JP4866492B2 - 杭を備えた免震建物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、杭を備えた免震建物に関する。
【0002】
【従来の技術】
免震建物では、一般に、図4(イ)に示すように、鉄筋コンクリートなどからなる基礎51と架台52との間に免震装置53が介設され、架台52に建物の上部構造部54が剛接合され、免震が基礎51と架台52との間で行われるようになされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、図4(ロ)に示すように、地盤55が軟弱で基礎51の下に杭56が打たれて基礎51を杭56に支させているような建物では、たとえ架台52から上の上部構造部54が免震されたとしても、杭56と基礎51とは剛接合されているから、地震時に、杭頭部56aには、基礎51によって大きな水平力が作用して大きな曲げモーメントがかかってしまい、杭頭部56aに被害が集中してしまうことがある。特に、杭頭部56aは、後からの修復を行い難い部分でもあり、この部分への被害発生は深刻な事態を引き起こすことがある。
【0004】
また、従来の免震建物では、免震装置53を組み込むために、基礎51と上部構造部54との間に架台52を設置しなければならず、そのため、免震機構の備えられていない建物の場合に比べてコストが高くつくという問題もある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、地震時の杭頭部への被害をなくすことができる杭を備えた免震建物を提供することを主たる課題とする。また、架台を排除することができてコスト的に有利に建築することができる、杭を備えた免震建物を提供することも課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、地盤に打たれた杭の上に基礎が設置され、この基礎の上に建物の上部構造部が設置された建物において、杭と基礎との間に免震装置が介設されていることを特徴とする杭を備えた免震建物によって解決される。
【0007】
この免震建物では、杭と基礎との間に免震装置が介設されているので、地震時に基礎が免震され、そのため、杭頭部に基礎による大きな水平力が作用することがなく、大きな曲げモーメントがかからず、そのため、杭頭部への被害をなくすことができる。
【0008】
この免震建物において、基礎と上部構造部とが剛接合されている場合は、杭と基礎との間に介設されている免震装置が、基礎と剛接合されている上部構造部をも免震する。従って、基礎と上部構造部との間から免震装置を排除するのと併せて架台も排除することができ、架台の排除によって、免震建物をコスト的に有利に建築することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1に示す免震建物において、1は地盤、2は杭、3は捨てコンクリート、4は基礎、5は基礎上の上部構造部であり、上部構造部5と基礎4とはアンカーボルトなどで剛接合されており、地盤1に打ち込まれた杭2と、基礎4との間には転がり支承による免震装置6が入れられ、この免震装置6を介して基礎4が杭2に支えられている。杭2は鋼管杭からなり、基礎4はコンクリートによる連続基礎からなっている。
【0011】
なお、杭2は、鋼管杭以外の鋼杭や、木杭、既成コンクリート杭、場所打ちコンクリート杭などからなっていてよい。また、基礎4は、鉄筋や鉄骨、あるいは鉄筋と鉄骨を埋込み状態にして入れられているコンクリート基礎であってよいし、そのほか鉄骨基礎などであってもよいし、独立基礎や、独立基礎同士をつなぎ梁でつないだ基礎や、べた基礎などであってもよい。
【0012】
免震装置6は、上下の免震皿7,8とこれら皿7,8間に入れられた鋼製などの転がり用球体9とで構成されており、下部免震皿7は杭頭部2aの頂部に溶接等で剛接合され、上部免震皿8はコンクリート基礎4の下面側に埋込み状態に入れられ、定着筋8a…によってコンクリート基礎4と一体化されている。そして、下部免震皿7にはベアリング7aが備えられ、このベアリング7aによって球体9は下部免震皿7に対して定位置で回転するように支持され、上部免震皿8は、その下面側に凹球面部8bを備え、この凹球面部8bで球体9に受けられ、球体9が凹球面部8bを転がりながら相対移動できるようになされている。
【0013】
