従来、部品実装機は、次のように動作する。すなわち、部品実装機は、先ず、部品供給部から供給された部品に向かってノズルユニットの吸着ビット部を降下させ、吸着ビット部の部品吸着口が所定の高さとなったタイミングで、部品吸着口に負圧(大気圧未満)を供給し、その部品吸着口に部品を真空吸着させる。
次に、部品実装機は、吸着ビット部を上昇させ、吸着ビット部が吸着保持している部品の姿勢をカメラで撮像して認識する。部品実装機は、認識した吸着保持中の部品の姿勢および予めNCテーブルで定められている部品の姿勢に応じて、ノズルユニットをその軸芯回りに回転させて、部品の向きを修正する。
次に、部品実装機は、ノズルユニットを基板上の所望の実装位置に向かって水平方向に移動させ、吸着ビット部を基板に向かって降下させ、吸着ビット部の部品吸着口が所定の高さとなったタイミングで、部品吸着口に背圧(大気圧以上)を供給して、部品が基板に当接した時、あるいは当接した後に、吸着ビット部による吸着保持が解除されるようにする。その後、部品実装機は、基板に当接している部品を吸着ビット部により押圧して、部品を実装する。
従来のノズルユニットの構成について、図21を用いて説明する。従来のノズルユニットは、ビットホルダ部101と、ビットホルダ部101の中心孔101a内を上下に摺動自在な吸着ビット部102と、吸着ビット部102とビットホルダ部101との間に係着された圧縮ばね103と、を備える。圧縮ばね103は、吸着ビット部102を下方に付勢しており、この付勢力により、吸着ビット部102はビットホルダ部101から突出している。
また、ビットホルダ部101にはガイドピン104が中心孔101a内に突出するように設けられており、そのガイドピン104の先端を、吸着ビット部102の外周部に設けた軸線方向の溝102aに嵌入させて吸着ビット部102とビットホルダ部101との相対回転を規制している。
圧縮ばね103は、部品吸着時に吸着ビット部102の先端の部品吸着口105に供給される負圧により吸着ビット部102が上昇しないようにしている。さらに、下降開始時(加速時)に吸着ビット部102が上昇しないようにしている。また、実装時には部品を押圧する。
以上のように、従来、ノズルユニットは、実装時に圧縮ばねの付勢力により部品を押圧する構成となっている(例えば特許文献1参照。)。しかし、近年、抵抗素子等のチップ部品の小型化が進んできており、実装時に部品割れ等が起こるようになってきた。そのため、実装時に部品に作用する衝撃力を小さくすることが要求されている。
実装時に部品に作用する衝撃力には、次の2つの力がある。すなわち、部品を実装位置に当接する際に部品に作用する衝撃力:F=mv/t+mg+P+kμ0と、部品を押圧する際に部品に作用する衝撃力:F=mg+P+kμ1である。ここで、m:吸着ビット部の質量、v:吸着ビット部の降下時の速度(通常は等速である)、t:vが変化した場合のその時の時間、P:吸着ビット部をビットホルダ部に対して下方へ付勢する付勢力(圧縮ばねの付勢力)、k:係数、μ0:静止摩擦係数、μ1:動摩擦係数である。
図21に示すノズルユニットでは、部品吸着口105に供給される負圧が吸着ビット部102の上面にも作用して、圧縮ばね103に抗して吸着ビット部102を吸い上げようとする力が生じるため、圧縮ばね103の付勢力Pを小さくできず、実装時に部品に作用する衝撃力が大きくなる。
また、ビットホルダ部101の中心孔101a内に、吸着ビット部102がすべり軸受けにより摺動自在に設けられており、その摺動部に発生する摩擦係数μ0、μ1が大きいため、実装時に部品に作用する衝撃力が大きくなる。
さらに、中心孔101aの内面と吸着ビット部102の外面との接触面(摺動部)に発生する摩擦係数μ0、μ1が大きいことから、耐久性を考慮して、吸着ビット部102とビットホルダ部101は鉄でできており、そのため、吸着ビット部102の質量mが重くなり、実装時に部品に作用する衝撃力が大きくなる。
したがって、図21に示す従来のノズルユニットでは、実装時に部品に作用する衝撃力が大きくなるため、実装時に部品割れ等が起こるおそれがある。そこで、部品吸着口105に供給する負圧が吸着ビット部102の上面に作用しないようにして、その分、圧縮ばね103の付勢力Pを小さくすることで、実装時に部品に作用する衝撃力を小さくするものが提案されている(例えば特許文献1参照。)。図22にその従来のノズルユニットを示す。但し、図21において説明した部材に対応する部材には同一符号を付して、説明を省略する。
図22に示すように、このノズルユニットは、ビットホルダ部101に設けた大径の中心孔101aと負圧供給用の圧力源に通じる小径の中心孔101bとをコの字型の通路101cにより連通させ、この通路101cをビットホルダ部101の外周部に嵌着した外筒106により密閉すると共に、吸着ビット部102の上部に小径部102bを設けた構成となっている。
このノズルユニットの構成によれば、吸着ビット部102の上面に負圧が作用しないので、その分、圧縮ばね103の付勢力Pを小さくでき、実装時に部品へ作用する衝撃力を小さくすることができる。
