以下、図1〜図6を参照して本発明の第1実施形態に係るマンホール1の浮上防止構造及びその浮上防止方法について説明する。図1は、浮上防止構造を有するマンホールの部分断面側面図であり、マンホールの周囲の地面Gを所定深さだけ掘り起して、マンホールの直壁部を露出させた状態を示している。
マンホール1は有底の筒状体で、下水管などの管渠13が底側に接続される。マンホール1は、管渠13の会合や方向転換をするために設置される他、作業員が管渠13などの保守管理作業をするためにも利用される。マンホール1は、上端の頂部に形成される出入口9と、作業空間を確保するための所定の広さを有する円筒形状の直壁部10と、出入口9から直壁部10の間に配置されて、マンホール1の内径を下方に向かって拡張する斜壁を備えた斜壁部11とからなる。なお、この斜壁部11は、頭部がカットされたような円錐形状となっており、且つその円錐の中心が偏心している。なお、本実施形態ではマンホールが偏心しているものを例示するが、本発明はこれに限定されない。
出入口9は、斜壁部11の上端が開口することで形成されており、この出入口9には蓋12が設置されている。また、特に図示しないが、マンホール1の内壁には作業員が昇降するためのはしご体が設けられている。
このマンホール1の外周部には、張出し体2が設けられている。この張出し体2は、マンホール1の外周に固定される基台領域2Aと、基台領域2Aの上方に設けられて上下方向に延在する張出し体延長領域2Bを有している。
基台領域2Aは、図2に示されるように、直壁部10に取り付けられる環状バンド20と、この環状バンド20の周面に設置される有底筒状の台座27を備える。本実施形態で基台領域2Aとは、環状バンド20と同じ高さとなる部分を意味している。一方、張出し体延長領域2Bは、この基台領域2Aから上方に延びている部分を意味している。台座27の一部は、帯板21から上方側に突出していることから、その突出部分については、張出し体延長領域2Bを構成していることになる。この環状バンド20は、円弧状に湾曲した帯板21を連結して環状に形成される。この帯板21は、両端が折り曲げられることで連結部23、23が形成されている。この連結部23、23には、ボルト24を通す通孔(図示せず)が設けられている。また、台座27は、各帯板21の中央にそれぞれ設置されている。隣り合う帯板21、21の対向する連結部23、23同士をそれぞれボルト24とナット25により締結すると、帯板21が直列に連結されて、環状バンド20となる。
環状バンド20は、ボルト24とナット25の緊締力により、マンホール1の直壁部10に締付け固定される。この帯板21は、ステンレスや、亜鉛メッキを施した鉄板などにより形成するとよい。なお、本実施形態では、三枚の帯板を連結して環状バンド20を形成しているが、一枚又は二枚の帯板により環状バンドを形成するように構成してもよく、四枚以上の帯板を連結して環状バンドを形成するようにしてもよい。また、各帯板21には一つの台座27が形成されているが、台座27の数は限定されず、例えば、各帯板21に二つ以上の台座27を形成してもよい。
張出し体延長領域2Bは、図3に拡大して示されるように、台座27における帯板21から上方側に突出している部分と、この台座27に挿入される延長棒28と、この延長棒28の上端に設けられる当接部29を有する。延長棒28の下端は、台座27の底面27Aに当接する。この構造によって、張出し体延長領域2Bと基台領域2Aは分離自在となっており、延長棒28の長さを適宜調整することで、張出し側延長部2Bの上下方向の拡張量Hを自在に調整できる。当接部29は、地震時においてマンホール1と共に浮上しようとすると、後述する浮上抑制体3に当接するようになっている。
図1に戻って、マンホール1の周囲には浮上抑制体3が設置される。この浮上抑制体3は、張出し体2の上方を覆うようになっており、更に、張出し体延長領域2Bに対して上下方向に空隙4が形成されている。
浮上抑制体3は、マンホール1とは別体であり、図4に示されるように、分周した重錘部材30を並べて連結することで環状構造となる。この結果、マンホール1の斜壁部11の近辺を囲むようになっている。重錘部材30は、地下水や液状化した地盤により生じる浮力に対抗しうる単位体積重量を有する材質を用いて、この浮力によって浮き上がらない形状に形成する。材質としては、例えば、コンクリートを使用するとよい。
