図1は、本発明の紙幣入出金機を実装した現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。
装置の本体筐体101の上部には、筐体101の上部正面板101bに設けられたカードスロット102aと連通し利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構102と、通帳スロット103aと連通し利用者の通帳を処理する通帳処理機構103とを備えている。また、本体筐体101の下部には、紙幣を処理する紙幣入出金機構1を備えており、中間部には、取引の内容を表示及び入力する顧客操作部105が設けられている。106は現金自動取引装置全体の制御を司る本体制御部である。
図2は、装置の制御関係を示すブロック図である。前述のように、本体筐体101に納められたカード・明細票処理機構102、通帳処理機構103、紙幣入出金機構1及び顧客操作部105は、バス106aを介して本体制御部106と接続されており、本体制御部106の制御の下に必要な動作を行う。本体制御部106は上記の他に、インタフェース部106b、係員操作部106c、外部記憶装置106dともバス106aで接続されており、必要なデータのやりとりを行う。なお、図2で101dは、上記各機構、構成部分に電力を供給する電源部である。
図3は、図1の現金自動取引装置の中で、特に本発明に関わる紙幣入出金機1の内部構成を示す側面図である。
紙幣入出金機1は、利用者が紙幣の投入・取り出しを行う入出金口2と、この入出金口2の下流に位置し、入出金口2から入金された紙幣の判別を行う入金紙幣判別部3と、入金紙幣判別部の下流に位置し、入金された紙幣を利用者による取引成立までの間一旦収納する一時保管庫4と、入金時における所望の取引が成立した紙幣を収納する1ヶの入金庫6と、出金用の紙幣を収納する1ヶの出金庫7と、入出金兼用の2ヶのリサイクル庫8と、入金庫に収納しない入金紙幣や、出金庫から繰り出された紙幣のうち出金しない紙幣を収納するリジェクト庫9(言い換えれば判別部で判別不可能な紙幣を収納する収納部であり、出金時は、出金紙幣判別10で判定してリジェクトするが、入金時のリジェクトはリジェクト庫9に収納せずに入出金口に返却する。)と、リサイクル庫8に補充する紙幣や、リサイクル庫8から回収した紙幣を収納する装填・回収庫12と、出金用の紙幣を判別する出金紙幣判別部10とを有する。尚、この出金紙幣判別部10は主に出金庫7やリサイクル庫8から出金される紙幣を判別する。一方、出金庫7には予め金融機関の銀行員等により手詰めにより紙幣がセットされており、またリサイクル庫8には入金判別部3により予め判別された紙幣がセットされていることから、出金紙幣判別部10は入金紙幣判別部3に比べて簡易な紙幣判別を行っている。具体的には出金される紙幣が2枚以上重なっていることを判別できる程度の重なり検知判別だけでも良い。
そして入出金口2より入金紙幣判別部3を通り、一時保管庫4、リサイクル庫8、出金庫7、入金庫6、出金紙幣判別部10、リジェクト庫9、装填・回収庫12、そして再び入出金口2に対し、順に紙幣を搬送を可能にする紙幣搬送路5を有する。この紙幣搬送路5は後述するが、円ループ又は環状に構成された主搬送路(又はメイン搬送路)と、リサイクル庫8や出金庫7等の紙幣を収納する複数の各ユニットと主搬送路とをつなぐ分岐搬送路とにより構成されており、簡単で安価な入出金装置を提供することができるという効果を有する。
また紙幣入出金機1には制御部11を有する。制御部11は、図1、2で説明した装置の本体制御部106からの指令および紙幣入出金機1の状態検出に応じて紙幣入出金機1の制御を行い、また、紙幣入出金機1の状態を必要に応じて、本体制御部106に送る。ここで紙幣搬送路5は、図では線で示されているが、搬送路の分岐点には切替えゲートが設けられ、矢印方向の一方向に紙幣を搬送し、入金紙幣判別部3や、出金紙幣判別部10からの判別結果を基に制御部11で紙幣の搬送を制御する。この様に紙幣は上流又は下流等に選択的に紙幣を搬送するのではなく、一方向に搬送制御されることで更に簡素で低コストの装置を提供することができる。
以下、本実施形態の主要な各構成要素2〜11の詳細とその動作を中心に図3から図8を用いて説明する。
