JP4867357B2 - 水素製造用のマイクロリアクター - Google Patents
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Description
一方、近年、地球環境保護の観点で二酸化炭素等の地球温暖化ガスの発生がなく、また、エネルギー効率が高いことから、水素を燃料とすることが注目されている。特に、燃料電池は水素を直接電力に変換できることや、発生する熱を利用するコジェネレーションシステムにおいて高いエネルギー変換効率が可能なことから注目されている。これまで燃料電池は宇宙開発や海洋開発等の特殊な条件において採用されてきたが、最近では自動車や家庭用分散電源用途への開発が進んでおり、また、携帯機器用の燃料電池も開発されている。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、小型(薄型)でありながら高効率の触媒反応を可能とする水素製造用のマイクロリアクターを提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記触媒担持層が金属酸化膜であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属酸化膜がセラミックス溶射により形成したセラミックス皮膜であるような構成、または、前記金属酸化膜が前記金属基板の陽極酸化により形成されたものであるような構成、または、前記金属酸化膜がウォッシュコート処理により形成されたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記接合体は、前記金属基板上に絶縁膜を介して発熱体を備えるような構成とした。
図1は本発明の水素製造用のマイクロリアクターの一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1に示されるマイクロリアクターのA−A線における縦断面図である。また、図3は、図1に示されるマイクロリアクターを構成する1組の金属基板を離間させた状態を示す平面図であり、(A)は金属基板3の平面図、(B)は金属基板4の平面図である。また、図4は、図2の部分拡大図である。
また、トンネル状改質流路11、トンネル状燃焼流路13の流体の流れ方向に垂直な断面形状は、円形状、楕円形状が好ましい。このようなトンネル状改質流路11、トンネル状燃焼流路13の径は、例えば、100〜2000μm程度の範囲内で設定することができ、トンネル状改質流路11とトンネル状燃焼流路13との隔壁の厚みT(図4参照)は、例えば、50〜1000μm程度とすることができる。また、トンネル状改質流路11、トンネル状燃焼流路13の流路長は、例えば、30〜300mm程度の範囲とすることができる。
改質触媒C1、燃焼触媒C2としては、従来から水素製造に使用されているCu−Zn系等の改質触媒、Pt、Pd、NiO、Co2O3、CuO等の燃焼触媒を使用することができる。
尚、上述のマイクロリアクター1は、接合体2の表面に絶縁膜を備えるものであってもよい。この場合の絶縁膜としては、金属基板3,4を陽極酸化して形成した金属酸化膜であってよく、また、ゾルゲル法により形成した絶縁膜、ポリイミドフィルムを熱圧着して形成したポリイミド膜、スパッタリング法等により形成したセラミック(Al2O3、SiO2)からなる絶縁膜、化学溶液法により形成した金属酸化膜が挙げられる。
マイクロリアクター21を構成する触媒担持層32,34は、上述の実施形態の触媒担持層12,14と同様とすることができる。
また、改質触媒C1、燃焼触媒C2としては、従来から水素製造に使用されているCu−Zn系等の改質触媒、Pt、Pd、NiO、Co2O3、CuO等の燃焼触媒を使用することができる。
尚、上述のマイクロリアクター21も、接合体22の表面に絶縁膜を備えるものであってもよく、この場合の絶縁膜としては、上述の絶縁膜を挙げることができる。
本発明のマイクロリアクターは、必要なトンネル状改質流路の長さ、トンネル状燃焼流路の長さを確保するために、上述のような接合体を複数積層した構造であってもよい。図7は、このような実施形態を示す図2相当の縦断面図である。図7において、マイクロリアクター41は、3個の接合体42a,42b,42cを積層した積層体42を備えている。
このような積層構造のマイクロリアクター41においても、各接合体42a,42b,42cにおいて、トンネル状改質流路51内での改質触媒反応が、並行しているトンネル状燃焼流路53から供給される熱により、高い効率で進行する。また、各接合体42a,42b,42cは、同一平面に改質機能部位(トンネル状改質流路51)と発熱機能部位(トンネル状燃焼流路53)とが存在するので、同等の水素製造能力を備える従来の積層構造のマイクロリアクターに比べて、大幅な薄型化が可能である。
発熱体17は、吸熱反応である原料の改質触媒反応等に必要な熱を供給するためのものであり、カーボンペースト、ニクロム(Ni−Cr合金)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)等の材質を使用することができる。この発熱体17は、例えば、幅10〜200μm程度の細線を、トンネル状改質流路11が形成されている領域に相当する金属基板4(絶縁層16)上の領域全面に引き回したような形状とすることができる。