また、重錘部材30は、充分な重量を有する厚さに形成すると共に、その上面を受圧面32とする。この受圧面32が地面に露出しない深さに浮上抑制体3を配置する。受圧面32は、上載される土砂(埋め戻し土)によって充分な荷重を受けると共に、マンホールの浮き上がりを抑制可能な流体抵抗を受ける。その為に、受圧面32は、相応の上面投影面積を持つように形成する。重錘部材30の内径は、マンホール1の外径よりも大きく形成して、マンホール1と接触しないようにする。一方で、重錘部材30の下面側は、張出し体延長領域2Bの当接部29と係合(当接)する必要があるため、この当接部29よりも、重錘部材30の内径が内側となるようにする。
なお、本実施形態では、半円環状に分周した二個の重錘部材30を並べて環状の浮上抑制体3を形成しているが、一個の円環状の重錘部材により浮上抑制体を構成してもよく、三個以上に分周した扇形の重錘部材を並べて環状の浮上抑制体を形成する構成としてもよい。また、重錘部材30の受圧面32は平らに形成しているが、凹凸を形成したり、円環の中心側に向かって低く傾斜して形成したりしてもよい。更に本実施形態では、各重錘部材30の下面側を平面としているが、図5(A)に示すように、各重錘部材30の下面側において、張出し体延長領域2Bに対応する位置に凹状の収容部31を形成することも好ましい。また図5(B)に示すように、重錘部材30の内周側下部に環状の収容用段部33を形成してもよい。このように、各重錘部材30の下面側に段差を形成することで、浮上抑制体3と張出し体延長領域2Bが、上下方向に加えて半径方向や周方向に係合可能となる。
図6は、第1実施形態の浮上防止構造の要部拡大断面図である。マンホール1の直壁部10及び斜壁部11と、直壁部10に設けられた張出し体2と、斜壁部11の周囲に配置した浮上抑制体3とを示している。
浮上抑制体3は、直壁部10に設けた張出し体2の張出し体延長領域部2Bの上方にに配置される。地盤を固めることで形成される支持部S2は、環状リング20よりも高い位置に設定されており、これにより、浮上抑制体3も高い位置に設置される。また張出し体延長領域2Bの当接部29と浮上抑制体3の間には、上下方向の空隙4が形成されるようにする。この空隙4により、地震以外の定常時は、浮上抑制体3や上方の埋め戻し土の荷重が、張出し体2に作用しないようになっている。
本第1実施形態の浮上抑制構造は、上下方向に拡張する張出し体延長領域2Bが設けられているので、この分だけ浮上抑制体3を上方の高い位置に設けることが可能となる。この結果、張出し体2の周囲に、通信回線や上水道等の地下埋設物Xが存在する場合であっても、それを回避して浮上抑制体3を設置できる。地震時には、浮上抑制体3と張出し体2を接触させて、上記荷重をマンホール1に伝達して、マンホール1の浮上を抑制出来る。
なお、浮上抑制体3と斜壁部11との間には環状の隙間5が形成される。隙間5は、地震時の振動(横揺れ)によるマンホール1の慣性力が増加することを抑制する。この隙間5の周縁にはパッキン材50が取り付けられる。このパッキン材50は、隙間5から埋め戻し土が進入して、空隙4や隙間5が埋まってしまうことを防止する。パッキン材50は、ゴムやウレタンなどの弾性材により形成することが好ましい。隙間5の周縁に弾性材からなるパッキン材50を設けることで、地震時の揺れにより浮上抑制体3と斜壁部10とが直接衝突して破損するのを防ぐことができる。
次に、本第1実施形態の浮上防止構造の施工手順を、直壁部10の外径が約105cmのマンホール(例えば1号マンホール)に適用した場合について、図1を参照して説明する。
まず、設置されているマンホール1の周囲の地面Gを掘り起して、マンホール1の直壁部10を露出させる(掘削工程)。マンホールの周囲などを掘り起す場合、一般的には方形の坑を掘削する。ここでは、マンホール1の周囲となる第1坑を掘削する。第1坑の掘り起す範囲は、例えば、マンホール1の周囲130cm×130cm程度とし、120cm程度の深さまでとする。これにより、第1坑ではマンホール1の直壁部10が露出する。
直壁部10が露出したら、掘り起した第1坑の底面である地盤F1を平らにならし、充分に締め固めて支持部S1を形成する。支持部S1は、張出し体2を固定する際に利用する。具体的に、支持部S1上において、帯板21を連結して環状バンド20を形成し、これを直壁部10に取り付けてマンホール1に基台領域2Aを固定し、更に、この基台領域2Aの台座27内に張出し体延長領域2Bを挿入することで、張出し体2を形成する(張出部形成工程)。
