JP4853210B2 - エアバッグ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エアバッグが内蔵されたエアバッグカバーに対し装飾部が結合されてなるエアバッグ装置に関する。
従来、車室内の運転主席に着座した乗員の保護を図るために、ステアリングホイール内にエアバッグを内蔵し、このエアバッグを車両への衝撃の検知を契機に乗員に向けて膨張展開させるエアバッグ装置が一般に知られている。このステアリングホイールにおいては、エアバッグの膨張に伴って、パッドカバー(エアバッグカバー)が破断して開口し、この開口部分からエアバッグが展開されるように構成されている。そして、パッドカバーには、この破断が確実に行われるように、薄肉状に形成されてその部分の強度を低下させたティアライン(カバー側破断予定部)が設けられている。また、パッドカバーには装飾用に皮革等の装飾部が接着されるが、この装飾部がパッドカバーと同様の態様にて破断するよう、装飾部にはパッドカバーのティアラインと対応する部位にスリットが形成される。このようにスリットが形成された後に装飾部はパッドカバーに対し接着されるが、この接着の際にティアラインとスリットとがずれると、エアバッグの膨張時においてパッドカバーと装飾部とが適切に開口されない状況が生じ得る。
そこで、例えば特許文献1に記載のエアバッグ装置においては次のような構成が採用されている。すなわち、装飾部にはパッドカバーのティアラインに対応する部位を囲んだ領域の全面に、多数の格子状のスリットが等間隔を隔てて形成されている。このように装飾部のスリットを構成することで、パッドカバーがティアラインにおいて破断すると、この破断の際に発生する力が格子状のスリットのいずれかの部位に作用し、この部位からスリットを破断させる力が伝搬していくため、装飾部を破断させることが可能となっている。
特開2004−276680号公報
ところで、装飾部にあってはできる限りパッドカバーのティアラインと対応する部位、もしくはその近傍で破断することが望ましい。これは、装飾部の破断がティアラインから逸れた箇所においても起こると、本来破断すべき部位における破断態様が予期せぬものとなるおそれがあるためである。この点、上記特許文献1に記載のエアバッグ装置においては、装飾部に格子状にスリットが形成されているため、破断が拡散しやすいこともあり、この点において改善の余地を残すものであった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアバッグカバーに対し接着された装飾部がエアバッグカバーの破断予定部に対応して確実に破断するエアバッグ装置を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、表面に装飾部が結合されたエアバッグカバーの内部にエアバッグが設けられ、同エアバッグが膨張する際の圧力によって前記エアバッグカバーに形成されたカバー側破断予定部を同エアバッグカバーの中央から周縁側に向けて破断させることにより前記エアバッグが膨出する開口を形成するエアバッグ装置において、前記装飾部の前記エアバッグカバーと接触する面には、前記エアバッグカバーのカバー側破断予定部と対応する主破断予定部が形成されるとともに、同主破断予定部からその延設方向とは異なる方向に指向する複数の補助破断予定部が形成され、前記複数の補助破断予定部は、前記カバー側破断予定部及び前記主破断予定部の破断の進行予定方向とは逆側に指向する態様で前記主破断予定部から延設されるとともに、前記主破断予定部の破断の進行予定方向の端部にまで所定間隔をおいて形成され、前記主破断予定部及び前記補助破断予定部の少なくともいずれか一方が、前記カバー側破断予定部と交差するように形成されてなることをその要旨とする。
同構成によれば、装飾部がエアバッグカバーに対しカバー側破断予定部と主破断予定部とがずれた態様で結合された場合であっても、主破断予定部から延設された補助破断予定部とカバー側破断予定部とが交差するようになる。そのため、エアバッグの膨張に伴ってカバー側破断予定部が破断すると、それに伴ってカバー側破断予定部と重なった補助破断予定部が破断し、補助破断予定部の破断が進行すると主破断予定部も破断するようになる。したがって、破断予定部が形成される部位を最小限に抑えつつ、装飾部をエアバッグカバーに形成されたカバー側破断予定部に沿って確実に破断させられるようになる。
