以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態に係る火力発電所の石炭貯蔵設備について説明する。図1は、火力発電所における石炭サイロ4、ボイラ7、タービン10,11,12及び発電機13,14の関係を示す図である。なお、図を簡単に分かりやすくするため、火力発電所におけるその他の機器は省略してある。石炭船1で火力発電所まで運ばれた石炭は、連続式揚炭機(アンローダ)2で石炭船1からサイロ行コンベア4Aに陸揚げされ、石炭サイロ4に運ばれて、実際に使用されるまでの期間、一時的に貯蔵される。
石炭サイロ4での貯蔵後、石炭は、バンカ行コンベア4Bによりバンカ5に搬送される。バンカ5に搬送された石炭は、高性能微粉炭機6で粉末(微粉炭)にされてボイラ7に投入される。微粉炭はボイラ7内で燃焼して、給水8を高温(例えば、約600度)の熱エネルギを有する蒸気9に変える。この蒸気9は、高圧タービン10や中圧タービン11で機械エネルギとなってこれらを回転させ、これらに連結された発電機13を駆動して電気エネルギを生成する。また、余熱を低圧タービン12に導き、これに連結された発電機14も駆動する。
図2は、石炭サイロ4及びその周囲の石炭搬送装置を含む石炭貯蔵設備100の一例を示す図である。石炭サイロ4は、その周囲を外壁101で囲まれている。
図2に示すように、石炭サイロ4の貯炭エリアは、横方向(図2におけるY方向)にA,B,Cの3列に区分けされ(A,B,Cの符号は外壁101の屋根に図示)、各列は更に、縦方向(図2におけるX方向)にa,b,c,dの4つに区分けされ(a,b,c,dの符号は外壁101の側面下部に図示)、合計12個の貯炭槽102を備えている。なお、貯炭槽102の数は、これに限定されず、それ以上でもそれ以下でもよい。
各貯炭槽102を形成する隔壁は、鉛直方向(Z方向)に延びる主柱104と、隣接する主柱104間において複数本鉛直方向(Z方向)に延びる主柱104より細い中間柱105及び水平方向のリング梁106とを有する。
石炭貯蔵設備100は、サイロ行コンベア4Aで運ばれてきた石炭を受け入れて、貯炭槽102に石炭を搬送する受入れコンベア(石炭受入れ部)20(20A,20B,20C)を備える。受入れコンベア20AはA列の貯炭槽102に石炭を搬送し、受入れコンベア20BはB列の貯炭槽102に石炭を搬送し、受入れコンベア20CはC列の貯炭槽102に石炭を搬送する。また、受入れコンベア20は、それぞれ、貯炭槽102の上部に設けられた積付機(石炭搬入装置)108(108A,108B,108C)に連結されている。積付機108Aは受入れコンベア20Aに連結され、積付機108Bは受入れコンベア20Bに連結され、積付機108Cは受入れコンベア20Cに連結されている。積付機108は、各貯炭槽102上を縦方向(図中X方向)に移動可能で、いずれかの貯炭槽102内部に石炭を落下可能となっている。
図3は、貯炭槽102の下部に備えられた石炭搬出用のホッパ110、払出機130(払出装置)及びホッパ下コンベア(石炭搬送路)140を説明する図である。ホッパ(hopper)は、一般に石炭等を流下させる漏斗、つまり、じょうご状の装置を意味する。本実施形態でホッパ110は、各貯炭槽102の下部に設置されている。ホッパ110は、格子状に構成されたホッパ壁を備える。縦方向(図中X方向)に延在するホッパ壁111,112,113,114…のうち、奇数番目のホッパ壁111,113,…の側壁は斜めになっている。そして、貯炭槽102の下部は、隣接する奇数番目のホッパ同士によって底部へ石炭を流し込む逆台形形状の空間を有している。この空間の中に偶数番目のホッパ壁112,114…が配置され、偶数番目のホッパ壁の下側には、ホッパの底部との間に隙間133が形成され、その隙間133に、ホッパ壁112,114…に沿って移動可能な払出機130が設置されている。また、横方向にもホッパ壁121,122,123…が延び、これらの横方向ホッパ壁121,122,123…によって縦方向ホッパ壁111,112,113,114…の強度の確保と位置決めがなされている。
