JP3589296B2 - 免震構造物の建設方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
1995年の阪神淡路大震災以降、大地震時における建物の応答加速度を抑制し、建物自体のみでなくその収容物を含めて、構造物全体を無損傷で守ろうとする免震構造物が増加しつつある。本発明は、免震構造物の中でも戸建て住宅などの比較的小規模な免震建物の建設方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
戸建て住宅や小規模店舗などの小規模な建物を免震構造とする場合、構造物重量が小さいために大型の積層ゴムでは固有周期の伸長ができず、周期を伸ばすためには平面寸法が小さく細高い積層ゴム形状となるが、それでは十分な変形性能を確保できない。
【0003】
この問題を解決する方法として、建物重量をすべり系支承や転がり系支承に支持させ、重量を支持しない積層ゴム系支承(高減衰ゴムや鉛プラグ入り積層ゴムなど)に復元力と減衰を負担させる方法、あるいはすべり面の摩擦を減衰として利用し、すべり面や転がり面を曲面として重力によるポテンシャルエネルギーを復元力に変換する方法などが実用化されている。
【0004】
以上のとおり、小規模・軽量の構造物を免震構造化する方法は既に幾通りもの方法が開発されているが、現実には小規模の免震建物は殆ど普及していないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
小規模免震建物が普及しない原因は極めて明白であり、それは免震構造を採用しない従来の耐震構造建物に比較して、免震建物の建設費用が高くなるためである。無論、大型免震ビルの費用upに較べればその絶対額は小さいものの、総工事費自体が小額であるため、その増額比率が非常に大きくなり、大型ビルでは通常数%前後と言われる増額比率が、戸建て住宅免震では優に1割は超え、2割以上の増額となっている事例が少なくない。
【0006】
このコストアップには次の3つの要因がある。即ち、▲1▼通常の設計に較べて高度な構造設計を行うため、設計費用が高くなること。▲2▼免震装置の費用が追加されること。▲3▼免震装置を挟んで基礎が2重になるため、装置上下の基礎構造体に費用がかかることである。
【0007】
上記▲1▼の設計費用を安くする方法としては、従来は日本建築センター評定および建設大臣認定の特別の許認可審査が必要であったが、建築基準法改正により一般の建築確認申請で処理可能になったこと。また、現実の設計費用を下げる方法として、建物や免震システムを標準化して、個々の建物での個別設計自体を省略ないし簡略化する取り組みなどが行われている。
【0008】
また上記▲2▼の免震装置の費用を安くする方法は、個々のメーカーが最重要課題として取り組んでおり、その普及と共に次第に低コスト化が進んでいくものと期待できる。
【0009】
免震建物の建設費増額は、通常は免震装置費のみが注目されているが、現実には免震装置費用以上に、基礎の二重化に大きな費用がかかっており、特に小規模建物の場合には免震装置上下の構造体を如何に低コストで建設できるかどうかが、免震建物低コスト化のカギを握っている。
本発明は、これまであまり表沙汰に議論されることのなかった2重基礎構造体を、画期的に低コスト化できる免震建物の建設方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
小規模免震建物においては、免震装置の下側の基礎構造体は鉄筋コンクリート造、装置の上側の基礎構造体は鉄骨造フレームもしくは鉄筋コンクリ−ト造のいずれかで構築することが一般的である。近年、この免震装置の上部基礎構造体を軽量鉄骨フレームによる極めて軽微な構造体として低コスト化を図っている提案があるが、小規模建物では構造物全体が軽量であり、風による建物振動が問題となりやすい構造物において、免震装置上部の基礎構造体まで過度の軽量化を図ることは、風振動問題をますます助長することになり推奨できない。従って、本発明では、小規模・軽量の建物に適切な重量を付加し、建物全体に適切な安定を与える鉄筋コンクリート造により免震装置上下の基礎構造体を経済的に構築する方法を提供する。
