JP4864316B2 - 合成樹脂製耐熱ボトル型容器 - Google Patents

Description

本発明は合成樹脂製耐熱ボトル型容器，特に胴部に複数の減圧吸収パネルを有するボトル型容器に関するものである。

胴部に複数の減圧吸収パネルを有する合成樹脂製の耐熱ボトルは，その胴部表面に減圧吸収パネルを限定する複数の凹凸が形成されている。したがって，このようなボトルのブロー成形に際しては，胴部表面の凹凸に対応する金型表面部分において樹脂の円滑な伸延が妨げられることがあった。

このような現象は，例えば，周方向延伸倍率が２．８以下，特に２．６５以下の細身ボトルについて特に顕著である。ここに，「周方向延伸倍率」とは，ボトルの中心軸線から胴部壁面（角型ボトルの場合には，角部を除いた胴部壁面）の厚さ中心に至るまでの寸法と，そのボトルの成形に使用するプリフォームの中心軸線から胴部壁面の厚さ中心に至るまでの寸法との比として定義することができる。

すなわち，このような細身ボトルにおいて，口部から底部に向かうベクトルに対して金型内面との間で引っ掛かりを生じるような形状の凹凸部が胴部表面に形成されている場合には，胴部表面の凹凸部に対応する金型表面部分において肉溜まりや白濁等の発生が頻発し，容器の外観不良が避けられないばかりか，耐熱性にも好ましくない影響を与える原因になっていた。

なお，ブロー成形時の樹脂の伸延に由来する局所的な肉厚減少を回避するための手段として，特開２００２−２５５１４１号公報は，ボトルの肩部と胴部との境目に横凹リブを配設し，この横凹リブのリブ底径を胴部の円筒面の外径に対して０．８５〜０．９２とした耐熱性ボトルを提案している。

本発明の課題は，従来技術における上記の問題点を解消し，ブロー成形に際して，胴部表面の凹凸に対応する金型表面部分においても樹脂を円滑に伸延させることにより，外観不良の発生を回避すると共に耐熱性への悪影響を排除可能とした新規な細身ボトルを提案するところにある。

本発明は，容器胴部に減圧吸収パネルを有し，周方向延伸倍率が例えば２.８以下の合成樹脂製耐熱ボトル型容器において，前記減圧吸収パネルの壁面に沿い，容器の周方向に見た幅が，下部において上部におけるよりも長い２つ以上の凸部を縦断面形状が階段状となるように直列に具え，前記各凸部の縦断面形状は，上側傾斜辺と下側傾斜辺で形成される山状となっており，前記下側傾斜辺は，前記上側傾斜辺よりも長く，容器の中心軸線に対して３５°以下の角度で胴部の外側上方へ延びるように形成されていることを特徴とするものである。

本発明の上記構成によれば，減圧吸収パネルの壁面に形成する２つ以上の凸部を，容器の周方向に見た幅が，下部において上部におけるよりも長い形状とし，当該２つ以上の凸部を縦断面形状が階段状となるように直列に具え，前記各凸部の縦断面形状は，上側傾斜辺と下側傾斜辺で形成される山状となっており，前記下側傾斜辺は，前記上側傾斜辺よりも長く，容器の中心軸線に対して３５°以下の角度で胴部の外側上方へ延びるように形成されていることにより，ブロー成形に際して樹脂の伸延方向である口部から底部に向かうベクトルに対して引っ掛かりが生じにくくなり，肉溜まりや白濁の発生を抑制することができ，所望の肉厚に成形することが可能である。

前記凸部は，容器口部から底部に向けて末広がりになる逆V字状の稜線を有する構成とするのが好適である。この場合において，稜線の中心角は６０°〜１２５°とするのが望ましい。

上記の構成に代えて，前記凸部を，互いに平行な下辺が上辺より長い略台形状の凸部とすることも可能である。この場合にも，前記同様に，非平行な対辺が互いになす角度を６０°〜１２５°とするのが望ましい。

減圧吸収パネルの壁面に２つ以上の前記凸部を階段状に直列に配設する場合，及び／又は減圧吸収パネルの壁面に逆V字状の稜線を有する凸部や，下辺が上辺よりも長い略台形状の凸部を形成する場合には，ブロー成形に際して該稜線に沿って樹脂が一層良好に伸延するため，肉溜まりや白濁の発生を抑制し，所望の肉厚に成形する前記効果を確実に発現させることが可能である。

