JP4850349B2 - バンパ補強部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のバンパフェイシアの裏面側に配置され、バンパに加えられた衝撃を吸収するためのバンパ補強部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、乗用車等の車両の衝撃吸収構造を示すもので、車両前部あるいは後部の先端には、車両のボディ100の下側にバンパフェイシア102が配置され、バンパフェイシア102の裏面側と車体の間には衝撃吸収用の補強部材104が設けられている。補強部材104はブラケット106を介してサイドメンバ108に取り付けられている。この補強部材104は、軽量化、耐腐食性等の向上を図るため、近年、金属に替わって樹脂で成形したものが広く使用されてきている。
【0003】
このような補強部材は、中央が前方にやや膨らんだアーチ構造をなし、両側部分において車体に取り付けられている。そして、バンパに衝撃荷重が負荷された時には、補強部材の弾性変形、更には塑性変形によるエネルギー吸収機能により車体への衝撃を緩和するようにしている。
特開2000−52899号公報に記載されている樹脂製のバンパ補強部材は、前後面が開口した枠体と、該枠体の内部空間を車体の幅方向に中央空間とその両側の2つの端部空間に区画する2枚の仕切板と、中央空間の前面側を覆う前面板と端部空間の後面側を覆う後面板とから構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
バンパの衝撃吸収能力の試験としては、主としてポール試験とバリア試験とが行われている。ポール試験は、図5(a)に示すように例えば直径178mmφの試験体110をバンパの車体の幅方向略中央部に水平方向に所定速度で衝突させる試験である。バリア試験は、図5(b)に示すように平板状の試験体120をバンパに対して車体の幅方向の全面に水平方向に所定速度で衝突させるものである。何れの試験においても、所定重量を有する円柱状又は平面状の試験体110,120を所定速度でバンパ補強部材前面に衝突させることで、補強部材の後面側の固定部130,130に受ける荷重及び補強部材の変形量を計測する。ポール試験は、バンパの車体の幅方向略中央部に円柱状の試験体を衝撃させるため、点荷重に近い負荷状態となり、変形量が大きくなる。一方、バリア試験は、バンパに対して車体の幅方向の全面に平面状の試験体を衝突させるため、面荷重に近い負荷状態となり、固定部に発生する荷重が大きくなる。従ってバンパ補強部材としては、このように性質の異なるポール試験とバリア試験の双方に対して良好な衝撃吸収能力が要求されるが、前記公報に記載のバンパ補強部材では、このような性質の異なる試験に対する衝撃吸収能力のバランスの点でさらなる改良が求められる。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたもので、点荷重及び面荷重の双方に対してバランス良く充分な衝撃吸収能力を有するバンパ補強部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、バンパフェイシアと車体との間に配置される樹脂製のバンパ補強部材において、略水平に配置される複数の水平板と、該複数の水平板と一体的に接続する略垂直に配置される複数の垂直板とから構成される補強部材であり、前記水平板と車幅方向に垂直な面とがなす線の、前記バンパフェイシア側の先端部と前記車体側の後端部とを結ぶ直線が水平面に対して角度を有している部分を備え、前記水平板は、車体の幅方向の略中央部において、前記直線が水平面に平行であり、車体の幅方向の両端部に向かうに従い、前記直線が水平面に対して角度を有するように形成されていることを特徴とするバンパ補強部材である。
【0007】
ポール試験においては、バンパの正面中央部に加えられる集中荷重に対してバンパ補強部材がその衝撃をできるだけ小さい変形量で吸収することが好ましく、本発明においては水平板を設けることにより本発明のバンパ補強部材に高い剛性を与え、ポール試験による変形量を抑える。一方バリア試験においては、面荷重がバンパの正面に水平方向に加えられるが、この場合には高い剛性を与える水平板を通じて車体に伝わる衝撃を和らげるよう、荷重の入力点と補強部材の後端部とを結ぶ線、すなわち水平板と車幅方向に垂直な面とがなす線のバンパフェイシア側の先端部と車体側の後端部とを結ぶ直線が水平方向に対して角度を有することによって、本発明のバンパ補強部材の水平板を広がりやすくし、加えられた面荷重を柔らかく吸収する。このようにして本発明のバンパ補強部材は、ポール試験に対する衝撃吸収能力を維持すると共に、バリア試験に対しても良好な衝撃吸収能力を付与することができる。
