JP4849473B2 - 耐摩耗性高Cr鋳鉄およびその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性高Cr鋳鉄およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、岩石の破砕、粉砕などの耐摩耗性が要求される用途に用いられる高Cr鋳鉄およびその製造方法に関する。
高Cr鋳鉄は、高硬度の晶出炭化物とそれを取り囲むマトリックス組織からなり、耐摩耗性に優れた材料である。耐摩耗性を向上させるには、炭化物量を増やせばよいが、靭性が低下し、機械的強度が損なわれる。このため実用的には炭化物あるいはマトリックスの硬さを向上させることが有効である。
例えば、特開平6−240403号公報(特許文献1)には、焼き入れ温度をCr量に応じて設定すると共に高硬度のVCを生成させた高Cr鋳鉄が提案されている。また、特開2001−247929号公報(特許文献2)には、マトリックスに含まれるCr、Mo及びNの各量を調整して熱処理後の冷却過程でマトリックスを硬さの高いマルテンサイト組織に十分に変態させる技術が提案されている。さらに、特許第3496577号公報(特許文献3)には、マトリックスの硬度を均等かつ大幅に向上させる作用を有する元素としてNを挙げ、0.2%以上のN添加により、冷却速度の遅い場合でもマトリックスの焼き入れ性を確保し、大型製品における肉厚中央部と表層部のいずれにおいても高いマトリックス硬度を有するようにした高Cr鋳鉄が開示されている。
特開平6−240403号公報 特開2001−247929号公報 特許第3496577号公報
しかしながら、特許文献1に記載の高Cr鋳鉄は、析出炭化物の硬度を向上させることを企図した技術であり、大型材では肉厚中央部での焼きが入りに難く、全体に安定したマトリックス硬度が得られない。また、高価なVを使用するため、材料コスト高を招来する。また、特許文献2に記載された技術についても、大型材になると冷却速度が遅くなるため焼き入れ不足となり、所期の硬さを確保できない。また、特許文献3に記載の高Cr鋳鉄は、Nが多量添加されるため、鋳造時にブローホールが生じて鋳造欠陥が生じ易く、凝固割れや疲労強度の低下が生じやすい、という問題がある。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、鋳造欠陥が生じ難く、大型材としても肉厚中央部での硬度劣化のない、高硬度で、硬度均一性に優れた高Cr鋳鉄およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、高Cr鋳鉄のマトリックスの高硬度化について種々検討した結果、特に厚肉材では加熱保持後の焼き入れ時に肉厚中央部に焼きが入り難く、マルテンサイトのほか、残留オーステナイトが不可避的に生成し、これが原因となってマトリックスの硬度が低下することに鑑み、マトリックスの完全なマルテンサイト化を図るより、むしろマルテンサイト及び残留オーステナイトの混合組織からなる焼き入れ組織を焼き戻し、マトリックス中に所定量の微細析出物を分散させることで、肉厚の部位にかかわらずマトリックスの硬度を均一に向上させることに成功し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の高Cr鋳鉄は、化学組成が、mass%でC:2.7〜3.3%、Si:0.2〜1.0%、Mn:0.4〜2.0%、Cr:18〜25%、Mo:0.5〜4%、Ni:0.5〜3%、N:0.08〜0.18%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、組織が30〜40面積%の晶出炭化物とこれを取り囲むマトリックスとからなり、前記マトリックスは焼き戻しマルテンサイト、焼き戻しベイナイト及び残留オーステナイトで構成され、前記マトリックス中に粒径が円相当直径で1μm 以下の微細析出炭化物が分散し、その微細炭化物の全量が全組織に対して3.0〜14面積%とされたものである。化学組成には、さらにWを0.5〜4%を含むことができる。前記円相当直径とは、組織観察された粒と面積が等しい円の直径を粒径として表したものをいう。
