JP2015193247A - 逆抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体 - Google Patents

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【課題】 製品重量を増やすことなく、熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体のエネルギー吸収量を高め、「軽量化」と「安全性の向上(強度の向上)」という、両立することが困難な目的を満足することが可能な熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体を提供する。【解決手段】 リブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体であって、リブの形状が逆抜き勾配であることを特徴とする熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体など。【選択図】 図4

Description

本発明は、逆抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体に関し、特に熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂であり、自動車用部材として用いられる熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体に関する。
従来から、自動車の燃費向上を目的として、自動車用部材には軽量化が求められている。特に近年は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などにおいて、従来のガソリンエンジンやディーゼルエンジンを用いた自動車よりも、より軽量な自動車用部材が求められている。その対応として例えば熱可塑性樹脂を射出成形して得られるような自動車用部材にも注目が集まっており、特にポリプロピレンに代表されるプロピレン系樹脂は、その比重が小さいことや、剛性と耐熱性のバランスに優れた良好な機械物性並びに取り扱い及び入手の容易さ等から、自動車用部材への適用が種々検討されており、国内で製造される自動車に使用される樹脂の約半分(重量比)を占めるまでになっている。
一方、近年は自動車に対する安全性が従来以上に重視されている。安全性向上の為には、各自動車用部材の強度を向上させる必要がある。安全性を向上させる為には、一般に、より丈夫な金属を用いて、その厚みを厚くすればよいが、これでは個々の部材の重量が増大し、結果として「自動車の軽量化」は達成できなくなる。
このように、「軽量化」と「安全性の向上」という、いわば両立することが困難な目的の為に、多くの検討がなされている。例えば、最近の自動車で使用される樹脂製の自動車用部材では、交通事故時の人身保護のため、乗員が接触する可能性のある樹脂製内装部品や、歩行者が接触する可能性のある樹脂製外装部品などの背面に、パッド等の衝撃吸収構造体が設置される事が多い。緩衝材は、ウレタン等の発泡体が用いられる場合や、箱状の構造体が用いられる場合などがある。ウレタン等の発泡体や箱状の構造体は圧潰して衝撃エネルギーを吸収し、乗員や歩行者へ加わる衝撃力を和らげる作用をする。特に吸収するエネルギーを調整するためには、箱の内側にリブを設置する事が多く、内装部品や外装部品の形状に応じた種々の形状のリブが用いられている。熱可塑性樹脂製の内装部品や外装部品には、生産性に優れる射出成形で生産される事が多く、箱状の構造体を省略して、表皮部分に直接リブを立てる一体構造とし、背面に箱状構造体を設置する手間を省力化する場合もある。射出成形においては、金型が開いて製品を取出す時の支障にならない様に、抜き勾配と呼ばれる板厚変化を有するリブとする場合が多い。ここで、「抜き勾配のリブ」とは、表皮に近いリブの根本から、表皮から離れたリブの先端に向けて、リブの板厚が薄くなる形状のことをいう。
しかしながら、抜き勾配のリブを有する従来から知られている構造体は、射出成形における型開き性に優れるため、高い生産性には寄与しているが、安全性の向上、即ち圧潰時のエネルギー吸収量を考えれば、最適化されているとは言い難い。即ち、同じ重量の自動車部品であれば、圧潰時のエネルギー吸収量がもっと高い自動車部品を設計することが可能となる余地が残されていると言える。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、製品重量を増やすことなく、熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体のエネルギー吸収量を高め、「軽量化」と「安全性の向上(強度の向上)」という、両立することが困難な目的を満足することが可能な熱可塑性樹脂製樹脂製衝撃吸収構造体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来使用されていた「抜き勾配のリブ」に替えて、「逆抜き勾配のリブ」を採用した逆抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1の発明によれば、リブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体であって、リブの形状が逆抜き勾配であることを特徴とする熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明に於いて、熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂である熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明に於いて、熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が自動車用部材である熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が提供される。
本発明の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体はリブの形状が逆抜き勾配であるため、従来の抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体に比べて、同等の重量でありながら、より高い強度を確保することが可能となる。