【0009】
また、バンパの車体の幅方向略中央部前面に加えられるポール試験の荷重に対しては、水平板が水平に配置されていることから集中衝撃荷重に対して十分な吸収能力を得ることができる。そして、車体の幅方向の両側端部にいくに従い先端部の荷重の入力位置と後端部とを結ぶ線、すなわち水平板と車幅方向に垂直な面とがなす線のバンパフェイシア側の先端部と車体側の後端部とを結ぶ直線が水平方向に対して角度が大きくなるように形成されているので、特に車体の幅方向の両側端部において荷重を柔らかく吸収することが可能である。従って、ポール試験とバリア試験の双方において、バランス良く両者の衝撃荷重を吸収することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記複数の水平板の車体の幅方向両側端部は開放されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材である。これにより、バンパの車体の幅方向の両側端部において、面荷重に対する柔らかな衝撃吸収特性を与えることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記水平板の先端部は、水平方向に対して角度を有する水平板自体の前縁で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材である。これにより、荷重の入力位置と補強部材の後端部とを結ぶ線、すなわち水平板と車幅方向に垂直な面とがなす線のバンパフェイシア側の先端部と車体側の後端部とを結ぶ直線が水平方向に対して角度を有するように製作することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記水平板の先端部は、略水平に配置された水平板の前縁に、水平方向に対して角度を有する延長部を付加して構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材である。これにより、衝撃荷重の入力位置が水平板の前縁に設けられた角度を有する延長部の先端であるので、従って荷重の入力位置と水平板の後端部とを結ぶ線、すなわち水平板及び延長部と車幅方向に垂直な面とがなす線のバンパフェイシア側の先端部と車体側の後端部とを結ぶ直線が水平方向に対して角度を有するように形成することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記水平板の先端部は、略水平に配置された水平板の前縁に、垂直方向に延びるリブを付加して構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材である。これにより、衝撃荷重の入力位置と水平板の後端部とを結ぶ線、すなわち水平板及びリブと車幅方向に垂直な面とがなす線のバンパフェイシア側の先端部と車体側の後端部とを結ぶ直線が水平方向に対して角度を有するように形成することができる。なお、通常は水平方向が荷重の入力方向となる。
請求項6に記載の発明は、バンパフェイシアと車体との間に配置される樹脂製のバンパ補強部材において、略水平に配置される複数の水平板と、該複数の水平板と一体的に接続する略垂直に配置される複数の垂直板とから構成される補強部材であり、前記複数の全ての水平板について、各水平板と車幅方向に垂直な面とがなす線の、前記バンパフェイシア側の先端部と前記車体側の後端部とを結ぶ直線が、車体の幅方向の略中央部において、水平面に平行であり、車体の幅方向の両端部に向かうに従い、前記直線が水平面に対して角度を有するように形成されていることを特徴とするバンパ補強部材である。
ポール試験においては、バンパの正面中央部に加えられる集中荷重に対してバンパ補強部材がその衝撃をできるだけ小さい変形量で吸収することが好ましく、本発明においては水平板を設けることにより本発明のバンパ補強部材に高い剛性を与え、ポール試験による変形量を抑える。一方バリア試験においては、面荷重がバンパの正面に水平方向に加えられるが、この場合には高い剛性を与える水平板を通じて車体に伝わる衝撃を和らげるよう、荷重の入力点と補強部材の後端部とを結ぶ線が水平方向に対して角度を有することによって、本発明のバンパ補強部材の水平板を広がりやすくし、加えられた面荷重を柔らかく吸収する。このようにして本発明のバンパ補強部材は、ポール試験に対する衝撃吸収能力を維持すると共に、バリア試験に対しても良好な衝撃吸収能力を付与することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態のバンパ補強部材の全体的な構成例を示す図であり、(a)は前面側から見た斜視図であり、(b)は後面側から見た斜視図であり、(c)は(a)のc矢視断面図であり、(d)は(a)のd矢視断面図であり、(e)は(a)のe矢視断面図である。バンパ補強部材10は、4枚の略水平方向に配置された水平板11A,11B,11C,11Dと、これらの水平板と一体的に接続された垂直板12,13,14,15,16,17,18,19とから構成されている。垂直板12は、バンパフェイシア側に配置され衝撃荷重が加えられる水平方向(荷重の入力方向)Fに対して前面板を構成している。垂直板13,14は、車体側に配置され、衝撃荷重が加えられる水平方向(荷重の入力方向)Fに対して後面板を構成している。
