JP2004034199A - 研磨フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】研磨粒子と造粒粒子とを併用した研磨層とすることで、高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい研磨フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に、研磨層を有する研磨フィルムにおいて、該研磨層がバインダと研磨粒子と造粒粒子とからなり、該造粒粒子は造粒バインダを実質的に含まず、かつ、平均粒径が1〜30μmであり、かつまた、1〜500nmの一次粒子を造粒してなることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】基材フィルムの一方の面に、研磨層を有する研磨フィルムにおいて、該研磨層がバインダと研磨粒子と造粒粒子とからなり、該造粒粒子は造粒バインダを実質的に含まず、かつ、平均粒径が1〜30μmであり、かつまた、1〜500nmの一次粒子を造粒してなることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品、光学部品などの表面及び/又は端面を鏡面研磨するための研磨フィルムに関し、さらに詳しくは、光ファイバコネクタの端面を、スクラッチ傷が発生しにくいように研磨できる研磨フィルムに関するものである。
【0002】
【従来技術】
(技術の概要)半導体の集積回路形成時の平坦化、光ファイバなど精密部品、光学レンズ、磁気ヘッド、磁気及び光学ディスク、半導体ウェハなどの、表面や端面の仕上げ研磨は、ミクロン又は、サブミクロン単位の精密な表面精度をもつこと要求されている。該精密仕上げ研磨には、基材フィルムに硬度の高い研磨粒子を含む研磨層を設け、かつ、該研磨層の表面粗さが極めて小さい研磨フィルムが使用されていた。研磨工程が仕上げ段階に近づくほど、小さい粒子径の研磨粒子を用いるので、次第に細かい粒子径を有する複数の研磨フィルムを用いねばならない。また、微細な研磨粒子を用いた表面はより平滑となって、研磨屑による目詰まりが生じたり、高い研磨レートが得られない。しかし、大きな粒子径の研磨粒子ほど研磨レートは高いが、被研磨物へ傷をつけやすいという相反する問題がある。研磨レートと、傷のない良好な研磨を両立させるために、種々の提案がされている。
【0003】
(先行技術)従来、研磨屑を排出する溝を印刷パターンで設けた研磨層とする方法が、特表2001−515801号公報で知られている。しかしながら、目詰まりによる研磨レートの低下は防げるが、溝を形成するための工程が必要になるという問題点がある。
また、複数の研磨粒子を混合して、研磨層に凹凸をつける方法が、特表2001−516652号公報で知られている。しかしながら、研磨層の目詰まりによる研磨レートの低下は防げるが、複数の研磨粒子を使用するので、その調整が難しく、研磨レートが安定しないという欠点がある。
さらにまた、硬度の異なる研磨層を2層とする方法が、特開2001−71273号公報で、知られている。しかしながら、2層の研磨層を形成するためにコスト高になり、また、大きい粒径の研磨粒子では傷が発生しやすいという問題点がある。
さらにまた、研磨粒子をバインダ樹脂で造粒粒子とした研磨層を用いる方法が、特表平8−512074号公報、特表平9−509106号公報に開示されている。しかしながら、造粒粒子中の研磨粒子はバインダ樹脂で覆われているために、研磨作業中に研磨粒子が容易に遊離してこず、目的とする傷のない精度の高い鏡面研磨を達成することという欠点がある。
さらにまた、研磨粒子をバインダ樹脂を用いずに造粒粒子とした研磨層を用いる方法が、特開2000−237962号公報で開示されている。しかしながら、造粒粒子中から研磨粒子が容易に遊離するが、該研磨粒子は微細過ぎて、かつ、十分な硬度を有していないので、研磨レートが十分に高くならないという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、研磨粒子と造粒粒子とを併用した研磨層とすることで、高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい研磨フィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる研磨フィルムは、基材フィルムの一方の面に、研磨層を有する研磨フィルムにおいて、該研磨層がバインダと研磨粒子と造粒粒子とからなり、該造粒粒子は造粒バインダを実質的に含まず、かつ、平均粒径が1〜30μmであり、かつまた、1〜500nmの一次粒子を造粒してなるようにしたものである。本発明によれば、適度な粒径の研磨粒子と造粒粒子とを併用した研磨層とすることで、研磨層の表面に大きさの異なる凹凸を形成し、高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい研磨フィルムが提供される。
請求項2の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の平均粒径が、0.1〜10μmであるようにしたものである。本発明によれば、被研磨物へスクラッチ傷を発生しにくい研磨フィルムが提供される。
請求項3の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の硬度が、造粒粒子を形成している一次粒子の硬度より高いように、請求項4の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の含有量が、造粒粒子の含有量より多いようにしたものである。本発明によれば、主に研磨に寄与する研磨粒子の硬度を高く、また、含有量を多くすることで、高い研磨レートを維持できる研磨フィルムが提供される。
請求項5の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の平均粒径が、造粒粒子の平均粒径より小さいようにしたものである。本発明によれば、請求項6の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子が、少なくともダイヤモンド、シリコンカーバイト、アルミナであり、また、上記造粒粒子を形成している一次粒子が少なくともシリカ、ジルコニア、セリアであるようにしたものである。本発明によれば、造粒粒子の頭部が被研磨物の表面へ接触しやすく、造粒粒子の粒子が崩壊して、遊離砥粒としての効果が発現して、スラリー研磨と同様な高い研磨レートと被研磨体へスクラッチ傷が発生させにくい研磨フィルムが提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施態様について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す研磨フィルムの断面図である。
図2は、本発明の造粒粒子の詳細構造を模式的に説明する説明図である。
(層構成)研磨フィルム1は、基材フィルム11の一方の面へ、必要に応じてプライマ層13を介して、研磨層15が順次積層されている。該研磨層15は、研磨粒子19と造粒粒子21とバインダ17とからなっている。研磨粒子19は公知の研磨フィルムに用いる研磨粒子と同様なものである。造粒粒子21は意図的に造粒されたもので、その詳細構造を拡大して示すのが、図2に図示したように、造粒された造粒粒子21は、複数の1次粒子23からなっている。
【0007】
(発明のポイント)本発明の研磨フィルムは、被研磨物へ傷を発生させない良好な研磨性能で、かつ、研磨レートを低下させないために、研磨層の研磨剤として研磨粒子と造粒粒子とを併用することを、見出して本発明に至った。研磨粒子と造粒粒子のいずれかのみでは、両性能は両立しない。
研磨粒子及び造粒粒子がともにある程度の粒径があり、研磨層の表面に大小の凹凸を形成するために、高い研磨レートを維持することができる。
さらにまた、造粒粒子にはバインダが含まれていないので、粒径が大きい造粒粒子は研磨が進行すると、被研磨物へ接触していた粒子が容易に遊離して、研磨フィルムと被研磨物の間へ保持されて、あたかも、スラリーの研磨粒子のように作用する。そして、研磨層中の研磨粒子は、研磨作業中にわたって、従来の研磨フィルム同様の研磨機能を発揮している。もちろん、研磨の主体は研磨粒子によるものであり、造粒粒子から遊離した粒子は微細であり、該微細な粒子によって、被研磨物の研磨後の、研磨面の状態が著しく改善される。