入出金口2は、シャッター26を有し、シャッター26をスライドさせて開閉し、利用者が出金時の紙幣を取り出し、入金時の紙幣を投入できるようにする。投入された紙幣を押板23でフィードローラ21の方向に押し付け、フィードローラ21の回転で送り出し、繰り出し方向には回転しないゲートローラ22で紙幣の2枚送りを防止する。こうして、入出金口2の紙幣は紙幣搬送路5へ繰り出され、装置内に取り込まれる。また、装置内から出金される紙幣や、入金時の紙幣判別できない等の理由でリジェクトされる紙幣は、紙幣搬送路5を経由して、この入出金口2内のスタックローラ25とブラシローラ24の間に送り込まれ、連続して搬送される紙幣同志が干渉することなく収納されるため利用者がその紙幣を取り出すことができる。
入金紙幣判別部3は、1対のローラからなり、ローラ間を紙幣が搬送されたときのローラの変位を検出して、2枚以上重なりかどうか検出する2枚検知部(又は重なり検知部)31と、イメージセンサ等で紙幣の印刷等を検出して紙幣の金種、真偽を判別する鑑別部32から構成され、各通過紙幣の判別結果を制御部11に報告する。
一時保管庫4は、ステンレスの薄板製の誘導テープ43と、誘導テープ43とともに搬送された紙幣を巻き取る回転ドラム41と、誘導テープ43のみを巻き取る巻き取り軸42と、回転ドラム41に紙幣の進入を案内する誘導テープ43と共に回転する入口ローラ45と、対向するバックアップローラ44から構成される。誘導テープ43の両端を支持する回転ドラム41と巻き取り軸42は、それぞれ別個の図示せぬ駆動源に接続され、巻き取り軸42側には駆動源との間にトルクリミッターを介している。入金取引前には、誘導テープ43は巻き取り軸42側に巻き取られている。そして入金紙幣を一時保管庫4に取り込むときに、回転ドラム41を誘導テープ43を巻き取る方向に(図示する回転ドラム41が時計回り)、誘導テープ43の走行速度が紙幣の進入速度とほぼ同一になるよう回転し、入金紙幣を順次回転ドラム41に巻き取る。一方、巻き取り軸42は、別の駆動源により誘導テープ43を巻き取る方向、すなわち、誘導テープ43に張力を架けるように、トルクリミッターを介して駆動されており、誘導テープ43はたるむことなく回転ドラム41に紙幣とともに巻き取られる。この時、回転ドラム41に巻き取られた紙幣は、前述の入金紙幣判別部3で既に金種等が判別された紙幣であり、制御部11は、一時保管庫4への紙幣の進入を監視しながら、一枚ごとの金種情報を記憶している。一時保管庫4に収納された紙幣に対する入金取引が成立すると、即ち、利用者の入金した紙幣と装置が判別した紙幣とが一致するか等の取引が成立すると、回転ドラム41を前述した方向とは逆に回転し(図示の反時計回り)、巻き取り軸42を巻き取り方向にトルクリミッターを介して誘導テープ43に張力を架けながら巻き取られた紙幣は、収納時とは逆の順に紙幣搬送路5に送出される。
入金庫6は、図3に図示する本実施形態では、1ヶ実装しており、図4に示すように、金庫外の図示せぬ駆動源からギヤを介して駆動される回転するスタックローラ61と、スタックローラ61に対向するバックアップローラ62、63と、バックアップローラ63と同一軸上にあって弾性部材が放射状に配置したブラシローラ64、および、スタックガイド65によりスタック機構を構成している。図3の紙幣搬送路5から入金庫6に向かって矢印69の方向に搬送された紙幣は、スタックローラ61の回転により搬送され、ブラシローラ64の回転により、進入紙幣をスタックガイド65側に押し付けて進入するとともに、スタック済みの紙幣の下端をブラシローラ64が、スタックガイド65から遠ざける方向に押し込みながら、紙幣同志が干渉しないようにして収納する。また、収納された紙幣は、底板68、押板66と、底板68より上面で紙幣下面を支持するように懸架された底面ベルト67と、スタックガイド65で囲まれた収納空間に収納されており、押板66と底面ベルト67は、一体となって収納空間内を可動し(図示する右方向に押し付ける)、図示せぬ金庫外の駆動源により、収納紙幣の増加に伴い、進入紙幣と収納紙幣が干渉しないよう収納紙幣をスタックガイド65から遠ざける方向に移動制御される。この様に構成したことで入金庫6が横置きにもかかわらず、スタック機構より搬送される紙幣と収納済みの紙幣とが干渉せずに搬送、収納を行うことができる。
