JP2018141057A - 研磨用砥粒 - Google Patents

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Abstract

【課題】研磨レートの一層の向上を図った研磨用砥粒の提供。【解決手段】サファイアを湿式研磨するための砥粒であって、モース硬度が7〜9の粒子状の第1の研磨剤と、上記被研磨材に対してメカノケミカルな作用を有する粒子状の第2の研磨剤と、スラリーのために使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩からなる粒子状の摩擦熱反応剤と、平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、上記摩擦熱反応剤は、上記一体化された粒子の5〜95重量%を占め、上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01〜10重量%を占める、研磨用砥粒。【選択図】図1

Description

本発明は、サファイア、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等の被研磨材の表面を研磨するために使用される研磨用砥粒に関する。
近年、多機能化と高性能化を目指し、新しい半導体デバイスが次々と提案されている。これらの提案に応えるように、シリコン(Si)基板以外の新たな材料が使用されるようになった。特に、サファイアやパワーデバイス用SiCや、発光ダイオード(LED)用GaN等の基板が脚光を浴びている。今後、更なる高性能化を図り、量産ができるような低コスト化を目的として、基板の新しい加工方法の開発が切望されている。
半導体デバイスの製造工程では、基板(Semiconductor substrate)の表面を平坦にするために、研磨処理(polishing process)が行われる。従来採用されている一つの方法は、被研磨材の基板を、ダイヤモンド砥粒を含んだ油性スラリーを使用して研磨する方法である。被研磨材の基板の表面が、ダイヤモンド砥粒により機械的に削られる。ダイヤモンド砥粒は炭化ケイ素の基板よりも硬度が高い。この方法は、研磨速度が速く、短時間で目標とする研磨量に達することができる方法である。しかしながら、被研磨材の基板の表面に深く大きな傷を発生させることがある。従って、高品位な研磨面を得ることが難しい。しかも、油性スラリーが、研磨処理の熱で変質するので、ダイヤモンド砥粒が凝集する。その結果、高価なダイヤモンド砥粒を再利用できなくなるという問題があった。
上記の問題を解決するために、メカノケミカル効果を生じさせる研磨方法を採用した技術が紹介されている(特許文献1)。メカノケミカル研磨では、被研磨材の表面を変質させて、被研磨材よりも柔らかい研磨砥粒で研磨する。従って、被研磨材の表面に大きな傷を発生させない。また、炭化ケイ素の研磨材として、酸化剤を使用し、研磨レート(removal rate)を向上させる技術も紹介されている(特許文献2)(特許文献3)(特許文献4)。さらに、本発明者等は、メカノケミカル効果を生じさせる複数種類の砥粒をメカニカルアロイ法により粒子状に一体化させた研磨用砥粒を用いて、研磨レートを格段に向上させる技術を紹介した(特許文献5)(特許文献6)(特許文献7)。
特開2005−81485号公報 特許4345746号公報 特許4827963号公報 WO2011136387号公報 特開2015−147922号公報 特開2015−165001号公報 特開2016−25136号公報
特許文献1に示された乾式研磨法(Dry polishing)は、被研磨材(object material)と研磨用砥粒(abrasive particle)との間で高い摩擦熱を発生させて、メカノケミカル研磨(mechanochemical polishing)を促進して、研磨速度(removal rate)の向上を図っている。しかし、高い温度にさらされた研磨用砥粒と研磨屑とが研磨装置の内部に付着するので、装置の洗浄に時間がかかる。従って、生産性が悪いという問題点があった。
一方、特許文献2や特許文献3に示された湿式研磨法(Wet polishing)は、過酸化水素等の酸化剤を研磨スラリーに添加して被研磨材の表面を酸化させて、研磨レートの向上を図っている。しかし、酸化剤が含まれるスラリーは、作業環境を悪化させ、廃液処理のコストを増大させる。さらに、酸化剤は研磨装置を腐食させることがある。特許文献4に示された湿式研磨法は、強アルカリ性スラリーを使用してメカノケミカル研磨を促進して、研磨速度の向上を図っている。しかし、pH10〜14といった強アルカリ性のスラリーは、作業環境を悪化させ、廃液処理のコストを増大させる。また、いずれの場合も、研磨処理中に、スラリーの特性が変化しやすいので、監視と調整が不可欠で、研磨工程の自動化が難しいという問題があった。即ち、従来知られた方法では、高い耐食性を持つSiCやGaNを実用的な研磨レートで高品位に研磨することができない。
特許文献5、6、7では、上記の課題を解決するために、メカニカルアロイ法により複数種類の成分を相互に直接結合させて粒子状に一体化させた研磨用砥粒を紹介している。研磨用砥粒を構成する複数種類の成分は、それぞれ個々の成分の物質固有の性質をそのまま保持している。この研磨用砥粒により、それぞれの成分が連鎖的に作用して研磨を促進し、従来存在した課題を解決することに成功した。ここで、本発明では、この研磨用砥粒をさらに進化させて、研磨レートの一層の向上を図った研磨用砥粒を提供することを目的とする。
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
<構成1>
サファイアを湿式研磨するための砥粒であって、
モース硬度が7以上9以下の粒子状の第1の研磨剤と、
上記被研磨材に対してメカノケミカルな作用を有する粒子状の第2の研磨剤と、
スラリーのために使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる粒子状の摩擦熱反応剤と、
平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
上記摩擦熱反応剤は、CaCO3、SrCO3、MgCO3、BaCO3、Li2CO3、Ca3(PO42、Li3PO4及びAlK(SO42の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、上記一体化された粒子の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
<構成2>
上記第1の研磨剤は、Al23、ZrSiO4またはZrO2であって、上記一体化された粒子の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成1に記載の研磨用砥粒。
<構成3>
上記第2の研磨剤は、Cr23、Fe23、SiO2の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、上記一体化された粒子の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成1に記載の研磨用砥粒。
<構成4>
上記第2の研磨剤としてSiO2を選択したとき、上記第1の研磨剤として、SiO2よりもモース硬度が大きいものが選択される構成1に記載の研磨用砥粒。
<構成5>
サファイアを湿式研磨するための砥粒であって、
モース硬度が7以上9以下の粒子状の第1の研磨剤と、
上記被研磨材に対してメカノケミカルな作用を有する粒子状の第2の研磨剤と、
スラリーのために使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる粒子状の摩擦熱反応剤と、
平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
上記第1の研磨剤は、Al23、ZrSiO4またはZrO2であって、
上記第2の研磨剤は、Cr23、Fe23、SiO2の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、
上記摩擦熱反応剤は、CaCO3、SrCO3、MgCO3、BaCO3、Li2CO3、Ca3(PO42、Li3PO4及びAlK(SO42の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、
上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
<構成6>
構成1またはに記載の第1の研磨剤と第2の研磨剤と摩擦熱反応剤とを、メカニカルアロイ法により結合させて平均粒径0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化させた研磨用砥粒。
<構成7>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記の化学的研磨作用を促進する反応促進剤と、
平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記化学的研磨作用を発揮する成分がMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記反応促進剤が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記反応促進剤がCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
<構成8>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、
平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
上記機械的研磨作用を発揮する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記機械的研磨作用を発揮する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記化学的研磨作用を発揮する成分がMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
<構成9>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記化学的研磨作用を促進する反応促進剤とを含む成分と、
平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
上記機械的研磨作用を発揮する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記機械的研磨作用を発揮する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記化学的研磨作用を発揮する成分がMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記反応促進剤が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記反応促進剤がCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
<構成10>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、
研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分と、研磨時に発生する摩擦熱によって研磨面との上記反応を促進する成分と、上記反応により変質した被研磨材の研磨面を機械的に除去する成分と、平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
