JP2016025136A - 研磨用砥粒とその製造方法と研磨方法と研磨部材とスラリー - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化ケイ素または窒化ガリウムの表面を、高い研磨レートで高品位に研磨する。
【解決手段】炭化ケイ素または窒化ガリウムが湿式研磨法により研磨される。スラリーは、純水に研磨用砥粒を分散させたものである。研磨用砥粒は、メカノケミカル効果を生じさせる成分や、被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応する成分等が、全体として粒子状に一体化されている。各成分は、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合されている。炭化ケイ素または窒化ガリウムのラッピング工程にこのスラリーを使用すると、研磨時間を従来より大幅に短縮でき、加工コストを大幅に改善できる。研磨面は高品位である。研磨用砥粒は、繰り返し研磨処理に使用できる。スラリーのpHは3〜9程度であるから、研磨作業場の環境に影響を与えないし、廃液の処理も簡単である。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等の表面を研磨するために使用される研磨用砥粒とその製造方法と研磨方法と研磨部材と研磨用のスラリーに関する。
近年、多機能化と高性能化を目指し、新しい半導体デバイスが次々と提案されている。これらの提案に応えるように、シリコン(Si)基板以外の新たな材料が使用されるようになった。特に、パワーデバイス用SiCや、発光ダイオード(LED)用GaN等の基板が脚光を浴びている。今後、更なる高性能化を図り、量産ができるような低コスト化を目的として、基板の新しい加工方法の開発が切望されている。
半導体デバイスの製造工程では、基板(Semiconductor substrate)の表面を平坦にするために、研磨処理(polishing process)が行われる。従来採用されている一つの方法は、炭化ケイ素の基板を、ダイヤモンド砥粒を含んだ油性スラリーを使用して研磨する方法である。炭化ケイ素の基板の表面が、ダイヤモンド砥粒により機械的に削られる。ダイヤモンド砥粒は炭化ケイ素の基板よりも硬度が高い。この方法は、研磨速度が速く、短時間で目標とする研磨量に達することができる方法である。しかしながら、炭化ケイ素の基板の表面に深く大きな傷を発生させることがある。従って、高品位な研磨面を得ることが難しい。しかも、油性スラリーが、研磨処理の熱で変質するので、ダイヤモンド砥粒が凝集する。その結果、高価なダイヤモンド砥粒を再利用できなくなるという問題があった。
上記の問題を解決するために、メカノケミカル効果を生じさせる研磨方法を採用した技術が紹介されている(特許文献1)。メカノケミカル研磨では、被研磨材の表面を変質させて、被研磨材よりも柔らかい研磨砥粒で研磨する。従って、被研磨材の表面に大きな傷を発生させない。また、炭化ケイ素の研磨材として、酸化剤を使用し、研磨レート(removal rate)を向上させる技術も紹介されている(特許文献2)(特許文献3)。
特開2005−81485号公報 特許4345746号公報 特許4827963号公報
特許文献1に示された乾式研磨法(Dry polishing)は、被研磨材(object material)と研磨用砥粒(abrasive particle)との間で高い摩擦熱を発生させて、メカノケミカル研磨(mechanochemical polishing)を促進して、研磨速度(removal rate)の向上を図っている。しかし、高い温度にさらされた研磨用砥粒と研磨屑とが研磨装置の内部に付着するので、装置の洗浄に時間がかかる。従って、生産性が悪いという問題点があった。
一方、特許文献2や特許文献3に示された湿式研磨法(Wet polishing)は、過酸化水素等の酸化剤を研磨スラリーに添加して被研磨材の表面を酸化させて、研磨レートの向上を図っている。しかし、これらの文献で紹介されたスラリーは強酸性あるいは強アルカリ性のものが多く、作業環境を悪化させ、廃液処理のコストを増大させる。さらに、スラリーが研磨装置を腐食させることがある。また、研磨処理中に、スラリーの特性が変化しやすいので、監視と調整が不可欠で、研磨工程の自動化が難しいという問題があった。即ち、従来知られた方法では、高い耐食性を持つSiCやGaNを実用的な研磨レートで高品位に研磨することができない。
上記の課題を解決するために、本発明は、湿式研磨方法を採用し、メカノケミカル効果を生じさせる研磨方法を利用し、炭化ケイ素や窒化ガリウムに対して、高品位で、高い研磨レートを実現できる研磨用砥粒とその製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、環境に影響の少ないスラリーを使用して炭化ケイ素や窒化ガリウムを湿式研磨する研磨方法と研磨部材と研磨用のスラリーを提供することを目的とする。
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
<構成1>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記の化学的研磨作用を促進する反応促進剤とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合されて全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
<構成2>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
<構成3>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記化学的研磨作用を促進する反応促進剤とを含む成分が、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
<構成4>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、
研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分と、研磨時に発生する摩擦熱によって研磨面との上記反応を促進する成分と、上記反応により変質した被研磨材の研磨面を機械的に除去する成分とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
<構成5>
上記機械的研磨作用を発揮する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、上記第1の成分は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成2または3に記載の研磨用砥粒。
<構成6>
上記機械的研磨作用を発揮する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、上記第1の成分は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成2または3に記載の研磨用砥粒。
<構成7>
上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、上記第2の成分は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成1乃至3のいずれかに記載の研磨用砥粒。
<構成8>
上記化学的研磨作用を発揮する成分はMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成1乃至3のいずれかに記載の研磨用砥粒。
<構成9>
上記反応促進剤が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、上記反応促進剤は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成1または3に記載の研磨用砥粒。
