JP4414780B2 - 水素製造用のマイクロリアクターおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水素製造用改質器に使用するマイクロリアクター、特にメタノール等の原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターと、このマイクロリアクターの製造方法に関する。
近年、地球環境保護の観点で二酸化炭素等の地球温暖化ガスの発生がなく、また、エネルギー効率が高いことから、水素を燃料とすることが注目されている。特に、燃料電池は水素を直接電力に変換できることや、発生する熱を利用するコジェネレーションシステムにおいて高いエネルギー変換効率が可能なことから注目されている。これまで燃料電池は宇宙開発や海洋開発等の特殊な条件において採用されてきたが、最近では自動車や家庭用分散電源用途への開発が進んでおり、また、携帯機器用の燃料電池も開発されている。
燃料電池の中で、天然ガス、ガソリン、ブタンガス、メタノール等の炭化水素系燃料を改質して得られる水素ガスと、空気中の酸素とを電気化学的に反応させて電気を取り出す燃料電池は、一般に炭化水素系燃料を水蒸気改質して水素ガスを生成する改質器と、電気を発生させる燃料電池本体等で構成される。
メタノール等を原料として水蒸気改質により水素ガスを得るための改質器では、主にCu−Zn系触媒を使用し、吸熱反応により原料の水蒸気改質が行われる。産業用の燃料電池では、起動・停止が頻繁に行われることがないため、改質器の温度変動は生じにくい。しかし、自動車用や携帯機器用の燃料電池では、起動・停止が頻繁に行われるため、停止状態から始動したときの改質器の立ち上がりが速い(メタノールの水蒸気改質温度に達するまでの時間が短い)ことが要求される。
一方、特に携帯機器用では、燃料電池の小型化が必須であり、改質器の小型化が種々検討されている。例えば、シリコン基板やセラミックス基板にマイクロチャネルを形成し、このマイクロチャネル内に触媒を担持したマイクロリアクターが開発されている(特許文献1)。
特開2002−252014
しかしながら、従来のマイクロリアクターは、熱の利用効率が悪く、停止状態から始動したときの改質器の立ち上がり速度が遅いという問題があった。また、マイクロマシーンによる加工等を必要とし、製造コストが高いという問題もあった。
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、小型で高効率の水素製造用改質器を可能とするマイクロリアクターと、このマイクロリアクターを簡便に製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明は、原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターにおいて、一方の面に微細溝部を備えた金属基板と、該金属基板の他の面に絶縁膜を介して設けられた発熱体と、該発熱体の電極のみを露出させて前記発熱体を覆うように設けられた発熱体保護層と、前記微細溝部内に担持された触媒と、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合され原料導入口とガス排出口を有するカバー部材と、を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基板はAl基板、Cu基板、ステンレス基板のいずれかであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記絶縁膜は前記金属基板を陽極酸化して形成した金属酸化膜であるような構成、前記微細溝部内にも前記金属酸化膜が形成されているような構成とした。また、前記金属基板はAl基板であるような構成とした。
また、本発明は、原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、前記金属基板を陽極酸化して金属酸化膜からなる絶縁膜を形成する工程と、前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面の前記金属酸化膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、を有するような構成とした。
さらに、本発明は、原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、を有するような構成とした。
また、本発明は、原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、前記金属基板を陽極酸化して金属酸化膜からなる絶縁膜を形成する工程と、前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面の前記金属酸化膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、を有するような構成とした。
また、本発明は、原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、を有するような構成とした。
