JP3863399B2 - 高耐力アンカー装置およびその設置方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
この発明は,落石防止用柵,雪崩防止用柵等を支持または補強するためのロープ(ワイヤを含む)の一部を固定するアンカー装置,巨石,巨岩の落下を未然に防止するために縦横方向に網状に張設されたロープ(ワイヤロープネット)や落石防止のための金網とともに法面に縦横に張設されたロープの両端を固定するアンカー装置,その他の用途に用いられるアンカー装置およびその設置方法に関する。
【0002】
この明細書において,地表(または地面)とは,山林,山岳等における傾斜面(法面),岩盤,大地,その他の地面(地球表面の露出している全ての面)をいい,地中とは地表の内部(表土層,礫土,岩盤等を含む)をいう。
【0003】
【従来技術】
落石防止用柵,雪崩防止用柵等(防護柵)のロープまたは巨石,巨岩の落下防止その他の落石防止のために網状に縦横に張設されたロープ(防護施設のためのロープ)を固定するためにアンカーが設けられる。
【0004】
この種のアンカー(アンカーロッド,アンカーパイプ等を含む)は,一般に,地中に直接打ち込まれるか,または地表に掘削孔を形成し,この掘削孔にアンカーを挿入するとともにモルタル,セメント等の凝固剤を流し込んで埋込むことにより定着される。特に,岩盤が土砂等の表土層で覆われている場合においては,アンカーは岩盤(岩部)に達するまで挿入される。
【0005】
このようにして設置されたアンカーの上端にはロープの一端が連結される。ロープは一般に地表に沿って張られる(防護柵の支持用ロープは斜めに張られる)。アンカーはロープによって引張られるから,アンカーの上部には地表にほぼ平行な方向(アンカーの長さ方向にほぼ垂直な方向)の荷重が加わる。このため,アンカーの下半部が岩盤にしっかりと固定されているとアンカーの上部がロープの張力により塑性変形を起こし,曲がってしまう。また,アンカーが岩盤に固定されていない場合には,アンカーの位置がずれやすい。
【0006】
アンカーはアンカーの長さ方向の荷重に対しては,地中との摩擦力により抵抗力は大きいが,水平方向の荷重に対する抵抗力はかなり劣る。そこで,張設されたロープによってアンカーの長さ方向とほぼ垂直な方向に加えられる荷重をアンカーの長さ方向へ変換するための方向変換部材を用いる方法が提案されている(特開平11−280070号公報参照)。
【0007】
図10に示すように,この方法はアンカー40の全体を地面にほぼ垂直に定着する。アンカー40の上端に連結され,地表まで延びたロープ41を地表に沿って張設するときに,半円柱状の方向変換部材42の周面に沿わせる。
【0008】
ロープ41に加わる地表に沿う方向の荷重を,半円柱状体の方向変換部材42によって,アンカーの長さ方向に変換することができるのでアンカーの耐久力を保つことができる。しかしながら,方向変換部材42は半円柱状であってその平坦面が地表に接しているので,発明者らの実験によると,ロープの引張が大きくなると,破線で示すように,方向変換部材42は地中にめり込んでしまう。ロープ41の張力がさらに増すと,方向変換部材42はさらに傾き,かつ位置が大きくずれ,鎖線で示すように,遂にはロープが半円柱状の周面から外れ,アンカーの長手方向に垂直な力がアンカーに加わるようになり,せん断力が増大する。
【0009】
【発明の開示】
この発明はアンカーにその長手方向に垂直な方向に加わる荷重をできるだけ軽減し,高耐力のアンカー装置を実現できる設置方法,およびこの設置方法によって設置された高耐力アンカー装置を提供するものである。
【0010】