<構成10>
上記反応促進剤はCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める構成1または3に記載の研磨用砥粒。
<構成11>
炭化ケイ素または窒化ガリウムの湿式研磨のために、スラリー中に分散させて使用されるものであって、平均粒径が0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化された構成1乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒。
<構成12>
混合されたいずれの成分も、その一部が研磨用砥粒の外表面に露出している構成1乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒。
<構成13>
炭化ケイ素または窒化ガリウムの被研磨材に対して研磨作用を発揮する2種以上の成分をメカニカルアロイング処理によって一体化する研磨用砥粒を製造する方法。
<構成14>
構成1乃至12のいずれかに記載の研磨用砥粒を純水中に分散させて炭化ケイ素または窒化ガリウムを研磨する研磨方法。
<構成15>
炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする研磨方法であって、上記被研磨材と構成1乃至12のいずれかに記載の研磨用砥粒との接触面に局部的に純水を供給する研磨方法。
<構成16>
構成1乃至4のいずかに記載の研磨用砥粒をバインダー剤により結着した研磨部材。
<構成17>
構成1乃至4のいずかに記載の研磨用砥粒と中性の水とを混合した液であって、摂氏25度におけるpHが4以上11以下の、炭化ケイ素または窒化ガリウムを研磨するためのスラリー。
本発明の研磨用砥粒は、2種または3種の成分(component)が、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合され、粒子状に一体化されている。各成分間の結合エネルギが大きいので、研磨処理中に研磨用砥粒が分解することがない。被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分によって、メカノケミカル効果を生じさせ、被研磨材よりモース硬度の低い研磨用砥粒でも高い研磨レートで研磨できる。反応促進剤は、研磨用砥粒の外表面と被研磨材との摩擦により発生する熱で反応し、化学的研磨作用を促進する。化学的研磨作用が促進されれば、研磨レートをさらに向上させることができる。
2種類あるいは3種類の成分が、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま結合しているので、それぞれの成分が連鎖的に作用して研磨を促進する。2種類あるいは3種類の成分が、相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されているので、各研磨用砥粒がそれぞれの機能を連鎖的に発揮する。
機械的研磨作用を発揮する成分の硬度が相対的に高いものを使用すると、高速研磨が可能である。機械的研磨作用を発揮する成分の硬度が相対的に低いものを使用すると、高品質の研磨が可能になる。
純水中に上記の研磨用砥粒を分散させたスラリーは、ほぼ無害である。研磨作業場の環境に影響を与えないし、廃液処理も簡単である。しかも、研磨中に砥粒を構成する成分の消費が僅かなので、繰り返し使用することができ、経済的である。
水等のスラリーを用いた湿式研磨では熱エネルギが発散してしまい、一般には化学的研磨作用が十分に発揮されない。これに対して、2種あるいは3種類の成分が粒子状に一体化された研磨用砥粒は、湿式研磨でも熱エネルギを有効に利用して、化学的研磨作用を十分に発揮することができる。
本発明の研磨用砥粒の概略構造を示す外観図である。 研磨用砥粒を使用する研磨装置の一例を示す概略斜視図である。 従来のメカノケミカル研磨方法の説明図である。 本発明の研磨用砥粒の顕微鏡写真と、研磨動作説明図である。 実施例の研磨用砥粒で研磨処理前後の研磨用砥粒の成分を比較した図である。 各種の砥粒を使用して研磨処理をした後の廃液の性質比較図である。 第1の成分を取り替えたときのSiCの研磨レート比較図である。 第2の成分を取り替えたときのSiCの研磨レート比較図である。 第2の成分を取り替えたときのGaNの研磨レート比較図である。 反応促進剤を取り替えたときのSiCの研磨レートと研磨処理後の温度の関係を示すデータである。 研磨圧力と研磨レートの関係を示す比較図である。 各種砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。 比較例の砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。 グラフ化した研磨レートの比較図である。 グラフ化した研磨後の表面粗さの比較図である。
図1は、本発明の研磨用砥粒の概略構造を示す外観図である。
本発明の研磨用砥粒10は炭化ケイ素または窒化ガリウムを研磨するために使用される。本発明の研磨用砥粒10は、例えば、図1FigAに示すように、第1の成分12と第2の成分13と反応促進剤14とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合されたものである。第1の成分12は、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分である。第2の成分13は、被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分である。反応促進剤14は、被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記化学的研磨作用を促進する成分である。この研磨用砥粒10は、これらの成分を粒子状に一体化したものである。
このほかに、図1Fig1Bに示すように、第2の成分13と第3の成分14のみからなる研磨用砥粒11も後で実施例として説明する。さらに、各種の組み合わせが可能である。化学的研磨作用には、被研磨材の表面にメカノケミカル効果を生じさせて、変質させる作用が含まれる。また、化学的研磨作用には、研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面を酸化させる作用も含まれる。これらの作用により、被研磨材の表面を、完全な状態の被研磨材の硬度以下の硬度に変質させて研磨することが可能になる。
研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面を酸化させる第2の成分と、研磨時に発生する摩擦熱によって研磨面の酸化作用を促進する第3の成分の2成分を組み合わせても十分な実用性がある。
上記の複数の成分が直接結合されているというのは、複数の成分以外の材料を使用して結合させていないという意味である。接着剤等の結合材料を使用しないで結合しているという意味である。メカニカルアロイング処理によって複数の成分を結合させると、図1Fig1Cに示すように、境界部分に非晶質層15が形成される。各成分は、この非晶質層15を介して、一体に結合する。各無機化合物成分は、メカニカルアロイング処理により結晶表面に生じた、非晶質層15の持つ化学的活性により結合している。この結合力により、研磨前も、研磨中も各無機化合物成分が容易に分離しない。従って、研磨用砥粒の、被研磨材に接触した部分で、各無機化合物成分の特性が連鎖的に発揮される。しかも、Fig1Cに示すように、第2の成分や第3の成分の結晶表面の各所に形成された非晶質層15は、これらの化学的研磨作用を高める効果もある。
粒子状に一体化されているというのは、砥粒としての用途に適するサイズと形状に選定されているという意味である。炭化ケイ素または窒化ガリウム基板のラッピング用として求められる表面粗さが0.01μm以下のとき、研磨用砥粒は、平均粒度が10μm以下に選定されるとよい。研磨用砥粒をスラリー中に分散させて使用する場合には、本発明の研磨用砥粒は、平均粒径0.05μm以上100μm以下の粒子状に製造することが好ましい。研磨パッドや砥石に固定してこの研磨用砥粒を使用する場合には、さらに大きな粒径のものも使用できる。従って、本発明の研磨用砥粒は、様々な面粗さの要求に応えることができる。