【0011】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
〈構成1〉
構造物の重量を支える免震装置を備えた免震構造物において、
先ず前記免震装置を配置する位置の下側に、コンクリートを打設し上面を水平に仕上げてなるコンクリート基礎盤を設け、
前記コンクリート基礎盤の上に、平板状に形成された袋状のゴム製エアジャッキを配置し、
前記コンクリート基礎盤の硬化後、前記免震装置を配置する位置の上側に、前記コンクリート基礎盤の上面に接してコンクリートを打設してなるコンクリート上盤を設け、
前記コンクリート上盤が硬化した後に、前記エアジャッキを空気圧入して膨らませ、
前記コンクリート上盤を持ち上げた状態で、前記構造物の重量を支える前記免震装置を配置し取り付けた後に
前記エアジャッキの空気を抜いて前記コンクリート上盤を徐々に降下させ、所定の高さに設置することを特徴とする免震構造物の建設方法。
なお、前記免震装置には、積層ゴム支承、すべり支承、転がり支承等を含むものであり,また、必要に応じて地震の振動エネルギーを吸収する減衰装置(ダンパー)が付加される。
また、前記エアジャッキは複数個配置されてもよい。
【0012】
〈構成2〉
上記構成1に記載の免震構造物の建設方法において、前記コンクリート基礎盤および前記コンクリート上盤を構造物の全平面に渡って構築することを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0013】
〈構成3〉
上記構成1に記載の免震構造物の建設方法において、前記コンクリート基礎盤および前記コンクリート上盤の片方もしくは両方を前記免震装置の配置位置を結ぶ線状に沿って梁状に構築することを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0014】
〈構成4〉
上記構成1乃至3のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、前記免震装置にすべり支承もしくは転がり支承を採用し、そのすべり板のすべり面もしくは転がり支承の転動体に接する上下プレートの表面を前記コンクリート基礎盤の上面もしくは前記コンクリート上盤の下面と同一水平面に打ち込むことを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0015】
〈構成5〉
上記構成1乃至4のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、前記コンクリート基礎盤の上面に、後打ちする上盤コンクリートの付着を防止するためにビニールシート等のプラスチックシート薄膜を配置するか、付着防止のための砂粒等の薄い粉体を敷き剥離層を設けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0016】
〈構成6〉
上記構成1乃至5のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、前記コンクリート基礎盤の上面に雨水等の侵入を防止するために、前記コンクリート基礎盤の上面を周囲地盤より高く設けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0017】
〈構成7〉
上記構成1乃至5のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、前記コンクリート基礎盤の周囲に前記コンクリート上盤の相対変位を妨げない高さの土手状突起部を配置することを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0018】
〈構成8〉
上記構成1乃至5のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、前記コンクリート基礎盤と上盤の隙間部の周囲側面上に、ゴムシート又は薄い鋼板製の保護カバーを設けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0019】
〈構成9〉
