JP4868231B2 - 接触抵抗の小さい多孔質チタンおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
(イ)多孔質チタンの骨格外表面にRuまたはPdを含むコロイドを塗布すると、RuまたはPdを含むコロイドは多孔質チタンの骨格外表面に塗布されて空孔開口部の奥深く塗布されることはないので高価なRuまたはPdを含むコロイドの使用量を少なくすることができ、塗布したコロイドを乾燥させると、多孔質チタンの骨格の少なくとも骨格外表面に粒径:1〜5000nm(好ましくは5〜1000nm)のRuまたはPdの粒子が島状に均一分散して付着する、
(ロ)このコロイドを塗布したのち乾燥してRuまたはPdの粒子を島状に均一分散して付着させた多孔質チタンを真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱すると、先ず、少なくとも骨格外表面に形成されているTi酸化膜に含まれる酸素が下地のチタンに拡散固溶させられて多孔質チタンの骨格外表面がチタン金属となり、さらに同じ条件で加熱を続けると少なくとも骨格外表面に島状に均一分散して付着しているRuまたはPdからなる粒子が骨格外表面のチタン金属と拡散接合して骨格外表面に強固に固着する、
(ハ)このRuまたはPdからなる粒子を少なくとも骨格外表面のチタン金属に拡散接合させた状態でさらに大気雰囲気中で保持または保持したのちさらに加熱すると、少なくとも骨格外表面のチタン金属に拡散接合したRuまたはPdからなる粒子の存在しない隙間にはTi酸化層が形成され、このTi酸化層はRuもしくはPdからなる粒子または表面酸化したRuもしくはPdからなる粒子を包囲して形成されるために、前記RuもしくはPdからなる粒子または表面酸化したRuもしくはPdからなる粒子を骨格外表面に対して一層強固に固着するようになり、振動などが付与されても接触抵抗が低下することがない、などの知見を得たのである。
(1)表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなる多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にRu粒子が分散して固着しており、この少なくとも骨格外表面に固着したRu粒子間の隙間にはTi酸化膜が形成されている接触抵抗の小さい多孔質チタン、
(2)前記Ru粒子は多孔質チタンの骨格外表面に拡散接合して固着している前記(1)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン、
(3)前記Ru粒子は表面酸化している前記(1)または(2)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン、
(4)表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなりかつ骨格表面にTi酸化層が形成されている多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にRuのコロイドを塗布したのち乾燥してRu粒子を少なくとも骨格外表面に分散して付着させ、この少なくとも骨格外表面にRu粒子が分散して付着している多孔質チタンを真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱することにより少なくとも骨格外表面をチタン金属面とし、さらに真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱を続けることにより少なくとも骨格外表面に付着しているRu粒子を前記チタン金属面に拡散接合させ、次いでRu粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中、室温で保持することにより少なくとも骨格外表面に固着しているRu粒子間の隙間にTi酸化膜を形成させる接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法、
(5)前記(4)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法において、前記Ru粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中で加熱することにより、少なくとも骨格外表面に固着しているRu粒子の表面を酸化させて表面酸化したRu粒子を形成させると共にRu粒子とRu粒子の間の隙間にTi酸化膜を形成させる前記(3)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法、
(6)表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなる多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にPd粒子が分散して固着しており、この少なくとも骨格外表面に固着したPd粒子間の隙間にはTi酸化膜が形成されている接触抵抗の小さい多孔質チタン、
(7)前記Pd粒子は多孔質チタンの骨格外表面に拡散接合して固着している前記(6)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン、
(8)前記Pd粒子は表面酸化している前記(6)または(7)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン、
(9)表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなりかつ骨格表面にTi酸化層が形成されている多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にPdのコロイドを塗布したのち乾燥してPd粒子を少なくとも骨格外表面に分散して付着させ、この少なくとも骨格外表面にPd粒子が分散して付着している多孔質チタンを真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱することにより少なくとも骨格外表面をチタン金属面とし、さらに真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱を続けることにより少なくとも骨格外表面に付着しているPd粒子を前記チタン金属面に拡散接合させ、次いでPd粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中、室温で保持することにより少なくとも骨格外表面に固着しているPd粒子間の隙間にTi酸化膜を形成させる接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法、
