JP6731701B2 - 研磨用砥粒とその製造方法と研磨方法と研磨装置とスラリー - Google Patents
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Description
<構成1>
被研磨材の表面を研磨するためのものであって、
被研磨材と等しいかもしくは被研磨材よりもモース硬度が低い無機化合物である第1の成分と、
上記被研磨材を化学的に変質させる第2の成分とを、
メカニカルアロイング処理により、個々の成分の物質固有の性質を保持した状態で結合されて、平均粒径0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化させた研磨用砥粒であって、
上記第1の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記第2の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上95重量パーセント以下を占め、
上記第1の成分と第2の成分とは、いずれも、それぞれその一部が粒子の外表面に露出しており、
上記第1の成分は、タルク、SiO 2 、ZrSiO 4 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、SiCの中から選択された1種または2種以上の機械的研磨材であって、
上記第2の成分は、リチウム,アルカリ土類金属の炭酸塩,リン酸塩,フッ化物,ホウ素化合物,及び塩化銀,臭化銀,ヨウ化銀等のハロゲン化合物、氷晶石,又はミョウバンの中から選択された1種または2種以上の純水に対して難溶性の塩である研磨用砥粒。
上記第2の成分は、被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性研磨材を含み、その化学反応性研磨材は、SiO2、Fe2O3、Cr2O3、CeO2、ZnOの中から選択された1種または2種以上の研磨材である請求項1に記載の研磨用砥粒。
複数種類の無機化合物成分のいずれかに、被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性研磨材が含まれている構成6または7に記載の研磨用砥粒。
<構成9>
複数種類の無機化合物成分はいずれも、被研磨材とモース硬度が等しいかもしくは被研磨材よりもモース硬度が低い構成8に記載の研磨用砥粒。
複数種類の無機化合物成分のいずれかに、被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性研磨材と、被研磨材のメカノケミカル効果を生じた表面を機械的に削る成分が含まれている構成8に記載の研磨用砥粒。
被研磨材の表面を機械的に削る成分は、被研磨材と等しいかもしくは被研磨材よりもモース硬度が低い構成10に記載の研磨用砥粒。
被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性研磨材は、研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面を酸化させる成分である構成10に記載の研磨用砥粒。
被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性研磨材は、リチウム,アルカリ土類金属の炭酸塩,リン酸塩,フッ化物,ホウ素化合物,及び塩化銀,臭化銀,ヨウ化銀等のハロゲン化合物、氷晶石,又はミョウバンの中から選択された1種または2種以上の難溶性の塩である構成10に記載の研磨用砥粒。
複数種類の無機化合物成分の原料を混合し、乾式状態でメカニカルアロイング処理を行い、各無機化合物成分を、相互に非晶質層を介して一体に結合させて粒子状にする研磨用砥粒の製造方法。
純水中に、構成1乃至12のいずかに記載の研磨用砥粒を分散させたスラリーを使用して、被研磨材を研磨する研磨方法。
<構成16>
基材に、構成1乃至12のいずかに記載の研磨用砥粒を分散させて固定した研磨部材。
合成繊維、ガラス繊維、天然繊維、合成樹脂、天然樹脂のいずれかにより構成され、構成1乃至12のいずかに記載の研磨用砥粒を表面に分散させて固定した研磨パッドと、
被研磨材を研磨パッド表面に向かって弾力を用いて押しつける保持装置と、
研磨面に純水を供給する注液器とを備え、
上記保持装置による弾力は、上記研磨用砥粒と上記被研磨材との間に、上記反応促進剤による化学反応が生じる温度以上に摩擦熱を発生させるレベルに設定される研磨装置。
