JP4849590B2 - 研磨工具及びその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、ガラス、セラミックス、シリコン等の硬脆材料を仕上げ加工するための研磨工具およびその製造方法に関するものであり、特に、優れた加工面品位(鏡面)を損なうことなく、高加工能率を実現し、耐用寿命が長い研磨工具及びその製造方法を提供するものであり、ガラス製品(ガラス基板)の研磨工具、半導体プロセス用の研磨工具に利用できるものである。
シリコンウェーハやガラスディスクをはじめ、各種硬脆材料からなる部品の平坦化のために、遊離砥粒を用いた研磨加工が行われる。この平坦化プロセスは良好な研磨面を得ることができる反面、反りやだれや表面段差などが生じ易く、加工面形状精度が悪くなるという問題が指摘されている。
これに対し、固定砥粒による研磨加工は従来の研磨仕上げと同等な優れた仕上げ面粗さを得ることができ、高形状精度を得やすいことから、固定砥粒研磨工具、たとえば砥石などの開発が各方面で活発に行われている。しかし、砥石といった固定砥粒による研磨加工方式にはさまざまな問題がある。この問題の一番代表的な例は、研磨加工の進行に伴い、目詰まり(研磨くずが砥石の加工面に留まり切れ味が低下)や目つぶれ(切れ刃の鈍化)が生じるため、研磨特性を維持できなくなることである。従って、機械的、あるいは電気的な手法でドレッシングを行うことが必要不可欠である。
この問題を解決するものとして、固定砥粒研磨工具である研磨ホイルに遊離砥粒を供給して、加工物を研磨する方法が、例えば、特開平10−296610号公報に記載されている。この方法は、従来のドレッサーによるドレッシングではなく、遊離砥粒の併用により、研磨ホイルの摩滅した固定砥粒を結合材から脱落させ、気孔部の目詰まりを除去し、そして、その脱落部やほかの気孔部分に、順次供給される遊離砥粒を保持させて高い研磨能力を維持させるというものである。
しかし、この方法では、研磨ホイル表層にある固定砥粒の脱落を促進させることは可能であると考えられるが、砥粒を固定する結合材である樹脂部分をドレッシングするのは難しい。そして、固定砥粒が脱落した部分と他の気孔部は遊離砥粒を保持する役割を奏するものであり、従来の研磨布(パッド)の作用となんら変わりがなく、固定砥粒研磨工具のメリットを十分に発揮することはできないと思われる。
これらの課題に対し、様々に研究を重ねた結果、加工対象物にもよるが、高加工面品位(スクラッチフリー、高形状精度)を維持しながら、高加工能率を実現し、そしてその高加工能率を長時間維持させるには、砥粒およびそれを固定する結合材が研磨加工中に同時に磨耗し、固定砥粒の表面から絶えず新しい切れ刃が生じるようにすることと、磨耗した結合材が遊離砥粒となり、固定砥粒による研磨作用と遊離砥粒による研磨作用の共同による研磨効果が常に維持されることが極めて有効であることが判明した。
特開平10−296610号公報
この発明の課題は、砥粒及びこれを固定する結合材は研磨加工中に同時に磨耗し、絶えず新しい切れ刃が生じるようにすることと、磨耗した結合材が遊離砥粒となり、固定砥粒による研磨作用と遊離砥粒による研磨作用とのミックス効果による研磨特性に着目して、ナノメータオーダの優れた加工面品位を損なうことなく、従来の研磨工具よりもさらに高研磨能率かつ長寿命化を実現でき、ドレッシング不要の研磨工具を提供することであり、また安価でかつ簡単に製造できる研磨工具およびその製造方法を提供することである。
〔解決手段〕(請求項1に対応)
この発明の解決手段は、固定砥粒と、当該固定砥粒を固定する結合材から構成された研磨工具において、前記固定砥粒は一次粒子を凝集させた二次粒子から成り、前記固定砥粒、及び当該固定砥粒の粒径未満の粒径を有する結合材は金属酸化物であり、前記固定砥粒と結合材は金属酸化物同士の燒結により成形され、前記固定砥粒と、摩耗した結合材粒子である遊離砥粒の2種類の砥粒が、研磨砥粒として作用するようにしたことである。
〔作 用〕
研磨加工中に前記結合材は磨耗し、磨耗した結合材粒子は遊離砥粒となり、この遊離砥粒が固定砥粒とともに作用するので、2種類の砥粒が研磨砥粒として被加工面に作用することになる。
〔実施態様1〕(請求項2,3,4に対応)
