JP6191118B2 - 熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼 - Google Patents
熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6191118B2 JP6191118B2 JP2012232443A JP2012232443A JP6191118B2 JP 6191118 B2 JP6191118 B2 JP 6191118B2 JP 2012232443 A JP2012232443 A JP 2012232443A JP 2012232443 A JP2012232443 A JP 2012232443A JP 6191118 B2 JP6191118 B2 JP 6191118B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- steel
- mold
- hardness
- thermal conductivity
- amount
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
また金型寿命が長ければ製品1個当りに占める金型コストを低減できる(つまり製品コストを低減できる)ため、金型を高寿命とするのに必要な靭性も求められる。
例えばこのような成形品を成形する金型は、幅が1m強で厚みが数10cm以上にも及ぶ大型のものとなることがある。
このような大型の金型用材料としては焼入性の高いものでなければならない。
従来からある金型用材料ではこうした要請に対して十分に応えられていないのが実情である。
そのためには、金型用材料に添加するC量を低量とする必要がある。
そこでC量を低量とした上で、硬さを確保する手段としてCuやNi,Alの金属間化合物を析出させ、その析出硬化によって金型の硬さを確保するようにした材料が近年開発されている。
しかしながらこの特許文献1に開示のものは、CuやNiを多く添加し、特にAlは0.5%以上多く添加して多量の金属間化合物を析出させるようにしており、この場合、合金成分の添加量が多くなることによってコストが高くなるとともに、Alの多量添加によって靭性が不十分となる。
具体的には、金型の冷却に際して重要な働きをするSiの含有量が多い(請求項では1.5%以下としているものの、実施例では0.3%が下限で、これよりも少ないものは開示されていない)。
Siが0.3%以上多く含有されていると、射出後の金型の冷却性能が不足し、従来に増してのハイサイクル化を実現することが難しい。
具体的には、この特許文献2に開示のものでは、請求項ではNiを4.0%以下,Alを0.1〜2.0%としているものの、実施例ではAlの下限が0.74%で、何れの実施例もAl量がこれよりも多量であり、またNiについても実施例中1.78%が下限で、何れの実施例もNi量がこれよりも多量に添加されている。
更にCuについても、請求項では3.5%以下とされているものの、実施例での下限は0.77%で、何れの実施例もCu量はこれよりも多い。
具体的にはこの特許文献2に開示のものにおいても、Siが多く含有されている(請求項では1.5%以下としているものの、実施例では0.28%が下限でこれよりも少ないものは開示されていない)。
なお、通常、成形用金型用鋼において、下記に示す成分とその範囲は、不可避的不純物として含まれ得る。
P≦0.03,S≦0.003, Cu≦0.30, Ni≦0.30, Al≦0.10, Mo≦0.04, V≦0.02,W≦0.30,O≦0.01,N≦0.02,Co≦0.30, Nb≦0.004, Ta≦0.004, Ti≦0.004, Zr≦0.004,B≦0.0001, Ca≦0.0005, Se≦0.03, Te≦0.005, Bi≦0.01, Pb≦0.03, Mg≦0.02
本発明者は、鋼を所定硬さとするために必要なCu,Ni及びAlの添加量を調べたところ、Cu,Ni及びAlの添加量をこの種の従来の鋼より少なくしても目標とする硬さ,例えば35〜45HRCを十分に実現できることを見出した。
本発明はこのような知見の下になされたものである。
而してこれらCu,Ni及びAlの添加量を少なくすることができれば材料コストを低減することができ、また鋼の被削性も良好となって加工コストを低減することが可能となる。
Alを一定量以上に多く添加すると、金属間化合物の時効析出により靭性を低下させ、また時効析出に用いられないAlがマトリックス中に固溶してマトリックス自体の靭性を低下させる。
靭性が低下すれば鋼を用いて金型を構成したときに金型が割れ易くなる。
そこで本発明ではAlの添加量を少なく規制することで、鋼の靭性を高く確保している。