払出機130は、各々が円弧状であって放射状に延びた6本の爪部材を持った回転部材131を有する。回転部材131は、上述のように、偶数番目のホッパ壁112,114…の隙間133の内部において、爪部材が隙間133に配置されるようにしてホッパ壁112,114…に沿って移動可能に設けられている。また、ホッパ110における偶数番目のホッパ壁112,114…の底部には、払出機130の移動方向に沿ってスリット132が設けられている。
スリット132の下部には、ホッパ下コンベア140が設置されている。払出機130は、回転部材131を回転させながら、ホッパ内に貯蔵された石炭の内部を偶数番目のホッパ壁112,114…の各々に沿って移動する。これにより、石炭が隙間133から払い出され、スリット132を通過してホッパ下コンベア140に払い出されるようになっている。
ホッパ下コンベア140の搬送終点の下部には、一次払出コンベア(石炭搬出路)160が横方向(図2におけるY方向)に配置され、ホッパ下コンベア140に払い出された石炭は、一次払出コンベア160に受け渡される。一次払出コンベア160の搬送終点には、一次払出コンベア160に対して垂直に設けられた二次払出コンベア(石炭搬出路)161が配置されている。一次払出コンベア160によって搬出された石炭は、二次払出コンベア161でその移動方向を90度変換され、図2においてXマイナス方向に搬送される。
二次払出コンベア161は、経路の途中から水平に対して所定角度傾いている。二次払出コンベア161におけるその所定角度傾いた部分の一部は、石炭貯蔵設備100における貯炭槽102の建物の外部に配置され、外部の天候等の影響を受けにくいように搬送路カバー164で覆われている。
図4は、二次払出コンベア161における建物の外部に配置された部分の拡大図である。二次払出コンベア161の搬送路カバー164の上部(Zプラス側の部分)には、2つの開口部165が設けられており、その開口部165には、それぞれ換気ユニット170が配置されている。
図5(a)は換気ユニット170の側面図であり、図5(b)は、換気ユニット170の側断面図である。換気ユニット170は、水平(XY平面に沿った)断面矩形の下筒部材171と、その下筒部材171の上端から連続して設けられた水平(XY平面に沿った)断面円形の上筒部材172とを有する。上筒部材172は、下筒部材171の上端との連続部分から、上方に向かって径が縮小している。
上筒部材172の上方には、上筒部材172の上部開口部を覆うようにして天井フード(笠状部材)173が配置されている。天井フード173は、上筒部材172の上方に配置された天井部173aと、その天井部173aの周囲から連続して上筒部材172の外周面の上部を覆うように延びる側部173bを有する。この天井フード173は上筒部材172に支持されているが、上筒部材172の内部を上昇した空気が図5(b)において矢印Aで示すように天井フード173の内面に沿って方向転換し、天井フード173の側部173bの内面と上筒部材172の外周面との間に形成された排気口174を通って下向き(Zマイナス向き)に外部に流れ出ることができるように、上筒部材172との間に空気流路が確保された状態で取り付けられている。
下筒部材171の内部には、モータ取付板180が略水平(XY平面に沿って)に設けられ、そのモータ取付板180の中央部には駆動モータ181が配置されている。駆動モータ181は図示しない電源部に接続されている。駆動モータ181の回転軸には本実施形態では3枚の羽根を有するファン182が取り付けられている。
更に、下筒部材171と上筒部材172との境界部には、側部フード(風除け部)190が取り付けられている。側部フード190は、その境界部から水平(XY平面に沿って)に外方に延びる矩形の底部191と、底部191の4辺の縁部からそれぞれ、鉛直方向に対して傾いた状態で上方に向かって上筒部材172から離れる方向に延びる4枚の側壁部とを備える。底部191は、下筒部材171から延びる支持部175によって支えられている。
