JP2005349542A - 砥石およびそれの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 結合材から遊離した砥粒と結合材に固定された砥粒から構成された砥石により、優れた加工面品位を損なうことなく、従来の研磨具よりさらに高研磨能率かつ長寿命かが実現できる砥石およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 研磨液に溶解すると共に結合材に固定された砥粒12と結合材から遊離した砥粒11の両方によって加工面を構成している。
【選択図】 図1
【解決手段】 研磨液に溶解すると共に結合材に固定された砥粒12と結合材から遊離した砥粒11の両方によって加工面を構成している。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ガラス、セラミックス、シリコン等の硬脆材料を仕上げ加工するための砥石及びその製造方法に関し、特に、優れた加工面品位を損なうことなく、高加工能率を実現し、耐用寿命が長い砥石及び砥石の製造方法に関する。
シリコンウェーハやガラスディスクをはじめ、各種硬脆材料や金属材料からなる部品の最終仕上げ工程を対象に、遊離砥粒を用いた研磨加工仕上げ相当の優れた仕上げ面粗さを得ることのできる固定砥粒加工工具の開発が各方面で活発に行われている。
しかし、砥石といった固定砥粒加工方式にはさまざまな欠点がある。一番代表的な例として、研磨加工の進行に伴い、目詰まり(研磨くずが砥石の加工面にとどまり切れ味の低下)や目つぶれ(切れ刃の鈍化)が生じるため、研磨特性が維持できなくなる。従って通常は機械的、あるいは電気的な手法でドレッシングが不可欠である。
上記問題を解決するものとして、微細な砥粒を造粒し、凝集した状態の粉末を砥粒として使用する固定砥粒加工工具があり、特開2000−190228号公報(以下、特許文献1)、特開2000−237962号公報(以下、特許文献2)によって凝集砥粒を基材上にバインダ樹脂で固定化した研磨具に関する発明が提案されている。
さらに、特開2003−105324号公報(以下、特許文献3)では、微細な一次粒子同士の結合状態に注目し、一次粒子同士の結合力(凝集力)と加工能率との関係を解明し、加工能率を向上させるには、一次粒子同士の結合力の適正化が有効であることが開示されている。
また、砥粒を固定するバインダ(結合材)に注目した発明として、特開2002−187072号公報(以下、特許文献4)では、結合材として、寒天を用いている。寒天は熱水に溶解し、40℃で固化するといった可逆的な性質を利用して、砥粒の保持力を制御している。
特開2000−190228号公報
特開2000−237962号公報
特開2003−105324号公報
特開2002−187072号公報
しかしながら、特許文献3に記載されている発明では、加工面品位を損なうことなく、加工能率の向上には限界がある。また、特許文献1,2に記載されている発明では、目詰まりや目つぶれなどは回避できたが、一次粒子同士の結合力(凝集力)があまり弱すぎると、凝集砥粒(二次粒子)自身が破壊され、加工能率が極めて低く、加工物の加工面を完全に除去することができない。
その反面、一次粒子同士の結合力(凝集力)は高くなればなるほど、凝集砥粒本来の特徴がなくなり、通常の大粒径単粒子に近づき、加工能率こそ向上されるが、スクラッチなどが発生しやすくなり、加工面品位が大きく劣化してしまう。また、特許文献1〜3に記載されている発明である砥粒の特徴から、砥粒自身が加工進行に伴い、どんどん磨耗してしまうことが不可避であるため、加工能率の経時低下も一つの問題点である。
また、特許文献4に記載されている発明では、あくまでも結合材の特性に注目したもので、砥粒自身の磨耗などを一切考慮したものではない。また、結合材による砥粒の保持力を制御できていても、砥粒の目こぼれ(砥粒が丸ごと砥石の表面から脱落)などの問題は解決できない。従って、従来の固定砥粒加工における大きな問題である加工面品位の確保はなかなか困難となる。
これらの課題に対し、様々に研究を重ね、分析を行った結果、加工対象物にもよるが、高加工面品位を維持しながら、高加工能率を実現し、そして、その加工能率を長く維持させ、長時間下降できる特性を得るには、それぞれケミカル作用の強い砥粒(遊離砥粒)と機械的除去作用の強い砥粒(固定砥粒)、2種類以上の砥粒の働きを併用することは極めて効果的であることが判明した。
すなわち、2種類の砥粒を結合材に分散し、固定された砥石において、砥石の加工面が加工物の表面と摺動して加工物の加工面を研磨する時に、研磨液に結合材が溶解し、そして少なくとも砥粒の中で1種類の砥粒が結合材の溶解と共に拘束状態から開放され、少なくとも1種類の砥粒は結合材の拘束から開放されず、加工面は同時に固定砥粒と遊離砥粒両方によって加工されることで、高加工面品位を損なうことなく、加工能率の更なる向上を達成できたと同時に、長時間の加工も実現させ、研磨具の長寿命化が実現できた。