Niは鋼中で縞状に偏析を生じ易い元素で、このような形でNiの偏析が生じると、鋼にNiの濃い部分と薄い部分とが交互に生じる。
この場合、Niの濃い部分と薄い部分とで硬さや靭性等の機械的性質が異なるため、鏡面研磨したときに鋼に縞状(筋状)の凹凸を生ぜしめてしまう。
従ってこのような鋼にて金型を構成したとき、この縞状の凹凸がプラスチック製品等の成形品に転写されてしまい、製品の美観を大きく損ってしまい、商品価値を落としてしまう。
本発明ではNi添加量の上限を低く規制することで、こうした問題の発生防止を図っている。
Cuについても同じことが言える。CuはNiと同様に偏析を生じやすい。従って、Cu添加量の上限を低く規制することは、鏡面研磨したときに縞状の凹凸を生じさせない手段として有効である。本発明では、NiとCuを含有する従来の鋼よりもNiとCuを低減しているため、鏡面研磨したときに縞状の凹凸が発生し難いのである。
熱伝導率の高い(熱伝導性能の高い)鋼を用いて射出成形用の金型を構成したとき、金型の冷却性能が高まり、射出成形時における金型の熱引きが良くなって、成形1サイクル当りの時間を短縮化することができる。即ち射出形成による製品成形をハイサイクル化でき、生産性を高めることができる。
[請求項1の化学成分について]
[C]:0.040<C<0.100
C≦0.040では、高い鏡面性の確保に必要な硬さ35HRC以上を特に焼戻し温度が高い場合に得にくい。0.100≦Cでは、耐食性が低下し溶接性も悪い。好適な範囲は、これらの特性のバランスに優れた0.060<C<0.095である。
Si≦0.03では被削性の劣化が著しい。0.28≦Siでは熱伝導率の低下が大きい。好適な範囲は、被削性と熱伝導率のバランスに優れた0.05<Si<0.27である。
図1と表1は、0.078C-1.19Mn-0.72Cu-1.21Ni-4.02Cr-0.40Mo-0.10V-0.40Al-Si鋼を900℃で3Hr均熱した後に焼入れ、510℃で5Hr焼戻した後の被削性をSi量に対して示す。被削性評価用素材は、硬さが39〜42HRC、形状は55mm×55mm×200mmの角棒で、切削工具の横逃げ面最大磨耗量が300μmとなった時点を寿命(被削性)と判定した。切削距離が大きいほど、良く削れて好ましい。
Si≦0.03では、切削距離が極端に小さい。切削工具の摩耗を安定して抑制するには、0.03<Siが必要である。0.05<Siなら、さらに安定して摩耗を抑制できる。
鋼S1:0.077C-1.19Mn-0.69Cu-1.21Ni-4.00Cr-0.39Mo-0.11V-0.41Al-Si鋼
鋼S2:0.068C-1.20Mn-0.70Cu-1.19Ni-5.13Cr-0.40Mo-0.10V-0.39Al-Si鋼
鋼S3:0.058C-1.20Mn-0.71Cu-1.22Ni-7.93Cr-0.40Mo-0.11V-0.41Al-Si鋼の3種である。
いずれの鋼種系においてもSi<0.28で熱伝導率の増加の変曲点となった。すなわち、その成分系の熱伝導率を高く保つには、Si<0.28が必要である。Si<0.27であれば、高い熱伝導率を更に安定して得られる。Si≦0.05では、熱伝導率が飽和傾向を示す。
Mn≦1.11では、焼入れ性が不足する。1.45≦Mnでは、熱伝導率の低下が著しい。また、Mnは凝固時に偏析し易く、著しい偏析は金型となった場合の鏡面研磨性に悪影響を及ぼす。好適な範囲は、焼入れ性と熱伝導率と鏡面研磨性のバランスに優れた1.15<Mn<1.39である。
Cu≦0.30では、Cuの時効析出による高強度化の効果が小さい。0.77≦Cuでは、熱間加工時の割れが発生し易い。好適な範囲は、高強度化と熱間加工性のバランスに優れた0.40<Cu<0.75である。
Ni≦0.30では、焼入れ性の改善効果が小さい。1.78≦Niでは、素材コストが非常に高くなる。また、Niは凝固時に偏析し易く、著しい偏析は金型となった場合の鏡面研磨性に悪影響を及ぼす。好適な範囲は、焼入れ性とコストと鏡面研磨性のバランスに優れた0.39<Ni<1.55である。
Cr≦3.23では、耐食性を改善する効果が小さい。9.00≦Crでは、熱伝導率の低下が顕著である。好適な範囲は、耐食性と熱伝導率のバランスに優れた3.50<Cr<8.60である。耐食性が重要な場合には、熱伝導率はやや低下するものの4.50<Cr<8.60が好ましい。
Mo≦0.04では、必要な硬さ35HRC以上を、特に焼戻し温度が高い場合に得にくい。1.00≦Moでは、破壊靭性値の低下が著しい。好適な範囲は、硬さと破壊靭性値のバランスに優れた0.10<Mo<0.90である。
V≦0.02では、高い鏡面性の確保に必要な硬さ35HRC以上を、特に焼戻し温度が高い場合に得にくい。0.50≦Vでは、衝撃値や機械疲労強度の低下が著しい。好適な範囲は、硬さと衝撃値のバランスに優れた0.05<V<0.40である。