側部フード190の側壁部は、傾いた二次払出コンベア161の下側に面する前面側壁部192と、前面側壁部192と対向するとともに二次払出コンベア161の上側に面する後面側壁部193と、前面側壁部192と後面側壁部193とを連結する2枚の側面側壁部194とを有する。そして、前面側壁部192の上方に延びる長さHは、後面側壁部193の上方に延びる長さhよりも長い。
図2に戻り、二次払出コンベア161の搬送終点には、搬送路切替部162が設けられている。搬送路切替部162は、後述する制御装置の指示により、二次払出コンベア161から運ばれた石炭を、石炭貯蔵設備100の外部、即ちボイラ7で燃焼させるためにバンカ5へ送り出すバンカ行コンベア(石炭供給路)4Bに乗せるか、又は、再度、貯炭槽102に貯蔵させるため再循環コンベア163(石炭返送路)に載せるかの切り替えを行う。
再循環コンベア163は、搬送路切替部162から延び、石炭を貯炭槽102に積み替えするように、受入れコンベア20に連結されている。
次に、石炭貯蔵設備100の搬送制御システムに200ついて説明する。図6は、その搬送制御システム200を示すブロック図である。搬送制御システム200は、石炭の状態を監視する監視装置210と、石炭を移動させる石炭搬送装置220と、それらの監視装置210及び石炭搬送装置220を制御する制御装置230とを備える。
監視装置210は、タイマ211と、このタイマ211に接続され、石炭の搬入日時を記憶する記憶部212とを有している。各貯炭槽102の石炭が搬入(積み替えも含む)されると、タイマ211による計時が開始され、搬入日時データは記憶部212に送られる。記憶部212は、貯蔵日時データを、制御装置230に送る。
また監視装置210は、貯蔵石炭の温度を感知する温度センサ213と、この温度センサ213に接続され、貯蔵石炭の温度を監視する温度監視部214とを有している。温度センサ213は、それぞれの貯炭槽102ごとに設置されている。温度センサ213で感知された温度データは、温度監視部214に送信される。温度監視部214は、どの貯炭槽102の、どの温度センサ213かというデータとともに、この温度データを制御装置230に送る。
更に、監視装置210は、各貯炭槽102に設置されたガスセンサ215と、このガスセンサ215に接続され、ガス濃度を監視するガス濃度監視部216とを有している。ガスセンサ215は、CO濃度を測定可能で、それぞれの貯炭槽102ごとに設置されている(いずれも図示せず)。
ガスセンサ215で感知されたCOガス濃度データは、ガス濃度監視部216に送信される。ガス濃度監視部216は、どの貯炭槽102のどのガスセンサ215かというデータとともに、このCOガス濃度データを制御装置230に送る。
制御装置230は、記憶部212からの貯蔵日時データ、温度監視部214からの温度データ、及びガス濃度監視部216からのガス濃度データに基づき、石炭を外部に送り出すか、積み替え(再循環)を行うかを制御する。
制御装置230は、通常のコンピュータでよく、少なくとも、演算機能を有するCPUと、再循環制御を実行するコンピュータ・プログラムが蓄積されたROMと、作業領域であるRAM、記憶部212,温度監視部214,ガス濃度監視部216及び石炭搬送装置220に接続された入出力制御装置と、モニタ(いずれも図示せず)と、を有している。
石炭搬送装置220は、上述の制御装置230の制御に基づいて、石炭を外部に送り出し、又は、再循環させる装置である。石炭搬送装置220は、上述の払出機130、ホッパ下コンベア140、一次払出コンベア160、二次払出コンベア161、換気ユニット170、搬送路切替部162、バンカ行コンベア4B、再循環コンベア163、受入れコンベア20、積付機108を含む搬送部全体をいう。
次に、本実施形態の石炭貯蔵設備100で実行される動作について説明する。
(先入れ先出し)
まず、上述の石炭貯蔵設備100における、基本的動作である先入れ先出し動作について説明する。貯炭槽102において石炭の平均貯蔵期間を出来るだけ短くするため、原則として、石炭の貯炭槽102への搬入及び外部への搬出は「先入れ先出し」により運用される。