図3の出金庫7は、本実施形態では1ヶ実装しており、図5に示すように金庫外の図示せぬ駆動源からギヤを介して駆動され回転するフィードローラ71と、フィードローラ71に対向して回転するバックアップローラ72と、フィードローラ71に対向して繰り出し方向には回転しないゲートローラ73、および、分離ガイド75により分離機構を構成している。出金用の紙幣は、底板78、押板76と、底板78より上面で紙幣下面を支持するように懸架された底面ベルト77と、分離ガイド75で囲まれた収納空間に、係員により整列してセットされ、図示する一番左側の最前面の紙幣は、押板ばね70を介して押板76によりフィードローラ71に押し付けられている(図面左方向)。押板76と底面ベルト77は、一体となって、収納空間内を可動し、押板ばね70により収納紙幣の減少に伴い、繰り出し紙幣がフィードローラ71に所定の押圧力がかかるように収納紙幣を移動させる。フィードローラ71に押し付けられた紙幣は、回転するフィードローラ71で送り出し、繰り出し方向には回転しないゲートローラ73で2枚送りを防止しながら矢印79の方向に出金庫7から図3の紙幣搬送路5へ一枚ずつ搬送される。
図6は図3の2個実装されたリサイクル庫8の詳細を示す構成図である。リサイクル庫8は、前述の紙幣を連続して収納する入金庫6と紙幣を連続して分離繰り出す出金庫7の機能を併せ持って、収納と分離繰り出しのできる金庫であり、前述の出金庫7の分離機構と同一の形状のスタック・フィードローラ81と、回転するバックアップローラ82と、スタック方向に回転し、繰り出し方向には回転しないゲートローラ83、このゲートローラ83と同一軸上にあって弾性部材が放射状に配置したブラシローラ84、および、分離時とスタック時で可動する分離・スタックガイド85によりスタック・分離機構を構成している。底板88、押板86と、底板88より上面で紙幣下面を支持するように懸架された底面ベルト87と、分離・スタックガイド85で囲まれた収納空間に、紙幣は収納される。リサイクル庫8から紙幣を搬送する分離動作時には、分離・スタックガイド85は、破線85aで示す位置に移動し、押板86と底面ベルト87は、一体となって収納空間内を可動し(右方向)、押板ばね80により収納された繰り出し紙幣がスタック・フィードローラ81に所定の押圧力がかかるように収納紙幣を移動させる。スタック・フィードロ
ーラ81に押し付けられた紙幣は、回転するスタック・フィードローラ81で送り出し、繰り出し方向には回転しないゲートローラ83で2枚送りを防止しながら矢印89aの方向に一枚ずつ搬送される。他方、リサイクル庫8に紙幣を搬送するスタック動作時には、分離・スタックガイド85は、実線85で示す位置に移動し、押板86と底面ベルト87は一体となって、図示せぬ金庫外の駆動源により、収納空間内を可動し(右方向)、収納紙幣の増加に伴い、矢印89の方向に搬送された進入紙幣と収納紙幣が干渉しないよう収納紙幣を分離・スタックガイド85から遠ざける方向に移動制御される。
図3に示すリジェクト庫9は、主にリサイクル庫8や出金庫7より出金搬送される紙幣を出金紙幣判別部10によりリジェクトされた紙幣を収納するため、その内部の構成は前述の入金庫6と同一の構成である。
図3の装填・回収庫12は、リサイクル庫8に紙幣を補充するため紙幣を分離搬送したり、リサイクル庫8からの紙幣を回収するスタック機能とを併せ持つため、その内部の構成は前述のリサイクル庫8と同一の構成である。
以上説明したように、前述の各ユニットは入金庫6やリジェクト庫9の様にスタック専用に行うユニットグループと、出金庫7の様に分離専用に行うユニットグループと、リサイクル庫8や装填・回収庫12の様にスタック機能と分離機能とを併用するユニットグループとにその内部構成が区別されているが、外形寸法を略同一形状とすることで取り扱う金種や装置の運用方法に応じてそれぞれのユニットを入れ替えできることが可能となる。
図3で説明した出金紙幣判別部10は、前述したように出金取引時、出金庫7又はリサイクル庫9から繰り出された紙幣の判別を行うが、出金庫7、リサイクル庫9の紙幣は、金種毎に別れており、また紙幣の金種、真偽の判別は不要であるため、最低でも紙幣が2枚重なりでないかを判定する簡易な構成で良い。そのため本実施形態では、前述の入金紙幣判別部3の2枚検知部31と同様の1対のローラからなり、ローラ間を紙幣が搬送されたときのローラの変位を検出して、2枚重なりかどうか等検出している。
図3に図示するように紙幣搬送路5は、入金紙幣判別部3、出金紙幣判別部10を通過して各ユニット近傍を環状に、一方向に搬送するメイン搬送路50(主搬送路とも言う)と、メイン搬送路50の途中から分岐して、一時保管庫4、リサイクル庫8、出金庫7、入金庫6、リジェクト庫9、装填・回収庫12、入出金口2との間で収納、あるいは繰り出すための、ユニット搬送路51〜59(分岐搬送路とも言う)から構成されている。
