6の端から端までの等間隔に複数の付勢部材5が配置される。付勢部材5は、2個、4個、6個等の偶数でも、3個、5個、7個等の奇数でもよく、本実施形態では均等な加圧力を圧力パッド6に加える。
圧力パッド6は、ベルト2の内側であって、後述する加圧ローラ7よりも、記録媒体の搬送方向における上流側に、加圧ローラ7と長手方向が平行に並ぶように配置されて設けられる。圧力パッド6は、ベルト2を加熱ローラ1の方向に加圧ローラ7と共に加圧する。本実施の形態では少なくとも1枚の板状部材を曲げ加工することにより形成され、ベルト2を加圧する側の板状部分が、加圧ローラ7側に加熱ローラ1の表面に沿うように曲げられ、圧力パッド6を加熱ローラ1の方向に加圧する付勢部材5によりベルトガイド3Aに支持される。
図3は、本実施形態の圧力パッド6の斜視図であり、図3に示すとおり、本実施の形態では、圧力パッド6におけるベルト2との圧接面62の形状は、少なくとも長手方向には平面であり、中央部分の62cと両端部62e1,62e2の間の高さ寸法には相違はない。
圧力パッド6の寸法は、例えば、長手方向の寸法L1が350mmで、板の厚みt1は1mm〜2mmであり、加圧ローラ7にできるだけ近づきつつも接触しないようにするためその加圧ローラ7側の先端61が薄くなるように形成される。また、ベルト2への押圧による塑性変形を防ぐため、圧力パッド6の材質は、鉄、ステンレス(以下、SUSと記載)等が用いられる。
図3に示した圧力パッド6の下端部63は、図1、図2に示した付勢部材5によって加熱ローラ1側に付勢され、ベルト2を加熱ローラ1側に押圧する。ベルト2と圧力パッド6は摺動する。また、例えば、摺動摩擦を抑制するために圧力パッド6の表面に摺動性の高いポリテトラフルオロエチレン(登録商標:テフロン)のシート等を張ってもよい。圧力パッド6は、加圧ローラ7と共に接触ニップ域nを確実に広げると共に、定着に適切な圧力を与える。
圧力パッド6は、例えば、上記した材質の板状部材を折り曲げるか、あるいは、ブロック状部材を削って形成できるが、ベルト2を加圧する側の部分は、加圧ローラ7側に加熱ローラ1の表面に沿うように形成されるため、板状部材を折り曲げて形成する方が好ましい。
加圧ローラ7は、ベルト2の内側に設けられ、ベルト2を加熱ローラ1の方向に加圧しつつ従動回転する。
図4は、本実施形態の加圧ローラ7の斜視図である。本実施形態の加圧ローラ7は、撓まない程度の強度を要するため、鉄等を芯金72とし、ベルト2から逃げ出す熱量をおさえるため、断熱部材であるゴム及びスポンジである断熱層71を持ち、図4に示すように円筒の形状である。加圧ローラ7の寸法は、例えば長手方向の寸法L1が350mmで、外径D1が22mm、芯金72の金属層の厚みは1.5mm、ゴム等の断熱層は0.5mm〜1mmである。加圧ローラ7は、長手方向の端部を図1に示すベアリング12で受け止められる。ベアリング12には、ボールベアリング等の摩擦係数の少ないものが用いられる。
加圧ローラ7は、加熱ローラ1の弾性層82よりも硬度の高い弾性部材もしくは金属で構成され、圧力パッド6との間で加熱ローラ1と対向する部分に接触ニップ域nを形成し、加熱ローラ1の弾性層82を、径方向内側に弾性変形させることで、記録媒体Pの搬送方向と、接触ニップ域nの出口の加熱ローラ1接線方向の角度を広げ、離型性能を高める。
図5(a)、(b)は、加圧ローラ7で加熱ローラ1の弾性層82を変形させることで記録媒体Pの離型性能を高められることを示す図である。図5(a)は、加圧ローラ7が加熱ローラ1を弾性変形させない場合の、記録媒体Pの搬送方向と接触ニップ域nの出口における加熱ローラ1の接線方向の角度θ1を示し、図5(b)は、加圧ローラ7が加熱ローラ1を押圧して弾性変形させた場合の、記録媒体Pの搬送方向と接触ニップ域nの出口における加熱ローラ1の接線方向の角度θ2を示す。ここで、θ1<θ2であり、加熱ローラ1を弾性変形させた方が、より離型性能が高まる。
図1に示されるフランジ8は、ベルト2の軸方向の斜行を規制するものである。フランジ8は、バネ(スプリング)等の弾性部材である付勢部材9により、加熱ローラ1側に付勢される。付勢部材9がフランジ8を加熱ローラ側に付勢する力は、例えば15kg重である。また、フランジ8は、ベルトガイド3A及び、圧力パットホルダ4及び、ベアリング12を支持しており、付勢部材9により、付勢されているので、ベルトガイド3A及び、圧力パッドホルダ4と共に圧力パッド6及び、ベアリング12と共に加圧ローラ7も、加熱ローラ1側に付勢される。
以下に、上記した本実施形態の定着装置の動作を説明する。
まず、ヒータHを発熱させ、加熱ローラ1を加熱すると共に加熱ローラ1を駆動手段Mで回転させ、ベルト2及び加圧ローラ7を従動回転させる。
加熱ローラ1の表面温度は、図示しない温度検出手段により検出され、図示しない温度コントローラにより、所定の温度に保たれている。加熱ローラ1の表面温度が所定の温度に到達した時点で、記録媒体Pを接触ニップ域nに移動させ、接触ニップ域nにてトナーTを記録媒体Pに定着させる。
接触ニップ域n内において、加熱ローラ1の弾性層82は、弾性変形することで、記録媒体Pの表面の凹凸による段差と、カラー画像で有ればトナーTが多層のため生じる段差に対し、ローラ表面を追従させて、定着ムラのない良好な定着を行えるようにする。
加熱ローラ1と圧力パッド6に押圧される部分の接触ニップ域nでは、主に加熱ローラ1の表面の熱によりトナーTが溶解する。加熱ローラ1と加圧ローラ7により押圧される部分の接触ニップ域nでは、溶解したトナーTを記録媒体Pに浸透させる。溶解したトナーTを記録媒体Pにより浸透させるため、加熱ローラ1と加圧ローラ7に押圧される部分の接触ニップ域nの圧力は、加熱ローラ1と圧力パッド6に押圧される部分の接触ニップ域nよりも高い方が好ましい。
加圧ローラ7は、図5(b)に示したように加熱ローラ1の弾性層82を、径方向内側に弾性変形させることで、記録媒体Pの搬送方向と接触ニップ域nの出口における加熱ローラ1接線方向との角度を広げ、離型性能を高めている。これにより定着後の記録媒体Pは、加熱ローラ1から容易に分離される。
従来の定着装置では、上記したように、ベルトの放熱面積が大きく熱の損失量が多く摺動摩擦も大きかったので、ウォーミングアップ時間が多く必要であり、駆動電力や発熱電力が増大し、定着装置が大型化していたが、本実施形態では、上記構成によりニップ幅を広げてもベルトの長さの増加が少なく、ベルトは緩やかに保持されるため熱抵抗が大きく熱の損失量が少なくなってウォーミングアップ時間が短くなる。
また、本実施形態では、ベルトガイドに加圧ローラと圧力パッドが収容され、圧力パッドはベルトガイドにより支持されるので、摺動摩擦を必要以上に増大させず、定着装置を小型化させることができるので熱の損失量をさらに減少させることができ、ウォーミングアップ時間をさらに短くすることができる。
実施の形態2.