サイロ行コンベア4Aで運ばれてきた新しい石炭は、石炭サイロ4の貯炭槽102に受入れコンベア20によって導かれ、積付機108により槽内に落とされ、貯炭槽102に貯蔵される。
貯炭槽102で貯蔵が開始されると、タイマ211の時刻を元に、貯蔵が開始された石炭の搬入日時が記憶部212によって管理される。
図7は、制御装置230の外部供給制御を示すフローチャートである。
ステップ101(以下、ステップをSで表す)において制御装置230は、上述した貯蔵期間の長い貯炭槽102におけるホッパ110の下部に設置された払出機130を作動させる。これによって、払出機130の回転部材131が回転し、各貯炭槽102の下に形成されたスリット132から石炭は、ホッパ下コンベア140に払い出される(図3参照)。
S102において、ホッパ下コンベア140を作動させ、ホッパ下コンベア140上に落下した石炭を搬送する。S103において、一次払出コンベア160、二次払出コンベア161及び換気ユニット170を作動させる。ホッパ下コンベア140で搬送された石炭は一次払出コンベア160に移送され、次いで二次払出コンベア161に移送される。
二次払出コンベア161において、換気ユニット170の駆動モータ181が駆動されて、ファン182が回転する。ファン182が回転すると、図5に示すように、搬送路カバー164内部の空気は下筒部材171、上筒部材172の内部を上昇する。そして、上筒部材172の内部を上昇した空気は、天井フード173の内面に衝突し、天井フード173の側面に沿って、天井フード173の内面と上筒部材172の外側面172aとの間の排気口174を通って下向きに流れ、側部フード190と天井フード173の縁部との間を通って外に流れ出る。
例えば外部が強風の場合、建物の壁部においては、その壁部に沿う風の流れが生じやすく、搬送路カバー164に沿って下から風が吹いている場合がある。このとき、搬送路カバー164に沿って吹く風は、換気ユニット170の下筒部材171の側面に衝突し、その側面に沿って上に流れる。そして更に側部フード190の側面に沿って流れて図5(b)の矢印Bに示すように換気ユニット170から離れるように流れる。このように流れることにより、外部の空気が、天井フード173の内面と上筒部材172の外側面との間の排気口174から流入することがなく、したがって搬送路カバー164内部に流れ込まず、搬送路カバー164の内部の空気の十分な換気が確保される。
図7に戻り、S104において制御装置230は、搬送路切替部162において二次払出コンベア161とバンカ行コンベア4Bとを連結し、S105において、バンカ行コンベア4Bを作動する。これにより、二次払出コンベア161により運ばれた石炭は、外部へ搬出、即ちバンカ行コンベア4Bに乗せられてバンカ5へ運ばれて、ボイラ7で燃焼される。
このように、本実施形態の、先入れ先出し方式によると、貯蔵期間の長い貯炭槽102から、また、同一の貯炭槽102においても先に貯蔵された石炭から外部へ搬出される。
(積み替え)
次に、石炭積み替え動作について説明する。図8は、石炭の石炭積替制御を含む、全体的な制御を示すフローチャートである。図9は石炭積替(再循環)制御を示すフローチャートである。
まず、石炭は、受入れコンベア20によって運搬され、積付機108により貯炭槽102内に落下されて貯蔵される。貯炭槽102で貯蔵が開始されると、タイマ211の計時が開始される。タイマ211の計時に基づき石炭の貯蔵日時が記憶部212によって記憶される。以上は上述の先入れ先出しの場合と同様である。
図8に示すように、制御装置230は、まず、S201において、記憶部212から石炭搬入後からの貯蔵日時データを読み込む。
S202で、この貯蔵期間が第1の期間(本実施形態では1.5ヶ月)を超えているか否かを判定する。超えていなければ(S202,No)、S203に進む。超えていれば(S202,Yes)、後述のS210に進み、制御装置230は石炭貯蔵設備100が石炭の積み替えを行うように図9で示す積替制御を行う。