研磨用砥粒は一体化した塊状のものであればよい。研磨用砥粒の外形は円形でなくてもよい。複数種類の成分は、メカニカルアロイング処理により結合されている。により、複数種類の成分が、個々の成分の物質固有の性質を保持した状態で結合されている。複数種類の成分を結合させたのは、各成分の物質固有の性質を組み合わせて、被研磨材を研磨するためである。
[メカニカルアロイング処理]
メカニカルアロイング処理では、まず、第1の成分12の粉末と第2の成分13の粉末と反応促進剤14の粉末とを混合して、砕く、摩擦する、圧縮する、引っ張る、叩く、曲げるまたは衝突させるといった機械的衝撃を繰り返し加える。どの種類の衝撃を与えてもよい。複数種類の衝撃が組み合わされてもよい。これらの機械的衝撃により粉末が砕かれて、一様に混ざり合う。その後、一部の粉末が一体化して粒子状に固まる現象が生じる。各成分は、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、相互に直接結合して全体として粒子状に一体化される。各成分は非晶質層を介して、一体に結合される。
[第1の成分の作用]
第1の成分は、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する。第1の成分12の新モース硬度(修正モース硬度)は、例えば、7以上13以下である。新モース硬度が7以上としたのは、複合粒子が炭化ケイ素または窒化ガリウムを機械的に高速研磨するために必要な最小限の固さを備えるためである。新モース硬度が13以下としたのは、炭化ケイ素または窒化ガリウムの硬度以下の粒子を使用して、炭化ケイ素または窒化ガリウムの表面に大きな傷を付けずに研磨をするためである。第1の成分12には、ケイ酸化合物が適する。例えば、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2、タルク、または雲母が適する。これら以外のケイ酸塩化合物も適用できる。高い研磨レートを得る場合には、SiC、Al23、ZrSiO4またはZrO2であって、新モース硬度が9以上13以下のものが適する。一方、高品質な研磨面を得る場合には、より柔らかいタルク、または雲母が適する。即ち、ケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のものが適する。
第1の成分12は、上記一体化された粒子の全重量を100としたとき、5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めることが好ましい。第1の成分12の配合割合が5パーセントに満たないと、研磨用砥粒の硬度が不足することがある。また、第1の成分12の配合割合が95パーセントを越えると、第2の成分が不足して、化学的研磨作用による研磨レートの向上が不十分になることがある。
[第2の成分の作用]
第2の成分13は、被研磨材(炭化ケイ素または窒化ガリウム)に対してメカノケミカル効果を生じさせる。被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせるというのは、少なくとも被研磨材の表面の分子や原子間の結合を切ったり、酸化させたり、一部の分子や原子を他の分子や原子と置き換えたりする作用をすることをいう。こうして被研磨材の表面を化学的に変質させることにより、被研磨材と同等かそれよりも柔らかい砥粒で、変質させた部分を剥ぎ取ることを可能にする。これにより、被研磨材の表面が平坦化される。被研磨材の表面に近い部分だけが剥ぎ取られるので、被研磨材の表面に深い大きな傷を発生させない。この第2の成分の作用により、これまで得られなかった高い研磨レート(removal rate 単位時間当たりの研磨量)で研磨処理をすることができるようになった。
第2の成分13として、Cr23、FeO、Fe23、TiO2、ZnO、NiO、SnO2、Sb23、CuO、Co34、CeO2、Pr611、MnO2の群の中から選択された、一種または2種以上の酸化物を選択して使用することが好ましい。第2の成分は、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物である。複酸化物(multiple oxide)は、これらの酸化物のいずれか2種以上が固溶したものである。
第2の成分13として選択される材料には、炭化ケイ素または窒化ガリウムを高温で酸化反応をさせたり、置換反応をさせやすい物質が含まれる。上記の例で列挙した第2の成分13は、いずれも、酸化物である、特にMnO2は固体酸化剤として良く知られており、電解法によって製造された活性の強い二酸化マンガンが適する。二酸化マンガンは、研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して炭化ケイ素のC面を酸化し、Si面と固相反応する。酸化した研磨面は、炭化ケイ素と同等以下のモース硬度の成分で効率よく機械的に除去することができる。
第2の成分13は、上記一体化された粒子の全重量を100としたとき、5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占めることが好ましい。第2の成分13の配合割合が5パーセントに満たないと、化学的研磨作用が不足して、十分高い研磨レートを維持できないことがある。また、第2の成分13の配合割合が95パーセントを越えると、全体として研磨用砥粒の硬度が不足することがある。
[反応促進剤の作用]
反応促進剤14は、スラリーとして使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる。反応促進剤14は液体ではなく、固体である。反応促進剤14が固体であれば、機械的エネルギによって第1の成分12や第2の成分13と一体化処理して、研磨用砥粒を得ることができる。これに対して、反応促進剤14が液体である場合、または水に溶解し易い材料である場合には、スラリー中で研磨用砥粒が分解する。さらに、廃液が環境に悪影響を及ぼす。
反応促進剤14は、CaCO3、SrCO3、MgCO3、BaCO3、LiCO3、Ca3(PO42、Li3PO4、AlK(SO42の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であることが好ましい。純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が適する。いずれの材料も、研磨時に発生する摩擦熱によって、第2の成分13の研磨機能を促進することができる。このほかに、CaF2、NaAlF、Na4、AgCl、AgBr、Agl等の大気中で安定な純水に対して難溶性の無機化合物が適する。
なお、具体的には、反応促進剤14として選択される材料は、LiCO3とAlK(SO42を除いて、純水に対する溶解度が0.1以下である。即ち、摂氏25度の100グラムの純水に対して溶解する量が、0.1グラム以下である。一方、純水に対するLiCO3の溶解度は1.33、AlK(SO42の溶解度は6.74であって、他の材料に比べると大きい。しかしながら、研磨用砥粒として使用した場合に、いずれも、研磨中に分離して純水に多量に溶解することはない。即ち、メカニカルアログイング処理により一体化することによって、反応促進剤を、純水に溶解し難くさせている。従って、研磨用砥粒をスラリーとともに循環させて、繰り返し研磨に使用することができた。本発明において、難溶性とは、摂氏25度の100グラムの純水に対して溶解する量が、7グラム以下のものを指す。
反応促進剤14は、一体化された粒子の全重量を100としたとき、5重量パーセント以上95パーセント以下を占めることが好ましい。反応促進剤14の配合割合が5重量パーセントに満たないと、第2の成分13の研磨機能を促進する効果が不十分になることがある。反応促進剤14の配合割合が95重量パーセントを越えると、第2の成分13の量が不足してしまうことがある。