中性の水の中に、構成1乃至12のいずかに記載の研磨用砥粒を分散させて生成した懸濁液であって、摂氏25度におけるpHが4以上11以下の、炭化ケイ素または窒化ガリウムを研磨するためのスラリー。
複数種類の成分が、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま結合しているので、それぞれの成分が連鎖的に作用して研磨を促進する。複数種類の成分が、相互に直接結合して全体として粒子状に一体化されているので、各研磨用砥粒がそれぞれの機能を連鎖的に発揮する。
機械的研磨作用を発揮する成分の硬度が相対的に高いものを使用すると、高速研磨が可能である。機械的研磨作用を発揮する成分の硬度が相対的に低いものを使用すると、高品質の研磨が可能になる。
純水中に上記の研磨用砥粒を分散させたスラリーは、ほぼ無害である。研磨作業場の環境に影響を与えないし、廃液処理も簡単である。しかも、研磨中に砥粒を構成する成分の消費が僅かなので、繰り返し使用することができ、経済的である。
水等のスラリーを用いた湿式研磨では熱エネルギが発散してしまい、一般には化学的研磨作用が十分に発揮されない。これに対して、複数種類の成分が粒子状に一体化された研磨用砥粒は、湿式研磨でも熱エネルギを有効に利用して、化学的研磨作用を十分に発揮することができる。
本発明の研磨用砥粒10はサフアィアや、炭化ケイ素や窒化ガリウム等の各種材料を研磨するために使用される。本発明の研磨用砥粒10は、例えば、図1FigAに示すように、第1の成分12と第2の成分13と反応促進剤14とが、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、メカニカルアロイング処理によって相互に直接結合されたものである。第1の成分12は、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する成分である。第2の成分13は、被研磨材に対して化学的研磨作用を発揮する成分である。反応促進剤14は、被研磨材を研磨する際に発生する摩擦熱に反応して上記化学的研磨作用を促進する成分である。この研磨用砥粒10は、これらの成分を粒子状に一体化したものである。
メカニカルアロイング処理では、まず、第1の成分12の粉末と第2の成分13の粉末と反応促進剤14の粉末とを混合して、砕く、摩擦する、圧縮する、引っ張る、叩く、曲げるまたは衝突させるといった機械的衝撃を繰り返し加える。どの種類の衝撃を与えてもよい。複数種類の衝撃が組み合わされてもよい。これらの機械的衝撃により粉末が砕かれて、一様に混ざり合う。その後、一部の粉末が一体化して粒子状に固まる現象が生じる。各成分は、それぞれ個々の成分の物質固有の性質を保持したまま、相互に直接結合して全体として粒子状に一体化される。各成分は非晶質層を介して、一体に結合される。
第1の成分は、被研磨材に対して機械的研磨作用を発揮する。第1の成分12の新モース硬度(修正モース硬度)は、被研磨材の硬さに従って選択される。例えば、被研磨材が炭化ケイ素または窒化ガリウムの場合には、新モース硬度が7以上13以下である新モース硬度が7以上としたのは、複合粒子が炭化ケイ素または窒化ガリウムを機械的に高速研磨するために必要な最小限の固さを備えるためである。新モース硬度が13以下としたのは、炭化ケイ素または窒化ガリウムの硬度以下の粒子を使用して、炭化ケイ素または窒化ガリウムの表面に大きな傷を付けずに研磨をするためである。第1の成分12には、ケイ酸化合物が適する。例えば、SiC、Al2O3、ZrSiO4、ZrO2、タルク、または雲母が適する。これら以外のケイ酸塩化合物も適用できる。高い研磨レートを得る場合には、SiC、Al2O3、ZrSiO4またはZrO2であって、新モース硬度が9以上13以下のものが適する。一方、高品質な研磨面を得る場合には、より柔らかいタルク、または雲母が適する。即ち、ケイ酸塩化合物であって、新モース硬度が9未満のものが適する。なお、新モース硬度が9のサファイアを研磨する場合には、研磨用砥粒の新モース硬度が7以上9以下が適する。