Al≦0.10では、NiとAlから成る金属間化合物の時効析出による高強度化の効果が小さい。0.50≦Alでは、衝撃値の低下が顕著である。好適な範囲は、強度と靭性のバランスに優れた0.14<Al<0.47である。
本発明鋼は低Cの為、焼戻し温度によっては強度の確保が難しい。そのような場合には、WやCoを選択的に添加し、強度の維持を図ればよい。Wは、炭化物の析出によって強度を上げる。Coは、母材への固溶によって強度を上げると同時に、炭化物形態の変化を介して析出硬化にも寄与する。具体的には、
0.30<W≦4.00
0.30<Co≦3.00
の少なくとも1種を含有させれば良い。
いずれの元素も、所定量を越えると特性の飽和と著しいコスト増を招く。好適な範囲は、
0.40≦W≦3.00
0.40≦Co≦2.00
である。
本発明鋼では、焼入れ時のオーステナイト結晶粒の成長を抑制する分散粒子がそれほど多くない。このため、予期せぬ設備トラブルなどによって、焼入れ加熱温度が高くなったり焼入れ加熱時間が長くなれば、結晶粒の粗大化による各種特性の劣化が懸念される。そのような場合に備え、Nb,Ta,Ti,Zrを選択的に添加し、これらの元素が形成する微細な析出物でオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制することが出来る。具体的には、
0.004<Nb≦0.100
0.004<Ta≦0.100
0.004<Ti≦0.100
0.004<Zr≦0.100
の少なくとも1種を含有させれば良い。
いずれの元素も、所定量を超えると炭化物や窒化物や酸化物が過度に生成し、衝撃値や鏡面研磨性の低下を招く。
近年、部品の大型化や一体化によって、金型のサイズは大きくなる傾向にある。大きな金型は冷却され難い。このため、焼入れ性が低い鋼材の大きな金型を焼き入れると、焼入れ中にフェライトやパーライトや粗大ベイナイトが析出して各種特性が劣化する。本発明鋼はかなり高い焼入れ性を有しており、そのような懸念は少ない。しかし、非常に大きな金型を冷却強度の弱い焼入れ方法で処理した場合にも備え、Bを添加して焼入れ性を更に高めることが出来る。
具体的には、
0.0001<B≦0.0050
を含有させる。
本発明鋼は、被削性の非常に良い鋼(0.4<Si)よりもSiが低目である。このため、金型形状への機械加工や穴開けが難しくなることも懸念される。そのような場合は、S,Ca,Se,Te,Bi,Pbを選択的に添加し、被削性を改善すれば良い。
具体的には、
0.003<S≦0.050
0.0005<Ca≦0.2000
0.03<Se≦0.50
0.005<Te≦0.100
0.01<Bi≦0.30
0.03<Pb≦0.50
の少なくとも1種を含有させれば良い。
いずれの元素も、所定量を超えた場合は被削性の飽和と熱間加工性(金型用素材製造時)の劣化,衝撃値や鏡面研磨性の低下を招く。
本発明において、Mn,Cr,Niの添加量を下限量としたときにはMn+Cr+0.5Ni=4.52となるが、焼入れ性が特に要求される場合は5.00<Mn+Cr+0.5Niとする。これによって、焼入れ冷却中にフェライトやパーライトや粗大ベイナイトが析出する危険性を更に低減できる。
また、本発明においてこれら成分を上限量で添加した場合には、Mn+Cr+0.5Ni=11.32となるが、熱伝導率が特に要求される場合はMn+Cr+0.5Ni<6.20とする。焼入れ性と熱伝導率のバランスに特に優れた範囲は、5.00<Mn+Cr+0.5Ni<6.20である。更に好適な範囲は、5.20<Mn+Cr+0.5Ni<6.05である。この範囲であれば、適正な焼入れ組織を安定して得ることができ、かつ200℃における熱伝導率は28W/m/K以上となる。
鋼L:0.072C-0.22Si-0.72Cu-0.40Mo-0.11V-0.40Al---3.24Cr-1.12Mn-0.31Ni鋼
鋼M:0.074C-0.20Si-0.71Cu-0.38Mo-0.12V-0.41Al---8.99Cr-1.44Mn-1.77Ni鋼
R1系:0.072C-0.21Si-0.68Cu-0.40Mo-0.10V-0.40Al---3.52Cr-Mn-Ni鋼
R2系:0.072C-0.20Si-0.70Cu-0.41Mo-0.09V-0.40Al---4.03Cr-Mn-Ni鋼
R3系:0.073C-0.20Si-0.72Cu-0.41Mo-0.10V-0.38Al---5.49Cr-Mn-Ni鋼
R4系:0.073C-0.21Si-0.70Cu-0.41Mo-0.10V-0.39Al---4.03Cr-Mn-Ni鋼