上記研磨面を機械的に除去する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記研磨面を機械的に除去する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分は、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分はMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記反応を促進する成分が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
上記反応を促進する成分がCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
<構成11>
炭化ケイ素または窒化ガリウムの湿式研磨のために、スラリー中に分散させて使用されるものであって、平均粒径が0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化された構成1乃至4のいずれかに記載の研磨用砥粒。
<構成12>
混合されたいずれの成分も、その一部が研磨用砥粒の外表面に露出している構成1乃至4のいずれかに記載の研磨用砥粒。
<構成13>
上記ダイヤモンド粒子の平均粒径と上記一体化された粒子の平均粒径の比が、1対100から1対6の範囲であることを特徴とする構成家1、構成5、または構成7乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒
<構成14>
上記ダイヤモンド粒子の平均粒径が0.2μm以下であることを特徴とする構成1、構成5または構成7乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒
本発明の研磨用砥粒は、複数種類の成分(component)が、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合され、粒子状に一体化されている。各成分間の結合エネルギが大きいので、研磨処理中に研磨用砥粒が分解することがない。被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分によって、メカノケミカル効果を生じさせ、被研磨材よりモース硬度の低い研磨用砥粒でも高い研磨レートで研磨できる。反応促進剤は、研磨用砥粒の外表面と被研磨材との摩擦により発生する熱で反応し、化学的研磨作用を促進する。化学的研磨作用が促進されれば、研磨レートをさらに向上させることができる。
複数種類の成分が、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま結合しているので、それぞれの成分が連鎖的に作用して研磨を促進する。複数種類の成分が、相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されているので、各研磨用砥粒がそれぞれの機能を連鎖的に発揮する。
機械的研磨作用を発揮する成分の硬度が相対的に高いものを使用すると、高速研磨が可能である。機械的研磨作用を発揮する成分の硬度が相対的に低いものを使用すると、高品質の研磨が可能になる。
純水中に上記の研磨用砥粒を分散させたスラリーは、ほぼ無害である。研磨作業場の環境に影響を与えないし、廃液処理も簡単である。しかも、研磨中に砥粒を構成する成分の消費が僅かなので、繰り返し使用することができ、経済的である。
水等のスラリーを用いた湿式研磨では熱エネルギが発散してしまい、一般には化学的研磨作用が十分に発揮されない。これに対して、複数種類の成分が粒子状に一体化された研磨用砥粒は、湿式研磨でも熱エネルギを有効に利用して、化学的研磨作用を十分に発揮することができる。この研磨用砥粒は、一部の成分により被研磨材の表面を化学的に変質させた直後に別の成分がこの変質した部分に接して傷を付けて剥がれやすくするような働きをするので、研磨レートが向上する。以上は特許文献4〜6により紹介された効果であるが、この研磨用砥粒に微小なダイヤモンド粒子を混入させると、さらに格段に研磨レートを向上させる効果がある。しかも、従来は実用的な研磨ができなかった硬い材料の高品質な研磨が可能になる。
本発明の研磨用砥粒の概略構造を示す外観図である。 研磨用砥粒を使用する研磨装置の一例を示す概略斜視図である。 従来のメカノケミカル研磨方法の説明図である。 本発明の研磨用砥粒の顕微鏡写真と、研磨動作説明図である。 実施例の研磨用砥粒で研磨処理前後の研磨用砥粒の成分を比較した図である。 各種の砥粒を使用して研磨処理をした後の廃液の性質比較図である。 第1の成分を取り替えたときのSiCの研磨レート比較図である。 第2の成分を取り替えたときのSiCの研磨レート比較図である。 Fig9Aは、GaNの研磨レート比較図で、Fig9Bはサファイアの研磨レート比較図である。 反応促進剤を取り替えたときの研磨レートと研磨処理後の温度の関係を示すデータである。 研磨圧力と研磨レートの関係を示す比較図である。 各種砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。 比較例の砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。 グラフ化した研磨レートの比較図である。 グラフ化した研磨後の表面粗さの比較図である。 本発明の研磨用砥粒の効果を示す実証データ図表である。
図1は、本発明の研磨用砥粒の概略構造を示す外観図である。
本発明の研磨用砥粒10はサフアィアや、炭化ケイ素や窒化ガリウム等の各種材料を研磨するために使用される。本発明の研磨用砥粒10は、例えば、図1FigAに示すように、第1の成分12と第2の成分13と反応促進剤14と、超微粒子状のダイヤモンド粒子9とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合されたものである。第1の成分12は、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分である。第2の成分13は、被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分である。反応促進剤14は、被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記化学的研磨作用を促進する成分である。この研磨用砥粒10は、これらの成分を粒子状に一体化したものである。
このほかに、図1Fig1Bに示すように、第2の成分13と第3の成分14と微少なダイヤモンド粒子9とからなる研磨用砥粒11も後で実施例として説明する。さらに、各種の組み合わせが可能である。化学的研磨作用には、被研磨材の表面にメカノケミカル効果を生じさせて、変質させる作用が含まれる。また、化学的研磨作用には、研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面を酸化させる作用も含まれる。これらの作用により、被研磨材の表面を、完全な状態の被研磨材の硬度以下の硬度に変質させて研磨することが可能になる。
研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面を酸化させる第2の成分と、研磨時に発生する摩擦熱によって研磨面の酸化作用を促進する第3の成分の2成分を組み合わせても十分な実用性がある。
上記の複数の成分が直接結合されているというのは、複数の成分以外の材料を使用して結合させていないという意味である。接着剤等の結合材料を使用しないで結合しているという意味である。メカニカルアロイング処理によって複数の成分を結合させると、図1Fig1Cに示すように、境界部分に非晶質層15が形成される。各成分は、この非晶質層15を介して、一体に結合する。各無機化合物成分は、メカニカルアロイング処理により結晶表面に生じた、非晶質層15の持つ化学的活性により結合している。この結合力により、研磨前も、研磨中も各無機化合物成分が容易に分離しない。従って、研磨用砥粒の、被研磨材に接触した部分で、各無機化合物成分の特性が連鎖的に発揮される。しかも、Fig1Cに示すように、第2の成分や第3の成分の結晶表面の各所に形成された非晶質層15は、これらの化学的研磨作用を高める効果もある。なお、超微粒子状のダイヤモンド粒子9は非晶質層を形成することなく、他の成分の境界に挟み込まれて一体化されているものと推察される。
粒子状に一体化されているというのは、砥粒としての用途に適するサイズと形状に選定されているという意味である。炭化ケイ素または窒化ガリウム基板のラッピング用として求められる表面粗さが0.01μm以下のとき、研磨用砥粒は、平均粒径が10μm以下に選定されるとよい。湿式研磨に使用する場合には、本発明の研磨用砥粒は、平均粒径0.05μm以上100μm以下の粒子状に製造することが好ましい。研磨パッドや砥石に固定してこの研磨用砥粒を使用する場合には、さらに大きな粒径のものも使用できる。従って、本発明の研磨用砥粒は、様々な面粗さの要求に応えることができる。なお、超微粒子状のダイヤモンド粒子9は、平均粒径が1μm以下のものが好ましい。被研磨材の研磨面に接したときに深い傷を生じさせないためである。
平均粒径が1μm以下の超微粒子状のダイヤモンド粒子9は、それだけでは半導体の研磨に適さない。しかしながら、これを上記の研磨用砥粒に混入すると、後で説明するように、研磨レートが著しく向上した。本発明の研磨用砥粒は、被研磨材の表面を変質させた後に、その変質部分を削り取るが、超微粒子状のダイヤモンド粒子9が変質部分に傷を付けて、削り取る効果を促進すると考えられる。
ダイヤモンド粒子の平均粒径と上記一体化された研磨用砥粒の粒子の平均粒径の比は、1対100から1対6の範囲が好ましい。図16以下でデータを使用して説明するように、研磨用砥粒に対して平均粒径が1対6を越える大きなダイヤモンド粒子9は、研磨用砥粒中に適切に分散せず、研磨レート向上の効果が少なくなる。研磨用砥粒に対しての平均粒径が1対100に満たない微小なダイヤモンド粒子9はもはや研磨レート促進に寄与せず、実際には微小すぎて取扱い難い。
ダイヤモンド粒子9は、一体化された研磨用砥粒の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下ほど混入することが好ましい。。研磨用砥粒を構成する各成分が有効に働くためには、研磨用砥粒に表面に微量にダイヤモンド粒子9が露出しているだけでよい。混入量が10重量パーセント以上では他の成分の作用が低下して研磨レートの向上が妨げられる。混入量が0.01重量パーセントに満たないと、研磨用砥粒の表面に露出するダイヤモンド粒子9が少なすぎて、本来の効果が得られない。しかも、コスト的に高価なダイヤモンド粒子が微量で効果を上げられるといのは、研磨用砥粒の製造コストを十分に低く抑えることができるという効果がある。
以上のような基準で選択したダイヤモンド粒子9を適量研磨用砥粒に混入すると、図16を用いて説明するように、特許文献4〜6で紹介した研磨用砥粒よりもさらにこ高品質な研磨面を高い研磨レートで研磨することか可能になった。これにより、SiCを実用的な研磨レートで研磨できるようになる。また、サファイアR面についても同様の効果があることかわかった。そして、従来は実用的な研磨ができなかったGaN等の高品質な研磨が可能になった。
研磨用砥粒は一体化した塊状のものであればよい。研磨用砥粒の外形は円形でなくてもよい。複数種類の成分は、メカニカルアロイング処理により結合されている。これにより、複数種類の成分が、個々の成分の物質固有の性質を保持した状態で結合されている。複数種類の成分を結合させたのは、各成分の物質固有の性質を組み合わせて、被研磨材を研磨するためである。いずれの場合でも、本発明の研磨用砥粒は、湿式研磨を行う場合には、酸やアルカリあるいは酸化剤等を含んだケミカルスラリーを使用しない。中性の水に研磨用砥粒を分散して使用することができるという特徴を有する。
[メカニカルアロイング処理]