本発明によれば、マイクロリアクターを構成する金属基板が、シリコン基板やセラミックス基板に比べて、熱伝導率が高く熱容量が小さいので、発熱体から担持触媒へ高効率で熱が伝達され、停止状態から始動したときの立ち上がり速度が速く、かつ、発熱体への投入電力の利用効率の高い水素製造用改質器が可能となり、また、金属基板への微細溝部の形成は、マイクロマシーンによる加工を必要とせず、エッチング加工等の安価な加工方法により容易に行えるので、マイクロリアクターの製造コスト低減が可能となる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
マイクロリアクター
図1は本発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1に示されるマイクロリアクターのII−II線における拡大縦断面図である。図1および図2において、本発明のマイクロリアクター1は、金属基板2と、この金属基板2の一方の面2aに形成された微細溝部3と、この微細溝部3内部および金属基板2の両面2a,2bと側面2cに形成された金属酸化膜からなる絶縁膜4と、金属基板2の表面2b上に絶縁膜4を介して設けられた発熱体5と、微細溝部3内に担持された触媒Cと、上記微細溝部3を覆うように金属基板2に接合されたカバー部材8と、を備えている。また、発熱体5には電極6,6が形成され、この電極6,6が露出するような電極開口部7a,7aを有する発熱体保護層7が、発熱体5を覆うように設けられている。また、上記カバー部材8には、原料導入口8aとガス排出口8bが設けられている。
図3は、図1に示されるマイクロリアクター1の金属基板2の微細溝部3形成面側を示す斜視図である。図3に示されるように、微細溝部3は櫛状のリブ2A,2Bを残すように形成され、端部3aから端部3bまで連続する形状である。そして、カバー部材8の原料導入口8aを端部3aに位置させ、ガス排出口8bを端部3bに位置させることにより、原料導入口8aからガス排出口8bまで連続した流路が構成される。
本発明のマイクロリアクター1を構成する金属基板2は、陽極酸化により金属酸化膜(絶縁膜4)を形成することができる金属を使用することができる。このような金属としては、例えば、Al、Si、Ta、Nb、V、Bi、Y、W、Mo、Zr、Hf等を挙げることできる。これらの金属の中で、特にAlが加工適性や、熱容量、熱伝導率等の特性、単価の点から好ましく使用される。金属基板2の厚みは、マイクロリアクター1の大きさ、使用する金属の熱容量、熱伝導率等の特性、形成する微細溝部3の大きさ等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、50〜2000μm程度の範囲で設定することができる。
このような金属基板2への陽極酸化による金属酸化膜(絶縁膜4)の形成は、金属基板2を外部電極の陽極に接続した状態で、陽極酸化溶液に浸漬して陰極と対向させ通電することにより行うことができる。金属酸化膜(絶縁膜4)の厚みは、例えば、5〜150μm程度の範囲で設定することができる。
金属基板2に形成される微細溝部3は、図3に示されるような形状に限定されるものではなく、微細溝部3内に担持する触媒Cの量が多くなり、かつ、原料が触媒Cと接触する流路長が長くなるような任意の形状とすることができる。通常、微細溝部3の深さは100〜1000μm程度の範囲内、幅は100〜1000μm程度の範囲内で設定することができ、流路長は30〜300mm程度の範囲とすることができる。
本発明では、微細溝部3内部にも金属酸化膜からなる絶縁膜4が形成されているので、微細孔を有する金属酸化膜の表面構造により、触媒Cの担持量が増大するとともに、安定した触媒担持が可能となる。
触媒Cとしては、従来から水蒸気改質に使用されている公知の触媒を使用することができる。
本発明のマイクロリアクター1を構成する発熱体5は、吸熱反応である原料の水蒸気改質に必要な熱を供給するためのものであり、カーボンペースト、ニクロム(Ni−Cr合金)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)等の材質を使用することができる。この発熱体5は、例えば、幅10〜200μm程度の細線を、微細溝部3が形成されている領域に相当する金属基板面2b(絶縁膜4)上の領域全面に引き回したような形状とすることができる。
このような発熱体5には、通電用の電極6,6が形成されている。通電用の電極6,6は、Au、Ag、Pd、Pd−Ag等の導電材料を用いて形成することができる。
発熱体保護層7は、上記の電極6,6を露出させるための電極開口部7a,7bを有し、発熱体5を覆うように配設されている。この発熱体保護層7は、例えば、感性ポリイミド、ワニス状のポリイミド等により形成することができる。また、発熱体保護層7の厚みは、使用する材料等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、2〜25μm程度の範囲で設定することができる。