また、本発明の高Cr鋳鉄の製造方法は、上記化学組成の高Cr鋳鉄を溶製し、鋳造して得られた鋳塊を950〜1100℃で4〜12hr保持した後、0.05〜3℃/sの冷却速度で冷却して焼き入れし、その後450〜550℃の温度範囲で8〜120hr以下保持して焼き戻す。
本発明によれば、Nが0.08〜0.18%の所定の化学組成の下、特に30〜40面積%の晶出炭化物を取り囲むマトリックスをマルテンサイト及び残留オーステナイトの焼き戻し組織とし、前記マトリックス中に粒径が円相当直径で1μm 以下の微細析出炭化物が分散し、その微細析出物の全量が全組織に対して3.0〜14面積%とするので、ブローホールによる鋳造欠陥が生じ難く、また肉厚の部位にかかわらず、マトリックスが高硬度で、しかも硬度均一性に優れる。このため、マトリックスに焼きが入り難い大型部材でも優れた耐摩耗性を備える。
まず、本発明に係る高Cr鋳鉄の化学組成および成分限定理由について説明する。本発明に係る高Cr鋳鉄は、C:2.7〜3.3%、Si:0.2〜1.0%、Mn:0.4〜2.0%、Cr:18〜25%、Mo:0.5〜4%、Ni:0.5〜3%、N:0.08〜0.18%を含み、残部がFeおよび不純物からなる。
C:2.7〜3.3%
Cは炭化物を生成して高硬度を確保するのに必須の元素であり、2.7%未満では炭化物の生成量が過少となるため、耐摩耗性が低下する。一方、3.3%を超えると、炭化物量が過多となり、靭性が低下するようになる。このため、C量の下限を2.7%とし、その上限を3.3%とする。
Si:0.2〜1.0%
Siは溶解、精錬時の脱酸元素として、また鋳造時の湯流れ性向上元素として添加する。また鋳造、焼き入れ後の冷却時の粗大炭化物の生成を抑制する作用を有する。0.2%未満ではかかる効果が過少であり、1.0%を超えると靭性が低下するようになる。このため、Si量の下限を0.2%、その上限を1.0%とする。
Mn:0.4〜2.0%
Mnは焼き入れ性を向上させ、特にベイナイト組織の生成を抑制するために添加される。0.4%未満ではかかる効果が過少となり、一方2.0%を超えると残留オーステナイトが増加し、焼き戻しによる2次硬化を施してもマトリックスの硬さが不足し、耐摩耗性が低下するようになる。このため、Mn量の下限を0.4%、その上限を2.0%とする。
Cr:18〜25%
CrはCと共に炭化物を生成させる元素であり、少ないと炭化物量が過少となり、耐摩耗性が低下し、一方多いと炭化物量が過多となり、靭性が低下するようになる。このため、Cr量の下限を18%、その上限を25%とする。
Mo:0.5〜4%
Moは焼き戻しにより、マトリックス中にM236 型の微細炭化物を生成し、2次硬化を生じさせる主要元素であり、また焼き入れ性を向上させ、パーライトの生成を抑制する。0.5%未満ではかかる効果が過少であり、一方4%を超えて添加しても上記効果が飽和する。このため、Mo量の下限を0.5%とし、その上限を4%とする。
Ni:0.5〜3%
Niは鋳造後の冷却時や溶体化処理後の冷却(焼き入れ)時における粗大炭化物の析出を抑制する作用を有する。また、焼き入れ性を向上させる効果を有する。鋳造後の冷却時あるいは焼き入れの際の冷却時には、比較的高温(700〜900℃)でも炭化物が析出するが、析出温度が高いために粗大になり易い。粗大炭化物はマトリックスの硬さの向上、靭性の低下防止のいずれの点でも不利であり、生成させないようにすることが重要である。Ni量が0.5%未満では、粗大炭化物の析出抑制効果や焼き入れ性向上効果が過少となり、一方3%を超えると残留オーステナイトが過多となるため、2次硬化してもマトリックスの硬さが不十分となり、耐摩耗性が低下するようになる。このため、Ni量の下限を0.5%、その上限を3%とする。なお、マトリックスの硬さの向上、靭性の低下の防止のいずれの点でも、析出炭化物は微細な方が望ましい。後述するように、本発明では比較的低温下での焼き戻しを行うため、微細炭化物を析出させることがができる。
N:0.08〜0.18%
Nは焼き入れ性を改善し、焼き入れ時に硬さの低いベイナイトが生成するのを抑制する。このため、0.01%以上添加することが好ましい。しかし、0.2%以上に増えると鋳造時にブローホールが発生し易く、鋳造欠陥が生じやすくなり、鋳造割れ、疲労特性が劣化するようになる。このため、N量を0.08%以上、0.18%以下、好ましくは0.15%以下に止める。