図1は、剛体床上に静置された本発明の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体を、剛体球が押し潰すモデルの図である。 図2は、本発明の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体を開口部側から見た図である。 図3は、従来の抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体の断面図である。 図4は、本発明の逆抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体の断面図である。 図5は、剛体床上に静置された従来の抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体を、剛体球が押し潰した結果を示す図である。 図6は、剛体床上に静置された本発明の逆抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体を、剛体球が押し潰した結果を示す図である。 図7は、圧潰時の押し込み量と荷重の関係を示す図である。 図8は、市販されているポリプロピレンの弾性率とアイゾット衝撃強度との相関を示す図である。 図9は、材料の応力−歪曲線と、材料の破壊に要するエネルギーとの関係を示す図である。 図10は、ポリプロピレンの弾性率とアイゾット衝撃強度との相関に合致する様に、材料の弾性率と破断歪とを設定したシミュレーション入力値の事例を示す図である。 図11は、押し込み量と荷重との曲線において、熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーを表す図である。 図12は、圧壊時の押し込み量と荷重との関係を示す図である。 図13は、圧壊時の押し込み量と荷重との関係を示す図である。 図14は、熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーと材料の弾性率との関係を示す図である。
以下、本発明の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体について、説明する。
1.熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体
本発明の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体に使用される熱可塑性樹脂はその種類を特に限定されずに任意に選択することができる。又、該熱可塑性樹脂はその目的に応じて、各種添加剤例えば酸化防止剤、中和剤、着色剤、離型改良剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤などを含有したものでもよい。
各種の熱可塑性樹脂は、その成形性や物性が優れる点など、所望の物性に応じて選択される。具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体やプロピレン・エチレンランダム重合体、各種エラストマー及び/又はフィラーを複合化した複合ポリプロピレン樹脂などのポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイドなどの各種エンジニアリングプラスチック、各種熱可塑性エラストマー、液晶系ポリマー、各種セルロース誘導体などの夫々単体又はそれらの混合・混練物から選択することができる。
中でも、プロピレン・エチレンブロック共重合体や複合ポリプロピレン樹脂などのプロピレン系樹脂は、軽量性、成形性、物性バランス、経済性や環境適応性に優れる点などからより好ましく選択される。
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体部を60〜95重量%及びプロピレン・エチレン共重合体部を5〜40重量%含み、共重合体全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が1〜300g/10分であり、プロピレン・エチレン共重合体部のエチレン含量が20〜90重量%であるものが挙げられる。
なお、前記複合ポリプロピレン樹脂に複合化されるエラストマーとしては、例えばエチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)などのスチレン系エラストマーなどを挙げることができ、又、複合化されるフィラーしては、例えばシリカ、ケイ藻土などの酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、硫酸バリウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、などのケイ酸塩、硫化モリブデン、ボロン繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭素繊維、モミ殻などの殻繊維、木粉、木綿、ジュート、紙細片、セロハン片、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、各種有機繊維などの各種無機フィラー及び有機フィラーを挙げることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体は、公知の成形方法を用いて成形することができる。例えば、射出成形(ガス射出成形、二色射出成形、コアバック射出成形、サンドイッチ射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、シート成形及び中空成形などの周知の成形方法にて成形することによって得ることができる。この内、射出成形または射出圧縮成形にて得ることが好ましい。
この際の成形条件は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、一般的な条件にて成形することができる。例えば樹脂材料として、ポリプロピレン系樹脂を選択した場合、樹脂(成形)温度は、180〜280℃が好ましく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がとりわけ好ましい。同様に金型温度は、20〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましく、40〜60℃がとりわけ好ましい。
2.熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体の解析
熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体(以下、「衝撃吸収構造体」と略記することがある)の圧潰挙動・吸収エネルギーを確認するためには、試作品を作成して試験する方法もあるが、金型や試験冶具作成コストおよび試験の労力などを低減し、開発スピードを上げるには、コンピュータによるシミュレーションの活用が好ましい。すなわち、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた剛性・強度の力学計算が可能なソフトウェアを使用し、シェル、ソリッド等の有限要素で表現した衝撃吸収構造体の形状に対し、圧潰時のエネルギー吸収量向上に有効なリブの板厚分布を推算する。衝撃吸収構造体の圧潰時エネルギー吸収量を確認するためには、衝撃吸収構造体を押し潰した時に押し子が受ける荷重を計測する必要がある。そこで、衝撃吸収構造体に接触する人体や周囲の部品を模した球状の押し子(以下「剛体球」と記載することがある)を想定し、この押し子で衝撃吸収構造体を押し潰す解析を行った。ソフトウェアとしては、市販されているABAQUS、NASTRAN、MARC、PAM−CRASH、LS−DYNA等が挙げられるが、本発明の目的に適うものであれば如何なるソフトウェアも用いることが出来る。ここではLS−DYNAを用いて解析を行った。
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
衝撃吸収構造体を押し子で押し潰す解析を行うために、シェル要素で作成した形状モデルを図1に示した。衝撃吸収構造体を床の上に置き、床は変形しない剛体(以下「剛体床」と記載することがある)と設定した。圧潰させるための押し子は直径400mmの球形状で、床と同様で押し込み中に変形しない剛体とし、10mm/sの速度で押し込んだ。衝撃吸収構造体は任意の形状がとれるが、ここでは1辺が100mmの立方体状の形状を設定し、箱の内部に一定間隔で2枚のリブを縦横方向に設定した。箱の開口部の形状を図2に示した。シェル要素では3角形や4角形からなる平面形状に対して板厚を設定してシミュレーションを行うため、板厚方向から見ると線状の形状となる。そのため図2の様に、開口部から見た形状は線状の格子状形状となる。構造体の天面部の板厚は1.5mmとし、天面部に接するリブ根元から、構造体の開口部となるリブ先端に向けた板厚は徐々に厚くなる構造、即ち逆抜き勾配を有するリブとした。構造体を横方向から見た断面を図4に示した。ここでは板厚分布の様子を理解し易くするために、シェル要素による断面図ではなく、板厚を誇張して表現した模式図を用いた。リブの板厚分布が押し込み荷重に与える影響を明確に示すため、リブ根元とリブ先端の板厚は10倍異なる設定とした。衝撃吸収構造体の材質は如何なる樹脂でも良いが、ここではポリプロピレンを想定し、機械物性として弾性率1000MPa、ポアソン比0.4を用い、材料が破断しないとの設定でシミュレーションを行った。
[比較例1]
図3に示す様に、リブの板厚をリブ根本からリブ先端に向けて徐々に薄くなる構造、即ち抜き勾配を有するリブとした。衝撃吸収構造体の重量が実施例1と同一になるように、実施例1の根元リブ板厚は比較例の先端リブ板厚と等しく、実施例の先端リブ板厚は比較例の根元リブ板厚と等しくなっている。その他の解析条件は実施例1と同一とした。実施例1及び比較例1における板厚の設定値を表1に示した。
Figure 2015193247
[実施例2]
実施例1において、想定したポリプロピレンの機械物性として、破断歪が0.5と設定(このポイントで破断する)した他は、実施例1と同様にシミュレーションを行った。
[実施例3]
実施例2において、想定したポリプロピレンの機械物性として弾性率2000MPaとし、破断歪を0.27と設定した他は、実施例2と同様にシミュレーションを行った。
[実施例4]
実施例2において、想定したポリプロピレンの機械物性として弾性率3000MPaとし、破断歪を0.16と設定した他は、実施例2と同様にシミュレーションを行った。
[実施例5]
実施例2において、想定したポリプロピレンの機械物性として弾性率4000MPaとし、破断歪を0.09と設定した他は、実施例2と同様にシミュレーションを行った。
(1)評価
実施例1及び比較例1において、衝撃吸収構造体が圧潰する様子を図5(比較例1)と図6(実施例1)に示した。図5は抜き勾配を有するリブであり、即ち先端部板厚が薄いために構造的に弱く、先端から圧潰が生じている。一方で図6においては、逆抜き勾配を有するリブ、即ち天面に近い部位のリブ板厚が薄いため、天面側から圧潰が生じている。圧潰時の押し込み量と荷重の関係を図7に示した。逆抜き勾配を有するリブ形状(実施例1)の方が荷重が高く、衝撃吸収構造体として吸収出来るエネルギーが高い事が分かる。衝撃吸収構造体を高さ方向に押し込んだ時には、構造的に弱い部分であるリブの薄肉部から潰れが生じる。通常の抜き勾配を有するリブの先端の板厚が薄い形状においては、薄肉部が開口部であるため何も支えがなく容易に潰れる。しかし、逆抜き勾配を有するリブでは、天面に近い部位のリブ板厚が薄い形状のため、薄肉部が天面に繋がっており、天面が薄肉部の補強効果を発揮して潰れを抑制している。従って、逆抜き勾配を有するリブの方が、衝撃吸収構造体として吸収出来るエネルギーが高いという特徴を発揮する。このため、逆抜き勾配を有するリブの方が高い吸収エネルギーとなり、衝撃吸収構造体としての性能が高いことは明らかである。
ポリプロピレン系樹脂の弾性率と衝撃強度には、弾性率の高い樹脂ほど衝撃強度が低くなる傾向がある。図8には、市販されている64種類のポリプロピレン系樹脂の値を示した。最小二乗法により曲線回帰を行うと、
アイゾット衝撃強度=-21.81×ln(弾性率)+185.94 (式1)
との関係が得られた。弾性率と衝撃強度のバランスは、ポリプロピレンの分子構造や複合化に用いられるエラストマーやフィラーの影響を受けて変化するが、プロットするデータ領域やデータ数を多くしたため、ポリプロピレン系樹脂の代表的な傾向は本曲線で表されていると判断できる。ここで得られたポリプロピレン系樹脂の弾性率と衝撃強度との相関を表す図8の曲線を用い、以下の評価を行った。
実施例1および実施例2の材質の応力−歪曲線を図9に示した。実施例1では、材料が破断しない設定でシミュレーションを行ったため、応力は歪の増加に伴って上昇し続けている。実際のポリプロピレン系樹脂では歪が一定程度に至ると破断に至るため、実施例2では、破断歪を0.5に設定、即ち、このポイントで破断するものと設定した。これは、弾性率1000MPaのポリプロピレン系樹脂において、一般的な破断歪の値である。実施例2では、破断歪が0.5に達した時点で破断し、応力が0となっている。この時、材料の破壊に要するエネルギーは、図9の実施例2の応力−歪曲線と横軸で囲まれた斜線部分の面積であり、実施例2の場合では単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーは125MJ/mとなる。