上記した実施の形態1の定着装置では、加熱ローラ1の金属層83は撓まない程度の厚みを有し、圧力パッド6の長手方向(加熱ローラに平行の方向)に伸びる形状は、ベルト2との圧接面は図3に示すとおり平面であり、加圧ローラ7は図4に示すように円筒の形状である。ここで、例えば、ウォーミングアップ時間を実施の形態1よりもさらに短縮させるために、加熱ローラ1の金属層83を薄くし熱容量を下げる場合について説明する。
図6は、図2の定着装置の正面図である。加熱ローラ1の寸法としては、例えば、長手方向の寸法L1を350mmとした場合、実施の形態1に係わる定着装置の金属層83の厚みは1.5mmであり、この場合の加熱ローラ1の外形を図6に実線で示す。これに対して、金属層83の厚みを1mmまで薄くした場合、すなわち剛性が低下した場合の加熱ローラ1aの外形を図6に破線で示す。
図6の上記した実線の方がほぼ直線であるのに対して、破線の方は加熱ローラ1aの長手方向の中央部でベルト2からd1=0.14mm撓んで浮き上がってしまっている。このように金属層83の厚みを減らした場合には、図6の破線に示したように加熱ローラ1aの長手方向の中央の撓みが大きくなり、接触ニップ域nの長手方向の中央の圧力が低下し、中央と端で定着性に差が生じて均一な画像が得られなくなるという問題が発生する。
上記した問題を解決するための実施の形態2における構成を以下に説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については重複する説明を省略し、相違する構成について説明する。
まず、実施の形態2の加熱ローラ1aは、実施の形態1に比べて、金属層83の厚みが1.5mmから1mmに薄くなっており、剛性が低くなっている。そのため、加熱ローラ1aは、長手方向の中央部でベルト2からd1=0.14mmだけ撓んで浮き上がっており、撓み量が大きい。
そこで実施の形態2では、圧力パッド6aのベルト2に対する圧接面62aが、図3に示したような平面ではなく、図7の本実施形態の圧力パッド6aに示すように、圧力パッド6aの長手方向の中央62acに近づくにつれて、少しずつ加熱ローラ1aに向かって凸形状に張り出すように構成する。すなわち、中央62acでは、両端部62ae1、62ae2よりも寸法d2だけ張り出す。また、加圧ローラ7aの外径も図4に示したように単純な円筒状ではなく、図8に示すように、圧力パッド6aの長手方向の中央62acに近づくにつれて、少しずつ加熱ローラ1aに向かって凸形状に張り出すように構成する。すなわち、中央71acでは、両端部71ae1、71ae2よりも寸法d3だけ張り出す。ベルト2を加熱ローラ1へ長手方向で均一に押圧し、接触ニップ域nの長手方向の中央と端の間の圧力差を少なくし、より均一な画質を得るようにしている。
圧力パッド6aの圧接面62aを凸形状とするには、例えば、図3の圧力パッド6では長手方向の中央部分62cと両端部分62e1、62e2が平坦であるものを、加熱ローラ1の撓み方に対応させて、図7に示した圧力パッド6aのように長手方向の中央部分62acが両端部分62ae1、62ae2よりもd2=0.14mm張り出すように変形させればよい。撓ませ方は、例えば、圧力パッド6aの長手方向の任意位置を端部からx(mm)とし、その位置の加熱ローラ1aの撓み角をi(°)とすると、その位置の撓み量vは加熱ローラ1aの撓み角に対応させるので、材料力学の分野で一般に用いられる撓み曲線を求める式により求めることができる。
一方、加圧ローラ7aの圧接面のを凸形状とするには、例えば、図4の加圧ローラ7では長手方向の中央部分71cと両端部分71e1、71e2が平坦であるものを、加熱ローラ1の撓み方に対応させて、図8に示した加圧ローラ7aのように加熱ローラ1aの撓み方に対応させて、長手方向の中央部分71acが両端部分71ae1、71ae2よりもd3=0.1mm〜0.2mm程度張り出すように撓ませればよい。上記した圧力パッド6aと加圧ローラ7aとで突出量が異なる理由は、加圧ローラ7aは表面にゴムあるいはスポンジ等の断熱材であるが弾性も有する断熱層71aを有しているので張り出す寸法の許容範囲が広がるためである。また、その各部の撓ませ方は、圧力パッド6aと同様に撓み曲線を求める式により求めることができる。
実施の形態2の動作を以下に説明する。なお、実施の形態1の動作と同様な動作については重複する説明は省略し、相違する動作について説明する。
実施の形態2では、ウォーミングアップ時間短縮のため、加熱ローラ1aの金属層83を薄くし熱容量を下げているため、上記したように加熱ローラ1aの剛性が低下し、図6に示すように加熱ローラ1aの長手方向の撓みが大きくなる。
これに対応するために、本実施形態では、圧力パッド6aのベルト2に対する圧接面の長手方向の中央を図7に示すように膨らませると共に加圧ローラ7aの長手方向の中央を図8に示すように膨らませることで、接触ニップ域nの長手方向において、ベルト2を加熱ローラ1aに均等に押圧させている。
上記した実施の形態1の定着装置では、ウォーミングアップ時間を短縮させるために加熱ローラ1の金属層83を薄くして熱容量を下げると剛性が低下して長手方向中央の撓みが大きくなるので、実施の形態1の圧力パッド6および加圧ローラ7を用いたままでは接触ニップ域nの長手方向中央の圧力が低下し、長手方向中央と両端で定着性に差が生じてしまう。しかし、実施の形態2では、上記のように加熱ローラ1aの金属層83を薄くして剛性が低下する場合でも、圧力パッド6aのベルト2に対する圧接面の長手方向中央を圧接面に向かって凸形状に撓ませると共に、加圧ローラ7aの長手方向中央の外径を長手方向両端の外径より大きくし太鼓状に撓ませることで、ベルト2を撓んだ加熱ローラ1aへ長手方向において均等に押圧することができ、接触ニップ域nの長手方向中央と両端との圧力差を少なくできるので、より均一な画質を得ることができると共にウォーミングアップの時間も短縮することができる。
実施の形態3.