なお、環状バンド20は、平らにならした地盤F1にその下辺が接するように配置し、ボルト24及びナット25により直壁部10に締付固定する。張出し体延長領域2Bは、例えば、地盤F1を基準にして上方に35cm程度の高さとなるように形成する。また、張出し体2は、マンホール1から半径方向外側に5cm乃至15cmほど拡張している。なお、環状バンド20を直壁部10に取り付ける際に、環状バンド20と直壁部10との間にゴム板などの弾性部材(図示せず)を挟むようにして取り付けてもよい。弾性部材を介することで、簡便な方法により、環状バンド20を確実に締付固定して、マンホール1とのずれを防止することができる。
張出し体2を形成した後、この張出し体2の周囲を所定高さまで埋め戻して、第1坑よりも浅い第2坑とする。更に、第2坑の底面である地盤F2を平らにならし、充分に締め固めて支持部S2を形成する(第1埋戻し工程)。この際、便宜上図示していないが、上端の当接部29の周囲を除き、張出し体2そのものが地盤F2によって埋め尽くされる。この支持部S2は、浮上抑制体3を保持するために利用する。なお、支持部S2は、マンホール1を設置した際の埋め戻し土砂を締め固めて形成してもよいし、掘り起した底面に砕石などを敷き詰めてから、これを締め固めて形成してもよい。埋め戻して形成する第2坑の範囲は、例えば、マンホール1の周囲200cm×200cm程度とし、80cm程度の深さまでとする。従って、第2坑を形成するための埋め戻し量は、約40cmとなる。このように、第2坑を浅くしたのは、マンホール1の直壁部10の近辺に、地下埋設物Xが存在するからである。
その後、地盤F2に形成した支持部S2に重錘部材30を設置して連結し、環状の浮上抑制体3を形成する(浮上抑制体設置工程)。この際、充分に締め固めた支持部S2により、浮上抑制体3が沈下するのを防止すると共に、浮上抑制体3の高さ位置を規定する。この結果、浮上抑制体3の下面と、張出し体2の当接部29の間に上下方向の空隙4が形成される(浮上抑制体載置工程)。なお、この空隙4の高さは1cm乃至5cm程度に設定する。この結果、浮上抑制体3は、張出し体2の上方を覆う状態となる。
このとき、重錘部材30の下面側に凹凸を形成しておくと、締め固めた土砂又は砕石からなる支持部S2とかみ合って、浮上抑制体3の設置時の安定性が向上する。
最後に、埋め戻し土や下層路盤、上層路盤などを、それぞれ充分に締め固めながら順に埋め戻す(第2埋戻し工程)。埋め戻し作業の際には、浮上抑制体3と直壁部10との間の環状の隙間5にウレタンフォームなどのパッキン材50を設ける。これにより、埋め戻し土などが隙間5に進入して、隙間5及び空隙4が埋まらないようにする。
なお、ここでは特に図示しないが、空隙4や隙間5の全体に、弾性変形可能なパッキン材50を挿入してもよい。浮上抑制体3とマンホール1との間や、浮上抑制体3と張出し体2の間の緩衝材としてパッキン材50を機能させることもできる。
また、特に図示しないが、隙間5等への土砂流入防止構造を有するために、浮上抑制体3の上にシート状の土砂保持具を設けてもよい。土砂保持具は、不織布等の布体や繊維網等の網体などのシート状体により形成する。この土砂保持具により、埋め戻し土の流失を防止する。
このようにして埋設した浮上抑制体3の重量と、浮上抑制体3の受圧面(上面)32に上載される土砂の荷重などの力により、マンホール1の浮上を抑制する。
また、受圧面32に上載した土砂が液状化して上載土砂による荷重が減少し、浮上抑制体3が浮き上がろうとしても、所定の上面投影面積を有する受圧面32が流体抵抗を受けて浮上が抑制される。
例えば、マンホール1の直壁部10の外径が約105cmの1号マンホールの場合、浮上抑制体3の受圧面32が、少なくとも地面より80cm程度の深さになるように配置する。また、円環状の浮上抑制体3の内径はマンホールとの間に数cmの隙間5が空くように形成し、浮上抑制体3の外径は180cm乃至200cm程度に形成するとよい。このとき、浮上抑制体3の上面投影面積は約1.6m2乃至2.2m2となる。
さらに、浮上抑制体3が充分な重量と強度を有するように、重錘部材30はコンクリートで形成し、その厚さを少なくとも20cm乃至30cm程度に形成するとよい。このとき、浮上抑制体3の重量は約700kg乃至1500kgとなる(コンクリートの単位体積重量を2.35t/m3とした)。