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、ケミカル作用の強い遊離砥粒と機械的除去作用の固定砥粒、2種類以上の砥粒の共同研磨特性に着目して、ナノメータオーダの優れた加工面品位を損なうことなく、従来の研磨具よりさらに高研磨能率かつ長寿命化が実現でき、ドレッシング不要な研磨砥石と安価でかつ簡単に製造できる砥石および砥石の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の砥石は、2種類の砥粒が結合材に分散固定された砥石であって、研磨液に溶解すると共に結合材に少なくとも1種類の砥粒は固定され、少なくとも1種類の砥粒が遊離した状態であり、砥石の加工面が同時に固定された砥粒と、遊離した砥粒両方で構成されていることを特徴とする。
これにより、固定された砥粒と遊離した砥粒との二つの働きで従来技術では困難とされた高加工面品位を損なうことなく、加工能率の更なる向上を達成させるのに極めて効果的であると同時に、長時間の加工も実現させ、研磨具の長寿命化を実現することができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の砥石であって、砥石の加工面が加工物の表面と摺動して加工物の加工面を研磨する時に、結合材が研磨液に溶解すると共に、固定された砥粒が加工進行に伴い、平坦化磨耗することを特徴とする。
これにより、固定された砥粒が平坦化磨耗することにより、常に新しい切れ刃が出て来るため、通常の砥石における目つまりや目つぶれなどによる加工面品位の劣化を抑制することができる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の砥石であって、砥石の加工面が加工物の表面と摺動して加工物の加工面を研磨摺るときに、結合材が研磨液に溶解すると共に、固定された砥粒が加工進行に伴い、平坦化磨耗する速度は結合材の研磨液に溶解する速度とほぼ等しいことを特徴とする。
これにより、固定された砥粒の磨耗速度が結合材の溶解速度にほぼ等しくなるように制御することで、加工物の加工面に対して、固定された砥粒とあわせて、常に遊離した砥粒と固定された砥粒による加工が実現でき、高加工面品位を損なうことなく、加工能率の更なる向上を達成させるのに極めて効果的である。また、固定された砥粒の磨耗速度が結合材の溶解速度に等しいことで、固定された砥粒の加工中における脱粒は完全に防ぐことができ、より確実に加工による加工ダメージ(スクラッチ)が抑制でき、ナノオーダの加工品質を確保できる。
請求項4記載の発明は、請求項2記載の砥石であって、砥石の加工面が加工物の表面と摺動して加工物の加工面を研磨する時に、結合材が研磨液に溶解すると共に、遊離した砥粒は加工物に対してケミカル作用が強く、固定された砥粒は加工進行に伴い、平坦化磨耗し、加工物に対して機械的除去作用の強いことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の砥石であって、固定された砥粒は、内部に結合材が含まれていない凝集体もしくは多数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子を一次粒子同士の結合点にネックが形成される温度で加熱処理して得られ、前記多数の一次粒子は、部分的に、かつ、その間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体であることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の砥石であって、多数の一次粒子が部分的に、かつ、その間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体の圧縮破壊強度が20MPaから160MPaまでの範囲内であることを特徴とする。
これにより、確実に加工面に対して、遊離した砥粒と固定された砥粒による加工を同時に行うことができる。圧縮破壊強度が20MPaよりも小さい場合は、砥粒自身が加工中につぶされ、加工物の加工面を完全に除去することができない。一方、圧縮破壊強度が160MPaよりも大きい場合、機械的な除去作用が強すぎて、砥粒の磨耗が進まず、加工による新たなスクラッチなどのダメージをもたらしてしまう。
しかし、圧縮破壊強度が20〜160MPaの範囲に入ると固定された砥粒は、加工進行に伴い、除々に磨耗していくため、結合材の溶解速度と等しく制御することが容易である。従って、常に加工物の加工面に対し、ケミカル作用と機械的作用の強い、あるいは遊離した砥粒と固定された砥粒の2種類の砥粒を常に同時に供給することができる。