の全22鋼種である。鋼LはMn,Cr,Niを下限量で添加した組成、鋼MはMn,Cr,Niを上限量で添加した組成である。また鋼R1〜R4系は、請求項6の規定範囲内でMnとNiを任意に添加した20鋼種からなるものである。ここで、焼入れは大断面型を模擬した工程としている。すなわち冷却速度は、900℃から600℃までが15℃/min、600℃から室温までは3℃/minとした。
図5を見ると、鋼Lでも衝撃値21J/cm2と比較的に高位であり、発明鋼の成分系は焼入れ性に優れる事が分かる。市販材の中には15J/cm2以下の鋼も少なくない。ここで、5.00<Mn+Cr+0.5Niに注目すると、衝撃値の上昇が見られ、焼入れ性が特に良い領域である事は明らかである。5.20<Mn+Cr+0.5Niでは、更に安定して高衝撃値(およそ25J/cm2以上)を得られる。
一方、耐食性や窒化などのニーズによっては4.50<Crとし、6.20≦Mn+Cr+0.5Niでも良い。その場合の焼入れ性はやや過度とも言えるが、衝撃値は高くなるうえ、より大きな金型でも安心して焼入れが出来る。ただし、Mn+Cr+0.5Ni<6.20である鋼よりも熱伝導率は低くなる。それでも、26W/m/K以上の熱伝導率であれば、金型としての冷却能は充分に大きい。すなわち、6.20≦Mn+Cr+0.5Niについては、200℃において熱伝導率が26W/m/K以上になる成分系を選択すれば良い。
本発明において、Mo,Vを下限量で添加した組成では、0.5Mo+V=0.06となるが、硬さを安定して得るには0.19<0.5Mo+Vとする。これによって、35HRC以上の硬さを更に得やすくなる。また、本発明において、これら成分を上限量で添加した組成では、0.5Mo+V=0.98となるが、破壊靭性値や衝撃値や機械疲労強度が特に要求される場合は、0.5Mo+V<0.45とする。上記特性のバランスに特に優れた範囲は、0.19<0.5Mo+V<0.45である。更に好適な範囲は、0.22<0.5Mo+V<0.42である。この範囲であれば、35HRC以上の硬さを安定して得ることができ、かつ破壊靭性値や衝撃値や機械疲労強度の顕著な低下も無い。
一方、窒化などの後工程上、どうしても高温で焼き戻さなければならないことがある。そのような場合には0.45≦0.5Mo+Vでも良い。
鋼L2:0.072C-0.19Si-1.21Mn-0.70Cu-1.18Ni-4.01Cr-0.39Al---0.05Mo-0.03V鋼
鋼M2:0.073C-0.20Si-1.20Mn-0.71Cu-1.17Ni-4.00Cr-0.39Al---0.99Mo-0.49V鋼
V1系:0.072C-0.21Si-1.19Mn-0.70Cu-1.20Ni-3.98Cr-0.40Al---0.15Mo-V鋼
V2系:0.074C-0.21Si-1.20Mn-0.73Cu-1.21Ni-4.03Cr-0.41Al---0.40Mo-V鋼
V3系:0.072C-0.20Si-1.19Mn-0.70Cu-1.20Ni-4.00Cr-0.40Al---0.65Mo-V鋼
V4系:0.072C-0.22Si-1.20Mn-0.68Cu-1.22Ni-3.99Cr-0.41Al---0.90Mo-V鋼
の全22鋼種である。鋼L2はMo-Vの下限成分、鋼M2はMo-Vの上限成分である。また鋼V1〜V4系は、請求項9の規定範囲内でVを任意に添加した20鋼種からなるものである。
図7を見ると、鋼L2でも35HRCを越えており、発明鋼の成分系は金型に必要な硬さを安定して得られる事が分かる。ここで、0.19<0.5Mo+Vに注目すると、硬さの上昇が見られ、高硬度化を狙う場合の望ましい領域である事は明らかである。0.22<0.5Mo+Vでは、更に安定して硬さ(およそ36HRC以上)を得られる。
しかし、MoとVの量によっては低衝撃値化するとは言え、いずれの水準も25J/cm2を越えている。市販材の中には15J/cm2以下の鋼も少なくない。発明鋼は安定して高靭性であることも分かる。
発明鋼の衝撃値は26〜32J/cm2の範囲で安定していると見ることもできるが、ここで、Mo+V<0.45に注目すると、衝撃値が安定する領域と見なせる。Mo+V<0.42では、この傾向が更に顕著となる。
この現象は水冷孔割れと呼ばれる。水冷孔割れを起こした金型は交換することになり、金型費の増加や生産性の低下を招く。すなわち、水冷孔割れは重大なトラブルであり、回避しなければならない。
素材は、後述する発明鋼1、比較鋼2、比較鋼3と同じ合金成分である。
試験片を片持ち状態に支持した後、固定側とは反対の端部に錘を吊り下げて試験片に曲げの力を付加する。この時、ノッチ部の上側には引張応力が常時作用する。そしてこの状態でノッチ部に水を滴下し続ける。
以上により、水による腐食環境下で引張応力が作用する状況が作り出される。これが、金型の水冷孔割れを模擬しているのである。
素材は、後述する発明鋼1、比較鋼1と同じ合金成分である。
鋼材の部位によって硬さが異なると、被削性や鏡面研磨性を劣化させるため好ましくない。