このように、研磨粒子と、上記で説明した幾つかの造粒粒子の機能とが、相乗して高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい。特に、光ファイバ端部を研磨した場合には、スクラッチ傷の多少の指標となる反射減衰量は、実施例で後述するように著しく高めることができる。
【0008】
次に各層の材料、及びその形成方法について説明する。
(基材フィルム)基材フィルム11は、研磨時の潤滑剤や機械的な強度と、研磨剤の塗工・乾燥に耐える強度・耐熱性、寸法変化が少ないフィルムから適宜に選択できる。例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリイミド・ポリアミドイミド・ポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、ポリアリレ−ト・ポリスルホン・ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエ−テル・ポリフェニレンスルフィド(PPS)・ポリエーテルケトン、ポリエーテル‐エーテルケトン、ポリエーテルサルファイトなどのエンジニアリング樹脂、ポリカ−ボネ−ト、ポリスチレン・高衝撃ポリスチレン・AS樹脂・ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セロファン・セルローストリアセテート・セルロースダイアセテート・ニトロセルロースなどのセルロース系フィルム、などがある。
【0009】
該基材フィルムは、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、又は、混合体(アロイでを含む)若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材フィルムは、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。
【0010】
特に、研磨層の塗工適性、後加工適性及び研磨機における取扱いに優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。該プラスチックフィルムの厚さは、被研磨材の材質、大きさ、厚さなどから適宜選択すれば良いが、その厚さは、例えば、12〜250μmである。基材フィルム11は、作業工程での粉塵の付着を防止するために、帯電防止剤を加えても良い。帯電防止剤は、公知の非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤などやポリアミド誘導体やアクリル酸誘導体などを、適宜に選択して加える。
【0011】
(プライマ層)次に、基材フィルム11の一方の面へ、研磨層15を塗布する。該研磨層15を塗布する側には、両者の接着性を向上させるためにプライマー層13、又はコロナ放電処理、オゾンガス処理などの易接着処理を施すことが好ましい。特に、プライマー層13は、研磨層15との接着性を向上させ、バインダ17と研磨粒子19の脱落を防止して安定した研磨作業ができ、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、エポキシ樹脂などが適用できる。
【0012】
これらの樹脂を、適宜溶剤に溶解又は分散して塗布液とし、これを基材フィルム11に公知のコーティング法で塗布し乾燥してプライマー層13とする。また、樹脂にモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどと、反応開始剤、硬化剤、架橋剤などを適宜組み合わせたり、あるいは、主剤と硬化剤とを組み合わせて、塗布し乾燥して、乾燥又は乾燥した後のエージング処理によって反応させて、形成しても良い。該プライマー層13の厚さは、薄くてよく、0.05〜5μm程度で良い。
【0013】
(研磨層)次いで、基材フィルム11、又は必要に応じてプライマー層13面に積層する研磨層15は、研磨粒子19と、造粒粒子21と、バインダ17とからなる。通常、バインダ17となる樹脂の溶液中に、研磨粒子19と造粒粒子21とを分散させたインキを、印刷手段により、塗布し乾燥して、必要な場合には、更に加熱で硬化、又は電離放射線で硬化させて形成する。すなわち、バインダとしては、塗布乾燥型の熱可塑性樹脂、熱で硬化させる熱硬化樹脂、電離放射線で硬化させる紫外線(UVともいう)硬化樹脂、電子線で硬化させる電子線(EBともいう)硬化樹脂が適用できる。研磨層15の厚さは、使用する研磨粒子の粒子径などによっても異なるが2μm〜30μm程度、好ましくは5〜20μ、である。
【0014】
(研磨粒子)研磨粒子19としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ、炭化珪素、ダイヤモンド、酸化鉄、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、窒化珪素、酸化アンチモン、窒化ホウ素、リチウムシリケートなどを複合化して複合粒子とする。また、単独、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。ガラス材及び光ファイバの研磨には、ダイヤモンド、アルミナ、酸化鉄、カーボランダム、酸化クロム、酸化セリウム、シリカが好適で、特に、造粒粒子21よりも硬度が高いダイヤモンド、シリコンカーバイト、アルミナが最適である。該研磨粒子19の粒子径としては、造粒粒子21を構成する一次粒子23よりも大きく、造粒粒子21の粒径よりも小さくするのが好ましく、さらに、研磨粒子19の平均粒子径で0.1〜10μmの範囲が好ましい。この範囲以上では、研磨作業中に、造粒粒子21が研磨粒子19より小さいので、造粒粒子21の頭部が被研磨物の表面へ接触しくく、造粒粒子21の粒子の崩壊が起こらず、遊離砥粒の効果が減少してしまう。これ未満では研磨レートがあがらない。
【0015】
(造粒粒子)造粒粒子は実質的に造粒ダインダを含まず、その形状も特に限定されず、どのような形状でもよい。また、平均粒径が1〜500nmの超微粒子からなる一次粒子を凝集させて、平均粒径を1〜30μmとしたものである。その形成方法は、一次粒子自身の凝集力を利用したり、バインダで凝集させた後に燒結などによりバインダを除去する処理をすればよい。
さらに、造粒粒子を構成する一次粒子の形状は、球状、粒状、及び不定形のいずれでも良い。該造粒粒子を形成している一次粒子は、シリカ、ジルコニア、セリア、アルミナなどの酸化物からなる超微粒子が適用でき、シリカ系超微粒子、ジルコニア系超微粒子、セリア系超微粒子の、少なくとも1種を用いるが好適である。
【0016】
シリカ系超微粒子としては、珪酸ナトリウムを原料とする沈降性シリカ、コロイダルシリカ、及び気相法で得られるヒュームドシリカ、合成シリカがある。沈降性シリカは珪酸ナトリウムの加水分解から得られるもので、単独粒子ではなく数個の粒子の結集体であり、沈降性を示す。コロイダルシリカは珪酸ナトリウムの加水分解液をイオン交換して、単独粒子として得られる。一般的にコロイダルシリカはシロキサン構造をもち、負に帯電したシリカ粒子が水中に分散してコロイド状をなしている。20〜200nm程度の粒径のものが得られる。ヒュームドシリカは、塩化珪素を火焔中で酸化して、脱塩、精製して得られるヒューム状の粒子である。該ヒュームドシリカは、生成時点である程度の凝集した粒子となっている。セリア系超微粒子は、電解法や溶解法で得られ、以前からガラスの研磨に広く用いられ、特異的に高い研磨レートを示す。
【0017】
(バインダ)研磨層15の塗布乾燥型のバインダ17としては、シロキサン結合を有する樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム及びその誘導体、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂などの熱可塑性樹脂が適用できる。
【0018】
また、研磨層15の熱硬化型のバインダ17としては、活性水素を有する官能基(−OH、−NH2、−COOHなど)と硬化剤と、を反応させた熱硬化性樹脂が適用できる。活性水素を有する官能基(−OH、−NH2、−COOHなど)を有する樹脂としては、ポリエ−テル系ポリオ−ル、ポリエステル系ポリオ−ル、ポリアクリレ−トポリオ−ル等のヒドロキシル基含有化合物などが適用できる。硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのイソシアネート系硬化剤が適用できる。該イソシアネート系硬化剤の添加量は、イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基(−NCO)とバインダ樹脂における官能基との当量比、すなわち、[(−NCO)/バインダ樹脂における官能基]で表示される当量比が、0.5〜10の範囲内にあることが好ましい。該熱硬化樹脂による研磨層15は、耐摩耗性、耐溶剤性、耐熱性などが向上し、さらに、研磨層15と、基材フィルム11又はプライマー層13と密着性が向上して、研磨粒子の脱落が防止される。