メカニカルアロイング処理では、まず、第1の成分12の粉末と第2の成分13の粉末と反応促進剤14の粉末とを混合して、砕く、摩擦する、圧縮する、引っ張る、叩く、曲げるまたは衝突させるといった機械的衝撃を繰り返し加える。どの種類の衝撃を与えてもよい。複数種類の衝撃が組み合わされてもよい。これらの機械的衝撃により粉末が砕かれて、一様に混ざり合う。その後、これらの粉末が一体化して粒子状に固まる現象が生じる。各成分は、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、相互に直接結合して全体として粒子状に一体化される。各成分は非晶質層を介して、一体に結合される。
以下、図15までは、本発明の基礎となった特許文献7による研磨用砥粒の構造と作用について説明し、図16以下で本発明の超微粒子状のダイヤモンド粒子9を混在させた研磨用砥粒の性質と研磨レート向上の効果を説明する。
[第1の成分の作用]
第1の成分は、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する。第1の成分12の新モース硬度(修正モース硬度)は、被研磨材の硬さに従って選択される。例えば、被研磨材が炭化ケイ素または窒化ガリウムの場合には、新モース硬度が7以上13以下である新モース硬度が7以上としたのは、複合粒子が炭化ケイ素または窒化ガリウムを機械的に高速研磨するために必要な最小限の固さを備えるためである。新モース硬度が13以下としたのは、炭化ケイ素または窒化ガリウムの硬度以下の粒子を使用して、炭化ケイ素または窒化ガリウムの表面に大きな傷を付けずに研磨をするためである。第1の成分12には、ケイ酸化合物が適する。例えば、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2、タルク、または雲母が適する。これら以外のケイ酸塩化合物も適用できる。高い研磨レートを得る場合には、SiC、Al23、ZrSiO4またはZrO2であって、新モース硬度が9以上13以下のものが適する。一方、高品質な研磨面を得る場合には、より柔らかいタルク、または雲母が適する。即ち、ケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のものが適する。なお、新モース硬度が9のサファイアを研磨する場合には、研磨用砥粒の新モース硬度が7以上9以下が適する。
第1の成分12は、上記一体化された粒子の全重量を100としたとき、5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めることが好ましい。第1の成分12の配合割合が5パーセントに満たないと、研磨用砥粒の硬度が不足することがある。また、第1の成分12の配合割合が95パーセントを越えると、第2の成分が不足して、化学的研磨作用による研磨レートの向上が不十分になることがある。
[第2の成分の作用]
第2の成分13は、被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる。被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせるというのは、少なくとも被研磨材の表面の分子や原子間の結合を切ったり、酸化させたり、一部の分子や原子を他の分子や原子と置き換えたりする作用をすることをいう。こうして被研磨材の表面を化学的に変質させることにより、被研磨材と同等かそれよりも柔らかい砥粒で、変質させた部分を剥ぎ取ることを可能にする。これにより、被研磨材の表面が平坦化される。被研磨材の表面に近い部分だけが剥ぎ取られるので、被研磨材の表面に深い大きな傷を発生させない。この第2の成分の作用により、これまで得られなかった高い研磨レート(removal rate 単位時間当たりの研磨量)で研磨処理をすることができるようになった。
炭化ケイ素または窒化ガリウムが被研磨材の場合には、第2の成分13として、Cr23、Fe23、TiO2、ZnO、NiO、SnO2、Sb23、CuO、Co34、CeO2、Pr611、MnO2の群の中から選択された、一種または2種以上の酸化物を選択して使用することが好ましい。第2の成分は、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物である。複酸化物(multiple oxide)は、これらの酸化物のいずれか2種以上が固溶したものである。
第2の成分13として選択される材料には、炭化ケイ素または窒化ガリウムを高温で酸化させやすい物質が含まれる。上記の例で列挙した第2の成分13は、いずれも、酸化物である、特にMnO2は固体酸化剤として良く知られており、電解法によって製造された活性の強い二酸化マンガンが適する。二酸化マンガンは、研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して炭化ケイ素のC面を酸化し、Si面と固相反応する。酸化した研磨面は、炭化ケイ素と同等以下のモース硬度の成分で効率よく機械的に除去することができる。
サファイアを被研磨材とする場合には、サファイアのアルミニウムイオン(Al3 +)と同形置換が起こりやすい材料が好ましい。この材料は、イオン半径がアルミニウム(Al)と近似する物質である。一方、シリカ(SiO2)は、シロキサンの脱水時に生じる置換を生じさせる。この化学反応により、被研磨材(サファイア)の表面が変質して、被研磨材と同等以下の硬度の第1の研磨剤で効率よく研磨が可能になる。なお、第2の成分13は、上記一体化された粒子の全重量を100としたとき、5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めることが好ましい。第2の成分13の配合割合が5パーセントに満たないと、化学的研磨作用が不足して、十分高い研磨レートを維持できないことがある。また、第2の成分13の配合割合が95パーセントを越えると、全体として研磨用砥粒の硬度が不足することがある。
[ダイヤモンド粒子の作用]
なお、超微粒子状のダイヤモンド粒子9は、後で説明するように、被研磨材の変質させた部分を剥ぎ取る作用を格段に促進する。しかも、超微粒子状でかつ、研磨用砥粒中に微量に含まれているだけなので、研磨された被研磨材の表面に新たな深い傷を発生させるようなことがない。結果として、研磨レートを大きく向上させて、生産性を高めることができる。
[反応促進剤の作用]
反応促進剤14は、スラリーとして使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる。反応促進剤14は液体ではなく、固体である。反応促進剤14が固体であれば、機械的エネルギによって第1の成分12や第2の成分13と一体化処理して、研磨用砥粒を得ることができる。これに対して、反応促進剤14が液体である場合、または水に溶解し易い材料である場合には、スラリー中で研磨用砥粒が分解する。さらに、廃液が環境に悪影響を及ぼす。
反応促進剤14は、CaCO3、SrCO3、MgCO3、BaCO3、LiCO3、Ca3(PO42、Li3PO4、AlK(SO42の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であることが好ましい。純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が適する。いずれの材料も、研磨時に発生する摩擦熱によって、第2の成分13の研磨機能を促進することができる。このほかに、CaF2、NaAlF、Na4、AgCl、AgBr、Agl等の大気中で安定な純水に対して難溶性の無機化合物が適する。
なお、具体的には、反応促進剤14として選択される材料は、LiCO3とAlK(SO42を除いて、純水に対する溶解度が0.1以下である。即ち、摂氏25度の100グラムの純水に対して溶解する量が、0.1グラム以下である。一方、純水に対するLiCO3の溶解度は1.33、AlK(SO42の溶解度は6.74であって、他の材料に比べると大きい。しかしながら、研磨用砥粒として使用した場合に、いずれも、研磨中に分離して純水に多量に溶解することはない。即ち、メカニカルアログイング処理により一体化することによって、反応促進剤を、純水に溶解し難くさせている。従って、研磨用砥粒をスラリーとともに循環させて、繰り返し研磨に使用することができた。本明細書において、難溶性とは、摂氏25度の100グラムの純水に対して溶解する量が、7グラム以下のものを指す。
反応促進剤14は、一体化された粒子の全重量を100としたとき、5重量パーセント以上95パーセント以下を占めることが好ましい。反応促進剤14の配合割合が5重量パーセントに満たないと、第2の成分13の研磨機能を促進する効果が不十分になることがある。反応促進剤14の配合割合が95重量パーセントを越えると、第2の成分13の量が不足してしまうことがある。
例えば反応促進剤として、リチウム炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩を選択した場合を考える。特許文献4〜6の研磨用砥粒により湿式研磨を行うと、被研磨材に研磨用砥粒が擦り付けられて、局所的に摩擦熱が発生する。その結果、リチウム炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩から二酸化炭素が離脱する。ここで生じた酸化リチウムや酸化アルカリ土類は、瞬間的に水分と反応し、高い水和熱を発生するとともに、強アルカリ性物質である水酸化リチウムや水酸化アルカリ土類が生成される。
被研磨材表面の、研磨用砥粒と接する微小領域でこの現象が生じる。研磨用砥粒にメカノケミカル効果を生じさせる成分と、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分が含まれているから、連鎖的にメカノケミカル効果が促進され、その部分が効率的に削り取られる。
反応促進剤として、ミョウバン、すなわちAlK(SO4)2を選択した場合には、ま摩擦熱の作用により、被研磨材表面付近に酸性の領域を形成して、メカノケミカル効果を促進する。
反応促進剤として、フッ素化合物やハロゲン化合物を選択した場合には、以下の反応が生じているものと考えられる。
Si系の被研磨材の表面付近では、原子が共有結合先を失い、ダングリングボンドと呼ばれる状態になっている。ダングリングボンド上の電子は不安定なため化学的に活性である。被研磨材の表面に研磨用砥粒が擦り付けられると、摩擦熱によりフッ素イオンが発生する。その結果、ダングリングボンドとフッ素とが結合する。電気陰性度の強いフッ素原子は、被研磨材の表面の結晶構造を歪ませる。これにより、被研磨材の表面でのメカノケミカル効果が促進される。
[研磨装置]
図2は、研磨用砥粒を使用する研磨装置の一例を示す概略斜視図である。
研磨定盤20は矢印32の方向に回転駆動される。研磨定盤20の上面は研磨パッド22により覆われている。保持装置24は被研磨材26(炭化ケイ素基板や窒化ガリウム基板)を研磨パッド22に押しつけて支持するための装置である。注液器28から矢印30の方向に、スラリーとともに研磨用砥粒が供給される。研磨パッド22の表面に押しつけられた被研磨材26は、研磨用砥粒に接触して研磨される。スラリーと研磨用砥粒は研磨処理中に連続して定量ずつ供給される。
研磨用砥粒は、例えば、サファィア基板や、パワーデバイス用の炭化ケイ素または窒化ガリウム基板のポリシング処理(polishing process)に使用できる。サファイア基板は新モース硬度が9である。炭化ケイ素基板や窒化ガリウム基板は新モース硬度が13である。ポリシング処理では、例えば、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板の表面荒さが0.010μm以下に達するまで研磨する。純水中に、研磨用砥粒を分散させた懸濁液を、研磨面に供給して研磨処理を行うことができる。スラリー用として、中性の水を使用することができる。この水には、研磨用砥粒を分散させるために、界面活性剤やキレート剤を添加して構わない。中性の水に特許文献4〜6の研磨用砥粒を分散させて生成した懸濁液は、後で説明するように、摂氏25度におけるpHは4以上11以下である。即ち、スラリーを弱酸性か弱アルカリ性の範囲に収めることができる。