上記した実施の形態2の定着装置では、加熱ローラ1aの金属層83の厚みを薄くした場合に生じる接触ニップ域nの長手方向中央の圧力減少に対して、圧力パッド6aの圧接面の長手方向中央を膨らませることで抑制したが、圧力パッド6aを、その圧接面の長手方向中央を膨らませるように形成することは、実施の形態1に係わる圧力パッド6の圧接面のように長手方向中央を膨らませずに平面形状にしているものに比べ加工が難しいという問題点があった。
そこで以下に説明する実施の形態3では、上記の問題に対応させるため、圧力パッド6の圧接面62の長手方向を図7の実施の形態1に示すような平面形状にしたままで、付勢部材5の付勢力を変化させることで、圧力パッド6が撓んだ加熱ローラ1aへ長手方向において均等に押圧することができるようにする。
上記した問題を解決するための実施の形態3の構成を以下に説明する。なお、実施の形態1あるいは実施の形態2と同様な構成については重複する説明を省略し、相違する構成について説明する。
図9は、本実施形態の圧力パッド6および付勢部材5aを示す斜視図であり、図9では、5個の付勢部材5aが長手方向に等間隔L2で圧力パッド6の下端部63に配置されている。圧力パッド6の加熱ローラ1a方向への各付勢部材5aの付勢力Fは異なっており、付勢力が最も強いF1の付勢部材5aが中央に設置され、長手方向中央から両端部に向かって徐々に付勢力が弱められたF2の付勢部材5a、次いでF3の付勢部材5aの順に設置される。本実施形態では付勢力Fが異なる複数の付勢部材を上記したように等間隔L2で設置することで、付勢力Fにより圧力パッド6の長手方向中央62cを両端部62e1,62e2よりも膨らませている。
実施の形態3の動作を以下に説明する。なお、実施の形態1あるいは実施の形態2の動作と同様な動作については重複する説明は省略し、相違する動作について説明する。
実施の形態3では、実施の形態2と同様に加熱ローラ1aの金属層83を薄くして熱容量を下げた場合、ニップnにおける加熱ローラ1aを押圧する圧力が、加熱ローラ1aの長手方向において均一にならないという問題がある。そこで、実施の形態1と同様な圧接面の長手方向が平面形状の圧力パッド6を用いたままで、図9に示すように付勢力が最大(F1)の付勢部材5を中央、中央から離れるに従って付勢力を徐々に弱めた(F1>F2>F3)付勢部材5を寸法L2の等間隔に設置することで、圧力パッド6の長手方向の中央62cに近づくにつれて、両端部62e1、62e2よりも張り出すようにしている。付勢力の差は、例えば、両端部の付勢力F3に対して、中央部の付勢力F1を1〜4割だけ増加させるようにすればよい。また、例えば、中央部の付勢力F1のみ他の付勢力より大きくし、残りのF2とF3は同様にして(F1>F2=F3)としてもよい。付勢部材5aが奇数であれば、中央の1個の付勢力を増加させ、付勢部材5aが偶数であれば、中央の2個の付勢力を増加させればよい。
上記した実施の形態2の定着装置では、加熱ローラ1の金属層83の厚みを薄くした場合圧力パッド6aの圧接面の長手方向の中央を膨らませたが、その加工は難しかった。しかし、本実施形態では、図3に示すような圧接面の長手方向が平面形状に形成したままの圧力パッド6を用いても、図9に示すように長手方向中央に付勢力が最大の付勢部材5aを設置し、中央から離れて両端部に近づくに従って付勢力が弱められた付勢部材5aを設置することで、圧力パッド6の長手方向中央を凸形状に膨らませている。従って、本実施形態では、加熱ローラ1の金属層83の厚みを薄くした場合でも、接触ニップ域nの長手方向中央の圧力減少を抑えることができ、均一な画質を得ることができることに加えて、実施の形態2に係わる圧力パッド6のように長手方向中央を膨らませるように加工する必要が無くなり、圧力パッド6の加工を容易にすることができる。
実施の形態4.
上記した実施の形態1から実施の形態3に係わる定着装置の圧力パッド6、6aは、金属でできており、板の厚みt1も、加圧ローラ7側の先端61を除いて1mm〜2mmで均等厚に形成されているため、熱抵抗が少なく熱の伝導性が良好であり、熱容量も比較的大きくなっている。そのためウォーミングアップ時に加熱ローラ1、1aからベルト2を経由して圧力パッド6、6aに流出してしまう熱量が比較的多くなっており、加熱ローラ1の表面温度を所定温度まで上昇させるためのウォーミングアップ時間が比較的長くなっていると言う問題点がある。
そこで以下に説明する実施の形態4では、上記の問題に対応させるため、圧力パッドの熱抵抗を増大させて熱の伝導性を低下させると共に熱容量も低下させることで、圧力パッドに流出する熱量を減少させる。
上記した問題を解決するための実施の形態4における構成を以下に説明する。なお、実施の形態1から実施の形態3と同様な構成については重複する説明を省略し、相違する構成について説明する。
図10は、本実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図である。図10の断面図に示すように、実施の形態1から実施の形態3では1mm〜2mmで均等厚に形成されていた圧力パッド6、6aを、本実施形態では、直接にベルト2を加圧する薄板20(加圧部材)と、薄板20を固定する薄板固定部材21に分割して形成している。つまり、本実施形態では他の実施形態における圧力パッドが薄板20と薄板固定部材21に2分割された部分が組み合わされてベルトガイド3aの溝31aに収容されて構成されている。
薄板20は、ベルト2への押圧による塑性変形を防ぐため、材質は鉄、SUS等の金属の板バネである。つまり、上記した本実施形態の分割された圧力パッドの構成の内で、少なくともベルトを加圧する側の部分(加圧部材)である薄板20は、弾性を有している。また薄板20の厚みは0.3mm〜0.5mmである。
薄板固定部材21は、実施の形態1から実施の形態3の圧力パッド6、6aと同様に1mm〜2mmの厚みを有する金属で形成される。
図11は、図10の圧力パッド部分の概略構成を示す分解組立図である。
図11に示すように、薄板20は鉄等の金属である薄板固定部材21に、ネジ22で固定される。
