JP4866713B2 - マンホールの構造 - Google Patents
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そのような問題を改善するために、例えば図14に示すように、マンホールaの下に大きなコンクリートブロックbを形成し、そのブロックbの重量によって地盤の液状化に対するマンホールaの浮上を防止するような構成が開発されている。(特許文献1参照)
あるいはマンホールの周囲の地盤が液状化しないように地盤改良する方法も提案されている。(特許文献2参照)
あるいは、液状化した土砂をマンホールの内部に導入して浮力を吸収するような方法も提案されている。(特許文献3参照)
<1> マンホールの浮上防止のためにカウンターウエイトを取り付ける構造では、カウンターウエイトの設置作業に多大な労力を要し、掘削量も大きくなり不経済なものである。
<2> マンホールの周囲の地盤を改良する方法では、マンホールの設置前後に地盤改良の工事が必要となり、道路を遮断する時間が長時間にわたるとともに高価な作業となる。
<3> 液状化した土砂をマンホールの内部に導入する構造は、実際の地震時に瞬間的に土砂が移動するとは考えにくく、実施化には疑問を有するものである。
<1> カウンターウエイトの重量を利用するのではなく、浮上抑止板の上に位置する、地上に至るまでの土塊の重量を利用するものであから、簡単な構造によって大きな浮上抑止力を得ることができる。
<2> マンホールの周囲の地盤を改良するような長時間の作業を必要とせず、したがって交通へ与える影響を最小限に抑えることができる。
<3> 液状化した土砂をマンホール内部に導入するような不確定な要素がなく、確実にマンホールの浮上の抑止をはかることができる。
<4> 従来の公知のマンホールに浮上抑止板を取り付けるだけの簡単な構造であるから、従来の市販のマンホール体や、現場打設のマンホールの構築方法をそのまま利用できる。
地中の下水道、電気や電話線の配管路などの検査、補修のために人の出入りが自由な中空の筒体をマンホール1として設ける。
本発明の対象とするマンホール1は、プレキャストコンクリート製のマンホール1、あるいは現場打ちコンクリート製のマンホール1、鋼製、合成樹脂製のマンホール1である。
マンホール1の基本形は中空の円筒形であるが、水平断面が正方形のもの、長方形のもの、楕円形のものなども対象とすることができる。
マンホール1の外周には、鍔状に浮上抑止板2を突設する。
この浮上抑止板2はコンクリート製、鋼製、合成樹脂製の板体であり、マンホール1を地中に設置した場合に、ほぼ水平の方向に位置するように構成する。
そして浮上抑止板2の寸法は、平面図として見た場合に、すなわち平面視的に、マンホール1の外部に向けて突出した状態を構成する必要がある。
そのために例えば、浮上抑止板2は、浮上抑止板2は内側にマンホール1の外形とほぼ等しい形状の穴を開口した鍔状の板体を採用する。(図1、2の実施例)
あるいは浮上抑止板2は、マンホール1の外形よりも外形の大きく、穴を開口していない板体を採用する。(図3の実施例)
マンホール1に浮上抑止板2を取り付けるには各種の構成を採用することができる。
例えば(1)従来の構造のマンホール1を工場、あるいは現場で製造する際に、マンホール1の底版と一体で、かつ平面視的に、マンホール1の外部に向けて突出した浮上抑止板2を形成する方法を採用することができる。
あるいは(2)マンホール1の直下に基礎コンクリートを打設する場合に、その基礎コンクリートの外周に、平面視的に、マンホール1の外部に向けて突出した状態で浮上抑止板2を一体構造として形成する方法を採用することができる。
あるいは(3)筒状のマンホール1の外周に、外向きに係止突起を突設し、一方、浮上抑止板2は内側にマンホール1の外形とほぼ等しい形状の穴を貫通した鍔状の板体として構成し、係止突起の上側に、浮上抑止板2を配置して構成することができる。(図1,2の実施例)
平面視的に見た場合に、係止突起はマンホール1の外周に外向きに突出しているから、この突起が、その上側に搭載した浮上抑止板2を支持する。
あるいは(4)筒状のマンホール1の外周に係止突起を突設し、浮上抑止板2はマンホール1の外形よりも外形の大きい板体で構成し、浮上抑止板2には係止突起に契合する係止具3を設け、この係止具3と係止突起とを係合可能に構成することもできる。(図3の実施例)
あるいは、(5)複数の短筒を積み重ねて構成したマンホール1の場合に、地震時の上下動によって相互に外れる可能性が考えられるが、浮上抑止板2をマンホール1の底部に配置し、その浮上抑止板2とマンホール1の上部とを鉄筋、鉄棒、鉄板、ロープ、炭素繊維のベルトなどの係止具3で連結しておけば、マンホール1は上下から拘束されることになり、浮上の抑止だけでなく、短筒相互の分離をも抑止することができる。