調質後のブロック中心付近から切り出した素材で、被削性,衝撃値,熱伝導率,鏡面性,溶接性,耐食性,水冷孔割れの感受性,硬さバラツキを評価した。また製造コストも評価した。
ブロック材各部位の硬さは、炉内温度バラツキの影響を受けて同一にはならない。先に述べた「硬さ調節のし易さ」の指標として、ここでは硬さバラツキを評価した。硬さバラツキが小さい程、炉温が変動しても硬さが狭い範囲に収まることを意味し、硬さ調整がし易い鋼材ということになる。
先ず、本発明鋼に関して説明する。特筆すべきは熱伝導率の高さで、安定して26W/m/K以上である。特に、鋼19〜鋼22以外は28W/m/K以上を確保している。すなわち、金型の冷却性能不足が起こり難い。また、鏡面研磨性も番手8000以上をクリアしており、表面品質レベルの高い金型に使うことができる。他の特性は記号による定性評価であるが、発明鋼には「×」が皆無であり、諸特性のバランスが良いことは一目瞭然である。被削性やコストに「△」も極一部あるが、他特性とのバランスで見れば何ら問題はない。すなわち、熱伝導率と鏡面研磨性の高さを基本性能とし、他特性やコストパフォーマンスにも優れる鋼が本発明である。また室温における平均硬さも35〜45HRCの範囲内となっている。
また、硬さバラツキは3以内に収まっている。特に、発明鋼18〜発明鋼22を除けば,全てが硬さバラツキ2以内である。すなわち、狭い硬さ規格を要求された場合にも対応可能である。
ハイサイクル化が要求される昨今、これは致命的な欠点である。また、コストも安くはなく、鋼材特性の割には高価な位置づけとなる。比較鋼4は、熱伝導率が高く被削性も良い。一方、耐食性と鏡面研磨性に難があり、適用範囲はかなり制限される。比較鋼5は、鏡面研磨性に優れ、耐食性も良い。一方、被削性と熱伝導率に難があり、型加工の難しさや金型の冷却能不足が問題になる。比較鋼6は、鏡面研磨性に優れ、耐食性も良い。一方、被削性と衝撃値と溶接性と熱伝導率に難があり、型の加工や補修の難しさ、さらには金型の冷却能不足が問題になる。
また、硬さバラツキが3を超える比較鋼もあり、このような鋼材は狭い硬さ規格を要求された場合の対応が困難である。
これは、Si量の適正化と、3種類の分散強化機構を適正に組み合わせたことによる効果である。
3種類の分散強化機構とは、(1)MoやVを主体とした炭化物の2次析出、(2)Cuの時効析出、(3)NiとAlから成る金属間化合物の時効析出、である。しかも本発明では、合金元素量が既存鋼よりも少ない状態で(2)と(3)を達成し、強度と他特性をバランスさせた点にも特徴がある。
Claims (7)
- 質量%で
0.040<C<0.100
0.03<Si<0.28
1.11<Mn<1.45
0.30<Cu<0.77
0.30<Ni<1.78
3.23<Cr<9.00
0.10<Al<0.50
であり、更に
0.04<Mo<1.00
0.02<V<0.50
の少なくとも1種を含み、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有することを特徴とする熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼。 - 請求項1において、質量%で
0.30<W≦4.00
0.30<Co≦3.00
の少なくとも1種を更に含有することを特徴とする熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼。 - 請求項1,2の何れかにおいて、質量%で
0.004<Nb≦0.100
0.004<Ta≦0.100
0.004<Ti≦0.100
0.004<Zr≦0.100
の少なくとも1種を更に含有することを特徴とする熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼。 - 請求項1〜3の何れかにおいて、質量%で
0.0001<B≦0.0050
を更に含有することを特徴とする熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼。 - 請求項1〜4の何れかにおいて、質量%で
0.003<S≦0.050
0.0005<Ca≦0.2000
0.03<Se≦0.50
0.005<Te≦0.100
0.01<Bi≦0.30
0.03<Pb≦0.50
の少なくとも1種を更に含有することを特徴とする熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼。 - 請求項1〜5の何れかにおいて、質量%で
5.00<Mn+Cr+0.5Ni<6.20
であることを特徴とする熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼。 - 請求項1〜6の何れかにおいて、質量%で
