JP4868790B2 - 石炭サイロ及び火力発電所 - Google Patents

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Description

本発明は、火力発電所の石炭サイロ、貯蔵石炭の再循環方法、貯蔵石炭の再循環制御システムに関する。
火力発電所では、石炭・油・ガスなどの燃料のもつ熱エネルギーを機械的エネルギーに変え、更に電気エネルギーに変えている。石炭を燃料とする場合、海外より石炭を大型石炭船でコールセンタに受け入れ、これを石炭専用船で火力発電所のある消費地に直接陸揚げされることが多い。
その後、この石炭は、火力発電所のボイラで燃焼される迄の期間、貯炭場に貯蔵されている。火力発電所で石炭を貯蔵する場合、(1)屋外のパイル方式と、(2)屋内の完全密閉式のサイロ方式とがある。
前者のパイル方式は、石炭を断面三角形で一直線状に積み上げる方式である。この場合、面積によって積める高さが決まってしまう。パイル方式は、開放方式であるため粉塵対策も困難である。
一方、後者のサイロ方式は、少ない面積でより沢山の石炭を貯蔵できる、即ち収納効率が比較的高いといった特徴がある。また、石炭サイロは密閉方式であるため粉塵対策も容易であり、近隣へ迷惑を掛けることもない。従って、最近の火力発電所では、サイロ方式が採用され始めている。
なお、本出願人が、この出願に際して、先行技術文献を調査したところ、次の特許文献1が検出された。
特開2004−198017「サイロ内石炭灰品質シミュレータ」(平成16年7月15日公開) 特許文献1は、石炭灰有効利用支援システムを有効に作動させるために、石炭焚ボイラの各サイロに堆積する石炭灰の成分を深さ方向に推定するサイロ内石炭灰品質シミュレータを提供することを発明の課題としている(段落0014等参照)。
従って、後述するように、石炭サイロの貯蔵石炭の温度上昇を防止することを課題とする本発明とは、無関係な技術である。
しかし、サイロ方式においても、石炭を積んだ場合に発生する問題点がある。石炭の性質上、石炭を積んだ状態にしておくと、酸化反応が進み発熱する。そのまま放置すると、酸化反応は一層進んで高温になり、火災に至る場合もある。
従って、石炭サイロの中で石炭の温度上昇をどのようにして防ぐかが問題となる。
本発明は、火力発電所の石炭貯蔵において、自然発火を防止するため、石炭の温度上昇を防ぐことができる石炭サイロを提供することを目的とする。
更に、本発明は、火力発電所の石炭貯蔵において、自然発火を防止するため、貯蔵石炭の再循環方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、火力発電所の石炭貯蔵において、自然発火を防止するため、貯蔵石炭の再循環制御システムを提供することを目的とする。
本発明に係る石炭サイロは、石炭貯蔵エリアを隔壁により複数個の区画に分けた槽と、前記貯蔵エリアの上方に配置され、石炭を搬入する受入コンベアと、前記槽の各々の上方に配置され、前記受入コンベアの石炭を槽内に搬入する積付機と、前記槽の各々の下方に配置され、石炭を搬出する払出機と、前記払出機の石炭を搬出する払出コンベアとを備え、前記払出機は、比較的古い石炭を貯蔵する槽から順に石炭を払い出し、また、前記槽の上方に配置された積付機によって石炭を搬入し、下方に配置された払出機によって石炭を搬出することにより、貯蔵石炭の先入れ先出しを実行する。
更に、上記石炭サイロでは、更に、前記払出コンベアから石炭を受け取って前記受入コンベアに引き渡す再循環コンベアを備え、発熱した石炭を空冷するための石炭再循環ルートを形成することもできる。
更に、本発明に係る火力発電所は、上記石炭サイロを備えている。
更に、本発明に係る再循環方法は、石炭貯蔵エリアが隔壁により複数個の槽に区分された上記石炭サイロ内で、発熱した貯蔵石炭を空冷するために再循環する方法であって、槽内の貯蔵石炭を、該槽の下方に配置された払出機で払い出して、該槽外の払出コンベアに引き渡し、払出コンベアは、石炭を、槽外の再循環コンベアに引き渡し、再循環コンベアは、石炭を、槽外から槽内に延在する受入コンベアに引き渡し、受入コンベアは、石炭を、槽の上方に配置された積付機に引き渡し、積付機は、石炭を、槽内に積み上げる。