【0019】
また、研磨層15の電離放射線硬化型のバインダ17としては、電離放射線で硬化するバインダ前駆体が適用でき、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。上記電離放射線としては、紫外線、可視光線、ガンマー線、X線、又は電子線などが適用できるが、紫外線(UV)、電子線(EB)が好適である。
【0020】
さらに、紫外線照射は、研磨層組成物に光重合開始剤、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、αーアミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、チオキサントン類などの光重合開始剤と、必要に応じて光増感剤、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーnーブチルホスフィンなどを添加する。紫外線硬化に用いる紫外線(UV)ランプは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが適用でき、紫外線の波長は200〜400nm程度で、組成物成分に応じて、波長を選択すれば良い。その照射量は、組成物の材質や量と、UVランプの出力と、加工速度に応じて照射すれば良い。
【0021】
該バインダ前駆体としては、電離放射線で重合(硬化ともいう)反応する少なくとも1つの、官能オリゴマー、官能ポリマーなどの硬化性成分が適用できる。該硬化性成分としては、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が適用でき、2官能以上の多官能モノマー、官能オリゴマー、官能ポリマーなどがあり、さらに1官能モノマーを加えても良い。また、電離放射線で重合(硬化ともいう)する官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基である。また、本明細書においては、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸もしくはメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリレートとは、アクリレートもしくはメタクリレートを意味し、同様の表記はこれに準ずる。
【0022】
2官能モノマーとしては、例えば、1,6‐ヘキサンジオールアクリレート(HDDA)、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコール400ジアクリレート(PEG400DA)、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(HPNDA)、ビスフェノールAEO変成ジアクリレート、1,4‐ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンなどが適用できる。
【0023】
多官能モノマーとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスルトール、エポキシ樹脂等の2官能以上の化合物に(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られる2官能以上の(メタ)アクリロイルモノマーなどが適用でき、例えば、トリメチロールプロパンアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(PEHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパンEO変成トリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレートなどが例示できる。
【0024】
官能オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)としては、分子量(質量平均)が約300〜5000程度で、分子内中に(メタ)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基などのラジカル重合性二重結合を有するポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系が適用でき、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0025】
官能ポリマーとしては、分子量(質量平均)が約1000〜30万程度で、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基などのラジカル重合性二重結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが適用できる。
【0026】
1官能モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、メチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート(DNPA)、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)、3‐エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン、などの(メタ)アクリル酸又はそのアルキル若しくはアリールエステル、スチレン、メチルスチレン、スチレンアクリロニトリルなどが適用できる。
【0027】
以上に説明した硬化性のモノマー、及び/又はオリゴマー、及び/又はポリマーを、バインダ前駆体へ含有させれば良い。これらの硬化性成分を、例えば、バインダの研摩粒子や顔料などの反応に影響しない成分を除いた量に対して、5質量%以上、好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは、20〜80質量%含有させることによって、電離放射線硬化性が付与される。
【0028】
また、バインダ前駆体へ、少なくとも1種のモノマーを含ませる。さらに、反応性希釈剤と呼ばれるモノマーを含ませても良い。該モノマーは、(メタ)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基などを有する1官能反応性希釈剤である。ここで、反応性希釈剤は、トルエンなどの一般的な有機溶剤とは異なる。即ち、本明細書においては、溶剤とは反応性希釈剤を除外したものであり、後述するノンソルベント(無溶剤)とは、トルエンなどの一般的な有機溶剤などの溶剤を含有していないことを意味する。通常、バインダ前駆体組成物は粘度が高く、有機溶剤で粘度を下げるように調整しないと、塗布することができない。しかし、該モノマーをバインダ前駆体へ含有させると、バインダ前駆体組成物の粘度が下がり、溶剤を用いる必要がなくなり、ノンソルベント(無溶剤)で使用することができる。また、オリゴマーも、同様の効果がある。
【0029】
さらに、モノマー、オリゴマーは重合反応の速度を向上させ、また、オリゴマー、ポリマーは、硬化後のバインダの架橋密度、凝集力などを調整することができる。このために、バインダ前駆体へは、モノマー、及び/又はオリゴマー、及び/又はポリマーを用いることが好ましい。さらに、好ましくはそれらを併用して、適宜、配合比を変えて、用途や目的に合わせたバインダの性能とする。さらに、バインダ前駆体には、必要に応じて、重合禁止剤、老化防止剤などの添加剤を加えてもよい。該バインダには、必要に応じて、可塑剤、滑剤、染料や顔料などの着色剤、増量やブロッキング防止などの体質顔料や樹脂などの充填剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤等の添加剤を、適宜加えても良い。
【0030】
(研磨層の配合)また、通常、バインダ17樹脂100質量部に対して、研磨粒子19と造粒粒子21とならなる無機質微粉末が50〜2000質量部程度、好ましくは100〜500質量部の割合で混入させれば良い。この範囲以上では、研磨粒子19及び造粒粒子21が脱落しやすく、これ未満では研磨レートが低い。