本発明の高Cr鋳鉄は、上記基本成分のほか、残部Fe及び製造上不可避的に混入する不純物、例えばP、S、N、Oにより組成される。さらに、鋳鉄の耐摩耗性を向上させるため、Wを0.5〜4%含有させることができる。WもMoと同様、2次硬化の主要元素であり、0.5%未満では2次硬化が過少となり、一方4%を超えて添加しても効果が飽和する。このため、W量の下限を0.5%とし、その上限を4%とする。
さらに、耐摩耗性をより向上させるために、必要に応じて下記の元素群のいずれか、あるいは複数群から選択された元素の1種又は2種以上を、各群の添加許容範囲内で添加することができる。
(1) Nb、Ti、V、Zr、Hf、Taから選択される1種以上の元素を合計量で0.5%以下
(2) Ce、La、Pr、Nd、Yから選択される1種以上の元素を合計量で0.5%以下
Nb、Ti、V、Zr、Hf、Taは、微細な炭化物を形成し、マトリックスの硬さを向上させる。少なすぎると効果が過少となるため、合計量で0.05%以上添加することが好ましい。多すぎるとマトリックス中のCが固定されるため、焼き入れ後、マルテンサイトの硬さが低下し、ひいてはマトリックスの硬さも低下する。このため、合計量で0.5%以下に止めるのがよい。
Ce、La、Pr、Nd、Yは、鋳鉄表面に生成したAl酸化皮膜と下地との密着性を向上させ、酸化摩耗の低減に寄与する。かかる作用を有効に発揮させるには、合計量で0.05%以上の添加が好ましい。過剰な添加は、酸化物や硫化物などの介在物が増加し、靭性の低下を招くので、合計量で0.5%以下に止めるのが好ましい。
次に、本発明の高Cr鋳鉄の組織について説明する。本発明の高Cr鋳鉄の組織は、30〜40面積%の晶出炭化物とこれを取り囲むマトリックスとからなり、前記マトリックスは焼き戻しマルテンサイト、焼き戻しベイナイト及び残留オーステナイトで構成され、前記マトリックス中に粒径が円相当直径で1μm 以下の微細析出炭化物が分散し、その微細炭化物の全量が全組織に対して3.0〜14面積%とされたものである。以下、組織量の単位は単に「%」で表記する。
晶出炭化物は、材料全体の硬さ向上への寄与が非常に大きい。晶出炭化物は主にM73型の炭化物であり、30%未満では硬さ、ひいては耐摩耗性が不足する。一方、40%を超えると靭性が低下し、機械的強度が低下するようになる。このため、晶出炭化物量の下限を30%、その上限を40%とする。なお、晶出炭化物量は主に成分によって調整される。
前記晶出炭化物以外の部分はマトリックスである。マトリックスは、焼き入れのための高温保持(溶体化処理)の際に再固溶することなく存在していた晶出炭化物以外の領域であり、焼き入れ組織である、マルテンサイトを主体(マトリックスの90%以上)とし、残留オーステナイトを一部含む複合組織を焼き戻した組織を有している。具体的には、マトリックスは、焼き戻しマルテンサイトを主体(マトリックスの90%以上)とし、その他、焼き戻しベイナイト、残留オーステナイトから構成される。
前記マトリックスには、粒径が円相当直径で1μm 以下の微細な析出炭化物が分散して存在する。この微細析出炭化物は、後述するように焼き戻し処理によりマトリックス中に析出したものであり、M236 型の炭化物が多いが、一部M73型、M6C型の炭化物を含む。1μm を超える析出炭化物は、マトリックスの高硬度化(2次硬化)にあまり寄与しないので、1μm 以下の微細析出炭化物量が問題となり、前記微細炭化物量が全組織に対して3%未満では高硬度化効果が過少であり、一方14%を超えるとマトリックスの硬度が高くなり過ぎて、靭性、機械的強度が低下するようになる。微細析出炭化物量は、組成と製造条件によって調整される。なお、晶出炭化物の周囲には、晶出炭化物に合金元素が吸収されるため、合金元素濃度の薄い領域が不可避的に形成され、この部分では析出炭化物量は局部的に減少する。
次に、本発明の高Cr鋳鉄の製造条件について説明する。先ず、上記組成の高Cr鋳鉄を溶製し、鋳造する。鋳型としては、造形の容易性のために主に砂型が使用されるが、他の材質の鋳型を用いてもよい。