例えば反応促進剤として、リチウム炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩を選択した場合を考える。本発明の研磨用砥粒により湿式研磨を行うと、被研磨材に研磨用砥粒が擦り付けられて、局所的に摩擦熱が発生する。その結果、リチウム炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩から二酸化炭素が離脱する。ここで生じた酸化リチウムや酸化アルカリ土類は、瞬間的に水分と反応し、高い水和熱を発生するとともに、強アルカリ性物質である水酸化リチウムや水酸化アルカリ土類が生成される。
被研磨材表面の、研磨用砥粒と接する微小領域でこの現象が生じる。研磨用砥粒にメカノケミカル効果を生じさせる成分と、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分が含まれているから、連鎖的にメカノケミカル効果が促進され、その部分が効率的に削り取られる。
反応促進剤として、ミョウバン、すなわちAlK(SO4)2を選択した場合には、ま摩擦熱の作用により、被研磨材表面付近に酸性の領域を形成して、メカノケミカル効果を促進する。
反応促進剤として、フッ素化合物やハロゲン化合物を選択した場合には、以下の反応が生じているものと考えられる。
Si系の被研磨材の表面付近では、原子が共有結合先を失い、ダングリングボンドと呼ばれる状態になっている。ダングリングボンド上の電子は不安定なため化学的に活性である。被研磨材の表面に研磨用砥粒が擦り付けられると、摩擦熱によりフッ素イオンが発生する。その結果、ダングリングボンドとフッ素とが結合する。電気陰性度の強いフッ素原子は、被研磨材の表面の結晶構造を歪ませる。これにより、被研磨材の表面でのメカノケミカル効果が促進される。
[研磨装置]
図2は、本発明の研磨用砥粒を使用する研磨装置の一例を示す概略斜視図である。
研磨定盤20は矢印32の方向に回転駆動される。研磨定盤20の上面は研磨パッド22により覆われている。保持装置24は被研磨材26(炭化ケイ素基板や窒化ガリウム基板)を研磨パッド22に押しつけて支持するための装置である。本発明では、注液器28から矢印30の方向に、スラリーとともに研磨用砥粒が供給される。研磨パッド22の表面に押しつけられた被研磨材26は、研磨用砥粒に接触して研磨される。スラリーと研磨用砥粒は研磨処理中に連続して定量ずつ供給される。
本発明の研磨用砥粒は、例えば、パワーデバイス用の炭化ケイ素または窒化ガリウム基板のポリシング処理(polishing process)に使用できる。炭化ケイ素または窒化ガリウム基板は新モース硬度が13である。ポリシング処理では、例えば、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板の表面荒さが0.010μm以下に達するまで研磨する。純水中に、研磨用砥粒を分散させた懸濁液を、研磨面に供給して研磨処理を行うことができる。スラリー用として、中性の水を使用することができる。この水には、研磨用砥粒を分散させるために、界面活性剤やキレート剤を添加して構わない。中性の水に本発明の研磨用砥粒を分散させて生成した懸濁液は、後で説明するように、摂氏25度におけるpHは4以上11以下である。即ち、スラリーを弱酸性か弱アルカリ性の範囲に収めることができる。
一般に、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板は、始めに形状を整えるように両面研磨をする。これを粗加工という。その後、粗加工で生じた傷を低減するための中間加工を行う。最後に、原子レベルの平坦度まで表面を研磨する仕上げ加工を行う。従来は、粗加工の工程で、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板の研磨にダイヤモンド砥粒を使用している。しかし、ダイヤモンド砥粒が炭化ケイ素または窒化ガリウム基板よりもビッカース硬度が高いので、研磨痕(saw mark)と呼ぶ、表面から深い部分に達するダメージを付けてしまう。この研磨痕を修復するために、その後長時間の中間加工が必要であった。粗加工にダイヤモンド砥粒を使用するのは研磨レートを可能な限り向上させるためである。
上記の研磨痕の発生を抑制するために、微細なダイヤモンド砥粒を使用する方法がある。しかし、メカニカルな研磨を行う場合には、砥粒粒径が小さくなるにつれて研磨レートが低くなる、また、砥粒粒径が小さくなるにつれて、ダイヤモンド砥粒を使用する場合のコストが高くなるという問題がある。従って、研磨処理の速度を高め、かつ、ダメージの発生を防ぐ方法は未だ確立されていなかった。
本発明の研磨用砥粒は、この問題を解決する。本発明の研磨用砥粒を使用すれば、十分高い研磨レートが得られるため、中間加工と仕上げ加工を一気に行うことを可能にする。本発明の研磨用砥粒は、炭化ケイ素や窒化ガリウム基板と同程度かこれよりも柔らかい成分3を使用して研磨する。
上記のポリシング処理工程では、例えば、100ミリリットルの純水に、本発明の研磨用砥粒を15重量パーセントの濃度で分散させた研磨用スラリーを使用する。摂氏25度における上記スラリーのpHは4以上11以下である。実験によれば、4時間研磨処理後の廃液はほぼpH8程度であった。廃液のpHは5以上9以下が最も望ましく、LiCO3とCa3(PO42以外の材料を使用したときはこの範囲内であった。LiCO3とCa3(PO42を反応促進剤に使用した場合には、pH10〜11程度であった。いずれも、弱酸性〜弱アルカリ性の範囲内であり、作業環境への悪影響を抑えることができる。同時に、廃液処理が簡便になる。
上記のように研磨用砥粒を水に分散させて使用する際は、研磨用砥粒のみかけ比容(静置法)が0.5ml/g以上200ml/g以下となるように調整することが好ましい。みかけ比容(静置法)が0.5ml/gに満たないと研磨用砥粒の各成分が沈降しやすく。みかけ比容(静置法)が200ml/gを越えると砥粒が凝集しやすくなり水への分散が難しくなる。
図2に示した装置において、被研磨材26を研磨パッド22表面に向かって弾力を用いて押しつけるようにすると、研磨パッド22の表面に分散した研磨用砥粒と被研磨材26との間で摩擦熱が発生し易い。従って、例えば、保持装置24を弾力のあるゴム板等で構成することが好ましい。研磨パッド22は、合成繊維、ガラス繊維、天然繊維、合成樹脂、天然樹脂等により構成されるものが好ましい。保持装置24が被研磨材26に対して適度な弾力を与えることにより、効果的に摩擦熱を発生させて高い研磨レートを実現することができる。研磨用砥粒と被研磨材との間に、反応促進剤による化学反応が生じる温度以上に摩擦熱を発生させるとよい。
また、研磨装置を起動した当初は、摩擦熱の蓄積が無いため、被研磨材26の研磨面の温度上昇が不十分になる。そのために研磨レートが低くなる。この場合は、スラリーの温度を適温に調整する装置を設けるとよい。また、本発明の研磨用砥粒は乾式研磨にも使用できる。例えば、基材が、研磨用のパッドである場合には、パッドの表面に適切な密度で研磨用砥粒を分散させて固定して、研磨部材を得る。また、基材がプラスチック成型品である場合には、研磨用砥粒と固化前のプラスチックとを混ぜ合わせてから、所定の方法で硬化させて、研磨部材を得る。即ち、レジンボンド(プラスチック),メタルボンド(低融点金属),ビトリファイトボンド(ガラス質)等のバインダー剤により結着した研磨部材を使用することもできる。この研磨部材は、乾式研磨に適するが、研磨処理中に研磨面に純水を供給して、湿式研磨をすることもできる。
[従来技術との比較]
図3は従来のメカノケミカル研磨方法の説明図である。
これらは、いずれも比較例として列挙したものである。FIG3Aに示した砥粒は、複数種類の研磨剤を混合したものである。A研磨材16とB研磨材18とを混合してスラリーとともに研磨装置に供給する。B研磨材18はA研磨材16の研磨作用を促進する機能を持つ。この場合、一般には、A研磨材16とB研磨材18の比重が相違するので、FIG3Bに示すように、両者がスラリー内で分離してしまう。