上記構成1乃至8のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、前記コンクリート基礎盤に窪みを設け、その底部にベースプレートとアンカーボルト用袋ナットを配置し、前記コンクリート上盤に穴を設け、前記穴より前記免震装置を挿入し、上部より前記免震装置の下部アンカーボルトを締め付けた後、前記穴に前記免震装置の固定用蓋を置き、前記免震装置の上部フランジと固定用蓋とをボルト接合により固定することにより、前記免震装置を着脱可能に取り付けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
【0020】
〈概要〉
先ず、本発明では免震装置の下側の基礎構造体および装置上側の構造体を共に鉄筋コンクリート造で構成する。そして、その構造体の基本形状を共に平板形状とする。これは、現在の我が国では、鉄筋コンクリートの構造体を構築する場合、鉄筋やコンクリートの材料費よりも型枠工事など手間に要する人工費(労賃)に多くのコストがかかるため、できるだけシンプルな構造体形状が望ましいからである。そのため、本発明では装置上下の構造体を共に平板形状とし、以下、装置下側を「コンクリート基礎盤」、上側を「コンクリート上盤」と呼ぶことにする。この平板化により、梁型などの複雑な型枠形状を排除している。
【0021】
そして本発明は、この装置上下のコンクリート盤を型枠なしで構築する方法を提供する。コンクリート基礎盤は地盤上に構築するため、底面の型枠は不要であり、コンクリート基礎盤周囲側面の型枠のみでよい。コンクリート基礎盤内の配筋を行い、基礎盤のコンクリートを打設し、その上面を水平に仕上げる。この時、基礎盤の上面に固定される免震装置のすべり板もしくは転がり支承の転動体と接触する平板(以下「転動体受け平板」と呼ぶ)を予め基礎盤コンクリート上面と同一高さに設置しておき、コンクリート基礎盤上面を突起物のない水平面=面一に仕上げる。この条件を満足するために、本発明では、建物重量を支える免震装置は、すべり支承もしくは転がり支承を主対象としている。
【0022】
次に、このコンクリート基礎盤の上面にゴム製エアジャッキ(一般的形状は厚さ2〜3センチで平面寸法は支持荷重により50センチ角から1メートル角程度)を適切数(通常は4枚程度)配置する。このエアジャッキには後で空気を送るためのホースが接続されている。更に上部コンクリート側に配置される転動体受け平板や積層ゴム挿入用穴型枠などを基礎盤上面に配置し、上盤コンクリート内の配筋を行なう。要するに、基礎盤上面をコンクリート上盤の底面型枠として利用し、上盤の周囲側面型枠のみを配置して、基礎盤上面でコンクリート上盤のコンクリートを打設する。
【0023】
上盤コンクリートが硬化した段階で前記エアジャッキに空気を圧入すると、エアジャッキが膨らみ、コンリート上盤を必要高さに持ち上げる。その状態でコンクリート基礎盤と上盤の間に配置されるすべり支承体もしくは転がり支承の転動体を挿入配置した後、エアジャッキの空気を抜くことにより、所定の高さまでコンリート上盤が下降し、免震装置で支持された免震基礎上部構造体が完成する。
【0024】
以上が、型枠を殆ど用いずに免震装置上下のコンクリート構造体を構築する施工手順の概要であり、本発明の中核をなす構成1の説明である。構成2以下は、本発明を具体化する場合のバリエーションや各部の施工方法等について規定したものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例を示す図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明が対象としている戸建て住宅等の小規模建物における免震層の構成例である。図1(1)は、下から上へ地盤、免震装置下のコンクリート基礎盤、免震装置、その上部のコンクリート上盤の断面構成を示しており、コンクリート上盤の上に建物が載せられる。図1(2)は免震装置の配置および装置上下のコンクリート構造体の平面形状を示している。
【0027】