さらに，前記減圧吸収パネルは，側壁を介して容器胴部につながっており，前記側壁は，容器胴部から減圧吸収パネルに向けて容器の内方に延びており，且つ前記側壁の減圧吸収パネル側の末端で減圧吸収パネルの輪郭線を形成し，当該輪郭線のうち，前記減圧吸収パネルの上部に位置する輪郭線は，容器底部に向けて張り出した形状を有するものが望ましい。減圧吸収パネルの上部における胴部との境界部分はブロー成形に際して特に肉溜まりが生じ易い箇所であるが，その部位の形状をパネル壁面に沿い，容器底部に向けて張り出す構成とすることで樹脂の均等な伸延を効果的に助長することが可能である。

なお，減圧吸収パネルの壁面に沿い，容器の周方向に見た幅が下部において上部におけるよりも長い凸部を設けた構成と，減圧吸収パネルの上部に位置する輪郭線は，容器底部に向けて張り出した形状を有する構成とは，互いに組み合わせるのが最も効果的であるが，何れか一方の構成のみによっても実用上十分な程度まで樹脂の伸延が助長され，肉溜まりの発生を実用上十分に抑制できることが確認されている。

以下，図面に基づいて本発明をより具体的に説明する。

図１の（Ａ），（Ｂ）及び（Ｃ）は，充填容量が約３５０ミリリットル，周方向延伸倍率が２.８以下の細身角型ボトルとして構成された本発明に係る合成樹脂製耐熱容器の実施形態を示すものである。参照数字１は容器胴部を形成する壁面，２は壁面１の両端をつないで同じく容器胴部を形成する角部，３は容器胴部の周りに沿って設けられた溝部，４は溝部３の上側の各壁面１に設けられた減圧吸収用の上側パネル，５は溝部３の下側の各壁面１に設けられた減圧吸収用の下側パネルである。

上側パネル４及び下側パネル５は，それぞれ容器の内側に向かう側壁４ａ，５ａを介して容器胴部につながっており，該側壁４ａ，５ａの末端で各パネルの輪郭を形成する。このうち下側パネル５の上部に位置する側壁５ａは，容器底部に向けて張り出した円弧状の輪郭線で規定される部分球面からなっている。すなわち，下側パネル５の上部に位置する側壁５ａは，容器の周方向に見た幅が，上側において下側におけるよりも大きい。

参照数字６は，下側パネル５の壁面５ｂにおいて，容器の中心軸線方向に間隔を置いて直列に２つ設けた例で示した凸部である。凸部６は，容器の正面から見たときに容器口部から底部に向けて末広がりになる逆Ｖ字状の稜線６ａ，６ｂを有する。図２に示すように，凸部６は階段状に連続配置されており，凸部６の縦断面形状を形成する下側傾斜辺は容器の中心軸線Ｘに対して３５°以下の角度で胴部の外側上方へ延びるように形成されている。

図３に示したプリフォームを用いて図１に示すような細身のボトル型容器を周方向延伸倍率が低い成形条件下（典型的には周方向延伸倍率が２．８以下，特に２．６５以下）で二軸延伸ブロー成形する場合，一般的には，プリフォームの下部域は樹脂が伸延しにくく，該下部域が金型面に接触する前にその上部域が金型面に接触することになる。そのために樹脂の伸延が上部域と下部域では不均一となり，ひいては外観不良の原因ともなり得る肉溜まりや白濁が生じ易くなる。しかし，本発明においては下側パネル５の壁面に，周方向の幅が下部において上部におけるよりも長い断面山状凸部６を設けたので，樹脂の伸延方向となる口部から底部に向かうベクトルに対して引っ掛かりが生じ難くなり，さらには，該凸部６を逆V字状の稜線を有する凸部６として設けたので，これによりブロー成形に際して樹脂が円滑に伸延され，肉溜まりや白濁が軽減又は回避される。

特に，下側パネル５の上部ではブロー成形の際に肉溜まりが生じやすいが，側壁５ａのパネルの輪郭線を，容器底部に向けて張り出した円弧状とすることで樹脂が一層円滑に伸延され，肉溜まりの発生がより確実に抑制される。

凸部６における稜線の中心角θは，樹脂の円滑な伸延を導くために６０°〜１２５°程度とするのがよい。

上述した実施形態において，凸部６は互いに間隔をおいて２つ直列に配設した例で示したが，この場合において凸部６を図２に示す如く階段状に連続配置すれば樹脂をより円滑に伸延させることが可能になる。

なお，凸部６は，延伸倍率に応じてその数を増減できるものであって，２つ設ける場合に限定されるものではなく，また，下側パネル５のみならず上側パネル４に設けることもできるのは言うまでもない。