第2の成分13は、被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる。被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせるというのは、少なくとも被研磨材の表面の分子や原子間の結合を切ったり、酸化させたり、一部の分子や原子を他の分子や原子と置き換えたりする作用をすることをいう。こうして被研磨材の表面を化学的に変質させることにより、被研磨材と同等かそれよりも柔らかい砥粒で、変質させた部分を剥ぎ取ることを可能にする。これにより、被研磨材の表面が平坦化される。被研磨材の表面に近い部分だけが剥ぎ取られるので、被研磨材の表面に深い大きな傷を発生させない。この第2の成分の作用により、これまで得られなかった高い研磨レート(removal rate 単位時間当たりの研磨量)で研磨処理をすることができるようになった。
反応促進剤14は、スラリーとして使用する純水に対して難溶性のものであって、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる。反応促進剤14は液体ではなく、固体である。反応促進剤14が固体であれば、機械的エネルギによって第1の成分12や第2の成分13と一体化処理して、研磨用砥粒を得ることができる。これに対して、反応促進剤14が液体である場合、または水に溶解し易い材料である場合には、スラリー中で研磨用砥粒が分解する。さらに、廃液が環境に悪影響を及ぼす。
Si系の被研磨材の表面付近では、原子が共有結合先を失い、ダングリングボンドと呼ばれる状態になっている。ダングリングボンド上の電子は不安定なため化学的に活性である。被研磨材の表面に研磨用砥粒が擦り付けられると、摩擦熱によりフッ素イオンが発生する。その結果、ダングリングボンドとフッ素とが結合する。電気陰性度の強いフッ素原子は、被研磨材の表面の結晶構造を歪ませる。これにより、被研磨材の表面でのメカノケミカル効果が促進される。
図2は、本発明の研磨用砥粒を使用する研磨装置の一例を示す概略斜視図である。
研磨定盤20は矢印32の方向に回転駆動される。研磨定盤20の上面は研磨パッド22により覆われている。保持装置24は被研磨材26(炭化ケイ素基板や窒化ガリウム基板)を研磨パッド22に押しつけて支持するための装置である。本発明では、注液器28から矢印30の方向に、スラリーとともに研磨用砥粒が供給される。研磨パッド22の表面に押しつけられた被研磨材26は、研磨用砥粒に接触して研磨される。スラリーと研磨用砥粒は研磨処理中に連続して定量ずつ供給される。
図3は従来のメカノケミカル研磨方法の説明図である。
これらは、いずれも比較例として列挙したものである。FIG3Aに示した砥粒は、複数種類の研磨剤を混合したものである。A研磨材16とB研磨材18とを混合してスラリーとともに研磨装置に供給する。B研磨材18はA研磨材16の研磨作用を促進する機能を持つ。この場合、一般には、A研磨材16とB研磨材18の比重が相違するので、FIG3Bに示すように、両者がスラリー内で分離してしまう。
図4 Fig4Aと Fig4Bは本発明の研磨用砥粒の微鏡写真で、Fig4A以下はその研磨作用の説明図である。
Fig4Aは実施例1の研磨用砥粒を示す顕微鏡写真である。一体化処理直後のもので、大小様々なサイズの研磨用砥粒が混在している。平均粒径が5〜6μmで粒径1μm程度のものも混在している。Fig4Bはその部分拡大図である。外径が約6μmの1個の研磨用砥粒を撮影したものである。予め粉砕された3種類の成分が混在し、互いに強く連結一体化されている。3種類の成分は、いずれも、本来備える固有の物理的化学的性質を保持したまま粒子状に一体化されている。実施例の研磨用砥粒は、研磨処理に使用された後も、分離しない程度の力で一体化されている。例えば、炭化ケイ素基板を4時間研磨した後に回収した研磨用砥粒の表面状態も、この写真とあまり区別できない程度であった。
図5Fig5Aは、炭化ケイ素基板を4時間研磨した前後の研磨用砥粒の成分を比較した図である。
Fig5Aの上段は、研磨処理前の研磨用砥粒の、各成分が占める割合を示す。下段は、研磨処理後の研磨用砥粒の、各成分が占める割合を示す。この図で示すように、実施例の研磨用砥粒は研磨処理前と後で、その成分比に著しい変化がない。本発明の研磨用砥粒は機械的強度が高く、研磨処理によっても破壊されないから繰り返し使用できる。即ち、炭化ケイ素基板を4時間研磨した後にスラリー中から取り出した研磨用砥粒の外観及び分析結果により、混合した材料の大部分が原形のまま存在していることが分かった。総重量にして約3%は上記の化学反応により消費されていることもわかった。