本例は、球体転がり支承と小型積層ゴムの2種類の免震装置を採用した場合を例示している。建物全体の重量を球体転がり支承6体により支持しており、復元力および減衰を建物重量を支持しない小型積層ゴム(鉛プラグ入り積層ゴムもしくは高減衰積層ゴム)により供給する。減衰性能の高い小型積層ゴムを重量支持機能から解放することにより、小型軽量の構造物でも大きな水平変形性能を確保することを可能としている。図1(2)の円形平面が積層ゴムを固定する円形型枠を示しており、平面のできるだけ外側に装置を配置して、免震層のねじれ抵抗を高めている。
【0028】
図2は本発明の中核部、即ち免震層構築の施工手順を示している。以下図2の順を追って手順を説明する。先ず図2(1)に示すように、地盤上を地ならし・締め固めを行い割栗地業を行い、捨てコンクリートを打ち、コンクリート基礎盤内の配筋を行う。この時、基礎盤側に取り付けられる免震装置すべり板もしくは転動体受け平板を基礎盤上面と同一レベルに設置する。コンクリート基礎盤周囲側面の型枠を設置した後、図2(2)に示すように、基礎盤のコンクリートを打設する。この時、免震装置プレート(すべり板や転動体受け平板)上面とコンクリート基礎盤上面を同一レベルの水平面に仕上げることが重要である。
【0029】
図2(3)は、免震装置下側のコンクリート基礎盤が完成した状態を示している。この基礎盤上面をコンクリ−ト上盤の底面型枠として利用する。即ち、先ず上盤コンクリート内に打ち込まれる転動体受け平板(上盤底面側)やすべり板を配置する。また後で上盤を持ち上げるためのゴム製エアジャッキを適切な位置に配置する。その数は、上盤平面の大きさや重量によるが、図1に示した程度の建物規模では、4体程度で充分である。エアジャッキの位置は、図1に示すようにジャッキアップされた時の上盤の応力がバランスする有利な位置に配置するのが望ましい。
【0030】
次に上盤内の配筋を行い 図2(4)、周囲側面の型枠を建て込んで、図2(5)に示すように上盤のコンクリ−トを打設する。図2(6)は周囲側面の型枠を撤去した状態を示しており、コンクリート基礎盤の上にコンクリート上盤が直接接した状態となっている。
【0031】
この状態でエアジャッキに空気を圧入すると、図2(7)のようにエアジャッキが膨らみ、上盤コンクリートを持ち上げる。免震装置が球体転がり支承であれば、一度のジャッキアップ量で充分な高さに持ち上げられるが、「エアジャッキ持ち上げ、上盤借り受け、エアジャッキ盛り変え」の作業を繰り返せば、どの高さまででも持ち上げ可能である。
【0032】
最後に、転がり支承の転動体もしくはすべり支承の滑動部等の上盤重量を支持する免震装置を所定の位置に配置し、エアジャッキ内の空気圧を少しずつ下げると上盤は免震装置に接する所定の高さまで降下し、免震装置に支持されたコンクリート上盤が完成する。
以上が、構成1に示す本発明の型枠不要で免震装置上部のコンクリ−ト上盤を構築する施工手順である。
【0033】
本発明のコンクリート基礎盤および上盤は、構成2、図1(2)に示すように建築物の平面全面に渡って構築するのが基本である。しかし、本発明の主目的はできるだけ低コストで免震層を構築することであり、コスト削減のためには少しでもコンクリートや鉄筋の躯体数量を削減することも重要である。構成3は、その方法を示したもので、図3(1)に示すように、免震装置の配置位置を結ぶ線上をフレーム位置とし、その中間の応力の低い位置のコンクリート躯体を削減する。図3(2)は、その中間位置を完全に削除した場合を」示しており、図3の(3)はその中間位置のコンクリート厚さを薄くしてコンクリート量を低減するが、平面全体に渡ってコンクリート躯体を残し、平面内の剛性を確保する場合を示している。更に図3(4)は、(2)と(3)を組み合わせた場合であり、図3の(3)(4)では、コンクリート上盤の平面中央部の窪んだ空間を床下収納などに有効利用することができる。
【0034】
図4、図5は、免震装置の設置要領の詳細説明図である。図4は転がり支承と積層ゴムの組み合わせの基本構成を示したものであるが、一般的には転がり支承の転動体高さと復元力・減衰を担う積層ゴムは高さが大きく異なるため、図4に示すようにその上下の構造体に高さを調節するための段差部が生じるのが通常である。しかし、このような躯体形状では本発明のめざす型枠省略は不可能で、複雑な型枠と支保工による在来工法で建設せざるをえない。