更に、本発明に係る再循環制御システムは、上記石炭サイロ内で発熱した貯蔵石炭を空冷するための再循環制御システムであって、貯蔵石炭の温度を感知する温度センサと、測定箇所のデータ及び温度センサのデータから、貯蔵石炭の温度データを生成する温度監視装置と、温度監視装置から貯蔵石炭の温度データを受け取り、上記再循環方法を行うか否かを決定する自然発火防止コントローラと、自然発火防止コントローラにより再循環を行う命令を受け、上記再循環方法を実行する石炭積み替え手段とを備えている。
更に、上記再循環制御システムでは、自然発火防止コントローラは、温度データが貯蔵石炭を払出すための構造物頂部で測定された温度であるとき、石炭の赤熱開始温度と測定箇所間の温度差とに基づき算出された第1の温度を超えていると上記再循環方法を行うこともできる。
更に、上記再循環制御システムでは、自然発火防止コントローラは、温度データが貯蔵石炭内部の温度であるとき、または石炭の赤熱開始温度と再循環時間の推定上昇温度と
に基づき算出された第2の温度を超えているときに、上記再循環方法を行うこともできる。
更に、上記再循環制御システムでは、更に、石炭貯蔵槽内に設置されたガスセンサと、測定箇所のデータ及びガスセンサのデータから、石炭貯蔵槽内のCOガス濃度データを生成するガス濃度監視装置とを備え、自然発火防止コントローラは、COガス濃度データにより上記再循環方法を行うか否かを決定することができる。
更に、上記再循環制御システムでは、更に、石炭貯蔵時間を計測するタイマと、石炭貯蔵場所のデータ及びタイマのデータから、各貯蔵石炭の貯蔵期間データを生成する貯蔵日数管理装置とを備え、自然発火防止コントローラは、貯蔵期間データが所定期間を超えたとき、上記再循環方法を行う決定をすることができる。
本発明によれば、火力発電所の石炭貯蔵において、自然発火を防止するため、石炭の温度上昇を防ぐことができる石炭サイロを提供することができる。
更に、本発明によれば、火力発電所の石炭貯蔵において、自然発火を防止するため、貯蔵石炭の再循環方法を提供することことができる。
更に、本発明によれば、火力発電所の石炭貯蔵において、自然発火を防止するため、貯蔵石炭の再循環制御システムを提供することができる。
以下、本発明に係る火力発電所の石炭サイロ及び貯蔵石炭の再循環制御システムの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面においては、同じ要素に対しては同じ符号を付して、重複した説明を省略する。
[火力発電所の石炭サイロ]
図1は、火力発電所における石炭サイロ3、ボイラ7、タービン10,11,12及び発電機13,14の関係を示す図である。なお、図を簡単に分かり易くするため、火力発電所を構成するその他の機器は省略してある。
石炭船1で火力発電所まで運ばれた石炭は、連続式揚炭機(アンローダ)2で船1からコンベア4に陸揚げされ、石炭サイロ3に運ばれて、実際に使用されるまでの期間、一時的に貯蔵される。
その後、再びコンベア4により運ばれ、バンカ5から入れられた石炭は高性能微粉炭機6で粉末(微粉炭)にされてボイラ7に投入される。微粉炭はボイラ7内で燃焼して、給水8を高温(例えば、約600度C)の熱エネルギを有する蒸気9に変え、この蒸気が高圧タービン10や中圧タービン11で機械エネルギとなってこれを回転させ、これらに連結された発電機13を駆動して電気エネルギを生成する。また、余熱を低圧タービン12に導き、これに連結された発電機14も駆動している。
図2は、石炭サイロの一例を示す図である。
図に示す石炭サイロ3は、周囲を鋼製シェル構造21で囲まれた型式鋼製角型集合サイロを呼ばれる石炭サイロであり、貯炭エリアとして複数個に仕切られた区画(「槽」と呼ぶ。)を備えている。図に示すように、石炭サイロの槽の配置は、縦方向にA,B,Cの3列で、各列は横方向に1,2,3,4の4つに分かれて、合計12槽からなっている。従って、各槽は、例えばA1,A2,…,B1,C1,D1と夫々呼ばれている。石炭サイロ3の上部には、換気集塵設備29が備えられている。