上記の構成によれば、張出し体2において張出し体延長領域2Bが設けられるので、浮上抑制体3を、基台領域2Aよりも上方に配置することが可能となる。従って、張出し体2の周囲に地下埋設物Xが存在しても、これを回避しながら、浮上抑制体3を設置できる。この結果、マンホール1の周囲の状況に依存することなく、この浮上抑制構造を簡便に施工できる。従って、地下水位の上昇や地震の際の液状化現象によってマンホール1などが浮力を受けても、張出し体延長領域2Bが浮上抑制体3と上下方向に衝突し、浮上抑制体3の重量からそれにかかる浮力を相殺した荷重に加えて、地面に露出しない所定の深さに配置された受圧面32に上載する土砂等の荷重がマンホール1に掛かり、これらの荷重によりマンホール1の浮き上がりを抑制することができる。また、張出し体2が浮上抑制体3に衝突した際の衝撃により浮上抑制体3が浮き上がりそうになっても、所定の上面投影面積に比例した流体抵抗が浮上抑制体3にかかるため、この流体抵抗によってもマンホール1の浮き上がりを抑制することができる。
さらに上記構成によれば、張出し体延長領域2Bが、基台領域2Aに対して着脱自在となっている。具体的には、基台領域2Aの台座27に対して、張出し体延長領域2Bの延長棒28を挿入する構造となっているので、この延長棒28の長さを変更すれば、基台領域2Aと浮上抑制体3との段差、即ち第1坑と第2坑の段差に柔軟に適応することが可能となる。また、第2坑を浅くすることが出来るので、掘削作業負担が軽減され、工期を短縮することも可能になる。
さらに、上記の方法によれば、特別な機械や特殊な技術を用いることなく、簡易な施工方法によりマンホールの浮き上がりを抑制できる。特に、施工が難しいと考えられる空隙4の形成に関しては、張出し体延長領域2Bの高さを調整することで、この空隙4を微調整することが可能となっている。この結果、再施工作業等が無くなり、作業負担を軽減することが出来る。
特に下水道においては、水傾斜を確保するためにマンホール1の設置深さは高精度に決められている。従って、空隙4を適切に確保するように施工して、マンホール1の沈下に影響を与えないことが重要である。本実施形態によれば、空隙4の高精度に確保することが簡単にできるめ、マンホールの沈下に影響を与えることない。
次に図7〜図10を参照して本発明の第2実施形態に係るマンホール101の浮上防止構造について説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と共通又は類似する部分についての説明は省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。また、第1実施形態と同一又は類似する部品・部材については、図や文中の符号の下二桁を一致させることで、同部品・部材の説明を省略する。
第2実施形態では、主として、張出し体102の基台領域102A及び張出し体延長領域102Bの構造が、第1実施形態と異なっている。図8に拡大して示されるように、基台領域102Aは、直壁部110に取り付けられる環状バンド120と、この環状バンド120の周面に半径方向外側に突出する板状の台座128を備える。なお、環状バンド120の連結部123、123も、ここでは台座として機能している。
張出し体延長領域102Bは、図9に拡大して示されるようなリング状延長部材129によって構成されている。このリング状延長部材129は、基台領域102Aの台座128の上に配置されるリング部材である。具体的にリング状延長部材129は、円筒部材129Aと、円筒部材129Aの下側縁に連結される下側支持リング129Bと、円筒部材129Bの上側縁に連結される上側支持リング129Cと、円筒部材129Aの外周に配置される補強リブ129Dを備えて構成されている。下側支持リング129Bは、基台領域102Aの台座128に当接する。上側支持リング129Cは、地震時においてマンホール101と共に浮上しようとする際に浮上抑制体103と衝突する。この結果、張出し体延長領域102B(リング状延長部材129)と基台領域102A(環状バンド120)は分離自在となっている。従って、予め複数の延長量(高さ)Hのリング状延長部材129を用意しておけば、張出し体延長領域102Bの延長量Hを自在に調整できる。
浮上抑制体103は、図10に示されるように、分周した重錘部材130を並べて連結することで環状構造に形成される。この重錘部材130の下面における内周縁には、下側に突出する環状の係合突起132が形成されている。この係合突起130Aは、図7に示されるように、張出し体延長領域102Bの内周側に隙間106を空けて挿入される。従って、地震時において、係合突起130Aが張出し体延長領域102Bと半径方向に係合するようになっている。