【0016】
更に、垂直板15,19は、バンパ補強部材10の車体の幅方向の中央部分と両端部分とを区画する区画板の役割を果たし、これにより中央部においては4枚の水平板が前面板12に接続されて後面側に開口し、両端部分においては4枚の水平板が後面板13,14に接続されて前面側に開口している。垂直板16,17,18は同様に荷重の入力方向Fに対して平行に配置され、バンパ補強部材10の中央部において水平板と共に衝撃荷重を吸収する役割を果たしている。バンパ補強部材10は、全体として中央部が前面側に膨らんだアーチ状を成している点は、例えば上述した特開2000−52899号公報等に開示された構造と同様である。水平板の車体の幅方向両側端部は開放されている。
【0017】
このようなバンパ補強部材10は、通常の射出成型法によって一体に成型することができる。すなわち、仕切板15,19で区画された中央部分の空間20は前面側が前面板12により閉塞され後面側が開口している。同様に両端部分21,22においては、後面側が後面板13,14により閉塞され、前面側が開口している。従って、中子を、その開口方向に抜き出すことによって、これらを一体として成形することができる。各水平板及び垂直板は、(c)(d)(e)に示すように開口端側が肉薄となるように形成されており、射出成形後の型抜きを容易にしている。
【0018】
水平板11A,11B,11C,11Dは、補強部材10の車体の幅方向の中央部20では略水平方向に配置されているが、両端部分21,22側では水平方向に対して角度θを有するように形成されている。すなわち、(c)に示すように中央部分20では各水平板11A〜11Dはそれぞれ水平方向に配置されていて、衝撃荷重が加わる方向Fと一致していて、正面から衝撃荷重を受ける。これに対して、(d)及び(e)に示すように、車体の幅方向の両端部分に行くに従い、各水平板11A〜11Dは水平方向に対する角度θが拡大するように作られている。
【0019】
このバンパ補強部材の衝撃吸収時の動作について次に説明する。上述した図5(a)に示すポール試験においては、衝撃荷重Fが補強部材10の車体の幅方向略中央部前面に集中荷重として印加される。この荷重は前面板12に加えられ、この補強部材10ではその中央部分で水平板11A〜11Dが略水平方向に配置されていて、水平板11A〜11D及び垂直板16,17,18共に荷重の入力方向Fに対して平行に配置されているので、それぞれの板体が正面から衝撃荷重を受け、それぞれ座屈しながらその衝撃を吸収する。これによりポール試験においては集中荷重に対して良好な衝撃吸収能力を発揮させることができる。
【0020】
一方で、バリア試験のような面荷重が印加される場合には、上述した荷重の入力方向に平行に配置した水平板又は垂直板では剛性が高くなり過ぎる。上述したように本発明では水平板のバンパフェイシア側の先端部の荷重入力位置と車体側の後端部とを結ぶ線Lが水平方向に対して角度θのずれを有している。従って、衝撃を吸収する水平板11A〜11Dが荷重の入力方向Fに対してその衝撃荷重を正面から受けずに少しずれた方向で受け止めることになる。これにより衝撃荷重を柔らかに受けることができ、その変形を促進させることができる。このような衝撃荷重吸収能力は補強部材10の車体の幅方向両端部において大きくなるように構成されていて、全体としてスムーズに面荷重を吸収できる。
【0021】
図2は、本発明の水平板の各種構成例を示す図である。(a)(b)(c)はそれぞれ各種構成例の態様を示し、(d)は比較のために従来例の構造を示す。(a)は荷重が入力される水平板の先端部Aとして、水平板自体を用いたものである。図示するように上下側の2枚の水平板21A,21Dが水平方向に対して角度θを有している。これに対して内側の水平板21B,21Cは(d)に示す従来例と同様に水平に配置されている。この(a)に示す態様の場合には、特に2枚の水平板21A,21Dが柔らかく座屈することで、面荷重に対する良好な衝撃吸収特性が得られる。(b)は、4枚の水平板31A〜31Dが略水平方向に配置され、その後端部が1枚の垂直板30により一体的に固定されていることは、(d)に示す従来の構造と同様である。この態様においては、上下の2枚の水平板31A,31Dには水平方向に配置された水平板の前縁に水平方向に対して角度を有する延長部32,32を付加して構成されている。従って、水平板のバンパフェイシア側の先端部すなわち荷重が入力される位置Aと車体側の後端部の位置Bとを結ぶ線Lが水平方向(荷重の入力方向)Fに対して角度θを有している。このため、同様に面荷重に対して良好な衝撃吸収特性が得られる。