石炭サイロ3において石炭の平均貯蔵期間を出来るだけ短くするため、原則として、石炭の石炭サイロへの搬入・搬出は「先入れ先出し」により運用される。「先入れ先出し」は、異なる槽間においても、また同じ槽内においても、実行される。従って、コンベア4(図1参照)で運ばれてきた新しい石炭は、石炭サイロ3の各槽の上部に設置された受入コンベア20に導かれ、積付機23により槽内の貯蔵石炭の上に落とされ搬入される。
一方、石炭使用時には、搬入日時の古い槽の石炭から優先的に搬出される。また、同じ槽内では、各槽の下部に貯蔵されている比較的貯蔵期間の長い石炭から、ホッパ25の近くに設置された払出機24によって払出コンベア(地下)22に送られ、搬出される。このようにして、異なる槽間においても、また同じ槽内においても、貯蔵石炭の先入れ先出しが実行されている。
図3は、石炭サイロ3の下部に備えられた石炭搬出用のホッパ25、払出機24及びベルトコンベア26を説明する図である。
元来、ホッパ(hopper)は、燃料などを流し込むじょうご状の器又は箱を意味する用語である。図に示すように、ホッパ25は、各槽の下部に設置された格子状の部材からなる。縦方向に延在するホッパ25-1,25-2,25-3,…の奇数番目のホッパ25-1,25-3,…の断面形状は三角形となっており、隣接する奇数番目のホッパ同士によって底部へ石炭を流し込む逆台形形状の空間を形成している。この空間の中に偶数番目のホッパ25-2,25-4,…が配置され、各ホッパ内にホッパに沿って移動可能な払出機24が設置されている。横方向に延在するホッパ25-a,25-b,25-c,…により、縦方向に延在するホッパ25-1,25-2,25-3,…の強度の確保と位置決めがなされている。
払出機24は、各々が円弧状であって放射状に延びた6本の爪部材を持った回転部材を有し、ホッパ内に貯蔵された石炭39の内部を偶数番目のホッパ25-2,25-4,…の各々に沿って移動しながら石炭39をベルトコンベア26に掻き出すようになっている。ベルトコンベア26の石炭39は、払出コンベア22(図3参照)に受け渡される。
[貯蔵石炭の再循環制御システム]
上述したように、石炭の性質上、石炭を積んだ状態にしておくと、酸化反応が進み発熱を開始する。そのまま放置すると、高温になり、火災に至る場合もある。従って、貯蔵石炭は適切に冷却する必要がある。
石炭の温度が上がった場合の冷却方法としては、基本的には空冷である。例えば、温度の上がった貯蔵石炭をベルトコンベアで移動することで石炭の温度を下げることができる。石炭は、全く空気が存在しないところでは酸化反応をおこさないため発熱しないが、わずかな空気がゆっくりと流れるような状態で一番発熱しやすい。逆に、コンベア等を用いて搬送して大量の空気に触れる状態にすると、石炭の発熱量より放散熱量の方が多くなり、石炭の温度は下がる。従って、サイロに貯蔵されて一旦温度が上がった石炭に対しては、コンベアを用いてサイロ外に払い出して、再びサイロ内に戻す再循環をさせることとする。
図4は、このサイロ内に貯蔵されて温度の上がった石炭を、後で説明する再循環制御システム(図5,6参照)の制御の下、再循環するシステムを説明する図である。
直方体形状の槽が12個用意されている。各槽を形成する隔壁は、各槽の隅部に鉛直方向にある主柱31と、隣接する主柱31間に隔壁を形成する鉛直方向の複数本の中間柱33及び水平方向のリング梁32とを有する。隔壁の下部は、図3で説明したホッパ25及び払出機24が設置されており、石炭39は矢印方向に運ばれ、図2で説明した払出コンベア(地下)22へと移動する。
払出コンベア(地下)22で運ばれた石炭39の内、ボイラ7に送られる石炭は払出コンベア26に受け渡され、バンカ5へ送られる。一方、再循環される石炭は、再循環コンベア27へ受け渡される。種々のコンベアにより移動することで温度の上がった石炭は空冷することができる。温度の下がった石炭39は、複数ある受入コンベア20のいずれかに受け渡される。受入コンベア20と積付機23は、図2で説明した通りである。即ち、受入コンベア20は、石炭の新規搬入の際と同じように、石炭を積付機23に運び、再び元の槽又は空の槽に戻される。このようにして、温度の上がった貯蔵石炭39を空冷し、再び槽内に戻す石炭の再循環が行われる。