また、研磨粒子19無機質微粉末が100質量部に対して、造粒粒子21は、1〜200質量部程度、好ましくは10〜100質量部の割合で混入させれば良い。この範囲以上では、主に研磨に寄与する研磨粒子が少なくて、研磨レートが下がり、これ未満では被研磨物の表面に傷が付き易い。
【0031】
さらに、研磨層15を形成するインキの溶剤には、バインダ樹脂の種類に応じて、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノール、イソプロピルアルコール、アノン、ソルベッソ等からなる単独溶剤あるいはこれらの2種以上の混合溶剤等が使用され、また、必要に応じて、粘度調整剤、分散剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料などを添加しても良く、塗布方法に相応しい粘度と印刷適性を持つインキに調製する。
【0032】
(形成法)以上説明してきた研磨粒子19と造粒粒子21とバインダ17とからなる研磨層15を、基材フィルム11の一方の面へ、又は必要に応じてプライマ層13を介して、全面又は任意のパターン形状に設ければよい。全面に設けれるには、公知のロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、キスコート、コンマコート、ロッドコ−ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ナイフコート、スクイズコート、エアードクターコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、カーテンコート、フローコートなどのコーティング法や、スクリーン印刷、グラビア印刷などの印刷法が適用できる。好ましくは、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、コンマコート、ロッドコ−ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコートである。
また、任意のパターン形状に設けるには、スクリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷などが適用できるが、製版の容易さや版持ち性などからスクリーン印刷が好適である。
【0033】
【実施例】
(実施例1)
基材フィルム11として、厚さが75μmのエステルフィルムE5100(東洋紡績社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。該基材フィルム11の一方の面へ、次の組成物インキをコンマコート法で、乾燥後の厚さが8μmになるように、塗布し乾燥して、研磨層15を形成した。直径127mmの円形に打抜いて、実施例1の研磨フィルムを得た。
・上記組成物を混合した後に、アトライタ分散機で1時間混練してインキ化とした。また、ダイヤモンドは、東名ダイヤモンド工業社製、MICRON SIZE DIYAMOND POWDERを用い、また、シリカ造粒粒子は、触媒化学工業社製、シリカマイクロビードP−500を用いた。
【0034】
(実施例2)
本発明の研磨フィルムは、通常、仕上げ研磨に用いるが、前研磨工程にも用いることができる。実施例2は、実施例1の研磨フィルムを前研磨工程に用いた場合で、後述する「評価方法2」で評価した。
【0035】
(実施例3)
基材フィルム11として、厚さが75μmのルミラーS105(東レ社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。該基材フィルム11の一方の面へ、次の組成物インキをロールコート法で、乾燥後の厚さが15μmになるように、塗布し乾燥し、50℃で3日間エージングして研磨層15を形成した。直径127mmの円形に打抜いて、実施例3の研磨フィルムを得た。
・上記組成物を混合した後に、サンドミル機で1時間混練し、さらに超音波分散し、濾過精度25μmで濾過してインキ化した。また、ダイヤモンド粒子は、Lans社製、LS600Fを用い、また、シリカ造粒粒子は、触媒化学工業社製、シリカマイクロビードP−1500を用いた。飽和ポリエステル樹脂はバイロン530(東洋紡績社製、飽和ポリエステル樹脂液、商品名)を用いた。
【0036】
(実施例4)
実施例2と同様に、前研磨工程に用いた場合である。実施例4は、実施例3の研磨フィルムを前研磨工程に用いた場合で、「評価方法2」で評価した。
【0037】
(実施例5〜7)
「表1」に示した、材料及び配合比以外は、実施例1と同様にして、実施例5〜7の研磨フィルムを得た。
【0038】
(比較例1)
基材フィルム11として、厚さが75μmのエステルフィルムE5100(東洋紡績社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。該基材フィルム11の一方の面へ、次の組成物インキをコンマコート法で、乾燥後の厚さが8μmになるように、塗布し乾燥して、研磨層15を形成した。直径127mmの円形に打抜いて、実施例1の研磨フィルムを得た。
・上記組成物を混合した後に、サンドミル分散機で分散し、さらに2時間攪拌してインキ化とした。また、ダイヤモンドは、東名ダイヤモンド工業社製、MICRON SIZE DIYAMOND POWDERを用いた。
【0039】
【表1】
【0040】
(評価)本発明の研磨フィルムは、通常、仕上げ研磨に用いるが、前研磨工程に用いることもできる。このために、仕上げ研磨に用いる場合としては「評価方法1」を用い、前研磨工程に用いる場合としては「評価方法2」を用いる。
(評価方法1)実施例又は比較例の研磨フィルムを、SFP−120/550型光コネクタ研磨機(精工技研社製、商品名)へセットして、ジルコニアフェルール製のSC型光コネクタを30秒間、仕上げ研磨した。
(評価方法2)前研磨工程として、実施例の研磨フィルムを、SFP−120/550型光コネクタ研磨機(精工技研社製、商品名)へセットして、ジルコニアフェルール製のSC型光コネクタを30秒間、前研磨した。次いで、最終仕上げ研磨工程として、FOS−01(大日本印刷社製、最終仕上げ研磨フィルム商品名)を用いて、45秒間研磨した。
(被研磨面の傷)研磨後に光ファイバコネクタの端面の傷を、800倍の光学顕微鏡で観察した。
(反射減衰量)光コネクタの信号光の接続度合を示す性能の、指標である反射減衰量を、AR−301型反射減衰量測定装置(NTT−AT社製、商品名)を用いて測定した。反射減衰量は、通常、30dB以上、仕上げ研磨後は55dB以上が合格とされている。被研磨面の傷、及び反射減衰量の結果は、「表1」の評価欄へ記載した。
【0041】
【発明の効果】
本発明の研磨フィルムによれば、研磨粒子と造粒粒子とを併用した研磨層とすることで、高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい。
また、本発明の研磨フィルムでは、被研磨物へ傷を発生させない良好な研磨性能で、かつ、研磨レートを低下させないという相反する2つの機能を、研磨層の研磨剤として研磨粒子と造粒粒子とを併用することで、両性能を両立させることができる。
即ち、頭部と頭部と間の凹部があるため、目詰まりが発生しにくく研磨レートが低下が少ない。さらに、粒径が大きい造粒粒子は研磨が進行すると、被研磨物へ接触していた粒子が遊離して、あたかも、スラリーの研磨粒子のように作用する。一方、研磨層中の研磨粒子は、研磨作業中にわたって、従来の研磨フィルム同様の研磨機能を発揮しており、研磨の主体である。造粒粒子から遊離した粒子は微細であり、該微細な粒子によって、被研磨物の研磨後の、研磨面の状態が著しく改善される。
研磨粒子と、上記で説明した幾つかの造粒粒子の機能とが、相乗して高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨できる。また、スクラッチ傷が発生しにくく、光ファイバ端部を研磨した場合には、スクラッチ傷の多少の指標となる反射減衰量を高めることができる。特に、本発明の研磨フィルムを前研磨工程に使用し、さらに、本発明又は従来の仕上げ用研磨フィルムを用いて、最終仕上げ研磨した場合には、反射減衰量を著しく高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
【図2】
【符号の説明】
1 研磨フィルム
11 基材フィルム
13 プライマ層
15 研磨層
17 バインダ
19 研磨粒子
21 造粒粒子
23 一次粒子
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品、光学部品などの表面及び/又は端面を鏡面研磨するための研磨フィルムに関し、さらに詳しくは、光ファイバコネクタの端面を、スクラッチ傷が発生しにくいように研磨できる研磨フィルムに関するものである。