一般に、上記の各種基板は、始めに形状を整えるように両面研磨をする。これを粗加工という。その後、粗加工で生じた傷を低減するための中間加工を行う。最後に、原子レベルの平坦度まで表面を研磨する仕上げ加工を行う。従来は、粗加工の工程で、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板の研磨にダイヤモンド砥粒を使用している。しかし、ダイヤモンド砥粒が炭化ケイ素または窒化ガリウム基板よりもビッカース硬度が高いので、研磨痕(saw mark)と呼ぶ、表面から深い部分に達するダメージを付けてしまう。この研磨痕を修復するために、その後長時間の中間加工が必要であった。粗加工にダイヤモンド砥粒を使用するのは研磨レートを可能な限り向上させるためである。
上記の研磨痕の発生を抑制するために、微細なダイヤモンド砥粒を使用する方法がある。しかし、メカニカルな研磨を行う場合には、砥粒粒径が小さくなるにつれて研磨レートが低くなる、また、砥粒粒径が小さくなるにつれて、ダイヤモンド砥粒を使用する場合のコストが高くなるという問題がある。従って、研磨処理の速度を高め、かつ、ダメージの発生を防ぐ方法は未だ確立されていなかった。
既知の研磨用砥粒は、この問題を解決している。既知の研磨用砥粒を使用すれば、十分高い研磨レートが得られるため、粗加工と中間加工を一気に行うことを可能にする。既知の研磨用砥粒は、炭化ケイ素や窒化ガリウム基板と同程度かこれよりも柔らかい成分3を使用して研磨することができる。
上記のポリシング処理工程では、例えば、100ミリリットルの純水に、研磨用砥粒を15重量パーセントの濃度で分散させた研磨用スラリーを使用する。摂氏25度における上記スラリーのpHは4以上11以下である。実験によれば、4時間研磨処理後の廃液はほぼpH8程度であった。廃液のpHは5以上9以下が最も望ましく、LiCO3とCa3(PO42以外の材料を使用したときはこの範囲内であった。LiCO3とCa3(PO42を反応促進剤に使用した場合には、pH10〜11程度であった。いずれも、弱酸性〜弱アルカリ性の範囲内であり、作業環境への悪影響を抑えることができる。同時に、廃液処理が簡便になる。
上記のスラリーは、純水100に対して、研磨用砥粒を5重量パーセント以上含有させて、研磨用砥粒のみかけ比容(静置法)が0.5ml/g以上200ml/g以下となるように調整することが好ましい。みかけ比容(静置法)が0.5ml/gに満たないと研磨用砥粒の各成分が分離してしまう。みかけ比容(静置法)が200ml/gを越えても研磨レートの向上はなく、研磨用砥粒がスラリー中で過剰になり沈降が激しくなる。
図2に示した装置において、被研磨材26を研磨パッド22表面に向かって弾力を用いて押しつけるようにすると、研磨パッド22の表面に分散した研磨用砥粒と被研磨材26との間で摩擦熱が発生し易い。従って、例えば、保持装置24を弾力のあるゴム板等で構成することが好ましい。研磨パッド22は、合成繊維、ガラス繊維、天然繊維、合成樹脂、天然樹脂等により構成されるものが好ましい。保持装置24が被研磨材26に対して適度な弾力を与えることにより、効果的に摩擦熱を発生させて高い研磨レートを実現することができる。研磨用砥粒と被研磨材との間に、反応促進剤による化学反応が生じる温度以上に摩擦熱を発生させるとよい。
また、研磨装置を起動した当初は、摩擦熱の蓄積が無いため、被研磨材26の研磨面の温度上昇が不十分になる。そのために研磨レートが低くなる。この場合は、スラリーの温度を適温に調整する装置を設けるとよい。また、特許文献4〜6の研磨用砥粒は乾式研磨にも使用できる。例えば、基材が、研磨用のパッドである場合には、パッドの表面に適切な密度で研磨用砥粒を分散させて固定して、研磨部材を得る。樹脂や繊維に研磨用砥粒を分散させて固定したものを使用できる。基材がプラスチック成型品である場合には、研磨用砥粒と固化前のプラスチックとを混ぜ合わせてから、所定の方法で硬化させて、研磨部材を得る。また、テープ状の基材に分散させて固定したものでもよい。この研磨部材は、乾式研磨に適するが、研磨処理中に研磨面に純水を供給して、湿式研磨をすることもできる。
[従来技術との比較]
図3は従来のメカノケミカル研磨方法の説明図である。
これらは、いずれも比較例として列挙したものである。FIG3Aに示した砥粒は、複数種類の研磨剤を混合したものである。A研磨材16とB研磨材18とを混合してスラリーとともに研磨装置に供給する。B研磨材18はA研磨材16の研磨作用を促進する機能を持つ。この場合、一般には、A研磨材16とB研磨材18の比重が相違するので、FIG3Bに示すように、両者がスラリー内で分離してしまう。
FIG3Cは、A研磨材16の研磨作用を促進するスラリー17を使用した例を示す。この方法は上記の問題を解決しているので、近年広く採用されている。しかしながら、スラリー17には強アルカリ性のものや、酸化剤等が使用され、腐食性の強い溶液になるため、作業環境を悪くする。さらに、研磨処理後の廃液の処理費用が多額になる。
FIG3Dは、A研磨材16を高分子材料19の表面に固定した例を示す。この研磨用砥粒は、硬脆材料のラッピング工程に適するような平均粒度のものを得難い。即ち、サイズが大きいものしか得られない。また、全体として比重が軽くなり、研磨装置から押し流されてしまう。既知の研磨用砥粒は比重が重いので、研磨装置のパッド上面に長く滞留し、研磨レートを向上させる。
[研磨用砥粒の構造と作用]
図4 Fig4Aと Fig4Bは既知の研磨用砥粒の微鏡写真で、Fig4A以下はその研磨作用の説明図である。
Fig4Aは実施例1の研磨用砥粒を示す顕微鏡写真である。一体化処理直後のもので、大小様々なサイズの研磨用砥粒が混在している。平均粒径が5〜6μmで粒径1μm程度のものも混在している。Fig4Bはその部分拡大図である。外径が約6μmの1個の研磨用砥粒を撮影したものである。予め粉砕された3種類の成分が混在し、互いに強く連結一体化されている。3種類の成分は、いずれも、本来備える固有の物理的化学的性質を保持したまま粒子状に一体化されている。実施例の研磨用砥粒は、研磨処理に使用された後も、分離しない程度の力で一体化されている。例えば、炭化ケイ素基板を4時間研磨した後に回収した研磨用砥粒の表面状態も、この写真とあまり区別できない程度であった。超微粒子状のダイヤモンド粒子9は微少であり微量のため写真には明瞭に現れない。
本発明の基礎となる研磨用砥粒は、酸化アルミニウム(Al23)とニ酸化マンガン(MnO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを一体化したものである。これらをそれぞれ50重量部、37.5重量部、12.5重量部の割合で混合した。ボールミリング(Ball Milling)法によりこれらを外径1μm以下の粉末になるまで粉砕して、さらに約0.5時間機械的衝撃を加え続けることにより研磨用砥粒を得た。その中から平均粒度1μmの研磨用砥粒を選別して使用した。上記の方法で得た研磨用砥粒を純水とともに図2に示した装置に供給して、炭化ケイ素基板を4時間研磨した。研磨用砥粒を含むスラリーは研磨処理中に研磨パッド22の上に供給され、順次排出される。排出されたスラリーは再び回収され、研磨パッド22の上に供給されて繰り返し使用することができた。
サファィア研磨用として、酸化アルミニウム(Al23)と酸化ケイ素(SiO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを、それぞれ50重量部、37.5重量部、12.5重量部の割合で混合しして、ボールミリング法により一体化したものを製造した。平均粒度2μmの研磨用砥粒を得た。サファイア基板を4時間研磨した後にスラリー中から取り出した研磨用砥粒も、上記と同様の結果を得た。
例えば、複数の無機化合物成分を樹脂等の接着剤を使用して結合させる方法が知られている。しかしながら、樹脂等の接着剤による結合力は、研磨中に受ける外力により複数の無機化合物成分が互いに分離するのを防ぐことができない。このほかに、各成分を焼結して一体化する方法が考えられる。しかしながら、焼結をすると、無機化合物成分が互いに混ざり合って、個々の無機化合物成分の物質固有の性質が大部分失われてしまう。従って、ダイヤモンド単体の研磨用砥粒のような機能を効果的に発揮させることができない。即ち、十分効率の良い研磨レートを実現できない。しかも、焼結処理のときに受ける摂氏1000度ほどの熱により成分が変質したり分解してしまう。メカニカルアロイング処理では、各成分を変質させたり分解させるような熱は加わらない。
Fig4Cに示すように、この実施例の研磨用砥粒は、各成分が一様に混合されているから、いずれの成分もその一部が研磨用砥粒の外表面に露出している。研磨用砥粒は転がるように被研磨材に直接連続して接触する。研磨用砥粒自体が摩擦熱で発熱し、化学反応性研磨材が直接その摩擦熱で加熱されて、被研磨材の表面にメカノケミカル効果を生じさせる。これにより、被研磨材の表面が変質し壊れやすくなる。さらに、Fig4Cの状態からFig4Dの状態に移行すると、メカノケミカル効果が生じている部分に、ただちに、研磨用砥粒の、被研磨材表面を機械的に削る成分が接触する。これより、被研磨材のメカノケミカル効果が生じている部分が削られる。ここで、本発明では、超微粒子状のダイヤモンド粒子9が変質した被研磨材の表面に微少な傷を付けて、削り易くするから、研磨速度を格段に向上させる。即ち、ダイヤモンド粒子は被研磨材を機械的に削る成分の一部として機能している。
研磨用砥粒は、被研磨材の表面を転がるような運動をする。このとき、被研磨材の表面に、化学反応性研磨材と被研磨材を機械的に削る機能を持つ成分とが交互に繰り返し、接触する。しかも、摩擦熱がスラリー中に拡散する前に、これらが時間的な間隔を置かずに接触するから、効率よく連鎖的に研磨処理が進行する。なお、研磨用砥粒全体をいずれかの成分でコーティングすることもできる。この場合には、他の成分は研磨用砥粒の外表面に露出しない。しかしながら、研磨処理中にこのコーティングが壊れて全ての成分が表面に露出すれば、上記の作用が生じる。また、例えば、コーティングが他の成分の作用を妨げない程度の厚みであれば、全ての成分が研磨用砥粒の表面に露出していなくても構わない。
化学反応性研磨材と機械的に削る機能を持つ無機化合物成分とがスラリー中に分散して存在すると、被研磨材のメカノケミカル効果が生じている部分に、その部分を機械的に削る機能を持つ無機化合物成分が直接接触する確率は非常に少ない。従って、長時間研磨処理を続けなければならない。
全面に一様にメカノケミカル効果を生じさせれば、どの部分を機械的に削ってもよい。従って、強いアルカリ溶液のスラリーによって、被研磨材の全面にメカノケミカル効果を生じさせる方法が、従来、最も実用的な方法として採用されている。しかし、この方法は、廃液処理が問題になる。これは既に説明したとおりである。
Fig4Eは、実施例の研磨用砥粒で被研磨材を研磨したときの、被研磨材表面付近の断面図である。被研磨材26の表面付近のハッチングを施した部分だけが削り取られる。Fig4Fは、ダイヤモンド砥粒36で被研磨材26の表面を研磨したときの被研磨材表面付近の断面図である。この場合、被研磨材26の表面に深い研磨痕38が生じる。これが従来最も問題になっていた。本発明で使用する超微粒子状のダイヤモンド粒子9は研磨用砥粒中に微量に含まれており、しかも微粒子のため、このような弊害は生じない。
[研磨後の研磨用砥粒の分析]
図5Fig5Aは、炭化ケイ素基板を4時間研磨した前後の研磨用砥粒の成分を比較した図である。
Fig5Aの上段は、研磨処理前の研磨用砥粒の、各成分が占める割合を示す。下段は、研磨処理後の研磨用砥粒の、各成分が占める割合を示す。この図で示すように、実施例の研磨用砥粒は研磨処理前と後で、その成分比に著しい変化がない。特許文献4〜6の研磨用砥粒は機械的強度が高く、研磨処理によっても破壊されないから繰り返し使用できる。即ち、炭化ケイ素基板を4時間研磨した後にスラリー中から取り出した研磨用砥粒の外観及び分析結果により、混合した材料の大部分が原形のまま存在していることが分かった。総重量にして約3%は上記の化学反応により消費されていることもわかった。
Fig5Bは、サファイア基板を4時間研磨した前後の研磨用砥粒の成分を比較した図である。