研磨前はアルミニウム(Al)とシリコン(Si)とカルシウム(Ca)の全体に占める割合がそれぞれ38.2重量%、43.8重量%、17.9重量%であった。研磨処理後は41.2重量%,42.3重量%,16.5重量%であった。アルミニウム成分以外の成分の全体に占める割合はほぼ変化していなかった。アルミニウム成分の割合が増加した原因は、サファイアを研磨した研磨屑が新たに含まれたためと考えられる。
Fig6Aに示すように、研磨処理後排出されたスラリーの温度を測定した結果、研磨処理によって、室温から摂氏30度〜40度程度まで温度上昇していたので、反応促進剤による影響を確認できた。研磨処理後排出されたスラリーの純水を除いた残渣は、炭化ケイ素または窒化ガリウム基板の削り屑である。残渣は固形成分であって、フィルタにより廃液から除去できる。反応促進剤の種類により相違があるが、大部分の廃液はpH7.5程度であった。排水は中性で処理が容易であり、環境汚染の問題もない。また、最大でもpH11.2であり、問題無く処理できる。
図7は、第1の成分を取り替えてSiCを研磨したときの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1と表示した部分は、Al2O3とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。
図8は、第2の成分を取り替えてSiCを研磨したときの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1と表示した部分は、Al2O3とMnO2とCaCO3を一体化した研磨用砥粒を、炭化ケイ素の研磨に使用した結果を示す。図8の実施例では、第1の成分と反応促進剤が同じで、第2の成分を順に取り替えた例を示す。サンプル3−1は第2の成分がTiO2、サンプル3−2は第2の成分がZnO、サンプル3−3は第2の成分がNiO、サンプル3−4は第2の成分がSnO2、サンプル3−5は第2の成分がSb2O3、サンプル3−6は第2の成分がCuO、サンプル3−7は第2の成分がCo3O4、サンプル3−8は第2の成分がCeO2、サンプル3−9は第2の成分がPr6O11、サンプル3−10は第2の成分がTi−Cr−Sbであって複酸化物である。
図9は、第2の成分を取り替えたときの窒化ガリウムGaNの研磨レートの比較図である。
サンプル1−1、3−1〜3−11の砥粒は、それぞれ図8の同じサンプル名の砥粒と同一構造のものである。窒化ガリウムを研磨した場合には、サンプル1−1がきわめて高い研磨レートを示した。また、サンプル3−9,3−10も高い研磨レートを示した。サンプル3−2,3−3−3−4,3−6も比較例8と遜色ない高い研磨レートを示した。その他のサンプルは、研磨レートが低いものの、有害な廃液を出さない点と、研磨面がきわめて高品質になる利点を有し、図8の場合と同様である。即ち、第1の成分がタルクや雲母のような新モース硬度が低いものでも、ダイヤモンド砥粒と同程度かそれ以上の研磨レートを実現できる。しかも、きわめて高品質な研磨面を得ることができるので非常に有効である。
Fig9Bは、各種の砥粒を使用してサファイアの研磨処理をした結果の比較図である。
サンプル1と表示した部分は、Al2O3とSiO2とCaCO3を一体化した複合砥粒を、サファイアの研磨に使用した結果を示す。サンプル2と表示した部分は、Al2O3とFe2O3とCaCO3を一体化した複合砥粒を、サファイアの研磨に使用した結果を示す。サンプル3と表示した部分は、Al2O3とCr2O3とCaCO3を一体化した複合砥粒を、サファイアの研磨に使用した結果を示す。
図10は、反応促進剤を取り替えたときのSiCの研磨レートと研磨処理後の温度の関係を示すデータである。
比較例1は、反応促進剤を含まない砥粒を使用した例である。サンプル11〜18は、第1の成分にAl2O3を使用し、第2の成分にMnO2を使用して、それぞれ別の反応促進剤を使用した研磨用砥粒による実験結果である。炭化ケイ素を4時間研磨した後の研磨レートとスラリーの温度を測定した結果を表示した。
ここで、本発明の研磨用砥粒による著しい研磨レート向上の理由を整理して説明する。
(1)研磨用砥粒に新モース硬度が13以下の第1の成分を含めた場合