本第2実施形態のマンホール101の浮上防止構造によれば、張出し体延長領域102Bが上下方向に延在することになるので、環状バンド120の固定位置に対して、浮上抑制体103を上方に配置することが可能となる。従って、環状バンド120の周囲に地下埋設物Xが存在していても、この地下埋設物Xとの干渉を回避しながら、浮上抑制体103を設置できる。また、張出し体延長領域102Bの上側支持リング129Cが環状の当接面を有するので、浮上抑制体103の下側面130Bに対して広範囲に面接触できるので、地震時において浮上抑制体103からの浮上抑止力(押し下げ力)を確実にリング120(マンホール101)に伝達できる。
次に図11〜図14を参照して本発明の第3実施形態に係るマンホール201の浮上防止構造について説明する。なお、第3実施形態においては、第1実施形態と共通又は類似する部分についての説明は省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。また、第1実施形態と同一又は類似する部品・部材については、図や文中の符号の下二桁を一致させることで、同部品・部材の説明を省略する。
第3実施形態では、主として、張出し体202と浮上抑制体203の構造が第1実施形態と異なっている。図12に拡大して示されるように、張出し体202は、直壁部210に取り付けられる環状バンド220と、この環状バンド220の周面に半径方向外側に突出する板状の凸状部222を備える。この凸状部222は、マンホール201に対して半径方向外側に張り出す機能を有しており、地震時に、その上縁を浮上抑制体203に衝突させて、マンホール201の浮上を防止する。なお、環状バンド220の連結部223、223も、凸状部222と同様に機能する。
浮上抑制体203は、図13に示されるように、延長体203Aと受圧体203Bを備える。延長体203Aは、マンホール201とは別体であり、上下方向に厚みを有して延在される環状部材となる。この延長体203Aは、分周した下側重錘部材240Aを周方向に並べて連結することで環状構造となる。各下側重錘部材240Aの下面側における、張出し体202の凸状部222及び連結部223、223に対応する位置には、凹状の収容部231が形成される。この収容部231は、凸状部222及び連結部223、223を非接触状態で、即ち、上下方向、周方向及び径方向に隙間を有した状態で収容する。延長体203Aの内径は、マンホール1の直壁部210の外径よりも大きく設定され、両者の間に隙間205が形成されている(図11参照)。
受圧体203Bは、マンホール201とは別体であり、分周した上側重錘部材244Aを並べて連結することで環状構造となる。この受圧体203Bは、マンホール201の斜壁部211の近辺を囲むようになっている。上側重錘部材244Aは、地下水や液状化した地盤により生じる浮力に対抗しうる単位体積重量を有する材質を用いて、この浮力によって浮き上がらない形状に形成する。材質としては、例えば、コンクリートを使用する。
また、上側重錘部材244Aは、充分な重量を有する厚さに形成すると共に、その上面を受圧面232とする。浮上抑制体203は、この受圧面232が地面に露出しない深さに配置される。受圧面232は、上載される土砂(埋め戻し土)によって充分な荷重を受けると共に、マンホールの浮き上がりを抑制可能な流体抵抗を受ける。その為に、受圧面232は、相応の上面投影面積を持つように形成する。上側重錘部材244Aの内径は、マンホール201の外径よりも大きく形成して、マンホール201と接触しないようにする。受圧体203Bの外径は、延長体203Aの外径よりも大きい。これは、受圧面232を充分広く確保するためである。
受圧体203Bの下面における内周縁近傍には、上方側に凹んだ収容凹部246が形成されており、この収容凹部246の天井面は、延長体203Aの上面と当接するための環状の伝達面245となっている。また、この収容凹部246の内周壁は、延長体203Aと半径方向に係合する。つまり、収容凹部246によって形成される収容空間内に、延長体203Aの上部が収容される。
受圧体203B(上側重錘部材244A)の下面には、被支持面247が形成される。この被支持面247は、掘り起こした第2坑の底を充分に締め固めて形成される支持部S2によって支持される。この被支持面247は、張出し体202よりも上方に配置されている。