また、補助破断予定部においてはカバー側破断予定部の破断方向と同じ方向に破断が進行するため、この部位における主破断予定部側への破断が円滑に行われるようになり、主破断予定部に破断が伝搬されやすくなる。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載のエアバッグ装置において、前記補助破断予定部は、前記主破断予定部の両側に形成されてなることをその要旨とする。
同構成によれば、主破断予定部のどちら側に装飾部がずれても補助破断予定部がカバー側破断予定部と重なりやすくなり、装飾部をパッドカバーに貼り付ける際に位置合わせの精度を格段向上しなくとも、装飾部を設ける工程において通常考えられる位置決めの精度で結合作業を行うことができる。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置において、各補助破断予定部は、互いに交差しないよう配置されてなることをその要旨とする。
補助破断予定部同士が重なった場合、破断が主破断予定部に至る経路が複数の補助破断予定部を介して可能となるため、破断態様が複雑になり予期せぬ破断が生じやすくなる。この点、上記構成によればこのような問題の発生を抑制することができるようになる。
本発明のエアバッグ装置は、エアバッグカバーに対し結合された装飾部をエアバッグカバーのカバー側破断予定部に対応して確実に破断させることができるようになる。
以下、本発明をステアリングホイール用のエアバッグ装置に具体化した一実施の形態について図1〜図4に従って説明する。図1は、本実施の形態におけるステアリングホイールWの正面図であり、図2は図1のA−A線に沿ったステアリングホイールWの断面構造を示す断面図である。なお、ステアリングホイールWが車両に取り付けられた状態において、図2の右側部分は上方に位置し、左側部分は下方に位置することとなる。
同図1に示されるように、ステアリングホイールWは、リング部2と、リング部2の中央に配置されたエアバッグカバーであるパッドカバー3と、リング部2からパッドカバー3にまで放射状に延びる3本のスポーク部4とを備えている。このパッドカバー3は、軟質合成樹脂材(例えば発泡ポリウレタン、TPE等)により形成されており、その表面には天然皮革や合成皮革等からなる装飾部5が接着によって貼付けられている。また、パッドカバー3の内側には、車両、特に車両正面への衝撃の作用に際して、ステアリングホイールWと乗員との間で膨張展開されるエアバッグを有するエアバッグモジュール10が設けられている。以下、このエアバッグモジュール10の構成について図2を併せ参照して説明する。
同図2に示されるように、パッドカバー3の下方(車体側)には、バッグホルダ20が設けられており、パッドカバー3はこのバッグホルダ20に固定されている。バッグホルダ20は、中央に取付孔21aが形成された略六角形状の底壁21と、同底壁21の周縁部から立設された側壁22とを備えている。そして、このバッグホルダ20には、上述したエアバッグモジュール10を構成するエアバッグ11およびインフレータ12が収容されている。すなわち、エアバッグ11は袋状に形成されており、その内部にガス発生源となるインフレータ12を包み込んでいる。また、エアバッグ11はその一部が折り畳まれた状態でバッグホルダ20内に収容されている。
インフレータ12は円筒形状に形成されており、底壁21の取付孔21aに嵌入された状態でエアバッグ11共々バッグホルダ20に対し固定される。ちなみに、このエアバッグモジュール10は、エアバッグ11が膨張した際に、パッドカバー3の中央から周辺に至る順番でパッドカバー3を押圧することができるようにその配置位置が設定されている。そして、エアバッグ11は、膨張に伴ってパッドカバー3を押圧してこれを中央から周辺にかけて破断させ、この破断して開口した部位から車室内に展開される。
また、図1に示されるように、パッドカバー3の裏側には、膨張したエアバッグ11から受ける押圧力によって同パッドカバー3の破断が円滑に行われるよう予め薄肉状の凹状に形成された溝状のカバー側破断予定部としてのティアライン31が設けられている。このティアライン31はパッドカバー3において略H字状に設けられており、パッドカバー3の中央から左右に延設され、次いでその両端から上下両側に延設されている。また、パッドカバー3に接着された装飾部5においても、その裏面、すなわちパッドカバー3と接触する面には主破断予定部としての主スリット32(図3参照)が設けられている。以下、このように構成されたパッドカバー3と装飾部5のより詳細な構造を図3及び図4を併せ参照して説明する。なお図3は、パッドカバー3と装飾部5との断面構造を示す断面図であり、図4は、装飾部5の裏面に形成されたスリットの形状を示す平面図である。