また、図10に示したように薄板20におけるベルト2との圧接面の裏側は、加熱ローラ1からの熱の流出を防ぐために薄板固定部材21と接触しないようになっている。
実施の形態4では、付勢部材5は、他の実施形態の圧力パッド6に代えて、薄板固定部材21を加熱ローラ1側に付勢することで、薄板固定部材21に固定された薄板20を加熱ローラ1側に付勢する。薄板20は、ベルト2を押圧し、接触ニップ域nを確実に広げると共に、定着に適切な圧力を与える。
実施の形態4の動作を以下に説明する。なお、実施の形態1から実施の形態3の動作と同様な動作については重複する説明は省略し、相違する動作について説明する。
実施の形態4では、上記したように他の実施形態よりも厚みが少なく弾性を有する薄板20がベルト2を加熱ローラ1側に押圧しており、実施の形態1から実施の形態3の圧力パッド6、6aに比べて熱抵抗が大きく、また熱容量も少ないため、ベルト2を経由して加熱ローラ1から流出する熱量が少なくなる。
また、上記したように薄板20の内部を伝導して薄板固定部材21へと熱が流出する以外にも、薄板20と薄板固定部材21との間の空気層を介しても熱が流出する。しかし、空気層の熱抵抗は金属よりも非常に高いので、薄板20の内部を伝導して流出する熱量に比べて非常に少ない。従って、本実施形態では、他の実施形態に比べて、加熱ローラ1から流出する熱量が減少している。
実施の形態1から実施の形態3の定着装置では、圧力パッド6がほぼ均等厚の金属であるため熱抵抗が小さく、かつ熱容量が大きかったため、ウォーミングアップ時の熱流出量が多くなり、加熱ローラ1の表面温度のウォーミングアップ時間が長くなってしまっていた。しかし、本実施形態では、図12の構造図に示すように、実施の形態1から実施の形態3における圧力パッド6を、薄板20と薄板固定部材21に分割して形成し、これらを組み合わせて構成させることで、熱抵抗を高め、加熱ローラ1から流出する熱量を少なくし、加熱ローラ1表面温度のウォーミングアップ時間を短くすることができるようにしている。
実施の形態5.
上記した実施の形態1から実施の形態3における弾性を持たない圧力パッド6、6aでは、ベルト2との圧接面62は単純な平面または上面に撓んだ凸面である必要があり、その表面にうねりを有しているとトナーの定着性に影響を与えるような圧力差を生じてしまうため、その寸法管理は比較的厳密であり実施には困難を伴う。一方、上記した実施の形態4では、薄板20は板バネであり弾性を付与しているため、薄板20に多少のうねりを有していてもトナーの定着性に影響を与えるほど圧力差を生じないが、薄板20と薄板固定部材21という別部材を組み合わせて用いるため誤差が増大する可能性があり、形成寸法および組み立て寸法の寸法管理は厳しくなるという問題点がある。
そこで実施の形態5では、薄板20のベルト2への圧接面にシリコーンゴム等の弾性部材24を設けることで、ベルト2に対する圧接面に柔軟性を持たせ、それだけではベルト2との間の摺動摩擦が増大してしまうので、その上にさらに摩擦係数が小さい摺動部材を設ける。
上記した問題を解決するための実施の形態5の構成を以下に説明する。なお、実施の形態1から実施の形態4と同様な構成については重複する説明を省略し、相違する構成について説明する。
図12は、本実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図である。図12の実施の形態5では、上記した実施の形態4に対して、さらに以下の構成を新たに設ける。
薄板20のベルト2への圧接面上にシリコーンゴム等の弾性部材24を、例えば、接着剤等で固定して設置する。弾性部材24の厚みは0.3mm以上である。この寸法は、これ以下の厚みでは柔軟性が少なくなり、薄板20のうねりを吸収できなくなるためである。尚、シリコーンゴムは、鉄及びSUSに比べて柔軟性が高いので、鉄及びSUSよりも寸法管理を緩和しても、長手方向に均一な圧力を与えることができる。しかし、シリコーンゴムは、金属に比べて摺動摩擦を増大させるという問題がある。そこで、本実施形態では、弾性部材24の上を覆うように摩擦係数の少ない摺動部材25を被せて固定する。
摺動部材25は、耐熱性と耐摩耗性を必要とするため、例えば、材質としてフッ素樹脂を含浸したガラス繊維等が用いられる。つまり、本実施形態では実施の形態4における薄板20にさらに弾性部材24と摺動部材25が組み合わされてベルトガイド3Cの溝31bに収容されて構成されている。
図13は、図12の圧力パッド部分の概略構成を示す分解組立図である。
上記したように摺動部材25が、弾性部材24とベルト2の摺動摩擦を軽減するために弾性部材24上に被せられるが、耐熱性と耐摩耗性を有する摺動部材25は弾性部材24のように容易に固定することはできない。
そのため、本実施形態では、摺動部材25を、弾性部材24だけでなくその下の薄板20ごとに覆い、さらに薄板20と薄板固定部材21との接合部分も覆うように被さる寸法とした。図13に示すように摺動部材25は、弾性部材24を覆う以外の場所において、その一端側が外側から金属板30で押さえつけられ、ネジ22により薄板20に固定されると共に、その他端側も外側から金属板30で押さえつけられ、ネジ22により薄板固定部材21に固定される。
実施の形態5の動作を以下に説明する。なお、実施の形態1から実施の形態4の動作と同様な動作については重複する説明は省略し、相違する動作について説明する。
実施の形態5では、弾性部材24は、接触ニップ域n内において、薄板20のうねりによる圧力差を減少させるように弾性変形する。
上記した実施の形態1から実施の形態3における弾性を持たない圧力パッド6、6aでは、圧接面62の表面にうねりを生じさせない寸法管理は困難であり、実施の形態4では薄板20と薄板固定部材21の形成寸法および組み立て寸法の寸法管理は厳しかった。しかし、本実施形態では、薄板20のベルト2への圧接面にシリコーンゴム等の弾性部材24を設けることで、ベルト2に対する圧接面に柔軟性を持たせてより均一な画質を得ることができる。さらに、薄板20の寸法管理を容易にでき、更にシリコーンゴムは鉄及びステンレスに比べ、断熱性が高いため熱抵抗が増加するので、加熱ローラ1表面温度のウォーミングアップ時間を短縮させることができる。
実施の形態6.