研磨前はアルミニウム(Al)とシリコン(Si)とカルシウム(Ca)の全体に占める割合がそれぞれ38.2重量%、43.8重量%、17.9重量%であった。研磨処理後は41.2重量%,42.3重量%,16.5重量%であった。アルミニウム成分以外の成分の全体に占める割合はほぼ変化していなかった。アルミニウム成分の割合が増加した原因は、サファイアを研磨した研磨屑が新たに含まれたためと考えられる。
研磨処理後のスラリーとともに排出された残渣を分離し分析した。その結果、アルミニウム(Al)とシリコン(Si)とカルシウム(Ca)の全体に占める割合がそれぞれ52%、33%、0.5%の割合で含む残渣が得られた。成分分析の結果、ムライトが含まれていた。
研磨処理中に、研磨用砥粒が機械的あるいは熱的に分解してムライトが生成されたものか、それ以外の原因により生成されたものかを検討した。ムライトの生成量は研磨時間に比例していた。しかも、研磨処理前後の研磨用砥粒の消費量を十分に越える量のムライトが発生していた。即ち、研磨用砥粒が被研磨材の表面を化学的に変質させながら研磨して、その残渣がムライトであることがわかった。従来のいずれの湿式研磨方法を使用しても、4時間研磨後にこれだけの量のムライトを発生させることは無かった。従って、上記の反応促進剤が研磨中有効に機能していることが証明された。
ムライトは、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の化合物で。その化学式は、3Al23・2SiO2〜2Al23・SiO2、またはAl613Si2で表される。研磨用砥粒と被研磨材との摩擦により、局部的には摂氏数百度の摩擦熱が発生する。スラリーによりこの熱は拡散するが、研磨用砥粒と被研磨材とが接する微小領域は高温になる。炭酸カルシウムが、被研磨材と酸化アルミニウムの反応を促進した結果、ムライトが生成されたものと判断できる。
図6は、各種の砥粒を使用して研磨処理をした結果の廃液の性質比較図である。
Fig6Aに示すように、研磨処理後排出されたスラリーの温度を測定した結果、研磨処理によって、室温から摂氏30度〜40度程度まで温度上昇していたので、反応促進剤による影響を確認できた。研磨処理後排出されたスラリーの純水を除いた残渣は、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板の削り屑である。残渣は固形成分であって、フィルタにより廃液から除去できる。反応促進剤の種類により相違があるが、大部分の廃液はpH7.5程度であった。排水は中性で処理が容易であり、環境汚染の問題もない。また、最大でもpH11.2であり、問題無く処理できる。
Al23とSiO2とCaCO3とを一体化した研磨用砥粒でサフアィアを研磨したときは、いずれも、毎分0.7〜1.0μmという高い研磨レートを実現した。Fig6Bに示すように、LiCO3とCa3(PO42以外の材料を反応促進剤として使用したとき,研磨前の測定値は、pH4.63 8.0、研磨後の測定値はpH4.2〜8.2の範囲内であった。LiCO3とCa3(PO42を反応促進剤として使用したとき、研磨前の測定値は、それぞれpH10.1と9.0、研磨後の測定値はそれぞれpH11.2と9.6であった。いずれも、弱酸性〜弱アルカリ性の範囲内であり、作業環境への悪影響を抑えることができる。しかも、廃液処理が簡便になる。高温で高アルカリ雰囲気となる領域が微少領域であるから、スラリーのpHに大きく影響しないことがわかった。
[第1の成分の作用を実証]
図7は、第1の成分を取り替えてSiCを研磨したときの研磨レートの比較図である。
図7から図15までは、特許文献5〜7の効果を再確認するための説明である。本発明による超微粒子状のダイヤモンド粒子9を含めた効果は図16以下で説明する。サンプル1−1と表示した部分は、Al23とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。
この実施例では、研磨装置の運転条件が、研磨定盤20の回転数を毎分50回転(rpm)、保持装置24の回転数を毎分100回転、保持装置24が被研磨材26を研磨定盤20の方向に押しつける研磨圧力を1平方センチメートルあたり160グラム(g/cm2)とした。研磨用砥粒は、純水中に15重量%混入されている。こうして調整されたスラリーは、注液器28から毎分10ミリリットル(ml/min)で研磨パッド22上に供給された。
サンプル2−1と表示した部分は、ZrO2とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。サンプル2−2は第1の成分がZrSiO4、サンプル2−3は第1の成分が雲母、サンプル2−4は第1の成分がタルクである。第1の成分はメカノケミカル効果を生じさせる作用はない。第1の成分ZrO2の新モース硬度は11である。炭化ケイ素の新モース硬度は13である。第1の成分単体では炭化ケイ素を研磨することができない。
しかし、第1の成分ZrO2と第2の成分MnO2と反応促進剤CaCOとを一体化した研磨用砥粒は、図のように最も高い研磨レートを示す。次の図8の比較例6に示した従来のダイヤモンド砥粒を使用した場合の研磨レートが0.26(μm/min)であるのに対して、サンプル1−1の研磨レートがその約2.8倍の0.72(μm/min)であった。窒化ガリウムに対する第1の成分の作用もほぼ同様である。従って、窒化ガリウムについて、この実験例は示していない。
[第2の成分の作用を実証]
図8は、第2の成分を取り替えてSiCを研磨したときの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1と表示した部分は、Al23とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。図8の実施例では、第1の成分と反応促進剤が同じで、第2の成分を順に取り替えた例を示す。サンプル3−1は第2の成分がTiO2、サンプル3−2は第2の成分がZnO、サンプル3−3は第2の成分がNiO、サンプル3−4は第2の成分がSnO2、サンプル3−5は第2の成分がSb23、サンプル3−6は第2の成分がCuO、サンプル3−7は第2の成分がCo34、サンプル3−8は第2の成分がCeO2、サンプル3−9は第2の成分がPr611、サンプル3−10は第2の成分がTi−Cr−Sbであって複酸化物である。
サンプル3−11とサンプル3−12は2成分構造の研磨用砥粒である。サンプル3−11は、酸化アルミニウム(Al23)と二酸化マンガン(MnO2)を本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。サンプル3−12は、炭酸カルシウム(CaCO3)と二酸化マンガン(MnO2)とを本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。2成分であっても、従来のダイヤモンド砥粒を使用した場合と同等の研磨レートを得ることができた。
比較例1は、酸化アルミニウム(Al23)と炭酸カルシウム(CaCO3)を本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。比較例2は、酸化アルミニウム(Al23)と二酸化マンガン(MnO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)の単なる混合物(一体化されていない)をスラリーに混入して使用した結果を示す。比較例3は、二酸化マンガン(MnO2)のみを砥粒とした結果を示す。比較例4は、酸化アルミニウム(Al23)のみを砥粒とした結果を示す。比較例5は、炭酸カルシウム(CaCO3)のみを砥粒とした結果を示す。
以上の例は、いずれも、研磨装置に樹脂パッドを使用し、砥粒を純水に混入したスラリーを使用した。一方、比較例6は、平均粒径が1〜3μmのダイヤモンド砥粒を使用し、研磨装置に金属定盤を使用し、油性のスラリーを使用した結果を示す。
ここで、これら全ての例の研磨レートを比較すると、サンプル1の研磨用砥粒を使用した場合には、毎分0.72μmであったのに対して、比較例1〜5の例では、いずれもほとんど研磨をすることができなかった。ダイヤモンド砥粒を使用した比較例6でも、研磨レートは毎分0.26という低い値である。しかも、ダイヤモンド砥粒を使用したば場合には研磨痕の問題がある。
図8に示したサンプル1−1は、きわめて高い研磨レートを示し、SiCの研磨においに十分に威力を発揮するということができる。サンプル3−11やサンプル3−12も従来に比べて研磨レートが高く、十分に実用性が高いということができる。その他のサンプルの研磨レートは、ダイヤモンド砥粒のみを使用した場合以下のものもある。しかし、これらのサンプルは、有害な廃液を出さない点と、研磨面がきわめて高品質になる利点を有し、従来よりも優れた方法といえる。即ち、第2の砥粒が研磨用砥粒と一体化しているので、スラリー中に溶出し難く、スラリーを大きく汚染しないという効果がある。
全てのサンプルは、作業環境を悪化させず、廃液処理が容易な純水を分散媒体としたスラリーを使用している。研磨に使用される金属定盤の面は、炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面に要求されるのと同じ程度に平坦でなければならない。しかしながら、その平坦度を維持するのは容易でない。一方、樹脂パッドは、炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面に研磨用砥粒を押しつけるための圧力を加えるだけのものである。従って、精度の高い構造は求められていない。樹脂パッドは、安価でメンテナンスも容易である。
(窒化ガリウムの場合)
図9は、第2の成分を取り替えたときの窒化ガリウムGaNの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1、3−1〜3−11の砥粒は、それぞれ図8の同じサンプル名の砥粒と同一構造のものである。窒化ガリウムを研磨した場合には、サンプル1−1がきわめて高い研磨レートを示した。また、サンプル3−9,3−10も高い研磨レートを示した。サンプル3−2,3−3−3−4,3−6も比較例8と遜色ない高い研磨レートを示した。その他のサンプルは、研磨レートが低いものの、有害な廃液を出さない点と、研磨面がきわめて高品質になる利点を有し、図8の場合と同様である。即ち、第1の成分がタルクや雲母のような新モース硬度が低いものでも、ダイヤモンド砥粒と同程度かそれ以上の研磨レートを実現できる。しかも、きわめて高品質な研磨面を得ることができるので非常に有効である。
(サフアィアの場合)
Fig9Bは、各種の砥粒を使用してサファイアの研磨処理をした結果の比較図である。
サンプル1と表示した部分は、Al23とSiO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、サファイアの研磨に使用した結果を示す。サンプル2と表示した部分は、Al23とFe23とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、サファイアの研磨に使用した結果を示す。サンプル3と表示した部分は、Al23とCr23とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、サファイアの研磨に使用した結果を示す。
この実施例では、サファィアウエハを平均粒度が#325のGC(green carbonite)で研磨をして、表面粗さRa=0.22μmのものを被研磨剤に使用した。研磨装置の運転条件は、研磨定盤20の回転数を毎分50回転(rpm)、保持装置24の回転数を毎分100回転、保持装置24が被研磨材26を研磨定盤20の方向に押しつける研磨圧力を1平方センチメートルあたり160グラム(g/cm2)とした。研磨用砥粒は、純水中に15重量%混入されている。こうして調整されたスラリーは、注液器28から毎分1ミリリットル(ml/min)で研磨パッド22上に供給された。