しかし、やはり、ビットホルダ部101の中心孔101a内に、吸着ビット部102がすべり軸受けにより摺動自在に設けられているため、その摺動部に作用する摩擦係数μ0、μ1が大きくなる。また、中心孔101aの内面と吸着ビット部102の外面との接触面(摺動部)に発生する摩擦係数μ0、μ1が大きいため、耐久性を考慮して、吸着ビット部102とビットホルダ部101は鉄製にする必要があり、吸着ビット部102の質量mが重くなる。したがって、図22に示す従来のノズルユニットでも、実装時に部品に作用する衝撃力が大きくなるため、実装時に部品割れ等が起こるおそれがある。
一方、部品実装機のノズルユニットとは異なるが、回路基板に半導体チップをボンディングするチップボンディングツールにおいて、図23に示すように、上下動するピストン202のロッド204を静圧軸受け217で支持することで、ピストン202の支持箇所の摩擦抵抗を小さくして、低圧レベルの加圧エアでピストン202を下方へ移動できるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
チップボンディングツールは、シリンダチューブ201の内部に上下動自在にピストン202を支持し、チップボンディング時に、ピストン202のヘッド203を下方向へ移動させ、ロッド204の先端に装着された加圧子205に吸着している半導体チップを回路基板にボンディングする。
具体的には、図23に示すように、シリンダチューブ201の上部ポート206に管路207が、下部ポート208に管路209がそれぞれ接続しており、チップボンディング時には、管路207および上部ポート206を経て加圧エアを供給しながら、下部ポート208および管路209を経てエアを排出して、ピストン202のヘッド203を下方向へ移動させる。
また図23に示すチップボンディングツールは、エア供給孔210に管路211が、エア吸引孔212に管路213がそれぞれ接続されており、エア吸引孔212は、ピストン202のロッド204に設けられた接続孔214に接続し、接続孔214は、ロッド204の先端に設けられた加圧子205のチップ吸着孔215に接続している。チップボンディング時には、管路213、エア吸引孔212、接続孔214を経て、チップ吸着孔215を真空状態にして、半導体チップを真空吸着する。さらにこのとき、管路211およびエア供給孔210を経た加圧エアを多孔質体216で均一に分散させてピストン202のロッド204を非接触状態に支持している。
しかしながら、このチップボンディングツールは、シリンダチューブ201の側壁に貫通せしめられたエア供給孔210およびエア吸引孔212に管路が接続する構成となっており、回転させることができない。したがって、このチップボンディングツールの機構を、回転させる必要があるノズルユニットに採用することはできなかった。
特開平2−174299号公報
特開平10−340931号公報
以下、本発明の各実施の形態について、図面を交えて説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施の形態に限るものではない。例えば、各実施の形態で説明する事項を適宜組み合わせてもよい。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るノズルユニットを示す模式断面図である。図1に示すように、このノズルユニットは、装着ヘッドベース部10が上下動および回転可能に可動軸20を支持し、その可動軸20の先端(下端)に接続されたビットホルダ部30が吸着ビット部40を支持し、エア供給用ブロック部50が、静圧軸受けにより吸着ビット部40を上下動および回転可能に支持する構成となっている。この構成により、可動軸20を上下動および回転させることで、ビットホルダ部30および吸着ビット部40を共に装着ヘッドベース部10に対して上下動および回転させることが可能となる。
また、このノズルユニットは、吸着ビット部40の先端(下端)に形成された部品吸着口41にエア供給用ブロック部50から負圧(大気圧未満)が供給される構成となっている。この構成により、吸着ビット部40の先端(部品吸着口41)に部品70を吸着させることが可能となる。
このノズルユニットは、基板上の所望の実装位置に部品を実装する部品実装機に用いられるものである。部品実装機は、次のように部品実装を行う。すなわち、部品実装機は、先ず、部品供給部から供給された部品70に向かってノズルユニットの吸着ビット部40を降下させ、吸着ビット部40の部品吸着口41が所定の高さとなったタイミングで、部品吸着口41に負圧を供給し、その部品吸着口41に部品70を真空吸着させる。
次に、部品実装機は、吸着ビット部40を上昇させ、吸着ビット部40が吸着保持している部品70の姿勢をカメラで撮像して認識する。部品実装機は、認識した吸着保持中の部品70の姿勢および予めNCテーブルで定められている部品70の姿勢に応じて、吸着ビット部40をその軸芯回りに回転させて、部品の向きを修正する。