上記した実施の形態1から実施の形態5で、例えば、印刷速度をより高速にするためニップ幅を広げた場合、圧力パッド6、6a、薄板20、あるいは、弾性部材24上の摺動部材25のベルト2に対する圧接面が広がる。その場合、圧接面のベルト2に対する摺動摩擦力が増大し、摩擦力の増大量が大きくなるとベルト2に走行不良が発生する可能性があるという問題がある。
上記した問題を解決するための実施の形態6の構成を以下に説明する。なお、実施の形態1から実施の形態5と同様な構成については重複する説明を省略し、相違する構成について説明する。
図14は、本実施形態の定着装置の正面図である。本実施形態の加熱ローラ1bの寸法が、例えば、350mmである場合、その各端部に10mmを加え全長を370mmとする。つまり、加熱ローラ1bとして、ベルト2と接触する寸法L1=350mmの定着用領域1cに加えて、その長手方向両端に寸法L3=10mmずつの駆動トルク伝達領域1dを設ける。この駆動トルク伝達領域1dには、PFA等の高離型性のチューブ81を被せず直接シリコーンゴム等の弾性層82を露出させて摩擦力を増大させる。
また、本実施形態の加圧ローラ7bにも、ベルト2と接触する寸法L1=350mmの定着用領域7cに加えて、その長手方向両端に寸法L3=10mm以上づつの駆動トルク伝達領域7dを設ける。なお、上記した駆動トルク伝達領域1dおよび7dの寸法は一例であって、摩擦力が充分であれば10mm以下の寸法としてもよいし、摩擦力が不足するようであれば寸法を増加させても良い。
本実施形態では、加圧ローラ7bの端部の駆動トルク伝達領域7dは、加熱ローラ1の駆動トルク伝達領域1dに直接に接触する。その結果、加熱ローラ1bは直接に加圧ローラ7bを従動回転させるようになる。
本実施形態の動作を以下に説明する。なお、実施の形態1から実施の形態5の動作と同様な動作については重複する説明は省略し、相違する動作について説明する。
例えば、実施の形態5で印刷速度をより高速にするため薄板20及び弾性部材24及び摺動部材25のベルト2に対する圧接面を広げた場合に、摺動部材25のベルト2に対する摩擦力が高まり、加熱ローラ1bのベルト2と接触する350mmの定着用領域1cの摩擦力だけでは摩擦力が不足して滑ってしまいベルト2を駆動できない場合について説明する。
本実施形態では、その場合であっても、加熱ローラ1bの駆動トルク伝達領域1dから加圧ローラ7bの駆動トルク伝達領域7dに駆動トルクが伝達されるので、ベルト2は、加圧ローラ7bの定着用領域7cの摩擦力によっても駆動されるようになる。すなわち、ベルト2は、加熱ローラ1bの定着用領域1cとの間の摩擦力と、加圧ローラ7bの定着用領域7cとの間の摩擦力との双方により駆動されることになり、ベルト2は加熱ローラ1bと加圧ローラ7bに従動回転されることになるため、他の実施形態よりもベルト2を回転させる駆動力が増強される。
他の実施形態では、印刷速度をより高速にするためニップ幅を広げた場合、ベルト2に対する圧接面が広がって摩擦力が増大し、ベルト2の走行不良が発生する可能性があった。しかし、本実施形態では、加圧ローラ7bの端部を加熱ローラ1bの端部と直接に接触させることで、加圧ローラ7bを加熱ローラ1に直接に従動回転させるようにしたので、ベルト2は、外側の加熱ローラ1bと内側の加圧ローラ7bの両面からの駆動トルクおよび摩擦力により従動回転されるようになるため、圧接面が広がって摩擦力が増大しベルト2との間の摩擦力が増加しても、ベルト2の走行不良の発生を抑えることができる。
実施の形態7.
実施の形態1から実施の形態6において、例えば、厚手の記録媒体を印刷するため、フランジ8を付勢する付勢部材9の力を増して接触ニップ域nの押圧力を増加させた場合、圧力パッド6、6a、薄板20、あるいは、弾性部材24上の摺動部材25のベルト2に対する圧接面とベルト2との摺動摩擦力が増加する。その場合、摩擦力の増大量が大きくなるとベルト2に走行不良が発生したり回転が止まる可能性があるという問題がある。また、加圧部材の圧接面とベルト2間の摩擦力が高い場合には、ベルト2が加圧部材の長手方向の片側端部に偏向した場合に、フランジ8によるベルト2の軸方向の斜行を規制する力が弱まり、ベルト2がフランジ8を乗り上げてしまうか座屈してしまう可能性があるという問題点がある。
そこで実施の形態7では、ベルトガイド3の表面にオイル供給体40を設置し、オイル供給体40からベルト2の内面側にシリコーンオイル等の潤滑剤を塗布することで、上記の問題点を解決する。
上記した問題を解決するための実施の形態7における構成を以下に説明する。なお、実施の形態7の構成は実施の形態5の構成と類似し、実施の形態1から実施の形態6と同様な構成については重複する説明を省略し、相違する構成について説明する。
図15は、本実施形態のベルトガイドの概略構成を示す斜視図である。実施の形態7の全体的な構成は図12に示した実施の形態5と同様であるが、ベルトガイド3Dに追加される構成のみが図15に示したように相違している。
ベルトガイド3D表面の長手方向中央に潤滑剤を供給するオイル供給体40を設置し、さらに、その潤滑剤がベルト2の表面に回り込む事態を防止するため、ベルトガイド3B表面の長手方向の両端部に接しないようにオイル吸収体41を設置する。オイル供給体40は、例えばフェルトに潤滑剤を染み込ませたものである。
実施の形態7のフランジ8を付勢する付勢部材9は、実施の形態5よりも付勢する力が増大されている。その結果、接触ニップ域nの押圧力も増大されている。
本実施形態の動作を以下に説明する。なお、実施の形態1から実施の形態6の動作と同様な動作については重複する説明は省略し、相違する動作について説明する。
実施の形態7の全体的な動作は、実施の形態5とほぼ同様である。本実施形態では、ベルト2が回転すると、ベルトガイド3D表面の長手方向中央のオイル供給体40からオイルがベルト2の内側中央に塗布される。このオイルは、ベルトガイド3Dの長手方向の両端側に向かって広がる。しかし、このオイルが両端部を超えてフランジ8にまで広がってしまうと、そこからベルト2の表面、および、加熱ローラ1の表面にまで広がってしまうことがある。加熱ローラ1の表面にオイルが付いた状態で定着を行うと、印刷結果に光沢ムラが発生する。そのため、本実施形態では、ベルトガイド3Dの端部に設けられたオイル吸収体41が、加熱ローラ1へのオイルの広がりを止めている。
実施の形態1から実施の形態6においては、厚手の記録媒体を印刷するためにフランジ8を付勢する付勢部材9の力を増加させて接触ニップ域nの圧力を高めると、ベルト2に走行不良が発生したり回転が止まるという問題点があり、ベルト2がフランジ8を乗り上げてしまう又は座屈してしまう問題点があった。しかし、実施の形態7では、ベルトガイド3Dの表面にオイル供給体40を設置し、オイル供給体40からベルト2内側にオイルを塗布することで、加圧部材とベルト2の摩擦力を軽減し、上記の問題点を解決しつつ、接触ニップ域nの圧力を高めることができる。
またオイルは、ベルト2の長手方向端側に向かって広がるので、ベルトガイド3Bの端部を超えてフランジ8にまで広がってしまうと、そこからベルト2の表面、加熱ローラ1の表面にまで広がってしまい、印刷結果に光沢ムラを発生させる場合がある。しかし、実施の形態7では、ベルトガイド3Bの表面の長手方向両端部に接しないようにオイル吸収体41を設置し、加熱ローラ1へのオイルの広がりを止めているので良質な画質を得ることができる。
なお、上記した実施形態1から実施の形態7では、ベルトガイド3A−3Dとして略円筒形状で、圧力パッド6等を溝31A−31Dに収容し、加圧ローラ7を溝32に収容して、ベルト2をガイドするものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、断面が楕円形状の筒型形状や、円筒駕籠型形状、上面半分のみの半円形状あるいは弓形形状等であっても、ベルト2に張力をかけずに緩やかに保持できればよい。また、ベルトガイド3A−3Dの溝31A−31Dも、圧力パッド6等を収容できればよいので、図示した以外の形状としても本発明の効果を得ることができる。
実施の形態8.