新モース硬度が13以下の粒子は、ZrSiO4とAl2O3とZrO2 とSiCである。これらの成分は、炭化ケイ素や窒化ガリウムに対して物理的な力を加えて塑性変形層(アモルファス層)を形成する働きをする。さらに、メカノケミカル効果を生じさせる性質を持つ第2の成分で、塑性変質層を変質させた後、第1の成分が、その塑性変形層を機械的に剥ぎ取る働きをする。被研磨材に第1の成分で塑性変形層を形成すると、その部分の結晶構造が破壊されているので、第2の成分によるメカノケミカル効果を生じ易くなると考えられる。塑性変質層を変質させると、被研磨材よりも硬度の低い第1の砥粒でこれを剥ぎ取ることが可能になる。この作用は被研磨材がサフアイアの場合も同様である。
メカノケミカル研磨材は、Cr2O3、Fe2O3、TiO2、ZnO、NiO、SnO2、Sb2O3、CuO、Co3O4、CeO2、Pr6O11、MnO2である。いずれも、炭化ケイ素または窒化ガリウムと高温雰囲気下で酸化反応を起こし易い。また固相反応を起こしやすい。この化学反応が、炭化ケイ素や窒化ガリウムの被研磨面を変質させると考えられる。これは、先行技術文献で紹介されたとおりである。
反応促進剤として炭酸カルシウム(CaCO3)を使用した場合の化学反応を説明する。炭酸カルシウムは、研磨用砥粒と炭化ケイ素や窒化ガリウムの研磨面との摩擦により発生した摩擦熱で、CaOとCO2に分解する。さらに摩擦熱により摂氏数百度の熱が発生したとき、酸化カルシウムCaOが水と反応して発熱し、水酸化カルシウム(Ca(OH2))が生成される。この反応は、炭化ケイ素や窒化ガリウムと研磨用砥粒とが接触したきわめて狭い領域でのみ生じる。この反応により炭化ケイ素や窒化ガリウムが変質する。同時に、高温の強アルカリ雰囲気で、メカノケミカル効果を生じさせる研磨材の化学反応が加速されると考えられる。
この実施例は、研磨圧力を変更したことによる研磨レートの変化を確認するためのものである。この図は、保持装置24が被研磨材26を研磨定盤20の方向に押しつける研磨圧力が、1平方センチメートルあたり500グラム(g/cm2)、750g/cm2)、1000g/cm2の3種類の実験結果を示している。定盤回転数は毎分50回転、キャリア回転数は毎分100回転、スラリー濃度は15%、スラリー供給量は毎分10ミリリットルであった。
この例は、純水をスラリーに使用した場合の、各種砥粒の研磨レートと、研磨後の被研磨材の表面粗さ(Surface roughness=Ra)を示したものである。比較のため、SiO2、MnO2、CeO2、TiO2の単体と、ダイヤモンド砥粒を使用した例を含めた。ダイヤモンド砥粒以外の砥粒は、SiCの研磨に対して、研磨レートがきわめて低く実用にならない。本発明の研磨用砥粒は、純水をスラリーに使用しても、いずれもダイヤモンド砥粒よりも高い研磨レートを示している。しかも、研磨後のSiC基板の表面粗さがダイヤモンド砥粒に比べて著しく小さい。即ち、高品質の研磨面を得ることができる。
ここでは、SiO2、MnO2、CeO2、TiO2を、酸化剤であるH2O2をスラリーに含めて、SiC基板を研磨した結果を示す。図12の例と比較すれば、わずかに研磨が可能になることがわかる。しかし、この研磨レートでは、研磨時間がかかりすぎて、実用にならない。
図12と図13の結果を図14と図15にグラフで表示した。図14に示すように、本発明の研磨用砥粒は、ダイヤモンド砥粒と同等以上の研磨レートを実現できる。また、同時に、図15に示すように、ダイヤモンド砥粒による研磨面の粗さと比較して、圧倒的に高品質な研磨面が得られる。
研磨にも利用できる。そして、従来の研磨方法と比較して、大幅に研磨時間を短縮することができ、大幅に製品のコストダウンが可能となる
11 研磨用砥粒(2成分)
12 第1の成分
13 第2の成分
14 反応促進剤
15 非晶質層
16 A研磨材
18 B研磨材
17 スラリー
19 高分子材料
20 研磨定盤
22 研磨パッド
24 保持装置
26 被研磨材
28 注液器
30 矢印
32 矢印
33 矢印
Claims (7)
- 被研磨材の表面を研磨するためのものであって、
被研磨材と等しいかもしくは被研磨材よりもモース硬度が低い無機化合物である第1の成分と、
上記被研磨材を化学的に変質させる第2の成分と、
研磨時に発生する摩擦熱によって第2の成分の化学的研磨作用を促進する第3の成分とが、
メカニカルアロイング処理により、個々の成分の物質固有の性質を保持した状態で結合されて、平均粒径0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化させた研磨用砥粒であって、
上記第1の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上を占め、