鋳造したインゴットは、通常、950〜1100℃、好ましくは1000〜1070℃の温度範囲で溶体化処理され、焼き入れられる。溶体化の温度条件でマトリックスの組成が変わるため、上記温度範囲で、4〜12hr程度保持する。保持温度が950℃未満、あるいは保持時間が4hr未満ではマトリックス中の固溶合金元素濃度が低くなるため、焼き戻しでの2次硬化量が少なくなり、マトリックスの硬さが不足するようになる。一方、保持温度が高すぎると、マトリックス中の固溶合金元素濃度が高くなりすぎ、焼き入れ時の残留オーステナイト量が過剰となって、焼き戻しによるマトリックスの硬化が不十分となる。保持時間は12hrを超えてもよいが、溶体化効果は飽和するため技術的には意味がなく、生産性を低下させる。
溶体化処理(加熱保持)後、焼き入れるが、焼き入れの際の冷却速度は、0.05〜3℃/sとする。0.05℃/s未満では冷却速度が遅すぎるため、焼き入れが不十分となり、冷却中に2次硬化にあまり寄与しない、1μm を越える粗大な炭化物が析出するようになる。一方、3℃/sを越えると、インゴットが割れるおそれが生じる。大型材の場合、風冷などの強制冷却により0.05℃/s以上の冷却速度を確保することができる。
焼き入れ後、マトリックス中に微細炭化物を分散析出させるため、450〜550℃で8〜120hr保持する焼き戻し処理を行う。焼き戻しによって晶出炭化物は変化せず、マトリックス中に微細炭化物が分散析出し、マトリックスを2次硬化させる。すなわち、マルテンサイトは焼き戻し軟化しながらも微細炭化物の析出により硬さが増し、残留オーステナイトは炭化物の析出により大幅に硬さを増し、これによりマトリックス全体の硬さが増大する。450℃未満では合金元素が拡散しないため、炭化物が析出せず、マルテンサイトの焼き戻し軟化のみが進行するため、マトリックスは硬化しない。450〜550℃でも保持時間が8hrより短いと炭化物の析出量ひいては硬化量が不十分となる。しかし、保持時間が120hrを超えて長すぎると、マルテンサイトの軟化が進行しすぎるため、やはり全体的に硬さが低下する。また550℃超ではマルテンサイトの焼き戻し軟化が著しく、さらに析出炭化物も粗大化するため、硬さ向上効果が妨げられ、マトリックス全体として硬さが低下する。望ましい焼き戻し条件は、475〜525℃で、12〜72hr程度である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定的に解釈されるものではない。
表1に示した組成の高Cr鋳鉄を高周波誘導溶解炉で250kg溶解し、砂鋳型(縦幅200mm×横幅300mm×高さ400mm)に鋳込み、放冷して立方体形の鋳造部材(インゴット)を得た。この鋳造部材を表2に示すように1050℃、8hr保持する溶体化処理を行い、引き続いて送風機により風量を調節して衝風冷却を行い、焼き入れした。その後、同表に示すように、485℃で20hr保持した後、放冷する焼き戻しを行った。
上記のようにして製造した鋳造部材の幅方向及び高さ方向の中心部から組織観察片を採取し、これを樹脂に埋め込み、観察片が表面に露出するように鏡面研磨を行い、さらにエッチングして全体組織を光学顕微鏡(倍率100)により、マトリックス部分をSEM(反射電子像、倍率5000)により組織観察を行った。そして、光学顕微鏡の組織写真をコンピュータにより画像解析を行い、晶出炭化物量(面積%)を求めた。また、SEM観察によって得たマトリックス組織写真からコンピュータによる画像解析により析出炭化物の粒径(円相当直径)を求め、粒径が1.00μm 以下の微細析出炭化物の面積率を求めた。これらの測定結果を表2に併せて示す。
前記組織観察の一例(表2の試料No. 1)を図1(光学顕微鏡組織写真)、図2(SEM組織写真)に示す。光学顕微鏡組織写真においては、晶出炭化物は最も白い領域として現れる。反射電子像で観察したSEM組織では、原子番号の大きい元素が多い領域が白く(明るく)見えるため、合金元素の平均濃度が高い炭化物は白く見える。図2において、粒状に見える白い部分が析出炭化物である。