その場合に、浮上抑止板2は穴のない平板とし、その上にマンホール1を搭載する構成でもよいが(図12)、貫通穴を開口した構成の浮上抑止板2を採用することもできる。(図13)
また図13に示すように、鉄筋、鉄棒、鉄板、ロープ、炭素繊維のベルトなどの係止具3の端を浮上抑止板2に固定し、中間をマンホール1の上部に掛け回しておく構成を採用することもできる。
マンホール1の周囲に設けた浮上抑止板2は、マンホール1の外周面から少なくともマンホール1の外形、外寸法の10%以上、平面視的に周囲に向けて突出させることが望ましい。
その根拠を以下に検討する。
文献「新編 土と基礎の設計計算演習」(社団法人地盤工学会発刊)421ページに記載されている一節を以下に記述する。「液状化した地盤は、液体としての力学的挙動に似た挙動を示す。その単位体積重量は液状化する前の飽和砂地盤のそれと同じであり、水の単位体積重量の約2倍である。」
本発明のマンホール1は、上記の理論をマンホール1の浮上の抑止のために応用したものである。
ここで単純化したモデルで本発明の考え方を示す。
まず比較のために図8に示すような従来のマンホールの単純モデルを検討する。
マンホールが支持地盤上に安定した状態を表している。この状態を数式で表すと下記のようになる。
W1 + W2 + Fa ≧ Ua --------------------------式1
ここで W1はマンホールの重量
W2はマンホールより上部の道路舗装、土砂等の重量
Faはマンホールと周辺土砂との摩擦力
Uaはマンホールが受ける地下水による浮力
上記の従来のマンホールのモデルが、地震の発生で周辺土砂の一部もしくは全てが液状化した場合には、マンホールと液状の周辺土砂との間の摩擦力はゼロに近づく。(図9)
また、周辺土砂は液状化して水の単位体積重量の2倍の単位体積重量をもった液体と想定することができる。つまり浮力は2倍になる。
そして下記のような数式で表される状態で、マンホールが浮かび始めると考えられる。
W1 + W2 + Fb < Ub --------------------------式2
ここで
W1は式1と同じ
W2は式1と同じ
Fbはマンホールと周辺土砂との摩擦力 :Fb≒0
Ubはマンホールが受ける液状化した土砂による浮力:Ub≒Ua×2
以上からわかるように、従来の形状のマンホールの場合には、液状化現象によって、周辺摩擦力がゼロに近づき、かつ浮力が2倍近くになることからマンホールが浮き上がり、さらにマンホールが地表面に飛び出す状態が発生する。
本発明の抑止板を装着したマンホール1が地震時の液状化した周辺土砂の中にある時の単純モデルを図10で検討する。
浮上抑止板2より上部の土砂によってマンホール1の浮き上がりを防いでいる状態を下記の数式で表すことができる。
W1 + W2 + W3 + Fb ≧ Ub --------------------式3
ここで W1は式2と同じ
W2は式2と同じ
W3は抑止板上部の土砂の重量
Fbは式2と同じ
Ubは式2と同じ
言い換えると本発明の抑止板2は、空中で落下傘が空気の抵抗で落下しないように、液状化した土砂の中で抑止板2は土砂の抵抗で浮上しない点に着目した発明である。その抵抗力は液状化した土砂の重量である。
図11に示すような単純なモデルで一般的な数値を使っての計算例を示す。
V1:マンホールの体積
V2:マンホールの内部空間
γc:コンクリートの単位体積重量:25kN/m3
γ1:周辺土砂の単位体積重量:20kN/m3
γ2:マンホール上部の土砂その他の単位体積重量:20kN/m3
V1=1.0×1.0×3.14×3.0 =9.42 m3
V2=0.8×0.8×3.14×2.6 =5.22 m3
W1=(V1-V2)×γc=(9.42-5.22)×25kN/m3 =105 kN
W2=1.0×1.0×3.14×1.0×20 =62.8 kN
W3=(1.2×1.2-1.0×1.0)3.14×3.6×20 =99.5 kN
Ua=V1×水の単位体積重量 =9.42×10 = 94.2 kN
Ub=V1×γ2 =9.42×20 = 188.4 kN
ここで、図4の単純モデルが通常状態にあるときの関係式は以下のようであり、周辺摩擦力Faを無視しても安定状態にあると言える。
W1 + W2 + Fa ≧ Ua ------------------------------式1
105kN+62.8kN+α > 94.2kN
