JP4414780B2 - 水素製造用のマイクロリアクターおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
メタノール等を原料として水蒸気改質により水素ガスを得るための改質器では、主にCu−Zn系触媒を使用し、吸熱反応により原料の水蒸気改質が行われる。産業用の燃料電池では、起動・停止が頻繁に行われることがないため、改質器の温度変動は生じにくい。しかし、自動車用や携帯機器用の燃料電池では、起動・停止が頻繁に行われるため、停止状態から始動したときの改質器の立ち上がりが速い(メタノールの水蒸気改質温度に達するまでの時間が短い)ことが要求される。
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、小型で高効率の水素製造用改質器を可能とするマイクロリアクターと、このマイクロリアクターを簡便に製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記金属基板はAl基板、Cu基板、ステンレス基板のいずれかであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記絶縁膜は前記金属基板を陽極酸化して形成した金属酸化膜であるような構成、前記微細溝部内にも前記金属酸化膜が形成されているような構成とした。また、前記金属基板はAl基板であるような構成とした。
さらに、本発明は、原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、を有するような構成とした。
また、本発明は、原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、を有するような構成とした。
マイクロリアクター
図1は本発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1に示されるマイクロリアクターのII−II線における拡大縦断面図である。図1および図2において、本発明のマイクロリアクター1は、金属基板2と、この金属基板2の一方の面2aに形成された微細溝部3と、この微細溝部3内部および金属基板2の両面2a,2bと側面2cに形成された金属酸化膜からなる絶縁膜4と、金属基板2の表面2b上に絶縁膜4を介して設けられた発熱体5と、微細溝部3内に担持された触媒Cと、上記微細溝部3を覆うように金属基板2に接合されたカバー部材8と、を備えている。また、発熱体5には電極6,6が形成され、この電極6,6が露出するような電極開口部7a,7aを有する発熱体保護層7が、発熱体5を覆うように設けられている。また、上記カバー部材8には、原料導入口8aとガス排出口8bが設けられている。
本発明のマイクロリアクター1を構成する金属基板2は、陽極酸化により金属酸化膜(絶縁膜4)を形成することができる金属を使用することができる。このような金属としては、例えば、Al、Si、Ta、Nb、V、Bi、Y、W、Mo、Zr、Hf等を挙げることできる。これらの金属の中で、特にAlが加工適性や、熱容量、熱伝導率等の特性、単価の点から好ましく使用される。金属基板2の厚みは、マイクロリアクター1の大きさ、使用する金属の熱容量、熱伝導率等の特性、形成する微細溝部3の大きさ等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、50〜2000μm程度の範囲で設定することができる。
金属基板2に形成される微細溝部3は、図3に示されるような形状に限定されるものではなく、微細溝部3内に担持する触媒Cの量が多くなり、かつ、原料が触媒Cと接触する流路長が長くなるような任意の形状とすることができる。通常、微細溝部3の深さは100〜1000μm程度の範囲内、幅は100〜1000μm程度の範囲内で設定することができ、流路長は30〜300mm程度の範囲とすることができる。
触媒Cとしては、従来から水蒸気改質に使用されている公知の触媒を使用することができる。
本発明のマイクロリアクター1を構成する発熱体5は、吸熱反応である原料の水蒸気改質に必要な熱を供給するためのものであり、カーボンペースト、ニクロム(Ni−Cr合金)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)等の材質を使用することができる。この発熱体5は、例えば、幅10〜200μm程度の細線を、微細溝部3が形成されている領域に相当する金属基板面2b(絶縁膜4)上の領域全面に引き回したような形状とすることができる。
発熱体保護層7は、上記の電極6,6を露出させるための電極開口部7a,7bを有し、発熱体5を覆うように配設されている。この発熱体保護層7は、例えば、感性ポリイミド、ワニス状のポリイミド等により形成することができる。また、発熱体保護層7の厚みは、使用する材料等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、2〜25μm程度の範囲で設定することができる。
本発明のマイクロリアクター1′を構成する金属基板2′は、Al基板、CU基板、ステンレス基板等のいずれかを使用することができる。また、金属基板2′の厚みは、マイクロリアクター1′の大きさ、使用する金属の熱容量、熱伝導率等の特性、形成する微細溝部3の大きさ等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、50〜2000μm程度の範囲で設定することができる。