図9の積替制御では制御装置230の外部供給制御と同様に、S301において貯炭槽102におけるホッパ25の下部に設置された払出機130を作動させる。これによって、払出機130の回転部材131が回転し、各貯炭槽102の下に形成されたスリット132から石炭は、ホッパ下コンベア140に払い出される。S302においてホッパ下コンベア140を作動し、ホッパ下コンベア140上の石炭を搬送する。
S303において一次払出コンベア160、二次払出コンベア161及び換気ユニット170を作動させる。ホッパ下コンベア140で搬送され、石炭は一次払出コンベア160に移送され、次いで二次払出コンベア161で移送される。
そして、先入れ先出しの場合と同様に、二次払出コンベア161において、換気ユニット170の駆動モータ181が駆動されて、ファン182が回転する。ファン182が回転すると、図5に示すように、搬送路カバー164内部の空気は下筒部材171、上筒部材172の内部を上昇する。そして、上筒部材172の内部を上昇した空気は、天井フード173の内面に衝突し、天井フード173の側面に沿って、天井フード173の内面と上筒部材172の外側面172aとの間の排気口174を通って下向きに流れ、側部フード190と天井フード173の縁部との間を通って外に流れ出る。
例えば外部が強風で、搬送路カバー164に沿って下から風が吹いている場合がある。このとき、搬送路カバー164に沿って吹く風は、換気ユニット170の下筒部材171の側面に衝突し、その側面に沿って上に流れる。そして更に側部フード190の側面に沿って流れて図5(b)の矢印Bに示すように換気ユニット170から離れるように流れる。このように流れることにより、外部の空気が、天井フード173の内面と上筒部材172の外側面172aとの間の排気口174から流入することがなく、したがって搬送路カバー164内部に流れ込まず、搬送路カバー164の内部の空気の十分な換気が確保される。
S304おいて制御装置230は、搬送路切替部162において二次払出コンベア161と再循環コンベア163とを連結させる。これにより、石炭は再循環コンベア163によって搬送されて受入れコンベア20に運ばれる。
S305において制御装置230は、再循環コンベア163及び受入れコンベア20を作動させる。サイロ行コンベア4Aによって運ばれた新規搬入の石炭と同じように、再循環コンベア163によって運ばれた石炭も積付機108に運ばれ、再び元の貯炭槽102に戻される。なお、元の貯炭槽102に戻す場合、貯蔵されている石炭の管理の効率化を図れるという利点がある。ただし、これに限定されず、他の貯炭槽102に戻すこともできる。
「先入れ先出し」の順番がこなくとも、貯蔵期間が一定の期間を超えている場合に、石炭積み替えを行うのは以下の理由による。
本実施形態では、石炭利用において原則として、上述の「先入れ先出し」が採用され、貯炭槽102内にある古い石炭から先に出して平均貯炭期間を短くしている。しかし、石炭貯蔵量が多くなると、貯蔵期間が長くなり、長期貯蔵すると、石炭の温度が上昇する可能性がある。このため、石炭搬入後から一定の期間である第1の期間(例えば、1.5ヶ月)を超えて貯蔵する場合は、まだ使用の順番が来ない場合であっても、一旦コンベア上を搬送させ、空冷するのが好ましいからである。
このように温度の上がった貯蔵石炭をベルトコンベアで移動することで石炭の温度を下げることができる。石炭は、全く空気が存在しないところでは酸化反応をおこさないため発熱しないが、わずかな空気がゆっくりと流れるような状態で一番発熱しやすい。しかし、コンベア等を用いて搬送して大量の空気に触れる状態にすると、石炭の発熱量より放散熱量の方が多くなり、石炭の温度は下がる。したがって、サイロに貯蔵されて一旦温度が上がった石炭は、コンベアを用いてサイロ外に払い出し、再びサイロ内に戻す再循環をさせることにより空冷が行われる。
なお、本実施形態で第1の期間として採用する1.5ヶ月は、本出願人の電発石川火力の石炭昇温実績値、三隅発電所の昇温率の高い石炭(例えば、ブレアソール炭)の昇温実績値より求めた値である。