このような発熱体17に形成された通電用の電極18,18は、Au、Ag、Pd、Pd−Ag等の導電材料を用いて形成することができる。
尚、上記の発熱体17、電極18,18、発熱体保護層19を金属基板3上に配設してもよいことは勿論である。
また、上述のマイクロリアクター21,41においても、発熱体を配設することができる。
上述のマイクロリアクターの各実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定さえるものではない。したがって、原料導入口と生成ガス排出口、燃料導入口と燃焼ガス排出口の位置は適宜設定することができ、また、これらに所望のインターフェースを配設してもよい。
図9および図10は、上述のマイクロリアクター1を例として、本発明の水素製造用のマイクロリアクターの製造例を説明するための工程図であり、図4相当の断面形状を示している。まず、金属基板3の一方の面3aに微細溝部5aと微細溝部6aを形成し、金属基板4の一方の面4aに微細溝部5bと微細溝部6bを形成する(図9(A))。この微細溝部5a,6a、微細溝部5b,6bは、金属基板3,4の面3a,4aに所定の開口パターンを有するレジストパターン61,62を形成し、このレジストパターン61,62をマスクとしてウエットエッチングにより金属基板3,4をエッチングして形成することができる。これにより、マイクロマシーンによる加工を不要とすることができる。
微細溝部5a,6a、微細溝部5b,6bは、断面が円弧形状ないし半円形状、あるいは、U字形状とすることができる。また、微細溝部は、流体の流れ方向に沿った壁面に角部が存在しないものが好ましい。このような形状とすることにより、後の触媒を担持する工程において、角部に触媒が堆積することが防止され、均一な触媒担持が可能となる。使用する金属基板3,4の材質は、微細溝部5a,6a、微細溝部5b,6bに直接触媒を担持しないので、微細溝部の精密加工が容易で、かつ、接合が容易な金属材料を選択することができ、例えば、ステンレス基板、銅基板、アルミニウム基板、チタン基板、鉄基板、鉄合金基板等であってよい。
セラミックス溶射は、例えば、プラズマスプレー法(高温のプラズマを利用し、アルミナ溶射粉末を溶融して基材表面にスプレーコートする)により行うことができる。このような触媒担持層64(12,14)の厚みは、例えば、10〜50μmの範囲で設定することができる。また、上述のように、レジストパターン61,62の除去と同時に、不要な触媒担持層64がリフトオフされるので、金属基板3,4において清浄な接合面が確保されることとなる。
また、上記のレジストパターン61,62が耐溶射性を備えていない場合は、微細溝部を形成した後にレジストパターン61,62を除去し、微細溝部に対応した開口部を有するメタルマスクを介してセラミックス溶射を行うことができる。あるいは、微細溝部を形成した後にレジストパターン61,62を除去し、次いで、金属基板3,4の面3a,4aの微細溝部が形成されていない部位に、耐溶射性を有するレジストパターンを形成し、このレジストパターンを介してセラミックス溶射を行うこともできる。いずれの場合も、不要な触媒担持層64がリフトオフされるので、金属基板3,4において清浄な接合面が確保されることとなる。
上記のように、微細溝部5aと微細溝部5b、微細溝部6aと微細溝部6bは、金属基板3,4の接合面(3a,4a)に対して対称関係にあるパターン形状であるため、金属基板3,4の接合により、微細溝部5aと微細溝部5b、微細溝部6aと微細溝部6bが完全に対向して、それぞれトンネル状改質流路11とトンネル状燃焼流路13が形成される。このトンネル状改質流路11、トンネル状燃焼流路13の流体の流れ方向に垂直な断面における内壁面の形状は略円形状であり、内壁面の全面に触媒担持層12,14を備えたものとなる。上記の金属基板3,4の接合は、例えば、ステンレス基板を使用する場合には拡散接合により行え、銅基板等を使用する場合には拡散接合、レーザー溶接、抵抗溶接、ロウ付け等により行うことができる。
次いで、トンネル状改質流路31の内壁面の触媒担持層32に改質触媒C1を担持し、トンネル状燃焼流路33の内壁面の触媒担持層34に改質触媒C2を担持することにより、マイクロリアクター21が得られる(図11(D))。触媒担持層32,34への触媒C1,C2の担持は、上述の触媒担持層12,14への触媒C1,C2の担持と同様に行うことができる。尚、この製造例では、接合体22の表面に絶縁膜36を備えたものとなっている。
また、上記の製造例では、陽極酸化によって、金属酸化物からなる触媒担持層32,34を形成するが、ウォッシュコート処理によって金属酸化物からなる触媒担持層32,34を形成してもよい。この場合、金属基板23,24として、ベーマイト処理による金属酸化物の形成が可能な材料、例えば、Cu、ステンレス、Fe、Al等を使用する。そして、例えば、アルミナゾルのようなベーマイトアルミナが分散されている状態の懸濁液を用い、この懸濁液の粘度を十分に低下させたものを接合体22のトンネル状改質流路31、トンネル状燃焼流路33内に流し込み、その後、乾燥させ、ベーマイト被膜を流路内面に固定化させること(ウォッシュコート処理)により行うことができる。