次に、部品実装機は、ノズルユニットを基板上の所望の実装位置に向かって水平方向に移動させ、吸着ビット部40を基板に向かって降下させ、吸着ビット部40の部品吸着口41が所定の高さとなったタイミングで、部品吸着口41に背圧(大気圧以上)を供給して、部品70が基板に当接した時、あるいは当接した後に、吸着ビット部40による吸着保持が解除されるようにする。その後、部品実装機は、基板に当接している部品70を吸着ビット部40により押圧して、部品を実装する。
また、部品実装機は、以上説明した動作の間、エア供給用ブロック部50に正圧(大気圧以上)を供給して、エア供給用ブロック部50と吸着ビット部40との間に静圧軸受けを構成する。
以下、ノズルユニットを詳細に説明する。装着ヘッドベース部10は、可動軸20を上下動および回転可能に支持する。この構成は、例えば、装着ヘッドベース部10と可動軸20との間に、スプライン軸受け11とボールベアリング12を2重に設けた構成としてもよい。なお、無論、可動軸20の軸受けは、この構成に限るものではない。
可動軸20は、例えば、装着ヘッドベース部10に設けた図示しないリニアモータと、装着ヘッドベース部10および可動軸20に設けた突出部13、21に係着するばね14により上下動する。つまり、可動軸20を下降させるときには、リニアモータを駆動して可動軸20を下方へ押し、可動軸20を上昇させるときには、ばね14の付勢力により可動軸20を上方へ戻す。なお、無論、可動軸20を上下動させる構成は、この構成に限るものではない。
可動軸20を回転させる構成としては、例えば可動軸20にプーリ22を設けて、プーリ22を回転させる構成とする。なお、無論、可動軸20を回転させる構成は、この構成に限るものではない。
可動軸20の先端(下端)に接続されたビットホルダ部30は円筒形状をしており、下方に開放された凹部31を有する。このビットホルダ部30は、その凹部31の内側に挿入された吸着ビット部40を、上下動可能に支持すると共に可動軸20の回転に連動して回転させる。また、エア供給用ブロック部50が吸着ビット部40を静圧軸受けにより支持したとき、ビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間に一定のクリアランスが保たれるように構成する。
吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持すると共に可動軸20の回転に連動して回転させる構成としては、例えば、ビットホルダ部30に設けた上下方向に長い長穴32aに吸着ビット部40に設けた回り止め用のピン42aを嵌め込む構成にする。図2に、図1に示すA方向から見たノズルユニットの外観を示す。
図2に示すように、吸着ビット部40のピン42aを、ビットホルダ部30の長穴32aに、その長手方向に移動自在に嵌め込むことで、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持することができ、かつ、ビットホルダ部30(可動軸20)の回転に連動して吸着ビット部40を回転させることができる。
なお、無論、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持すると共に可動軸20の回転に連動して回転させる構成は、この構成に限るものではない。例えば、図3に示すように、吸着ビット部40の上部に四角柱形状の回り止め部42bを設けると共に、ビットホルダ部30の側壁に、その回り止め部42bの鍔部が上下方向に移動可能に嵌め込まれる形状の環状穴32bを設ける構成としてもよい。
また、ビットホルダ部30と吸着ビット部40との間に、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して下方へ付勢する圧縮ばね(付勢部)33が係着されている。圧縮ばね33は、次の3つの機能を有する。第1は、吸着ビット部40の先端(部品吸着口41)で部品70を吸着しているときに、負圧により吸着ビット部40が上昇しないようにして、吸着ビット部40を下限位置に規制する機能である。第2は、吸着ビット部40の下降開始時(加速時)に吸着ビット部40が上昇しないようにして、吸着ビット部40を下限位置に規制する機能である。第3は、部品70の実装時に、部品70を押圧する機能である。
以上説明した構成により、ビットホルダ部30に支持される吸着ビット部40、およびビットホルダ部30は、可動軸20の上下動ないし回転動作に連動して、上下動ないし回転する。
ビットホルダ部30に支持される吸着ビット部40は、円柱形状の胴体部(ノズルホルダ)43と、胴体部43に装着されたノズル部44からなる。ノズル部44は円筒形状であり、その先端(下端)に部品吸着口41が形成されている。部品吸着口41は、吸着ビット部40に形成された連通孔45を経由して、吸着ビット部40の外側面に連通する。連通孔45は、具体的には、円筒形状のノズル部44の内側空間と、その内側空間と胴体部43の外側面とを連通する複数本の連通孔からなり、その各連通孔の開口部が胴体部43の外側面に形成されている。