ここでメイン搬送路50とユニット搬送路51〜59と各ユニットとの関係の特徴について説明する。
メイン搬送路50は図示するように、ある場所から紙幣を搬送するとその紙幣は一方向に搬送され、再び同じ場所を通らずにそのある場所まで戻ってくることができるというメイン搬送路50自身で閉じた搬送構成となっており、環状に紙幣の搬送を行うことができる。そして各ユニット、即ち紙幣を収納する複数の収納部はこのメイン搬送路50に対して順に配置され、各ユニットとメイン搬送路をつなぐユニット搬送路51〜59は、それぞれ個々に独立してメイン搬送路50と紙幣を受け渡す機能となっている。従って搬送路、各ユニットは簡易に設計可能となり、安価な入出金機を提供することができる。
そしてこのメイン搬送路50は、図中に太点線で示す入出金口2から入金紙幣判別部3を通過して一時保管庫4の分岐点までの上流メイン搬送路50aと、図中に太実線で示す一時保管庫4の分岐点から、出金紙幣判別部10を通過して入出金口2に戻る下流メイン搬送路50bに分割される。
以下、このメイン搬送路50内における紙幣の搬送制御について詳細に説明する。メイン搬送路50のうちの上流メイン搬送路50aは図示せぬ第一の駆動モータを一方向に回転して駆動することにより搬送路が動作し、紙幣が運ばれる。同様に、この第一の駆動モータの駆動によって入出金口2の分離部のユニット搬送路59と一時保管庫4のユニット搬送路51が動作する。
一方、下流メイン搬送路50bは図示せぬ第二の駆動モータを一方向に駆動することにより動作し、この第二の駆動モータを介してリサイクル庫8、出金庫7、入金庫6、リジェクト庫9、装填・回収庫12等のユニット搬送路52〜57が動作する。
例えば、入出金口2に利用者により複数の紙幣が投入される様な入金取引時には、通常第一の駆動モータのみが回転駆動される。従って、入出金口2から搬送される紙幣は入金紙幣判別部3によって金種等が判別された後、一時保管庫4に一旦収納される。ここで入金紙幣判別部3で判別できなかった紙幣や、傾きや紙幣同志の間隔の異常となった入金リジェクト紙幣を一時保管庫4に収納すると、正常に判別された紙幣と混合してしまうため一時保管庫4には取り込まない。そのため前述の第二の駆動モータを回転駆動し、下流メイン搬送路50bにそのリジェクト紙幣を搬送し、後続の紙幣が同様に入金リジェクトでなければ、第二の駆動モータを停止し、入金リジェクト紙幣を下流メイン搬送路50b上に保留する。この様に装置を簡素に構成する環状のメイン搬送路50は、一時保管庫4を境に第一の駆動モータで駆動される上流メイン搬送路50aと、第二の駆動モータで駆動される下流メイン搬送路50bとに分割し、更に、判別部3で正常と判別された紙幣は一時保管庫4へ、リジェクトと判別されたリジェクト紙幣は下流メイン搬送路50bに保留することで、正常紙幣とリジェクト紙幣との切り分けが可能になる。
続いてメイン搬送路50から各ユニットに分岐する分岐搬送路について説明する。図3で説明したユニット搬送路51〜57は、図7に示すように共通の構成であり、そのため各ユニットの取り替えが可能となる。ユニット搬送路51〜57は2ケのプーリ506、507の間に図示せぬ搬送ベルトを懸架し、紙幣をスタックする方向の実線矢印504と、紙幣をユニットから分離する方向の破線矢印504aとの搬送路を形成する。そして、メイン搬送路50からの分岐を切り替える収納ゲート501と、ユニットへの収納と繰り出しを切り替えるS・F(スタック・フィードの略)切替ゲート502が、それぞれ電磁ソレノイド(図示せぬ)により、図の実線と破線(501と501a、502と502a
)の位置に切替制御される。
メイン搬送路50からユニットに紙幣を収納するときは、収納ゲート501、S・F切替ゲート502を共に実線の位置に制御し、紙幣は実線矢印505、504、503のように搬送されてユニットにスタックされる。逆にユニットからメイン搬送路50に紙幣を繰り出すときは、収納ゲート501a、S・F切替ゲート502aの如く共に破線の位置に制御することで、破線矢印503a、504a、505aのようにユニットから紙幣が分離されて搬送される。