この発明による高耐力アンカー装置の設置方法では,アンカー,および荷重方向変換部材を用意する。荷重方向変換部材は,断面が円弧状の土圧面を持ちかつ長さが幅に比べて長い土圧部分と,この土圧部分の円弧状土圧面の反対側に設けられた円弧状案内面を有するロープガイド部分とを備えている。この設置方法は,まずアンカーの上端にロープの一端を連結し,アンカー全体をほぼ垂直に地中に定着し,次に上記荷重方向変換部材を,上記アンカーからほぼ垂直にのびるロープの地表に出た部分がほぼ接する位置において,上記荷重方向変換部材の長手方向がロープの張設方向とほぼ直交するように上記土圧面を下にして地表に配置し,地表に出たロープを上記荷重方向変換部材の上記ロープガイド部分に沿わせて,張設するものである。
【0011】
ここでアンカーは,アンカーロッド,パイプアンカー,ロックボルト,掘削(削孔)ロッド等,様々な名称で呼ばれるもの,すなわち,中実,中空を問わず,断面については円形,多角形(異形)を問わず,アンカーとして用いられる棒状のもの全てを含む。
【0012】
荷重方向変換部材の土圧部分は中実のもののみならず,中空のものを含む。中空のものについてはその両端が解放されていても,閉塞されていてもどちらでもよい。断面が円弧状とは,円の一部のみならず,楕円,その他の曲線の一部を含む。ロープガイド部の円弧状案内面についても同じである。荷重方向変換部材の製造の観点から最も好ましい実施態様では,円弧状は半円状である。円弧は半円よりも少なくてもよいし,半円以上でもよい。また,土圧部分の円弧状土圧面とロープガイド部分の円弧状案内面は滑らかに連続していることが望ましい。
【0013】
ロープはワイヤ,ワイヤロープ等を含む概念であり,最も一般的には鋼製の撚り線が用いられる。
【0014】
アンカー全体をほぼ垂直に地中に定着するとは,地表がほぼ水平面であればアンカーを鉛直に定着することになるが,地表が傾斜面(法面)の場合には,この傾斜面に対してほぼ垂直ということを意味する。すなわち,アンカーの設置場所の地表に対してほぼ垂直ということである。したがって,アンカー上部に連結されたロープは地表に対してほぼ垂直にのびて地表に出ることになる。
【0015】
荷重方向変換部材を地表に配置するとは,その土圧部分の長さ方向を地表に沿わせて配置することであり,土圧部分の円弧状土圧面を下にして荷重方向変換部材を地表に単に置くことのみならず,ロープガイド部分を地表に突出させた状態で土圧部分の一部またはほぼ全部を地中に埋めることも含む。
【0016】
一般にロープを張設する方向はロープ張設の目的に応じてアンカー設置場所によって定まっている(設計されている)。したがって,ロープ張設方向を基準にすれば,荷重方向変換部材を,その土圧部分の長手方向がロープ張設方向とほぼ直交する方向に配置すると表現される。ロープを荷重方向変換部材の土圧部分の長手方向とほぼ直交する方向に張設するという表現は,土圧部分の長手方向を基準にしたものであり,上記の2つの表現は全く同じ技術的意義を定めたものである。
【0017】
アンカーの上端に連結され,地表に出たロープを荷重方向変換部材のロープガイド部分の円弧状案内面に沿わせて張設することによって,ロープの方向は,地表にほぼ垂直な方向から地表にほぼ平行な方向に変換されることになる。
【0018】
落石防止等のためのワイヤロープネットを構成するロープは地表(斜面であってもよい)にほぼ平行に張設される。大きな岩,石等に掛かる部分ではロープは地表に対してやや斜めになる。さらに,防護柵等の補強のためのロープは当然ながら地表に対して斜めになる。このようなロープ張設のすべての態様がこの発明に含まれる。ロープを地表に沿って(または平行に)張設するということは上記のような地表に斜めに張設することも含む。したがって,荷重方向変換部材によってロープはほぼ直角に方向変換されることのみならず,直角よりも大きい角度で方向変換させることもあり,この発明はこのような態様も当然含むことになる。
【0019】