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の砥石であって、前記遊離した砥粒は、酸化セリウム、二酸化ケイ素、酸化鉄から構成され、前記多数の一次粒子は、部分的に、かつ、その間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体である酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を用いることを特徴とする。
これにより、硬脆材料であるガラス、シリコンなどの加工物に対し、ケミカル作用の強い遊離した砥粒と機械的除去作用の強い固定された砥粒を供給することによって、ケミカル作用の強い遊離した砥粒は加工物表面と化学作用を起こし、柔らかい化学反応層、あるいは水を研磨液として使った場合、柔らかい水和層を生じさせ、機械的除去作用の強い固定された砥粒により、メカニカル的に除去することができる。この手法では、ケミカル作用の強い遊離した砥粒と機械的除去作用の働きにより、化学反応層あるいは水和層の生成と除去が繰り返されるため、従来技術では困難とされた高加工品位を損なうことなく、加工能率の更なる向上を達成させるのに極めて効果的であると同時に、長時間の加工も実現させ、研磨具の長寿命化を実現することができる。
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の砥石であって、前記遊離した砥粒の平均粒径は0.01〜1.0μmであり、前記固定された砥粒の平均粒径は20〜200μmであることを特徴とする。
これにより、固定された砥粒は、大粒径であるため、より確実に結合材に固定することができ、小粒径の遊離した砥粒は、加工中により確実に遊離砥粒として放出することができる。
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の砥石であって、研磨液に溶解する結合材は、にかわ系接着剤、PVAであることを特徴とする。
これにより、より確実に研磨液である水に溶解することができ、加工中により確実に遊離砥粒として放出することができる。
請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の砥石であって、砥石における2種類の砥粒の含有率が10体積%から90体積%であることを特徴とする。
これにより、より確実に加工面に対し、遊離した砥粒と固定された砥粒による同時加工が実現できる。添加率が10体積%未満であると添加の効果が十分に得られなく、90体積%を超えると研磨具の結合材量が少なすぎて、砥粒保持強度が著しく低下してしまう。
請求項11記載の発明は、請求項1から10のいずれか1項に記載の砥石であって、砥石は、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコン酸化膜などの硬脆材料の基板、ウェーハ、光ファイバ端面の研磨加工を対象としたことを特徴とする。
請求項12記載の砥石の製造方法は、にかわ系接着剤に温水を加え、さらに60℃以上に温め、請求項1から10のいずれか1項に記載の2種類の砥粒を添加混合して分散させる工程と、混合分散したものを型に入れ、加圧しながら冷却する工程と、水分を飛ばし、乾燥させる工程を有することを特徴とする。
以上の説明から、本発明は加工物の加工面に対し、結合材から遊離した砥粒と結合材に固定された砥粒によって、従来技術では困難とされた高加工面品位を損なうことなく、加工能率のさらなる向上を達成させるのに極めて効果的であると同時に、長時間の加工も実現させ、研磨具の長寿命化が実現できる。
次に添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、定義として、ケミカル作用というのは、ガラスを例とした場合、研磨工程において、砥粒、研磨具(例えば、ポリシャー)、研磨液とガラスと化学反応が起こって、表面に水和層が生じられると一般的に言われている。一方、機械的除去作用というのは、砥石の働きを例として、説明すると、砥粒は無数の切れ刃として、加工物の表面に切り込んで、引っ掻けして加工物の表面を機械的に除去することを指す。
まず、定義として、ケミカル作用というのは、ガラスを例とした場合、研磨工程において、砥粒、研磨具(例えば、ポリシャー)、研磨液とガラスと化学反応が起こって、表面に水和層が生じられると一般的に言われている。一方、機械的除去作用というのは、砥石の働きを例として、説明すると、砥粒は無数の切れ刃として、加工物の表面に切り込んで、引っ掻けして加工物の表面を機械的に除去することを指す。