図8は主に前述してきた紙幣入出金機構1の内部ブロック図を示したものである。紙幣入出金機構1の制御部11は、図1,2で説明した装置の本体制御部106とバス106aを介して接続され、本体制御部106からの指令や紙幣入出金機1の状態検出等に応じて紙幣入出金機1の制御を行い、また、紙幣入出金機1の状態を必要に応じて本体制御部106に送る。そしてこの制御部11は、紙幣入出金機構1の中では各ユニット(入出金口2、入金紙幣判別部3、一時保管庫4、紙幣搬送路5、入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9、出金紙幣判別部10、装填・回収庫12)の駆動モータや電磁ソレノイドやセンサと接続され、取引に応じてセンサで状態を監視しながら、アクチュエータを駆動制御することで、紙幣の搬送制御やゲートの切り換え制御、紙幣の判別制御などが可能となる。
次に、図3で図示した紙幣入出金機1を中心に取引毎の動作、特にリジェクト紙幣の取り扱いについて説明する。
前述したように入金取引時には、入出金口2に投入された紙幣は、一枚ずつに分離して、上流メイン搬送路50aを通って、一時保管庫4に一旦収納されるが、入金紙幣判別部3で、判別できなかった紙幣や、傾きや紙幣同志の間隔の異常となった入金リジェクト紙幣は、一時保管庫4には取り込まずに下流メイン搬送路50bに搬送し、後続の紙幣が同様に入金リジェクトでなければ、第二の駆動モータを停止し、入金リジェクト紙幣を下流メイン搬送路上に保留する。入金リジェクトの発生毎に、下流メイン搬送路50bを駆動、停止を繰り返し、連続してリジェクト紙幣を保留できる。入金した紙幣の計数が終了後、入出金口2の押板23を移動して入出金口2への紙幣のスタック準備後、再度、下流メイン搬送路50bを駆動し、保留したリジェクト紙幣を入出金口2に収納して、利用者に返却する。
一時保管庫4に収納された正常な紙幣に関しては、入金取引の取引成立後に、一時保管庫4の回転ドラム41を逆に回転し、巻き取られた正常な紙幣は、収納時とは逆の順に下流メイン搬送路50bに送出され、収納時記憶した金種情報に従って入金庫6、リサイクル庫8、リジェクト庫9のいずれかに図4,6で説明した如く収納する。尚、リジェクト庫9に収納される紙幣としては例えば入金紙幣判別部3では偽造ではない正常券と判別されたが、リサイクル不可能な破れ等がある紙幣などがある。
ここで入金紙幣判別部3によってリジェクト紙幣と判別された紙幣を下流メイン搬送路50bに停止させて保留する必要性について説明する。
最初に前述したように一時保管庫4にリジェクト紙幣も収納してしまうと正常な紙幣と混合してしまうため、リジェクト紙幣のみを入出金口2に返却するのは容易ではない。従って一時保管庫4に収納されるべき正常な紙幣と区分けしなければならない。しかし図示からも明らかなようにメイン搬送路50は簡素な環状に形成されておりしかも一方向にしか動作せず、また、入金リジェクト紙幣を専用に一時保管するユニット機構も無い。そこで本発明では、メイン搬送路50を上流メイン搬送路50aと下流メイン搬送路50bに分割して、リジェクト紙幣を下流メイン搬送路50bに保留することで、リジェクト紙幣は正常な紙幣と区分けすることが可能となる。
また、本発明では説明を省略したが、図3の入出金口2内にある押板23を境に、一方を利用者が投入する収納部にして、他方をリジェクト紙幣を収納するように構成すれば、リジェクト紙幣をわざわざ下流メイン搬送路50bに停止させずとも、入出金口2内の他方の収納部にリジェクト紙幣を収納すれば正常な紙幣と区分けすることもできるし、またリジェクト紙幣を利用者に素早く返却できる。また上流又は下流メイン搬送路の駆動系を2つに分けて、それぞれ複雑な搬送制御をする必要はなく、1つの駆動系のみで紙幣の搬送制御を行うことができるという効果がある。
しかし、この構成を採用すると入出金口2はリジェクト紙幣を収納する収納部が必要となってしまいその分大型化になり、更に押板23の制御をしなければならないという問題がある。そこでリジェクト紙幣を下流メイン搬送路50bに停止させて保留する構成を採用すれば(前述してきた実施形態)、上記問題点が解決でき、一層の装置の小型化が可能になるという効果がある。
次に、出金取引時には、図5,6で説明したように出金庫7又はリサイクル庫8の各金種毎の金庫から所定の枚数づつメイン搬送路50に繰り出される。そしてメイン搬送路50に搬送された紙幣は出金紙幣判別部10で、紙幣の重ね等が判別され、入出金口2に収納されて利用者に支払われる。出金紙幣判別部10で出金リジェクトが発生した場合には、その紙幣はリジェクト庫9に収納され、不足分の紙幣を追加して出金庫7又はリサイクル庫8から繰り出される。