【0002】
【従来技術】
(技術の概要)半導体の集積回路形成時の平坦化、光ファイバなど精密部品、光学レンズ、磁気ヘッド、磁気及び光学ディスク、半導体ウェハなどの、表面や端面の仕上げ研磨は、ミクロン又は、サブミクロン単位の精密な表面精度をもつこと要求されている。該精密仕上げ研磨には、基材フィルムに硬度の高い研磨粒子を含む研磨層を設け、かつ、該研磨層の表面粗さが極めて小さい研磨フィルムが使用されていた。研磨工程が仕上げ段階に近づくほど、小さい粒子径の研磨粒子を用いるので、次第に細かい粒子径を有する複数の研磨フィルムを用いねばならない。また、微細な研磨粒子を用いた表面はより平滑となって、研磨屑による目詰まりが生じたり、高い研磨レートが得られない。しかし、大きな粒子径の研磨粒子ほど研磨レートは高いが、被研磨物へ傷をつけやすいという相反する問題がある。研磨レートと、傷のない良好な研磨を両立させるために、種々の提案がされている。
【0003】
(先行技術)従来、研磨屑を排出する溝を印刷パターンで設けた研磨層とする方法が、特表2001−515801号公報で知られている。しかしながら、目詰まりによる研磨レートの低下は防げるが、溝を形成するための工程が必要になるという問題点がある。
また、複数の研磨粒子を混合して、研磨層に凹凸をつける方法が、特表2001−516652号公報で知られている。しかしながら、研磨層の目詰まりによる研磨レートの低下は防げるが、複数の研磨粒子を使用するので、その調整が難しく、研磨レートが安定しないという欠点がある。
さらにまた、硬度の異なる研磨層を2層とする方法が、特開2001−71273号公報で、知られている。しかしながら、2層の研磨層を形成するためにコスト高になり、また、大きい粒径の研磨粒子では傷が発生しやすいという問題点がある。
さらにまた、研磨粒子をバインダ樹脂で造粒粒子とした研磨層を用いる方法が、特表平8−512074号公報、特表平9−509106号公報に開示されている。しかしながら、造粒粒子中の研磨粒子はバインダ樹脂で覆われているために、研磨作業中に研磨粒子が容易に遊離してこず、目的とする傷のない精度の高い鏡面研磨を達成することという欠点がある。
さらにまた、研磨粒子をバインダ樹脂を用いずに造粒粒子とした研磨層を用いる方法が、特開2000−237962号公報で開示されている。しかしながら、造粒粒子中から研磨粒子が容易に遊離するが、該研磨粒子は微細過ぎて、かつ、十分な硬度を有していないので、研磨レートが十分に高くならないという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、研磨粒子と造粒粒子とを併用した研磨層とすることで、高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい研磨フィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる研磨フィルムは、基材フィルムの一方の面に、研磨層を有する研磨フィルムにおいて、該研磨層がバインダと研磨粒子と造粒粒子とからなり、該造粒粒子は造粒バインダを実質的に含まず、かつ、平均粒径が1〜30μmであり、かつまた、1〜500nmの一次粒子を造粒してなるようにしたものである。本発明によれば、適度な粒径の研磨粒子と造粒粒子とを併用した研磨層とすることで、研磨層の表面に大きさの異なる凹凸を形成し、高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい研磨フィルムが提供される。
請求項2の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の平均粒径が、0.1〜10μmであるようにしたものである。本発明によれば、被研磨物へスクラッチ傷を発生しにくい研磨フィルムが提供される。
請求項3の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の硬度が、造粒粒子を形成している一次粒子の硬度より高いように、請求項4の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の含有量が、造粒粒子の含有量より多いようにしたものである。本発明によれば、主に研磨に寄与する研磨粒子の硬度を高く、また、含有量を多くすることで、高い研磨レートを維持できる研磨フィルムが提供される。
請求項5の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子の平均粒径が、造粒粒子の平均粒径より小さいようにしたものである。本発明によれば、請求項6の発明に係わる研磨フィルムは、上記研磨粒子が、少なくともダイヤモンド、シリコンカーバイト、アルミナであり、また、上記造粒粒子を形成している一次粒子が少なくともシリカ、ジルコニア、セリアであるようにしたものである。本発明によれば、造粒粒子の頭部が被研磨物の表面へ接触しやすく、造粒粒子の粒子が崩壊して、遊離砥粒としての効果が発現して、スラリー研磨と同様な高い研磨レートと被研磨体へスクラッチ傷が発生させにくい研磨フィルムが提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施態様について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す研磨フィルムの断面図である。
図2は、本発明の造粒粒子の詳細構造を模式的に説明する説明図である。
(層構成)研磨フィルム1は、基材フィルム11の一方の面へ、必要に応じてプライマ層13を介して、研磨層15が順次積層されている。該研磨層15は、研磨粒子19と造粒粒子21とバインダ17とからなっている。研磨粒子19は公知の研磨フィルムに用いる研磨粒子と同様なものである。造粒粒子21は意図的に造粒されたもので、その詳細構造を拡大して示すのが、図2に図示したように、造粒された造粒粒子21は、複数の1次粒子23からなっている。
【0007】
(発明のポイント)本発明の研磨フィルムは、被研磨物へ傷を発生させない良好な研磨性能で、かつ、研磨レートを低下させないために、研磨層の研磨剤として研磨粒子と造粒粒子とを併用することを、見出して本発明に至った。研磨粒子と造粒粒子のいずれかのみでは、両性能は両立しない。
研磨粒子及び造粒粒子がともにある程度の粒径があり、研磨層の表面に大小の凹凸を形成するために、高い研磨レートを維持することができる。
さらにまた、造粒粒子にはバインダが含まれていないので、粒径が大きい造粒粒子は研磨が進行すると、被研磨物へ接触していた粒子が容易に遊離して、研磨フィルムと被研磨物の間へ保持されて、あたかも、スラリーの研磨粒子のように作用する。そして、研磨層中の研磨粒子は、研磨作業中にわたって、従来の研磨フィルム同様の研磨機能を発揮している。もちろん、研磨の主体は研磨粒子によるものであり、造粒粒子から遊離した粒子は微細であり、該微細な粒子によって、被研磨物の研磨後の、研磨面の状態が著しく改善される。
このように、研磨粒子と、上記で説明した幾つかの造粒粒子の機能とが、相乗して高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい。特に、光ファイバ端部を研磨した場合には、スクラッチ傷の多少の指標となる反射減衰量は、実施例で後述するように著しく高めることができる。
【0008】
次に各層の材料、及びその形成方法について説明する。
(基材フィルム)基材フィルム11は、研磨時の潤滑剤や機械的な強度と、研磨剤の塗工・乾燥に耐える強度・耐熱性、寸法変化が少ないフィルムから適宜に選択できる。例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリイミド・ポリアミドイミド・ポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、ポリアリレ−ト・ポリスルホン・ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエ−テル・ポリフェニレンスルフィド(PPS)・ポリエーテルケトン、ポリエーテル‐エーテルケトン、ポリエーテルサルファイトなどのエンジニアリング樹脂、ポリカ−ボネ−ト、ポリスチレン・高衝撃ポリスチレン・AS樹脂・ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セロファン・セルローストリアセテート・セルロースダイアセテート・ニトロセルロースなどのセルロース系フィルム、などがある。