実施態様1は、解決手段について、前記固定砥粒は内部にバインダを含まず、多数の一次粒子が部分的に、かつその間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体であり、研磨加工中の磨耗により平坦部が形成可能な圧縮破壊強度を有しており、固定砥粒の圧縮破壊強度は20MPaから160MPaであり、またその平均粒径は20μm〜200μmであることである。
〔作 用〕
実施態様1によれば、加工物の被加工面に対して微細な切刃が確実に供給され、また、固定砥粒にはバインダが含まれないため、バインダ摩耗粉による目詰まりはないから、研磨工具の目づまりは抑制される。
圧縮破壊強度が20MPaよりも小さい場合は、固定砥粒自身が加工中につぶされ易く、加工物の被加工面を切削して除去する能力が乏しい。一方、圧縮破壊強度が160MPaよりも大きいと、固定砥粒の加工面の磨耗が進まず、加工による新たなスクラッチなどのダメージをもたらす可能性が高くなる。
そして、もっとも重要なのは、圧縮破壊強度が20MPa乃至160MPaであるとき、研磨加工の進行に伴って固定砥粒は徐々に平坦化磨耗していくので、加工物の被加工面に対し、1次粒子の微細な切刃を常に供給することができ、当該固定砥粒は自ら平坦化磨耗することにより、常に加工物の被加工面に新しい切刃を供給し、通常の砥石における目詰まりや目つぶれや目こぼれなどによる加工面品位の劣化を抑制できることである。
この固定砥粒の平均粒径は20μm乃至200μmであるから、結合材の中で骨材のような役割を果たすと同時に、固定砥粒の所要の突き出し量が確保されて被研磨面の切り刃としての役割を果たす。上記平均粒径が20μmより小さい場合は、上記の固定砥粒の作用が少なくなる。逆に200μmより大きい場合、加工による新たなスクラッチなどのダメージをもたらす可能性が高くなる。
従って、実施態様1によれば、研磨加工中に固定砥粒による加工能力が維持され、また砥粒の平坦化磨耗をより確実に進行させることができる。
〔実施態様2〕(請求項5に対応)
実施態様2は、解決手段について、前記固定砥粒およびこれを結合する結合材が金属酸化物からなるものであることである。
〔作用〕
固定砥粒および上記結合材が金属酸化物からなることにより、固定砥粒と結合材が研磨加工中に確実に磨耗するので、加工物の加工面に対し、固定砥粒と遊離砥粒の研磨作用を確実に同時に作用させることができる。
〔実施態様3〕(請求項6,7に対応)
実施態様3は、解決手段について、前記固定砥粒の加工物に対する機械的除去作用が酸化ジルコニウムによってなされ、前記結合材が磨耗して生成された遊離砥粒の加工物に対する化学作用(ケミカル作用)が酸化セリウムによってなされることである。
〔作用〕
ガラス、シリコンなどの硬脆材料を研磨加工するとき、結合材である酸化セリウムは研磨加工中に磨耗して遊離砥粒となり、遊離砥粒として加工物の被加工面に作用する。加工物の被加工面に対する機械的除去作用の強い固定砥粒である粒状多孔質体酸化ジルコニウムと、化学作用(ケミカル作用)の強い遊離砥粒酸化セリウムとが同時に供給される。これによって、上記遊離砥粒が加工物表面と化学作用を起こして被加工面に柔らかい化学反応層(水を研磨液として使う場合は、やわらかい水和層)を生じさせ、固定砥粒の機械的除去作用により、上記軟化層を機械的に除去するという研磨作用が繰り返されることになる。
上記のように、化学作用の強い遊離砥粒と機械的除去作用の強い固定砥粒を常に同時に被加工面に供給することで、加工物の被加工面に対する化学反応層(あるいは水和層)の生成とその切削除去が繰り返されるから、従来技術では困難とされていた高加工面品位を損なうことなしに、加工能率を更に向上させることができ、また、研磨工具の耐用寿命を向上させることができる。
〔実施態様4〕(請求項8に対応)
実施態様4は、機械的除去作用の強い固定砥粒の含有率が10乃至70体積%であることである。
〔作用〕
遊離砥粒による化学作用と固定砥粒による機械的除去作用とが加工物の被加工面に対してバランス良く作用して、これらによる同時加工が確実に繰り返し実行される。
固定砥粒の割合が10体積%未満では固定砥粒による作用が少なく、70体積%をこえると固定砥粒を固定する結合材が不足して固定砥粒に対する保持強度が著しく低くなってしまうばかりでなく、結合材の摩耗によって生じる遊離砥粒が少なく、したがって、これによる化学作用が不足することになる。
以上の説明における「化学作用(ケミカル作用)」、「機械的除去作用」の意味を釈明すれば、次のとおりである。
化学作用(ケミカル作用)