本発明のマイクロリアクター1を構成するカバー部材8は、Al合金、Cu合金、ステンレス材料等を使用することができる。また、カバー部材8の厚みは、使用する材料等を考慮して適宜設定することができ、例えば、20〜200μm程度の範囲で設定することができる。カバー部材8が備える原料導入口8aとガス排出口8bは、金属基板2に形成された微細溝部3の流路の両端部3a,3bに位置するように設けられている。
図4は、本発明のマイクロリアクターの他の実施形態を示す図2相当の縦断面図である。図4において、本発明のマイクロリアクター1′は、金属基板2′と、この金属基板2′の一方の面2′aに形成された微細溝部3と、金属基板2′の他の面2′bに形成された絶縁膜4′と、金属基板2′の表面2′b上に絶縁膜4′を介して設けられた発熱体5と、微細溝部3内に担持された触媒Cと、上記微細溝部3を覆うように金属基板2′に接合されたカバー部材8と、を備えている。また、発熱体5には電極6,6が形成され、この電極6,6が露出するような電極開口部7a,7aを有する発熱体保護層7が、発熱体5を覆うように設けられている。また、上記カバー部材8には、原料導入口8aとガス排出口8bが設けられている。
このようなマイクロリアクター1′は、金属部材2′、絶縁層4′が異なる点、および、微細溝部3内に金属酸化膜(絶縁層4)が形成されていない点を除いて、上述のマイクロリアクター1と同様であり、同じ構成部材には同じ部材番号を付し、説明は省略する。
本発明のマイクロリアクター1′を構成する金属基板2′は、Al基板、CU基板、ステンレス基板等のいずれかを使用することができる。また、金属基板2′の厚みは、マイクロリアクター1′の大きさ、使用する金属の熱容量、熱伝導率等の特性、形成する微細溝部3の大きさ等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、50〜2000μm程度の範囲で設定することができる。
金属基板2′の面2′bに形成された絶縁膜4′は、例えば、ポリイミド、セラミック(Al23、SiO2)等により形成されたものとすることができる。このような絶縁膜4′の厚みは、使用する材料の特性等を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜30μm程度の範囲で設定することができる。
上述のような本発明のマイクロリアクター1,1′は、金属基板2,2′を使用しており、これらはシリコン基板やセラミックス基板に比べて、熱伝導率が高く熱容量が小さいので、発熱体5から担持触媒Cへ高効率で熱が伝達され、停止状態から始動したときの立ち上がりが速く、かつ、発熱体への投入電力の利用効率の高い水素製造用改質器が可能となる。
尚、上述のマイクロリアクターの実施形態は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
マイクロリアクターの製造方法
図5および図6は本発明のマイクロリアクター製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
図5、図6では、上述のマイクロリアクター1を例にして説明する。本発明の製造方法では、まず、金属基板2の一方の面2aに微細溝部3を形成する(図5(A))。この微細溝部3は、金属基板2の面2aに所定の開口パターンを有するレジストを形成し、このレジストをマスクとしてウエットエッチングにより櫛状のリブ2A,2Bを残すように金属基板2をエッチングして形成することができ、マイクロマシーンによる加工を不要とすることができる。使用する金属基板2の材質は、次の陽極酸化工程で陽極酸化が可能なAl、Si、Ta、Nb、V、Bi、Y、W、Mo、Zr、Hf等を挙げることできる。
次に、微細溝部3を形成した金属基板2を陽極酸化して、微細溝部3内部を含む全面に金属酸化膜(絶縁膜4)を形成する(図5(B))。この金属酸化膜(絶縁膜4)の形成は、金属基板2を外部電極の陽極に接続した状態で、陽極酸化溶液に浸漬して陰極と対向させ通電することにより行うことができる。
次いで、微細溝部3が形成されていない金属基板2の面2bの金属酸化膜(絶縁膜4)上に発熱体5を設け、さらに、通電用の電極6,6を形成する(図5(C))。発熱体5は、カーボンペースト、ニクロム(Ni−Cr合金)、W、Mo等の材質を使用して形成することができる。発熱体5の形成方法としては、上記の材料を含有するペーストを用いてスクリーン印刷により形成する方法、上記の材料を含有するペーストを用いて塗布膜を形成し、その後、エッチング等によりパターニングする方法、上記材料を用いて真空成膜法により薄膜を形成し、その後、エッチング等によりパターニングする方法等を挙げることができる。
また、通電用の電極6,6は、Au、Ag、Pd、Pd−Ag等の導電材料を用いて形成することができ、例えば、上記の導電材料を含有するペーストを用いてスクリーン印刷により形成することができる。
次に、電極6,6が露出するように発熱体保護層7を発熱体5上に形成する(図5(D))。発熱体保護層7は、ポリイミド、セラミック(Al23、SiO2)等の材料を用いて形成することができ、例えば、上記材料を含有するペーストを用いてスクリーン印刷により電極開口部7a,7aを有するパターンで形成することができる。