同図3に示されるように、装飾部5に形成された主スリット32は、パッドカバー3に形成されたティアライン31と上下方向においてほぼ対応する位置に形成されている。ちなみに、装飾部5の厚みは例えば0.8mmに、切り込まれている深さは例えば0.5mmに設定されている。
ところで、ステアリングホイールWの組み立てにあたっては、パッドカバー3に対し装飾部5を接着する際に、ティアライン31と主スリット32とが重なるようにする必要がある。これは、エアバッグ11の膨張を受けてティアライン31が破断を開始した際に、主スリット32とティアライン31との位置がずれていると、主スリット32に適切に力が伝播されず、装飾部5が主スリット32に沿って破断しなくなるおそれがあるためである。しかしながら、ティアライン31も主スリット32もともに各部材の裏面に形成されているため、互いの位置が重なっているか否かを確認しながら装飾部5の接着作業を行うことは難しく、それらの位置がずれることがある。そこで、本実施形態の装飾部5においては次のような工夫が施されている。
すなわち図4に示されるように、装飾部5の裏面にはパッドカバー3と同じようにH字状の主スリット32が形成されており、この主スリット32の両側から補助破断予定部としての補助スリット33が複数延設されている。この装飾部5においては図4中にて破線で囲む領域Rに相当する位置においてエアバッグ11が膨張されるため、この領域Rから周辺に向けて主スリット32の破断が進行する。そして、補助スリット33は、主スリット32からこの破断方向とは逆向きに指向して延設されており、互いに重ならないよう配置されている。なお、主スリット32の同一サイドから延設されている補助スリット33の間隔Lは30mm以下に設定されることが望ましい。この間隔を広げすぎると、各補助スリット33から主スリット32へと破断が進行するタイミングのずれが大きくなり、適切な破断態様が実現されないためである。
このように構成された装飾部5がパッドカバー3に貼付けられた状態で、エアバッグ11の膨張が行われると次のようにパッドカバー3の開口動作が行われる。すなわち、ティアライン31と主スリット32とが上下方向にて対向するようになっている場合は、ティアライン31が破断するとその破断したパッドカバー3の部位が主スリット32を直接押圧して主スリット32が適切に破断するようになる。
一方、ティアライン31と主スリット32とが直接重なっていなくとも、図中に2点鎖線にて示したティアライン31と交差する補助スリット33の部位において破断が発生し伝搬していく。この際、補助スリット33の破断が主スリット32側に向けて円滑に進行し次いで主スリット32においても破断が進行することとなり、装飾部5においても円滑にエアバッグ11が展開するための開口が形成されるようになる。
以上に示した本実施形態のステアリングホイールWが奏する効果を以下に示す。
(1)装飾部5のパッドカバー3と接触する面には、ティアライン31と対応する主スリット32が形成されるとともに、主スリット32からその延設方向とは異なる方向に切り込まれた補助スリット33が形成されることとした。このような構成によれば、装飾部5がパッドカバー3に対しティアライン31と主スリット32とがずれた態様で接着された場合であっても、主スリット32から延設された補助スリット33がティアライン31と交差することができる。そのため、エアバッグ11の膨張に伴ってティアライン31が破断すると、それに伴ってティアライン31と重なった補助スリット33が破断し、補助スリット33の破断が進行すると主スリット32も破断するようになる。したがって、スリットが形成される部位を最小限に抑えつつ、装飾部5をパッドカバー3に形成されたティアライン31に沿って確実に破断させられるようになる。
(2)補助スリット33は、ティアライン31の破断の進行予定方向とは逆側に指向する態様で主スリット32から延設されることとした。このような補助スリット33においてはティアライン31の破断方向と同じ方向に破断が進行するため、この部位における主スリット32側への破断が円滑に行われるようになり、主スリット32に破断が伝搬されやすくなる。
(3)補助スリット33は、主スリット32の両側に形成されることとしたため、装飾部5がどちらの側にずれたとしても補助スリット33がティアライン31と重なりやすくなり、装飾部5をパッドカバー3に貼り付ける際に位置合わせの精度を格段に向上させなくとも、貼り付け工程にて通常考えられる位置決めの精度で接着作業を行うことができる。