この発明のアンカー設置方法では,荷重方向変換部材を用いている。荷重方向変換部材の土圧部分は断面が円弧状であってその土圧面に角となる部分が無い。土圧部分はその土圧面と地面との密着度が高く,また角が無いので地面に角による集中荷重が加わらない。したがって,ロープの張力を増大させても,土圧部分が傾くことは殆どなく,または少なく,位置ずれも少ない。荷重方向変換部材のロープガイド部分に沿って掛けられたロープは常にロープガイド部分に沿った状態に保たれる。ロープガイド部分は円弧状であるから,ロープの荷重の方向はロープガイド部分によって確実に変換される。地中に定着されたアンカーにロープによって加わる荷重の大部分はその長さ方向に保たれ,アンカーの長さ方向に垂直な方向に加わる荷重は,あったとしても,小さい。アンカーに加わるせん断力は,あったとしても,小さいから,アンカーの位置がずれたり,アンカーが曲がったりすることは殆どない,または少ない。このようにして高耐力のアンカー装置が実現する。
【0020】
この発明の第一の実施態様においては,上記荷重方向変換部材は,長さが径に比べて長い円柱状体である。この円柱状体の周囲のほぼ半分を占める部分(円柱状体が地表に配置されたときに下側となる部分)が土圧部分であり,残りのほぼ半分を占める部分(円柱状体が地表に配置されたときに上側となる部分)の一部(特に長さ方向の一部でロープが沿う部分)がロープガイド部分である。円柱状体は中実でも,中空でもよく,中空の円柱状体の場合にその両端は開放されていても,閉塞されていてもよい。ロープガイド部分は,円柱状体の表面に全く何も加工を施さない形態でもよいし,凹溝(案内溝)(この溝の内面が案内面となる)を形成したものでもよい。
【0021】
第一実施態様の荷重方向変換部材は円柱状体であるから,どの部分を土圧部分としてもよいので,現場での取扱いが容易である。また,張設したロープによって傾くということが原理的にあり得ない。
【0022】
この発明の第二の実施態様においては,荷重方向変換部材の土圧部分が,断面が半円状の土圧面とこの土圧面の反対側の平坦面とを有する半円柱状体であり,ロープガイド部分が,土圧部分の平坦面に設けられ,断面が半円状の胴部と,この胴部の両側のフランジとからなる。半円柱状体とはその断面が丁度半円である形態のみならず,半円よりも若干小さくても,半円よりも大きくてもよい。また,楕円形をほぼ半分にした断面を持つものでもよい。半円柱状体も中空でも中実でもよく,中空の場合にはその両端が開放されていても,閉塞されていてもよい。ロープガイド部分は,半円状の胴部の両側にフランジを固定したものでもよいし,やや厚い半円板の周面に凹溝(案内溝)を形成したものでもよい。後者の場合には凹溝の底部に近い部分の内周面が案内面となり,その両側の立上った部分がフランジとなる。凹溝の断面は方形でも,V字形でも,丸みを帯びたU字形でもよい。
【0023】
第二実施態様の荷重方向変換部材は,第一実施態様のものよりも軽量化できるので現場への持ち運びが楽であるという利点をもつ。
【0024】
この発明の設置方法によって設置された高耐力アンカー装置は次のようなものである。このアンカー装置は,上部にロープの一端が連結されたアンカー全体がほぼ垂直に地中に定着され,上記アンカーからほぼ垂直にのびるロープの地表に出た部分がほぼ接する位置において,地表に荷重方向変換部材が配置され,上記荷重方向変換部材が,断面が円弧状の土圧面を持ちかつ長さが幅に比べて長い土圧部分と,この土圧部分の円弧状土圧面の反対側に設けられた円弧状案内面を有するロープガイド部分とを備え,上記土圧面を下にして配置されており,地表に出たロープが,上記荷重方向変換部材の長手方向とほぼ直交する方向に,上記荷重方向変換部材の上記ロープガイド部分に沿わせて,張設されているものである。
【0025】
互いに近くの位置に複数本のアンカーが定着されている場合には,複数のロープガイド部分を備えた荷重方向変換部材を用いるとよい。互いに近傍に定着した複数本のアンカーにそれぞれ連結したロープを1つの荷重方向変換部材の複数のロープガイド部分にそれぞれ沿わせて張設し,1つの荷重方向変換部材によって複数本のロープの方向変換を実現することもできる。このとき,荷重方向変換部材の土圧部分には複数本のロープによってほぼ均等に力が加わるように複数本のロープの位置関係を定めるとよい。