利用者が入出金口2の紙幣を取り忘れた場合には、そのまま入出金口2に残して装置異常として、取引を中止することもできるが、後続の取引を続行するため本実施形態では、取り忘れ紙幣を入出金口2から分離して、前述の入金取引と同様に入金紙幣判別部3によって判別して、入金庫6やリサイクル庫8やリジェクト庫9等の所望のユニットに収納すればよい。
また、本実施形態では、装填・回収庫12を用いて、2ヶのリサイクル庫8との間で装填、回収、精査動作を行うことができる。
装填動作は、係員が2ヶのリサイクル庫12に金種毎にセットしたい紙幣を、個別にセットするのではなく、装填・回収庫12に一括してセットし、装置内で自動的にリサイクル庫12に金種毎に収納する動作である。装填・回収庫12から繰り出された紙幣は、入金用紙幣判別部3で金種を判別し、金種毎にリサイクル庫12に振り分けて収納する。入金紙幣判別部3で判別できなかった紙幣や傾きや紙幣同志の間隔の異常となった装填リジェクト紙幣は、通常リジェクト紙幣としてリジェクト庫9に収納される。しかしそもそも装填・回収庫12にセットされる紙幣は係員によりセットされる正常な紙幣であり、それでも偶発的に入金紙幣判別部3でリジェクトされてしまう。そこで本発明では判別部3でリジェクトされた紙幣は一旦一時保管庫4に収納し、装填・回収庫12から全紙幣が繰り出された後で、一旦一時保管庫4から装填リジェクト紙幣を送出して装填・回収庫12に収納する。そして再び装填動作を行うことで前回リジェクト紙幣と判別されても今回正常な紙幣と判断され、効率の良い装填動作が可能になる。
回収動作は、リサイクル庫12のいずれかが満杯になった時等に、係員が個別にリサイクル庫から紙幣を抜き取るのでなく、自動的にリサイクル庫12から所定枚数の紙幣を装填・回収庫12に収納する動作である。リサイクル庫8から繰り出された紙幣は、出金用紙幣判別部10で枚数を判別し、装填・回収庫12に収納する。判別部10でリジェクトが発生した場合には、その紙幣はリジェクト庫9に収納される。
精査動作は、装置内の紙幣の在高を、係員が、入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9の全金庫内の紙幣を取り出して手作業で計数するのではなく、リサイクル庫9の在高を装置内で自動的に計数し、係員の省力化を図る動作である。係員は紙幣が空の装填・回収庫12(構造上同一のリサイクル庫8でもよい)を装置にセットし、精査動作を実施する。まず一方のリサイクル庫8から繰り出された全紙幣を空の装填・回収庫12に収納する。そして、再度、装填・回収庫12から繰り出し、入金紙幣判別部3で金種、枚数を計数し、空になったリサイクル庫に収納する。他方のリサイクル庫8についても同様に行い金種、枚数を計数する。動作終了後、2ヶのリサイクル庫の在高は、制御部11から装置の出力手段により係員に報告する。
次に、本実施形態の特徴をなす構成、機能について詳細に説明する。
本実施形態は、前述のように、入金庫6を1ケ、出金庫7を1ケ、リサイクル庫8を2ケ、リジェクト庫9を1ケ、装填・回収庫12を1ケとしている。これら入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9のそれぞれは、同一の外形寸法であるため紙幣入出金機構1に対し着脱自在の構成である。また、ユニット搬送路52〜57は、共通でそれぞれ分割した構成にしており、入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9、装填・回収庫12の合計個数の設定変更や、個々の金庫の個数配分の設定変更が容易な汎用的な構成としている。
例えば、入金と出金を行う場合には、銀行側にとって入金庫6、出金庫7を別々にするより、資金効率の面から入金庫6と出金庫7の代わりにリサイクル庫8を選択することもできる。また紙幣の流通事情により、リサイクルした場合に偽造紙幣の危険、紙幣の損傷によるジャムの危険の問題があることから入金庫6、出金庫7を別々とする構成を選択することもできる。
リサイクル庫8を2ヶ以上実装する場合には、係員処理の省力化のため装填・回収庫12を付けた構成を選択した方が効果を発生するが、逆にコスト面或いは装置内での紙幣の搬送頻度が増加し、紙幣の損傷によるジャムの危険があるため、それらの問題を解決するため後述の図9に示すような装填・回収庫12のない構成を選択することもできる。さらに、図9の構成を選択して、実装している3ケのリサイクル庫9の1ケを、その時々の状況に合わせて装填・回収庫として置き換え、上述した様な装填、回収、精査動作を行ってもよい。