【0009】
該基材フィルムは、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、又は、混合体(アロイでを含む)若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材フィルムは、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。
【0010】
特に、研磨層の塗工適性、後加工適性及び研磨機における取扱いに優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。該プラスチックフィルムの厚さは、被研磨材の材質、大きさ、厚さなどから適宜選択すれば良いが、その厚さは、例えば、12〜250μmである。基材フィルム11は、作業工程での粉塵の付着を防止するために、帯電防止剤を加えても良い。帯電防止剤は、公知の非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤などやポリアミド誘導体やアクリル酸誘導体などを、適宜に選択して加える。
【0011】
(プライマ層)次に、基材フィルム11の一方の面へ、研磨層15を塗布する。該研磨層15を塗布する側には、両者の接着性を向上させるためにプライマー層13、又はコロナ放電処理、オゾンガス処理などの易接着処理を施すことが好ましい。特に、プライマー層13は、研磨層15との接着性を向上させ、バインダ17と研磨粒子19の脱落を防止して安定した研磨作業ができ、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、エポキシ樹脂などが適用できる。
【0012】
これらの樹脂を、適宜溶剤に溶解又は分散して塗布液とし、これを基材フィルム11に公知のコーティング法で塗布し乾燥してプライマー層13とする。また、樹脂にモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどと、反応開始剤、硬化剤、架橋剤などを適宜組み合わせたり、あるいは、主剤と硬化剤とを組み合わせて、塗布し乾燥して、乾燥又は乾燥した後のエージング処理によって反応させて、形成しても良い。該プライマー層13の厚さは、薄くてよく、0.05〜5μm程度で良い。
【0013】
(研磨層)次いで、基材フィルム11、又は必要に応じてプライマー層13面に積層する研磨層15は、研磨粒子19と、造粒粒子21と、バインダ17とからなる。通常、バインダ17となる樹脂の溶液中に、研磨粒子19と造粒粒子21とを分散させたインキを、印刷手段により、塗布し乾燥して、必要な場合には、更に加熱で硬化、又は電離放射線で硬化させて形成する。すなわち、バインダとしては、塗布乾燥型の熱可塑性樹脂、熱で硬化させる熱硬化樹脂、電離放射線で硬化させる紫外線(UVともいう)硬化樹脂、電子線で硬化させる電子線(EBともいう)硬化樹脂が適用できる。研磨層15の厚さは、使用する研磨粒子の粒子径などによっても異なるが2μm〜30μm程度、好ましくは5〜20μ、である。
【0014】
(研磨粒子)研磨粒子19としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ、炭化珪素、ダイヤモンド、酸化鉄、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、窒化珪素、酸化アンチモン、窒化ホウ素、リチウムシリケートなどを複合化して複合粒子とする。また、単独、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。ガラス材及び光ファイバの研磨には、ダイヤモンド、アルミナ、酸化鉄、カーボランダム、酸化クロム、酸化セリウム、シリカが好適で、特に、造粒粒子21よりも硬度が高いダイヤモンド、シリコンカーバイト、アルミナが最適である。該研磨粒子19の粒子径としては、造粒粒子21を構成する一次粒子23よりも大きく、造粒粒子21の粒径よりも小さくするのが好ましく、さらに、研磨粒子19の平均粒子径で0.1〜10μmの範囲が好ましい。この範囲以上では、研磨作業中に、造粒粒子21が研磨粒子19より小さいので、造粒粒子21の頭部が被研磨物の表面へ接触しくく、造粒粒子21の粒子の崩壊が起こらず、遊離砥粒の効果が減少してしまう。これ未満では研磨レートがあがらない。
【0015】
(造粒粒子)造粒粒子は実質的に造粒ダインダを含まず、その形状も特に限定されず、どのような形状でもよい。また、平均粒径が1〜500nmの超微粒子からなる一次粒子を凝集させて、平均粒径を1〜30μmとしたものである。その形成方法は、一次粒子自身の凝集力を利用したり、バインダで凝集させた後に燒結などによりバインダを除去する処理をすればよい。
さらに、造粒粒子を構成する一次粒子の形状は、球状、粒状、及び不定形のいずれでも良い。該造粒粒子を形成している一次粒子は、シリカ、ジルコニア、セリア、アルミナなどの酸化物からなる超微粒子が適用でき、シリカ系超微粒子、ジルコニア系超微粒子、セリア系超微粒子の、少なくとも1種を用いるが好適である。
【0016】
シリカ系超微粒子としては、珪酸ナトリウムを原料とする沈降性シリカ、コロイダルシリカ、及び気相法で得られるヒュームドシリカ、合成シリカがある。沈降性シリカは珪酸ナトリウムの加水分解から得られるもので、単独粒子ではなく数個の粒子の結集体であり、沈降性を示す。コロイダルシリカは珪酸ナトリウムの加水分解液をイオン交換して、単独粒子として得られる。一般的にコロイダルシリカはシロキサン構造をもち、負に帯電したシリカ粒子が水中に分散してコロイド状をなしている。20〜200nm程度の粒径のものが得られる。ヒュームドシリカは、塩化珪素を火焔中で酸化して、脱塩、精製して得られるヒューム状の粒子である。該ヒュームドシリカは、生成時点である程度の凝集した粒子となっている。セリア系超微粒子は、電解法や溶解法で得られ、以前からガラスの研磨に広く用いられ、特異的に高い研磨レートを示す。
【0017】
(バインダ)研磨層15の塗布乾燥型のバインダ17としては、シロキサン結合を有する樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム及びその誘導体、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂などの熱可塑性樹脂が適用できる。
【0018】
また、研磨層15の熱硬化型のバインダ17としては、活性水素を有する官能基(−OH、−NH2、−COOHなど)と硬化剤と、を反応させた熱硬化性樹脂が適用できる。活性水素を有する官能基(−OH、−NH2、−COOHなど)を有する樹脂としては、ポリエ−テル系ポリオ−ル、ポリエステル系ポリオ−ル、ポリアクリレ−トポリオ−ル等のヒドロキシル基含有化合物などが適用できる。硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのイソシアネート系硬化剤が適用できる。該イソシアネート系硬化剤の添加量は、イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基(−NCO)とバインダ樹脂における官能基との当量比、すなわち、[(−NCO)/バインダ樹脂における官能基]で表示される当量比が、0.5〜10の範囲内にあることが好ましい。該熱硬化樹脂による研磨層15は、耐摩耗性、耐溶剤性、耐熱性などが向上し、さらに、研磨層15と、基材フィルム11又はプライマー層13と密着性が向上して、研磨粒子の脱落が防止される。
【0019】
また、研磨層15の電離放射線硬化型のバインダ17としては、電離放射線で硬化するバインダ前駆体が適用でき、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。上記電離放射線としては、紫外線、可視光線、ガンマー線、X線、又は電子線などが適用できるが、紫外線(UV)、電子線(EB)が好適である。
【0020】
さらに、紫外線照射は、研磨層組成物に光重合開始剤、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、αーアミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、チオキサントン類などの光重合開始剤と、必要に応じて光増感剤、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーnーブチルホスフィンなどを添加する。紫外線硬化に用いる紫外線(UV)ランプは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが適用でき、紫外線の波長は200〜400nm程度で、組成物成分に応じて、波長を選択すれば良い。その照射量は、組成物の材質や量と、UVランプの出力と、加工速度に応じて照射すれば良い。