さらに、鋳造部材の中心部から試験片を採取し、機械的性質を調べた。硬さについては、荷重10kgでピッカース硬さを測定した。この際、3点打点した平均を採った。硬さがHv780以上であれば耐摩耗性を劣化させるおそれはない。また、靭性については、JIS3号、2mmUノッチのシャルピー試験片を製作してシャルピー衝撃値を測定した。2J/cm2以上であれば靭性に実用上問題はない。また、耐摩耗性については、6mm×75mm×25mmの研磨仕上げの試験片を作成し、岩石中で回転させる摩耗試験を実施した。摩耗時間は15分×4回で合計60分とした。摩耗重量を測定して摩耗量を評価し、0.2%以下を合格とした。これらの測定結果を表2に併せて示す。なお、表2において、試料No. 23は湯流れ性が悪く、鋳造欠陥が発生し、また試料No. 32はブローホールが生成したので、これらについては組織観察、特性評価は行わなかった。
表2より、本発明の組成、組織を満足するものは、肉厚中心部であるにも拘わらず、Hv780以上の硬さを備え、耐摩耗性に優れることがわかる。一方、比較例の試料No. 21はC量が過少であるため、硬さ、耐摩耗性が低下し、またNo. 22はC量が、No. 24はSiが過多であるため、靭性の低下が著しい。またNo. 25はMn量が過少なため、ベイナイトが生成し、硬さ、耐摩耗性が低下している。一方、No. 26はMn量が過多なため、残留オーステナイトが過多となり、硬さ、耐摩耗性が低い。また、試料No. 27,28はCrが不適当なため、晶出炭化物量が不適当となり、硬さ、耐摩耗性あるいは靭性が低い。また、No. 29はMo量が過少なため、パーライトが生成し、硬さ、耐摩耗性が劣化している。また、No. 30,31はNi量が不適当なため、焼き入れ性の低下あるいは残留オーステナイトの増加により硬さ、耐摩耗性が低下している。
実施例1と同様にして、立方体の鋳造部材を鋳造し、この鋳造部材を表3に示す条件にて焼き入れ、焼き戻しを行った。表3における鋼種No. は、実施例1の表1の鋼種を示す。実施例1と同様にして、得られた鋳造部材の中心部から組織観察片、機械的性質測定片を採取し、組織を観察し、機械的性質を測定した。これらの結果を表3に併せて示す。なお、試料No. 26は、焼き入れの際、冷却速度が過大なため、鋳造部材に割れが発生したので、組織観察、機械的性質の測定は実施しなかった。
表3より、本発明の製造条件を満足するものは、肉厚中心部であるにも拘わらず、Hv780以上の硬さを備え、耐摩耗性に優れる。一方、比較例の試料No. 21は焼入温度(溶体化温度)が低すぎ、またNo. 23は焼入保持時間が短すぎ、No. 25は焼入時の冷却速度が遅すぎるため、微細析出炭化物量が不足するため、硬さ、耐摩耗性が低い。これに対してNo. 22は焼入温度が高すぎ、No. 24は焼入保持時間が長すぎるため、残留オーステナイトが増大し、硬さ、耐摩耗性が低い。また、試料No. 27は焼戻温度が低すぎ、またNo. 29は焼戻保持時間が短すぎるため、微細析出炭化物量が不足し、これに対してNo. 28は焼戻温度が高すぎるため、マルテンサイトの軟化が進行し、また析出炭化物が粗大化して硬さ、耐摩耗性が低下している。またNo. 30は焼戻保持時間が長すぎるため、析出炭化物が粗大化し、微細析出炭化物量が減少したため、硬さ、耐摩耗性が低い。
実施例に係る光学顕微鏡組織写真(倍率100)を示す。 実施例に係るSEM(反射電子像)組織写真(倍率5000)を示す。

Claims (3)

  1. 化学組成が、mass%で
    C:2.7〜3.3%、
    Si:0.2〜1.0%、
    Mn:0.4〜2.0%、
    Cr:18〜25%、
    Mo:0.5〜4%、
    Ni:0.5〜3%、
    N:0.08〜0.18%
    を含み、残部がFeおよび不純物からなり、組織が30〜40面積%の晶出炭化物とこれを取り囲むマトリックスからなり、前記マトリックスは焼き戻しマルテンサイト、焼き戻しベイナイト及び残留オーステナイトで構成され、前記マトリックス中に粒径が円相当直径で1μm 以下の微細析出炭化物が分散し、その微細炭化物の全量が全組織に対して3.0〜14面積%である、耐摩耗性高Cr鋳鉄。
  2. さらに、Wを0.5〜4%を含む、請求項1に記載した耐摩耗性高Cr鋳鉄。
  3. 請求項1又は2に記載した高Cr鋳鉄を溶製し、鋳造して得られた鋳塊を950〜1100℃で4〜12hr保持した後、0.05〜3℃/sの冷却速度で冷却して焼入れし、その後450〜550℃の温度範囲で8〜120hr保持して焼き戻す、耐摩耗性高Cr鋳鉄の製造方法。
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