吸着ビット部40は、エア供給用ブロック部50が有する貫通穴51に挿入(遊嵌)される。エア供給用ブロック部50は、外面に気体供給口52および気体吸引口53が形成されている。また、貫通穴51の内面に、環状の気体供給室54および気体吸引室55が形成されている。気体吸引室55は、吸着ビット部40の外側面に形成された連通孔45の開口部に対向するように配置する。
気体供給口52は、エア供給用ブロック部50の内部に形成された連通孔56を経由して気体供給室54に連通する。同様に、気体吸引口53は、エア供給用ブロック部50の内部に形成された連通孔57を経由して気体吸引室55に連通する。
つまり、気体供給口52は、吸着ビット部40の外面と貫通穴51の内面との間の隙間に連通する。一方、気体吸引口53は、吸着ビット部40の外面と貫通穴51の内面との間の隙間を経由して吸着ビット部40の部品吸着口41に連通する。
また、気体供給口52は、図示しない部品実装機の正圧供給用の圧力源に、管路71および電磁弁72を介して接続する。部品実装機は、電磁弁72の開閉を制御して、気体供給口52への気体(正圧)の供給および供給停止を制御する。
気体吸引口53は、図示しない部品実装機の負圧供給用の圧力源および背圧供給用の圧力源に、管路73、電磁弁74、並びに管路73の接続先を負圧供給用の圧力源および背圧供給用の圧力源との間で切り換える電磁弁(図示せず)を介して接続する。部品実装機は、2つの電磁弁の開閉を制御して、気体吸引口53からの気体の吸引および吸引停止ないし気体吸引口53への気体(背圧)の供給および供給停止を制御する。すなわち、部品吸着口41への負圧ないし背圧の供給および供給停止を制御する。
図4に、図1に示すB方向から見たノズルユニットの外観を示す。このように気体供給口52と気体吸引口53を上下方向に並べて配置することで、例えば、図5(a)に示すように6個のノズルユニットを配置したり、図5(b)に示すように12個のノズルユニットを配置することができ、多数個のノズルユニットをコンパクトに配置することができるようになる。なお、図5(a)、図5(b)には、1個の装着ヘッドベース部に対して複数個の可動部やエア供給用ブロック部等を装着した構成を示している。
図6に吸着ビット部40周辺のエアの流れを示す。図6において、矢印がエアの流れを示している。図6に示すように、気体供給口52に供給された気体(正圧)は、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に供給される。したがって、気体供給口52に気体(正圧)を供給することで、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に静圧軸受けを構成することができ、その摺動部の静摩擦係数および動摩擦係数をほぼ零にすることができる。
一方、気体吸引口53から気体を吸引すると、吸着ビット部40の先端(部品吸着口41)に負圧が供給される。したがって、気体吸引口53から気体を吸引することで、吸着ビット部40の先端に部品70を吸着させることができる。なお、気体吸引口53から吸引する気体の流量は、気体供給口52に供給する気体の流量よりも大きくする。
図7に、図6に示すC1−C1’部の断面を示す。図7に示すように、環状の気体供給室54を形成することで、吸着ビット部40の全周に対して静圧軸受けを構成することができる。
図8に、図6に示すC2−C2’部の断面を示す。図8に示すように環状の気体吸引室55を形成することで、吸着ビット部40が回転しても部品吸着口41に負圧を安定して供給することが可能となる。
なお、図8には、円筒形状のノズル部44の内側空間を吸着ビット部40の外側面に連通する連通孔を8本形成した構成を示しているが、無論、この連通孔は8本に限定されるものではない。また、ここでは環状の気体吸引室を形成する場合を例示したが、気体吸引室は、少なくとも吸着ビット部の回転範囲に対応する範囲に形成する。
また、図1に示すように、エア供給用ブロック部50には、可動軸20を回転可能に支持し、可動軸20の上下動に連動して上下動するレバー部58が装着している。レバー部58が可動軸20を回転可能に支持する構成としては、例えば可動軸20とレバー部58との間にボールベアリング59を設けてもよい。なお、無論、可動軸20を支持する構成は、これに限るものではない。
またエア供給用ブロック部50は装着ヘッドベース部10に上下動可能に支持される。エア供給用ブロック部50を支持する構成としては、例えば図1に示すように、装着ヘッドベース部10とエア供給用ブロック部50との間にスプライン軸受け15を設けてもよい。なお、無論、エア供給用ブロック部50を支持する構成は、これに限るものではない。例えば、装着ヘッドベース部10に下方に突出する突出部を設け、その突出部の軸受けをエア供給用ブロック部50側に設けてもよい。
以上のようにレバー部58を設けることで、エア供給用ブロック部50は可動軸20の上下動に連動して上下動する。したがって、可動軸20が上下動しても、吸着ビット部40とエア供給用ブロック部50との位置関係は変わらず、気体供給室54は、吸着ビット部40の外側面に常に対向するので、エア供給用ブロック部50と吸着ビット部40との間に安定して静圧軸受けを構成することができる。