0.19<0.5Mo+V<0.45
であることを特徴とする熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012232443A JP6191118B2 (ja) | 2011-11-18 | 2012-10-20 | 熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼 |
CN201310156195.4A CN103774047B (zh) | 2012-10-20 | 2013-04-28 | 具有优异的热导性、镜面抛光性和韧性的成型模具用钢 |
KR1020130048244A KR101928106B1 (ko) | 2012-10-20 | 2013-04-30 | 우수한 열 전도도, 경면 연마성 및 인성을 갖는 금형 다이용 강철 |
TW102115397A TWI576441B (zh) | 2012-10-20 | 2013-04-30 | 具有優異導熱性、鏡面拋光性能和韌性之成型模具用鋼材 |
EP13166415.3A EP2722406B1 (en) | 2012-10-20 | 2013-05-03 | Steel for molding die having excellent thermal conductivity, mirror polishing properties and toughness |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011252463 | 2011-11-18 | ||
JP2011252463 | 2011-11-18 | ||
JP2012232443A JP6191118B2 (ja) | 2011-11-18 | 2012-10-20 | 熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013127109A JP2013127109A (ja) | 2013-06-27 |
JP6191118B2 true JP6191118B2 (ja) | 2017-09-06 |
Family
ID=48777792
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012232443A Expired - Fee Related JP6191118B2 (ja) | 2011-11-18 | 2012-10-20 | 熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6191118B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
TWI500781B (zh) | 2013-02-28 | 2015-09-21 | Hitachi Metals Ltd | 模具用鋼及其製造方法 |
CN103567534B (zh) * | 2013-10-17 | 2015-12-23 | 天津钢铁集团有限公司 | 一种中厚板剪切机耐高温剪刃的生产方法 |
CN105803342B (zh) * | 2016-04-20 | 2017-09-12 | 上海瀚氏模具成型有限公司 | 一种表面纳米化低合金钢模具的制备方法 |
CN106987769B (zh) * | 2017-03-29 | 2018-08-03 | 苏州浩焱精密模具有限公司 | 一种高硬度精密蚀刻刀模 |
US11377718B2 (en) | 2018-10-12 | 2022-07-05 | Daido Steel Co., Ltd. | Steel for mold |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3351766B2 (ja) * | 1999-02-12 | 2002-12-03 | 日立金属株式会社 | 被削性に優れた高強度金型用鋼材 |
JP2001152278A (ja) * | 1999-11-22 | 2001-06-05 | Sanyo Special Steel Co Ltd | 鏡面性、溶接性および被削性に優れたプラスチック成形金型用鋼 |
JP2001152246A (ja) * | 1999-11-22 | 2001-06-05 | Sanyo Special Steel Co Ltd | 靭性、鏡面性および被削性に優れたプラスチック成形金型用鋼の製造方法 |
-
2012