以上の構成により、張出し体202に対して上下方向の空隙204を形成した状態で、上下方向に延びるように配置される抑制体延長領域240と、抑制体延長領域240の上方に設けられて半径方向外側に拡張される受圧領域244とを備えることになる。なお、延長体203Aの上方側の一部は、受圧体203Bの収容凹部246内に収容されることから、その部分については、受圧体203Bと一緒になって受圧領域244を構成している。一方、延長体203Aにおける受圧体203Bよりも下方側に突出している部分は、抑制体延長領域240を構成している。
従って、抑制体延長領域240の外径は受圧領域244の外径よりも大幅に小さく設定されている。即ち、この抑制体延長領域240自体は、上方の埋め戻し土を受け止める機能は有しておらず、受圧領域244の浮上抑止力(押し下げ力)を、張出し体202に伝達する部材として機能する。
この第3実施形態の浮上抑制構造では、図11に示されるように、外径の小さい抑制体延長領域240の上方に、外径の大きい受圧領域244が配置される。この結果、浮上抑制体203の下面側は、中心側が深くなり、且つ外側が浅くなるような2段以上の高さを有する形状となる。この結果、抑制体延長領域240が、上下方向の延長部材として機能し、張出し体202の周囲に地下埋設物Xが存在している場合でも、この地下埋設物と浮上抑制体203との干渉を回避することができる。なお、ここでは抑制体延長領域240(延長体203A)が環状構造に形成される場合に限って示したが、例えば、図14に示されるように、抑制体延長領域240を柱状部材241で構成することも可能である。この場合、受圧領域244(受圧体203B)には、柱状部材241の上端を収容する為の凹部248を設けておく。一方、柱状部材241の下端側には、張出し体202を収容するため収容部231を形成しておく。このようにすることで、抑制体延長領域240の柱状部材241の長さを調整するだけで、受圧領域244の設置高さを変更することができ、地下埋設物Xとの干渉を柔軟に回避することが可能となる。なお、この第3実施形態では、抑制体延長領域240と受圧領域244が別体となっている場合を示したが、これらが予め一体化されていても良い。
この第3実施形態の浮上防止構造の施工手順を図11を参照して説明する。まず、設置されているマンホール201の周囲の地面Gを掘り起して、マンホール201の直壁部210を露出させる(掘削工程)。ここでは、マンホール201の周囲となる第1坑を掘削する。第1坑の掘り起す範囲は、例えば、マンホール1の周囲130cm×130cm程度とし、120cm程度の深さまでとする。これにより、第1坑ではマンホール1の直壁部210が露出する。
直壁部210が露出したら、掘り起した第1坑の底面である地盤F1を平らにならし、充分に締め固めて支持部S1を形成する。支持部S1は、張出し体202を固定する際に利用する。
次いで、環状バンド220を直壁部210に取り付けることで、マンホール201に張出し体202を形成する(張出し体形成工程)。なお、環状バンド220は、平らにならした地盤F1にその下辺が接するように配置し、ボルト224及びナット225により直壁部210に締付固定する。
その後、地盤F1の支持部S1を利用して延長体203Aを配置する(延長部設置工程)。これにより、抑制体延長領域240が形成されることになる。この際、延長体203Aと張出し体202の間には上下方向の空隙204が形成されるようにする。
その後、第1坑における延長体203Aの周囲を、所定高さまで埋め戻して第2坑とする。なお、第2坑の範囲は、例えば、マンホール1の周囲200cm×200cm程度とし、80cm程度の深さまでとする。従って、第1坑を約40cm埋め戻すことになる。このように第2坑を浅くすることで、マンホール201の直壁部210の近辺に、地下埋設物Xが存在しても、それとの干渉を回避できる。更に、第2坑の底面である地盤F2を平らにならし、充分に締め固めて支持部S2を形成する(第1埋戻し工程)。この支持部S2は、浮上抑制体203の受圧領域244を保持するために利用する。
なお、支持部S2は、マンホール201を設置した際の埋め戻し土砂を締め固めて形成してもよいし、掘り起した底面に砕石などを敷き詰めてから、これを締め固めて形成してもよい。