図8に戻り、S202において貯蔵期間が1.5ヶ月を超えていなければ、S203に進む。S203で、制御装置230は、温度監視部214から、どの貯炭槽102のどの温度センサ213かというデータとともに温度データを読み込む。
S204で、ホッパ頂部温度thが、第1の温度(例えば、45度)を超えているか否かを判定する。超えていれば、S210に進む。超えていなければ、S205に進む。S205で、サイロ内部温度tsが、第2の温度(例えば、55度)を超えているか否かを判定する。超えていれば、S210に進む。超えていなければ、S206に進む。
このように、ホッパ頂部温度th及びサイロ内部温度tsを測定するのは以下の理由による。
上述のように、長期貯蔵すると、石炭の温度が上昇する可能性があるため、S202では第1の期間を超えたかどうかを判断している。しかし、第1の期間を超えない場合であっても、石炭の温度が上昇する可能性がある。このため、ホッパ頂部温度thを監視し、その温度が45度(摂氏、以下同じ)になった時点でS210へ進み、積み替えを行う。また、ホッパ頂部温度thが45度にならなくとも、サイロ内部温度tsが55度になった時点でS210へ進み、積み替えを行う。
ホッパ頂部温度thにおける第1の温度を45度、サイロ内部温度tsにおける第2の温度を55度としたのは以下の理由による。
貯蔵された石炭の性質として、酸化開始温度(60度程度)となると低温酸化域に入り徐々に昇温を始め、蒸発開始温度(70度程度)になると低温酸化域が終わり徐々に石炭水分の蒸発が始まり、赤熱開始温度(85度程度)になると石炭水分が蒸発し放置すると急速に赤熱に至る。
ホッパ頂部温度thは、この頂部の複数の箇所に設置された(例えば、6点の)温度センサ213で計測した温度である。貯炭槽102に貯蔵された石炭におけるホッパ頂部温度は、貯炭槽102の内部温度よりも一般的に低い。このため、貯炭槽102の内部温度が、赤熱開始温度、蒸発開始温度、赤熱開始温度になる前の、警戒温度としてホッパ頂部温度thを45度としている。
サイロ内部温度tsとはサイロの槽内部で石炭内部に吊した複数個の(例えば、5点の)ワイヤ式温度計で石炭温度を計測した温度である。第2の温度である55度は、石炭の赤熱開始温度に対して、積み替え(再循環)に要する時間とその積み替え時間における石炭の温度上昇から求めた温度である。
図8に戻り、S205においてサイロ内部温度tsが55度を超えていなければ、S206に進む。S206で、ガス濃度監視部216から、どの貯炭槽102のどのガスセンサかというデータとともに、COガス濃度データを読み込む。
S207で、COガス濃度が酸化開始を示す第1の濃度(本実施形態では5ppm)を超えているか否かが判定される。超えていれば、S208に進み、監視が強化され、更にS209に進む。超えていなければ、直接S209に進む。
S208では、石炭発熱に対する監視が強化される。監視とは、サイロ内監視であり、毎日定日時にITV(工業用テレビジョン)(図示せず)を使用して12個の槽を順次確認し、更に1回/日の頻度で行う監視員のパトロールである。S209では、このITVによる槽内の確認作業、監視員のパトロールの頻度を更に頻繁に行うようにする。
S209で、COガス濃度が直ちに積み替えを要する第2の濃度(本実施形態では20ppm)を超えているか否かが判定される。超えていれば、S2101に進み、超えていなければ、S201に戻る。
第1の濃度5ppmは、この濃度がガスセンサ215の検出限界濃度であり、また僅かではあるが石炭の酸化が始まっていることを示す濃度である。5ppmが検出されたら、ここで監視強化体制に入る。第2のCO濃度の20ppmは、過去の実績データより石炭の酸化が本格的に起こっていることを示すCO濃度である。20ppmが検出されたら、直ちに石炭積み替えを開始する。
石炭の温度上昇は、最初は貯蔵石炭に均一に起こるのものではなく局部的に発生し、その後温度上昇は徐々に拡がる。したがって、温度監視用の温度計を用いて、各槽当たり数万トンの石炭を10数箇所で測定するだけでは、石炭の温度上昇を確実に検知することができない場合がある。