【0026】
好ましくは腐食防止のためにロープに被覆を施す,またはロープと荷重方向変換部材をコンクリートで固定する。
【0027】
荷重方向変換部材の大きさ(長さ,幅等)は設置する場所の地面(表土層)(地中)の性質(硬さ,深さ)等に応じて適宜決定,または選択することができる。
【0028】
荷重方向変換部材はアンカーと別体である。したがって,これらを現場に運搬するのが比較的容易である。
【0029】
この発明の好ましい実施態様では,上記ロープの一端に先端部に雄ねじを持つスリーブを圧着しておき,上記アンカーの上端部に雄ねじを形成しておく。雌ねじが形成された円筒状の連結具の両端から,上記スリーブの雄ねじと上記アンカーの雄ねじをそれぞれねじ嵌めることにより,上記アンカーの上端にロープの一端を連結する。アンカーとロープとの連結作業を現場で容易に行うことができる。
【0030】
この発明はさらに上述した第二実施態様の荷重方向変換部材を提供している。この荷重方向変換部材は,断面が半円状の土圧面と,この土圧面の反対側の平坦面とを有し,長さが幅に比べて長い半円柱状体,および上記半円柱状体の上記平坦面に設けられ,断面が半円状の胴部と,この胴部の両側のフランジとからなるロープガイドを備えたものである。
【0031】
【実施例の説明】
ロープが地表に沿って地表にほぼ平行な方向に張設される実施例について説明する。図1および図2は設置された高耐力アンカー装置を示すものであり,図1はその縦断面図,図2は上面図である。
【0032】
高耐力アンカー装置はアンカー21,長さが径(幅)に比べて大きい荷重方向変換用円柱状体(荷重方向変換部材)10およびロープ30を含む。アンカー21は地中に定着されている。すなわち,アンカー21は地表に対してほぼ垂直に地中に埋められ,その下部は岩盤8に挿入されている。アンカー21はモルタル・セメント等の凝固剤22によって強固に地中(岩盤8を含む)に固定されている。
【0033】
アンカー21の上部にはロープ30が連結されている。ロープ30は表土層9内を通り,上方に延び,地表に出たところで円柱状体10の周面の一部(ロープガイド部分の円弧状案内面)に沿い,地表とほぼ平行に張設されている。円柱状体10のロープ30が沿っている部分がロープガイド部分16である。
【0034】
荷重方向変換用円柱状体10は円筒であり,その外径はアンカー21に連結されたロープ30の径よりも十分大きい。荷重方向変換用円柱状体10は鉄,鋼鉄,その他の強固な材料により作られる。この円柱状体10は,一端がアンカー21に連結されたロープ30が表土層9内を通って地表に出た位置において,ロープ30が接する位置に,長手方向が地表と平行になるように,その半分程度(土圧部分)が表土層9内に埋め込まれた状態で配置されている。円柱状体10の下半分の周面が土圧面14である。円柱状体10の長手方向は地表上におけるロープ30の張設方向とほぼ直交している。
【0035】
ロープ30とアンカー21との連結状態が図3に示されている。連結具23が用いられる。アンカー21の上端部には雄ねじが形成されている。他方,ロープ30の一端部はスリーブ(円筒状部分を持つ)25の穴内に挿入され圧締によりスリーブ25に強固に固定されている。スリーブ25もまた雄ねじを持っている。連結具23は円筒状であって,その穴の内周面に雌ねじが切られている。
【0036】
スリーブ25の雄ねじとアンカー21の雄ねじが連結具23にその両端からそれぞれねじ嵌められ,アンカー21とロープ30が連結される。
【0037】
アンカー装置の設置の手順について説明する。
【0038】
高耐力アンカー装置を設置するための削岩機,荷重方向変換用円柱状体10,アンカー21,連結具23,ロープ30を用意し,これらをアンカーの設置現場に運ぶ。荷重方向変換用円柱状体10はアンカー21とは別体である。
【0039】