砥粒としては、加工物にもよるが、金属酸化物は古くから用いられている。例えばAl2O3,CeO2,ZrO2,SiO2,Fe2O2,TiO2,MnOなどがある。ガラスや石英やSiの酸化膜などのガラス質のワークに対して、酸化セリウムは最も化学的な作用が顕著であり、広く使用されている。
また、機械的除去作用の強い砥粒としては、加工対象物にもよるが、平均粒径が5μm以下の一次粒子の微細粉末が凝集して、平均粒径10〜300μm程度のもの、さらに好ましくは平均粒径20〜200μm程度の二次粒子径を備えたものが適する。材料としては、上記と同様に一般には硬質無機材料であって、シリカ,ダイヤモンド,CBN,アルミナ,炭化ケイ素,酸化ジルコニウム等である。凝集体はゾルゲル法、スプレードライヤー等の手段でつくることができる。
(実施例1)
まずは、50〜60mmからなる超微細ZrO2粉末(超微細粒子)を水で泥しょう化し、スプレードライヤーで噴霧させて、所望のサイズを有する、例えば平均粒径D50で60μmの2次粒子(顆粒)を得る(一般的に、1μm〜300μmまでのサイズが得られる。粒度分布がシャープでないときに、分級プロセスを加える)。平均粒径は、堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920を用いて、乾式で測定を行った。平均粒径の値は、頻度積算50%のところの粒径を用いた(通常、メジアン径とも言う)。
まずは、50〜60mmからなる超微細ZrO2粉末(超微細粒子)を水で泥しょう化し、スプレードライヤーで噴霧させて、所望のサイズを有する、例えば平均粒径D50で60μmの2次粒子(顆粒)を得る(一般的に、1μm〜300μmまでのサイズが得られる。粒度分布がシャープでないときに、分級プロセスを加える)。平均粒径は、堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920を用いて、乾式で測定を行った。平均粒径の値は、頻度積算50%のところの粒径を用いた(通常、メジアン径とも言う)。
しかし、通常スプレードライヤーで作成した顆粒の1次粒子同士の結合力は弱すぎる場合もある。従って、必要に応じて、ZrO2顆粒を電気炉に入れ、焼成行った。また、焼成時間を短縮するために、あるいは硬さをさらに高めるために、焼成時に、加圧した状態で行う場合もある。
一次粒子が加熱処理により成長するが、当該一次粒子がその構成物質の物質移動により成長するのみならず、粒子同士の結合箇所は、粒子の構成物質の物質移動により太くなり、不連続点のないなだらかな曲面となり、1葉双曲面状(鼓状)にくびれた、いわゆる「ネック」状となる。この加熱処理時の物質移動による一次粒子の成長及び「ネック」形成については、株式会社産業技術センター発行「セラミック材料技術集成」(昭和54年4月10日初版第1刷発行)の「23 物質移動の機構と焼結のモデル」に詳細に記載されている。
この焼成工程においては、加熱温度および保持時間を制御することで、一次粒子同士の結合点にネックが形成させ、その多数の一次粒子が部分的に、かつ、その間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体に形成した。
焼成で得た二次粒子の中の一次粒子同士の結合力を評価するために、1個1個の二次粒子をピックアップし、圧縮破壊試験を行った。この圧縮破壊強度真剣は、平松、岡、木山による報告(日本鉱業会誌,81,1024(1965))に基づく島津製作所(株)製微小圧縮試験機MCTM500PCを用いて行った。試験条件として、試験荷重を10〜1000mN、負荷速度は0.446mN/secとし、平面圧子を用いて、被測定器械的除去作用の強い第1のと粒に対して圧縮を行い、と粒が圧縮破壊されたときの強度を測定する。このようにして、圧縮破壊強度が67MPaのものを機械的除去作用の強い第2の砥粒として採用した。
上記で作製された圧縮破壊強度が67MPaのZrO2とケミカル作用の強い砥粒(A)として採用されたCeO2(昭和電工製SHOROX,平均粒径D50は0.5〜1.0μm程度)を混合して後、あらかじめ60℃に熱した結合材であるにかわ系接着剤(新田ゼラチン株式会社製)に添加し、さらに純水を加え、混合液の粘度を1200cps程度に調整した。この実施例において、ZrO2,CeO2とにかわ接着剤の固形部(水を除いた部分)の割合は3:4:2である。
にかわ接着剤は、加温により溶液状態(ゾル)、冷却するとゼリー状態(ゲル)となる。主にタンパク質コラーゲンの加水分解物であるため、乾燥凝固したあとに、水分の添加により再び水に溶解する特性がある。古くから接着剤として使われている。例として、書記材料の墨などは主にこの独特な特性として利用されている。