例えば加工物がガラスである場合、研磨工程において、砥粒、研磨工具(例えば、ポリシャー)、研磨液とガラスとに化学反応が起こって、ワーク表面に水和層が生じると一般的に言われている。化学作用(ケミカル作用)はこのことをいうものである。
機械的除去作用
砥石の働きを例として説明すると、砥粒は無数の切れ刃として、加工物の表面に切り込んで、加工物の被加工面を機械的に切削除去するという作用を奏する。機械的除去作用はこのことをいうものである。
この発明の効果は次のとおりである。
請求項1記載の発明によれば、加工物の加工面に対し、前記固定砥粒は少なくとも平坦部分をもち、研磨加工中に前記結合材は磨耗し、磨耗した結合材粒子は遊離状態にすることにより、固定砥粒と遊離砥粒の2種類の砥粒を被加工面に対して同時に作用させ、これにより、高加工面品位を損なうことなしに、加工能率を極めて効果的に向上させることができる。また、加工性能を長時間安定させることができ、研磨工具の寿命を大きく向上させることができる。
請求項2,3,4記載の発明によれば、該固定砥粒は研磨加工中において自らが平坦化磨耗することによって、通常の砥石における目詰まりや目つぶれや目こぼれなどによる加工面品位の劣化を抑制することができる。また、この砥粒の平均粒径は20μm〜200μmであるため、結合材の中で骨材のような役割を果たすことができると同時に、固定砥粒の所要の突き出し量を確保することができる。
請求項5記載の発明によれば、このように、固定砥粒およびこれを結合する結合材が金属酸化物からなることにより、焼成などの手法でより簡単に研磨工具を製造することができる。そして、研磨加工中に固定砥粒とそれを結合させる結合材がより確実に磨耗し、加工物の加工面に対して、固定砥粒による機械的除去作用と遊離砥粒による化学作用を同時に作用させ、高加工面品位を損なうことなしに、高加工性能を長時間安定させることができ、また、研磨工具の寿命を大幅に向上させることができる。
請求項6、請求項7記載の発明によれば、硬脆材料であるガラス、シリコンなどの加工物に対して、化学作用の強い遊離砥粒と機械的除去作用の強い固定砥粒を同時に作用させることによって、上記化学作用で被加工面に柔らかい化学反応層(あるいは水を研磨液として使った場合、やわらかい水和層)を生じさせ、これを上記機械的除去作用で切削除去することができる。そして、上記両作用により、化学反応層(あるいは水和層)の生成とその切削除去が常に繰り返されるから、高加工面品位を損なうことなしに、加工能率を大幅に向上させることができる。また、高加工性能を長時間安定させることができ、研磨工具の寿命を大幅に向上させることもできる。
請求項8記載の発明によれば、被加工面に対し、遊離砥粒と固定砥粒による加工作用をより確実に同時に実現することができる。固定砥粒の割合が10体積%未満であると固定砥粒による加工効果が十分に得られず、70体積%をこえると研磨工具の結合材の量が少なすぎて、砥粒保持強度が著しく低下してしまう。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
研磨砥粒の材質は加工物にもよるが、金属酸化物の研磨砥粒は従来から用いられているものであり、その一例として、Al、CeO、ZrO、SiO、Fe、TiO、MnO等がある。ガラスや石英やSiの酸化膜などのガラス質のワークに対して、酸化セリウムはもっとも化学作用が高いものとして知られている。同様に、Siに対して、メカニカルケミカル作用の強いSiOを用いることができる。また、機械的除去作用(メカニカル作用)の強い研磨砥粒としては、加工対象物にもよるが、平均粒径が5μm以下の一次粒子(微細粉末)を凝集させて、平均粒径10〜300μm程度、一層好ましくは平均粒径20〜200μm程度の二次粒子(固定砥粒)としたものが好適である。材料としては、上記と同様に一般には硬質無機材料であって、シリカ、ダイヤモンド、CBN、アルミナ、炭化珪素、酸化ジルコニウム等である。凝集体はゾルゲル法、スプレードライヤーによる方法で作ることができる。
以下、本発明を実施例を説明する。
まずは、50〜60nmの超微細ZrO粉末(超微細粒子)を水で泥しょう化し、スプレードライヤーで噴霧させて、平均粒径D50で60μmの2次粒子(顆粒)を得る(これにより、一般的には1μm〜300μmのサイズの2次粒子が得られる。粒度分布がシャープでないときは、分級プロセスを加える)。平均粒径は、堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて、乾式で測定したものである。平均粒径の値は頻度積算50%のところの粒径(通常、メジアン径とも言う)を用いた。