銀行側にとって、導入当初は図3の構成で説明したユニットで運用し、入出金取引の稼働状況により、入金取引より出金取引が多く出金庫を増やしたい場合などは、入金紙幣を入金庫6ではなくリジェクト庫9に収納し、入金庫6の代わりに出金庫7に置き換える運用に変更するだけでよい。また、稼働状況、即ち平日と休日とで運用の形態を変更することも可能である。例えば、本実施形態のリサイクル庫8と出金庫7を比較するとリサイクル庫8は、入金紙幣の収納動作のためにその収納部の前面に空間を確保しているために、出金庫7に比較して紙幣容量が少ない。大量の出金取引が予想される休日には、リサイクル庫8の代わりに出金庫7に置き換えて運用することも可能となる。
入金のみ、出金のみをそれぞれ専用に取り扱う入金機、出金機として使用することも入金庫6や出金庫7のセットの仕方によって当然可能であり、特に、出金機として使用する場合には、入金紙幣を判別する必要が無いことと入金紙幣を一時保管する必要が無いことから図3の内部構成から入金紙幣判別部3、一時保管庫4のない構成とするのがコスト面で有利である。
入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9、装填・回収庫12の合計個数の変更する場合のうち前述の本実施形態より増加する場合には、紙幣入出金機1の高さ寸法を拡大して金庫を積層すればよく、逆に本実施形態より減少する場合には、不要部分をあけたままで運用することもできるし、紙幣入出金機1の高さ寸法を縮小して小型化してもよい。
入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9、装填・回収庫12は、前述のように、入金庫6とリジェクト庫9、リサイクル庫8と装填・回収庫12にそれぞれ互換性があること、出金庫7においても複数庫実装した場合に互換性があることなどから、各金庫に表示器及び記憶手段を設けて、金庫の区別、金種の区別、収納枚数等を表示、記憶すれば、取扱性の向上、誤着脱の防止、現金管理の厳格化が図れる。
また、前述してきた入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9、装填・回収庫12と、出金用紙幣判別部10の配置は、入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8の選択の自由度を考慮し、入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8の下流(紙幣を出金する側)に配置しているが、入金庫6と出金用紙幣判別部10を入れ替えて配置してもよい。これにより出金用紙幣判別部10と、リジェクト庫9に搬送するための切替ゲートの距離を長くとることができ、出金用紙幣判別部10の判定時間を確保するための入金庫6とリジェクト庫9の上下方向の空間を確保する必要がなく、全体の高さ寸法を小型化できる。
次に、本実施形態は、次のような点で小型で簡素な構成を実現している。
第一に、一時保管庫4は、本実施形態のリサイクル庫8に示すごとく、収納部に積層後一枚ずつ分離繰り出すスタック・フィード機構としても、基本的に同様な機能を奏でるが、前述の本実施形態に示すごとく、誘導テープとともに回転ドラムに巻き付け収納、放出する機構の方が、放出時に紙幣間を誘導テープで区切っているため2枚重なりがなく性能が安定する。従って、一時保管庫4から入金庫6に搬送する迄の間の紙幣搬送路に紙幣判別部を実装する必要がなく、その分小型化が可能となる。
第二に、入金紙幣判別部3より簡素な出金紙幣判別部10の実装により、出金庫7から入金紙幣判別部3を通過せずに入出金口1に搬送する紙幣搬送路とすることができるので図3に示すように紙幣搬送路5が簡素な円ループ(環状)とすることができる。
第三に、入金のとき発生するリジェクト紙幣を前述のように下流搬送路50b上に一時保留することにより、入金リジェクト紙幣を集積する収納部を実装する必要がない。
第四に、入金口と出金口は後述の様に別々にしても基本的に同様の機能を奏でるが、本実施形態のように、入出金口を一体の構成にすることにより、出金時の取り忘れ紙幣を入出金口から入金時と同様に繰り出し、その後にリジェクト庫9に収納することができ、従来例に見られるような取り忘れ回収箱を出金口近傍に実装する必要がない。
第五に、紙幣搬送路5のうちユニット搬送路51〜57は、図7で説明したように共通な構造で構成されているため、各ユニットとの間で、収納方向503と繰り出し方向503aの双方向であっても、プーリ506、507の駆動は一方向でよく、メイン搬送路50と共通の駆動源を用いることが可能となる。