以下は、比較例である。ref1は、酸化アルミニウム(Al23)のみを砥粒とした結果を示す。ref2は、酸化ケイ素(SiO2)のみを砥粒とした結果を示す。ref3は、炭酸カルシウム(CaCO3)のみを砥粒とした結果を示す。
ref4は、酸化アルミニウム(Al23)と酸化ケイ素(SiO2)を本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。ref5は、酸化アルミニウム(Al23)と炭酸カルシウム(CaCO3)を本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。
ref6は、酸化ケイ素(SiO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)を本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。ref7は、酸化アルミニウム(Al23)と酸化ケイ素(SiO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)の単なる混合物(一体化されていない)をスラリーに混入して使用した結果を示す。ref8は、平均粒径が1〜3μmのダイヤモンド砥粒を使用した結果を示す。以上の例は、いずれも、研磨パッドとして樹脂パッドを使用し、砥粒を純水に混入したスラリーを使用した。一方、ref9は、平均粒径が1〜3μmのダイヤモンド砥粒を使用し、研磨装置に金属定盤を使用し、油性のスラリーを使用した結果を示す。
ここで、これら全ての例の研磨レートを比較すると、サンプル1の研磨用砥粒を使用した場合には、毎分1μmであったのに対して、ref1〜ref8の例では、いずれも毎分約0.3μmを越えることができない。ref9の例でも、研磨レートは毎分0.8μmであって、既知の研磨レートに及ばない。ref9の例は、既知の最も研磨レートが高いと言われている方法である。
サンプル1と2の場合には、既知のどの方法よりも高い研磨レートを実現できた。サンプル3の場合はref9と同程度の研磨レートを実現できた。全てのサンプルは、作業環境を悪化せず、廃液処理が容易な純水を分散媒体としたスラリーを使用している。また、金属定盤を使用した場合に、その面は、サファイアの研磨面に要求されるのと同程度に平坦でなければならない。しかしながら、その平坦度を維持するのは容易でない。一方、樹脂パッドは、サファイアの研磨面に研磨用砥粒を押しつけるための圧力を加えるためのものである。従って、精度の高い構造は求められていない。樹脂パッドは、安価でメンテナンスも容易である。本発明は、樹脂パッドのような柔らかい研磨パッドを使用できるので、金属定盤を使用する場合よりも有利である。
[反応促進剤の作用を実証]
図10は、反応促進剤を取り替えたときのSiCの研磨レートと研磨処理後の温度の関係を示すデータである。
比較例1は、反応促進剤を含まない砥粒を使用した例である。サンプル11〜18は、第1の成分にAl23を使用し、第2の成分にMnO2を使用して、それぞれ別の反応促進剤を使用した研磨用砥粒による実験結果である。炭化ケイ素を4時間研磨した後の研磨レートとスラリーの温度を測定した結果を表示した。
サンプル19は、反応促進剤(CaCO3)と第2の成分MnO2のみを一体化した研磨用砥粒を使用した例である。サンプル20は、反応促進剤(CaCO3)と第1の成分Al23のみを一体化した研磨用砥粒を使用した例である。
図10Fig10Aに示すように、比較例1を除き、研磨後のスラリーの温度はいずれも摂氏30度以上であった。これは、反応促進剤の発熱によって、スラリーが加熱されたことを意味する。また研磨後のスラリーの温度が高いものほど、研磨レートが高いことが分かる。即ち、摩擦熱によって反応促進剤が活発に化学反応をするほど、研磨レートが高くなる。
比較例1の場合の研磨レートは0.31μm/minで、研磨後のスラリーの温度は摂氏27度であった。この例とその他の例とを比較すると、研磨時に発生する摩擦熱だけでなく、反応促進剤の化学反応により発生する熱がスラリーの温度を上昇させていることが分かる。さらに、サンプル11〜18のように、第1の成分と第2の成分と反応促進剤とを組み合わせた研磨用砥粒が、研磨レートを飛躍的に高めることも証明された。反応促進剤の作用は、窒化ガリウムの研磨でも同様のため、例示をしていない。
Fig10Bは、研磨後のスラリーの温度と研磨レートの関係を示す表である。実験例1〜8は、第1の研磨剤にAl23を使用し、第2の研磨剤にSiO2を使用し、それぞれ別の反応促進剤を使用した研磨用砥粒を使用した実験結果である。これらの研磨用砥粒は、いずれも、全体に占める割合が、第1の研磨剤は50重量%、第2の研磨剤は37.5重量%、反応促進剤は12.5重量%で構成されている。研磨条件は全て同一である。被研磨材は、サファイアウエハを平均粒度#325のGC(green carbonite)で研磨した後の表面粗さRa−0.22μmのものである。研磨前のスラリーの温度は摂氏25度であった。サファイアを1時間研磨した後のスラリーの温度を測定した。研磨レートは、研磨後の被研磨材の厚みを測定して、1分(min)あたりの研磨量を計算して求めたものである。
ref1は、反応促進剤を使用しない砥粒を使用した比較例である。ref2は、反応促進剤(CaCO3)と第2の研磨剤SiO2のみを使用した比較例である。ref3は、反応促進剤(CaCO3)と第1の研磨剤Al23のみを使用した比較例である。
実験例1〜8の結果から、研磨後のスラリーの温度はいずれも摂氏30度以上であった。これは、被研磨材と研磨剤の摩擦で発生する熱だけでなく、反応促進剤の化学反応によって、スラリーが加熱されたことを意味する。また研磨後のスラリーの温度が高いものほど、研磨レートが大きいことが分かる。即ち、摩擦熱によって反応促進剤が活発に化学反応をするほど、研磨速度が速くなることがわかった。
ref1の場合の研磨レートは0.40μm/minで、研磨後のスラリーの温度は摂氏27度であった。また、ref2(第1の研磨剤が無い)とref3(第2の研磨剤が無い)では、反応促進剤の発熱によってスラリーが摂氏41度まで加熱されていることが分かった。しかしながら、研磨レートはあまり高く無い。これにより、第1の研磨剤と第2の研磨剤と反応促進剤とを組み合わせた特許文献4〜6の研磨用砥粒だけが、研磨レートを十分に高めることが証明された。
[研磨レートの向上理由]
ここで、上記の研磨用砥粒による著しい研磨レート向上の理由を整理して説明する。
(1)研磨用砥粒に新モース硬度が13以下の第1の成分を含めた場合
新モース硬度が13以下の粒子は、ZrSiO4とAl23とZrO2 とSiCである。これらの成分は、炭化ケイ素や窒化ガリウムに対して物理的な力を加えて塑性変形層(アモルファス層)を形成する働きをする。さらに、メカノケミカル効果を生じさせる性質を持つ第2の成分で、塑性変質層を変質させた後、第1の成分が、その塑性変形層を機械的に剥ぎ取る働きをする。被研磨材に第1の成分で塑性変形層を形成すると、その部分の結晶構造が破壊されているので、第2の成分によるメカノケミカル効果を生じ易くなると考えられる。塑性変質層を変質させると、被研磨材よりも硬度の低い第1の砥粒でこれを剥ぎ取ることが可能になる。この作用は被研磨材がサフアイアの場合も同様である。
Al23は新モース硬度が9である。ZrSiO4とZrO2は新モース硬度が8である。いずれの粒子も炭化ケイ素または窒化ガリウムよりも新モース硬度が高くないので、研磨痕の発生が抑制される。Al23はZrSiO4よりも固いから、ZrSiO4を使用した研磨用砥粒よりも、Al23を使用した研磨用砥粒のほうが研磨レートが高い。
(2)研磨用砥粒にメカノケミカル効果を生じさせる研磨材を含めた場合
メカノケミカル研磨材は、Cr23、Fe23、TiO2、ZnO、NiO、SnO2、Sb23、CuO、Co34、CeO2、Pr611、MnO2である。いずれも、炭化ケイ素または窒化ガリウムと高温雰囲気下で酸化反応を起こし易い。また固相反応を起こしやすい。この化学反応が、炭化ケイ素や窒化ガリウムの被研磨面を変質させると考えられる。これは、先行技術文献で紹介されたとおりである。
サフアィアに対するメカノケミカル研磨材は、Cr23、Fe23またはSiO2である。これらの研磨材は、サファイア(Al23)と同形置換( isomorphous substitution )を起こし易い。同型置換とは、イオン半径が近似する物質同士が、外部から圧力や熱を加えられると、イオン群が互いに置き換わる現象である。
サファイアの六配位(six‐coordination)Al3 +(イオン半径0.54Å(オングストローム))と近いイオン半径をもつ物質は、Fe23の六配位Fe3 +(イオン半径0.55Å)や、Cr23の六配位Cr3 +(イオン半径0.62Å)である。これらのイオン群が同形置換を起こす。この化学反応が、サファイアの被研磨面を変質させると考えられる。
一方、SiO2は、次のような化学反応をする。シラノール基(≡Si−OH)を有するSiO4の四面体が、脱水縮合反応によって連結する際に、Al3 +がAl(OH)3のような形で脱水縮合反応に加わる。SiO4連結体がサファイアの結晶構造内に取り込まれる。SiO4連結体の内部では、六配位Si4 +(イオン半径0.40Å)が、四配位Al3 +(イオン半径0.39Å)によって置換された状態になる。この同形置換による化学反応が、サファイアの被研磨面を変質させると考えられる。
(3)反応促進剤を研磨用砥粒に含めた場合
反応促進剤として炭酸カルシウム(CaCO3)を使用した場合の化学反応を説明する。炭酸カルシウムは、研磨用砥粒と炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面との摩擦により発生した摩擦熱で、CaOとCO2に分解する。さらに摩擦熱により摂氏数百度の熱が発生したとき、酸化カルシウムCaOが水と反応して発熱し、水酸化カルシウム(Ca(OH2))が生成される。この反応は、炭化ケイ素や窒化ガリウムと研磨用砥粒とが接触したきわめて狭い領域でのみ生じる。この反応により炭化ケイ素や窒化ガリウムが変質する。同時に、高温の強アルカリ雰囲気で、メカノケミカル効果を生じさせる研磨材の化学反応が加速されると考えられる。
以上のように、研磨用砥粒は、炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面に塑性変形層を形成し、反応促進剤により高温強アルカリ雰囲気が形成された部分でメカノケミカル効果を生じさせて、炭化ケイ素や窒化ガリウムを研磨する。この発熱によって、研磨後のスラリーは、摂氏30度〜40度になった。強アルカリ雰囲気が発生するのは研磨用砥粒の周辺のきわめて狭い領域なのでスラリー全体のpHに大きな影響を及ぼさない。
SrCO3、MgCO3、BaCO3等についても、全く同様の反応が生じている。上記の反応はきわめて局部的に生じる。研磨処理後のスラリーのpHは、中性の7よりもわずかに上昇するだけである。また、たとえ第2の成分で炭化ケイ素や窒化ガリウムの表面を変質させても、その場所正確に第1の成分が接触しなければ研磨レートは向上しない。従って、従来のように研磨剤と反応促進剤とが分離した状態でスラリー中に含まれていても、高い研磨レートは得られない。既知の研磨用砥粒は、第1の成分や第2の成分と摩擦滅反応剤とが一体に結合しているので、上記の効果が得られた。即ち、炭化ケイ素や窒化ガリウムを、湿式研磨により、十分な高い研磨レートで研磨して、高品位な研磨面を得ることが可能になった。
図11は、サンプル1〜3の研磨圧力と研磨レートの関係を示すデータである。
この実施例は、研磨圧力を変更したことによる研磨レートの変化を確認するためのものである。この図は、保持装置24が被研磨材26を研磨定盤20の方向に押しつける研磨圧力が、1平方センチメートルあたり500グラム(g/cm2)、750g/cm2)、1000g/cm2の3種類の実験結果を示している。定盤回転数は毎分50回転、キャリア回転数は毎分100回転、スラリー濃度は15%、スラリー供給量は毎分10ミリリットルであった。