【0022】
(c)は、4枚の水平板41A,41B,41C,41Dはそれぞれ従来構造と同様に略水平に配置されているが、上下両側の2枚の水平板41A,41Dは、それぞれ垂直方向に延びるリブ42,42を付加して構成されている。このため、水平板のバンパフェイシア側の先端部である荷重入力位置Aと、車体側の後端である位置Bとを結ぶ線Lが水平方向に対して角度θを有している。このため、同様に面荷重に対して良好な衝撃吸収特性が得られる。
【0023】
次に、上述した構成の本発明の実施の形態のバンパ補強部材の衝撃吸収特性について、有限要素法を用いたコンピュータシミュレーションを用いて調べた結果を説明する。シミュレーションを行った衝突試験の内容は、試験サンプルの前面中央部を円柱に衝突させて衝撃荷重の大きさ及び変形量を測定するポール試験と、試験サンプルの車体の幅方向全長の前面に平面板を衝突させて衝撃荷重の大きさ及び変形量を測定するバリア試験である。ポール試験の場合には直径178mm、重量1000kgのポールを速度8km/hrで試験サンプルの略中央部前面に衝突させ、衝撃荷重の大きさ及び変形量を測定した。バリア試験では、同様に重量1000kgの平面板を速度8km/hrで試験サンプルの前面に衝突させ、衝撃荷重の大きさ及び変形量を測定した。ここで、変形量とは、円柱または平面板が試験サンプルに衝突後のそれらの荷重入力方向への変形量である。また、衝撃荷重とは、固定部が受ける衝撃荷重である。
【0024】
試験サンプルとしては、図1に示す構造のものが用いられ、車体の幅方向の全長が1200mmであり、後面側の車体取り付け部を除いたアーチ部の長さ(スパン)が800mmである。前面板12の車体の幅方向長さは400mmであり、その高さは100mmである。垂直板17は、補強部材10の車体の幅方向の中央部に配置され、垂直板16,18は、垂直板17に対してそれぞれ50mmだけ離隔して平行に配置されている。荷重入力方向(水平方向)の長さは、車体の幅方向の中央部で100mm及び両端部で100mm、車体取り付け部の最広部で107mmとなっている。板材の厚みはすべての水平板及び垂直板で共通で約8mmである。ここで水平板11A,11Bは、中央部では平行であり、車体の幅方向の両端部に行くに従って、角度θが上向きに大きくなっている。水平板11C,11Dは、同様に中央部では平行であり、車体の幅方向の両端部に行くに従って、角度θが下向きに大きくなっている。この場合の使用した樹脂材料は、耐衝撃性ポリプロピレン樹脂(プロピレン−エチレンブロック共重合体)である。
【0025】
また、解析に用いたソフトは、Livermore Software Technology Corporation製の LS-DYNA(version 9.40)であり、材料物性データは以下のCowper-Symonds式を用いてシュミレーションを実施した。
σy=σy0[1+(ε/C)1/P]
ここで、σy:降伏応力、σy0:静的降伏応力、ε:歪み速度、C,P:パラメータである。
パラメータ及び物性値を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
図3は、上述した試験による変形量と衝撃荷重の大きさを示す。試験は、水平板の荷重入力位置と後端側の位置との間に水平方向に対して角度を有さない従来形状のものと、荷重入力位置を水平位置に対して両端部で4mm程度ずらして角度θを設けたものと、更に荷重入力位置を両端部で12mm程度ずらして角度θを更に大きくしたものとについて対比して行っている。尚、試験サンプルの荷重入力方向(水平方向)の長さは、100mmであり、バンパ補強部材の両端部におけるtanθはそれぞれ、0.04及び0.12である。
【0028】
このシュミレーション結果として、ポール試験の変形量については、従来形状の場合が75.0mmであり、荷重入力位置を4mmずらした場合の変形量が74.9mmであり、更に荷重入力位置を12mmずらした場合が、変形量が75.1mmである。この結果、ポール試験の変形量は、荷重入力位置をずらせても殆ど変化しないことが判明する。同様に衝撃荷重の大きさについても殆ど差がない。
【0029】