また、可動軸20が上下動しても、気体吸引室55は、吸着ビット部40の外側面に形成された連通孔45の開口部に常に対向するので、吸着ビット部40の部品吸着口41へ負圧を安定して供給することができる。なお、可動軸20の上下方向の移動量が小さい場合には、例えばエア供給用ブロック部50を装着ヘッドベース部10に固定してもよい。
また、可動軸20が回転してもエア供給用ブロック部50が回転しない構成であるので、常に決まった方向からエア供給用ブロック部50に負圧や正圧、背圧を供給することができ、可動軸20が回転してもエア供給用ブロック部50に接続する管路は回転しない。
本実施の形態1によれば、吸着ビット部40とエア供給用ブロック部50にのみ、吸着ビット部40の部品吸着口41へ負圧を供給するための流路が形成され、吸着ビット部40が挿入されるビットホルダ部30の内側空間には負圧の流路が形成されないので、吸着ビット部40の上面に負圧が作用しない。したがって、その分、圧縮ばね33の付勢力を小さくすることが可能となる。
また、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に静圧軸受けを構成することができ、摺動部の摩擦係数を低減することができる。さらに、その分、圧縮ばね33の付勢力を小さくすることが可能となる。
また、摺動部の摩擦係数を低減できるので、吸着ビット部40の材質を鉄からアルミ等の比重の軽い材料へ代えることができ、吸着ビット部40の質量を小さくすることができる。さらに、その分、圧縮ばね33の付勢力を小さくすることが可能となる。
以上のように、圧縮ばね33の付勢力、摺動部の摩擦係数、および吸着ビット部40の質量を小さくすることができるので、部品70を基板上に実装する際に部品70に作用する衝撃力を小さくすることができる。したがって、その衝撃力による部品70の割れ等を回避することができる。但し、圧縮ばね33は、少なくとも、負圧による吸着ビット部の上昇、および下降開始時の吸着ビット部の上昇を抑えるだけの付勢力を有する必要がある。
なお、気体供給室54を貫通穴51の内面に形成したが、図9に示すように、エア供給用ブロック部50の内部に環状の気体供給室54を設け、その気体供給室54を貫通穴51の内面に形成した複数の開口部へ連通させてもよい。図10に、図9に示すC1−C1’部の断面を示す。図10には、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間へ気体供給室54を連通させる連通孔を4本形成した場合を例示しているが、無論、この連通孔は4本に限定されるものではない。
また、図示しないが、吸着ビット部40の外側面に環状の気体供給室を設けてもよい。また、気体吸引室55についても同様に、吸着ビット部40の外側面に設けてもよい。
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2に係るノズルユニットの一部を示す模式断面図である。但し、図11には、前述した実施の形態1で説明した構成と異なる部分を説明するのに必要な構成のみを示す。また、前述した実施の形態1において説明した部材に対応する部材には同一符号を付している。なお、図11に示していない部分は、前述した実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
本実施の形態2に係るノズルユニットは、主に、エア供給用ブロック部とエア供給用ブロック部に挿入されたビットホルダ部との間の隙間、およびビットホルダ部と吸着ビット部との間の隙間に、静圧軸受けが構成される点が、前述した実施の形態1と異なる。以下、前述した実施の形態1と異なる点について説明する。
筒形状のビットホルダ部30は、外面の断面形状が円形状をしており、内面の断面形状が四角形状をしている。吸着ビット部40の胴体部43は四角柱形状をしており、ビットホルダ部30の四角柱形状の内側空間に挿入(遊嵌)される。ビットホルダ部30は、挿入された吸着ビット部40を上下動可能に支持する。
吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持する構成としては、例えば、ビットホルダ部30に設けた上下方向に長い長穴32cに、吸着ビット部40に設けた挿入ピン42cを挿入する構成にする。図12に、図11に示すA方向から見たノズルユニットの外観を示す。
図12に示すように、吸着ビット部40の挿入ピン42cを、ビットホルダ部30の長穴32cに挿入することで、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持することができる。挿入ピン42cは回り止め用のものではないので、図12に示すように、ビットホルダ部30の長穴32cに挿入ピン42cを遊嵌してもよい。なお、無論、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持する構成は、この構成に限るものではない。