図5は、この石炭の再循環をコントロールする再循環制御システムを説明する図である。
再循環制御システムは、石炭の貯蔵期間を計測するタイマ40と、このタイマに接続され石炭の貯蔵期間を管理する貯蔵期間管理装置41とを有している。また、貯蔵石炭の温度を感知する温度センサ42と、この温度センサに接続され貯蔵石炭の温度を監視する温度監視装置43とを有している。更に、各槽に設置されたガスセンサ44と、このガスセンサに接続されガス濃度を監視するガス濃度監視装置45とを有している。
そして、貯蔵期間管理装置41,温度監視装置43及びガス濃度監視装置45に接続され、貯蔵期間管理装置41からの貯蔵期間データ、温度監視装置43からの温度データ及びガス濃度監視装置45からのガス濃度データに基づき、石炭積替え(再循環)の要否を決定する自然発火防止コントローラ50と、自然発火防止コントローラに接続され石炭積み替えを実行する石炭積み替え手段51とを備えている。
タイマ40、貯蔵期間管理装置41、温度センサ42、温度監視装置43、ガスセンサ44、ガス濃度監視装置45に関しては、次に説明する運用基準とともに説明する。
自然発火防止コントローラ50は、通常のコンピュータでよく、少なくとも、演算機能を有するCPU、再循環制御を実行するコンピュータ・プログラムが蓄積されたROM、作業領域であるRAM、貯蔵期間管理装置41,温度監視装置43,ガス濃度監視装置45及び石炭積替え手段51に接続された入出力制御装置、モニタ等(いずれも図示せず。)を有している。石炭積替え手段51は、図4に関連して説明した再循環システムを駆動する装置である。
本実施形態の石炭サイロで貯蔵石炭39の自然発火を防止するための再循環制御方法は、次のように行っている。
(a)原則として、「先入れ先出し」により運用する。即ち、サイロ3内ある古い石炭から先に出して平均貯炭期間を短くしている。図2及び3で説明したように、新規搬入の石炭は、各槽内に、積付機23によって上方から蓄積される。ボイラ7に送られる石炭は、
比較的古い石炭の貯蔵された槽から、また各槽の下方から払出機24により引き出され、コンベア22,26により搬出される。こうして、貯蔵石炭の先入れ先出しを実現している。
(b)優先払出・積替基準として、石炭の温度上昇防止に直接つながる基準を設けている。優先払出・積替基準の1つとして、期間の観点から、石炭搬入後から所定期間(例えば、1.5ヶ月)を超えて貯蔵する場合は、温度上昇防止のため、温度上昇の有無に拘わらず、コンベアによる再循環を行っている。
この所定期間の根拠は、本出願人の電発石川火力の石炭昇温実績値、三隅発電所の昇温率の高い石炭(例えば、ブレアソール炭)の昇温実績値より決定している。
各槽の石炭の搬入日時はタイマ40により計時され、搬入日時データは貯蔵期間管理装置41に送られる。貯蔵期間管理装置41は、この搬入日時に基づき貯蔵期間を算出し、貯蔵期間データを、自然発火防止コントローラ50に送っている。
(c) 優先払出・積替基準の1つとして、温度基準の観点から、ホッパー25の頂部の温度が第1の温度(例えば、45度C)になった時点で積み替えを行う。また、サイロ内部温度が第2の温度(例えば、55度C)になった時点で積み替えを行う。
貯蔵された石炭の性質として、酸化開始温度(例えば、60度C)となると低温酸化域に入り徐々に昇温を始め、蒸発開始温度(例えば、70度C)になると低温酸化域が終わり徐々に石炭水分の蒸発が始まり、赤熱開始温度(例えば、85度C)になると石炭水分が蒸発し放置すると急速に赤熱に至る。
前者のホッパー25は石炭払出部分の格子状の部材であり(図3参照)、この頂部の複数の箇所に設置された(例えば、6点の)温度計で計測した温度である。第1の温度(例えば、45度C)の根拠は、石炭の赤熱開始温度に対して、サイロ3の石炭内部の石炭温度とホッパー頂部の温度の温度差の実績値によって決定している。