これに対してバリア試験においては、荷重入力位置のずれが0である場合(従来形状の場合)では、衝撃荷重の大きさが、123kNと大きくなる。ところが、荷重入力点の水平方向に対するずれを4mm設けた場合には、この衝撃荷重の大きさが117kNと低減する。更に、荷重入力位置の水平方向に対するずれを12mmと大きくした場合には、衝撃荷重の大きさが111kNと更に低減する。従って、荷重入力点のずれを持たせることで、衝撃荷重の大きさが低減することが判る。
【0030】
即ち、上述のシミュレーション結果からは、試験サンプルの水平板の荷重入力位置と後端部とを結ぶ線Lを、水平方向(荷重入力方向)に対して角度を設けることで、この角度が大きい程、バリア試験の衝撃荷重が低減し、これにより衝撃吸収特性が改良される。一方で、ポール試験の結果は水平板のずれの有無に関わらず変わらない。従って、図1に示す試験サンプルの構造によれば、ポール試験(点荷重)の衝撃吸収特性を維持しつつ、バリア試験(面荷重)の衝撃吸収特性を向上させることができる。
【0031】
次に、使用する樹脂材料について説明する。本発明のバンパ補強部材は樹脂製のバンパ補強部材であり、かかる樹脂としてはバンパ補強部材として使用されるなら特に制限はないが、オレフィン系樹脂又はオレフィン系樹脂組成物が好適に用いられる。オレフィン系樹脂は他の樹脂と比較して比重が小さいため、バンパ補強部材を軽くすることができる。また、オレフィン系樹脂組成物の場合も同様である。
【0032】
オレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィンの単独重合体や、これらと共重合が可能な他の不飽和単量体との共重合体、あるいは炭素数3以上のα−オレフィンおよびエチレンの中から選ばれる少なくとも2種類のモノマーからなる共重合体等が挙げられる。また、これらを単独または2種類以上用いてもよい。
【0033】
上記の中でも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン系樹脂、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンや、プロピレン−エチレンブロック共重合体などのプロピレン系樹脂等が好ましい。特に、この中でもプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0034】
また、オレフィン系樹脂組成物としては、上記オレフィン系樹脂に、例えば少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、及び/又は、少なくとも1種の無機フィラーを含有させたオレフィン系樹脂組成物が挙げられる。
【0035】
熱可塑性エラストマーとしては、例えばオレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマーが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1−共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1−非共役ジエン系共重合体ゴム、プロピレン−ブタジエン系共重合体ゴム、エチレン−オクテン系共重合体ゴムのようなオレフィンを主成分とする無定型ランダムな共重合弾性体が挙げられる。非共役ジエンとしては、例えばジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0036】
スチレン系エラストマーとしては、例えばスチレンブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプロピレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレングラフトエチレン−プロピレン共重合体ゴム、スチレン−アクリルリロニトリルグラフトエチレン−プロピレン共重合体ゴム、スチレングラフトエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体ゴム等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いられる樹脂に含有させることができる無機フィラーとしては、例えばタルク、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、酸化チタン、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、けいそう土等が挙げられる。
【0038】