上述のような本発明のマイクロリアクター1,1′は、金属基板2,2′を使用しており、これらはシリコン基板やセラミックス基板に比べて、熱伝導率が高く熱容量が小さいので、発熱体5から担持触媒Cへ高効率で熱が伝達され、停止状態から始動したときの立ち上がりが速く、かつ、発熱体への投入電力の利用効率の高い水素製造用改質器が可能となる。
尚、上述のマイクロリアクターの実施形態は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
図5および図6は本発明のマイクロリアクター製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
図5、図6では、上述のマイクロリアクター1を例にして説明する。本発明の製造方法では、まず、金属基板2の一方の面2aに微細溝部3を形成する(図5(A))。この微細溝部3は、金属基板2の面2aに所定の開口パターンを有するレジストを形成し、このレジストをマスクとしてウエットエッチングにより櫛状のリブ2A,2Bを残すように金属基板2をエッチングして形成することができ、マイクロマシーンによる加工を不要とすることができる。使用する金属基板2の材質は、次の陽極酸化工程で陽極酸化が可能なAl、Si、Ta、Nb、V、Bi、Y、W、Mo、Zr、Hf等を挙げることできる。
次いで、微細溝部3が形成されていない金属基板2の面2bの金属酸化膜(絶縁膜4)上に発熱体5を設け、さらに、通電用の電極6,6を形成する(図5(C))。発熱体5は、カーボンペースト、ニクロム(Ni−Cr合金)、W、Mo等の材質を使用して形成することができる。発熱体5の形成方法としては、上記の材料を含有するペーストを用いてスクリーン印刷により形成する方法、上記の材料を含有するペーストを用いて塗布膜を形成し、その後、エッチング等によりパターニングする方法、上記材料を用いて真空成膜法により薄膜を形成し、その後、エッチング等によりパターニングする方法等を挙げることができる。
次に、電極6,6が露出するように発熱体保護層7を発熱体5上に形成する(図5(D))。発熱体保護層7は、ポリイミド、セラミック(Al2O3、SiO2)等の材料を用いて形成することができ、例えば、上記材料を含有するペーストを用いてスクリーン印刷により電極開口部7a,7aを有するパターンで形成することができる。
次に、金属基板2を研磨して金属基板2の面2aを露出させ(図6(B))、その後、カバー部材8を金属基板面2aに接合して本発明のマイクロリアクター1を得ることができる(図6(C))。カバー部材8は、Al合金、Cu合金、ステンレス材料等を使用することができる。このカバー部材8の金属基板面2aへの接合は、例えば、拡散接合、ロウ付け等により行うことができる。尚、この接合の際、カバー部材8に設けられている原料導入口8aとガス排出口8bが、金属基板2に形成された微細溝部3の流路の両端部に一致するように位置合わせをする。
また、本発明の製造方法では、発熱体5、電極6,6、発熱体保護層7の形成は、金属基板2とカバー部材8の接合後に行なってもよい。
図7、図8では、上述のマイクロリアクター1′を例にして説明する。本発明の製造方法では、まず、金属基板2′の一方の面2′aに微細溝部3を形成する(図7(A))。金属基板2′は、Al基板、CU基板、ステンレス基板等のいずれかを使用することができる。この微細溝部3の形成は、上述の金属基板2への微細溝部3の形成と同様にして行うことができる。
次に、微細溝部3が形成されていない金属基板2′の面2′b上に絶縁膜4′を形成する(図7(B))。この絶縁膜4′は、例えば、ポリイミド、セラミック(Al2O3、SiO2)等を用いて形成することができる。絶縁膜4′の形成は、例えば、上記の絶縁材料を含有するペーストを用いたスクリーン印刷等の印刷法により、あるいは、上記絶縁材料を用いたスパッタリング、真空蒸着等の真空成膜法により薄膜を形成し、硬化させることにより行うことができる。
次に、電極6,6が露出するように発熱体保護層7を発熱体5上に形成する(図7(D))。この発熱体保護層7の形成は、上述のマイクロリアクター1の製造方法と同様に行うことができる。
次いで、微細溝部3内に触媒Cを担持させる(図8(A))。この触媒担持は、金属基板2′の微細溝部3が形成されている面2′aを、所望の触媒溶液内に浸漬して行うことができる。
このような本発明のマイクロリアクター製造方法では、金属基板を使用するので、微細溝部の形成でマイクロマシーン加工を行う必要がなく、エッチング加工等の安価な加工方法により容易に行うことができ、マイクロリアクターの製造コスト低減が可能となる。
また、本発明の製造方法では、絶縁膜4′、発熱体5、電極6,6、発熱体保護層7の形成は、金属基板2′とカバー部材8の接合後に行なってもよい。
尚、上述のマイクロリアクター製造方法の実施形態は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
基材として厚み1000μmのAl基板(250mm×250mm)を準備し、このAl基板の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製OFPR)をディップ法により塗布(膜厚7μm(乾燥時))した。次に、Al基板の微細溝部を形成する側のレジスト塗膜上に、幅1500μmのストライプ状の遮光部がピッチ2000μmで左右から交互に突出(突出長30mm)した形状のフォトマスクを配し、このフォトマスクを介してレジスト塗布膜を露光し、炭酸水素ナトリウム溶液を使用して現像した。これにより、Al基板の一方の面には、幅500μmのストライプ状の開口部がピッチ2000μmで配列され、隣接するストライプ状の開口部が、その端部において交互に連続するようなレジストパターンが形成された。
(エッチング条件)
・温度 : 20℃
