JP3275626B2 - 高強度Fe基鋳造合金製ロッカーアーム - Google Patents

高強度Fe基鋳造合金製ロッカーアーム

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高強度を有するFe
基鋳造合金製ロッカーアームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、内燃機関の構造部材であるロッカ
ーアームには、強度、靭性、および耐摩耗性が要求され
ることから、これらの特性を具備したFe基鋳造合金が
用いられている。また、これらの特性を具備したFe基
鋳造合金製ロッカーアームとして、例えば特開昭64−
11941号公報に記載される通り、重量%で(以下、
%は重量%を示す)、 C:2〜4%、 Cr:10〜25%、 Mo:1〜10%、 Si:0.1〜2%、 Mn:0.1〜2%、 Co:0.1〜2%、 W:0.1〜2%、 Ni:0.1〜3%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成を有
するFe基鋳造合金で構成されたロッカーアームが知ら
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の内燃機関
の高出力化および軽量に伴ない、ロッカーアームにも小
型化および薄肉化が要求されるようになっているが、上
記の従来Fe基鋳造合金製ロッカーアームはじめ、その
他多くのロッカーアームの場合、いずれもすぐれた靭性
と耐摩耗性を有するものの、十分な強度を具備するもの
でないため、これらの要求に満足に対応することができ
ない。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
特に上記の従来Fe基鋳造合金製ロッカーアームに着目
し、これの強度向上をはかるべく研究を行なった結果、
上記の従来Fe基鋳造合金製ロッカーアームは、所定の
合金組成に成分調整した溶湯を鋳型に鋳造して放冷した
後、これに焼入れおよび焼戻しの熱処理を施すことによ
って製造され、したがって図2に金属顕微鏡による組織
写真(倍率:500倍)の模写図で例示されるように、
鋳造時に晶出した晶出炭化物と前記熱処理時に析出した
析出炭化物からなる炭化物がマルテンサイト素地に分散
分布した組織をもつが、前記溶湯を鋳造した鋳型を、前
記溶湯の凝固開始から共晶反応が終了する1100℃±
30℃までの温度範囲を15℃/min 以下、望ましくは
10℃/min 以下の速度で徐冷して炭化物を十分に晶出
させ、上記熱処理での炭化物の析出がない状態にする、
すなわち同じく図1に金属顕微鏡による組織写真(倍
率:500倍)の模写図で例示されるように、マルテン
サイト素地に実質的に共晶炭化物からなる炭化物が分散
分布した組織をもつものとすると、この結果のFe基鋳
造合金で構成されたロッカーアームは、すぐれた靭性と
耐摩耗性を保持したままで高強度を有するようになると
いう研究結果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果にもとづいて
なされたものであって、 C:2〜4%、 Si:0.1〜2%、 Mn:0.1〜2%、 Cr:10〜25%、 Moおよび/またはW:0.1〜10%、 を含有し、さらに必要に応じて、 Niおよび/またはCo:0.1〜5%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並
びにマルテンサイト素地に、鋳造時の徐冷で晶出した共
晶炭化物からなる炭化物が分散分布し、焼入れおよび焼
戻しの熱処理での析出炭化物の析出がない組織を有する
Fe基鋳造合金で構成してなる、高強度を有し、かつ靭
性および耐摩耗性にもすぐれたFe基鋳造合金製ロッカ
ーアームに特徴を有するものである。
【0006】つぎに、この発明のロッカーアームにおい
て、これを構成するFe基鋳造合金の成分組成を上記の
通りに限定した理由を説明する。 (a) C C成分には、一部が素地のマルテンサイトを形成して強
度を向上させるほか、残りが強度低下の原因になる針状
の析出炭化物を実質的に形成することなく、共晶炭化物
を形成して、前記マルテンサイト素地によってもたらさ
れる高強度を損なうことなく耐摩耗性を向上させる作用
があるが、その含有量が2%未満では前記作用に所望の
効果が得られず、一方その含有量が4%を越えると靭性
が急激に低下するようになることから、その含有量を2
〜4%、望ましくは3〜3.6%と定めた。
【0007】(b) Si Si成分には、脱酸作用のほか、溶湯の流動性を増大さ
せて鋳造性を向上させる作用があるが、その含有量が
0.1%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一
方その含有量が2%を越えると靭性が低下するようにな
ることから、その含有量を0.1〜2%、望ましくは
0.5〜1.5%と定めた。
【0008】(c) Mn Mn成分には、脱酸作用のほか、素地に固溶して靭性を
向上させる作用があるが、その含有量が0.1%未満で
は前記作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が
2%を越えると耐摩耗性が低下するようになることか
ら、その含有量を0.1〜2%、望ましくは0.4〜
1.1%と定めた。
【0009】(d) Cr Cr成分には、MoおよびWとともに共晶炭化物を形成
して耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含有量が
10%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方
その含有量が25%を越えると靭性が急激に低下するよ
うになることから、その含有量を10〜25%、望まし
くは15〜20%と定めた。
【0010】(e) MoおよびW これらの成分には、上記の通りCr成分との共存におい
て共晶炭化物を形成し、強度低下なく耐摩耗性を向上さ
せるほか、素地に固溶して強度を向上させる作用がある
が、その含有量が0.1%未満では前記作用に所望の効
果が得られず、一方その含有量が10%を越えると靭性
が低下するようになることから、その含有量を0.1〜
10%、望ましくは1〜5%と定めた。