後者のサイロ内部温度とはサイロの槽内部で石炭内部に吊した複数個の(例えば、5点の)ワイヤ式温度計で石炭温度を計測した温度である。第2の温度(例えば、55度C)の根拠は、石炭の赤熱開始温度に対して、積み替え(再循環)に要する時間とその積み替え時間における石炭の温度上昇から求めた温度である。
温度センサ42は、ホッパー頂部の温度計及びサイロ内部温度計である。温度センサ42で感知された温度データは、温度監視装置43に送られる。温度感知装置43により、何処の槽のホッパー頂部又はサイロ内部の何番目の温度計かというデータと共に、この温度データを自然発火防止コントローラ50に送っている。
(d) 優先払出・積替基準の1つとして、ガス濃度監視の観点から、CO濃度が酸化開始を示す第1の濃度(例えば、5ppm)の時点で監視を強化し、直ちに積替えを要する第2の濃度(例えば、20ppm)に達したら石炭積み替えを行っている。
第1のCO濃度の根拠は、この濃度がガスセンサ44の検出限界濃度であり、また僅かではあるが石炭の酸化が始まっていることを示しているため、ここで監視強化体制に入る。第2のCO濃度の根拠は、過去の実績データより石炭の酸化が本格的に起こっていることを示すCO濃度であり、ここで直ちに石炭積替えを開始する。
石炭の温度上昇は、最初は貯蔵石炭に均一に起こるのものではなく局部的に発生し、
その後温度上昇は徐々に拡がる。従って、温度監視用の温度計を用いて、各槽当たり数万トンの石炭を10数箇所で測定するだけでは、石炭の温度上昇を確実に検知することができない場合がある。
しかし、石炭は温度が上がっていくと一酸化炭素(CO)を必ず発生する。COは空気より軽いため、石炭サイロの上部に集まってくる。従って、石炭サイロの各槽の上部にガス検知器を設置してCO濃度を監視することで、局部的な石炭の発熱も早期に検知することができる。
CO濃度測定のためのガスセンサは、人体に対する安全確保のための労働安全法の要請により石炭サイロ3の内部に予め設置されており、これを利用している。
ガスセンサ44は、この石炭サイロ内部に予め設置されたガスセンサである。ガスセンサ44で感知されたCOガス濃度は、ガス濃度監視装置45に送られる。ガス濃度監視装置45により、何処の槽の何番目のガスセンサかというデータと共に、このCOガス濃度データを自然発火防止コントローラ50に送っている。
その他の自然発火防止対策として、サイロ内監視があり、毎日定時刻にITV(工業用テレビジョン)(図示せず。)を使用して12個の槽を順次確認し、更に1回/日の頻度で監視員のパトロールを行っている。
なお、この石炭サイロ3は散水・注水設備(図示せず。)を備えているが、原則として散水・注水は行わない。石炭の昇温場所を特定するのが困難な場合が多く、また散水・注水による効果が不明であるからである。更には、散水及び注水により石炭が流動化して崩落の発生が懸念されるからである。
次に、図6に示す再循環制御を実行するコンピュータ・プログラムのフローを説明する。このプログラムは、自然発火防止コントローラ50のCPU(図示せず。)で実行される。
ステップS01で、石炭サイロ3の或る槽内に、貯蔵石炭が有るか否かを判定される。石炭が無い場合には終了する。石炭がある場合、ステップS02に進む。
ステップS02で、貯蔵期間管理装置41から石炭搬入後からの貯蔵日数データが読み込まれる。
ステップS03で、この貯蔵日数が所定期間(例えば、1.5ヶ月)を超えているか否かが判定される。超えていれば、ステップS11に進み、石炭積替え手段51を駆動し、再循環システム(図4参照)を駆動する。超えていなければ、ステップS04に進む。
ステップS04で、温度監視装置43から、何処の槽のホッパー頂部又はサイロ内部の何番目の温度計かというデータと共に温度データを読み込む。
ステップS05で、ホッパー頂部温度thが、第1の温度(例えば、45度C)を超えているか否かが判定される。超えていれば、ステップS11に進み、石炭積替え手段51を駆動し、再循環システム(図4参照)を駆動する。超えていなければ、ステップS06に進む。