【0021】
該バインダ前駆体としては、電離放射線で重合(硬化ともいう)反応する少なくとも1つの、官能オリゴマー、官能ポリマーなどの硬化性成分が適用できる。該硬化性成分としては、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が適用でき、2官能以上の多官能モノマー、官能オリゴマー、官能ポリマーなどがあり、さらに1官能モノマーを加えても良い。また、電離放射線で重合(硬化ともいう)する官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基である。また、本明細書においては、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸もしくはメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリレートとは、アクリレートもしくはメタクリレートを意味し、同様の表記はこれに準ずる。
【0022】
2官能モノマーとしては、例えば、1,6‐ヘキサンジオールアクリレート(HDDA)、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコール400ジアクリレート(PEG400DA)、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(HPNDA)、ビスフェノールAEO変成ジアクリレート、1,4‐ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンなどが適用できる。
【0023】
多官能モノマーとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスルトール、エポキシ樹脂等の2官能以上の化合物に(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られる2官能以上の(メタ)アクリロイルモノマーなどが適用でき、例えば、トリメチロールプロパンアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(PEHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパンEO変成トリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレートなどが例示できる。
【0024】
官能オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)としては、分子量(質量平均)が約300〜5000程度で、分子内中に(メタ)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基などのラジカル重合性二重結合を有するポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系が適用でき、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0025】
官能ポリマーとしては、分子量(質量平均)が約1000〜30万程度で、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基などのラジカル重合性二重結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが適用できる。
【0026】
1官能モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、メチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート(DNPA)、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)、3‐エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン、などの(メタ)アクリル酸又はそのアルキル若しくはアリールエステル、スチレン、メチルスチレン、スチレンアクリロニトリルなどが適用できる。
【0027】
以上に説明した硬化性のモノマー、及び/又はオリゴマー、及び/又はポリマーを、バインダ前駆体へ含有させれば良い。これらの硬化性成分を、例えば、バインダの研摩粒子や顔料などの反応に影響しない成分を除いた量に対して、5質量%以上、好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは、20〜80質量%含有させることによって、電離放射線硬化性が付与される。
【0028】
また、バインダ前駆体へ、少なくとも1種のモノマーを含ませる。さらに、反応性希釈剤と呼ばれるモノマーを含ませても良い。該モノマーは、(メタ)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、又はエポキシ基などを有する1官能反応性希釈剤である。ここで、反応性希釈剤は、トルエンなどの一般的な有機溶剤とは異なる。即ち、本明細書においては、溶剤とは反応性希釈剤を除外したものであり、後述するノンソルベント(無溶剤)とは、トルエンなどの一般的な有機溶剤などの溶剤を含有していないことを意味する。通常、バインダ前駆体組成物は粘度が高く、有機溶剤で粘度を下げるように調整しないと、塗布することができない。しかし、該モノマーをバインダ前駆体へ含有させると、バインダ前駆体組成物の粘度が下がり、溶剤を用いる必要がなくなり、ノンソルベント(無溶剤)で使用することができる。また、オリゴマーも、同様の効果がある。
【0029】
さらに、モノマー、オリゴマーは重合反応の速度を向上させ、また、オリゴマー、ポリマーは、硬化後のバインダの架橋密度、凝集力などを調整することができる。このために、バインダ前駆体へは、モノマー、及び/又はオリゴマー、及び/又はポリマーを用いることが好ましい。さらに、好ましくはそれらを併用して、適宜、配合比を変えて、用途や目的に合わせたバインダの性能とする。さらに、バインダ前駆体には、必要に応じて、重合禁止剤、老化防止剤などの添加剤を加えてもよい。該バインダには、必要に応じて、可塑剤、滑剤、染料や顔料などの着色剤、増量やブロッキング防止などの体質顔料や樹脂などの充填剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤等の添加剤を、適宜加えても良い。
【0030】
(研磨層の配合)また、通常、バインダ17樹脂100質量部に対して、研磨粒子19と造粒粒子21とならなる無機質微粉末が50〜2000質量部程度、好ましくは100〜500質量部の割合で混入させれば良い。この範囲以上では、研磨粒子19及び造粒粒子21が脱落しやすく、これ未満では研磨レートが低い。
また、研磨粒子19無機質微粉末が100質量部に対して、造粒粒子21は、1〜200質量部程度、好ましくは10〜100質量部の割合で混入させれば良い。この範囲以上では、主に研磨に寄与する研磨粒子が少なくて、研磨レートが下がり、これ未満では被研磨物の表面に傷が付き易い。
【0031】
さらに、研磨層15を形成するインキの溶剤には、バインダ樹脂の種類に応じて、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノール、イソプロピルアルコール、アノン、ソルベッソ等からなる単独溶剤あるいはこれらの2種以上の混合溶剤等が使用され、また、必要に応じて、粘度調整剤、分散剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料などを添加しても良く、塗布方法に相応しい粘度と印刷適性を持つインキに調製する。
【0032】