【0011】(f) NiおよびCo これらの成分には、素地に固溶してマルテンサイト変態
を促進させ、もって強度を一段と向上させる作用がある
ので、必要に応じて含有されるが、その含有量が0.1
%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方
その含有量が5%を越えてもより一層の強度向上効果は
得られず、経済性を考慮して、その含有量を0.1〜5
%、望ましくは1〜3%と定めた。
【0012】
【実施例】つぎに、この発明のFe基鋳造合金製ロッカ
ーアームを実施例により具体的に説明する。通常の高周
波溶解炉を用い、それぞれ表1,2に示される成分組成
をもったFe基合金溶湯を調製し、ついでこれらの溶湯
を、1400℃の溶湯温度で1100℃に予熱したロス
トワックス鋳型に鋳造して、前記溶湯の凝固開始温度か
ら共晶反応の終了する1100℃までを8℃/min の冷
却速度で冷却し、以後鋳型ごと放冷した後、大気中、9
00℃に1時間保持後油焼入れと、同じく大気中、60
0℃に0.5時間保持後放冷の焼戻しの熱処理を施すこ
とにより図3(a)に正面図で、同(b)に底面図で示
される形状を有し、かつ長さが45mmの寸法をもった本
発明Fe基鋳造合金製ロッカーアーム(以下、本発明ロ
ッカーアームという)1〜26をそれぞれ製造した。こ
の結果得られた本発明ロッカーアーム1〜26の組織を
金属顕微鏡にて観察したところ、いずれも図1に例示さ
れると同様な組織、すなわちマルテンサイト素地に実質
的に共晶炭化物からなる炭化物が分散分布する組織を示
した。
【0013】また比較の目的で、ロストワックス鋳型の
予熱を行なわず、鋳造後放冷して、溶湯の凝固開始温度
から共晶反応の終了する1100℃までを20℃/min
の冷却速度で冷却する以外は同一の条件で従来Fe基鋳
造合金製ロッカーアーム(以下、従来ロッカーアームと
いう)1〜26をそれぞれ製造した。この従来ロッカー
アーム1〜26についても金属顕微鏡による組織観察を
行なったところ、いずれも図2に例示される組織と同様
の組織を示した。
【0014】ついで、これらのロッカーアームについ
て、図4に概略説明図で示される通り、ロッカーアーム
の底面先端部に形成された凹みにC型固定工具の曲げ先
端部を装着して図示の状態とし、ロッカーアームの底面
他方端部に上方から23kgf /sec の速度で荷重をか
け、ロッカーアーム破断時の荷重(破壊荷重)を測定す
る静的破壊試験を行ない、この測定結果にて強度を評価
した。これらの結果を表3,4に示した。また、これら
のロッカーアームについて、シャルピー衝撃値およびロ
ックウェル硬さ(Cスケール)を測定し、靭性と耐摩耗
性を評価した。これらの測定結果も表3,4に示した。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】
【0019】
【発明の効果】表1〜4に示される結果から、本発明ロ
ッカーアーム1〜26は、従来ロッカーアーム1〜26
と同等のすぐれた靭性(シャルピー衝撃値)と耐摩耗性
(硬さ)を有し、さらに本発明ロッカーアーム1〜26
は、いずれもこれを構成するFe基鋳造合金がマルテン
サイト素地に共晶炭化物が分散分布した組織を有し、こ
れによってマルテンサイト素地に共晶炭化物と析出炭化
物が共存した組織を有するFe基鋳造合金で構成された
従来ロッカーアーム1〜26に比して一段と高い強度を
もつようになることが明らかである。上述のように、こ
の発明のFe基鋳造合金製ロッカーアームは、高強度を
有し、さらに靭性および耐摩耗性にもすぐれているの
で、これの小型化および薄肉化に十分満足に対応するこ
とができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のFe基鋳造合金製ロッカーアームを
構成するFe基鋳造合金の代表的組織を示す組織模写図
である。
【図2】従来Fe基鋳造合金製ロッカーアームを構成す
るFe基鋳造合金の代表的組織を示す組織模写図であ
る。
【図3】ロッカーアームの正面図(a)および底面図
(b)である。
【図4】ロッカーアームの静的破壊試験の概略説明図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F01L 1/18 F01L 1/18 M (56)参考文献 特開 昭63−290243(JP,A) 特開 平6−220573(JP,A) 特開 平2−64210(JP,A) 特開 昭63−303030(JP,A) 特開 平2−149638(JP,A) 特開 昭60−234947(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 37/08 C22C 37/00 C22C 38/00 302 C22C 38/38 C22C 38/58 F01L 1/18

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%(質量%)で、 C:2〜4%、 Si:0.1〜2%、 Mn:0.1〜2%、 Cr:10〜25%、 Moおよび/またはW:0.1〜10%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並
    びにマルテンサイト素地に、鋳造時の徐冷で晶出した
    晶炭化物からなる炭化物が分散分布し、焼入れおよび焼
    戻しの熱処理での析出炭化物の析出がない組織を有する
    Fe基鋳造合金で構成したことを特徴とする高強度Fe
    基鋳造合金製ロッカーアーム。
  2. 【請求項2】 重量%(質量%)で、 C:2〜4%、 Si:0.1〜2%、 Mn:0.1〜2%、 Cr:10〜25%、 Moおよび/またはW:0.1〜10%、 を含有し、さらに、 Niおよび/またはCo:0.1〜5%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並
    びにマルテンサイト素地に、鋳造時の徐冷で晶出した
    晶炭化物からなる炭化物が分散分布し、焼入れおよび焼
    戻しの熱処理での析出炭化物の析出がない組織を有する
    Fe基鋳造合金で構成したことを特徴とする高強度Fe
    基鋳造合金製ロッカーアーム。
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