FIG3Cは、A研磨材16の研磨作用を促進するスラリー17を使用した例を示す。この方法は上記の問題を解決しているので、近年広く採用されている。しかしながら、スラリー17には強アルカリ性のものや、より腐食性の強い溶液が採用されるため、作業環境を悪くする。さらに、研磨処理後の廃液の処理費用が多額になる。
FIG3Dは、A研磨材16を高分子材料19の表面に固定した例を示す。この研磨用砥粒は、硬脆材料のラッピング工程に適するような平均粒度のものを得難い。即ち、サイズが大きいものしか得られない。また、全体として比重が軽くなり、研磨装置から押し流されてしまう。本発明の研磨用砥粒は比重が重いので、研磨装置のパッド上面に長く滞留し、研磨レートを向上させる。
[研磨用砥粒の構造と作用]
図4 Fig4Aと Fig4Bは本発明の研磨用砥粒の微鏡写真で、Fig4A以下はその研磨作用の説明図である。
Fig4Aは実施例1の研磨用砥粒を示す顕微鏡写真である。一体化処理直後のもので、大小様々なサイズの研磨用砥粒が混在している。平均粒径が5〜6μmで粒径1μm程度のものも混在している。Fig4Bはその部分拡大図である。外径が約6μmの1個の研磨用砥粒を撮影したものである。予め粉砕された3種類の成分が混在し、互いに強く連結一体化されている。3種類の成分は、いずれも、本来備える固有の物理的化学的性質を保持したまま粒子状に一体化されている。実施例の研磨用砥粒は、研磨処理に使用された後も、分離しない程度の力で一体化されている。例えば、炭化ケイ素基板を4時間研磨した後に回収した研磨用砥粒の表面状態も、この写真とあまり区別できない程度であった。
実施例1の研磨用砥粒は、酸化アルミニウム(Al23)とニ酸化マンガン(MnO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを一体化したものである。これらをそれぞれ50重量部、37.5重量部、12.5重量部の割合で混合した。ボールミリング(Ball Milling)法によりこれらを外径1μm以下の粉末になるまで粉砕して、さらに約0.5時間機械的衝撃を加え続けることにより研磨用砥粒を得た。その中から平均粒度1μmの研磨用砥粒を選別して使用した。上記の方法で得た研磨用砥粒を純水とともに図2に示した装置に供給して、炭化ケイ素基板を4時間研磨した。研磨用砥粒を含むスラリーは研磨処理中に研磨パッド22の上に供給され、順次排出される。排出されたスラリーは再び回収され、研磨パッド22の上に供給されて繰り返し使用することができた。
例えば、複数の無機化合物成分を樹脂等の接着剤を使用して結合させる方法が知られている。しかしながら、樹脂等の接着剤による結合力は、研磨中に受ける外力により複数の無機化合物成分が互いに分離するのを防ぐことができない。このほかに、各成分を焼結して一体化する方法が考えられる。しかしながら、焼結をすると、無機化合物成分が互いに混ざり合って、個々の無機化合物成分の物質固有の性質が大部分失われてしまう。従って、本発明の研磨用砥粒のような機能を効果的に発揮させることができない。即ち、十分効率の良い研磨レートを実現できない。しかも、焼結処理のときに受ける摂氏1000度ほどの熱により成分が変質したり分解してしまう。メカニカルアロイング処理では、各成分を変質させたり分解させるような熱は加わらない。
Fig4Cに示すように、この実施例の研磨用砥粒は、各成分が一様に混合されているから、いずれの成分もその一部が研磨用砥粒の外表面に露出している。研磨用砥粒は転がるように被研磨材に直接連続して接触する。研磨用砥粒自体が摩擦熱で発熱し、化学反応性研磨材が直接その摩擦熱で加熱されて、被研磨材の表面にメカノケミカル効果を生じさせる。さらに、Fig4Cの状態からFig4Dの状態に移行すると、メカノケミカル効果が生じている部分に、ただちに、研磨用砥粒の、被研磨材表面を機械的に削る成分が接触する。これより、被研磨材のメカノケミカル効果が生じている部分が削られる。
研磨用砥粒は、被研磨材の表面を転がるような運動をする。このとき、被研磨材の表面に、化学反応性研磨材と被研磨材を機械的に削る機能を持つ成分とが交互に繰り返し、接触する。しかも、摩擦熱がスラリー中に拡散する前に、これらが時間的な間隔を置かずに接触するから、効率よく連鎖的に研磨処理が進行する。なお、研磨用砥粒全体をいずれかの成分でコーティングすることもできる。この場合には、他の成分は研磨用砥粒の外表面に露出しない。しかしながら、研磨処理中にこのコーティングが壊れて全ての成分が表面に露出すれば、上記の作用が生じる。また、例えば、コーティングが他の成分の作用を妨げない程度の厚みであれば、全ての成分が研磨用砥粒の表面に露出していなくても構わない。
化学反応性研磨材と機械的に削る機能を持つ無機化合物成分とがスラリー中に分散して存在すると、被研磨材のメカノケミカル効果が生じている部分に、その部分を機械的に削る機能を持つ無機化合物成分が直接接触する確率は非常に少ない。従って、長時間研磨処理を続けなければならない。
全面に一様にメカノケミカル効果を生じさせれば、どの部分を機械的に削ってもよい。従って、強いアルカリ溶液のスラリーによって、被研磨材の全面にメカノケミカル効果を生じさせる方法が、従来、最も実用的な方法として採用されている。しかし、この方法は、廃液処理が問題になる。これは既に説明したとおりである。
Fig4Eは、実施例の研磨用砥粒で被研磨材を研磨したときの、被研磨材表面付近の断面図である。被研磨材26の表面付近のハッチングを施した部分だけが削り取られる。Fig4Fは、ダイヤモンド砥粒36で被研磨材26の表面を研磨したときの被研磨材表面付近の断面図である。この場合、被研磨材26の表面に深い研磨痕38が生じる。これが従来最も問題になっていた。
[研磨後の研磨用砥粒の分析]
図5は、炭化ケイ素基板を4時間研磨した前後の研磨用砥粒の成分を比較した図である。
図5の上段は、研磨処理前の研磨用砥粒の、各成分が占める割合を示す。下段は、研磨処理後の研磨用砥粒の、各成分が占める割合を示す。この図で示すように、実施例の研磨用砥粒は研磨処理前と後で、その成分比に著しい変化がない。本発明の研磨用砥粒は機械的強度が高く、研磨処理によっても破壊されないから繰り返し使用できる。即ち、炭化ケイ素基板を4時間研磨した後にスラリー中から取り出した研磨用砥粒の外観及び分析結果により、混合した材料の大部分が原形のまま存在していることが分かった。総重量にして約3%は上記の化学反応により消費されていることもわかった。
図6は、各種の砥粒を使用して研磨処理をした結果の廃液の性質比較図である。
研磨処理後排出されたスラリーの温度を測定した結果、研磨処理によって、室温から摂氏30度〜40度程度まで温度上昇していたので、反応促進剤による影響を確認できた。研磨処理後排出されたスラリーの純水を除いた残渣は、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板の削り屑である。残渣は固形成分であって、フィルタにより廃液から除去できる。反応促進剤の種類により相違があるが、大部分の廃液はpH7.5程度であった。排水は中性で処理が容易であり、環境汚染の問題もない。また、最大でもpH11.2であり、問題無く処理できる。
[第1の成分の作用を実証]
図7は、第1の成分を取り替えてSiCを研磨したときの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1と表示した部分は、SiCとMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒、サンプル1−2と表示した部分は、Al23とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。
この実施例では、研磨装置の運転条件が、研磨定盤20の回転数を毎分50回転(rpm)、保持装置24の回転数を毎分100回転、保持装置24が被研磨材26を研磨定盤20の方向に押しつける研磨圧力を1平方センチメートルあたり160500グラム(g/cm2)とした。研磨用砥粒は、純水中に15重量%混入されている。こうして調整されたスラリーは、注液器28から毎分10ミリリットル(ml/min)で研磨パッド22上に供給された。