次いで、微細溝部3内に触媒Cを担持させる(図6(A))。この触媒担持は、金属基板2の微細溝部3が形成されている面2aを、所望の触媒溶液内に浸漬して行うことができる。
次に、金属基板2を研磨して金属基板2の面2aを露出させ(図6(B))、その後、カバー部材8を金属基板面2aに接合して本発明のマイクロリアクター1を得ることができる(図6(C))。カバー部材8は、Al合金、Cu合金、ステンレス材料等を使用することができる。このカバー部材8の金属基板面2aへの接合は、例えば、拡散接合、ロウ付け等により行うことができる。尚、この接合の際、カバー部材8に設けられている原料導入口8aとガス排出口8bが、金属基板2に形成された微細溝部3の流路の両端部に一致するように位置合わせをする。
また、本発明の製造方法では、発熱体5、電極6,6、発熱体保護層7の形成は、金属基板2とカバー部材8の接合後に行なってもよい。
図7および図8は本発明のマイクロリアクター製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
図7、図8では、上述のマイクロリアクター1′を例にして説明する。本発明の製造方法では、まず、金属基板2′の一方の面2′aに微細溝部3を形成する(図7(A))。金属基板2′は、Al基板、CU基板、ステンレス基板等のいずれかを使用することができる。この微細溝部3の形成は、上述の金属基板2への微細溝部3の形成と同様にして行うことができる。
次に、微細溝部3が形成されていない金属基板2′の面2′b上に絶縁膜4′を形成する(図7(B))。この絶縁膜4′は、例えば、ポリイミド、セラミック(Al23、SiO2)等を用いて形成することができる。絶縁膜4′の形成は、例えば、上記の絶縁材料を含有するペーストを用いたスクリーン印刷等の印刷法により、あるいは、上記絶縁材料を用いたスパッタリング、真空蒸着等の真空成膜法により薄膜を形成し、硬化させることにより行うことができる。
次いで、絶縁膜4′上に発熱体5を設け、さらに、通電用の電極6,6を形成する(図7(C))。このような発熱体5、電極6,6の形成は、上述のマイクロリアクター1の製造方法と同様に行うことができる。
次に、電極6,6が露出するように発熱体保護層7を発熱体5上に形成する(図7(D))。この発熱体保護層7の形成は、上述のマイクロリアクター1の製造方法と同様に行うことができる。
次いで、微細溝部3内に触媒Cを担持させる(図8(A))。この触媒担持は、金属基板2′の微細溝部3が形成されている面2′aを、所望の触媒溶液内に浸漬して行うことができる。
次に、金属基板2′を研磨して金属基板面2′aを露出させ(図8(B))、その後、カバー部材8を金属基板面2′aに接合して本発明のマイクロリアクター1′を得ることができる(図8(C))。このカバー部材8の接合は、上述のマイクロリアクター1の製造方法と同様に行うことができる。
このような本発明のマイクロリアクター製造方法では、金属基板を使用するので、微細溝部の形成でマイクロマシーン加工を行う必要がなく、エッチング加工等の安価な加工方法により容易に行うことができ、マイクロリアクターの製造コスト低減が可能となる。
また、本発明の製造方法では、絶縁膜4′、発熱体5、電極6,6、発熱体保護層7の形成は、金属基板2′とカバー部材8の接合後に行なってもよい。
尚、上述のマイクロリアクター製造方法の実施形態は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
基材として厚み1000μmのAl基板(250mm×250mm)を準備し、このAl基板の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製OFPR)をディップ法により塗布(膜厚7μm(乾燥時))した。次に、Al基板の微細溝部を形成する側のレジスト塗膜上に、幅1500μmのストライプ状の遮光部がピッチ2000μmで左右から交互に突出(突出長30mm)した形状のフォトマスクを配し、このフォトマスクを介してレジスト塗布膜を露光し、炭酸水素ナトリウム溶液を使用して現像した。これにより、Al基板の一方の面には、幅500μmのストライプ状の開口部がピッチ2000μmで配列され、隣接するストライプ状の開口部が、その端部において交互に連続するようなレジストパターンが形成された。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、下記の条件でAl基板をエッチングした。このエッチングは、Al基板の一方の面からハーフエッチングにより微細溝部を形成するものであり、エッチングに要した時間は3分間であった。
(エッチング条件)
・温度 : 20℃
・エッチング液(HCl)濃度: 200g/L
(35%HClを純水中に200g溶解して1Lとする)
上記のエッチング処理が終了した後、水酸化ナトリウム溶液を用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより、Al基板の一方の面に、幅1000μm、深さ650μm、長さ30mmのストライプ形状の微細溝が2000μmのピッチで形成され、隣接する微細溝の端部において交互に連続するような(図3に示されるような)微細溝部(流路長300mm)が形成された。