地盤F2に形成した支持部S2に受圧体203Bを設置して、受圧体203Bと延長体203Aを当接させる。これにより、受圧領域244が形成されて、抑制体延長領域240と共に、張出し体202の上方を覆う環状の浮上抑制体が形成される(浮上抑制体設置工程)。この際、充分に締め固めた支持部S2は、浮上抑制体203が沈下するのを防止すると共に浮上抑制体203の高さ位置を規定する。この結果、浮上抑制体203の下面と、張出し体202の間に上下方向の空隙204が形成される。なお、この空隙204の高さは、1cm乃至5cm程度に設定する。
最後に、埋め戻し土や下層路盤、上層路盤などを、それぞれ充分に締め固めながら順に埋め戻す(第2埋戻し工程)。なお、ここでは特に図示しないが、埋め戻し作業の際には、浮上抑制体203と直壁部210の間の環状の隙間205にウレタンフォームなどのパッキン材を設けて、埋め戻し土などが隙間205に進入して、隙間205及び空隙204が埋まらないようにする。
次に図15及び図16を参照して本発明の第4実施形態に係るマンホール301の浮上防止構造について説明する。なお、第4実施形態においては、第3実施形態と共通又は類似する部分についての説明は省略し、第3実施形態と異なる部分を中心に説明する。また、第3実施形態と同一又は類似する部品・部材については、図や文中の符号の下二桁を一致させることで、同部品・部材の説明を省略する。
第4実施形態では、主として、浮上抑制体303の構造が第3実施形態と異なっている。浮上抑制体303は、張出し体302に対して上下方向の空隙304を形成した状態で配置される抑制体延長領域340と、抑制体延長領域340の上方に設けられて半径方向外側に拡張されている受圧領域344と、この抑制体延長領域340と受圧領域344の間に配置される抑制体調整領域342とを備える。ここでは、抑制体延長領域340は延長体303Aにより、受圧領域344は受圧体303Bにより、抑制体調整領域342は調整体303Cにより構成されている。
延長体303Aは、分周した下側重錘部材340Aを周方向に並べて連結することで環状構造となる。各下側重錘部材340Aは、その下面340Bが、張出し体302の凸状部322及び連結部323、323と上下方向に隙間を有した状態で配置される。延長体303Aの内径は、マンホール301の直壁部310の外径よりも大きく設定され、延長体303Aの外径は、受圧体303Bの外径よりも大幅に小さく設定されている。また、延長体303Aの上面には係合用突起340Dが形成されており、調整体303C側に形成される凹部と半径方向及び周方向に係合する。
調整体303Cは、分周した中間重錘部材342Aを周方向に並べて連結することで環状構造となる。各中間重錘部材342Aの下面342Bは、延長体303Aの上面340Cと当接する。中間重錘部材342Aの上面342Cには、係合用突起342Dが形成されており、受圧体303B側に形成される凹部と半径方向及び周方向に係合する。調整体303Cの内径は、マンホール301の直壁部310の外径よりも大きく設定され、調整体303Cの外径は、受圧体303Bの外径よりも大幅に小さく設定されている。即ち、これらの延長体303A及び調整体303C自体は、上方の埋め戻し土を受け止める機能は有しておらず、受圧体303Bの浮上抑止力(押し下げ力)を、張出し体302に伝達する伝達部材として機能するものである。
なお本実施形態では、抑制体延長領域340(延長体340A)と抑制体調整領域342(調整体303C)が同一部材によって構成されている。従って、部材の共有化によって製造コストが削減されると共に、抑制体調整領域342の段数を増やしたり、抑制体調整領域342を省略したりすることで、受圧領域344の設置高さを自在に変更できる。
この第4実施形態の浮上抑制構造では、抑制体延長領域340と受圧領域344の間に、抑制体調整領域342が挿入される。従って、この抑制体調整領域342が、上下方向の高さの不足を補い補助延長部材として機能するので、張出し体302の周囲に地下埋設物Xが存在している場合でも、この地下埋設物と浮上抑制体303との干渉を回避することができる。
以上、本第1及び第2実施形態では、張出し体側に上下方向の延長部が設けられる場合を例示し、第3及び第4実施形態では、浮上抑制体側に上下方向の延長部が設けられる場合を例示したが、本発明はこれらに限定されない。この第1及び第2実施形態と、第3及び第4実施形態を組み合わせて、張出し体と浮上抑制体の双方に延長部が設けられる構造とすることも可能である。