サンプル1−3と表示した部分は、ZrO2とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。サンプル1−4は第1の成分がZrSiO4、サンプル2−3は第1の成分が雲母、サンプル1−5は第1の成分が雲母、サンプル1−6は第1の成分がタルクである。いずれの例も、第1の成分はメカノケミカル効果を生じさせる作用はほとんどない。サンプル1−3の第1の成分ZrO2の新モース硬度は11である。炭化ケイ素の新モース硬度は13である。第1の成分単体では炭化ケイ素を研磨することができない。
しかし、第1の成分ZrO2と第2の成分MnO2と反応促進剤CaCOとを一体化した研磨用砥粒は、図のように最も高い研磨レートを示す。次の図8の比較例6に示した従来のダイヤモンド砥粒を使用した場合の研磨レートが0.26(μm/min)であるのに対して、サンプル1−1の研磨レートがその約2.8倍の0.72(μm/min)であった。窒化ガリウムに対する第1の成分の作用もほぼ同様である。従って、窒化ガリウムについて、この実験例は示していない。
[第2の成分の作用を実証]
図8は、第2の成分を取り替えてSiCを研磨したときの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1と表示した部分は、Al23とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。図8の実施例では、第1の成分と反応促進剤が同じで、第2の成分を順に取り替えた例を示す。サンプル3−1は第2の成分がTiO2、サンプル3−2は第2の成分がZnO、サンプル3−3は第2の成分がNiO、サンプル3−4は第2の成分がSnO2、サンプル3−5は第2の成分がSb23、サンプル3−6は第2の成分がCuO、サンプル3−7は第2の成分がCo34、サンプル3−8は第2の成分がCeO2、サンプル3−9は第2の成分がPr611、サンプル3−10は第2の成分がTi−Cr−Sbであって複酸化物である。
サンプル3−11とサンプル3−12は2成分構造の研磨用砥粒である。サンプル3−11は、酸化アルミニウム(Al23)と二酸化マンガン(MnO2)を本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。サンプル3−12は、炭酸カルシウム(CaCO3)と二酸化マンガン(MnO2)とを本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。2成分であっても、従来のダイヤモンド砥粒を使用した場合と同等の研磨レートを得ることができた。
比較例1は、酸化アルミニウム(Al23)と炭酸カルシウム(CaCO3)を本発明と同様の方法で機械的に結合し一体化した研磨用砥粒を使用した結果を示す。比較例2は、酸化アルミニウム(Al23)と二酸化マンガン(MnO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)の単なる混合物(一体化されていない)をスラリーに混入して使用した結果を示す。比較例3は、二酸化マンガン(MnO2)のみを砥粒とした結果を示す。比較例4は、酸化アルミニウム(Al23)のみを砥粒とした結果を示す。比較例5は、炭酸カルシウム(CaCO3)のみを砥粒とした結果を示す。
以上の例は、いずれも、研磨装置に樹脂パッドを使用し、砥粒を純水に混入したスラリーを使用した。一方、比較例6は、平均粒径が1〜3μmのダイヤモンド砥粒を使用し、研磨装置に金属定盤を使用し、油性のスラリーを使用した結果を示す。
ここで、これら全ての例の研磨レートを比較すると、サンプル1の研磨用砥粒を使用した場合には、毎分0.72μmであったのに対して、比較例1〜5の例では、いずれもほとんど研磨をすることができなかった。ダイヤモンド砥粒を使用した比較例6でも、研磨レートは毎分0.26という低い値である。しかも、ダイヤモンド砥粒を使用したば場合には研磨痕の問題がある。
図8に示したサンプル1−1は、きわめて高い研磨レートを示し、SiCの研磨においに十分に威力を発揮するということができる。サンプル3−11やサンプル3−12も従来に比べて研磨レートが高く、十分に実用性が高いということができる。その他のサンプルの研磨レートは、ダイヤモンド砥粒を使用した場合以下のものもある。しかし、これらのサンプルは、有害な廃液を出さない点と、研磨面がきわめて高品質になる利点を有し、従来よりも優れた方法といえる。即ち、第2の砥粒が研磨用砥粒と一体化しているので、スラリー中に溶出し難く、スラリーを大きく汚染しないという効果がある。
全てのサンプルは、作業環境を悪化させず、廃液処理が容易な純水を分散媒体としたスラリーを使用している。研磨に使用される金属定盤の面は、炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面に要求されるのと同じ程度に平坦でなければならない。しかしながら、その平坦度を維持するのは容易でない。一方、樹脂パッドは、炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面に研磨用砥粒を押しつけるための圧力を加えるだけのものである。樹脂パッドは、安価でメンテナンスも容易である。
図9は、第2の成分を取り替えたときの窒化ガリウムGaNの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1、3−1〜3−11の砥粒は、それぞれ図8の同じサンプル名の砥粒と同一構造のものである。窒化ガリウムを研磨した場合には、サンプル1−1がきわめて高い研磨レートを示した。また、サンプル3−9,3−10も高い研磨レートを示した。サンプル3−2,3−3−3−4,3−6も比較例8と遜色ない高い研磨レートを示した。その他のサンプルは、研磨レートが低いものの、有害な廃液を出さない点と、研磨面がきわめて高品質になる利点を有し、図8の場合と同様である。即ち、第1の成分がタルクや雲母のような新モース硬度が低いものでも、ダイヤモンド砥粒と同程度かそれ以上の研磨レートを実現できる。しかも、きわめて高品質な研磨面を得ることができるので非常に有効である。
[反応促進剤の作用を実証]
図10は、反応促進剤を取り替えたときのSiCの研磨レートと研磨処理後の温度の関係を示すデータである。
比較例1は、反応促進剤を含まない砥粒を使用した例である。サンプル11〜18は、第1の成分にAl23を使用し、第2の成分にMnO2を使用して、それぞれ別の反応促進剤を使用した研磨用砥粒による実験結果である。炭化ケイ素を4時間研磨した後の研磨レートとスラリーの温度を測定した結果を表示した。
サンプル19は、反応促進剤(CaCO3)と第2の成分MnO2のみを一体化した研磨用砥粒を使用した例である。サンプル20は、反応促進剤(CaCO3)と第1の成分Al23のみを一体化した研磨用砥粒を使用した例である。
図10に示すように、比較例1を除き、研磨後のスラリーの温度はいずれも摂氏30度以上であった。これは、反応促進剤の発熱によって、スラリーが加熱されたことを意味する。また研磨後のスラリーの温度が高いものほど、研磨レートが高いことが分かる。即ち、摩擦熱によって反応促進剤が活発に化学反応をするほど、研磨レートが高くなる。
比較例1の場合の研磨レートは0.31μm/minで、研磨後のスラリーの温度は摂氏27度であった。この例とその他の例とを比較すると、研磨時に発生する摩擦熱だけでなく、反応促進剤の化学反応により発生する熱がスラリーの温度を上昇させていることが分かる。さらに、サンプル11〜18のように、第1の成分と第2の成分と反応促進剤とを組み合わせた研磨用砥粒が、研磨レートを飛躍的に高めることも証明された。反応促進剤の作用は、窒化ガリウムの研磨でも同様のため、例示をしていない。
[研磨レートの向上理由]
ここで、本発明の研磨用砥粒による著しい研磨レート向上の理由を整理して説明する。
(1)研磨用砥粒に新モース硬度が13以下の第1の成分を含めた場合