次に、上記のAl基板を外部電極の陽極に接続し、陽極酸化溶液(4%シュウ酸溶液)に浸漬して陰極と対向させ、下記の条件で通電することにより、酸化アルミニウム薄膜を形成して絶縁膜とした。尚、形成した酸化アルミニウム薄膜の厚みをエリプソメーターで測定した結果、約30μmであった。
(陽極酸化の条件)
・浴温 : 25℃
・電圧 : 25V(DC)
・電流密度 : 100A/m2
次いで、微細溝部が形成されていないAl基板の酸化アルミニウム薄膜上に下記組成の発熱体用ペーストをスクリーン印刷により印刷し、200℃で硬化させて発熱体を形成した。形成した発熱体は、幅100μmの細線を、微細溝部が形成されている領域に相当する領域(35mm×25mm)全面を覆うようにAl基板上に線間隔100μmで引き回したような形状とした。
(発熱体用ペーストの組成)
・カーボン粉末 … 20重量部
・微粉末シリカ … 25重量部
・キシレンフェノール樹脂 … 36重量部
・ブチルカルビトール … 19重量部
また、下記組成の電極用ペーストを用いて、スクリーン印刷により発熱体の所定の2ヶ所に電極(0.5mm×0.5mm)を形成した。
(電極用ペーストの組成)
・銀めっき銅粉末 … 90重量部
・フェノール樹脂 … 6.5重量部
・ブチルカルビトール … 3.5重量部
次に、発熱体上に形成された2個の電極を露出するように、下記組成の保護層用ペーストを用いて、スクリーン印刷により発熱体保護層(厚み20μm)を発熱体上に形成した。
(保護層用ペーストの組成)
・樹脂分濃度 … 30重量部
・シリカフィラー … 10重量部
・ラクトン系溶剤(ペンタ1−4−ラクトン) … 60重量部
次いで、Al基板の微細溝部形成面側を下記組成の触媒水溶液内に浸漬(10分間)し、その後、250℃、6時間の乾燥還元処理を施して、微細溝部内に触媒を担持させた。
(触媒水溶液の組成)
・Al … 41.2重量%
・Cu … 2.6重量%
・Zn … 2.8重量%
次に、Al基板の微細溝部形成面側をアルミナ粉により研磨してAl面を露出させた。次いで、カバー部材として、厚み100μmのAl板をAl基板面に下記の条件で拡散接合した。このAl板には、2ヶ所の開口部(原料導入口とガス排出口、各開口部の寸法は0.6mm×0.6mm)が設けられており、各開口部がAl基板に形成された微細溝部の流路の両端部に一致するように位置合わせをした。
(拡散接合条件)
・雰囲気 :真空中
・接合温度 :300℃
・接合時間 :8時間
これにより、本発明のマイクロリアクターを得ることができた。
[実施例2]
まず、実施例1と同様にして、Al基板に微細溝部を形成した。
次に、このAl基板に、実施例1と同様にして、陽極酸化により酸化アルミニウム薄膜を形成した。
次いで、Al基板の微細溝部形成面側を下記組成の触媒水溶液内に浸漬(2時間)し、その後、350℃、1時間の乾燥還元処理を施して、微細溝部内に触媒を担持させた。
(触媒水溶液の組成)
・Al … 41.2重量%
・Cu … 2.6重量%
・Zn … 2.8重量%
次に、Al基板の微細溝部形成面側をアルミナ粉により研磨してAl面を露出させた。次いで、カバー部材として、厚み100μmのAl板をAl基板面に下記の条件でロウ付けにより接合した。このAl板には、2ヶ所の開口部(原料導入口とガス排出口、各開口部の寸法は0.6mm×0.6mm)が設けられており、各開口部がAl基板に形成された微細溝部の流路の両端部に一致するように位置合わせをした。
(ロウ付け接合条件)
・ロウ材料 :アルミ4004(古河スカイ(株)製)
・雰囲気 :真空中
・ロウ付け温度 :600℃
・ロウ付け時間 :3時間
次いで、接合したAl基板の酸化アルミニウム薄膜上に、実施例1と同様にして、発熱体、電極、発熱体保護層を形成した。
これにより、本発明のマイクロリアクターを得ることができた。
本発明は、メタノール等の改質、一酸化炭素の酸化除去等の反応からなる水素製造の用途に利用することができる。
本発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す斜視図である。 図1に示されるマイクロリアクターのII−II線における拡大縦断面図である。 図1に示されるマイクロリアクターの金属基板の微細溝部形成面側を示す斜視図である。 本発明のマイクロリアクターの他の実施形態を示す図2相当の縦断面図である。 本発明のマイクロリアクター製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。 本発明のマイクロリアクター製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。 本発明のマイクロリアクター製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。 本発明のマイクロリアクター製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