図16は、実施の形態8によるベルト定着装置の構成を示す断面図である。図17は加圧パッドの形状の説明図であり、加熱ローラとベルトを、離間した位置に描いてある。加熱ローラ1は、その回転軸の方向に延出し、外径28mmを有する大略円柱形状の中空の回転体であり、内部に熱源Hを有する。加熱ローラ1は、厚さ1mmの鉄製の金属層83の外周に、シリコーンゴムよりなる厚さ1.2mmの弾性層82と、弾性層82の外周にはトナー離型性を得るための厚さ0.03mmのPFA層81を有する。加熱ローラ1の外周には、ローラ温度を検知するためのサーミスタ10が接触して設けられている。無端状のベルト2は外径40mmであり、厚さ0.09mmのPI(ポリイミド)からなり、表層にはトナー離型性を得るために、加熱ローラ1と同様にPFA層が設けられている。加圧ローラ7は、その回転軸の方向に延出し、外径23mmを有する大略円柱形状の中空の回転体であり、鉄製の中空の芯金72に、厚さ2mmのシリコーンゴムよりなる断熱層71が被覆されている。尚、芯金72はアルミ等、他の金属でも良い。
加圧パッド50は、加熱ローラ1と平行に延出する。ベルトガイド3内には付勢部材5が設けられ、加圧パッド50をベルト内側から、加熱ローラ1に対して付勢する。付勢部材15は、定着装置の図示しないフレームと、加圧ローラ7との間に設けられ、加圧ローラ7をベルト内側から、加熱ローラ1に対して付勢する。これにより、ベルト2と加熱ローラ1との間にニップが形成される。加圧パッド50は、アルミ基材50aの先端にシリコーンゴムよりなる弾性体50bを有し、ベルト2を押圧する弾性体50bの押圧面上には、耐熱性及び摺動性を有するPFA等のコーティング50cが施される。ベルト走行方向に対して上流部と下流部において、弾性体50bの押圧面は、加熱ローラ1と同一の曲率半径(14mm)を有する。加圧パッド50の中央部に凹部を有し、付勢部材5に付勢されるとき、この凹部は上流部及び下流部に比べ、小さな押圧力で、ベルトに押圧される。ベルト2に対向する加圧パッド50の上流部、中流部及び下流部の面積の比は約1:2:1である。この面積の比は、一例であり、適宜、変更可能であると共に、凹部が一つだけではなく、複数設けてもよい。弾性体50bの厚さは上流部と下流部で約1.5mm、中央部の凹部の厚さは0.2〜0.5mm程度に設定する。加圧パッド50のゴム硬度はJIS−Aで20〜60°である。
加圧パッド50は圧力パッドホルダ4内に、ベルトを押圧する方向に摺動可能に装着され、付勢部材5により付勢されて加熱ローラ1に押圧される。このときの押圧力は、A3サイズの用紙幅、すなわち、350mmにわたって加えられ、その値は6kgfである。ベルトホルダ3は、ベルト2の内側を貫通して、加熱ローラ1の長手方向と平行な方向に延出し、圧力パッドホルダ4とともにベルト2の走行路の外側に設けられた図示せぬサイドプレートに支持される。ベルトガイド3の周囲長は、ベルト2の内側の周囲長よりも短く選定してある。したがって、ベルトガイド3はベルト2に張力をかけずに、ベルト2が略円を描くようにして、ベルト2の内側でベルト2を緩やかに保持することができる。これにより、ベルト2の走行が安定するようにガイドできる。
印刷動作を開始すると、加熱ローラ1は図16に示す矢印Aの方向に回転し、ベルト2は矢印Bの方向に従動回転する。熱源Hからの熱が加熱ローラ1表面に伝わり、定着可能な温度に達したことをサーミスタ10が温度検知すると、未定着トナーTを乗せた印刷媒体Pが、加熱ローラ1とベルト2の間に形成されるニップを通過し、トナーは、加熱ローラ1からの熱により定着される。
図18は、ニップの幅方向における、加圧ローラ7と加圧パッド50の押圧力の分布を示す。加圧パッド50による押圧力の分布は、弾性体50bの中央部の凹部を境に、2つのピークを生じている。したがって、加圧パッド50の長手方向に反りがあっても、加圧パッド50の長手方向の中央部(図18の点線部)と端部(図18の実線部)との間のニップの差を、従来に比べ少なくでき、より安定したニップ形状を実現している。
以上説明したように本発明では、加圧パッド50の押圧部を形成する弾性体の形状を以下のように選択した。すなわち、ベルトの走行方向に対して、ニップの上流部と下流部の間の中央部を凹部とすることにより、上流側と下流側とに押圧力を分散するようにした。これにより、弾性体の収縮量が増し、弾性体の厚さを薄くしても、加圧パッド50の長手方向の反りに起因するニップ幅の変動を小さくできる。したがって、加圧パッド50の長手方向に、より均一なニップ形状を実現でき、定着性能が安定し、信頼性の高い定着装置を実現できる。
実施の形態9.