しかし、石炭は温度が上がっていくと一酸化炭素(CO)を必ず発生する。COは空気より軽いため、石炭サイロの上部に集まってくる。したがって、貯炭槽102の上部にガスセンサ215を設置してCO濃度を監視することで、局部的な石炭の発熱も早期に検知することができる。
CO濃度測定のためのガスセンサ215は、人体に対する安全確保のための労働安全法の要請により石炭サイロ4の内部に予め設置されたものであり、これを利用している。
S211で、石炭の積み替えが終了したか否かが判定される。終了していなければ、S210に戻り、石炭の積み替え作業が継続される。終了していれば、S201に戻る。
以上、本実施形態の石炭貯蔵設備100は、石炭を搬送する二次払出コンベア161と、その二次払出コンベア161を覆うとともに、周面に開口部165が設けられた搬送路カバー164と、開口部165に取り付けられた換気ユニット170と、を具備し、換気ユニット170は、開口部165から上方に延びる筒部材171,172と、筒部材171,172の内部に配置されるとともに駆動部の駆動力により回転されるファン182と、筒部材171,172の上方に配置された天井部173a、及び該天井部173aの周囲から連続して筒部材171,172の外周面の上部を覆うように延びる側部173bを有し、側部173bと筒部材171,172の外周面との間に排気口174が形成される天井フード173と、排気口174と対向して設けられ、排気口174の下方に配置された底部191、及び該底部191から連続して天井フード173の側部173b側に延びる前面側壁部192を有する側部フード190と、を備える。
二次払出コンベア161を搬送される石炭は、温度が上昇していたり、COを発生している場合がある。このため、二次払出コンベア161を覆う搬送路カバー164には換気ユニット170が設けられ、搬送路カバー164内の空気を外部に排気している。この換気ユニット170によって、二次払出コンベア161内部の空気が換気され、石炭の温度の低下が促進され、また搬送路カバー164内のCO濃度が低減される。ここで、搬送路カバー164が設けられていない場合、搬送路カバー164の外部が強風の場合等においては、換気ユニット170を風が逆流して搬送路カバー164内に空気が流れ込み、搬送路カバー164内の空気がうまく排気されない可能性がある。しかし、本発明によると、換気ユニット170の排気口174が、側部フード190で覆われているため、排気口174を通って換気ユニット170内部へ入り込む風の逆流が防止される。これにより、搬送路カバー164の空気の外部へ排気が良好に行われる。
また、本実施形態の石炭貯蔵設備100において、底部191は筒部材171,172の外周面から外方に向かって水平に延び、側壁部192は、底部191の外縁部から鉛直方向に対して傾いた状態で上方に向かって筒部材171,172から離れる方向に延びている。
搬送路カバー164に沿って吹く風は、換気ユニット170の筒部材171,172に衝突すると、筒部材171,172の外周面に沿って下から上に吹き上げる。この際、側部フード190の側壁部192が鉛直方向に対して傾いた状態で上方に向かって筒部材171,172から離れる方向に延びている場合、下から上に吹き上げられた風は筒部材171,172から離れる方向に導かれる。
更に、本実施形態において二次払出コンベア161は、水平方向に対して傾いて配置され、側壁部192の一部は二次払出コンベア161の下側に面し、側壁部192の他部は二次払出コンベア161の上側に面し、側壁部192の一部の上方に延びる長さは、側壁部192の他部の上方に延びる長さよりも長い。
二次払出コンベア161が水平方向に対して傾いて配置されると、風は、搬送路カバー164に沿って下から上に吹きやすく、換気ユニット170における二次払出コンベア161の下側に面している側にその風が衝突する。側壁部192における二次払出コンベア161の下側に面している部分の上方に延びる長さを長くすると、下から吹き上げる風の排気口174への流入を効果的に阻止できる。
以上、説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。