ステップS06で、サイロ内部温度tsが、第2の温度(例えば、55度C)を超えているか否かが判定される。超えていれば、ステップS11に進み、石炭積替え手段51を
駆動し、再循環システム(図4参照)を駆動する。超えていなければ、ステップS07に進む。
ステップS07で、ガス濃度監視装置45から、何処の槽の何番目のガスセンサかというデータと共に、COガス濃度データを読み込む。
ステップS08で、COガス濃度がCO濃度が酸化開始を示す第1の濃度(例えば、5ppm)を超えているか否かが判定される。超えていれば、ステップS09に進み、監視が強化される。超えていなければ、ステップS09に進む。
ステップS09で、石炭発熱に対する監視が強化される。例えば、ITV(図示せず。)による槽内の確認作業、監視員のパトロールの頻度を頻繁に行うようにする。
ステップS10で、COガス濃度が直ちに積替えを要する第2の濃度(例えば、20ppm)を超えているか否かが判定される。超えていれば、ステップS11に進み、石炭積替え手段51を駆動し、再循環システム(図4参照)を駆動する。超えていなければ、ステップS01に戻る。
ステップS11では、石炭積替え手段51が駆動され、再循環システム(図4参照)により石炭の積替えが実行される。
ステップS12で、石炭の積替えが終了したか否かが判定される。終了していなければ、ステップS11に進み、石炭の積替え作業が継続される。終了していれば、ステップS01に戻る。
以上の再循環制御を実行するコンピュータ・プログラムのステップを経て、貯蔵石炭の自然発火を防止している。なお、本発明は、この再循環制御を実行するコンピュータ・プログラムを記録した記録媒体をも対象とすることを承知されたい。
[三隅発電所の石炭サイロ]
本発明は、本出願人の運用する三隅発電所(島根県那賀郡三隅町)で利用される石炭サイロの設計・建設から完成されたものである。この石炭サイロでは、限られた敷地内でより多くの石炭を貯蔵するため、世界初の大型鋼製角形集合サイロを採用している。その主要仕様は、容量は33,000トン/槽×12槽で、1槽の大きさは約31m長さ×約31m幅×約46.5m高さあり、石炭移送のための受入設備として走行式積付機(トリッパ)4,600t/h×3台、払出設備として走行回転ホイール式払出機900t/h×9台を有している。ここでは、1回の受入で、石炭船から約80,000トン程度の石炭を受け入れている。
上述した本実施形態は、基本的に、この三隅発電所の石炭サイロで実現又は近い将来実現される。
[その他]
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明にとってこれらは例示であって、本発明の技術的範囲を限定的に解釈するものではない。当業者にとって日常的になされる設計変更等は本発明の技術的範囲に含まれることを承知されたい。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
火力発電所における石炭サイロ、ボイラ、タービン及び発電機の関係を示す図である。 図1に示す石炭サイロの一例を示す図であり、周囲を鋼製シェル構造で囲まれた型式鋼製角型集合サイロを呼ばれる石炭サイロであり、貯炭エリアとして複数個に仕切られた槽を備えている。 図2の石炭サイロの下部に備えられた石炭搬出用のホッパ、払出機及びベルトコンベアを説明する図である。 図2のサイロ内に貯蔵され、温度の上がった石炭を再循環するシステムを説明する図である。 図4の石炭の再循環をコントロールする再循環制御システムを説明する図である。 図5の自然発火防止コントローラで実行される再循環制御のコンピュータ・プログラムのフローを説明する図である。
符号の説明
1:石炭船、 2:連続式揚炭機(アンローダ)、 3:石炭サイロ、 4:コンベア、 5:バンカ、 6:微粉炭機、 7:ボイラ、 8:給水、 9:蒸気、 10:高圧タービン、 11:中圧タービン、 12:低圧タービン、 13:発電機、 14:発電機、 20:受入コンベア、 21:鋼製シェル構造、 22:払出コンベア、 23:積付機、 24:払出機、 25:ホッパ、 26:ベルトコンベア、 27:再循環コンベア、 28:エレベータ、 31:主柱、 32:リング梁、 33:中間柱、