(形成法)以上説明してきた研磨粒子19と造粒粒子21とバインダ17とからなる研磨層15を、基材フィルム11の一方の面へ、又は必要に応じてプライマ層13を介して、全面又は任意のパターン形状に設ければよい。全面に設けれるには、公知のロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、キスコート、コンマコート、ロッドコ−ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ナイフコート、スクイズコート、エアードクターコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、カーテンコート、フローコートなどのコーティング法や、スクリーン印刷、グラビア印刷などの印刷法が適用できる。好ましくは、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、コンマコート、ロッドコ−ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコートである。
また、任意のパターン形状に設けるには、スクリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷などが適用できるが、製版の容易さや版持ち性などからスクリーン印刷が好適である。
【0033】
【実施例】
(実施例1)
基材フィルム11として、厚さが75μmのエステルフィルムE5100(東洋紡績社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。該基材フィルム11の一方の面へ、次の組成物インキをコンマコート法で、乾燥後の厚さが8μmになるように、塗布し乾燥して、研磨層15を形成した。直径127mmの円形に打抜いて、実施例1の研磨フィルムを得た。
・上記組成物を混合した後に、アトライタ分散機で1時間混練してインキ化とした。また、ダイヤモンドは、東名ダイヤモンド工業社製、MICRON SIZE DIYAMOND POWDERを用い、また、シリカ造粒粒子は、触媒化学工業社製、シリカマイクロビードP−500を用いた。
【0034】
(実施例2)
本発明の研磨フィルムは、通常、仕上げ研磨に用いるが、前研磨工程にも用いることができる。実施例2は、実施例1の研磨フィルムを前研磨工程に用いた場合で、後述する「評価方法2」で評価した。
【0035】
(実施例3)
基材フィルム11として、厚さが75μmのルミラーS105(東レ社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。該基材フィルム11の一方の面へ、次の組成物インキをロールコート法で、乾燥後の厚さが15μmになるように、塗布し乾燥し、50℃で3日間エージングして研磨層15を形成した。直径127mmの円形に打抜いて、実施例3の研磨フィルムを得た。
・上記組成物を混合した後に、サンドミル機で1時間混練し、さらに超音波分散し、濾過精度25μmで濾過してインキ化した。また、ダイヤモンド粒子は、Lans社製、LS600Fを用い、また、シリカ造粒粒子は、触媒化学工業社製、シリカマイクロビードP−1500を用いた。飽和ポリエステル樹脂はバイロン530(東洋紡績社製、飽和ポリエステル樹脂液、商品名)を用いた。
【0036】
(実施例4)
実施例2と同様に、前研磨工程に用いた場合である。実施例4は、実施例3の研磨フィルムを前研磨工程に用いた場合で、「評価方法2」で評価した。
【0037】
(実施例5〜7)
「表1」に示した、材料及び配合比以外は、実施例1と同様にして、実施例5〜7の研磨フィルムを得た。
【0038】
(比較例1)
基材フィルム11として、厚さが75μmのエステルフィルムE5100(東洋紡績社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。該基材フィルム11の一方の面へ、次の組成物インキをコンマコート法で、乾燥後の厚さが8μmになるように、塗布し乾燥して、研磨層15を形成した。直径127mmの円形に打抜いて、実施例1の研磨フィルムを得た。
・上記組成物を混合した後に、サンドミル分散機で分散し、さらに2時間攪拌してインキ化とした。また、ダイヤモンドは、東名ダイヤモンド工業社製、MICRON SIZE DIYAMOND POWDERを用いた。
【0039】
【表1】
【0040】
(評価)本発明の研磨フィルムは、通常、仕上げ研磨に用いるが、前研磨工程に用いることもできる。このために、仕上げ研磨に用いる場合としては「評価方法1」を用い、前研磨工程に用いる場合としては「評価方法2」を用いる。
(評価方法1)実施例又は比較例の研磨フィルムを、SFP−120/550型光コネクタ研磨機(精工技研社製、商品名)へセットして、ジルコニアフェルール製のSC型光コネクタを30秒間、仕上げ研磨した。
(評価方法2)前研磨工程として、実施例の研磨フィルムを、SFP−120/550型光コネクタ研磨機(精工技研社製、商品名)へセットして、ジルコニアフェルール製のSC型光コネクタを30秒間、前研磨した。次いで、最終仕上げ研磨工程として、FOS−01(大日本印刷社製、最終仕上げ研磨フィルム商品名)を用いて、45秒間研磨した。
(被研磨面の傷)研磨後に光ファイバコネクタの端面の傷を、800倍の光学顕微鏡で観察した。
(反射減衰量)光コネクタの信号光の接続度合を示す性能の、指標である反射減衰量を、AR−301型反射減衰量測定装置(NTT−AT社製、商品名)を用いて測定した。反射減衰量は、通常、30dB以上、仕上げ研磨後は55dB以上が合格とされている。被研磨面の傷、及び反射減衰量の結果は、「表1」の評価欄へ記載した。
【0041】
【発明の効果】
本発明の研磨フィルムによれば、研磨粒子と造粒粒子とを併用した研磨層とすることで、高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨でき、かつ、スクラッチ傷の発生しにくい。
また、本発明の研磨フィルムでは、被研磨物へ傷を発生させない良好な研磨性能で、かつ、研磨レートを低下させないという相反する2つの機能を、研磨層の研磨剤として研磨粒子と造粒粒子とを併用することで、両性能を両立させることができる。
即ち、頭部と頭部と間の凹部があるため、目詰まりが発生しにくく研磨レートが低下が少ない。さらに、粒径が大きい造粒粒子は研磨が進行すると、被研磨物へ接触していた粒子が遊離して、あたかも、スラリーの研磨粒子のように作用する。一方、研磨層中の研磨粒子は、研磨作業中にわたって、従来の研磨フィルム同様の研磨機能を発揮しており、研磨の主体である。造粒粒子から遊離した粒子は微細であり、該微細な粒子によって、被研磨物の研磨後の、研磨面の状態が著しく改善される。
研磨粒子と、上記で説明した幾つかの造粒粒子の機能とが、相乗して高い研磨レートを発現させて、短時間で被研磨物を研磨できる。また、スクラッチ傷が発生しにくく、光ファイバ端部を研磨した場合には、スクラッチ傷の多少の指標となる反射減衰量を高めることができる。特に、本発明の研磨フィルムを前研磨工程に使用し、さらに、本発明又は従来の仕上げ用研磨フィルムを用いて、最終仕上げ研磨した場合には、反射減衰量を著しく高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
【図2】
【符号の説明】
1 研磨フィルム
11 基材フィルム
13 プライマ層
15 研磨層
17 バインダ
19 研磨粒子
21 造粒粒子
23 一次粒子
Claims (6)
- 基材フィルムの一方の面に、研磨層を有する研磨フィルムにおいて、該研磨層がバインダと研磨粒子と造粒粒子とからなり、該造粒粒子は造粒バインダを実質的に含まず、かつ、平均粒径が1〜30μmであり、かつまた、1〜500nmの一次粒子を造粒してなることを特徴とする研磨フィルム。
- 上記研磨粒子の平均粒径が、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の研磨フィルム。
- 上記研磨粒子の硬度が、造粒粒子を形成している一次粒子の硬度より高いことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の研磨フィルム。
- 上記研磨粒子の含有量が、造粒粒子の含有量より多いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研磨フィルム。
- 上記研磨粒子の平均粒径が、造粒粒子の平均粒径より小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の研磨フィルム。
- 上記研磨粒子が、少なくともダイヤモンド、シリコンカーバイト、アルミナであり、また、上記造粒粒子を形成している一次粒子が少なくともシリカ、ジルコニア、セリアであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の研磨フィルム。
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