さらに、本発明で用いられる樹脂あるいは樹脂組成物には、また、酸化防止剤、紫外線吸収材、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、中和剤、造核剤等の添加物を含ませることができる。
【0039】
尚、上述の実施形態においては4枚の水平板を設けた例について説明したが、この水平板の数は要求される衝撃荷重の大きさ等を考慮して適宜変更すべきことは勿論である。又、荷重入力方向と平行に配置する垂直板の数についても同様である。又、図1に示す実施形態では中央部分に水平板を水平に配置し、その両側に水平方向からのずれの角度を徐々に大きくするように水平板を配置したが、中央部分も水平方向からずれの角度を設けて配置するようにしてもよい。又、図1に示す実施形態では、車体の幅方向の両側端部を開放する構造を取っているが、ここに垂直板を設けるようにしてもよい。このように本発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形実施例が可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明のバンパ補強部材によれば、ポール試験(点荷重)に対して良好な衝撃吸収特性を維持しつつ、バリア試験(面荷重)に対してその衝撃荷重を低減することができる。又、樹脂材料を用いて射出成形や射出圧縮成形、圧縮成形等による一体成形も可能であるので、軽量であり、その製作コストも安価である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の補強部材を示すもので、(a)は前面側からの斜視図、(b)は後面側からの斜視図、(c)は(a)のc矢視図、(d)は(a)のd矢視図、(e)は(a)のe矢視図である。
【図2】 (a)(b)(c)は本発明の各種実施形態例を示す図であり、(d)は比較のための従来例を示す図である。
【図3】 ポール試験とバリア試験のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】 車両の衝撃吸収構造を示す図である。
【図5】 (a)はポール試験を説明する図であり、(b)バリア試験を説明する図である。
【符号の説明】
10 バンパ補強部材
11A,11B,11C,11D 水平板
12 前面板
13,14 後面板
15,16,17,18,19 垂直板
20 中央部分
21,22 両端部分
F 荷重の入力方向
L 先端部の荷重入力位置と後端部とを結ぶ線
θ ずれ角度
Claims (6)
- バンパフェイシアと車体との間に配置される樹脂製のバンパ補強部材において、略水平に配置される複数の水平板と、該複数の水平板と一体的に接続する略垂直に配置される複数の垂直板とから構成される補強部材であり、前記水平板と車幅方向に垂直な面とがなす線の、前記バンパフェイシア側の先端部と前記車体側の後端部とを結ぶ直線が水平面に対して角度を有している部分を備え、
前記水平板は、車体の幅方向の略中央部において、前記直線が水平面に平行であり、車体の幅方向の両端部に向かうに従い、前記直線が水平面に対して角度を有するように形成されていることを特徴とするバンパ補強部材。 - 前記複数の水平板の車体の幅方向両側端部は開放されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材。
- 前記水平板の先端部は、水平面に対して角度を有する水平板自体の前縁で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材。
- 前記水平板の先端部は、略水平に配置された水平板の前縁に、水平方向に対して角度を有する延長部を付加して構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材。
- 前記水平板の先端部は、略水平に配置された水平板の前縁に、垂直方向に延びるリブを付加して構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ補強部材。
- バンパフェイシアと車体との間に配置される樹脂製のバンパ補強部材において、略水平に配置される複数の水平板と、該複数の水平板と一体的に接続する略垂直に配置される複数の垂直板とから構成される補強部材であり、前記複数の全ての水平板について、各水平板と車幅方向に垂直な面とがなす線の、前記バンパフェイシア側の先端部と前記車体側の後端部とを結ぶ直線が、車体の幅方向の略中央部において、水平面に平行であり、車体の幅方向の両端部に向かうに従い、前記直線が水平面に対して角度を有するように形成されていることを特徴とするバンパ補強部材。
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