図19は実施の形態9を示す断面図であり、図20は加圧ローラ7と加圧パッド50の位置関係を示す長手方向の端部付近の部分図である。加圧パッド50は加圧ローラ7の長手方向の寸法よりも長く、加圧ローラ7の軸受13に対向する長さを有する。また軸受13の外径D5は、加圧ローラ7の外径D4よりも僅かに大きく選択される。例えば、軸受け13と加圧ローラ7の外径の差は0.3〜1.0mm程度に設定される。加圧パッド50はベルト2の走行方向に傾いた場合、加圧パッド50の両端部が軸受13に接し、加圧ローラ7には接しない位置関係にある。
加圧パッド50は、ベルト2を押圧する方向に移動できるようにして、圧力パッドホルダ4内に装着されるが、装着後の両者間の隙間と、圧力パッドホルダ4と図示せぬサイドプレートとの間の隙間だけ、ベルト2の走行方向に傾く範囲がある。しかしベルト2の走行方向に加圧パッド50が傾いても、加圧パッド50の両端部が軸受13に当接するので、それ以上傾くことはない。したがって、加圧パッド50が加圧ローラ7に接触しないので、加圧ローラ7の回転は阻害されず、ベルト2の走行も安定する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、加圧パッド50の長手方向の寸法を、加圧ローラ7の軸受13に対向できるような長さとし、加圧ローラ7の軸受13の径を加圧ローラ7の径よりも僅かに大きく設定した。これにより、加圧パッド50がベルト2の走行方向に少し傾いても、加圧パッド50が軸受13により支持されるので、加圧パッド50は加圧ローラ7と接触しない。したがって、加圧ローラ7の安定した回転とベルト2の安定した走行が実現でき、安価で信頼性の高い定着装置が実現できる。
実施の形態10.
実施の形態10に係わる定着装置の構造は、図16に示す実施の形態8に係わる定着装置と大略同じである。図21は実施の形態10を示す断面図である。図22は加圧ローラ7と加圧パッド50の長手方向の端部における位置関係を示す部分図である。加圧パッド50の長手方向の両端部にはスペーサ14が設けられ、このスペーサ14が加圧ローラ7のローラ部に接触している。スペーサ14は耐摺動性と耐熱性のある材質、例えば、ポリテトラフルオロエチレンやフッ素樹脂を含浸したガラス繊維等で作られるか、あるいは接触面に摺動性を付与したコーティングやめっき等を施してある。加圧パッド50は、スペーサ14が常に加圧ローラ7に接する状態で、ベルト内面から加熱ローラ1を押圧するように構成される。
加圧パッド50が、スペーサ14を介して加圧ローラ7に常に接触しているので、加圧パッド50と加圧ローラ7との位置関係は一定である。したがって、ベルト2と加熱ローラ1の間に形成されるニップの全体量は一定に保たれた状態で印刷が行われる。また、スペーサ14と加圧ローラ7との接触面は摺動性があるため、加圧ローラ7の回転を阻害することは少ない。
以上説明したように、実施の形態10では、加圧パッド50の長手方向の両端部に、摺動性を付与したスペーサ14を設け、加圧ローラ7のローラ部に常にスペーサ14が接する構成とした。これにより、加圧ローラ7の安定な走行を確保するとともに、加圧パッド50、圧力パッドホルダ4及びサイドプレートの間の寸法関係を厳しく管理することなく、一定の大きさのニップを得ることができる。したがって、安価で、定着性が安定した、信頼性の高い定着装置を提供できる。
実施の形態11.
実施の形態11に係わる定着装置の構造は、図16に示す実施の形態8に係わる定着装置と大略同じである。定着装置の稼動中は、ベルト2と加圧パッド50は、互いに摺動するように動作し、他の動作部材は回転動作をする。このため、駆動ローラである加熱ローラ1の回転軸にかかる負荷トルクのうち、ベルト2と加圧パッド50sの間の摺動から生じる摩擦力占める割合が大きい。従って、ベルト2と加圧パッド50とが互いに滑りやすくすれば、定着装置の動作が安定になり、信頼性が増すとともに装置の小型化が実現できる。
実施の形態11では、ベルトと摺動する加圧パッド50の弾性体50bの基材を熱硬化型シリコーンゴムで構成する。この弾性体50bの表面に、固体潤滑剤としてグラファイトを添加したコーティング層を設けてある。コーティング層の表面粗さは10点平均粗さRz5μm以上に設定されている。コーティング表面の粗さを実現する方法は、ゴム成形型の内面をサンドブラスト等の処理で粗すか、コーティングの塗布条件を変えることで実現できる。
摺動性は摩擦係数を指標とすることができる。摺動面の粗さと摩擦係数との相関を調べた結果を図23に示す。図23において、横軸は加圧パッド50のコーティング面の表面粗さRzを示し、縦軸はベルト2に対するコーティング面の静止摩擦係数μを示す。加圧パッド50の弾性体50b及びコーティングと同一材料を用いて、テストピースを製作した。このテストピ―スを、ベルト2を切り開いてシート状にしたものの上に、ヘイドン14型測定機を使って、実装状態と同一荷重となるように設定し、摩擦係数を測定した。
図23から、コーティング表面の粗さが小さいと、静止摩擦係数が大きくなることがわかる。これはベルト2の表面粗さがコーティング表面に比べて小さいので(Rz0.1μm以下)、加圧パッド50のコーティング層の粗さが小さくなり、鏡面状態に近づけると密着性が増し、貼り付き易くなっているものと考えられる。逆にコーティング表面の粗さを大きくすると静止摩擦係数は減少し、Rz5より大きくなると、ほぼ安定する。
図23に示したトルク値は、実際の加圧パッド50上のコーティング表面粗さと、実装時での加熱ローラ1の回転軸にかかる起動トルクの関係を調べた結果である。コーティング表面の粗さがRz5μm以上において、負荷トルクが低い値で安定することがわかり、摩擦係数と負荷トルクとの間には相関があることがわかる。
以上説明したように、実施の形態11では、加圧パッド50の弾性体50b表面のコーティング面粗さをRz5μm以上に設定する。これにより、ベルト2と加圧バッド4とが互いに滑りやすくなり、加熱ローラ1の負荷トルクを、安定した低い値に設定できる。したがって、実施の形態11は、定着装置の安定な動作、信頼性及び小型化の実現に効果がある。
実施の形態12.