ビットホルダ部30と吸着ビット部40は共に、エア供給用ブロック部50が有する貫通穴51に挿入(遊嵌)される。ビットホルダ部30の側壁には、貫通穴51の内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間を、ビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に連通させる連通孔34、35がそれぞれ複数本形成されている。
連通孔34は、貫通穴51の内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間を経由してビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に気体供給口52を連通させる。
一方、連通孔35は、貫通穴51の内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間を経由してビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に気体吸引口53を連通させる。
図13に、図11に示すC1−C1’部の断面を示す。図13に示すように、ビットホルダ部30に複数本の連通孔34を形成する。なお、図13には4本の連通孔34を形成した場合を例示しているが、無論、4本に限定されるものではない。
このようにビットホルダ部30の側壁に連通孔34、35を形成することで、気体供給口52は、貫通穴51の内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間、およびビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に連通する。また、気体吸引口53は、貫通穴51の内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間、およびビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に連通し、連通孔45を経由して吸着ビット部40の部品吸着口41に連通する。
図11において、矢印がエアの流れを示している。気体供給口52に供給された気体(正圧)は、貫通穴51の内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間、およびビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に供給される。したがって、気体供給口52に気体(正圧)を供給することで、貫通穴51の内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間、およびビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に、静圧軸受けを構成することができ、それらの摺動部の静摩擦係数および動摩擦係数をほぼ零にすることができる。
一方、気体吸引口53から気体を吸引すると、吸着ビット部40の先端(部品吸着口41)に負圧が供給される。したがって、気体吸引口53から気体を吸引することで、吸着ビット部40の先端に部品70を吸着させることができる。なお、気体吸引口53から吸引する気体の流量は、気体供給口52に供給する気体の流量よりも大きくする。
また、ビットホルダ部30の内側空間と吸着ビット部40の胴体部43は共に四角柱形状をしており、ビットホルダ部30と吸着ビット部40との間に構成された静圧軸受けにより、吸着ビット部40は、ビットホルダ部30の回転に連動して回転する。
なお、ビットホルダ部30の内側空間および吸着ビット部40の胴体部43の形状は、四角柱形状に限定されるものではなく、例えば図14に示すように三角柱形状であってもよいし、図15に示すように六角柱形状であってもよいし、図16に示すように、四角柱形状の各角部を面取りした形状であってもよい。
本実施の形態2によれば、前述した実施の形態1と同様に、圧縮ばね33の付勢力、摺動部の摩擦係数、および吸着ビット部40の質量を小さくすることができるので、部品70を基板上に実装する際に部品70に作用する衝撃力を小さくすることができる。したがって、その衝撃力による部品70の割れ等を回避することができる。
(実施の形態3)
図17は、本発明の実施の形態3に係るノズルユニットの一部を示す模式断面図である。但し、図17には、前述した実施の形態1で説明した構成と異なる部分を説明するのに必要な構成のみを示す。また、前述した実施の形態1において説明した部材に対応する部材には同一符号を付している。なお、図17に示していない部分は、前述した実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
本実施の形態3に係るノズルユニットは、主に、エア供給用ブロック部と吸着ビット部との間の隙間、および吸着ビット部と吸着ビット部の内側に突出する可動軸(突出部)との間の隙間に、静圧軸受けが構成される点が、前述した実施の形態1と異なる。以下、前述した実施の形態1と異なる点について説明する。