(10)前記(9)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法において、前記Pd粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中で加熱することにより、少なくとも骨格外表面に固着しているPd粒子の表面を酸化させて表面酸化したPd粒子を形成させると共に表面酸化したPd粒子と表面酸化したPd粒子間の隙間にTi酸化膜を形成させる前記(8)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法、に特長を有するものである。
(11)前記(1)、(2)、(3)、(6)、(7)または(8)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンからなる固体高分子形燃料電池の空気極材、
(12)前記(1)、(2)、(3)、(6)、(7)または(8)記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンからなる固体高分子形燃料電池の燃料極材、に特長を有するものである。
多孔質チタンの断面が図5に示されている。そして図5のA部分を拡大した図面が図6に示されている。図6に示されるように、この多孔質チタンは、表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔1を有し、少なくとも骨格2の骨格外表面4にはTi酸化膜3が形成されている。
図2〜図4は、図1に示されるこの発明の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法を説明するための断面説明図である。
この大気中に放置して作製した接触抵抗の小さい多孔質チタンは、Ti酸化膜3の厚さが十分でないことがある。その場合は大気中に放置して作製した接触抵抗の小さい多孔質チタンを大気中で加熱することによりTi酸化膜3の厚さを増加させることができる。この大気中での加熱によりRuまたはPdからなる粒子3の表面が酸化されて骨格外表面4に強固に固着したRuまたはPdからなる粒子5の表面に確認できる程度の厚さのRuまたはPdの酸化膜(図示せず)が形成される。このRuまたはPdの酸化膜は導電性を有するので接触抵抗の著しい低下をもたらすことはない。
原料粉末:20質量%、水溶性樹脂結合剤:10質量%、可塑剤:1質量%、起泡剤:1質量%、発泡剤:0.6質量%、残部:水となるように配合し、15分間混練し、発泡スラリーを作製した。得られた発泡スラリーをブレードギャップ:0.5mmでドクターブレード法によりPETフィルム上に成形し、高温高湿度槽に供給し、そこで温度:35℃、湿度:90%、25分間保持の条件で発泡させた後、温度:80℃、20分間保持の条件の温風乾燥を行い、スポンジ状グリーン成形体を作製した。この成形体をPETフィルムから剥がし、アルミナ板上に載せ、Ar雰囲気中、温度:550℃、180分保持の条件で脱脂し、続いて真空焼結炉で雰囲気:5×10−3Pa、温度:1200℃、1時間保持の条件で焼結することにより気孔率90%を有し、厚さ:1.0mmを有する多孔質発泡チタン板を作製した。得られた多孔質発泡チタン板を縦:30mm、横:30mmの寸法となるように切断して多孔質発泡チタン素材を作製し用意した。
市販のRuCl3・nH2O:5gをエタノール溶媒100mlに溶解し、同時に保護材としてポリビニルピロリドン(以下、PVPと記す)を添加し、良く撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウムを1g加えてRuを還元することによりRu粒子を作製した。このRu粒子を一度遠心分離機で溶媒からRu粒子を取り出した後、再度、エタノール:100mlに分散させることによりRuコロイド溶液を作製した。
得られたRuコロイド溶液に、先に用意した多孔質発泡チタン素材を浸漬したのち乾燥し、この浸漬と乾燥を繰り返すことにより多孔質発泡チタン素材の表面に、表面の1%を覆うようRu粒子を分散付着させた。この多孔質発泡チタン素材の表面にRu粒子を分散付着させた状態で、真空雰囲気中、温度:500℃、1時間保持の条件で加熱したのち大気中に放置することによりRu粒子とRu粒子の隙間をTi酸化膜で埋めた本発明多孔質チタン1を作製した。
実施例1で作製した本発明多孔質チタン1をさらに大気中、温度:400℃、30分間保持の条件で加熱することにより本発明多孔質チタン2を作製した。本発明多孔質チタン2は本発明多孔質チタン1に比べてTi酸化膜の厚さが厚く、さらにRu粒子の表面にRu酸化膜が形成されていることが目視により確認できた。このRu酸化膜はRu金属に比べて幾分導電性を低下させるものの実用上特に問題となるものではない。
先に用意した多孔質発泡チタン素材の表面に通常の条件でRuメッキを施すことにより従来多孔質チタン1を作製した。
さらに、本発明多孔質チタン1〜2および従来多孔質チタン1をそれぞれ縦:50mm、横:50mm、厚さ:10mmの寸法を有する銅板2枚で挟み、ばねを介して固定したのち、本発明多孔質チタン1〜2および従来多孔質チタン1と銅板との面圧が1MPaになるようにばねの撓みを調整し荷重がかかった状態のまま振動試験機上に設置し、周波数:67Hz、振動加速度:70m/秒2で2時間の振動試験を行った。振動試験後、その場で荷重がかかった状態で銅板間の抵抗を測定し、その値を振動試験後の接触抵抗として表1に示した。
市販のPdCl2:5gをエタノール溶媒100mlに溶解し、同時に保護材としてPVPを添加し、良く撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウムを1g加えてPdを還元することによりPd粒子を作製した。このPd粒子を一度遠心分離機で溶媒からPd粒子を取り出した後、再度、エタノール:100mlに分散させることによりPdコロイド溶液を作製した。
得られたPdコロイド溶液に、先に用意した多孔質発泡チタン素材を浸漬したのち乾燥し、この浸漬と乾燥を繰り返すことにより多孔質発泡チタン素材の表面に、表面の1%を覆うようPd粒子を分散付着させた。この多孔質発泡チタン素材の表面にPd粒子を分散付着させた状態で、真空雰囲気中、温度:500℃、1時間保持の条件で加熱したのち大気中に放置することによりPd粒子とPd粒子の隙間をTi酸化膜で埋めた本発明多孔質チタン3を作製した。
実施例3で作製した本発明多孔質チタン3をさらに大気中、温度:400℃、30分間保持の条件で加熱することにより本発明多孔質チタン4を作製した。本発明多孔質チタン4は本発明多孔質チタン3に比べてTi酸化膜の厚さが厚く、さらにPd粒子の表面にPd酸化膜が形成されていることが目視により確認できた。このPd酸化膜はPd金属に比べて幾分導電性を低下させるものの実用上特に問題となるものではない。