新モース硬度が13以下の粒子は、ZrSiO4とAl23とZrO2 とSiCである。これらの成分は、炭化ケイ素や窒化ガリウムに対して物理的な力を加えて塑性変形層(アモルファス層)を形成する働きをする。さらに、メカノケミカル効果を生じさせる性質を持つ第2の成分で、塑性変質層を変質させた後、第1の成分が、その塑性変形層を機械的に剥ぎ取る働きをする。炭化ケイ素や窒化ガリウムに第1の成分で塑性変形層を形成すると、その部分の結晶構造が破壊されているので、第2の成分によるメカノケミカル効果を生じ易くなると考えられる。塑性変質層を変質させると、炭化ケイ素や窒化ガリウムよりも硬度の低い第1の砥粒でこれを剥ぎ取ることが可能になる。
Al23は新モース硬度が12である。ZrSiO4とZrO2は新モース硬度が10〜11である。いずれの粒子も炭化ケイ素または窒化ガリウムよりも新モース硬度が高くないので、研磨痕の発生が抑制される。Al23はZrSiO4よりも固いから、ZrSiO4を使用した研磨用砥粒よりも、Al23を使用した研磨用砥粒のほうが研磨レートが高い。
(2)研磨用砥粒にメカノケミカル効果を生じさせる研磨材を含めた場合
メカノケミカル研磨材は、Cr23、FeO,Fe23、TiO2、ZnO、NiO、SnO2、Sb23、CuO、Co34、CeO2、Pr611、MnO2である。いずれも、炭化ケイ素または窒化ガリウムと高温雰囲気下で酸化反応を起こし易い。また固相反応を起こしやすい。この化学反応が、炭化ケイ素や窒化ガリウムの被研磨面を変質させると考えられる。これは、先行技術文献で紹介されたとおりである。
(3)反応促進剤を研磨用砥粒に含めた場合
反応促進剤として炭酸カルシウム(CaCO3)を使用した場合の化学反応を説明する。炭酸カルシウムは、研磨用砥粒と炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面との摩擦により発生した摩擦熱で、CaOとCO2に分解する。さらに摩擦熱により摂氏数百度の熱が発生したとき、酸化カルシウムCaOが水と反応して発熱し、水酸化カルシウム(Ca(OH2))が生成される。この反応は、炭化ケイ素や窒化ガリウムと研磨用砥粒とが接触したきわめて狭い領域でのみ生じる。この反応により炭化ケイ素や窒化ガリウムが変質する。同時に、高温の強アルカリ雰囲気で、メカノケミカル効果を生じさせる研磨材の化学反応が加速されると考えられる。
以上のように、研磨用砥粒は、炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面に塑性変形層を形成し、反応促進剤により高温強アルカリ雰囲気が形成された部分でメカノケミカル効果を生じさせて、炭化ケイ素や窒化ガリウムを研磨する。この発熱によって、研磨後のスラリーは、摂氏30度〜40度になった。強アルカリ雰囲気が発生するのは研磨用砥粒の周辺のきわめて狭い領域なのでスラリー全体のpHに大きな影響を及ぼさない。
SrCO3、MgCO3、BaCO3等についても、全く同様の反応が生じている。上記の反応はきわめて局部的に生じる。研磨処理後のスラリーのpHは、中性の7よりもわずかに上昇するだけである。また、たとえ第2の成分で炭化ケイ素や窒化ガリウムの表面を変質させても、その場所正確に第1の成分が接触しなければ研磨レートは向上しない。従って、従来のように研磨剤と反応促進剤とが分離した状態でスラリー中に含まれていても、高い研磨レートは得られない。本発明の研磨用砥粒は、第1の成分や第2の成分と摩擦滅反応剤とが一体に結合しているので、上記の効果が得られた。即ち、炭化ケイ素や窒化ガリウムを、湿式研磨により、十分な高い研磨レートで研磨して、高品位な研磨面を得ることが可能になった。
図11は、サンプル1〜3の研磨圧力と研磨レートの関係を示すデータである。
この実施例は、研磨圧力を変更したことによる研磨レートの変化を確認するためのものである。この図は、保持装置24が被研磨材26を研磨定盤20の方向に押しつける研磨圧力が、1平方センチメートルあたり500グラム(g/cm2)、750g/cm2)、1000g/cm2の3種類の実験結果を示している。定盤回転数は毎分50回転、キャリア回転数は毎分100回転、スラリー濃度は15%、スラリー供給量は毎分10ミリリットルであった。
この結果によれば、研磨圧力を増加させると、SiC基板の研磨レートが向上する。例えば、サンプル1の場合、研磨圧力が500g/cm2の場合には、研磨レートが毎分0.72ミクロンメータ(μm/min)であるのに対し、研磨圧力が1000g/cm2の場合には、研磨レートが1.39μm/minという結果が得られた。研磨レートが約2倍になった。しかも、研磨圧力を1000g/cm2にしても、研磨痕の無い状態で炭化ケイ素基板の研磨後の面粗さを、0.003μmにすることができた。
研磨圧力を高めることによって、より多く摩擦熱が発生し、同時に、研磨用砥粒が炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面を効率よく削ることが、この実施例によって証明された。サンプル1〜3のいずれの研磨用砥粒も、従来のどの方法よりも高速で炭化ケイ素や窒化ガリウムの高品質な研磨が可能になる。
図12は、各種複合砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。
この例は、純水をスラリーに使用した場合の、各種砥粒の研磨レートと、研磨後の被研磨材の表面粗さを示したものである。比較のため、SiO2、MnO2、CeO2、TiO2の単体と、ダイヤモンド砥粒を使用した例を含めた。ダイヤモンド砥粒以外の砥粒は、SiCの研磨に対して、研磨レートがきわめて低く実用にならない。本発明の研磨用砥粒は、純水をスラリーに使用しても、いずれもダイヤモンド砥粒よりも高い研磨レートを示している。しかも、研磨後のSiC基板の表面粗さがダイヤモンド砥粒に比べて著しく小さい。即ち、高品質の研磨面を得ることができる。
図13は、比較例の砥粒の研磨レートと表面粗さの関係を示す比較図である。
ここでは、SiO2、MnO2、CeO2、TiO2を、MnO2の作用を高めるために、酸化剤であるH22をスラリーに含めて、SiC基板を研磨した結果を示す。図12の例と比較すれば、わずかに研磨が可能になることがわかる。しかし、この研磨レートでは、研磨時間がかかりすぎて、実用にならない。
図14は、グラフ化した研磨レートの比較図である。図15は、グラフ化した研磨後の表面粗さの比較図である。
図12と図13の結果を図14と図15にグラフで表示した。図14に示すように、本発明の研磨用砥粒は、ダイヤモンド砥粒と同等以上の研磨レートを実現できる。また、同時に、図15に示すように、ダイヤモンド砥粒による研磨面の粗さと比較して、圧倒的に高品質な研磨面が得られる。
以上説明したように、反応促進剤が摩擦熱を発生させる領域や、二酸化マンガンが酸化作用を及ぼす領域は、それぞれきわめて狭い。しかも、その効果が現れる時間もごく短時間である。摩擦熱により第2の成分による酸化作用が促進され、その状態で該当する面にただちに第1の成分が接触することで、相互作用による効果的な研磨が可能になる。反応促進剤と酸化剤と機械的研磨剤とがそれぞれ交互に不規則に時間をおいて被研磨剤の表面に接触しても、十分な相互作用が現れない。即ち、スラリー中にこれらの粒子が分散している場合と、本発明のように一体化した研磨用砥粒の場合とでは、著しい差が生じる。本発明の研磨用砥粒が研磨レートを画期的に向上させた原因はここにある。
以上の発明により、炭化ケイ素や窒化ガリウムを研磨する中間工程を短時間に圧縮するとともに、高い平坦度の研磨面を生成するので、仕上げ加工工程を大幅に短縮することができる。従って、この種の基板の生産コストに大きく影響を及ぼしている研磨処理のコスト削減に大きく寄与することができる。また、強酸性や強度アルカリ性の水溶液を使用せず、中性の水と研磨用砥粒を混合したスラリーを使用するので、廃液は弱酸性あるいは弱アルカリ性で、環境に悪影響を及ぼさない。
なお、上記の実施例においては、第1の成分と第2の成分をそれぞれ1種類、あるいは、第1の成分と第2の成分と第3の成分それぞれ1種類結合させる例を説明した。しかしながら、例えば、第1の成分を1種類で第2の成分を2種類というように、各成分をそれぞれ複数種類組み合わせて結合させても構わない。