可動軸20は、下方に開放された凹部24を有しビットホルダ部30および吸着ビット部40の内側に突出する突出部23と、突出部23の内側空間をその上部でビットホルダ部30の内側空間に連通させる連通孔25と、を有する。
吸着ビット部40は、上方に開放された凹部46を有する。また吸着ビット部40の側壁には、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間を、吸着ビット部40の内面と突出部23の外面との間の隙間に連通させる連通孔47が複数本形成されている。この連通孔47により、貫通孔51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間を経由して吸着ビット部40の内面と突出部23の外面との間の隙間に気体供給口52を連通させる。
以上説明した構成により、気体供給口52は、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間、および吸着ビット部40の内面と突出部23の外面との間の隙間に連通する。
一方、気体吸引口53は、前述した実施の形態1と同様に、吸着ビット部40の部品吸着口41に、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間を経由して連通する。
図18に吸着ビット部40周辺のエアの流れを示す。図18において、矢印がエアの流れを示している。気体供給口52に供給された気体(正圧)は、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間、および吸着ビット部40の内面と突出部23の外面との間の隙間に供給される。したがって、気体供給口52に気体(正圧)を供給することで、貫通穴51の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間、および吸着ビット部40の内面と突出部23の外面との間の隙間に静圧軸受けを構成することができ、それらの摺動部の静摩擦係数および動摩擦係数をほぼ零にすることができる。なお、吸着ビット部40の内面と突出部23の外面との間の隙間に供給された気体の一部は、突出部23の内側空間を経由して連通孔25へと流れる。
一方、気体吸引口53から気体を吸引すると、吸着ビット部40の先端(部品吸着口41)に負圧が供給される。したがって、気体吸引口53から気体を吸引することで、吸着ビット部40の先端に部品70を吸着させることができる。なお、気体吸引口53から吸引する気体の流量は、気体供給口52に供給する気体の流量よりも大きくする。
本実施の形態3によれば、前述した実施の形態1と同様に、圧縮ばね33の付勢力、摺動部の摩擦係数、および吸着ビット部40の質量を小さくすることができるので、部品70を基板上に実装する際に部品70に作用する衝撃力を小さくすることができる。したがって、その衝撃力による部品70の割れ等を回避することができる。
(実施の形態4)
図19は、本発明の実施の形態4に係るノズルユニットの一部を示す模式断面図である。但し、図19には、前述した実施の形態1で説明した構成と異なる部分を説明するのに必要な構成のみを示す。また、前述した実施の形態1において説明した部材に対応する部材には同一符号を付している。なお、図19に示していない部分は、前述した実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
本実施の形態4に係るノズルユニットは、主に、エア供給用ブロック部が、静圧軸受けを構成する部分と真空吸着を行う部分とに分かれている点が、前述した実施の形態1と異なる。以下、前述した実施の形態1と異なる点について説明する。
エア供給用ブロック部50は、第1ブロック部50aと第2ブロック部50bとを備える。第1ブロック部50aは貫通穴(第1の貫通穴)51aを有し、第2ブロック部50bは貫通穴(第2の貫通穴)51bを有する。貫通穴51a、51bは径の大きさが異なり、第1ブロック部50aの貫通穴51aの径の方が、第2ブロック部50bの貫通穴51bの径よりも大きい。貫通穴51aには、吸着ビット部40とビットホルダ部30が挿入(遊嵌)され、貫通穴51bには吸着ビット部40のみが挿入(遊嵌)される。
ビットホルダ部30の側壁には、第1ブロック部50aの貫通穴51aの内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間を、ビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に連通させる連通孔34が複数本形成されている。この連通孔34により、貫通孔51aの内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間を経由してビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に気体供給口52を連通させる。