図４及び図５に示す実施形態では，凸部６を，周方向の幅が下辺において上辺よりも長い台形状とする。また，容器の縦断面において凸部６を，容器の中心軸線Ｘに対して平行な面を頂部（容器の中心軸線Ｘから最も離間した領域）に有する台形状としてもよい。これらの場合にも前述した実施形態と同様の効果を発現させることが可能である。

図６及び図７に示す実施形態では，下側パネル５の壁面５ｂに沿って凸部６が設けられていない。しかし，前述した実施形態におけると同様，下側パネル５の上部に位置する側壁５ａが，容器底部に向けて張り出した円弧状の輪郭線で規定される部分球面からなっている。すなわち，下側パネル５の上部に位置する側壁５ａは，容器の周方向に見て，上側における幅が下側における幅よりも大きい。

図６及び図７に示すような細身のボトル型容器を周方向延伸倍率が低い成形条件下で二軸延伸ブロー成形する場合，下側パネル５の壁面５ｂに沿って凸部６が設けられていなくとも，側壁５ａのパネルの輪郭線が円弧状とされているために樹脂の伸延が十分に助長され，肉溜まりの発生を効果的に抑制することができる。

なお，前述した何れの実施形態においても，下側パネル５の上部に位置する側壁５aを限定する輪郭線は，容器底部に向けて張り出した形状であれば円弧状以外の適宜形状，例えば上辺が下辺より長い台形状や，Ｖ字状又はＵ字状としてもよい。

以上説明したとおり，本発明によれば，ブロー成形に際して，胴部表面の凹凸に対応する金型表面部分においても樹脂を円滑に伸延させることにより，外観不良の発生を回避すると共に耐熱性への悪影響を排除可能とした良好な細身ボトルを安定に成形することが可能である。

本発明が上述した実施形態のみに限定されるものでなく，その範囲内において幾多の変形・変更が可能であることは言うまでもない。

（Ａ），（Ｂ）及び（Ｃ）は，それぞれ本発明の一実施形態に係る容器の正面図，平面図及び底面図である。 図１（Ａ）のＩＩ−ＩＩ線に沿う断面図である。 本発明に係る容器のブロー成形に好適に使用することのできるプリフォームの側面図である。 本発明の他の実施形態に係る容器の正面図である。 図４のＶ−Ｖ線に沿う断面図である。 本発明の他の実施形態に係る容器の正面図である。 図６のＶＩＩ−ＶＩＩ線に沿う断面図である。

符号の説明

１ 容器胴部の壁面
２ 角部
３ 溝部
４ 上側パネル
４ａ 側壁
５ 下側パネル
５ａ 側壁
５ｂ 壁面
６ 凸部
６ａ，６ｂ 稜線
Ｘ 容器の中心軸線

Claims (7)

1. 容器胴部に減圧吸収パネルを有する合成樹脂製耐熱ボトル型容器であって，
   前記減圧吸収パネルの壁面に沿い，容器の周方向に見た幅が，下部において上部におけるよりも長い２つ以上の凸部を縦断面形状が階段状となるように直列に具え，前記各凸部の縦断面形状は，上側傾斜辺と下側傾斜辺で形成される山状となっており，前記下側傾斜辺は，前記上側傾斜辺よりも長く，容器の中心軸線に対して３５°以下の角度で胴部の外側上方へ延びるように形成されていることを特徴とするボトル型容器。
2. 請求項１記載のボトル型容器であって，前記凸部が，容器口部から底部に向けて末広がりになる逆V字状の稜線を有することを特徴とするボトル型容器。
3. 請求項２記載のボトル型容器であって，前記稜線の中心角が６０°〜１２５°であることを特徴とするボトル型容器。
4. 請求項１記載のボトル型容器であって，前記凸部が，互いに平行な上辺及び下辺を有し，該下辺が上辺よりも長い台形状の凸部であることを特徴とするボトル型容器。
5. 請求項４記載のボトル型容器であって，前記台形における互いに非平行な対辺が互いになす角度が６０°〜１２５°であることを特徴とするボトル型容器。
6. 請求項１〜５項の何れか一項に記載のボトル型容器であって，前記減圧吸収パネルは，側壁を介して容器胴部につながっており，前記側壁は，容器胴部から減圧吸収パネルに向けて容器の内方に延びており，且つ前記側壁の減圧吸収パネル側の末端で減圧吸収パネルの輪郭線を形成し，当該輪郭線のうち，前記減圧吸収パネルの上部に位置する輪郭線は，容器底部に向けて張り出した形状を有することを特徴とするボトル型容器。
7. 請求項１〜６項の何れか一項に記載のボトル型容器であって，周方向延伸倍率が２.８以下であることを特徴とするボトル型容器。

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