また、にかわ系接着剤以外に、寒天、あるいは重合度の低いPVAなどを用いても同じ効果が得られる。さらに、攪拌機を用いて20分程度で60℃を維持しながら混合攪拌して混合物を作製した。混合攪拌した混合物を円形(φ650mm)の型に注ぎ、3MPaで加圧しながら10℃までに冷却させた。その後、さらに冷風で水を蒸発させ乾燥させた。その後、型から取りだした。
さらに、空気中あるいは加工中に余分な水の吸収を抑制するために、作製した砥石の側面にウレタン樹脂膜を塗布した。
このように作製した研磨砥石を図2で示した加工装置の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm,加工圧力25kPa)、30分間で加工マーク(スクラッチ,加工傷など)フリー、かつ30nmRy以下の鏡面を維持できたと同時に、0.6〜0.8μm/minという高い加工能率も維持できた(面粗さの評価はテーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った)。
このように作製した研磨砥石を図2で示した加工装置の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm,加工圧力25kPa)、30分間で加工マーク(スクラッチ,加工傷など)フリー、かつ30nmRy以下の鏡面を維持できたと同時に、0.6〜0.8μm/minという高い加工能率も維持できた(面粗さの評価はテーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った)。
また、引き続きガラスディスクを10枚加工しても、スクラッチの発生はみられなかっただけでなく、加工能率の劣化も認められなかった。また、5minごとに研磨砥石の加工面における砥粒(B)ZrO2の磨耗状態を測定した。測定は光学顕微鏡により行われ、画像の2値化処理により砥粒の磨耗進行状態を評価した。砥粒の磨耗は0.5〜0.6μm/min程度であった。それに対して、加工面の表面観察から、にかわの溶解速度もほぼ同程度であることがわかった。
(比較例1)
上記実施例1と同じように、同じ2種類の砥粒を用いた。しかし、今回結合材は、にかわ系結合材ではなく、フェノール樹脂を用いた。このように作製した研磨砥石を同じく研磨装置(図2に示す)の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学BK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm,加工圧力25kPa)、2分間で加工した結果、加工能率はやや低下して0.4μm/minが得られ、加工マーク(スクラッチ,加工傷など)フリー、かつ30nmRy以下の鏡面を維持できたが(面粗さの評価はテーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った。)、さらに10分間で加工したところ、加工能率はほぼゼロに近づき加工不能となり、そして、BK7の加工面には大きなスクラッチの発生が確認された。
上記実施例1と同じように、同じ2種類の砥粒を用いた。しかし、今回結合材は、にかわ系結合材ではなく、フェノール樹脂を用いた。このように作製した研磨砥石を同じく研磨装置(図2に示す)の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学BK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm,加工圧力25kPa)、2分間で加工した結果、加工能率はやや低下して0.4μm/minが得られ、加工マーク(スクラッチ,加工傷など)フリー、かつ30nmRy以下の鏡面を維持できたが(面粗さの評価はテーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った。)、さらに10分間で加工したところ、加工能率はほぼゼロに近づき加工不能となり、そして、BK7の加工面には大きなスクラッチの発生が確認された。
これは、上記実施例1と違って、結合材が研磨液に溶解しないため、加工初期において、砥粒(B)の突き出し量があって、砥粒(B)の磨耗とともに、研磨くずがスムーズに排出されたが、砥粒(B)の磨耗に伴い、すなわち突き出し量がなくなったときに、ワークと結合材との接触(フェノール)が発生し、そして研磨くずなどの介在で、研磨抵抗が高くなったと同時に、加工面に新たなスクラッチを与えてしまった。
(比較例2)