以上説明した構成により、気体供給口52は、第1ブロック部50aの貫通穴51aの内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間、およびビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に連通する。一方、気体吸引口53は、吸着ビット部40の部品吸着口41に、第2ブロック部50bの貫通穴51bの内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間を経由して連通する。
図19において、矢印がエアの流れを示している。気体供給口52に供給された気体(正圧)は、第1ブロック部50aの貫通穴51aの内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間、およびビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に供給される。したがって、気体供給口52に気体(正圧)を供給することで、貫通穴51aの内面とビットホルダ部30の外面との間の隙間、およびビットホルダ部30の内面と吸着ビット部40の外面との間の隙間に、静圧軸受けを構成することができ、それらの摺動部の静摩擦係数および動摩擦係数をほぼ零にすることができる。
一方、気体吸引口53から気体を吸引すると、吸着ビット部40の先端(部品吸着口41)に負圧が供給される。したがって、気体吸引口53から気体を吸引することで、吸着ビット部40の先端に部品70を吸着させることができる。なお、ここでは、第1ブロック部50aと第2ブロック部50bに分ける構成としたので、気体吸引口53から吸引する気体の流量は、気体供給口52から供給する気体の流量よりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
また、ビットホルダ部30の内壁には、ビットホルダ部30の内側空間に突出する回り止め用のピン32dが、連通孔34よりも下の位置に設けられている。一方、吸着ビット部40の外周部には、上下方向に長い溝42dが形成されている。この吸着ビット部40の溝42dに、ビットホルダ部30ピン32dが、溝42dの長手方向に移動自在に嵌め込まれる。
このように構成することで、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持することができ、かつ、ビットホルダ部30(可動軸20)の回転に連動して吸着ビット部40を回転させることができる。なお、無論、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して上下動可能に支持すると共に可動軸20の回転に連動して回転させる構成は、この構成に限るものではない。
本実施の形態4によれば、前述した実施の形態1と同様に、圧縮ばね33の付勢力、摺動部の摩擦係数、および吸着ビット部40の質量を小さくすることができるので、部品70を基板上に実装する際に部品70に作用する衝撃力を小さくすることができる。したがって、その衝撃力による部品70の割れ等を回避することができる。
なお、エア供給用ブロック部を第1ブロック部と第2ブロック部に分ける場合について説明したが、無論、他の実施の形態のように分けない構成であっても、エア供給用ブロック部の貫通穴の上側にのみビットホルダ部を挿入することで、同様に実施可能である。但し、この場合、貫通穴のビットホルダ部が挿入される部分の径を、装着ビット部のみが挿入される部分の径よりも大きくする。
(実施の形態5)
図20は、本発明の実施の形態5に係るノズルユニットの一部を示す模式断面図である。但し、図20には、前述した実施の形態1で説明した構成と異なる部分を説明するのに必要な構成のみを示す。また、前述した実施の形態1において説明した部材に対応する部材には同一符号を付している。なお、図20に示していない部分は、前述した実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
本実施の形態5に係るノズルユニットは、吸着ビット部をビットホルダ部に対して下方に付勢する付勢手段が、前述した実施の形態1と異なる。以下、前述した実施の形態1と異なる点について説明する。
可動軸20は、ビットホルダ部30の内面および吸着ビット部40の上面により囲まれた空間を外部に連通させる連通孔26を有する。連通孔26は、図示しない部品実装機の正圧供給用の圧力源に、管路75および電磁弁76を介して接続する。部品実装機は、制御部77により電磁弁76の開閉を制御して、ビットホルダ部30の内面および吸着ビット部40の上面により囲まれた空間への気体(正圧)の供給および供給停止を制御する。
このように、ビットホルダ部30の内面および吸着ビット部40の上面により囲まれた空間への気体(正圧)の供給および供給停止を制御することで、その空間内の圧力を調節することができ、吸着ビット部40をビットホルダ部30に対して下方に付勢する付勢手段の機能を担うことができる。