【0035】
そこで本発明は、図5に示すように免震装置取付平板(転動体受け平板)をコンクリート躯体表面と同一高さ、即ち面一に打ち込むことにより、下側のコンクリート基礎盤上面を上盤コンクリートの底面型枠として利用する。また、転動体受け平板と周囲のコンクリート表面が同一高さになることにより、免震構造物としての安全性能が飛躍的に向上する。即ち、万一設計で想定している以上の強い地震動に襲われ、免震層の変位が大きくなり転動体受け平板の領域を超えた場合でも、転動体はその周囲のコンクリート上を運動することが可能で、実質的に免震装置の可動領域を大きく拡げ、免震装置の変形性能を飛躍的に拡大したに等しい効果が得られる。
【0036】
構成5は、コンクリート基礎盤と上盤の接触面処理の方法を示している。コンクリート上盤は、基礎盤コンクリートの上で打設され、硬化後にジャッキアップされるため、両者の接触面が接着ないし固着しないことが必要である。この両コンクリートの一体化を防止し、付着を切る方法として、図6(1)は、基礎盤上面にビニールシート等の薄膜を敷く方法であり、図6(2)は、基礎盤上面に砂粒や大鋸屑などの粉体を薄く撒いておく方法である。これらの方法により予めコンクリート接触面に剥離層を設け、両者の付着防止を図ることにより、ジャッキアップが円滑に行えることになる。
【0037】
構成6は、免震装置の機能維持と耐久性確保に関する方法である。本発明では免震装置取り付け平板をコンクリート躯体と同一レベルに打ち込むため、免震装置が配置されている基礎盤と上盤の間に雨水やほこりが侵入すると、免震装置の発錆を早め、また転がり支承の円滑な運動を阻害する恐れがある。このような障害を防止するために、構成6、図7(1)では先ず基礎盤上面を地盤面より高い位置に構築することを原則とする。また、構成7、図7(2)では、基礎盤の周囲に土手状の突起部を設け、雨水やほこりが侵入しづらい形状とする。いずれの場合にも、周囲側面のスリット部の表面には、更に構成8のようにゴムシートなどによる適切なや鋼板などによる保護カバーを設けることが望ましい。
【0038】
構成9、図8、図9は、復元力および減衰機能を担う小型積層ゴムの取り付け方法を示したものである。一般的には図4に示すように基礎盤と上盤との間には積層ゴムの高さに応じた充分な高さ(空き空間)が確保されているが、本発明では両躯体間の隙間は転動体高さ分しか確保されていないので、特別の工夫が必要になる。
【0039】
即ち、図1(2)の円形部が示すように小型積層ゴムが配置される場所は、図8(2)断面図が示すとおり基礎盤を少し深く掘り下げた形状とし、積層ゴムを内蔵し、積層ゴムが水平変形をしても周囲コンクリートに接触しない空洞空間を確保する。これはコンクリート基礎盤および上盤の両者に設ける必要があり、基礎盤側の窪み部および上盤側の円形穴部を構成するために、図8(1)(3)に示す形状の円筒形型枠部材を鋼材で作り、これをコンクリート打設前に設置して両者のコンクリート躯体内に打ち込む。円筒形型枠の外側にはスタッドボルトが溶接されているので、コンクリートの硬化によりこの円筒型枠はコンクリート躯体に一体化される。
【0040】
図8は、積層ゴム挿入前の状態を示しており、コンクリート内に設けられた取り付け位置に図8(2)に示すように、上盤上部より積層ゴム体を挿入し、上部より装置下側フランジのアンカーボルトを締めつければ、基礎盤コンクリートへの積層ゴムの固定は完了である。
【0041】
図9は、積層ゴム取り付け完了後の状態を示したもので、下側フランジのアンカーボルト締め付け完了後に、図9(1)(2)に示すように積層ゴム体上部の蓋となる鋼板を四角の穴に挿入し、積層ゴム上部フランジとのボルト、および蓋周囲の側面ボルトを締め付けることにより、積層ゴムの取り付けが完了する。
【0042】
積層ゴム体上下に配置されている円筒形およびその内部の鋼板フレームは積層ゴム体が変形した時に発生する地震時応力に充分耐えられるように設計されており、また変形も起こらず積層ゴム体の性能(復元力)発揮を保証するものである。また、積層ゴム体上部の蓋部のボルトをはずすことにより、建物完成後においてもこの積層ゴム体を自由に交換できることも本発明の長所である。