まずアンカー21の上端にロープ30の一端を連結し,アンカー全体をほぼ垂直に地中に定着させる。アンカーの定着方法は,一般に知られているものを採用することができる。たとえば,アンカー21を単に地面に打ち込む。または,地面に掘削孔を形成し,この掘削孔にアンカー21を挿入するとともに,モルタル,セメント等の凝固剤を流し込む。先端に穴があいたパイプアンカーを用いた場合には,このパイプアンカー内に凝固剤を注入することもある。削孔に用いる掘削ロッドをそのまま地中に埋込んで(必要に応じて凝固剤を注入して),アンカーとすることもできる。特に,岩盤が表土層(土被り部)により覆われている場所においては,アンカー上部が表土層表面内に埋設されるようにアンカーを岩盤に定着する。
【0040】
さらに,特開平11−280070号公報に記載されている方法を用いることもできる。先端にリング状のビットが付いている鋼管を削岩機に取付け,鋼管に打撃と回転力を与え削孔する。同時に高圧の水で鋼管内に蓄積された土砂等を除去する。孔が岩盤に到達し,さらにアンカーの上部が表土層表面内に埋設される深さまで削孔する。また,アンカーを鋼管の内部に挿入し,さらにモルタル,セメント等の凝固材を注入する。凝固剤をアンカーの上部まで充填した後,外側の鋼管を抜取る。
【0041】
必要に応じて,アンカーを定着した後,引抜き試験を行い,定着強度を確認する。
【0042】
アンカー21の全体がほぼ垂直に地中に定着され,アンカー21の上端に連結されたロープ30は地表に引出されている。荷重方向変換用円柱状体10を,その長手方向がロープ30を張設すべき方向と直交する姿勢で,地中から引き出されたロープ30が接する位置に置く。必要に応じて荷重方向変換用円柱状体10の一部を地中に埋設する。ロープ30を荷重方向変換用円柱状体10の地中に露出している周面に周方向に沿わせて張設する。たとえばロープ30の端部を落石防止用柵等に締結する。または巨石,巨岩の落下を未然に防止するためのワイヤロープネットの一部を構成するようにロープを張設する。ロープ30を荷重方向変換用円柱状体10の周面に沿わせることにより,アンカー21に掛かる荷重が水平方向からアンカー21の長さの方向に変換される(または,アンカー21の長さ方向から水平方向に変換される)。
【0043】
望ましくは腐食防止のためにロープ30に被覆を施す,またはロープ30と荷重方向変換用円柱状体10をコンクリートで固める。
【0044】
長さの長い荷重方向変換用円柱状体を用いると,一つの円筒状体10を2つのロープで兼用することができる。図4に示すように,近隣の2つのアンカーにそれぞれ連結された2本のロープ30,30aを間隔を離して荷重方向変換用円柱状体10aの周面に沿わせる。ロープによる荷重が均等に円柱状体10aにかかるようにロープの掛かる位置を定めることが好ましい。
【0045】
地表が図5に示すように傾斜している場所では,荷重方向変換用円柱状体10が転動して落下しないように,円柱状体10をその径方向に貫通する別のアンカー11を地中に打ち込んでおくとよい。1つの荷重方向変換用円柱状体10について好ましくは2つ以上のアンカー11を用いる。
【0046】
上述したアンカー設置方法では,荷重方向変換用円柱状体10を用いている。円柱状体10は断面が円形であってその周面に角となる部分が無い。円柱状体10はその周面と地面との密着性が高く,また角が無いので地面に角による集中荷重が加わらない。したがって,ロープ30の張力を増大させても,円柱状体10が傾くことはなく,また位置ずれも少ない。円柱状体10に沿って掛けられたロープ30は常に円柱状体10の周面に沿った状態に保たれる。ロープ30の荷重の方向は円柱状体10によって確実に変換される。地中に定着されたアンカー21にロープ30によって加わる荷重の大部分はその長さ方向に保たれ,アンカー21の長さ方向に垂直な方向に加わる荷重は,あったとしても,小さい。アンカー21に加わるせん断力は,あったとしても,小さいから,アンカー21の位置がずれたり,アンカー21が曲がったりすることは殆どない,または少ない。このようにして高耐力のアンカー装置が実現する。