上記実施例1と同じように、同じ2種類の砥粒を用いた。しかし、機械的除去作用の強いZrO2は上記実施例1で用いた砥粒ではなく、通常の単粒子大粒径のZrO2(日本電工(株)製)を使用した(圧縮破壊強度は325MPa)。結合材は上記実施例1と同じくにかわ系結合材である。このように作製した研磨砥石を同じく研磨装置(図2に示す)の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学BK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm,加工圧力25kPa)、2分間で加工した結果、加工能率は、非常に高く、2.4μm/minが得られが、加工面に新たな加工マーク(スクラッチ)が無数に発生し、加工面粗さも2.8μmRy以上に著しく劣化した。
上記実施例1と同じように、同じ2種類の砥粒を用いた。しかし、機械的除去作用の強いZrO2は上記実施例1で用いた砥粒ではなく、通常の単粒子大粒径のZrO2(日本電工(株)製)を使用した(圧縮破壊強度は325MPa)。結合材は上記実施例1と同じくにかわ系結合材である。このように作製した研磨砥石を同じく研磨装置(図2に示す)の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学BK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm,加工圧力25kPa)、2分間で加工した結果、加工能率は、非常に高く、2.4μm/minが得られが、加工面に新たな加工マーク(スクラッチ)が無数に発生し、加工面粗さも2.8μmRy以上に著しく劣化した。
これは、機械的除去作用の強い砥粒は通常の単粒子を用いたため、上記実施例1で述べたような多数の一次微細研磨材粒子が部分的に、かつ、その間に空隙が形成された多孔質体のように、加工進行に伴い除々に磨耗することができない。通常の固定砥粒加工工具のように加工能率こそ高いが、高加工面品位の実現は不可能であった。また、砥粒自身が硬いため、上記述べた通り、結合材の溶解と比べ、磨耗速度が遅いため、結局のところ脱粒なども多数発生したため、より一層スクラッチの発生が促進した。
(実施例2)
上記実施例1と同じ製法で研磨砥石を作製した。しかし、この実施例の場合、型の底面にあらかじめ凸溝パターンを用意した。このように砥石を固形化した後に、型から取りだし、表面に凹溝パターンを具備した。図4に示すように、作製した研磨砥石を同じく研磨装置(図2に示す)の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学BK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm、加工圧力25kPa)、上記実施例1と同じ結果が得られた。そして、加工面には通常ビットと呼ばれる細かい点傷の発生はさらに抑えられた傾向が見られた。
上記実施例1と同じ製法で研磨砥石を作製した。しかし、この実施例の場合、型の底面にあらかじめ凸溝パターンを用意した。このように砥石を固形化した後に、型から取りだし、表面に凹溝パターンを具備した。図4に示すように、作製した研磨砥石を同じく研磨装置(図2に示す)の定盤に取り付け、純水を研磨液として20ml/minで供給し、面粗さ30nmRy前後の鏡面に調整したφ150mmのBK7光学BK7光学ガラスディスクを加工した結果(加工条件:定盤回転数60rpm、加工圧力25kPa)、上記実施例1と同じ結果が得られた。そして、加工面には通常ビットと呼ばれる細かい点傷の発生はさらに抑えられた傾向が見られた。
これは、砥石の加工面がパターン化されたことにより、研磨液である水の供給がより確実にスムーズに行われ、そして、切りくずの排出をより促進されたことにより改善された結果と考える。
なお、本発明は一次粒子である砥粒の種類、造粒凝集方法、添加物の種類、研磨具結造材の種類、加工工具の形状、加工対象物において、上記の実施例に限定されるものではない。
1 砥石
2 加工物
3 定盤
11 ケミカル作用の強い砥粒
12 機械的除去作用の強い砥粒
13 にかわ系結合材
14 樹脂
15 溝
2 加工物
3 定盤
11 ケミカル作用の強い砥粒
12 機械的除去作用の強い砥粒
13 にかわ系結合材
14 樹脂
15 溝
Claims (12)
- 2種類の砥粒が結合材に分散固定された砥石であって、
前記砥石の加工面が加工物の表面と摺動して加工物の加工面を研磨する時に、前記結合材が研磨液に溶解すると共に、少なくとも1種類の砥粒は固定され、少なくとも1種類の砥粒が遊離した状態であり、前記砥石の加工面が同時に固定された砥粒と、遊離した砥粒両方で構成されていることを特徴とする砥石。 - 前記砥石の加工面が加工物の表面と摺動して前記加工物の加工面を研磨する時に、前記結合材が前記研磨液に溶解すると共に、前記固定された砥粒が加工進行に伴い、平坦化磨耗することを特徴とする請求項1記載の砥石。