また、上部免震皿8は、底面を凹球面部8bとする逆カップ状のものからなっていて、その周囲壁部8cに囲まれた内部に下部免震皿7が立ち上がげられており、この周囲壁8cと立ち上がり状の下部免震皿7との間に発泡スチロールなどからなる環状の保護材10が入れられている。この保護材10には、上部免震皿8と下部免震皿7との水平方向の相対移動において緩衝の役割を果たさせてもよいし、免震時の復元力発生手段としての役割を果たさせてもよいし、これら双方の役割を果たさせてもよい。
【0014】
上記の免震建物では、地震が発生すると、図2(イ)(ロ)に示すように、免震装置6によって、杭2と基礎4との間で水平方向の相対移動が起こり、それにより、上部構造部5のみならず基礎4も免震される。従って、杭頭部2aに基礎4による大きな水平力が作用せず、そのため、杭頭部2aに大きな曲げモーメントがかからず、修復困難な杭頭部2aへの被害をなくすことができる。
【0015】
しかも、本実施形態では、上部免震皿8に凹球面部8bが備えられ、この凹球面部8bを球体9が支持するようになされて、免震時に、コンクリート基礎4が地盤1から浮き上がる方向に変位するようになされているので、基礎4と地盤1とに免震のためのスムーズな水平相対移動を行わせることができる。もちろん、凹球面部8bの勾配によって復元力も生じる。
【0016】
加えて、本実施形態では、基礎4と上部構造部5とは剛接合されて一体化されているから、これらの間に免震装置を設置する場合に必要とされる架台を省略し、基礎4に架台の役割を果たさせ、免震建物をコスト的に有利に建築することができる。
【0017】
図3に示す第2実施形態の免震建物は、基礎4と上部構造部5との間にも免震装置12が設置されている場合のものである。11は架台である。このように、基礎4と上部構造部5との間、及び、杭2と基礎4との間の双方にそれぞれ免震装置6,12を入れるようにしてもよい。この場合であっても、修復困難な杭頭部2aへの地震による被害をなくすことができる。なお、免震装置6が免震装置12に優先して免震を行うようになされていてもよいし、免震装置12が免震装置6に優先して免震を行うようになされていてもよい。
【0018】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で、各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、免震装置として、特定構造のものからなる勾配付き転がり支承による免震装置6を用いた場合を示しているが、その他の勾配付き転がり支承による免震装置であってもよいし、勾配なしの転がり支承による免震装置であってもよいし、転がり以外の滑りなどによる免震装置であってもよいし、特に制限はない。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、以上のとおりのものであるから、地震時の杭頭部への被害をなくすことができる。また、基礎と上部構造部との間から架台を排除して免震建物をコスト的に有利に建築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の免震建物を示す断面側面図である。
【図2】図(イ)(ロ)はそれぞれ、同免震建物の免震作動状態を概略的に示す断面側面図である。
【図3】第2実施形態の免震建物を示す断面側面図である。
【図4】図(イ)(ロ)はそれぞれ、従来の免震建物を示す断面側面図である。
【符号の説明】
1…地盤
2…杭
2a…杭頭部
4…基礎
5…上部構造部
6…免震装置

Claims (2)

  1. 地盤に打たれた杭の上に基礎が設置され、この基礎の上に建物の上部構造部が設置された建物において、杭と基礎との間に免震装置が介設され、地震により、杭と基礎との間で水平方向の相対移動が起こり、基礎がわが免震されるようになされていると共に、
    地盤と基礎との間に、それらの間の隙間を埋めるように、捨てコンクリートが打たれており、
    前記免震装置は、転がり支承による免震装置からなり、基礎の下面側に埋め込み状態に入れられた上部免震皿の下面側に凹球面部が備えられ、この凹球面部を転がり用球体が支持するようになされて、免震時に、基礎が地盤から浮き上がる方向に変位するようになされていることを特徴とする杭を備えた免震建物。
  2. 基礎と上部構造部とが剛接合されている請求項1に記載の杭を備えた免震建物。
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