この結果によれば、研磨圧力を増加させると、SiC基板の研磨レートが向上する。例えば、サンプル1の場合、研磨圧力が500g/cm2の場合には、研磨レートが毎分0.72ミクロンメータ(μm/min)であるのに対し、研磨圧力が1000g/cm2の場合には、研磨レートが1.39μm/minという結果が得られた。研磨レートが約2倍になった。しかも、研磨圧力を1000g/cm2にしても、研磨痕の無い状態で炭化ケイ素基板の研磨後の面粗さを、0.003μmにすることができた。
研磨圧力を高めることによって、より多く摩擦熱が発生し、同時に、研磨用砥粒が被研磨材の研磨面を効率よく削ることが、この実施例によって証明された。サンプル1〜3のいずれの研磨用砥粒も、従来のどの方法よりも高速で被研磨材の高品質な研磨が可能になる。
図12は、各種研磨用砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。
この例は、純水をスラリーに使用した場合の、各種砥粒の研磨レートと、研磨後の被研磨材の表面粗さを示したものである。比較のため、SiO2、MnO2、CeO2、TiO2の単体と、ダイヤモンド砥粒を使用した例を含めた。ダイヤモンド砥粒以外の砥粒は、SiCの研磨に対して、研磨レートがきわめて低く実用にならない。特許文献4〜6の研磨用砥粒は、純水をスラリーに使用しても、いずれもダイヤモンド砥粒よりも高い研磨レートを示している。しかも、研磨後のSiC基板の表面粗さがダイヤモンド砥粒に比べて著しく小さい。即ち、高品質の研磨面を得ることができる。
図13は、比較例の砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。
ここでは、SiO2、MnO2、CeO2、TiO2を、酸化剤であるH22をスラリーに含めて、SiC基板を研磨した結果を示す。図12の例と比較すれば、わずかに研磨が可能になることがわかる。しかし、この研磨レートでは、研磨時間がかかりすぎて、実用にならない。
図14は、グラフ化した研磨レートの比較図である。図15は、グラフ化した研磨後の表面粗さの比較図である。
図12と図13の結果を図14と図15にグラフで表示した。図14に示すように、特許文献4〜6の研磨用砥粒は、ダイヤモンド砥粒のみの場合と同等以上の研磨レートを実現できる。また、同時に、図15に示すように、ダイヤモンド砥粒による研磨面の粗さと比較して、圧倒的に高品質な研磨面が得られる。
図16は、本発明の研磨用砥粒の効果を示す実証データ図表である。
本発明の研磨用砥粒を使用した、研磨レートの検証を以下のようにして行った。ポリッシャは銅板に樹脂を被覆したもので、研磨時に被研磨材に加える荷重は400g/cm2とした。定盤の直径は380mm、定盤の回転数は60RPM、キャリアの回転数は60RPM、スラリーの滴下量は毎分2ml、ワーク(被研磨材)の形状は1辺1cmの正方形である。
まず、炭酸カルシウム(CaCO3)とシリカ(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)とをメカニカルアロイング処理によって結合した研磨用砥粒で、サファイアのR面を研磨する試験をした。一体化した研磨用砥粒の平均粒径が1.2μmのものと、0.5μmのものとを使用した。混入するダイヤモンド粒子は、平均粒径が30nm(0.03μm)と200nmの単結晶構造のものと、平均粒径が30nmと50nmの多結晶構造のものとの合計4種類を使用した。研磨用砥粒中に占めるダイヤモンド粒子の割合は0.25重量パーセントとした。
ダイヤモンド粒子を混入していない研磨用砥粒では、研磨レート(加工能率と表示)が1時間あたり0.5μmで表面粗さ(面粗度と表示)が0.4nmになるまで研磨することができた。一方、平均粒径が30nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、ほぼ同等の0.5nmの表面粗さに達するまでの研磨レートが1時間あたり4.5μmと格段に向上した。半導体のコストの相当部分が研磨作業時間の影響を受けていることから、この改善により大幅な製造コストの削減が可能になる。
ここの研磨レートの向上は、炭酸カルシウム(CaCO3)とシリカ(SiO2)とサファイア(Al23)によるメカノケミカル効果によって被研磨材の表面が変質したところにダイヤモンド粒子が微少な傷をつけて、変質した部分が剥ぎ取り易くなったためと考えられる。微少なダイヤモンド粒子は被研磨材を直接研磨できるほどの傷を発生させることはない。しかし、、変質した部分の研磨促進には有効に機能することがわかる。
平均粒径が30nmの多結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、研磨レートが表面粗さが0.5nmになるまで研磨することができた。研磨レートは同じ平均粒径の単結晶ダイヤモンド粒子を混入した場合の半分であったが、これでも、高品質な研磨面を得るために十分な研磨レートの向上を図ることができた。平均粒径が50nmの多結晶ダイヤモンド粒子を混入したものも、同様に研磨がレート1時間あたり2μmで、表面粗さが0.6nmになるまで研磨することができた。この場合も十分な実用性がある。
これに対して、平均粒径が200nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、研磨レートは1時間あたり3μmという高い数値を得られたが、表面粗さは1.4nmになった。この程度までは実用範囲であるが、混入するダイヤモンド粒子の平均粒径が大きくなると、良好な研磨面が得難くなることが分かる。研磨用砥粒の平均粒径が0.5μmのものの場合には、ダイヤモンド粒子の平均粒径が30nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入してやや研磨レートが遅くなるものの十分平坦な研磨面が得られた。
三方晶系コランダム型構造の炭化ケイ素(SiC)について試験をしてた。炭酸カルシウム(CaCO3)と二酸化マンガン(MnO2)と酸化アルミニウム(Al23)とをメカニカルアロイング処理によって結合した研磨用砥粒にも、平均粒径が1.2μmのものと、0.5μmのものとを使用した。混入するダイヤモンド粒子は、サファイアの場合と同様に、平均粒径が30nmと200nmの単結晶構造のものと、平均粒径が30nmと50nmの多結晶構造のものとを使用した。
ダイヤモンド粒子を混入していない研磨用砥粒では、研磨レートが1時間あたり0.1μmで表面粗さが0.4nmになるまで研磨することができた。一方、平均粒径が30nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、同じ0.4nmの表面粗さに達するまでの研磨レートが1時間あたり5μmと、格段に向上した。
平均粒径が30nmの多結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、研磨レートが1時間あたり2μmで表面粗さが0.4nmになるまで研磨することができた。研磨レートが単結晶ダイヤモンド粒子の場合の半分以下であったが、これでも、高品質な研磨面を得るために十分な研磨レートを得られた。平均粒径が50nmの多結晶ダイヤモンド粒子を混入したものも、同じ研磨レートで表面粗さが0.5nmになるまで研磨することができた。
これに対して、平均粒径が200nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、研磨レートは1時間あたり3μmという高い数値を得られたが、研磨後の表面粗さは0.8nmであった。ここでも、ダイヤモンド粒子の平均粒径が大きくなると、良好な研磨面が得難くなることが分かる。研磨用砥粒の平均粒径が0.5μmの場合には、ダイヤモンド粒子の平均粒径が30nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入してやや研磨レートが遅くなるものの十分平坦な研磨面が得られた。
窒化ガリウム(GaN)についても、ほぼ同様の条件で試験をした。炭酸カルシウム(CaCO3)と酸化亜鉛(ZnO)と酸化アルミニウム(Al23)とをメカニカルアロイング処理によって結合した研磨用砥粒ニついても、平均粒径が1.2μmのものと、0.5μmのものとを使用した。混入するダイヤモンド粒子についても、上記と同様に、平均粒径が30nmと200nmの単結晶構造のものと、平均粒径が30nmと50nmの多結晶構造のものとを使用した。
ダイヤモンド粒子を混入していない研磨用砥粒では、研磨レートが1時間あたり0.1μmで表面粗さが0.4nmになるまで研磨することができた。一方、平均粒径が30nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、同じ0.4nmの表面粗さに達するまでの研磨レートが1時間あたり4μmと、格段に向上した。
平均粒径が30nmの多結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、研磨レートが1時間あたり2μmで表面粗さが0.4nmになるまで研磨することができた。研磨レートが単結晶ダイヤモンド粒子の場合の半分以下であったが、これでも、高品質な研磨面を得るために十分な研磨レートを得られた。平均粒径が50nmの多結晶ダイヤモンド粒子を混入したものも、同じ研磨レートで表面粗さが0.5nmになるまで研磨することができた。
これに対して、平均粒径が200nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入した研磨用砥粒では、研磨レートは1時間あたり2μmという高い数値を得られたが、研磨後の表面粗さは1.4nmであった。ダイヤモンド粒子の平均粒径がこの付近を越えると、良好な研磨面が得難くなることが分かる。研磨用砥粒の平均粒径が0.5μmの場合には、ダイヤモンド粒子の平均粒径が30nmの単結晶ダイヤモンド粒子を混入してやや研磨レートが遅くなるものの十分平坦な研磨面が得られた。
なお、いずれの被研磨材についても、平均粒径が30nm〜200nmのダイヤモンド粒子のみでは、実用的な研磨レートで研磨すること自体が不可能であった。以上の結果を総合すると、いずれの被研磨材に使用する研磨用砥粒であっても、配合するダイヤモンド粒子の平均粒径と配合比とが、一定の範囲に調整されていることで、実用的な高い研磨レートと高品質な研磨面が得られることが分かった。
即ち、ダイヤモンド粒子は、一体化された研磨用砥粒の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることが好ましい。0.01重量パーセント未満の混入量では変質した部分に傷を付けて研磨レートを促進する効果がほとんど現れない。
また、10重量パーセントを越える混入量では、ダイヤモンド粒子が研磨用砥粒の表面を覆う面積が増大して、被研磨材を変質させるための成分が被研磨材に接触するのを妨げてしまう。こうした理由から、ダイヤモンド粒子の適切な混入量を選定することができる。
一方、ダイヤモンド粒子の平均粒径と上記一体化された粒子の平均粒径の比は、1対100から1対6の範囲であることが最も好ましい。さらに、ダイヤモンド粒子の平均粒径は0.2μm以下であることが好ましい。
研磨用砥粒の平均粒径が1μm程度の場合に、平均粒径の比が1対100に満たない微少なダイヤモンド粒子は変質面を効果的に傷つける能力が低すぎて実用にならない。一方、平均粒径の比が1対6をこえると、上記の実施例のように、ダイヤモンド粒子の平均粒径が大きくなり、被研磨材の表面に無用な傷を付けて研磨面の平坦度を損なう。こうした理由から平均粒径の比を適切な範囲に選定することが好ましい。従って、ダイヤモンド粒子自体の平均粒径も、0.2μm以下であることが、一層好ましいといえる。
被研磨材の研磨工程において、反応促進剤が摩擦熱を発生させる領域や、二酸化マンガンが酸化作用を及ぼす領域は、それぞれきわめて狭い。しかも、その効果が現れる時間もごく短時間である。摩擦熱により第2の成分による酸化作用が促進され、その状態で該当する面にただちに第1の成分が接触することで、相互作用による効果的な研磨が可能になる。反応促進剤と酸化剤と機械的研磨剤とがそれぞれ交互に不規則に時間をおいて被研磨剤の表面に接触しても、十分な相互作用が現れない。即ち、スラリー中にこれらの粒子が分散している場合と、本発明のように一体化した研磨用砥粒の場合とでは、著しい差が生じる。さらに、研磨用砥粒中に微量に含まれた超微粒子状のダイヤモンド粒子が、機械的研磨剤による研磨作用を助けるので、本発明の研磨用砥粒が研磨レートを画期的に向上させることができる。