(4)各補助スリット33は、互いに交差しないよう配置されるようにした。補助スリット33同士が交差すると、破断が主スリット32に至る経路が複数の補助スリット33を介して可能となるため、破断態様が複雑になり予期せぬ破断が生じやすくなる。この点、上記構成によればこのような問題の発生を抑制することができるようになる。
なお、本実施形態はこれを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態においては、各補助スリット33が重ならないよう構成したが、補助スリット33は互いの重なりが上記破断が進行しても他の補助スリットにこの破断が伝搬しない程度である場合等、破断態様に対する影響が小さいような場合にあっては一部重なる構成を採用することもできる。
・上記実施形態においては、補助スリット33は主スリット32の両側から延設されるように構成したが、これは例えば次のような構成にあっては主スリット32の片側にのみ補助スリット33が延設される構成であってもよい。すなわち、補助スリットを比較的長めに形成しておけば主スリットの片側のみに形成した場合であっても、装飾部5の貼り付けの際に許容されるずれの方向は限定されるものの、容易にティアラインと補助スリットとが重なるよう装飾部5をパッドカバーに接着することができる。
・上記実施形態においては、補助スリット33は主スリット32の同一部位から両側に向けて延設されているが、これは図5に示されるように、各側の補助スリット33がずれた位置から延設される構成を採用することもできる。
・上記実施形態においては、ティアライン31及び主スリット32は共にH字状に形成されているが、これはステアリングホイールW、ひいてはエアバッグの膨張に伴って開口される部位の形状に応じて適宜変更可能であり、この部位の望ましい開口態様に応じて変更することが望ましい。
・上記実施形態においては、装飾部5を接着によってパッドカバー3に貼付けることとしたが、これは例えば縫着するなど装飾部を適切に結合できる構成であれば他の方法を採用してもよい。
・上記実施形態では、カバー側破断予定部として溝状のティアライン31を採用したが、これは破断予定部の強度が他の部位と比べて弱くなる構成であればよく、例えばこの破断予定部に沿って穴を断続して形成する構成を採用することもできる。
・上記実施形態では、ステアリングホイール用のエアバッグ装置として実現したが、本発明は、シートバックに収容されるサイドエアバッグ装置におけるシートバックの構造等他のエアバッグ装置にも適用することもできる。
本実施の形態におけるステアリングホイールの表面図。 図1のA−A線に沿ったステアリングホイールの断面構造を示す断面図。 パッドカバーおよび装飾部の断面構造を示す断面図。 装飾部の裏面におけるスリットの形成態様を示す平面図。 装飾部の裏面におけるスリットの形成態様の変形例を示す平面図。
符号の説明
W…ステアリングホイール、3…パッドカバー、5…装飾部、11…エアバッグ、31…ティアライン、32…主スリット、33…補助スリット。

Claims (3)

  1. 表面に装飾部が結合されたエアバッグカバーの内部にエアバッグが設けられ、同エアバッグが膨張する際の圧力によって前記エアバッグカバーに形成されたカバー側破断予定部を同エアバッグカバーの中央から周縁側に向けて破断させることにより前記エアバッグが膨出する開口を形成するエアバッグ装置において、
    前記装飾部の前記エアバッグカバーと接触する面には、前記エアバッグカバーのカバー側破断予定部と対応する主破断予定部が形成されるとともに、同主破断予定部からその延設方向とは異なる方向に指向する複数の補助破断予定部が形成され、
    前記複数の補助破断予定部は、前記カバー側破断予定部及び前記主破断予定部の破断の進行予定方向とは逆側に指向する態様で前記主破断予定部から延設されるとともに、前記主破断予定部の破断の進行予定方向の端部にまで所定間隔をおいて形成され、
    前記主破断予定部及び前記補助破断予定部の少なくともいずれか一方が、前記カバー側破断予定部と交差するように形成されてなる
    ことを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 請求項1に記載のエアバッグ装置において、
    前記補助破断予定部は、前記主破断予定部の両側に形成されてなる
    ことを特徴とするエアバッグ装置。
  3. 請求項1又は2に記載のエアバッグ装置において、
    各補助破断予定部は、互いに交差しないよう配置されてなる
    ことを特徴とするエアバッグ装置。
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