- 2012-10-20 JP JP2012232443A patent/JP6191118B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013127109A (ja) | 2013-06-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2722406B1 (en) | Steel for molding die having excellent thermal conductivity, mirror polishing properties and toughness | |
JP5412851B2 (ja) | プラスチック成形金型用鋼およびプラスチック成形金型 | |
US20180142317A1 (en) | Hot mold steel for long life cycle die casting having high thermal conductivity and method for preparing the same | |
JP6191118B2 (ja) | 熱伝導性能と鏡面研磨性及び靭性に優れた成形用金型用鋼 | |
JP2009242820A (ja) | 鋼、金型用鋼及びこれを用いた金型 | |
JP7144719B2 (ja) | プレハードン鋼材、並びに、金型及び金型部品 | |
EP3550051B1 (en) | Steel for mold, mold, use of a steel for manufacturing a mold, and a process of manufacturing a mold | |
JP2013177669A (ja) | 熱伝導性能と鏡面研磨性と耐候性と靭性及び被削性に優れた成形用金型用鋼 | |
JP2016017200A (ja) | 金型用鋼及び温熱間金型 | |
JP2020070457A (ja) | 熱伝導率に優れる熱間工具鋼 | |
EP2915895A2 (en) | Steel for mold | |
JP6798557B2 (ja) | 鋼 | |
JP6459539B2 (ja) | 金型用鋼及び金型 | |
JP2010168639A (ja) | ダイカスト金型鋼 | |
JP4849473B2 (ja) | 耐摩耗性高Cr鋳鉄およびその製造方法 | |
JP2007146263A (ja) | 水冷孔からの割れが抑制されたダイカスト用熱間工具鋼 | |
JP7392330B2 (ja) | 金型用鋼及び金型 | |
KR20220158638A (ko) | 강재 및 이를 이용한 강 제품 | |
EP3636791B1 (en) | Steel for mold | |
JP6866692B2 (ja) | 金型用鋼及び金型 | |
JP2021080492A (ja) | 高温強度と靭性に優れた熱間工具鋼 | |
JPH07278737A (ja) | プラスチック成形用プリハードン鋼およびその製造方法 | |
JP2015081356A (ja) | 金型用鋼 | |
JP2021038443A (ja) | 金型用鋼及び金型 | |
JP2016069661A (ja) | 金型用鋼及び金型 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20150825 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20160421 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20160524 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20160606 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160715 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20161220 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20170213 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20170424 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20170711 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20170724 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6191118 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |