JP5542529B2 - ハイブリッドアンカーおよびアンカー工法 - Google Patents
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これによれば、アンカーの上端に吊りロープの端末を支持させた状態で法面に略平行の引張り荷重が作用下ときに、抵抗部体の複数の羽根が埋め戻した表土の土圧抵抗となり、荷重方向である前面側への傾きを緩和することが可能であるとされている。
また、確実に耐力が期待できる岩層まで表土を除去し、埋め戻すことは施工にかなりの時間とコストが掛かり、かつ、除去した表土を埋め戻しするため表土の土圧は低下し、羽根の十分な土圧抵抗が期待できない等の問題がある。
さらに、岩層と表土層の境界を起点とした傾きは剪断破壊の起点となるなどの問題がある。
前記クッション材としては可縮性があることが好ましく、砂、土、それらの混合物、ゴム粉、発泡スチロール粉などの粒状物が代表的であるが、スポンジや発泡スチロールなどの可縮性あるいは弾性を持つリング状の固体であってもよい。
これによれば、パイプ体は360度方向で所要角度に自在に傾斜することができるので、どのような方向でアンカー上部に変位が生じても下部のアンカーロッドに曲げ応力を伝達させないようにすることができ、360度方向に同じ耐力を期待できる。また、アンカーロッド用孔とパイプ体配置用の孔の軸線が少しずれていても球面座金で誤差を吸収できるので、穿孔作業が楽になる。
図1は本発明によるハイブリッドアンカーを落石防止装置に適用した使用例を示しており、図4はロープ端末の引き止め用アンカーに使用した例、図5はロープ交差部のアンカーに使用した例である。
そうした落石等が発生する危険のある斜面aに多数の縦横ロープ11、12を地表に沿うように張設し、それぞれのロープ端末部と縦横ロープ11、12の交差部を本発明によるハイブリッドアンカー1の上端部に取付け金具9を介して係止している。縦横ロープ11、12間には縦横の補強ロープが配設されている。
パイプ体5の下端部には溶接等により底板51が固着されている。底板51の厚さは球面座金6の厚さと同等かそれ以上が望ましく、中心にはアンカーロッド4の挿通を許容する径をもち、かつ球面座金6を着座しつつ傾転を許す球面座付き孔52が座ぐり加工により形成されている。パイプ体5の本体50の上端部はキャップ54を抜け止めするピンボルト91を通す横孔53が180度対称に設けられており、ピンボルト91は同時にロープ11,12の離脱を防止する役目を果たす。
岩層cに形成されたアンカーロッド孔101には樹脂系あるいはセメント系の凝固剤103が充填されており、凝固剤が硬化することでアンカーロッド4は固定される。
表土層bから岩層cにかけてはパイプ体5を挿入して安置させるパイプ挿入用孔100が設けられており、そのパイプ挿入用孔100は、表土層bを貫く貫通孔1000と、前記貫通孔1000と同軸状をなし、岩層cの表面から凹入した岩層凹入部1001とからなっている。
パイプ体5の球面座付き孔52はアンカーロッド4のネジ部42の貫通を許容するので、球面座金6を突出しているネジ部42に挿通し、ナット7で締め付けることによりアンカーロッド4とパイプ体5が結合される。
図5のロープ交差部アンカーでは、取付け部9としてパイプ体5の上部のキャップ54に、平面小判状をなし、内面に十字状に交差したロープ半嵌め溝を形成した上下2部材と締め付けボルトからなる十字グリップ92が装備され、その十字グリップ92に縦ロープ11と横ロープ12が交差状に圧締されている。
図2(a)は矢印で示す引張り力が設計荷重内の場合である。パイプ体5の表土層bに対する土圧耐力と岩層凹入部1001に装填しているパイプ体下端部周辺の岩盤の抵抗によりハイブリッドアンカー1の変位(曲げ)は見られず、表土層bと岩層cとの境界でのパイプ体の変形も見られない。
図2(b)は引張り力が設計荷重を超えた場合を示す。設計値を超える引張り力が加わった場合、表土層bの土圧が耐えられず、パイプ体5のロープ取り付け部は引っ張り方向に変位する。しかし、表土層bと岩層cとの境界でパイプ体5が剪断負荷を吸収し、アンカーロッド4は球面座金6の滑りで引張り荷重が引き抜き荷重に転化され、アンカーロッド4に加わる剪断負荷が大幅に緩和される。
(1)斜面aに落石を防止すべき縦、横ロープ11、12の張設位置を決定する。
(2)縦、横ロープ11、12の端末箇所、交差箇所を決定する。
(3)ロープ端末箇所、交差箇所に、図8(a)に示すように、目盛の付いたピンアンカー110をハンマーなどで表土層bに打ち込み、ロープ端末箇所、交差箇所の表土層bの深さを測定することで土圧耐力のある岩層cまでの深さを正確に知ることができる。
大径ビット131はパイプ体5を埋め込む凹入部1001を穿孔する役割を果たし、したがってパイプ体5の本体50とほぼ同径たとえば直径115〜120mmにする。子ビット132はアンカーロッド4のパイロット穿孔の役割を果たすもので、たとえば直径28〜34mmであり、岩層bを前記深さまで掘削したところで削岩機13をいったん取り除く。これにより、表土層を貫く貫通孔1000と、端部が岩層cの所要深さに達する凹入部1001と、これの底1002からさらに深く伸びるパイロット穴101´が穿設され、全体としてパイプ挿入用孔100とされる。
(8)ついで図10(b)のように、球面座孔52を通してアンカーロッド用孔101に凝固剤103を充填、撹拌し、アンカーロッド4を球面座孔52を通してアンカーロッド用孔101に挿入する。このときアンカーロッド4は上端部のねじ部42が球面座孔52を貫いて本体50内に突出するようにする。充填された凝固剤103はアンカーロッド4の凹凸に均等に付着し強固に固定される。
アンカーロッド4の挿入は、エアインパクトといった回転治具を使用し、カプラーにより上端部のねじ部42を連結してアンカーロッド用孔101に押し込んでいけばよい。
図4の端末部アンカーでは、縦、横ロープ11、12の端部はパイプ体5を巻くように折り返され、グリップ93あるいは巻きグリップで複数個所を固定される。固定後、パイプ体5の上端に雨水等の水進入防止のキャップ54を被せ、パイプ体の横孔90にピンボルト91を貫挿し、キャップ54の固定とロープ11、12の外れ防止とする。
図5に示すロープ交差部アンカーでは、縦、横ロープ11、12の交差部がキャップ54にボルトナットで取り付けられた十字グリップ92により締結される。
この第2実施例と後述する第3実施例は、パイプ挿入用孔100の穿孔時に意図的にあるいは誤って凹入部1001を深く形成し、パイプ体5の下端部がたとえば200〜300mmというように岩質の凹入部1001に深く挿入安置される場合や、凹入部1001が適度な深さでも底部下の岩質が緻密で非常に硬いなどの地質条件である場合などにおいてにも、球面座金6を的確に機能させて、アンカーロッド4の曲げ応力の回避を図ろうとするものである。
クッション材15は土砂、ゴム粉、発泡スチロール粉などの粒状物が代表的である。砂や土は穿孔時の排土砂であってもよい。また、クッション材15はスポンジや発泡スチロールなどの可縮性あるいは弾性を持つ固体であってもよい。前者の場合は凹入部1001の底1002に敷き詰めればよく、後者の場合にはパイプ体5の底板底面に貼り付けてもよい。
その他の構成はすべて第1実施例と同様であるからこれの説明を援用することとし、図面に同じ符号を付すにとどめる。
しかし、この第2実施例ではパイプ体5の底と岩層凹入部1001の表面との間に可縮性のクッション材15が介在しているので、岩層凹入部1001の深さが大きかったりしても、異常な外力が作用した場合に球面座金6が的確に機能する。すなわち、図12(b)のように、球面座金6を中心にパイプ体5の外力作用側はクッション部材15の厚さ減少により沈み込み、外力反対側は浮き上がろうとする。これによりパイプ体5は傾動し、アンカーロッド4には曲げ応力が作用せず、引抜荷重のみ伝達される。
図13は適用例を示しており、クッション材15の介在以外の構成は第1実施例と同様であるから説明は援用するものとする。
アンカー工法の他の工程は、前記第1実施例と同様であるから説明は援用するものとする。
この実施例においては、外力作用時に球面座金6を中心として外力側にパイプ体底部が沈み、反外力側が浮き上がる挙動を生じさせるために、パイプ体5の底板51が載置される凹入部1001の底を平坦面でなく、中心部を頂点として360度方向で外径に向かうほど低い椀状面1003としていることが特徴である。その他の構成はすべて第1実施例と同様であるからこれの説明を援用することとし、図面に同じ符号を付すにとどめる。
図17は適用例を示しており、クッション材15の介在以外の構成は第1実施例と同様であるから説明は援用するものとする。
それ以降の工程は第1実施例と同様であり、底板51が接している岩層凹入部の表面が平らであるが、これが椀状面1003になっている点を除いて図10の各工程と同じであるから説明は援用する。
b 表土層
c 岩層
1 ハイブリッドアンカー
11 縦ロープ
12 横ロープ
4 アンカーロッド
5 パイプ体
6 球面座金
7 ナット
8 保孔管
15 クッション部材
52 球面座付き穴
100 パイプ挿入用孔
101 アンカー用孔
103 凝固剤
1001 岩層凹入部
1003 椀状面
Claims (5)
- 岩層と該岩層の上部を覆う表土層とを有する法面にロープで代表される条体を支持するため設置されるアンカーにおいて、該アンカーが、前記岩層に埋設されたアンカーロッドと、上部に条体の取付け部を有し下端部が岩層に達するように表土層内に配置されたパイプ体とを備え、前記パイプ体は前記アンカーロッドに球面座金を介して連結されており、
パイプ体は底板にアンカーロッドの突出を許容する径の球面座付き穴を有し、アンカーロッドに外装した球面座金がアンカーロッドに螺合したナットにより球面座付き穴に面接触されていることを特徴とするハイブリッドアンカー。 - 岩層と該岩層の上部を覆う表土層とを有する法面にロープで代表される条体を支持するため設置されるアンカー工法であって、アンカーとしてアンカーロッドとパイプ体を用い、法面にパイプ体を挿入する孔を岩層に一部が達するまで穿孔する工程と、前記孔に保孔管を挿入する工程と、アンカーロッドを挿入するためのアンカー用孔を前記保孔管を貫いて岩層に穿孔する工程と、保孔管を撤去しパイプ体を前記孔に挿入したうえで、パイプ体を通して前記アンカー用孔内に凝固剤を挿入する工程と、アンカーロッドをアンカー用孔に挿入する工程と、パイプ体内のアンカーロッド上端部に球面座金を挿通してパイプ体底の球面座に接触するようにナットで連結する工程とを有することを特徴とするアンカー工法。
- 岩層と該岩層の上部を覆う表土層とを有する法面にロープで代表される条体を支持するため設置されるアンカーにおいて、該アンカーが、前記岩層に埋設されたアンカーロッドと、上部に条体の取付け部を有し、下端部が岩層に達するように表土層内に配置されたパイプ体とを備え、前記パイプ体はアンカーロッドに球面座金を介して傾動可能に連結され、かつ前記パイプ体が進入している岩層凹入部表面とパイプ体底面との間にクッション材が介在されており、
パイプ体は底板にアンカーロッドの突出を許容する径の球面座付き穴を有し、アンカーロッドに外装した球面座金がアンカーロッドに螺合したナットにより球面座付き穴に面接触されていることを特徴とするハイブリッドアンカー。 - クッション材が粒状物である請求項3に記載のハイブリッドアンカー。
- 岩層と該岩層の上部を覆う表土層とを有する法面にロープで代表される条体を支持するため設置されるアンカーにおいて、該アンカーが、前記岩層に埋設されたアンカーロッドと、上部に条体の取付け部を有し下端部が岩層に達するように表土層内に配置されたパイプ体とを備え、前記パイプ体はアンカーロッドに球面座金を介して傾動可能に連結され、かつ前記パイプ体の底面が進入している岩層凹入孔表面が、中心部を頂点として360度方向で外径に向かうほど低い椀状となっており、
パイプ体は底板にアンカーロッドの突出を許容する径の球面座付き穴を有し、アンカーロッドに外装した球面座金がアンカーロッドに螺合したナットにより球面座付き穴に面接触されていることを特徴とするハイブリッドアンカー。
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