符号の説明
1,1′…マイクロリアクター
2,2′…金属基板
3…微細溝部
4…絶縁膜(金属酸化膜)
4′…絶縁膜
5…発熱体
6…電極
7…発熱体保護層
8…カバー部材
C…触媒

Claims (9)

  1. 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターにおいて、
    一方の面に微細溝部を備えた金属基板と、該金属基板の他の面に絶縁膜を介して設けられた発熱体と、該発熱体の電極のみを露出させて前記発熱体を覆うように設けられた発熱体保護層と、前記微細溝部内に担持された触媒と、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合され原料導入口とガス排出口を有するカバー部材と、を備えることを特徴とするマイクロリアクター。
  2. 前記金属基板はAl基板、Cu基板、ステンレス基板のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクター。
  3. 前記絶縁膜は前記金属基板を陽極酸化して形成した金属酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクター。
  4. 前記微細溝部内にも前記金属酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のマイクロリアクター。
  5. 前記金属基板はAl基板であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のマイクロリアクター。
  6. 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
    金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
    前記金属基板を陽極酸化して金属酸化膜からなる絶縁膜を形成する工程と、
    前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面の前記金属酸化膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、
    前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
    原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。
  7. 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
    金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
    前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、
    前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、
    前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
    原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。
  8. 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
    金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
    前記金属基板を陽極酸化して金属酸化膜からなる絶縁膜を形成する工程と、
    前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
    原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、
    前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面の前記金属酸化膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。
  9. 原料を改質して水素ガスを得るためのマイクロリアクターの製造方法において、
    金属基板の一方の面に微細溝部を形成する工程と、
    前記微細溝部内に触媒を担持する工程と、
    原料導入口とガス排出口が形成されたカバー部材を、前記微細溝部を覆うように前記金属基板に接合する工程と、
    前記微細溝部が形成されていない前記金属基板面上に絶縁膜を設ける工程と、
    前記絶縁膜上に発熱体を設け、該発熱体の電極が露出するように発熱体保護層を前記発熱体上に形成する工程と、を有することを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。
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