【0043】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の建設方法を採用すると、戸建て住宅や小規模建築物の基礎・免震装置およびその上部の装置取り付け部躯体を鉄筋コンクリート造により型枠を殆ど用いずに建設することが可能となり、以下のような効果と長所を得ることができる。
▲1▼型枠を要せずコンクリート基礎盤および上盤を構築できるので、免震建物の建設費用が大きく削減できる。
▲2▼型枠工事および支保工が不要となるので、工期が大きく短縮できる。
▲3▼コンクリート用型枠材が殆ど不要となるので、省資源で地球環境にも優しい工事方法である。
▲4▼免震装置の上部躯体がコンクリート盤として構成されるので、装置上部の躯体重量が大きくなり、住宅や小規模建物の弱点=軽量のために風による振動問題が大きく緩和ないし解決される。
▲5▼転がり支承の転動体受け平板と周囲躯体のコンクリ−ト表面が面一、同一レベルで構成されているので、転動体の可動領域が飛躍的に上昇し、免震構造物としての潜在的安全性能が格段に向上する。
▲6▼復元力・減衰を担う小型積層ゴムが、完成後の建物内から自由に交換可能となっているので、万一耐久性に問題が生じた場合は容易に交換できる。従って、建物全体の耐久性能に対する不安が解消され、長期性能・長期使用に対する安心感、信頼感が飛躍的に高まっている。
【0044】
以上のとおり、本発明は、戸建て住宅や小規模建物の軽量構造物を高性能免震構造物として建設すること、しかも飛躍的な低コストと短工期を可能にし、更に地球環境にも優しい建設方法を実現したものである。本発明により、これまで普及が進展しなかった小規模免震建物が、しかも高性能免震という形による普及が加速され、安全な社会の建設に大きく貢献するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象とする小規模免震建物の免震層の構成例を示す図で、
(1)免震層の断面構成図
(2)免震装置配置図およびコンクリート基礎盤平面図
【図2】本発明の型枠を用いずに免震層(上下コンクリート躯体および免震装置配置)を構築する建設方法の施工手順説明図
【図3】免震層上下躯体のコンクリート削減部分の説明図で、
(1)コンクリート躯体平面図
(2)低応力部分のコンクリートをなくした場合の断面構成図
(3)低応力部分のコンクリート厚さを薄くした場合の断面構成図
(4)低応力部分のコンクリートを基礎盤側はなくし、上盤側は薄くした場合の断面構成図
【図4】球体転がり支承と積層ゴムによる免震層の一般的な断面構成図
【図5】転がり支承の転動体受け平板(もしくはスベリ支承のすべり板)のコンクリート躯体への取り付け位置関係を示す図で、
(1)転がり支承の平面構成図
(2)断面構成図
【図6】コンクリート基礎盤上面とコンクリート上盤底面の付着防止方法説明図で、
(1)ビニールシート等の薄膜を敷く方法
(2)砂粒や大鋸屑などの粉体を撒く方法
【図7】免震層即ち、コンクリート躯体隙間部周囲の処理方法を示す図で、
(1)基礎盤および上盤両者の隙間部の位置とカバー取付け位置図
(2)基礎盤周囲に土手状突起を設ける場合の断面構成図
【図8】復元力と減衰を担う積層ゴム体の取り付け方法(積層ゴム体設置前の状況)を示す図で、
(1)上盤側の上部蓋部の平面構成図
(2)断面構成図
(3)基礎盤側装置底部の受け金物の平面構成図
【図9】復元力と減衰を担う積層ゴム体の取り付け方法(積層ゴム体設置完了後の状況)を示す図で、
(1)上盤側の上部蓋部の平面構成図
(2)断面構成図
(3)基礎盤側装置底部の受け金物の平面構成図
【符号の説明】
1 :地盤
11:割栗石
12:捨てコンクリート
2 :コンクリート基礎盤
21:装置取り付け台座(下側)
22:鉄筋
23:コンクリート躯体の側面型枠
24:コンクリート打設用ポンプ筒
25:コンクリート基礎盤の梁部
26:コンクリート基礎盤の薄肉部
27:コンクリート基礎盤の空洞部
3 :コンクリート上盤
31:装置取り付け台座(上側)
35:コンクリート上盤の梁部
36:コンクリート上盤の薄肉部
37:コンクリート上盤の空洞部
4 :上部建物
5 :転がり免震支承
51:転動体受け平板(下側)
52:転動体受け平板(上側)