本発明の研磨用砥粒は、パワーデバイス用基盤、その他の電子部品材料、電気絶縁性材料等に使用される炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨工程に広く利用することができる。そして、従来の研磨方法と比較して、大幅に研磨時間を短縮することができ、大幅に製品のコストダウンが可能となる
10 研磨用砥粒(3成分)
11 研磨用砥粒(2成分)
12 第1の成分
13 第2の成分
14 反応促進剤
15 非晶質層
16 A研磨材
18 B研磨材
17 スラリー
19 高分子材料
20 研磨定盤
22 研磨パッド
24 保持装置
26 被研磨材
28 注液器
30 矢印
32 矢印
33 矢印
第2の成分13として、Cr23、FeO、Fe23、TiO2、ZnO、NiO、SnO2、Sb23、CuO、Co34、CeO2、Pr611、MnO2の群の中から選択された、一種または2種以上の酸化物を選択して使用することが好ましい。第2の成分は、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物あるいはSnやSbの酸化物である。複酸化物(multiple oxide)は、これらの酸化物のいずれか2種以上が固溶したものである。
反応促進剤14は、CaCO3、SrCO3、MgCO3、BaCO3、Li 2 CO3、Ca3(PO42、Li3PO4、AlK(SO42の群の中から選択された、一種または2種以上の材料であることが好ましい。純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が適する。いずれの材料も、研磨時に発生する摩擦熱によって、第2の成分13の研磨機能を促進することができる。このほかに、CaF2、NaAlF、Na4、AgCl、AgBr、Agl等の大気中で安定な純水に対して難溶性の無機化合物が適する。
本発明の研磨用砥粒は、この問題を解決する。本発明の研磨用砥粒を使用すれば、十分高い研磨レートが得られるため、中間加工と仕上げ加工を一気に行うことを可能にする。本発明の研磨用砥粒は、炭化ケイ素や窒化ガリウム基板と同程度かこれよりも柔らかい第1の成分12を使用して研磨する。
ここで、これら全ての例の研磨レートを比較すると、サンプル1−1の研磨用砥粒を使用した場合には、毎分0.72μmであったのに対して、比較例1〜5の例では、いずれもほとんど研磨をすることができなかった。ダイヤモンド砥粒を使用した比較例6でも、研磨レートは毎分0.26という低い値である。しかも、ダイヤモンド砥粒を使用したば場合には研磨痕の問題がある。

Claims (17)

  1. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記の化学的研磨作用を促進する反応促進剤とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合されて全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
  2. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
  3. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、上記被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分と、上記被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記化学的研磨作用を促進する反応促進剤とを含む成分が、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
  4. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする砥粒であって、
    研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面との置換反応もしくは酸化反応を生じる成分と、研磨時に発生する摩擦熱によって研磨面との上記反応を促進する成分と、上記反応により変質した被研磨材の研磨面を機械的に除去する成分とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されている研磨用砥粒。
  5. 上記機械的研磨作用を発揮する成分が、SiC、Al23、ZrSiO4、ZrO2またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9以上13以下のもので、上記第1の成分は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項2または3に記載の研磨用砥粒。
  6. 上記機械的研磨作用を発揮する成分が、タルク、雲母またはこれら以外のケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のもので、上記第1の成分は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項2または3に記載の研磨用砥粒。
  7. 上記化学的研磨作用を発揮する成分が、Zrを除く周期表上第3族から第11族までの間に存在する遷移金属元素若しくは周期表上第12族元素(亜鉛族元素)の、酸化物または複酸化物であって、上記第2の成分は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項1乃至3のいずれかに記載の研磨用砥粒。
  8. 上記化学的研磨作用を発揮する成分はMnO2であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項1乃至3のいずれかに記載の研磨用砥粒。
  9. 上記反応促進剤が、純水に対して難溶性のもので、かつ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物またはハロゲン化合物であって、上記反応促進剤は研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項1または3に記載の研磨用砥粒。
  10. 上記反応促進剤はCaCO3であって、研磨用砥粒の全重量に対して5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占める請求項1または3に記載の研磨用砥粒。
  11. 炭化ケイ素または窒化ガリウムの湿式研磨のために、スラリー中に分散させて使用されるものであって、平均粒径が0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化された請求項1乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒。
  12. 混合されたいずれの成分も、その一部が研磨用砥粒の外表面に露出している請求項1乃至10のいずれかに記載の研磨用砥粒。
  13. 炭化ケイ素または窒化ガリウムの被研磨材に対して研磨作用を発揮する2種以上の成分をメカニカルアロイング処理によって一体化する研磨用砥粒を製造する方法。
  14. 請求項1乃至12のいずれかに記載の研磨用砥粒を純水中に分散させて炭化ケイ素または窒化ガリウムを研磨する研磨方法。
  15. 炭化ケイ素または窒化ガリウムを被研磨材とする研磨方法であって、上記被研磨材と請求項1乃至12のいずれかに記載の研磨用砥粒との接触面に局部的に純水を供給する研磨方法。
  16. 請求項1乃至4のいずかに記載の研磨用砥粒をバインダー剤により結着した研磨部材。
  17. 請求項1乃至4のいずかに記載の研磨用砥粒と中性の水とを混合した液であって、摂氏25度におけるpHが4以上11以下の、炭化ケイ素または窒化ガリウムを研磨するためのスラリー。
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