以上の相乗効果により、紙幣搬送路5は、従来例に見られるような紙幣判別部を中心に枝状に合流、分岐する複雑な構成でなく、入金紙幣判別部3、出金紙幣判別部10を通過して各ユニット近傍を環状に、一方向に搬送するメイン搬送路50と、メイン搬送路50の途中から分岐して、各ユニットとの間で収納又は繰り出すためのユニット搬送路51〜59からなる簡素な構成としている。
また、本実施形態は、係員が通常操作する入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9は、装置後面に(図3の右方向へ)、積層して配置してあり、各金庫を、後面から個別に水平に引き出すことができ、操作性がよい。ジャム等の異常はこれら金庫とユニット搬送路51〜57の間で発生しやすいが、金庫の着脱が容易なため、ジャム除去操作も容易となる。金庫から紙幣を抜き取る場合や追加する場合に、該当の金庫のみ取り外しても、該金庫を使用しない取引の続行に支障なく、装置ダウンさせる必要がない。
さらに、本実施形態は、取り扱う紙幣について汎用性を持たせた構成としている。
日本円の紙幣は短手寸法76mm、長手寸法150〜160mmであり、それより大きい紙幣を収納、搬送できる寸法を確保していること、および、日本円より小さい紙幣も規制ガイドで対応し、世界のほとんどの紙幣を扱える、つまり寸法の異なる外国紙幣を幅広く取り扱えるように、本実施形態の各ユニット(入出金口2、入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9、装填・回収庫12)の収納部は、短手の収納空間の寸法約100mm、長手の収納空間の寸法約200mmを確保し、更に搬送路上に確保した空間(入金紙幣判別部3、一時保管庫4、紙幣搬送路5、出金紙幣判別部10)の幅は、約220mmを確保している。また、取り扱う最小紙幣サイズを短手寸法約60mm、長手寸法約120mmとして、入金庫6、出金庫7等の係員や利用者が紙幣をセットする収納部は、取り扱う紙幣のサイズに応じて、長手方向、短手方向の整列性を規制すべく、図示せぬ調整可能な規制ガイドを配している。
リサイクル庫8は、前述のように、収納時、下方から上方に放出し、繰り出し時、下方に放出するとともに、収納した紙幣を水平方向に積層するようにしており、リサイクル庫に寸法の異なる紙幣、特に搬送方向にあたる短手方向の寸法が異なる紙幣でも、収納時紙幣の重力により、底板88に沿って紙幣の下端は整列するため、繰り出し時、紙幣の先頭がそろっているため、安定した繰り出し性能を確保しやすい。言い換えれば、従来の垂直方向に積層するリサイクル庫と比べ、スタックするとき、紙幣1枚1枚が、重力で下端に落下して整列し、その整列した側から分離するので、分離性能がよい。分離機構にとって、紙幣の先端が整列しているかどうかで、2枚繰り出し等の信頼性に大きく関わる。特に、外国紙幣のように、サイズが異なる紙幣をリサイクル庫に収納し、繰り出す場合には、この下端をそろえて、下から繰り出すのは、信頼性上効果が大きい。
取扱紙幣サイズの汎用化により、本実施形態の紙幣入出金機1は、紙幣以外の紙葉を取り扱える。例えば、チケットや案内書の発行する場合には、出金庫7に係員がセットしておけばよい。取引の明細票の発行、小切手に発行等印字を必要とする装置とする場合には、紙幣搬送路途中に印字機構を設けてもよいが、出金庫7の代わりに、収納部と繰り出し機構と印字機構を内蔵した専用庫に置き換えてもよい。トラベラーズチェックの発行等ナンバーを印字してある紙葉の読み取り手段を必要とする場合も、印字手段と同様な実装をすればよい。あるいは、入金用紙幣判別部3を通過させ、ナンバーを読みとって、入出金口2に放出してもよい。以上、本明細書においては、単純に紙幣、紙葉類と表現した場合でもこれら明細票や小切手、証券等の有価証券類、薄いカード上の物等も含むものとする。
さらに、本実施形態は、各ユニット(入出金口2、入金紙幣判別部3、一時保管庫4、入金庫6、出金庫7、リサイクル庫8、リジェクト庫9、出金紙幣判別部10、装填・回収庫12)は、前述のように、独立した構成で、紙幣搬送路5が、各ユニットを個々に独立に接続するよう構成されており、組立性、輸送性等の取扱が容易であるだけでなく、各ユニットを並べ替えて、本実施形態と異なる紙幣搬送路で接続し、目的とする機能に応じた他の紙幣入出金機を実現できる。