53:転動体(=球体)
55:スタッドボルト
6 :積層ゴム免震装置
61:取り付けフランジ
62:取り付け用アンカ−プレート
63:スチフナ
64:固定用打ち込み鋼管
65:スタッドボルト
66:固定用ボルト
67:固定用上部蓋
7 :エアジャッキ
8 :上下コンクリート盤間スリット
81:付着防止用薄膜(ビニールシート)
82:付着防止用粉体層(砂粒層)
83:コンクリート土手状突起
84:保護カバー(ゴムシート等)

Claims (9)

  1. 構造物の重量を支える免震装置を備えた免震構造物において、
    先ず前記免震装置を配置する位置の下側に、コンクリートを打設し上面を水平に仕上げてなるコンクリート基礎盤を設け、
    前記コンクリート基礎盤の上に、平板状に形成された袋状のゴム製エアジャッキを配置し、
    前記コンクリート基礎盤の硬化後、前記免震装置を配置する位置の上側に、前記コンクリート基礎盤の上面に接してコンクリートを打設してなるコンクリート上盤を設け、
    前記コンクリート上盤が硬化した後に、前記エアジャッキを空気圧入して膨らませ、
    前記コンクリート上盤を持ち上げた状態で、前記免震装置を配置し取り付けた後に、
    前記エアジャッキの空気を抜いて前記コンクリート上盤を徐々に降下させ、所定の高さに設置することを特徴とする免震構造物の建設方法。
  2. 請求項1に記載の免震構造物の建設方法において、
    前記コンクリート基礎盤および前記コンクリート上盤を前記構造物の全平面に渡って構築することを特徴とする免震構造物の建設方法。
  3. 請求項1に記載の免震構造物の建設方法において、
    前記コンクリート基礎盤および前記コンクリート上盤の片方もしくは両方を前記免震装置の配置位置を結ぶ線状に沿って梁状に構築することを特徴とする免震構造物の建設方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、
    前記免震装置にすべり支承もしくは転がり支承を採用し、
    そのすべり板のすべり面もしくは転がり支承の転動体に接する上下プレートの表面を前記コンクリート基礎盤の上面もしくは前記コンクリート上盤の下面と同一水平面に打ち込むことを特徴とする免震構造物の建設方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、
    前記コンクリート基礎盤の上面に、後打ちする上盤コンクリートの付着を防止するためにプラスチックシートの薄膜又は砂粒等の薄い粉体からなる剥離層を設けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、
    前記コンクリート基礎盤の上面に雨水等の侵入を防止するために、前記コンクリート基礎盤の上面を周囲地盤より高く設けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、
    前記コンクリート基礎盤の周囲に前記コンクリート上盤の相対変位を妨げない高さの土手状突起部を配置することを特徴とする免震構造物の建設方法。
  8. 請求項1乃至5のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、
    前記コンクリート基礎盤と上盤の隙間部の周囲側面上に、ゴムシート又は薄い鋼板製の保護カバーを設けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の免震構造物の建設方法において、
    前記コンクリート基礎盤に窪みを設け、その底部にベースプレートとアンカーボルト用袋ナットを配置し、
    前記コンクリート上盤に穴を設け、
    前記穴より前記免震装置を挿入し、上部より前記免震装置の下部アンカーボルトを締め付けた後、
    前記穴に前記免震装置の固定用蓋を置き、前記免震装置の上部フランジと固定用蓋とをボルト接合により固定することにより、前記免震装置を着脱可能に取り付けることを特徴とする免震構造物の建設方法。
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