実施例3では、実施例2を基準として、単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーが(式1)に示されるアイゾット衝撃値の減少に比例して変化する様に、材料が破断する歪を設定した。(式1)によれば、弾性率1000MPaと2000MPaにおけるアイゾット衝撃強度は、それぞれ35kJ/mと20kJ/mであり、約43%低下する。従って、単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーが125MJ/mから43%低下した71MJ/mが、弾性率2000MPaにおける単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーとなる。実施例2と実施例3の材料における応力−歪曲線を図10に示した。図10の破線で示される実施例2において、原点近傍における線の傾きが弾性率であり1000MPaとなっている。また破線部と横軸で囲まれた三角形の面積が125MPaであり、単位体積あたりに換算すると、単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーは125MJ/mとなる。一方、図10の実線で示される実施例3の場合、原点近傍における線の傾きとなる弾性率は2000MPaであり、実線部と横軸で囲まれた三角形の面積が先に計算された単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギー71MJ/m相当になるように破断歪を設定すると、破断歪は0.27となる。
実施例4〜5についても同様の方法で、弾性率を増加させた時に、単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーが(式1)に示される式に比例して減少する様に、材料が破断する歪を設定した。その結果、実施例4では弾性率3000MPaに対して単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーが40MJ/m3、破断歪は0.16となり、実施例5では弾性率4000MPaに対して単位体積あたりの材料の破壊に要するエネルギーが18MJ/m3、破断歪は0.09となった。
ここで、剛体を50mm押し込んだ時に衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーにより、衝撃吸収構造体の性能を比較した。この衝撃吸収構造体の吸収エネルギーは、荷重の曲線と横軸の間で囲まれた部分の面積で表される。図11には、実施例1において衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーを示した。図11の塗り潰された面積が衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーとなるので、実施例1では衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーは189Jと計算された。
同様の方法で、実施例2〜5における衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーを計算した。図12と図13には、実施例2から5における押し込み量と荷重を示した。この結果を用いて、実施例1と同様の方法で衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーを算出し、その結果を表2に示した。更に、弾性率と衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーとの関係を、図14に示した。図14から、衝撃吸収構造体が吸収したエネルギーは、弾性率2000MPaと4000MPaとの間で局大値を取ることが判明した。
Figure 2015193247
以上の実施例1及び比較例1から、逆抜き勾配により先端板厚が根本より厚いリブ形状は、同一重量の先端板厚が薄いリブ形状と比較して圧潰初期における荷重を増加させる効果があるため、衝撃吸収構造体として有効に作用することが明らかとなった。即ち、抜き勾配により先細りとなるリブ形状よりも圧潰の吸収エネルギーが大きくなり、高い緩衝性能が達成される。また逆抜き勾配を有するリブを、箱状衝撃吸収構造体だけでなく、自動車における樹脂製内装部品や外装部品と一体で成形されるリブにも広く適用すれば、部品の生産や車体への組み付けコストの低減効果も期待される。以上、逆抜き勾配のリブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体において、FEMを用いたコンピュータシミュレーションを用いて樹脂製の衝撃吸収構造体におけるリブの板厚分布を検討した結果、衝撃吸収構造体の重量を維持しつつ、吸収エネルギーを増加させることが明らかとなった。
また、実施例1〜5から、材料の弾性率には衝撃吸収に最適な領域があることが示された。ポリプロピレン系樹脂の場合、弾性率が上昇すると材料が破壊する前の荷重は上昇すると考えられるが、一方で(式1)に代表されるアイゾット衝撃強度は低下する。この時、材料の応力−歪曲線から算出される材料の破壊エネルギーも低下する。そのため、衝撃吸収構造体の吸収エネルギーが最大となる弾性率が存在することが示された。ポリプロピレン系樹脂の場合、弾性率が2000MPaと4000MPaの範囲が好ましい。

Claims (4)

  1. リブを有する熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体であって、リブの形状が逆抜き勾配であることを特徴とする熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体。
  2. 熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂である請求項1に記載の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体。
  3. プロピレン系樹脂の弾性率が、2000〜4000MPaである請求項2に記載の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体。
  4. 熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体が自動車用部材である請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂製衝撃吸収構造体。
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