上記のようにして製作された平均粒径D50で60μmのZrO2次粒子(顆粒)とガラス質加工物に対する化学作用(ケミカル作用)が強い金属酸化物CeO(昭和電工製SHOROX、平均粒径D50は0.5〜1.0μm程度)を45:55の体積比で混合した。この実施例においては、焼成助剤として、上記混合物にさらに重合度(500)のPVA樹脂溶液を加え(金属酸化物混合物とPVA樹脂の割合は7:3)、撹拌混合を行った。なお、攪拌混合は、前記ZrO2次粒子(顆粒)を破壊させないように、60rpmの回転速度で撹拌羽を回転させて30min間行った。その後、この混合物を円形(Φ450mm)の型に入れ、高温電気炉で焼成して成形した。
上記焼成の工程においては、加熱温度および保持時間を制御することで、一次粒子同士の結合点にネックを形成させ、その多数の一次粒子が部分的に、かつ、その間に空隙が形成された状態で結合している粒状の多孔質体に形成した。因みに、これを具体的に説明すれば次のとおりである。
上記の焼成工程において、加熱処理により一次粒子が成長するが、当該一次粒子がその構成物質の物質移動により成長するのみならず、粒子同士の結合箇所は、粒子の構成物質の物質移動により太くなり、不連続点のないなだらかな曲面となり、1葉双曲面状(鼓状)にくびれた、いわゆる「ネック」状となる。この加熱処理時の物質移動による一次粒子の成長及び「ネック」形成については、株式会社産業技術センター発行「セラミック材料技術集成」(昭和54年4月10日初版第1刷発行)の「2.3物質移動の機構と焼結のモデル」に詳細に記載されている。この焼成工程における加熱温度および保持時間を制御することで、一次粒子同士の結合による上記多孔質体の形成が調整される。
この実施例では、上記焼成温度と焼成時間の選択を、次のような方法で行った。すなわち、上記スプレードライヤー工程で得た酸化ジルコニウムZrOのみを電気炉に入れ、焼成を行い、焼成で得られた二次粒子の中の一次粒子同士の結合力を評価するために、個々の二次粒子をピックアップし、圧縮破壊試験を行い、圧縮破壊強度が67MPaに達したときの条件を焼成条件として採用した。
なお、上記の圧縮破壊強度試験は、平松、岡、木山による報告(日本鉱業会誌、81、1024(1965))に基づく島津製作所(株)製微小圧縮試験機MCTM500PCを用いて行ったものであり、その試験条件は、試験荷重を10〜1000mN、負荷速度は0.446mN/secとし、平面圧子を用いて、上記酸化ジルコニウム砥粒に対して圧縮を行い、砥粒が圧縮破壊されたときの強度を測定するものである。
また、上記焼成条件において、上記結合材である酸化セリウム粒子同士、そして酸化セリウム粒子と酸化ジルコニウム粒子の結合点にネックが形成されていることもSEMにより確認した。
上記の場合の金属酸化物同士の焼成は、図2に示すCeO−ZrOの状態図に従うものであり、この実施例での焼成温度は1000℃以上設定されているため、結合材である酸化セリウムは上記酸化ジルコニウム二次粒子の外側とネック状に成長するが、酸化ジルコニウム粒子の内部までには至らず、酸化ジルコニウム一次粒子同士のみがネック構造である。さらに、この場合、結合材である酸化セリウムの結合力は上記酸化ジルコニウム二次粒子の67MPaより低いことも圧縮試験でわかった。また、このような高温での焼成は、焼成助剤として用いたPVA樹脂は完全に分解されてなくなり、研磨工具には残らない。作製した研磨工具の表面の写真と断面写真を図1−2の(a)と(b)に示している。
以上のようにして作製した研磨工具を図3で示した研磨加工装置の定盤3に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学ガラスディスク(ワーク2)を研磨加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm、加工圧力25kPa)、30分間で加工マーク(スクラッチ、加工傷など)フリー、かつ30nmRy以下の鏡面を維持できたと同時に、1.0μm/minという高い加工能率も維持できた。なお、面粗さの評価はテーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った。
また、引き続き上記ワーク(BK7光学ガラスディスク)を10枚加工しても、スクラッチの発生は見られず、加工能率の低下も認められなかった。