以上の発明により、被研磨材を研磨する中間工程を短時間に圧縮するとともに、高い平坦度の研磨面を生成するので、仕上げ加工工程を大幅に短縮することができる。従って、この種の基板の生産コストに大きく影響を及ぼしている研磨処理のコスト削減に大きく寄与することができる。また、強酸性や強度アルカリ性の水溶液を使用せず、中性の水に研磨用砥粒を分散させるので、廃液は弱酸性あるいは弱アルカリ性で、環境に悪影響を及ぼさない。
なお、上記の実施例では、被研磨材として、サファイア、炭化ケイ素あるいは窒化ガリウムを例示して説明した。しかしながら、本発明の研磨用砥粒により、これ以外の材料であっても、高品質で高速な研磨を可能にする。また、上記の実施例では、2成分または3成分の無機化合物を結合させた例を示した。しかしながら、4種類以上の無機化合物成分を相互に非晶質層を介して一体に結合させた研磨用砥粒も、同様の機能を有する。混合割合や成分の組み合わせは、は被研磨材の種類に応じて自由に選択するとよい。
また、上記の実施例においては、第1の成分と第2の成分をそれぞれ1種類、あるいは、第1の成分と第2の成分と第3の成分それぞれ1種類結合させる例を説明した。しかしながら、例えば、第1の成分を1種類で第2の成分を2種類というように、各成分をそれぞれ複数種類組み合わせて結合させても構わない。。
本発明の研磨用砥粒は、パワーデバイス用基盤、その他の電子部品材料、電気絶縁性材料等に使用されるサファイア、炭化ケイ素または窒化ガリウムの研磨工程に広く利用することができる。さらに、本発明の研磨用砥粒は、金属やセラミック、あるいは人工骨などの生体材料の高品質な研磨にも利用できる。また、タングステン等の硬質材料の研磨にも利用できる。そして、従来の研磨方法と比較して、大幅に研磨時間を短縮することができ、大幅に製品のコストダウンが可能となる
9 ダイヤモンド粒子
10 研磨用砥粒(3成分)
11 研磨用砥粒(2成分)
12 第1の成分
13 第2の成分
14 反応促進剤
15 非晶質層
16 A研磨材
18 B研磨材
17 スラリー
19 高分子材料
20 研磨定盤
22 研磨パッド
24 保持装置
26 被研磨材
28 注液器
30 矢印
32 矢印
33 矢印

Claims (14)

  1. サファイアを湿式研磨するための砥粒であって、
    モース硬度が7以上9以下の粒子状の第1の研磨剤と、
    上記被研磨材に対してメカノケミカルな作用を有する粒子状の第2の研磨剤と、
    スラリーのために使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる粒子状の摩擦熱反応剤と、
    平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
    それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
    上記摩擦熱反応剤は、CaCO3、SrCO3、MgCO3、BaCO3、Li2CO3、Ca3(PO42、Li3PO4及びAlK(SO42の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、上記一体化された粒子の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
  2. 上記第1の研磨剤は、Al23、ZrSiO4またはZrO2であって、上記一体化された粒子の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項1に記載の研磨用砥粒。
  3. 上記第2の研磨剤は、Cr23、Fe23、SiO2の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、上記一体化された粒子の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項1に記載の研磨用砥粒。
  4. 上記第2の研磨剤としてSiO2を選択したとき、上記第1の研磨剤として、SiO2よりもモース硬度が大きいものが選択される請求項1に記載の研磨用砥粒。
  5. サファイアを湿式研磨するための砥粒であって、
    モース硬度が7以上9以下の粒子状の第1の研磨剤と、
    上記被研磨材に対してメカノケミカルな作用を有する粒子状の第2の研磨剤と、
    スラリーのために使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる粒子状の摩擦熱反応剤と、
    平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
    それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
    上記第1の研磨剤は、Al23、ZrSiO4またはZrO2であって、
    上記第2の研磨剤は、Cr23、Fe23、SiO2の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、
    上記摩擦熱反応剤は、CaCO3、SrCO3、MgCO3、BaCO3、Li2CO3、Ca3(PO42、Li3PO4及びAlK(SO42の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であって、
    上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
  6. 請求項1またはに記載の第1の研磨剤と第2の研磨剤と摩擦熱反応剤とを、メカニカルアロイ法により結合させて平均粒径0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化させた研磨用砥粒。
  7. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記の化学的研磨作用を促進する反応促進剤と、
    平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
    それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
    上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記化学的研磨作用を発揮する成分がMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記反応促進剤が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記反応促進剤がCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
  8. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、
    平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
    それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
    上記機械的研磨作用を発揮する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記機械的研磨作用を発揮する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記化学的研磨作用を発揮する成分がMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
  9. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記化学的研磨作用を促進する反応促進剤とを含む成分と、
    平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、
    それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
    上記機械的研磨作用を発揮する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記機械的研磨作用を発揮する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記化学的研磨作用を発揮する成分がMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記反応促進剤が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記反応促進剤がCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
  10. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、
    研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分と、研磨時に発生する摩擦熱によって研磨面との上記反応を促進する成分と、上記反応により変質した被研磨材の研磨面を機械的に除去する成分と、平均粒径が1μm以下のダイヤモンド粒子の混合物とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されており、
    上記研磨面を機械的に除去する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記研磨面を機械的に除去する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分は、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分はMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記反応を促進する成分が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めるかもしくは、
    上記反応を促進する成分がCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
    上記ダイヤモンド粒子が、上記一体化された粒子の0.01重量パーセント以上10重量パーセント以下を占めることを特徴とする研磨用砥粒。
  11. 炭化ケイ素または窒化ガリウムの湿式研磨のために、スラリー中に分散させて使用されるものであって、平均粒径が0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化された請求項1乃至4のいずれかに記載の研磨用砥粒。
  12. 混合されたいずれの成分も、その一部が研磨用砥粒の外表面に露出している請求項1乃至4のいずれかに記載の研磨用砥粒。
  13. 上記ダイヤモンド粒子の平均粒径と上記一体化された粒子の平均粒径の比が、1対100から1対6の範囲であることを特徴とする請求項家1、請求項5、または請求項7乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒
  14. 上記ダイヤモンド粒子の平均粒径が0.2μm以下であることを特徴とする請求項1、請求項5または請求項7乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒
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