上記第2の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上を占め、
上記第3の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上を占め、
上記第1の成分と第2の成分と第3の成分とは、いずれも、それぞれその一部が粒子の外表面に露出しており、
上記第1の成分は、タルク、SiO 2 、ZrSiO 4 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、SiCの中から選択された1種または2種以上の機械的研磨材であって、
上記第2の成分は、被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性研磨材を含み、その化学反応性研磨材は、Fe2O3、Cr2O3、CeO2、ZnOの中から選択された1種または2種以上の研磨材であって、
上記第3の成分は、CaCO 3 、SrCO 3 、MgCO 3 、BaCO 3 、LiCO 3 、Ca 3 (PO 4 ) 2 、NaHCO 3 、AlK(SO 4 ) 2 の群の中から選択された、純水に対して難溶性のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属である研磨用砥粒。 - 被研磨材の表面を研磨するためのものであって、
被研磨材と等しいかもしくは被研磨材よりもモース硬度が低い無機化合物である第1の成分と、
上記被研磨材を化学的に変質させる第2の成分と、
研磨時に発生する摩擦熱によって第2の成分の化学的研磨作用を促進する第3の成分とが、
メカニカルアロイング処理により、個々の成分の物質固有の性質を保持した状態で結合されて、平均粒径0.05μm以上100μm以下の粒子状に一体化させた研磨用砥粒であって、
上記第1の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上を占め、
上記第2の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上を占め、
上記第3の成分は、上記一体化された研磨用砥粒の5重量パーセント以上を占め、
上記第1の成分と第2の成分と第3の成分とは、いずれも、それぞれその一部が粒子の外表面に露出しており、
上記第1の成分は、タルク、SiO 2 、ZrSiO 4 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、SiCの中から選択された1種または2種以上の機械的研磨材であって、
上記第2の成分は、被研磨材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性研磨材を含み、その化学反応性研磨材は、研磨処理時に発生する摩擦熱により反応して被研磨材の研磨面を酸化させる酸化剤であって、
上記第3の成分は、CaCO 3 、SrCO 3 、MgCO 3 、BaCO 3 、LiCO 3 、Ca 3 (PO 4 ) 2 、NaHCO 3 、AlK(SO 4 ) 2 の群の中から選択された、純水に対して難溶性のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属である研磨用砥粒。 - 上記酸化剤はMnO2である請求項2に記載の研磨用砥粒。
- 複数種類の無機化合物成分の原料を混合し、乾式状態でメカニカルアロイング処理を行い、各無機化合物成分を、相互に非晶質層を介して一体に結合させて粒子状にする請求項1乃至3のいずかに記載の研磨用砥粒の製造方法。
- 純水中に、請求項1乃至3のいずかに記載の研磨用砥粒を分散させたスラリーを使用して、被研磨材を研磨する研磨方法。
- 基材に、請求項1乃至3のいずかに記載の研磨用砥粒を分散させて固定した研磨部材。
- 合成繊維、ガラス繊維、天然繊維、合成樹脂、天然樹脂のいずれかにより構成され、請求項1乃至3のいずかに記載の研磨用砥粒を表面に分散させて固定した研磨パッドと、被研磨材を研磨パッド表面に向かって弾力を用いて押しつける保持装置と、研磨面に純水を供給する注液器とを備え、上記保持装置による弾力は、上記研磨用砥粒と上記被研磨材との間に、上記反応促進剤による化学反応が生じる温度以上に摩擦熱を発生させるレベルに設定される研磨装置。
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