このように、図1−1の(a)と(b)に模式的に示すように、従来のビトリファイド研削砥石とは大きく違って、研磨加工中に砥粒(固定砥粒)11とそれを固定する結合材(金属酸化物の結合材)12が研磨加工中に同時に研磨作用をするだけではなく、磨耗した結合材12の部分が第2の砥粒(遊離砥粒)となり、これが遊離した状態で固定砥粒に対して常にドレッシング効果をもたらし、微細な一次粒子による切刃を表面に出させ、目詰まりなどによる加工ダメージを抑制し、低減させると同時に、ワークの被加工面に対し、固定砥粒と遊離砥粒の2種類の砥粒を同時に供給することで、高加工面品位と高加工能率を獲得でき、しかもこの優れた加工特性を長時間に亘って安定させることができた。
〔比較例1〕
比較例1は、上記実施例1と同様に、上記スプレードライヤーによって得られた酸化ジルコニウム二次粒子を電気炉に入れ、67MPaの圧縮破壊強度に達する程度に焼成工程を施して焼成し、それをフェノール樹脂と混合させてから、円形(Φ450mm)の型で型成形したものである。このようにして作製した研磨工具を図3に示す研磨装置の定盤3に取りつけ、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのワーク(BK7光学ガラスディスク)を研磨加工した(加工条件:定盤回転数60rpm、加工圧力25kPa)。この研磨加工を2分間継続した結果、加工能率はやや低下して0.4μm/minであり、加工マーク(スクラッチ、加工傷など)フリーで、かつ、30nmRy以下の鏡面を維持できた(面粗さの評価はテーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った)。しかし、さらに10分間研磨加工をしたところ、加工能率はほぼゼロに近づき加工不能となり、そして、BK7光学ガラスディスクの被加工面には大きなスクラッチが発生した。これは、上記実施例1と違って、結合材は磨耗しないため、加工初期において、酸化ジルコニウム砥粒の突出し量があって、該砥粒の磨耗とともに、研磨くずがスムーズに排出されたが、さらに砥粒の磨耗に伴い、すなわち突出し量がなくなったときに、ワークと結合材との接触(フェノール)が発生し、そして研磨くずなどの介在で、研磨抵抗が高くなり、また、被加工面に新たなスクラッチが発生したことによるものである。
〔比較例2〕
比較例2は、実施例1と同じ製法で作製した研磨工具であるが、しかし、ZrO砥粒は上記実施例1で用いた砥粒ではなく、通常の単粒子大粒径のZrO(日本電工(株)製)を使用)で、圧縮破壊強度が325MPa)を用いたものであり、その結合材は上記実施例1と同じく酸化セリウムである。
この比較例2の研磨砥石を図3の研磨装置の定盤に取りつけ、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのワーク(BK7光学ガラスディスク)を2分間研磨加工した(加工条件:定盤回転数60rpm、加工圧力25kPa)。その結果、加工能率は非常に高く、2.4μm/minで、加工面に新たなスクラッチ(加工マーク)が無数に発生し、加工面粗さは3.8μmRy以上に劣化した。これは、砥粒が通常の単粒子を用いたため、上記実施例1で述べたような多数の一次微細研磨材粒子が部分的に、かつその間に空隙が形成された多孔質体のように、加工進行に伴い徐々に磨耗することができず、通常の固定砥粒研磨工具のように加工能率こそ高いが、高い加工面品位を実現することは不可能であった。また、砥粒自身が硬いため、上記のとおり、結合材の磨耗に比べて磨耗速度が遅く、また、結局のところ、脱粒も多数発生したためにスクラッチの発生が一層促進されたことによるものである。
実施例2は、実施例1の場合と同様に、砥粒である酸化ジルコニウム2次粒子や結合材である酸化セリウムを用いたものであり、結合材と上記酸化ジルコニウム2次粒子との結合は粒子同士間でネック構造を持つものであって、空隙を有する多孔質体である。この構造を得るには、焼成温度はもっとも重要なファクターである。焼成温度を高めると、研磨工具として全体的に固くなるが、焼成による粒子の成長が著しくなるため、スクラッチなどの発生頻度が高くなる傾向がある。
実施例1で述べたように、焼成助剤としてPVAなどを添加することは有効である。この実施例2においては、結合材である酸化セリウム粒子同士の結合力をさらに高めるために、平均粒径0.1μmの酸化ジルコニウムを添加した。その他の製法は上記実施例1と同様であった。このようにして作製した研磨工具の断面構造を図4に模式的に示している。