【0047】
他の実施例について説明する。
【0048】
図6(A)〜(C)は,荷重方向変換部材を示すもので,(A)は上面図,(B)は正面図,(C)は(A)のVIC−VIC線の断面図である。
【0049】
この実施例の荷重方向変換部材12は,断面が半円状の土圧面14と,この土圧面14の反対側の平坦面15とを有し,長さが幅に比べて長い半円筒状体(半円柱状体)(土圧部分)13,および半円柱状体13の平坦面15に設けられ,断面が半円状の胴部17と,この胴部17の両側のフランジ18とからなるロープガイド(ロープガイド部分)16を備えている。
【0050】
半円筒状体13は,円筒をその中心線を通る面により長さ方向に半分に切断し,切断により開口した部分に板(平坦面15となる)を固定(固着)することにより作製することができる。半円筒状体13の両端面を閉塞しておくことが好ましい。
【0051】
ロープガイド16は長さの短い半円筒の両側に半円状の板体(フランジ)を固定(固着)することにより作製できる。このロープガイド16が半円筒状体13の平坦面15に固定(固着)される。半円筒状体13とロープガイド16は,ロープガイド16が設けられている部分の断面をみると円形になっていることが好ましい。
【0052】
ロープガイド16は,厚い半円板の周面に凹溝を形成することによりつくることもできる。
【0053】
いずれにしても胴部の両側に,突出したフランジが設けられているので,後述する胴部17に沿わされるロープ30がはずれることを防止することができる。
【0054】
このように荷重方向変換部材12の土圧部分13を円筒状でなく半円筒状にすることにより軽量化することができる。これにより荷重方向変換部材12を現場まで運ぶ労力を軽減することができる。荷重方向変換部材12の土圧部分13およびロープガイド16は鉄,鋼鉄,その他の強固な材料によりつくられる。
【0055】
図7および図8は設置された高耐力アンカー装置を示すものであり,図7はその縦断面図,図8は上面図である。ここでもロープが地表に沿って地表にほぼ平行な方向に張設されている。
【0056】
高耐力アンカー装置は,アンカー21,荷重方向変換部材12およびロープ30を含む。アンカー21は上述と同様に強固に地中に固定され,上部にはロープ30が連結されている。
【0057】
荷重方向変換部材12は,その土圧部分13が,一端がアンカー21に連結されたロープ30が表土層9内を通って地表に出た位置において,ロープ30が接する位置に,長手方向が地表と平行になるように,表土層9内にほぼ埋め込まれた状態で配置されている。このとき,荷重方向変換部材12のロープガイド16は,地表から出るように配置されている。土圧部分13の長手方向は地表上におけるロープ30の張設方向とほぼ直交している。ロープ30はロープガイド16の胴部17の周面に沿っている。他の構成は図1および図2に示すものと同じである。
【0058】
アンカー装置の設置の手順は次の通りである。上述したようにアンカーを定着し,アンカー21の上端に連結されたロープ30を地表に引出しておく。荷重方向変換部材12を,その長手方向がロープ30を張設すべき方向と直交する姿勢で,地中から引出されたロープ30が接する位置に,その土圧面14が下側にくるように置く。必要に応じて荷重方向変換部材12の半円筒状体13の一部またはほぼ全部を地中に埋設する。荷重方向変換用部材12のロープガイド16は地表から出ている。ロープ30をロープガイド16の胴部17に周方向に沿わせて張設する。ロープ30を荷重方向変換部材12のロープガイド16の半円状案内面に沿わせることにより,アンカー21に掛かる荷重が水平方向からアンカー21の長さの方向に変換される(または,アンカー21の長さ方向から水平方向に変換される)。
【0059】