先に用意した多孔質発泡チタン素材の表面に通常の条件でPdメッキを施すことにより従来多孔質チタン2を作製した。
さらに、本発明多孔質チタン3〜4および従来多孔質チタン2をそれぞれ縦:50mm、横:50mm、厚さ:10mmの寸法を有する銅板2枚で挟み、ばねを介して固定したのち、本発明多孔質チタン3〜4および従来多孔質チタン2と銅板との面圧が1MPaになるようにばねの撓みを調整し荷重がかかった状態のまま振動試験機上に設置し、周波数:67Hz、振動加速度:70m/秒2で2時間の振動試験を行った。振動試験後、その場で荷重がかかった状態で銅板間の抵抗を測定し、その値を振動試験後の接触抵抗として表2に示した。
Claims (12)
- 表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなる多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にRu粒子が分散して固着しており、この少なくとも骨格外表面に固着したRu粒子間の隙間にはTi酸化膜が形成されていることを特徴とする接触抵抗の小さい多孔質チタン。
- 前記Ru粒子は多孔質チタンの骨格外表面に拡散接合して固着していることを特徴とする請求項1記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン。
- 前記Ru粒子は表面酸化していることを特徴とする請求項1または2記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン。
- 表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなりかつ骨格表面にTi酸化層が形成されている多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にRuのコロイドを塗布したのち乾燥してRu粒子を少なくとも骨格外表面に分散して付着させ、この少なくとも骨格外表面にRu粒子が分散して付着している多孔質チタンを真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱することにより少なくとも骨格外表面をチタン金属面とし、さらに真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱を続けることにより少なくとも骨格外表面に付着しているRu粒子を前記チタン金属面に拡散接合させ、次いでRu粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中、室温で保持することにより少なくとも骨格外表面に固着しているRu粒子間の隙間にTi酸化膜を形成させることを特徴とする接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法。
- 請求項4記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法において、前記Ru粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中で加熱することにより、少なくとも骨格外表面に固着しているRu粒子の表面を酸化させて表面酸化したRu粒子を形成すると共に表面酸化したRu粒子とRu粒子の間の隙間にTi酸化膜を形成することを特徴とする請求項3記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法。
- 表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなる多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にPd粒子が分散して固着しており、この少なくとも骨格外表面に固着したPd粒子間の隙間にはTi酸化膜が形成されていることを特徴とする接触抵抗の小さい多孔質チタン。
- 前記Pd粒子は多孔質チタンの骨格外表面に拡散接合して固着していることを特徴とする請求項6記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン。
- 前記Pd粒子は表面酸化していることを特徴とする請求項6または7記載の接触抵抗の小さい多孔質チタン。
- 表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔と骨格からなりかつ骨格表面にTi酸化層が形成されている多孔質チタンの少なくとも骨格外表面にPdのコロイドを塗布したのち乾燥してPd粒子を少なくとも骨格外表面に分散して付着させ、この少なくとも骨格外表面にPd粒子が分散して付着している多孔質チタンを真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱することにより少なくとも骨格外表面をチタン金属面とし、さらに真空または不活性ガス雰囲気中、温度:300℃以上で加熱を続けることにより少なくとも骨格外表面に付着しているPd粒子を前記チタン金属面に拡散接合させ、次いでPd粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中、室温で保持することにより少なくとも骨格外表面に固着しているPd粒子間の隙間にTi酸化膜を形成させることを特徴とする接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法。
- 請求項9記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法において、前記Pd粒子をチタン金属面に拡散接合させた状態のまま大気中で加熱することにより、少なくとも骨格外表面に固着しているPd粒子の表面を酸化させて表面酸化したPd粒子を形成すると共に表面酸化したPd粒子とPd粒子の間の隙間に形成されたTi酸化膜の厚さを増加させることを特徴とする請求項8記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンの製造方法。
- 請求項1、2、3、6、7または8記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンからなることを特徴とする固体高分子形燃料電池の空気極材。
- 請求項1、2、3、6、7または8記載の接触抵抗の小さい多孔質チタンからなることを特徴とする固体高分子形燃料電池の燃料極材。
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