このように作製した研磨工具を図3の研磨装置の定盤3に取りつけ、上記実施例1と同じ加工条件で同じワーク(BK7光学ガラスディスク)に対して、研磨加工を行った。加工マーク(スクラッチ、加工傷など)フリーで、かつ30nmRy以下の鏡面を維持でき、さらに、0.6μm/minという高い加工能率も維持された。加工能率がやや低くなったのは、結合材の結合力が高められて、研磨加工中に結合材の磨耗が抑制され、ワーク(加工物)の被加工面に供給される遊離砥粒の量が少なくなったためであると考えられる。
なお、本発明は砥粒を形成する一次粒子の素材の種類、造粒凝集方法、添加物の種類、研磨工具結合材の種類、加工工具の形状、加工対象物において、上記の実施例に限定されるものではない。
(a)は実施例1の研磨工具の表面図、(b)は同研磨工具の断面図。 (a)は実施例1の研磨工具の表面写真、(b)は同実施例1の断面写真。 はCeO−ZrOの状態図。 は研磨工具を使用した研磨加工機を模式的に示す側面図。 は実施例2の研磨工具の表面図
符号の説明
1:研磨工具
2:ワーク(加工物)
3:定盤
11:固定砥粒(二次粒子)
12:結合材(金属酸化物)
13:微細粒子(一次粒子)

Claims (9)

  1. 固定砥粒と、当該固定砥粒を固定する結合材とから構成される研磨工具において、
    前記固定砥粒は一次粒子を凝集させた二次粒子から成り
    前記固定砥粒、及び当該固定砥粒の粒径未満の粒径を有する結合材は金属酸化物であり、
    前記固定砥粒と結合材は金属酸化物同士の燒結により成形され、
    前記固定砥粒と、磨耗した結合材粒子からなる遊離砥粒の2種類の砥粒が、研磨砥粒として同時に加工物の被加工面に作用することを特徴とする研磨工具。
  2. 前記請求項1記載の研磨工具において、前記固定砥粒は内部にバインダを含まず、多数の一次粒子が部分的にかつその間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体であり、研磨加工中の磨耗により平坦部が形成可能な圧縮破壊強度を有していることを特徴とする研磨工具。
  3. 記請求項2記載の研磨工具において、前記多孔質体は、その圧縮破壊強度が20MPa乃至160MPaであることを特徴とする研磨工具。
  4. 前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の研磨工具において、前記固定砥粒の平均粒径は20μm乃至200μmであることを特徴とする研磨工具。
  5. 前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の研磨工具において、前記固定砥粒と前記結合材は酸化セリウム(CeO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化鉄(FeO・Fe)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)又は二酸化ケイ素(SiO)の金属酸化物であることを特徴とする研磨工具。
  6. 前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の研磨工具において、前記固定砥粒は加工物に対して機械的除去作用が強い金属酸化物であり、前記結合材の磨耗微粒子からなる遊離砥粒は加工物に対する化学作用が強い金属酸化物からなるものであることを特徴とする研磨工具。
  7. 前記請求項5又は請求項6記載の研磨工具において、ガラス質基板やシリコンウェーハの酸化膜などを対象として、前記固定砥粒は酸化ジルコニウム(ZrO)、前記結合材は酸化セリウム(CeO)で構成されたものであることを特徴とする研磨工具。
  8. 前記請求項6又は請求項7記載の研磨工具において、加工物に対し機械的除去作用の強い前記固定砥粒の含有率が、10乃至70体積%であることを特徴とする研磨工具。
  9. 前記酸化ジルコニウムの一次粒子を二次粒子に造粒する工程と、造粒した酸化ジルコニウム二次粒子に酸化セリウムを加え混合分散する工程と、前記混合分散したものを型に入れ焼成する工程により、請求項1記載の研磨工具を成形することを特徴とする研磨工具の製造方法。
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