実施の形態8では、図16に示すように、加圧パッド50に設けた弾性体の表面には、コーティング層を設けてある。このコーティング層は、熱硬化型シリコーンゴムを第1基材とし、エポキシ変性シリコーン、シランカップリング剤(硬化促進剤)、更にグラファイト(固体潤滑剤)等を添加してある。発明者は、以下に述べる4種類のコーティングを試みた結果から、実施の形態12の構成に到った。
表1に、コーティングの種類と評価結果を示す。それぞれの基材に固体潤滑剤としてグラファイトを添加している。またコーティングの表面粗さはRz8μmとしてある。ここでは示さないが、Rz5以上の場合は、表面粗さとは無関係に、表1と同様の結果が得られることが分かった。コーティング層の基材としては、表面温度180℃に耐えられるとともに、汎用性を有することが要求される。この観点から、エポキシ樹脂、変性ポリアミドイミド樹脂(以下変性PAIと呼ぶ)、シリコーンゴム、シリコーンゴム+硬化促進剤等を使用する。評価項目は、ベルト材料との静止摩擦係数、被着材であるシリコーンゴムとの接着性及び加圧パッド50の実装耐久性である。静止摩擦係数は実施の形態11と同様の方法で測定した。
接着性の評価は、加圧パッド50の弾性体と同じ材料を用いてテストピースを作り、JISD0202によるテープ剥離法で行なった。実装試験に用いた加圧パッド50は、A3サイズの用紙の定着に使用する長手方向の寸法が350mmのものであり、弾性体の摺動部の幅(ベルトの走行方向)が3mmで、加圧力が6kgである。試験用プリンタはA4サイズの用紙を毎分40枚で連続印刷し、定期的に負荷トルク変化を測定しながら判定した。試験に使用した定着装置の保証寿命はA4サイズの用紙100K枚で、負荷トルクの許容値は駆動ローラである加熱ローラ1の回転軸換算で8kgf−cmである。これを越える負荷では動作が不安定となり、最終的にはモータが脱調する。
静止摩擦係数は、何れのコーティングを使用した場合でも、0.15〜0.17の範囲にあり、摺動性が大きくばらつくことがなく、問題ない。接着性評価では、変性PAIが他の材料に比べて劣る。したがって、実装試験では、エポキシ樹脂基材のコーティングと、シリコーンゴム基材のコーティングについて試験をした。
その結果、エポキシ樹脂基材のコーティングでは、10K枚の用紙に印刷後、コーティング表面に割れが発生し、弾性体シリコーンゴムが露出し、駆動トルクが上昇して許容トルク値を超えた。図24に連続印刷試験での負荷トルク変化を示す。
エポキシ樹脂基材の割れが発生した理由は、ゴムに比べて材質が硬く、かつ薄いため柔軟性に欠けることにある。このため、エポキシ樹脂基材は、弾性体50bを形成するシリコーンゴムの加圧による変形に充分追従できず、通紙による繰返し疲労が原因となって割れてしまうことがわかった。
シリコーンゴム基材のコーティングは保証寿命を満足したが、120K枚の用紙を印刷した時点で割れ、はがれが発生したため余裕が少ないと言える。破壊状況から判断して、基材であるシリコーンゴム自体の引裂き強度および接着力を増す必要があると、発明者は考えた。この条件を満たすために、基材に、引裂き強度を増す目的で、エポキシ変性シリコーンを添加し、接着力を増す目的でアミノシランを添加した。この結果、連続印刷試験において、200K枚の用紙を印刷しても、コーティングが破損することがなくなった。図24に示すように負荷トルク変化も、初期変化の後は、安定した結果が得られた。
以上詳細に説明したとおり、実施の形態12によれば、シリコーンゴム基材にエポキシ変性シリコーンとアミノシランとを添加することで、コーティングの引裂き強度と接着力とが増加し、また、固体潤滑剤としてグラファイトを添加することで摺動性が得られる。したがって、連続印刷を行っても破損や負荷トルク上昇がなく、動作が安定で、信頼性が高く、低価格な定着装置が実現できる。
なお、実施の形態12では、固体潤滑剤としてグラファイトを使用したが、四フッ化エチレン、テフロン粉体や二硫化モリブデン等の摺動剤を使用しても同様の効果が期待できる。
実施の形態13.
図25から図27は、ベルト2の幅方向の端部における、加圧パッド50上の弾性体50bとベルト2との位置関係を示す。図28は、実施の形態13に係わる加圧パッド50の長手方向の端部におけるコーティング面が、ベルトの幅方向の端部より内側に接触している状態を示す。
図25に示すように、弾性体50b端部がベルト2の端部より外側にあると、ベルト2の端部が摺動する部分の弾性体50bにかかる応力が局部的に高くなるため、弾性体50b上のコーティングが削れ易くなる。したがって、図26に示すように、ベルト2の端部を、弾性体50bの長手方向の端部よりも外側に配置する必要がある。このとき、弾性体50bの端部の側面が、図27に示すように、ベルトとの接触面に対し直角形状である場合、コーティングが弾性体50bの側面に施されないと、コーティング端部にてコート剥がれが発生し易くなり、信頼性を著しく損なう。
コーティング端部が剥がれ易くなる理由は、端部以外のコーティング層に比べ、端部コーティング部は片側にコート層が無いため、コート層の結合力が弱いからである。一般的なスプレーコートでは塗布方向に対して垂直な側面にはコーティングが付着しない。塗布方向に対し垂直な側面にもコーティングを施すためには、スプレーノズルや被着体を傾斜させて塗布する工程を設けなければならず、コストが上昇という問題がある。
図28では、ベルト2の端部は、加圧パッド50上の弾性体50bの端部より、加圧パッド50の長手方向の外側に延びている。弾性体50bの形状は、ベルト2との接触部から加圧パッド50の基体50aへ向かって斜面を形成し、この斜面面にもコーティングが施される。
しかしながら、実施の形態13のように、弾性体の端部の側面を緩やかな傾斜面(テーパ状)にすれば、スプレーによるコーティングの塗布方向を変更しなくても、摺動面に対する塗布と同一工程で、傾斜面にもコーティングが施される。したがって、動作時でもコート剥がれが生じない。
以上説明したように、本実施の形態13によれば、弾性体の側面にコーティングを塗布する工程を追加しなくても、ベルトに摺動する弾性体の端部の上面及び側面に、連続して一様にコーティングが施すことができる。したがって、弾性体の端部でのコート剥がれがなく、安定したベルト走行が得られ、安価で信頼性の高い定着装置を提供できる。