[実施例1]
金属基板として厚み1000μmのSUS304基板(50mm×60mm)を準備し、このSUS304基板の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製OFPR)をディップ法により塗布(膜厚7μm(乾燥時))した。次に、SUS304基板の微細溝部を形成する側のレジスト塗膜上に、図3に示されるような相互に独立した微細溝部を形成するためのフォトマスクを配した。また、上記と同様のSUS304基板を準備し、同様に感光性レジスト材料を塗布し、SUS304基板の微細溝部を形成する側のレジスト塗膜上に、フォトマスクを配した。このフォトマスクは、上記のフォトマスクと面対称となるものとした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・エッチング液(塩化第二鉄溶液) 比重濃度: 45ボーメ(°B’e)
次に、一方のSUS304基板について、並行状態にある2本の微細溝部の両端部(計4ヶ所)に貫通孔(開口径800μm)をエッチングにより穿設した。
上述のように微細溝部が形成された1組のSUS304基板の微細溝部形成面に対して、プラズマスプレー法によりアルミナ溶射を行った。
次いで、上記の1組のSUS304基板を、互いの微細溝部が対向するように下記の条件で拡散接合して接合体を作製した。この接合では、1組の基板の微細溝部どうしが完全に対向するように位置合わせをした。これにより、接合体の一つの面に原料導入口と生成ガス排出口とが存在するトンネル状改質流路と、同じ面に燃料導入口と燃焼ガス排出口とが存在するトンネル状燃焼流路が、接合体内に形成された。
(拡散接合条件)
・雰囲気 :真空中
・接合温度 :1000℃
・接合時間 :12時間
(改質触媒懸濁液の組成)
・Al … 5.4重量%
・Cu … 2.6重量%
・Zn … 2.8重量%
・水 … 88重量%
・分散剤 … 1.2重量%
・Pt … 0.2重量%
・水 … 99重量%
・分散剤 … 0.8重量%
これにより、図1〜図4に示されるような本発明のマイクロリアクターを得ることができた。
2,22,42a,42b,42c…接合体
42…積層体
3,4,23,24…金属基板
5a,5b,6a,6b,25,26…微細溝部
8A,48A…原料導入口
8B,48B…生成ガス排出口
9A,49A…燃料導入口
9B,49B…燃焼ガス排出口
11,31,51…トンネル状改質流路
13,33,53…トンネル状燃焼流路
12,14,32,34…触媒担持層
16…絶縁膜
17…発熱体
18…電極
19…発熱体保護層
C1…改質触媒
C2…燃焼触媒
Claims (7)
- 1組の金属基板が接合された接合体と、前記金属基板の少なくとも一方の金属基板の接合面に形成された微細溝部で構成された相互に独立するとともに同一平面に存在するトンネル状改質流路およびトンネル状燃焼流路と、前記トンネル状改質流路が接合体のいずれかの面に露出してなる原料導入口および生成ガス排出口と、前記トンネル状改質流路に形成された触媒担持層と、該触媒担持層に担持された改質触媒と、前記トンネル状燃焼流路が接合体のいずれかの面に露出してなる燃料導入口および燃焼ガス排出口と、前記トンネル状燃焼流路に形成された触媒担持層と、該触媒担持層に担持された燃焼触媒と、を備え、前記トンネル状改質流路と前記トンネル状燃焼流路とが並行していることを特徴とする水素製造用のマイクロリアクター。
- 複数の前記接合体が、接合体間で前記トンネル状改質流路が連通され、かつ、接合体間で前記トンネル状燃焼流路が連通されるように、積層配置された積層体を有し、該積層体は、いずれかの面に露出してなる原料導入口および生成ガス排出口と、いずれかの面に露出してなる燃料導入口および燃焼ガス排出口と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の水素製造用のマイクロリアクター。
- 前記触媒担持層は、金属酸化膜であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素製造用のマイクロリアクター。
- 前記金属酸化膜は、セラミックス溶射により形成したセラミックス皮膜であることを特徴とする請求項3に記載の水素製造用のマイクロリアクター。
- 前記金属酸化膜は、前記金属基板の陽極酸化により形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の水素製造用のマイクロリアクター。
- 前記金属酸化膜は、ウォッシュコート処理により形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の水素製造用のマイクロリアクター。
- 前記接合体は、前記金属基板上に絶縁膜を介して発熱体を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の水素製造用のマイクロリアクター。
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