40:タイマ、 41:貯蔵期間管理装置、 42:温度センサ、 43:温度監視装置、 44:ガスセンサ、 45:ガス濃度監視装置、 50:自然発火防止コントローラ、 51:石炭積替え手段

Claims (5)

  1. 石炭貯蔵エリアを隔壁により複数個の区画に分けた槽と、
    前記貯蔵エリアの上方に配置され、石炭を当該貯蔵エリア内に搬入する受入コンベアと、
    前記槽の各々の上方に配置され、前記受入コンベアで搬入されてきた石炭を各々の槽内に落下させる積付機と、
    前記槽の各々の下方に配置され、当該槽内に貯蔵された石炭を当該槽から払い出す払出機と、
    前記払出機で払い出された石炭を、前記貯蔵エリアの外部へ搬出する払出コンベアとを備え、
    前記払出機、比較的古い石炭を貯蔵する槽から順に石炭を払い出し、また、前記槽の上方に配置された積付機によって石炭を搬入し、下方に配置された払出機によって石炭を搬出することにより、貯蔵石炭の先入れ先出しを実行する石炭サイロであって、
    更に、前記払出コンベアから石炭を受け取り、前記貯蔵エリアの外部を経由して、前記受入コンベアに引き渡す再循環コンベアと、
    前記各槽に設置され、それら各槽に貯蔵された石炭の温度をそれぞれ感知する温度センサと、
    前記温度センサに接続され、前記各槽の温度を監視する温度監視装置と、
    前記温度監視装置からの温度データに基づき、前記各槽に貯蔵された石炭に対して再循環の要否を決定する自然発火防止コントローラと、
    前記自然発火防止コントローラが再循環を行うと決定した槽内に貯蔵された石炭の再循環を実行する石炭積み替え手段と、を備え、
    前記石炭積み替え手段は、
    前記払出機を駆動して、前記自然発火防止コントローラが再循環を行うと決定した槽内内に貯蔵してある石炭を当該払出機で払い出して、前記払出コンベアに引き渡し、
    前記払出コンベアを経由して、当該払い出した石炭を前記再循環コンベアに引き渡すとともに、
    前記再循環コンベアを駆動して、当該石炭を前記受入コンベアに引き渡し、
    且つ、前記受入コンベアを駆動して、当該石炭を前記積付機に引き渡し、
    前記積付機を駆動して、当該石炭を前記槽内に積み上げる構成である、
    ことを特徴とする石炭サイロ。
  2. 前記温度センサは、前記各槽の下部に設置された格子状の部材であるホッパーの頂部に複数個設置してあり、
    前記自然発火防止コントローラは、前記槽内に貯蔵された石炭内部の温度が赤熱開始温度となったときに前記温度センサが示す温度を第1の温度として、前記温度監視装置からの温度データが当該第1の温度を超えているときに、再循環を行うと決定することを特徴とする請求項1の石炭サイロ。
  3. 請求項1又は2に記載の石炭サイロにおいて、
    更に、
    石炭貯蔵槽内に設置されたガスセンサと、
    測定箇所のデータ及び前記ガスセンサのデータから、石炭貯蔵槽内のCOガス濃度データを生成するガス濃度監視装置とを備え、
    前記自然発火防止コントローラは、前記COガス濃度データにより再循環の要否を決定する石炭サイロ
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の石炭サイロにおいて、
    更に、
    石炭貯蔵時間を計測するタイマと、
    石炭貯蔵場所のデータ及び前記タイマのデータから、各貯蔵石炭の貯蔵期間データを生成する貯蔵日数管理装置とを備え、
    前記自然発火防止コントローラは、前記貯蔵期間データが所定期間を超えたとき、再循環の実行を決定する、石炭サイロ
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載する石炭サイロを備えた火力発電所。
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