長さが長くかつ間隔をあけて設けられた複数のロープガイド16を備えた荷重方向変換部材を用いると,一つの荷重方向変換部材を2つのロープで兼用することができる。図9に示すように,近隣の2つのアンカーにそれぞれ連結された2本のロープ30,30aを間隔を離して荷重方向変換部材状体12aの2つのロープガイド16の胴部17の周面にそれぞれ沿わせる。ロープによる荷重が均等に半円筒状体13にかかるようにロープの掛かる位置を定めることが好ましい。
【0060】
図5に示すように地表が傾斜している場所においても,荷重方向変換部材12を用いることができる。この場合に,荷重方向変換部材12が転動しないように,荷重方向変換部材12を他のアンカーにより固定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】高耐力アンカー装置の縦断面図である。
【図2】高耐力アンカー装置の上面図である。
【図3】アンカーとロープの連結部を示す組立て斜視図である。
【図4】高耐力アンカー装置の変形例を示す上面図である。
【図5】高耐力アンカー装置のさらに他の変形例を示す断面図である。
【図6】荷重方向変換部材の他の例を示すもので,(A)は荷重方向変換部材の上面図,(B)はその正面図,(C)は(A)のVIC−VIC線の断面図である。
【図7】高耐力アンカー装置の他の実施例を示す縦断面図である。
【図8】高耐力アンカー装置の上面図である。
【図9】高耐力アンカー装置の変形例を示す上面図である。
【図10】従来のアンカー装置を示す断面図である。
【符号の説明】
10,10a,12,12a 荷重方向変換部材
13,13a 半円筒状体
14 土圧面
15 平坦面
16 ロープガイド
17 胴部
18 フランジ
21 アンカー
23 連結具
30,30a ロープ
Claims (4)
- 断面が円弧状の土圧面を持ちかつ長さが幅に比べて長い土圧部分と,この土圧部分の円弧状土圧面の反対側に設けられた円弧状案内面を有するロープガイド部分とを備え,上記土圧部分が,断面が半円状の土圧面とこの土圧面の反対側の平坦面とを有する半円柱状体であり,上記ロープガイド部分が,上記土圧部分の平坦面に設けられ断面が半円状の胴部とこの胴部の両側のフランジとからなる,荷重方向変換部材,およびアンカーを用意し,
上記アンカーの上端にロープの一端を連結し,上記アンカー全体をほぼ垂直に地中に定着し,
上記荷重方向変換部材を,上記アンカーからほぼ垂直にのびるロープの地表に出た部分がほぼ接する位置において,上記荷重方向変換部材の長手方向がロープの張設方向とほぼ直交するように上記土圧面を下にして地表に配置し,地表に出たロープを上記荷重方向変換部材の上記ロープガイド部分に沿わせて,張設する,
高耐力アンカー装置の設置方法。 - 断面が半円状の土圧面と,この土圧面の反対側の平坦面とを有し,長さが幅に比べて長い半円柱状体,および
上記半円柱状体の上記平坦面に設けられ,断面が半円状の胴部と,この胴部の両側のフランジとからなるロープガイド,
を備えた荷重方向変換部材。 - アンカー,および長さが径に比べて長い荷重方向変換用円柱状体を用意し,
上記アンカーの上端にロープの一端を連結し,上記アンカー全体をほぼ垂直に地中に定着し,
上記円柱状体を,上記アンカーからほぼ垂直にのびるロープの地表に出た部分がほぼ接する位置において,上記円柱状体の長手方向がロープの張設方向とほぼ直交するように地表に接した状態で配置し,地表に出たロープを上記円柱状体の周面に沿わせて,張設する,
高耐力アンカー装置の設置方法。 - 上部にロープの一端が連結されたアンカー全体がほぼ垂直に定着され,
上記アンカーからほぼ垂直にのびるロープの地表に出た部分がほぼ接する位置において,荷重方向変換用円柱状体が少なくともその一部が地中に埋った状態で配置され,
地表に出たロープが,上記円柱状体の長手方向とほぼ直交する方向に,上記円柱状体の周面に沿わせて,張設されている,
高耐力アンカー装置。
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