次に、地震時に本発明のマンホール1が液状化した土砂の中にある状態では、以下の式のように周辺摩擦力Fbは期待できないのでゼロとなり、浮力は2倍となる。
この状態は右辺の浮力が左辺より大きくなり、マンホールは不安定で浮上する状態にあると言える。
W1 + W2 + Fb < Ub -----------------------------式2
105kN+62.8kN+ 0 < 188.4kN
しかし本発明のマンホール1の周囲にマンホール1の外形の10%以上の抑止板2を装着した場合には、下記の式において、右辺の浮力より左辺のマンホール1自重と上部土砂の重量が大きくなり、したがってマンホール1は浮上しない。
W1 + W2 + W3 + Fb ≧ Ub -----------------式3
105kN+62.8kN+99.5kN+ 0 > 188.4kN
実際にはマンホール1の大きさ形状は様々であり、また、マンホール1が設置される深さも様々である。周辺土砂の土質も一定ではない。
現状では液状化した土砂の粘性や流動性の程度は不明であるが、液状化した土砂内部の水は上昇し、水より比重の重い土砂は沈降する傾向がある。
そして液状化状態の土砂であっても、重量があることは確かである。
このように不明確な点もあるが、抑止板2の面積を余裕のある広さで計画することで、液状化した土砂の中からマンホール1の地表への飛び出し、露出を阻止できるだけでなく、液状化の後にも実用に供すことができる深さと位置に留めておくことができる。
以上のモデルからマンホール1躯体外側にマンホール1の外形の10%以上の幅を持った抑止板2を設置することで浮き上がりに抵抗する効果が現れると想定できる。
マンホール1の平面視的形状と異なった平面形状の浮上抑止板2を設置する場合、例えばマンホール1の平面視的形状が円形で、浮上抑止板2が多角形の平板である場合、浮上抑止板2の総面積が、マンホール1の平面積の0.44倍以上であることが好ましい。
また浮上抑止板2がマンホール1の外周に突出している面積が小さい場合でもその抑止効果は期待できる。
しかし、地震時にマンホール1が傾斜せず、供用が可能な位置を確保するためには、平面視的にマンホール1の外周に44%以上の面積を維持し、かつマンホール1の重心を中心として前後左右のバランスのよい面積配分を行うことが好ましい。
本発明の発明者による室内実験について説明する。
マンホールの深さ、形状はさまざまであることから、深さ、形状別にいくつかに分類し、実物大の実験によって抑止板の幅、面積を定めることで、実用化できるが、今回は牛乳瓶をマンホールとして実験を行った。
まず直径が約5cmの牛乳瓶を2本用意し、1本には浮上抑止板2として薄板をその全周の外側に1cmの幅だけ突設させた。
他の1本は比較例とし、同じ規格の牛乳瓶において、浮上抑止板2は取り付けなかった。
そして大型のプラスチック製のバケツの底に約10cmの厚さの砂層を形成し、その砂層の上に上記の2本の牛乳瓶を設置した。(図4)
その後、牛乳瓶の周囲を、口元まで砂を付き固めながら埋めた。(図5)
次に砂が水の飽和状態に近づくように散水した後、バケツに急激な振動を与えた。
振動を与えている時間にしたがって、浮上抑止板2を取り付けていない比較例の牛乳瓶は簡単に上昇をはじめた。(図6)
そして、約20秒後には全体が砂層の表面に飛び出して横転してしまった。(図7右)
それに対して、周囲に浮上抑止板2を取り付けた牛乳瓶は、砂の液状化が始まっても、まったくその位置を移動せず、浮上をすることもなかった。(図7左)
そして振動を停止した後にも引き上げようとしても、浮上抑止板2上の砂層が締まった状態になり引き上げの抵抗が大きくなっていた。
このように、本発明のマンホール1が液状化に対して安定していることが模型でも立証された。
2:浮上抑止板
3:係止具
Claims (3)
- 筒状のマンホールと基礎コンクリートと浮上抑止板より構成し、
マンホールの直下に打設した基礎コンクリートと浮上抑止板は一体構造であり、
浮上抑止板は、平面視的にマンホールの外部に向けて突設して構成し、
浮上抑止板とマンホールとは、係合部材によって係合可能に構成した、
マンホールの構造。 - マンホールの短筒相互の分離を抑止可能であるように、浮上抑止板とマンホールの上部とを、鉄筋、鉄棒、鉄板、ロープ、炭素繊維のベルトなどの係合部材によって係合可能に構成した、
請求項1記載のマンホールの構造。 - 浮上抑止板は、
平面視的に、マンホールの外部に向けて、マンホールの外形寸法の少なくとも10%を突設して構成した、
請求項1または2記載のマンホールの構造
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