・エッチング液(HCl)濃度: 200g/L
(35%HClを純水中に200g溶解して1Lとする)
次に、上記のAl基板を外部電極の陽極に接続し、陽極酸化溶液(4%シュウ酸溶液)に浸漬して陰極と対向させ、下記の条件で通電することにより、酸化アルミニウム薄膜を形成して絶縁膜とした。尚、形成した酸化アルミニウム薄膜の厚みをエリプソメーターで測定した結果、約30μmであった。
(陽極酸化の条件)
・浴温 : 25℃
・電圧 : 25V(DC)
・電流密度 : 100A/m2
(発熱体用ペーストの組成)
・カーボン粉末 … 20重量部
・微粉末シリカ … 25重量部
・キシレンフェノール樹脂 … 36重量部
・ブチルカルビトール … 19重量部
(電極用ペーストの組成)
・銀めっき銅粉末 … 90重量部
・フェノール樹脂 … 6.5重量部
・ブチルカルビトール … 3.5重量部
(保護層用ペーストの組成)
・樹脂分濃度 … 30重量部
・シリカフィラー … 10重量部
・ラクトン系溶剤(ペンタ1−4−ラクトン) … 60重量部
(触媒水溶液の組成)
・Al … 41.2重量%
・Cu … 2.6重量%
・Zn … 2.8重量%
(拡散接合条件)
・雰囲気 :真空中
・接合温度 :300℃
・接合時間 :8時間
これにより、本発明のマイクロリアクターを得ることができた。
まず、実施例1と同様にして、Al基板に微細溝部を形成した。
次に、このAl基板に、実施例1と同様にして、陽極酸化により酸化アルミニウム薄膜を形成した。
次いで、Al基板の微細溝部形成面側を下記組成の触媒水溶液内に浸漬(2時間)し、その後、350℃、1時間の乾燥還元処理を施して、微細溝部内に触媒を担持させた。
(触媒水溶液の組成)
・Al … 41.2重量%
・Cu … 2.6重量%
・Zn … 2.8重量%
(ロウ付け接合条件)
・ロウ材料 :アルミ4004(古河スカイ(株)製)
・雰囲気 :真空中
・ロウ付け温度 :600℃
・ロウ付け時間 :3時間
これにより、本発明のマイクロリアクターを得ることができた。
2,2′…金属基板
3…微細溝部
4…絶縁膜(金属酸化膜)
4′…絶縁膜
5…発熱体
6…電極
7…発熱体保護層
8…カバー部材
C…触媒
Claims (9)
- 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターにおいて、
一方の面に微細溝部を備えた金属基板と、該金属基板の他の面に絶縁膜を介して設けられた発熱体と、該発熱体の電極のみを露出させて前記発熱体を覆うように設けられた発熱体保護層と、前記微細溝部内に担持された触媒と、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合され原料導入口とガス排出口を有するカバー部材と、を備えることを特徴とするマイクロリアクター。 - 前記金属基板はAl基板、Cu基板、ステンレス基板のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクター。
- 前記絶縁膜は前記金属基板を陽極酸化して形成した金属酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクター。
- 前記微細溝部内にも前記金属酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のマイクロリアクター。
- 前記金属基板はAl基板であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のマイクロリアクター。
- 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
前記金属基板を陽極酸化して金属酸化膜からなる絶縁膜を形成する工程と、
前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面の前記金属酸化膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、
前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。 - 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、
前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、
前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。 - 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
前記金属基板を陽極酸化して金属酸化膜からなる絶縁膜を形成する工程と、
前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、
前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面の前記金属酸化膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。 - 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、
前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、
前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。
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