- 前記砥石の加工面が前記加工物の表面と摺動して前記加工物の加工面を研磨するときに、前記結合材が前記研磨液に溶解すると共に、前記固定された砥粒が加工進行に伴い、平坦化磨耗する速度は前記結合材の前記研磨液に溶解する速度とほぼ等しいことを特徴とする請求項2記載の砥石。
- 前記砥石の加工面が前記加工物の表面と摺動して前記加工物の加工面を研磨する時に、前記結合材が前記研磨液に溶解すると共に、前記遊離した砥粒は前記加工物に対してケミカル作用が強く、前記固定された砥粒は加工進行に伴い、平坦化磨耗し、前記加工物に対して機械的除去作用の強いことを特徴とする請求項2記載の砥石。
- 前記固定された砥粒は、内部に前記結合材が含まれていない凝集体もしくは多数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子を一次粒子同士の結合点にネックが形成される温度で加熱処理して得られ、前記多数の一次粒子は、部分的に、かつ、その間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の砥石。
- 前記多数の一次粒子が部分的に、かつ、その間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体の圧縮破壊強度が20MPaから160MPaまでの範囲内であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の砥石。
- 前記遊離した砥粒は、酸化セリウム、二酸化ケイ素、酸化鉄から構成され、前記多数の一次粒子は、部分的に、かつその間に空隙が形成されている状態で結合している粒状の多孔質体である酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を用いることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の砥石。
- 前記遊離した砥粒の平均粒径は0.01〜1.0μmであり、前記固定された砥粒の平均粒径は20〜200μmであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の砥石。
- 前記研磨液に溶解する結合材は、にかわ系接着剤、PVAであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の砥石。
- 前記砥石における2種類の砥粒の含有率が10体積%から90体積%であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の砥石。
- 前記砥石は、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコン酸化膜などの硬脆材料の基板、ウェーハ、光ファイバ端面の研磨加工を対象としたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の砥石。
- にかわ系接着剤に温水を加え、さらに60℃以上に温め、
請求項1から10のいずれか1項に記載の2種類の砥粒を添加混合して分散させる工程と、
混合分散したものを型に入れ、加圧しながら冷却する工程と、
水分を飛ばし、乾燥させる工程を有することを特徴とする砥石の製造方法。
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JP2004174697A JP2005349542A (ja) | 2004-06-11 | 2004-06-11 | 砥石およびそれの製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2008221353A (ja) * | 2007-03-09 | 2008-09-25 | Ricoh Co Ltd | 研磨具及びその製造方法 |
JP2011230220A (ja) * | 2010-04-27 | 2011-11-17 | Asahi Glass Co Ltd | ガラス基板の研磨方法、及び該ガラス基板の研磨方法を用いたガラス基板の製造方法 |
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CN109894930A (zh) * | 2019-03-22 | 2019-06-18 | 湖南科技大学 | 一种缓释型柔性磨具及抛光方法 |
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2004
- 2004-06-11 JP JP2004174697A patent/JP2005349542A/ja not_active Withdrawn
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